JP2007260786A - 難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削スローアウエイチップ - Google Patents
難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削スローアウエイチップ Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】硬質被覆層の1層を、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて作成した傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の傾斜角区分内に最高ピークが存在し、かつ前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質(Al、Cr)2O3層で構成し、かつ、同改質(Al、Cr)2O3層の表面を研磨して、その表面粗さをRa:0.2μm以下とすると共に、前記研磨面に硬質被覆層残留応力低減模様を形成してなる。
【選択図】図4
Description
(1)下部層として、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(2)上部層として、1〜15μmの平均層厚、および化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、さらに、
組成式:(Al1−ZCrZ)2O3、(ただし、原子比で、Z:0.01〜0.1)、
を満足するAlとCrの複合酸化物層(以下、単に複合酸化物層という)、
以上(1)および(2)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆切削チップが知られており、この被覆切削チップが、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に、必要に応じて、上記硬質被覆層の上部層を構成する複合酸化物層の表面を切削性能を向上させる目的でウエットブラスト処理を施して、平滑化した状態で用いられることも知られている。
(a−1)上記従来被覆切削チップの硬質被覆層を構成する上部層としての複合酸化物層(以下、従来複合酸化物層という)は、例えば、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.3〜4%、CrCl3:0.04〜0.26%、CO2:6〜8%、HCl:1.5〜3%、H2S:0.05〜0.2%、H2:残り、
反応雰囲気温度:1020〜1050℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件(以下、通常条件という)で蒸着形成されるが、前記従来複合酸化物層の形成に先立って、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.3〜4%、CrCl3:0.04〜0.26%、CO2:6〜8%、HCl:1.5〜3%、H2S:0.05〜0.2%、H2:残り、
反応雰囲気温度:750〜900℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件で、下部層であるTi化合物層の表面に、
組成式:(Al1−ZCrZ)2O3、(ただし、原子比で、Z0.01〜0.1)、
を満足するAlとCrの複合酸化物核(以下、単に複合酸化物核という)を形成し、この場合前記複合酸化物核は20〜200nm(0.02〜0.2μm)の平均層厚を有する複合酸化物核薄膜であるのが望ましく、引き続いて、加熱雰囲気を圧力:3〜13kPaの水素雰囲気に変え、かつ加熱雰囲気温度を1100〜1200℃に昇温した条件で前記複合酸化物核薄膜に加熱処理を施した状態で、硬質被覆層の上部層として、上記の通常条件と同じ条件、すなわち、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.3〜4%、CrCl3:0.04〜0.26%、CO2:6〜8%、HCl:1.5〜3%、H2S:0.05〜0.2%、H2:残り、
反応雰囲気温度:1020〜1050℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件で、
同じく組成式:(Al1−ZCrZ)2O3、(ただし、原子比で、Z:0.01〜0.1)、
を満足する複合酸化物層を形成すると、この結果の前記複合酸化物核薄膜上に蒸着形成された複合酸化物層(以下、改質複合酸化物層という)は、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、かつ上記従来複合酸化物層に比して一段と高温強度が向上し、硬質被覆層の耐チッピング性向上効果を発揮するようになること。
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)に概略説明図で示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成した場合、前記従来複合酸化物層は、図3に例示される通り、(0001)面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的な傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、前記改質複合酸化物層は、図2に例示される通り、0〜10度の範囲内にシャープな最高ピークが現れる傾斜角度数分布グラフを示すこと。
(b−2−1)まず、下側層として、反応ガス組成を、体積%で、
TiCl4:0.2〜10%、
CO2:0.1〜10%、
Ar:5〜60%、
H2:残り、
とし、かつ、
反応雰囲気温度:800〜1100℃、
反応雰囲気圧力:4〜70kPa(30〜525torr)、
とした条件で、0.1〜3μmの平均層厚を有し、かつ、オージェ分光分析装置で測定して、Tiに対する酸素の割合が原子比で1.25〜1.90、即ち、
組成式:TiOW 、
で表わした場合、
W:原子比で1.25〜1.90、
を満足する酸化チタン層を形成し、
(b−2−2)ついで、上記酸化チタン層(下側層)の上に、上側層として、通常の条件、即ち、反応ガス組成を、体積%で、
TiCl4:0.2〜10%、
N2:4〜60%、
H2:残り、
とし、かつ、
反応雰囲気温度:800〜1100℃、
反応雰囲気圧力:4〜90kPa(30〜675torr)、
とした条件で、0.05〜2μmの平均層厚を有するTiN層を形成すると、
(b−2−3)上記TiN層(上側層)形成時に、上記下側層を構成する酸化チタン層の酸素が拡散してきて前記上側層(TiN層)が、窒酸化チタン層で構成されるようになるが、この場合上記上側層(前記窒酸化チタン層)形成後の上記下側層である酸化チタン層は、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、酸素の割合がTiに対する原子比で1.2〜1.7、すなわち、
組成式:TiOX 、
で表わした場合、
X:原子比で1.2〜1.7、
を満足する酸化チタン層となり、
(b−2−4)また、上記窒酸化チタン層で構成された上側層は、同じく厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、拡散酸素の割合が窒素(N)に対する原子比で0.01〜0.4、即ち、
組成式:TiN1-Y(O)Y、
で表わした場合(ただし、(O)は上記下側研磨材層からの拡散酸素を示す)、
Y:原子比で0.01〜0.4、
を満足する窒酸化チタン層となること。
上記(b−1)におけると同じくウエットブラストにて、噴射研磨材として、水との合量に占める割合で15〜60質量%のAl2O3微粒を配合した研磨液を噴射すると、前記窒酸化チタン層および酸化チタン層は、前記Al2O3微粒によって粉砕微粒化し、窒酸化チタン微粒および酸化チタン微粒となって前記Al2O3微粒の共存下で研磨材として作用し、図12に概略斜視図で例示される通り、硬質被覆層の上部層を構成する複合酸化物層の表面を研磨することになり、この結果研磨後の前記複合酸化物層の表面は、Ra:0.2μm以下の表面粗さにまで平滑化されるようになり、前記複合酸化物層の表面がRa:0.2μm以下の表面粗さに平滑化されると、硬質被覆層の耐チッピング性に顕著な向上効果が現れるようになること。
以上(a)〜(d)に示される研究結果を得たのである。
(1)下部層として、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(2)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Al1−ZCrZ)2O3、(ただし、原子比で、Z:0.01〜0.1)、
を満足する複合酸化物層、
以上(1)および(2)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆切削チップにおいて、
(a)上記上部層の複合酸化物層を、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質複合酸化物層、
で構成し、
(b)上記硬質被覆層の上部層である改質複合酸化物層の全面に、
(b−1)下側層として、0.1〜3μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:TiOX 、
で表わした場合、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、
X:原子比で1.2〜1.7、
を満足する酸化チタン層、
(b−2)上側層として、0.05〜2μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:TiN1-Y(O)Y、
で表わした場合(ただし、(O)は上記Ti酸化物層からの拡散酸素を示す)、同じく厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、
Y:原子比で0.01〜0.4、
を満足する窒酸化チタン層、
以上(b−1)および(b−2)で構成された研磨材層を蒸着形成した状態で、
(b−3)ウエットブラストにて、噴射研磨材として、水との合量に占める割合で15〜60質量%のAl2O3微粒を配合した研磨液を噴射し、
上記の下側層の粉砕化酸化チタン微粒、上側層の粉砕化窒酸化チタン微粒、および噴射研磨材としてのAl2O3微粒の共存下で、上記硬質被覆層の上部層を構成する改質複合酸化物層の少なくとも切刃稜線部を含むすくい面部分および逃げ面部分を研磨して、これら研磨面の表面粗さをRa:0.2μm以下とし、
(c)さらに、上記研磨面のすくい面および逃げ面のいずれか、またはこれら両面の全面に亘って、単一基本形状マークおよび前記単一基本形状マークの集合マークのいずれか、または両方が分散分布してなると共に、前記単一基本形状マークを、上記硬質被覆層の構成層のうちのいずれかの層が露出した掘下げ面とした硬質被覆層残留応力低減模様をレーザービーム照射形成してなる、
難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆切削チップに特徴を有するものである。
(a)硬質被覆層
(a−1)下部層のTi化合物層
Ti化合物層は、自体が高温強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、チップ基体と上部層である改質複合酸化物層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層のチップ基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速切削加工では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
上記の改質複合酸化物層において、これの構成成分であるAlは層の高温硬さおよび耐熱性を向上させ、同Cr成分には、上記の通り加熱処理複合酸化物核薄膜中のCr成分との共存において、傾斜角度数分布グラフの0〜10度の範囲内に存在する度数の分布割合を高め、これを45%以上のきわめて高い分布割合にして、層の高温強度を向上させる作用を有するが、この場合Crの含有割合を示すZ値が原子比で0.01未満では前記作用に所望の向上効果を確保することができず、一方同Z値が0.1を越えると傾斜角度数分布グラフの0〜10度の範囲内に存在する度数の分布割合が45%未満となってしまい、所望の高温強度の確保が困難になることから、前記Z値を0.01〜0.1と定めた。
また、上記の通り加熱処理複合酸化物核薄膜の平均層厚も改質複合酸化物層の傾斜角度数分布グラフの0〜10度の範囲内に存在する度数の分布割合に影響を及ぼし、その平均層厚が20nmでは傾斜角度数分布グラフの0〜10度の範囲内に存在する度数の分布割合を45%以上にすることができず、この結果所望のすぐれた高温強度が得られず、一方その平均層厚が200nmを越えても0〜10度の範囲内に存在する度数の分布割合は45%未満となってしまうことから、その平均層厚を20〜200nmとするのが望ましい。
さらに、上記改質複合酸化物層は、上記の通り複合酸化物層自体のもつすぐれた高温硬さと耐熱性に加えて、さらに一段とすぐれた高温強度を有するが、その平均層厚が1μm未満では前記改質複合酸化物層の有する前記の特性を硬質被覆層に十分に具備せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えると、偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなり、摩耗が加速するようになることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
上側層を構成する窒酸化チタン層は、上記の通り、まず、酸素の割合をTiに対する原子比で1.25〜1.90(W値)とした酸化チタン層を形成し、ついで、前記酸化チタン層の上に通常の条件でTiN層を蒸着することにより形成されるものであり、したがって前記TiN層形成時における前記酸化チタン層からの酸素の拡散が不可欠となるが、前記酸化チタン層のW値が1.25未満であると、前記TiN層への酸素の拡散反応が急激に低下し、上側層における拡散酸素の割合(Y値)を原子比で0.01以上にすることができず、一方同W値が1.複合酸化物層90を越えると、前記上側層における拡散酸素の割合(Y値)が原子比で0.40を越えて多くなってしまうことから、W値を1.25〜1.90と定めたものであり、この場合上側層形成後の下側層(酸化チタン層)における酸素の割合(X値)は原子比で1.2〜1.7の範囲内の値をとるようになる、言い換えれば上側層形成後の下側層のX値が1.2〜1.7を満足する場合に、前記上側層のY値は0.01〜0.40を満足するものとなる。
また、この場合、下側層のX値および上側層のY値をそれぞれ1.2〜1.7および0.01〜0.40と定めたのは、前記X値およびY値が前記の値をとった場合に、これら研磨材層のウエットブラスト時における粉砕微粒化が好適な状態で行なわれ、すぐれた研磨機能を十分に発揮することが多くの試験結果から得られ、これらの試験結果に基いて定めたものである。したがって、前記X値およびY値がそれぞれ1.2〜1.7および0.01〜0.40の範囲から外れると、前記研磨材層のウエットブラスト時における粉砕微粒化が満足に行なわれず、すぐれた研磨機能を期待することができない。
さらに、上側層および下側層の平均層厚を、それぞれ0.05〜2μmおよび0.1〜3μmとしたのは、その平均層厚が0.05μm未満および0.1μm未満では、ウエットブラスト時における下側層の粉砕化酸化チタン微粒、上側層の粉砕化窒酸化チタン微粒の割合が少な過ぎて、研磨機能を十分に発揮することができず、一方、その平均層厚がそれぞれ2μmおよび3μmを越えても、研磨機能が急激に低下するようになり、いずれの場合も複合酸化物層の表面をRa:0.2μm以下の表面粗さに研磨することができなくなるという理由にもとづくものである。
研磨液のAl2O3微粒には、ウエットブラスト時に研磨材層を構成する下側層の粉砕化酸化チタン微粒および上側層の粉砕化窒酸化チタン微粒と共存した状態で、改質複合酸化物層の表面を研磨する作用があるが、その割合が水との合量に占める割合で15質量%未満でも、また60質量%を越えても研磨機能が急激に低下するようになることから、その割合を15〜60質量%と定めた。
(a)まず、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表8に示される組み合わせおよび目標層厚でTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、ついで、表4に示される条件で、表8に示される組み合わせおよび目標層厚で複合酸化物核薄膜[表4,8では核薄膜で示す](a)〜(h)を蒸着形成した後、前記複合酸化物核薄膜に圧力:8kPaの水素雰囲気中、1150℃に10〜60分の範囲内の所定時間保持の条件で加熱処理を施し、この状態で、同じく表4に示される条件で、表8に組み合わせおよび目標層厚で改質複合酸化物層[表4,8では改質層で示す](A)〜(H)を硬質被覆層の上部層として蒸着形成し、
(b)ついで、上記硬質被覆層の上部層を構成する改質複合酸化物層の全面に、研磨材層の下側層形成用酸化チタン層[TiOW(1)〜(6)のいずれか]を表6に示される条件で形成した後、上側層形成用窒化チタン層(TiN層)を同じく表6に示される条件で、表9に示される目標層厚で蒸着形成して、同じく表9に示される組成、すなわち厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、それぞれ表9に示されるX値およびY値の下側層および上側層からなる研磨材層を形成し(図11参照)、
(c)引き続いて、上記の下側層および上側層からなる研磨材層形成の被覆切削チップに、表7に示されるブラスト条件で、かつ表9に示される組み合わせでウエットブラストを施して、工具取り付け孔周辺部に研磨材層を存在させた状態で、前記改質複合酸化物層の切刃稜線部を含むすくい面部分および逃げ面部分を、同じく表7に示される表面粗さに研磨し(図12参照)、
(d)さらに、レーザービーム照射装置を用い、上記表面研磨の硬質被覆層に、
レーザービーム出力:10W、
単一基本形状マークの形状:直径が0.8mmの円形、
硬質被覆層残留応力低減模様:図4〜10に示される実施模様のうちのいずれかを表9に示される組み合わせで適用、
単一基本形状マークの露出面の掘下げ深さ:表9に硬質被覆層の全目標層厚に対する割合で示される深さ、
の条件で硬質被覆層残留応力低減模様を形成することにより本発明被覆切削チップ1〜13をそれぞれ製造した。
(b)引き続いて、上記研磨材層の形成を行なうことなく、表7に示されるブラスト条件で、かつ表10に示される組み合わせでウエットブラストを施して、前記従来複合酸化物層の切刃稜線部を含むすくい面および逃げ面を、同じく表10に示される表面粗さに研磨し、一方硬質被覆層残留応力低減模様の形成を行なわずに従来被覆切削チップ1〜13をそれぞれ製造した。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記の改質複合酸化物層および従来複合酸化物層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
なお、図2は、本発明被覆切削チップ4の改質複合酸化物層の傾斜角度数分布グラフ、図3は、従来被覆切削チップ4の従来複合酸化物層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示すものである。
被削材:JIS・SS400の丸棒、
切削速度:390m/min、
切り込み:2.5mm、
送り:0.3mm/rev、
の条件(切削条件Aという)での軟鋼の乾式高速連続切削試験(通常の切削速度は280m/min)、
被削材:JIS・SUS405の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:320m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.25mm/rev、
の条件(切削条件Bという)でのステンレス鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は170m/min)、さらに、
被削材:JIS・SCMnH1の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:240m/min、
切り込み:2mm、
送り:0.2mm/rev、
の条件(切削条件Cという)での高マンガン鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は120
m/min)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅が、一般に切削工具の使用寿命の目安とされている0.3mmに至るまでの切削時間を測定した。この測定結果を表11に示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成されたサーメット基体の切刃稜線部を含むすくい面および逃げ面の全面に、
(1)下部層として、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(2)上部層として、1〜15μmの平均層厚、および化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、さらに、
組成式:(Al1−ZCrZ)2O3、(ただし、原子比で、Z:0.01〜0.1)、
を満足するAlとCrの複合酸化物層、
以上(1)および(2)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆サーメット製切削スローアウエイチップにおいて、
(a)上記上部層の複合酸化物層を、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質複合酸化物層、
で構成し、
(b)上記硬質被覆層の上部層である改質複合酸化物層の全面に、
(b−1)下側層として、0.1〜3μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:TiOX 、
で表わした場合、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、原子比で、
X:1.2〜1.7、
を満足する酸化チタン層、
(b−2)上側層として、0.05〜2μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:TiN1-Y(O)Y、
で表わした場合(ただし、(O)は上記酸化チタン層からの拡散酸素を示す)、同じく厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、同じく原子比で、
Y:0.01〜0.4、
を満足する窒酸化チタン層、
以上(b−1)および(b−2)で構成された研磨材層を蒸着形成した状態で、
(b−3)ウエットブラストにて、噴射研磨材として、水との合量に占める割合で15〜60質量%の酸化アルミニウム微粒を配合した研磨液を噴射し、
上記の下側層の粉砕化酸化チタン微粒、上側層の粉砕化窒酸化チタン微粒、および噴射研磨材としての酸化アルミニウム微粒の共存下で、上記硬質被覆層の上部層を構成する改質複合酸化物層の少なくとも切刃稜線部を含むすくい面部分および逃げ面部分を研磨して、これら研磨面の表面粗さを準拠規格JIS・B0601−1994に基いた測定で、Ra:0.2μm以下とし、
(c)さらに、上記改質複合酸化物層研磨面のすくい面および逃げ面のいずれか、またはこれら両面の全面に亘って、単一基本形状マークおよび前記単一基本形状マークの集合マークのいずれか、または両方が分散分布してなると共に、前記単一基本形状マークを、上記硬質被覆層の構成層のうちのいずれかの層が露出した掘下げ面とした硬質被覆層残留応力低減模様をレーザービーム照射形成したこと、
を特徴とする難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削スローアウエイチップ。
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JP2006085001A JP4844872B2 (ja) | 2006-03-27 | 2006-03-27 | 難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削スローアウエイチップの製造方法 |
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