JP2007262470A - ベルト式cvt用プーリー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ベルト式CVT1におけるベルト3と摺動する摺動面210、220を有し、素材の鋼として、JISG4053に規定されているクロム鋼、または、クロムモリブデン鋼を用いて製造されたベルト式CVT用プーリー21、22。摺動面210、220は、その表面に、内部よりも高強度の硬化層を有する時に、表面粗さRzが1.4〜6.3μmである。JISB0671で規定する突出山部高さRpkとの突出谷部深さRvkの比であるRpk/Rvkが0.75未満を満たす表面性状を有する。
【選択図】図2
Description
上記ベルト式CVTは、ベルトとプーリーの摺動面との間で、極めて高い圧力が負荷された状態で使用される。また、ベルトは、後述する図2に示すごとく、鋼製で板状のエレメント31を多数重ね、上記エレメント31に設けた左右の溝部分311にスチールバンド32をはめ込むことによって得られる。すなわち、上記ベルト3を構成する鋼製のエレメント31と接する上記摺動面21は、非常に摩耗し易い状態で使用される。このような状況下で、重量がより軽くて高容量の得られるベルト式CVT1を得るためには、上記摺動面21を、より高い面圧を負荷させた場合でも摩耗が増加することのないようにすることが必要であり、そのための技術開発が不可欠となる。
特許文献1、2は、化学成分を最適化することにより、1000℃を超える高温浸炭処理を行っても結晶粒粗大化が生じないようにして、短時間の浸炭処理で深い硬化深さを実現し、耐摩耗性を改善することを特徴としている。このような成分最適化型の改善や、硬化処理後の表面層の最適化、使用される鋼材側の最適化による耐摩耗性向上技術は、浸炭窒化処理に関する特許も含め、他にも多数の特許が公開され、従来から活発な研究開発が行われてきた。
上記摺動面は、その表面に内部よりも高硬度の硬化層を有すると共に、表面粗さRzが1.4〜6.3μmであり、かつJISB0671に規定されている突出山部高さRpkとの突出谷部深さRvkの比であるRpk/Rvkが0.75未満を満たす表面性状を有することを特徴とするベルト式CVT用プーリーにある(請求項1)。
摩耗現象の進行がどうなるかは、潤滑油の存在によって、ベルトと摺動面が直接金属接触する領域を細かく分断することがポイントとなる。潤滑油がベルトと摺動面との間に切れ目なく存在可能とするためには、上記摺動面に微小な凹凸を設け、ベルトと摺動面との隙間に潤滑油が存在可能とする必要がある。
また、摩耗現象は、摺動面だけでなく、ベルトの摩耗現象も同時に考慮する必要がある。すなわち、摺動面の表面粗さが大きすぎる場合には、油膜切れ領域の縮小を図ることは容易となるが、相手攻撃性が高くなってベルトの摩耗が大きくなるという問題がある。そのため、上記表面粗さRzの上限を6.3μmとした。
上述したように、優れた耐摩耗性を得るためには摺動面の表面粗さを最適化する必要があるが、表面粗さを適正化するのみでは、十分な効果が得られにくい場合がある。
本発明では、表面の尖った箇所を少なくし、表面に潤滑油を確実に介在するように、上記突出山部に比較して上記突出谷部深さが深い表面性状とするため、Rpk/Rvkを0.75未満とした。
優れた耐摩耗性を得るためには、表面硬化処理により表面硬さを高める必要がある。この場合には、表面硬化処理として浸炭処理を施し、上記浸炭層の炭素濃度を0.65質量%以上に高めて、表面硬さを高めることが好ましい。
上記炭素濃度が0.65%未満の場合には、表面硬さが低くなるおそれがある。一方、上記炭素濃度が1.4%を超えると、必要な処理時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
なお、ここで言う浸炭層は、部品としての最終加工後における表面から深さ100μmまでの範囲のことであり、上記炭素濃度の値は、上記浸炭層の範囲の平均炭素濃度とする。
優れた耐摩耗性を得るためには、上述したごとく、表面硬化処理により表面硬さを高める必要がある。この場合には、表面硬化処理として浸炭窒化処理を行い、表層の炭素濃度及び窒素濃度を高め、上記窒素濃度N、上記表面硬さHが、H≧−320N+700を満たし、上記窒素濃度Nと上記表面硬さHとの関係を適正化することが好ましい。
しかしながら、上記窒素濃度Nと上記表面硬さHとの関係がH<−320N+700となった場合には、表面硬さが不十分になり、必要とする耐摩耗性を得ることができないおそれがある。
ここで言う浸炭窒化層とは、部品としての最終加工後における表面から深さ100μmまでの範囲のことであり、上記窒素濃度Nの値は、上記浸炭窒化層の範囲の平均窒素濃度とする。
上記Siは、焼き戻し軟化抵抗を高められる元素としてよく知られており、ベルトと摺動面との摺動によって温度が上昇した場合における硬度低下を防止する効果を有する。従って、JIS規格の上限である0.35%を超えて増量できることとした。但し、上記Siの濃度が1.00%を超える場合には、浸炭異常層が増加し、強度低下の原因となるおそれがあるため、上限を1.00%とした。
上記Moは焼入れ性向上に効果を有する元素であると共に、硬化層及び芯部の強度、靭性を改善する元素でもある。また、Moは、浸炭異常層の生成を抑制する元素であり、焼きもどし軟化抵抗向上のため、浸炭異常層を増大する元素であるSiを増量した場合に、Moを添加することによって、浸炭異常層を適正レベルに調整可能にできる効果がある。従って、必要に応じてJIS規格の上限を超えて添加できることとした。しかしながら、上記Moは高価な元素であり、多量の添加はコストアップにつながり好ましくないため、上限を0.80%とした。なお、下限をJIS規格の上限超としたのは、JISの規格鋼によって規格上限の値が異なっているため、具体的数値では規定できなかったためである。
Nb及びTiは表面硬化処理前の素材の段階で、鋼中に炭窒化物となって析出し、ピンニング効果により、表面硬化処理による結晶粒粗大化を防止する効果を有する。上述したように、優れた強度を得るために深い硬化深さを得るためには、表面硬化処理時間を長くする必要がある。その際、表面硬化処理温度を高くして、処理時間短縮を図ることは、生産性を高めるために必須となり、高い処理温度としても結晶粒粗大化防止を可能とするためには、上記Nb及びTiの添加が効果的であるため、上記JISG4053に規定されているクロム鋼、または、クロムモリブデン鋼に加えて追加添加できるものとした。
上記Bは少量の添加で焼入れ性を向上させることのできる元素である。従って、部品寸法、要求特性などに応じて適量添加できることにしておくことは必要であると考えられるため、上記JISG4053に規定されているクロム鋼、または、クロムモリブデン鋼に加えて追加添加できるものとした。なお、0.0005〜0.005質量%としたのは、従来からの経験で、この程度の添加が適当であることが良く知られているからである。
また、上記Niは、鋼の強度、靭性を改善する元素であるため、要求特性に合わせ、上記JISG4053に規定されているクロム鋼、または、クロムモリブデン鋼に加えて追加添加できるものとした。なお、範囲を0.05〜1.0%としたのは、上記Niの添加量が0.05質量%未満の場合には、効果が得られないおそれがあり、1.0質量%を超える場合には、効果が飽和するとともにコストアップにつながるおそれがあるからである。
本発明のベルト式CVT用プーリーにかかる実施例について、図2を用いて説明する。
図2に示すごとく、本例のベルト式CVT用プーリー21、22(以下、プーリー21、22という)は、ベルト式CVT1におけるベルト3と摺動する円錐状の摺動面(シーブ面ともいう)210、220を有するものである。2つのプーリー21の摺動面210を間隔可変(溝幅可変)の状態で対面させることによってプライマリプーリーを構成し、2つのプーリー22の摺動面220を間隔可変の状態で対面させることによってセカンダリプーリーを構成する。
各試料を製作するに当たっては、まず、素材として、表1に示す組成の鋼を使用した。
また、摺動面に、浸炭処理及び、表面加工を施した。
仕上げ加工として、切削工具を用いて研削加工を施し、必要とする突出谷部深さを得た。
(上面砥石研磨)
精密仕上げ加工として、突出谷部深さに影響を与えないように、#80〜1000程度の粒度の砥石を用いて研磨を施し、突出山部高さを低減し、Rpk/Rvkを変化させた。
精密仕上げ加工として、突出谷部深さに影響を与えないように、φ0.3mmの微粒ショットを用いて、ショットピーニング処理を施し、突出山部高さを低減し、Rpk/Rvkを変化させた。
(上面研削)
精密仕上げ加工として、突出谷部深さに影響を与えないように、切削工具を用いて研削加工を施し、突出山部高さを低減し、Rpk/Rvkを変化させた。
なお、得られた試料を表2、表3に示す。
上記摩耗試験は、各試料を組み付けた上述の構造のベルト式CVT1を、入力トルクを任意に変えられる設備に取り付けて行った。
上記ベルト式CVT1のベルト3の巻きかけ位置を、変速比が最大(γmax)となり、アンダードライブ側に固定した条件とすることにより、プライマリプーリー(プーリー21)に入力するトルク、摺動面210とベルト3とのベルト狭圧を実際に使用する際の最も厳しい条件となるようにして、摩擦試験を行った。
実際の使用では、アンダードライブ側の状態が長時間継続することはないため、この試験は現実の使用状態と比較して、非常に厳しい条件となっており、得られる結果から将来の高容量エンジンに搭載した時の摩耗量、あるいは、プーリーを小型化した時の摩耗量を再現・推測することができる。
摩耗量が10μm以下の場合を合格とし、10μmを超える場合を不合格とした。結果を表2、表3に合わせて示す。
これに対し、本発明の比較例である試料C1〜試料C3は、Rpk/Rvkが本発明の上限を上回るため、表面の尖っている部分が多くなり、摺動面における局所面圧が高く、摩耗現象が進行するため、摺動面における摩耗が10μmを超え、不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C4は、表面硬さが本発明の好ましい範囲の下限を下回るため、耐摩耗性が劣り、摺動面における摩耗が10μmを超え、不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C6は、表面粗さRzが本発明の上限を上回るため、相手攻撃性が高くなって摩耗が大きくなるため、摺動面における摩耗が10μmを超え、不合格であった。
本例は、実施例1の浸炭処理を浸炭窒化処理に変更した例である。他は、実施例1と同様である。
上記浸炭窒化処理としては、従来から行われている浸炭窒化処理を以下の条件で行った。まず、950℃で6時間保持した後、840℃で4時間保持し、その後、60℃で油焼入れを行い、160℃で80分間焼き戻しを行った。
得られた試料、及び、摩耗試験の結果を表4に示す。
これに対し、本発明の比較例である試料C7〜試料C11は、表面硬さHが、本発明の好ましい範囲の下限を下回るため、耐摩耗性が劣り、摺動面における摩耗が10μmを超えた。
また、本発明の比較例である試料C12及び試料C13は、Rpk/Rvkが本発明の上限を上回るため、表面の尖っている部分が多くなり、摺動面における局所面圧が高く、摩耗現象が進行するため、摺動面における摩耗が10μmを超え、不合格であった。
図3より知られるごとく、上記窒素濃度N、上記表面硬さHが、H≧−320N+700を満たす場合には、耐摩耗性に優れたCVT用プーリーを得ることができる。
21 ベルト式CVT用プーリー
22 ベルト式CVT用プーリー
210 摺動面
210 摺動面
3 ベルト
31 エレメント
311 溝部分
32 スチールバンド
Claims (5)
- ベルト式無段階変速機(以下、ベルト式CVTという)におけるベルトと摺動する摺動面を有し、素材の鋼として、JISG4053に規定されているクロム鋼、または、クロムモリブデン鋼を用いて製造されたベルト式CVT用プーリーであって、
上記摺動面は、その表面に内部よりも高硬度の硬化層を有すると共に、表面粗さRzが1.4〜6.3μmであり、かつJISB0671に規定されている突出山部高さRpkとの突出谷部深さRvkの比であるRpk/Rvkが0.75未満を満たす表面性状を有することを特徴とするベルト式CVT用プーリー。 - 請求項1において、上記硬化層は、炭素濃度が0.65〜1.4質量%、表面硬さがHv700以上の浸炭層であることを特徴とするベルト式CVT用プーリー。
- 請求項1において、上記硬化層は、窒素濃度をN(質量%)、表面硬さをH(Hv)とすると、H≧−320N+700を満たす浸炭窒化層であることを特徴とするベルト式CVT用プーリー。
- 請求項1〜3のいずれか一項において、上記鋼に含有しているSi、Moの少なくとも一方を質量%で、Si:0.35%超え〜1.0%、Mo:JIS規格の上限超え〜0.80%の範囲に増量してなることを特徴とするベルト式CVT用プーリー。
- 請求項1〜4のいずれか一項において、上記鋼は、質量%で、更に、Nb:0.005〜0.2%、Ti:0.005〜0.2%、Ni:0.05〜1.0%、あるいはB:0.0005〜0.005%のうち1種又は2種以上を添加してなることを特徴とするベルト式CVT用プーリー。
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