JP2006017458A - バイオチップ用基板およびバイオチップ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 基板表面に生理活性物質を固定化するバイオチップ用基板であって、表面にアミノ基およびホスホリルコリン基を有するバイオチップ用基板であり、好ましくは、アミノ基およびホスホリルコリン基を有するポリマーが基板表面に塗布され、又はアミノ基を有する第1のポリマー、およびホスホリルコリン基を有する第2のポリマーが基板表面に塗布され、又はアミノ基と反応する官能基およびホスホリルコリン基を有するポリマーを表面に塗布し、次いで多官能性のアミノ基を有する化合物と反応させてなるバイオチップ用基板。
Description
マイクロアレイのシグナル検出において、マイクロアレイ用基板のバックグランドはS/N比を低下させる原因となり、検出精度を低下させる(例えば、非特許文献1)。S/N比とは、ラベル化された試料検体から得られたシグナル量(シグナル)をラベル化された試料検体から得られたシグナル物質以外の部位から発生したシグナル量(ノイズ)で除した値のことをいい、S/N比が高いと検出感度が高くなる。
ゆえに、マイクロアレイ基板の材料には低蛍光性のものを使用することが多い。また、基板表面には核酸を効率良く固定化するための化学的修飾が施されることが通常であり、アルデヒド基やアミノ基を導入したものが多用されている。これらの官能基に由来する蛍光を低減することは、マイクロアレイを用いたアッセイの精度向上の観点から重要となってくる。マイクロアレイ用基板はガラスもしくはプラスチック製であることが多いが、通常これらの材料表面は化学的に不活性であることから、核酸を固定化するためには表面修飾を施す必要がある。表面修飾としては、アルデヒド基、アミノ基などの活性な官能基を導入する場合が多い。アミノ基を導入した基板では、基板全体が正電荷を帯びているため、負電荷をもつ核酸分子を静電的相互作用により固定化することができる。また、アルデヒド基を導入した基板では、固定化する核酸分子にアミノ基を予め導入しておくことにより、共有結合形成による強固な固定化が可能であることから、特に塩基数が数十個以下のオリゴDNA固定化用基板として広く用いられている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
また、基板表面に結合されたグラフトポリマーを介してDNAを固定化する方法などがある(例えば特許文献4、特許文献5)。特許文献5には、カルボキシル基を持つモノマーを構成成分とするポリマーを表面に担持した固相担体を使用し、DNA断片を固定化する方法が開示されている。
しかしながら、上述の方法では、検出対象物質の物理的吸着(非特異的吸着)を抑制することは困難であるため、バックグランドが上昇してしまい、S/N比の低下を招く。そこで、検出対象物質の基板への物理的吸着(非特異的吸着)を抑制することのできる基板の開発が求められていた。
上述したように、非特異的な吸着を最小限に抑えることによりバックグランドを減少し、かつ、基板生理活性物質の固定化能を高めることによりシグナル量を向上することは、高いS/N比を実現できるバイオチップとして非常に有用である。
(2)アミノ基およびホスホリルコリン基を有するポリマーが基板表面に塗布されている(1)記載のバイオチップ用基板、
(3)アミノ基を有する第1のポリマー、およびホスホリルコリン基を有する第2のポリマーが基板表面に塗布されている(1)記載のバイオチップ用基板、
(4)アミノ基と反応する官能基およびホスホリルコリン基を有するポリマーを表面に塗布し、次いで多官能性のアミノ基を有する化合物と反応させてなる(1)記載のバイオチップ用基板、
(5)アミノ基と反応する官能基が、アルデヒド基、活性エステル基、および酸無水物基から選ばれる少なくとも一つの官能基である(4)記載のバイオチップ用基板。
(6)アミノ基と反応する官能基が、p−ニトロフェニルエステル基またはN−ヒドロキシスクシンイミドエステル基である(4)記載のバイオチップ用基板、
(7)多官能性のアミノ基を有する化合物の分子骨格が炭化水素鎖またはエチレングリコール鎖で構成されている(4)〜(6)いずれか記載のバイオチップ用基板、
(8)多官能性のアミノ基を有する化合物が、アミノ基以外の分子骨格中に窒素原子を少なくとも1つ有する化合物である(4)〜(7)いずれか記載バイオチップ用基板、
(9)ポリマーがブチルメタクリレート基を含む共重合体である(2)〜(8)いずれか記載のバイオチップ用基板、
(10)ホスホリルコリン基が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン基である(1)〜(9)いずれか記載のバイオチップ用基板、
(11)固相基板がプラスチック製である(1)〜(10)いずれか記載のバイオチップ用基板、
(12)プラスチックが飽和環状ポリオレフィンである(11)記載のバイオチップ用基板、
(13)固相基板がガラス製である(1)〜(10)いずれか記載のバイオチップ用基板、
(14)(1)〜(13)いずれか記載のバイオチップ用基板に生理活性物質が固定化されたバイオチップであって、生理活性物質が核酸、ペプチド核酸、アプタマー、オリゴペプチド、糖鎖、およびそれらの類似物の中から選ばれる少なくとも1つであるか、又はこれらの中から少なくとも1つを含む複合体であるバイオチップ、
である。
本発明のバイオチップ用基板は、基板表面にアミノ基およびホスホリルコリン基を有することを特徴とする。
アミノ基およびホスホリルコリン基の導入方法としては、アミノ基およびまたはホスホリルコリン基を有するポリマーが表面に塗布されることにより導入されていることが好ましく、アミノ基とホスホリルコリン基が同一のポリマーであるかまたはアミノ基を有するポリマーとホスホリルコリン基を有するポリマーが各々別のポリマーであることがより好ましい。
ホスホリルコリン基は、例えば2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン 、2−メタクリロイルオキシエトキシエチルホスホリルコリン 、6−メタクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン 、10−メタクリロイルオキシエトキシノニルホスホリルコリン 、アリルホスホリルコリン 、ブテニルホスホリルコリン 、ヘキセニルホスホリルコリン 、オクテニルホスホリルコリン 、デセニルホスホリルコリン等が挙げられるが、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが好ましい。
(アミノ基導入基板の作製)
(実施例1)
飽和環状ポリオレフィン樹脂をスライドガラス形状に加工して固相基板を作成した。固相基板を2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−ブチルメタクリレート−p−ニトロフェニルカルボニルオキシエチルメタクリレート共重合体の0.5重量%エタノール溶液に浸漬することにより、基板表面にホスホリルコリン基と活性エステル基とを有する高分子物質を導入した。
前記基板にN、N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミンの2体積%水溶液に3時間浸漬し、純水で洗浄後、80℃、2時間真空乾燥することにより、基板表面にホスホリルコリン基およびアミノ基が導入されたバイオチップ用基板を作成した。
スライドガラス(TeleChem社製)に2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−ブチルメタクリレート−p−ニトロフェニルカルボニルオキシエチルメタクリレート共重合体の0.5重量%エタノール溶液に浸漬することにより、基板表面にホスホリルコリン基と活性エステル基とを有する高分子物質を導入した。
前記基板にN、N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミンの2体積%水溶液に3時間浸漬し、純水で洗浄後、80℃、2時間真空乾燥することにより、基板表面にホスホリルコリン基およびアミノ基が導入されたバイオチップ用基板を作成した。
飽和環状ポリオレフィン樹脂をスライドガラス形状に加工して固相基板を作成した。固相基板を2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−ブチルメタクリレート−p−ニトロフェニルカルボニルオキシエチルメタクリレート共重合体の0.5重量%エタノール溶液に浸漬することにより、基板表面にホスホリルコリン基と活性エステル基とを有する高分子物質を導入した。
前記基板にエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテルの2体積%水溶液に3時間浸漬し、純水で洗浄後、80℃、2時間真空乾燥することにより、基板表面にホスホリルコリン基およびアミノ基が導入されたバイオチップ用基板を作成した。
カーボンブラック40重量%に対しポリスチレン60重量%を配合し、高濃度に黒色顔料を含有するペレットを作製。このペレットを飽和環状ポリオレフィン樹脂に対し、3.75重量%に配合することによりカーボンブラックを1.5重量%含有する飽和環状ポリオレフィン樹脂を作製した。この樹脂を用いて、スライドガラス状の基板を作製した。
前記基板を実施例1と同様な方法により、基板表面にホスホリルコリン基およびアミノ基が導入されたバイオチップ用基板を作成した。
飽和環状ポリオレフィン樹脂をスライドガラス形状に加工して固相基板を作成した。固相基板を2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−ブチルメタクリレート−アミノオキシエチルメタクリレート共重合体の0.5重量%エタノール溶液に浸漬することにより、基板表面にホスホリルコリン基およびアミノ基が導入されたバイオチップ用基板を作成した。
飽和環状ポリオレフィン製の基板を親水化処理したのち、1%アミノアルキルシラン溶液に浸漬し、熱処理を施すことにより基板表面にアミノ基が導入されたバイオチップ用基板を作成した。
TeleChem社製アミノ基導入ガラス基板を用いた。
飽和環状ポリオレフィン樹脂をスライドガラス形状に加工して固相基板を作成した。固相基板を2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−ブチルメタクリレート−p−ニトロフェニルカルボニルオキシエチルメタクリレート共重合体の0.5重量%エタノール溶液に浸漬することにより、基板表面にホスホリルコリン基および活性エステル基が導入されたバイオチップ用基板を作成した。
長鎖DNAおよび蛍光標識長鎖DNAの調整は、PCR Thermal Cycler480(タカラバイオ社製)を使用して、PCRにより増幅されたDNAを用いた。プライマーとして、オリゴヌクレオチド(シグマジェノシス社製)(配列1:TCGTGCGTGACATTAAGGAGAAGC(配列番号1)、配列2:CTAGAAGCATTTGCGGTGGACGAT(配列番号2))を使用し、cDNAライブラリー(Humanliver)(タカラバイオ社製)を鋳型として、βアクチン遺伝子のDNA断片(502bp)を増幅した。
PCR反応液の組成は、200μM dNTP、TakaraExTaq(タカラバイオ社製)、2mMMgCl2、Ex Taq Bufferであり、PCR反応は、プレ変性:90℃、30秒;1サイクル、熱変性:90℃、30秒、アニーリング:60℃、30秒、伸長:72℃、45秒;30サイクル、伸長:72℃、3分;1サイクルで行なった。この断片をアガロースゲル電気泳動により増幅されていることを確認後、マイクロコン100(ミリポア社製)を用いて、PCR増幅産物を精製、濃縮した。
蛍光標識長鎖DNAの調整は、Cy3標識オリゴヌクレオチドを用いて、上記と同様の方法で行なった。
上記で得られた長鎖DNAを所定の水溶液を用いて、所定濃度に溶解し、96穴プレートに分注し、マイクロピン式のマイクロアレイスポッターを用いて実施例1〜5、比較例1〜3で作製した基板にそれぞれ点着した。
点着後、80℃で1時間熱処理、UVを照射(120mJ)することにより長鎖DNAを固定化し、0.1%SDSで洗浄を行なった。その後、2×SSC(クエン酸ナトリウム緩衝液)、0.1%SDSの水溶液を調整し、ホットプレート上で沸騰させた後、基板を1分間浸漬し、次いで純水中に1分間浸漬した。
前基板を5×SSC、0.3%SDS、0.1mg/mlのBSA水溶液中に50℃で1時間浸すことで、DNAが点着されていない部分のブロッキングを行なった。次いで、水で洗浄した後、ハイブリダイゼーション反応を50℃で16時間行なった。ハイブリダイゼーション溶液として、上記で得られた蛍光標識長鎖DNAを所定の濃度に溶解した、5×SSC、0.3%SDSを用いた。
ハイブリダイゼーション終了後、0.2×SSC、0.1%SDS中で42℃、10分浸漬した。その後、0.2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分浸漬し、2×SSC、1×SSC、0.1×SSCの順に洗浄を行なった。次いで、基板を遠心することにより乾燥した。
マイクロアレイ用スキャナ「ScanArray Lite」(パッカードバイオチップテクノロジー社製)を用いて、上記で得られた各基板のスポットの蛍光を検出した。このときの測定条件は、レーザー出力90%、PMT感度60%、励起波長550nm、測定波長570nm、解像度50μmであった。
スポットの蛍光強度の数値化は、スキャナに付属の解析用ソフトウェア「QuantArray」を用いて行なった。
実施例1〜5では、比較例1〜3と比較して、蛍光バックグランド値が低く、かつ、蛍光シグナル値の大幅な増加が認められ、S/N比が高い結果となった。CV値も良好な値を示した。この結果は、本発明の効果を支持するものであった。
Claims (14)
- 基板表面に生理活性物質を固定化するバイオチップ用基板であって、基板表面にアミノ基およびホスホリルコリン基を有することを特徴とするバイオチップ用基板。
- アミノ基およびホスホリルコリン基を有するポリマーが基板表面に塗布されている請求項1記載のバイオチップ用基板。
- アミノ基を有する第1のポリマー、およびホスホリルコリン基を有する第2のポリマーが基板表面に塗布されている請求項1記載のバイオチップ用基板。
- アミノ基と反応する官能基およびホスホリルコリン基を有するポリマーを表面に塗布し、次いで多官能性のアミノ基を有する化合物を反応させてなる請求項1記載のバイオチップ用基板。
- アミノ基と反応する官能基が、アルデヒド基、活性エステル基、および酸無水物基から選ばれる少なくとも一つの官能基である請求項4記載のバイオチップ用基板。
- アミノ基と反応する官能基が、p−ニトロフェニルエステル基またはN−ヒドロキシスクシンイミドエステル基である請求項4記載のバイオチップ用基板。
- 多官能性のアミノ基を有する化合物の分子骨格が炭化水素鎖またはエチレングリコール鎖で構成されている請求項4〜6いずれか記載のバイオチップ用基板。
- 多官能性のアミノ基を有する化合物が、アミノ基以外の分子骨格中に窒素原子を少なくとも1つ有する化合物である請求項4〜7いずれか記載バイオチップ用基板。
- ポリマーがブチルメタクリレート基を含む共重合体である請求項2〜8いずれか記載のバイオチップ用基板。
- ホスホリルコリン基が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン基である請求項1〜9いずれか記載のバイオチップ用基板。
- 固相基板がプラスチック製である請求項1〜10いずれか記載のバイオチップ用基板。
- プラスチックが飽和環状ポリオレフィンである請求項11記載のバイオチップ用基板。
- 固相基板がガラス製である請求項1〜10いずれか記載のバイオチップ用基板。
- 請求項1〜13いずれか記載のバイオチップ用基板に生理活性物質が固定化されたバイオチップであって、生理活性物質が核酸、ペプチド核酸、アプタマー、オリゴペプチド、糖鎖、およびそれらの類似物の中から選ばれる少なくとも1つであるか、又はこれらの中から少なくとも1つを含む複合体であるバイオチップ。
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