JP2007261972A - カロテノイドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】微生物培養物を低級ジアルキルケトン類及びエーテル類の少なくとも一方で抽出した後、抽出液を濃縮して得られる沈殿物を低級アルコール類及び低級ジアルキルケトン類の少なくとも1種又はそれらの混合液で洗浄することを特徴とするカロテノイド含量が90%以上の組成物を得る製造方法。及び該カロテノイド含有組成物を含有する食品、医薬組成物、又は化粧品。
【選択図】なし
Description
アスタキサンチンは、魚類、鶏卵の色揚げ剤として広く使用されている。また、食品添加物としても認められており、油脂加工食品、タンパク質性食品、水性液状食品などに幅広く使用されている。さらに、フリーラジカルによって誘起される脂質の過酸化に対する抗酸化活性、α−トコフェロールの数百倍に達する一重項酸素消去作用などから、その強力な抗酸化活性を生かした機能性食品、化粧品、又は医薬品としての用途が期待されている。
アスタキサンチンは、サケ、マス、マダイ等の魚類、カニ、エビ、オキアミ等の甲殻類など広く自然界に分布すると共に、アグロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、パラコッカス属に属する細菌類、ヘマトコッカス属緑藻類、ファフィア属酵母類等の微生物によっても生産されている。アスタキサンチンやゼアキサンチン等のカロテノイドは、化学合成法により工業的に生産されているが、安全面の不安から天然物由来のものが求められている。
例えば、ヘマトコッカス藻類の場合、培養後の藻類のシスト細胞を熱アセトン処理し、夾雑物であるクロロフィルを溶出させた後、該シスト細胞をスプレードライし、得られた乾燥細胞からエタノールでカロテノイドを抽出する方法(特許文献1)などが報告されている。しかし、このような製造方法で得られる組成物には、まだ多くの生体由来の夾雑物が多く含まれており、1)カロテノイドの含量、2)アスタキサンチンの含量、等の点で満足のいくものではない。
こうした状況から、特殊な設備や複雑な操作などを必要としない簡便な方法であって、アスタキサンチンを高含量で含む高純度カロテノイドを工業的に製造する方法の確立が切望されていた。
すなわち、本発明は、以下の構成を有する。
(1)以下の1)〜3)の工程を含むカロテノイド含有組成物の製造方法。
1)微生物培養物を低級ジアルキルケトン類及びエーテル類の少なくとも一方で抽出する工程
2)得られる抽出液を濃縮して沈殿物を得る工程
3)沈殿物を低級アルコール類及び低級ジアルキルケトン類の少なくとも1種又はそれらの混合液で洗浄する工程
(2)以下の1)〜3)の工程を含むカロテノイド含有組成物の製造方法。
1)微生物培養物をアセトンで抽出する工程
2)得られる抽出液を濃縮して沈殿物を得る工程
3)沈殿物をエタノールで洗浄する工程
(3) 以下の1)〜3)の工程を含むカロテノイド含有組成物の製造方法。
1) 微生物培養物をアセトンで抽出する工程
2) 得られる抽出液を濃縮して沈殿物を得る工程
3) 沈殿物をアセトンで洗浄する工程
(4)カロテノイド含有組成物が、カロテノイドを90%以上含有する組成物である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)カロテノイドが、アスタキサンチンを40%以上含有するカロテノイドである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(6)微生物の16SリボソームRNAに対応するDNAの塩基配列が、配列表配列番号1に記載の塩基配列と実質的に相同である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(7)微生物が、E−396株(FERM BP−4283)又はその変異株である前記(1)〜(5)のいずれかに記載のカロテノイドの製造方法。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法で得られるカロテノイドを含有する組成物。
(9)前記(8)に記載のカロテノイド含有組成物を含有する食品、医薬組成物、又は化粧品。
本発明に用いることができる微生物としては、カロテノイド類を生産する微生物であれば何ら限定されないが、パラコッカス細菌、ヘマトコッカス属藻類、ファフィア属酵母などを用いることができる。特に増殖速度の速さ、カロテノイド類の生産性から、16SリボソームRNAに対応するDNAの塩基配列が配列表配列番号1記載の塩基配列と実質的に相同である細菌が好ましい。
実質的に相同であるとは、DNAの塩基配列決定のエラー頻度等を考慮し配列が、98%以上の相同性を有することを意味する。このような細菌の中でもE−396菌株(FERM BP−4283)が特に好ましい。また、これらの微生物を変異処理してカロテノイド生産性の観点で選択したカロテノイド高生産株を用いることも大変に好適な例として挙げられる。
炭素源としてはグルコース、シュークロース、ラクトース、フルクトース、トレハロース、マンノース、マンニトール、マルトース等の糖類、酢酸、フマル酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸、ピルビン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブタノール、グリセノール等のアルコール類、大豆油、ヌカ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ゴマ油、アマニ油等の油脂類などが挙げられ、1種又は2種以上の炭素源を用いることができる。添加割合は炭素源の種類により異なり適宜調整すれば足りるが、通常、培地1L当たり1〜100g、好ましくは2〜50gである。
窒素源としては、例えば硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、アンモニア、尿素等の1種又は2種以上が用いられる。添加割合は窒素源の種類により異なり適宜調整すれば足りるが、通常、培地1Lに対し0.1g〜30g、好ましくは1〜10gである。
無機塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸鉄、塩化鉄、硫酸マンガン、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化鉛、硫酸銅、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等の1種又は2種以上が用いられる。添加割合は無機塩の種類により異なり適宜調整すれば足りるが、通常、培地1Lに対し0.001〜10gである。
ビタミン類を加える場合における量としては、添加割合はビタミン類の種類により異なり適宜調整すれば足りるが、通常、培地1Lに対し0.1〜1000mgで、好ましくは1〜100mgである。
アミノ酸、核酸塩基、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、麦芽エキス、コーンスチープリカー、乾燥酵母、大豆粕等の添加割合は、物質の種類により異なり適宜調整すれば足りるが、通常、培地1Lに対し0.2g〜200g、好ましくは3〜100gである。
培地のpHは2〜12、好ましくは6〜9に調整する。培養条件は15〜80℃、好ましくは20〜35℃の温度であり、通常1日〜20日間、好ましくは2〜8日間、好気条件で培養を行う。好気条件としては、例えば、振とう培養又は通気撹拌培養等が挙げられる。
例えば、前記した本発明に用いる培養微生物から得た約20mgのアスタキサンチンを含む乾燥菌体1gからの抽出を50℃のアセトンで行う場合は、7g〜180g程度、好ましくは15g〜70g程度、さらに好ましくは25g〜50g程度の量のアセトンを用いると良い。
該酸化防止剤は、最終的にはカロテノイド組成物から除くことが好ましいが、用いる酸化防止剤の種類によっては除去不要である。
また、抽出時間については特に制限する必要はないが、室温以上で抽出する場合には熱分解による収量低下を少なくするためにも短時間処理が良く、例えば、50℃のアセトンで行う場合には、12時間以内が好ましく、6時間以内がより好ましく、3時間以内がさらに好ましく、2時間以内が特に好ましく、1時間以内が最高に好ましい。
また、抽出液の濃縮で得られた留去液は、そのまま微生物培養物からの抽出に再利用することができる。
低級アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、又はイソプロパノ−ル等の炭素数1〜3のアルコールが挙げられるが、エタノール、又はイソプロパノールが好ましく、エタノールが特に好ましい。
低級ジアルキルケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、又はメチルイソブチルケトン等の炭素数3〜6のケトンが上げられるが、アセトン、又はメチルエチルケトンが好ましく、アセトンが特に好ましい。
また、洗浄力を落とさない程度に水もしくは他の有機溶媒を含有させた混合溶媒で洗浄することも好ましい一態様である。
また、洗浄、乾燥後の本発明のカロテノイド含有組成物中における残存溶媒量を低減することを目的として、洗浄の最後に水で溶媒置換的に洗浄する工程などを必要に応じて加えることも大変に好ましい方法である。例えば、少量の低温の水やエタノールで洗浄する工程を最後に加える方法などが好ましい一例として挙げられる。
本発明のカロテノイド含有組成物におけるカロテノド含量としては、90%以上が好ましく、91%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、97%以上が特に好ましく、98%以上が最も好ましい。
また、該カロテノイド中におけるアスタキサンチン含量としては、40%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、46%以上がさらに好ましく、47%以上が特に好ましく、50%以上が特に大変好ましく、55%以上が極めて大変好ましく、60%以上が最も好ましい。
具体的には、例えば、微生物培養物をアセトンで抽出した後、抽出液を濃縮して得られる沈殿物をエタノールで洗浄することにより、カロテノイド含量として95%以上の組成物が得られ、又、微生物培養物をアセトンで抽出した後、抽出液を濃縮して得られる沈殿物をアセトンで洗浄することにより、カロテノイド含量として90%以上の組成物が得られる。
本発明の方法は、従来技術に比較して、1)複雑な操作を必要としない点、2)カラム精製や液液抽出のような1%以下の低濃度溶液の状態での非効率な高純度化の精製操作を必要としない点において、工業的な観点から著しく有利である。そして本発明の効果として、3)アスタキサンチンを高含量で含む高純度カロテノイド組成物を安価に提供できる点、4)各工程で使用した溶媒の回収が容易になる点で優れた工業的製造方法を提供するものである。
本発明の製造方法により製造されるアスタキサンチン高含量の高純度カロテノイドを含有する医薬品の剤型としては、散在、顆粒剤、丸剤、ソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、チュアブル錠、速崩錠、シロップ、液剤、懸濁剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、粘付剤、吸入剤、注射剤等が挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製されるが、カロテノイドは水に難溶性であるため、植物性油、動物性油等の非親水性有機溶媒に溶解するか又は、乳化剤、分散在もしくは界面活性剤等とともに、ホモジナイザー(高圧ホモジナイザー)を用いて水溶液中に分散、乳化させて用いる。更に、カロテノイドの吸収性を高めるために、平均粒子系を1ミクロン程度まで微粉砕し用いることも可能である。
なお、実施例及び比較例におけるアスタキサンチン及びカロテノイドの定量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行った。カラムはWakosil−II SIL−100(φ4.6×250mm)(和光純薬社製)を2本連結して使用した。溶出は、移動相であるn−ヘキサン−テトラヒドロフラン−メタノール混合液(40:20:1)を室温付近一定の温度にて毎分1.0mL流すことで行った。測定においては、サンプルをテトラヒドロフランで溶解したものを移動相にて100倍希釈した液20μLを注入量とし、カラム溶離液の検出は波長470nmで行った。また、定量のための標準品としてはシグマ社製アスタキサンチン(Cat.No.A9335)を用いた。標準液のアスタキサンチン濃度の設定は、標準液の477nmの吸光度(A)及び上記条件でHPLC分析を行った時のアスタキサンチンピークの面積百分率%(B)を測定した後に、以下の式を用いて行った。
アスタキサンチン濃度(mg/L)=A÷2150×B×100
工程1:E−396菌株の培養工程
グルコース2g/L、肉エキス3g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム5g/Lの組成からなる培地10mlを直径18mmの試験管に入れ、121℃、15分間蒸気殺菌した。これにE−396菌株(FERM BP−4283)を1白金耳植菌し30℃で6日間、300rpmの往復振とう培養を行った。この培養液200本分(2L)を遠心分離した後凍結乾燥し、1g中に18mgのアスタキサンチンを含む乾燥菌体を得た。
実施例1の工程1で得られた乾燥菌体50gにアセトンを2.2kg加え、50℃にて1時間攪拌しながらアスタキサンチンを含めたカロテノイドの抽出を行った。次に、濾過にて菌体を除き、さらに菌体ケークをアセトンで洗浄してアスタキサンチン0.034%(wt/wt)、カロテノイド重量濃度0.077%(wt/wt)の抽出液2.3kgを得た。
実施例1の工程2で得られた抽出液2.3kgを、エバポレーターを用いて減圧濃縮して沈殿物を含んだ濃縮液(約80g)と留去液(約2kgのアセトン)を得た。この濃縮液を外温5℃にて1時間冷却しながら撹拌した。
実施例1の工程3で得られた冷却された濃縮液約80gを減圧濾過してカロテノイドを含んだ沈殿物のケークを得た。さらに上から20gのアセトンを加えて濾過洗浄した後に、一晩35℃にて減圧乾燥して2.13gの沈殿物の乾燥物を得た。この乾燥物中のアスタキサンチン及びカロテノイドの含量はそれぞれ34%と71%であった。
実施例1の工程4で得られた沈殿物の乾燥物2.13gに80gのエタノールを加え、1.8%相当のカロテノイドが懸濁した状態で室温下1時間攪拌洗浄を行った。得られた洗浄物を減圧濾過にて採取し、一晩35℃にて減圧乾燥を行い、エタノール洗浄乾燥物を1.49g得た。このエタノール洗浄乾燥物中のアスタキサンチン及びカロテノイドの含量はそれぞれ47%と98%であった。
工程4で発生した濾液約100g(約120mL)から減圧留去により留去液側に80gのアセトンを回収した。また、工程5で発生する濾液約80g(約100mL)から減圧留去により留去液側に76gのエタノールを回収した。
実施例1の工程1で得られた乾燥菌体25gに実施例1の工程3で得られた留去液(アセトン)を1.1kg加え、実施例1の工程2に準じたカロテノイドの抽出と菌体濾過を行い、抽出液1.2kgを得た。この抽出液を実施例1の工程3に準じて減圧濃縮した後、冷却された濃縮液約40gを得た。この冷却された濃縮液から実施例1の工程4に準じて沈殿物を濾取した。次に、実施例1の工程6で回収したアセトン10gを、沈殿物のケークの上から加えて濾過洗浄した後に、乾燥を行い1.00gの乾燥物を得た。この乾燥物に実施例1の工程6で回収したエタノールを40g加えて実施例1の工程5に準じて行いエタノール洗浄乾燥物0.72gを得た。エタノール洗浄前の減圧乾燥物のアスタキサンチン及びカロテノイドの含量がそれぞれ33%と70%に対して、エタノール洗浄乾燥物でのアスタキサンチン及びカロテノイドの含量がそれぞれ46%と97%であった。
以上のことより、回収された溶媒の再利用は何ら支障がないことが確認できた。
実施例1の工程1〜工程3と同様に行い、さらに実施例1の工程4に準じて、工程3で得られた冷却された濃縮液約80gを減圧濾過してカロテノイドを含んだ沈殿物のケークを得た。さらに上から20gのアセトンを加えて濾過洗浄した後に沈殿物カロテノイド含量を調べるためにケークの一部を採取した。次いで、乾燥する工程を省略して、上から80gのエタノールを加えてさらに濾過洗浄した。この濾過洗浄ケークを一晩35℃にて減圧乾燥を行いエタノール洗浄乾燥物を1.50g得た。このエタノール洗浄前の減圧乾燥物のアスタキサンチン及びカロテノイドの含量は、それぞれ33%と70%であるのに対して、エタノール洗浄乾燥物中のアスタキサンチン及びカロテノイドの含量はそれぞれ46%と97%であった。
また、実施例1の工程4に準じて行われる沈殿物濾取で得られる濾液約100g(約120mL)から、アセトン85gを、実施例1の工程5に準じて行われるエタノール洗浄工程で得られる濾液約80g(約100mL)から、僅かにアセトンが混入したエタノール75gをそれぞれ回収した。
実施例3で用いた乾燥菌体25gに、実施例3で得られた留去液(アセトン)を1.1kg加え、実施例1の工程2に準じたカロテノイドの抽出と菌体濾過を行い、抽出液1.1kgを得た。この抽出液を実施例1の工程3に準じて減圧濃縮した後、冷却された濃縮液約40gを得た。この冷却された濃縮液から実施例1の工程4に準じて沈殿物を濾取した。次に、実施例3で得られた回収アセトン10gを、沈殿物のケークの上から加えて濾過洗浄し、さらに実施例3と同様に乾燥する工程を省略して実施例3で回収したエタノール40gを加えてさらに濾過洗浄した。この濾過洗浄ケークを一晩35℃にて減圧乾燥を行いエタノール洗浄乾燥物を0.73g得た。エタノール洗浄前の減圧乾燥物のアスタキサンチン及びカロテノイドの含量はそれぞれ34%と71%であるのに対して、エタノール洗浄乾燥物中のアスタキサンチン及びカロテノイドの含量はそれぞれ46%と97%であった。
実施例4において減圧留去で回収されたアセトンが混入したエタノールを用いても洗浄能力の低下は認められないことが確認できた。但し、複数回回収して再利用することを考慮すると、エタノール洗浄工程前にアセトンがなるべく残留しない様な条件で、沈殿物を濾取する工夫をすることは好ましい態様と考えられる。
実施例1におけるエタノール洗浄の代わりにアセトン洗浄を行う以外は同様に実施したところ、得られた乾燥物中のアスタキサンチン及びカロテノイドの含量はそれぞれ45%と91%であった。
アスタキサンチン(シグマ製)の室温における溶解濃度を測定し、表1に示した。
表1から明らかなとおり、発ガン性や変異原性を有するハロゲン溶媒以外の溶媒における溶解濃度は1%以下という低濃度であることが分かった。このことから、従来技術の液液分配において比較的に有害性の低い一般的有機溶媒を用いている限りは、1%を超えるカロテノイド濃度の溶液で高純度化の処理をすることは極めて困難であり、工業生産性上、大変に問題があることが明らかとなった。
実施例1の工程1〜2と同様にして得たアスタキサンチン濃度0.034%(wt/wt)、カロテノイド濃度0.077%(wt/wt)の抽出液2.3kg(2.9L)にヘキサン1.9kg(2.9L)と1%食塩水2.9kg(2.9L)を加えて1時間攪拌した。静置後、2層分離して上層のヘキサン層3.7L(2.5kg)と下層の水層5L(4.6kg)を得た。得られたヘキサン層をエバポレーターにて減圧濃縮し約0.3Lの濃縮液を調整した後に4℃にて12時間放置後、沈殿物を減圧濾過し、上から25mLのヘキサンを加えて濾過洗浄し、減圧乾燥にて一晩乾燥してアスタキサンチン含量47%、カロテノイド含量98%の1.45gの乾燥物を得た。
また、取り扱い総液量の点においても、例えば実施例1において使用したアセトン及びエタノールの合計容量2.925Lに対して、比較例1では使用したアセトン、ヘキサン及び1%食塩水の合計容量は8.725Lであるので約3倍も工程液の取扱量が多いものであった。この点からも工業的に非効率であることが明らかとなった。
さらに、抽出に使用したアセトン約2.9Lの回収は、例えば実施例1及び3においては、製造工程中の抽出液の減圧濃縮と同時に留去液としてアセトン約2.8Lが回収できたのに対して、比較例1においてはヘキサン層の減圧濃縮で得られたアセトンとヘキサンからなる留去液約3.4Lから新たに分画してアセトンとヘキサンをそれぞれ回収する操作と水層約5Lから新たにアセトンを回収する操作が必要であった。このことから溶媒の回収工程において簡便性が低いことも明らかとなった。
抗酸化剤及び着色剤として、実施例1で得たアスタキサンチン組成物を、マーガリンの5重量%になるように植物油に添加した後、乳化剤などとともに均一になるよう攪拌し、通常の方法によりマーガリンを作製した。このマーガリンは、通常のマーガリンと比較して、アスタキサンチンの存在により、薄い赤色を呈していた。
実施例1で得たアスタキサンチン組成物を、1%アルギン酸ナトリウム水溶液に0.6%添加し、ホモジナイザーで分散後、5%塩化カルシウム凝固液に滴下し、直径5mmの球状に成型した。外観は自然に近く、形状、色調、及び味の観点でイクラと酷似していた。
実施例1で得たカロテノイド含有組成物120重量部に対して結晶セルロース330重量部、カルメロース−カルシウム15重量部、ヒドロキシプロピルセルロース10重量部及び精製水60重量部を用いて通常の方法にて配合、乾燥した後、10重量部のステアリン酸マグネシウムを添加し、打錠を行い、1錠あたりカロテノイド含有組成物を20mg含有する100mgの錠剤を得た。
実施例1で得たカロテノイド含有組成物1重量部に、5倍重量部の大豆油に懸濁し、均質になる様に十分に混合した後、カプセル充填機にてカプセル充填し、内容物約300mgの赤褐色状のカプセルを得た。
実施例1で得たアスタキサンチン含有組成物を、白色ワセリンに10重量%になるように添加し、芳香剤などとともに、均一になるように攪拌し、通常の方法によりクリーム剤を作製した。
Claims (9)
- 以下の1)〜3)の工程を含むカロテノイド含有組成物の製造方法。
1)微生物培養物を低級ジアルキルケトン類及びエーテル類の少なくとも一方で抽出する工程
2)得られる抽出液を濃縮して沈殿物を得る工程
3)沈殿物を低級アルコール類及び低級ジアルキルケトン類の少なくとも1種又はそれらの混合液で洗浄する工程 - 以下の1)〜3)の工程を含むカロテノイド含有組成物の製造方法。
1)微生物培養物をアセトンで抽出する工程
2)得られる抽出液を濃縮して沈殿物を得る工程
3)沈殿物をエタノールで洗浄する工程 - 以下の1)〜3)の工程を含むカロテノイド含有組成物の製造方法。
1)微生物培養物をアセトンで抽出する工程
2)得られる抽出液を濃縮して沈殿物を得る工程
3)沈殿物をアセトンで洗浄する工程 - カロテノイド含有組成物が、カロテノイドを90%以上含有する組成物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- カロテノイドが、アスタキサンチンを40%以上含有するカロテノイドである請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 微生物の16SリボソームRNAに対応するDNAの塩基配列が、配列表配列番号1に記載の塩基配列と実質的に相同である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 微生物が、E−396株(FERM BP−4283)又はその変異株である請求項1〜5のいずれか1項に記載のカロテノイドの製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法で得られるカロテノイドを含有する組成物。
- 請求項8に記載のカロテノイド含有組成物を含有する食品、医薬組成物、又は化粧品。
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