JP2007257894A - 電子放出素子用の針状電子放出体の製造方法及び電子放出素子の製造方法 - Google Patents

電子放出素子用の針状電子放出体の製造方法及び電子放出素子の製造方法 Download PDF

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慎吾 榊原
Tasuku Inoue
翼 井上
Shusuke Mimura
秀典 三村
Akihiro Ishida
明広 石田
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Abstract

【課題】電子放出特性に優れ、かつ結晶成長プロセスの条件を操作するだけで指向性に優れるとともに形状が均一な電子放出体を形成可能な針状電子放出体の製造方法を提供する。
【解決手段】基板温度を500℃〜600℃の範囲に設定してから基板の一面上に金属ガリウムを成長させて島状の種結晶体を形成する工程と、基板温度を950℃〜1050℃の範囲に設定してから前記一面上に窒化ガリウムを成長させて前記種結晶体上に前記一面に対して垂直な柱状結晶体を形成する工程と、基板温度を950℃以下にするか、若しくは、窒素源、ガリウム源のいずれか一方または両方の供給量を前記の工程よりも少なくして前記一面上に窒素源とガリウム源を供給することにより、窒化ガリウムを成長させて前記柱状結晶体の先端に先窄み状の先鋭部を形成する工程と、を具備してなることを特徴とする電子放出素子用の針状電子放出体の製造方法を採用する。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子放出素子用の針状電子放出体の製造方法及び電子放出素子の製造方法に関する。
近年、半導体の微細加工技術が進展して微小な素子の製造が可能になり、真空マイクロエレクトロニクス技術の開発に大きく貢献している。ここで、このような微細加工を要する半導体デバイスの1種に電界放出型の電子放出素子がある。これは、金属又は半導体の表面に印加される電界を10〜10〔V/m〕程度まで大きくしたとき、トンネル効果により電子が障壁を通過して真空中に放出されるという現象を利用したもので、特に微小断面の電子ビームを必要とする表示デバイスや撮像デバイスなどの電子源として近年注目を集めている。
このため、このような電界放出電子源に必要なゲート電極開口部径及び陰極の微細化、陰極先端部の急峻化や、低仕事関数材料を用いた陰極の作成法などが盛んに検討されている。
例えば、下記特許文献1には、カソード電極と、アノード電極と、カソード電極上に形成された電子放出部材からなり、電子放出部材が、難電子放出物質からなる中空円筒状体に易電子放出物質が充填されてなり、この易電子放出物質をカーボンナノチューブで構成した電子放出素子が開示されている。
また、下記特許文献2には、窒化ガリウム基板上に略角錐形状の窒化ガリウム結晶粒が形成されてなる電子放出部を備えた蛍光表示装置が開示されている。
特許第3494583号公報 特開2000−149765号公報
上記特許文献1に開示されたカーボンナノチューブからなる易電子放出物質は、従来のモリブデンやシリコン等からなる電子放出源と比べて、電子親和力が低いために、電子を真空中に引き出すための電界が小さくて済むという利点があるものの、カーボンナノチューブは形成方位に大きなバラツキが生じやすく、このため電子放出特性が素子毎に大きく異なり、制御性に欠けるという問題がある。
また、上記特許文献2に開示された略角錐形状の窒化ガリウム結晶粒は、指向性に劣り、また製造プロセス自体が繁雑であるといった問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、電子放出特性に優れ、かつ結晶成長プロセスの条件を操作するだけで指向性に優れるとともに素子間において形状が均一な電子放出体を形成することが可能な針状電子放出体の製造方法及び電子放出素子の製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の電子放出素子用の針状電子放出体の製造方法は、電界放出型の電子放出素子に備えられる針状電子放出体の製造方法であって、基板温度を500℃〜600℃の範囲に設定してから基板の一面上にガリウム源を供給することにより、金属ガリウムをエピタキシャル成長させて島状の種結晶体を形成する種結晶体形成工程と、基板温度を950℃〜1050℃の範囲に設定してから前記一面上に窒素源とガリウム源を供給することにより、窒化ガリウムをエピタキシャル成長させて前記種結晶体上に前記一面に対して垂直な柱状結晶体を形成する柱状結晶体形成工程と、基板温度を950℃以下にするか、若しくは、窒素源、ガリウム源のいずれか一方または両方の供給量を前記柱状結晶体形成工程よりも少なくして前記一面上に窒素源とガリウム源を供給することにより、窒化ガリウムをエピタキシャル成長させて前記柱状結晶体の先端に先窄み状の先鋭部を形成する先鋭部形成工程と、を具備してなることを特徴とする。
また、本発明の電子放出素子用の針状電子放出体の製造方法においては、前記種結晶体形成工程の前に、前記基板の一面に窒化膜を形成することが好ましい。
また、本発明の電子放出素子用の針状電子放出体の製造方法においては、前記窒素源が、アンモニア、アミン基を有する化合物、ヒドラジンまたはヒドラジン誘導体であり、前記ガリウム源が金属ガリウムであることが好ましい。
次に、本発明の電子放出素子の製造方法は、基板と、前記基板上に形成される針状電子放出体と、前記針状電子放出体に対向配置される電子引出電極と、前記針状放出体の周囲に形成される絶縁層と、前記絶縁層上に形成されるゲート電極とを具備してなる電界放出型の電子放出素子の製造方法であって、前記基板の一面上に前記絶縁層を積層するとともに、前記絶縁層に凹部を設けて前記一面を露出させる絶縁層形成工程と、前記凹部に前記針状電子放出体を形成する針状電子放出体形成工程と、前記絶縁層上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、を具備してなることを特徴とする。
また、本発明の電子放出素子の製造方法においては、前記針状電子放出体形成工程が、基板温度を500℃〜600℃の範囲に設定してから前記基板の前記一面上にガリウム源を供給することにより、金属ガリウムをエピタキシャル成長させて島状の種結晶体を形成する種結晶体形成工程と、基板温度を950℃〜1050℃の範囲に設定してから前記一面上に窒素源とガリウム源を供給することにより、窒化ガリウムをエピタキシャル成長させて前記種結晶体上に前記一面に対して垂直な柱状結晶体を形成する柱状結晶体形成工程と、基板温度を950℃以下にするか、若しくは、窒素源、ガリウム源のいずれか一方または両方の供給量を前記柱状結晶体形成工程よりも少なくして前記一面上に窒素源とガリウム源を供給することにより、窒化ガリウムをエピタキシャル成長させて前記柱状結晶体の先端に先窄み状の針状部を形成する針状部形成工程と、からなることが好ましい。
また、本発明の電子放出素子の製造方法においては、前記絶縁層を、前記金属ガリウムに対する濡れ性が劣る材料で形成し、前記針状電子放出体を前記凹部内のみに形成することが好ましい。
また、本発明の電子放出素子の製造方法においては、前記絶縁層上及び前記凹部内に前記針状電子放出体を形成した後、前記絶縁層上の前記針状電子放出体を除去してから前記ゲート電極を形成することが好ましい。
本発明の針状電子放出体の製造方法によれば、針状電子放出体を構成する柱状結晶体及び先鋭部を電子親和力が1eV以下程度の窒化ガリウムで形成するので、電子を真空中に引き出すための電界が小さな針状電子放出体を得ることができる。
また、針状電子放出体を構成する種結晶体、柱状結晶体及び先鋭部はいずれも、ガリウムまたは窒化ガリウムの成長条件を変えるだけで作り分けることができるので、素子間において形状が均一な電子放出体を製造することができ、また、エッチングや研磨等の加工プロセスが不要となり、製造プロセスを簡素化することができる。
また、柱状結晶体は基板の一面に対して垂直に形成するので、指向性に優れた針状電子放出体を製造することができる。
次に、本発明の電子放出素子の製造方法によれば、絶縁層の凹部内に針状電子放出体を形成してから、絶縁層上にゲート電極を形成するので、ゲート電極に窒化ガリウムが付着する虞がなく、ゲート電極の特性が低下する虞がない。
また、窒化ガリウムからなる柱状結晶体及び先鋭部を順次形成することによって針状電子放出体を形成するので、電子を真空中に引き出すための電界が小さな電子放出素子を得ることができる。
また、針状電子放出体を構成する種結晶体、柱状結晶体及び先鋭部はいずれも、金属ガリウムまたは窒化ガリウムの成長条件を変えるだけで作り分けることができるので、素子間において形状が均一な電子放出体を製造することができ、また、エッチングや研磨等の加工プロセスが不要となって製造プロセスを簡素化できる。
また、柱状結晶体は基板の一面に対して垂直に形成するので、指向性に優れた針状電子放出体を製造することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。尚、以下の説明において参照する図面は、本発明に係る針状電子放出体等の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の針状電子放出体等の寸法関係とは異なる場合がある。
「第1の実施形態」
[針状電子放出体の製造方法]
本実施形態の針状電子放出体の製造方法について図1及び図2を参照して説明する。図1は、針状電子放出体の製造に用いる窒化ガリウム結晶成長装置の構成図であり、図2は、本実施形態の針状電子放出体の製造方法を説明する工程図である。
(窒化ガリウム結晶成長装置)
図1に示す窒化ガリウム結晶成長装置は、(a)基板の鉛直下方の表面を露出させて収納するととともに、基板に加熱を行うための基板収納部100と、(b)窒素原子を含有する窒素源となる気体等(アンモニア、アミン基を有する化合物等)に加熱を行うための鉛直上方が開放された第1の成長室200と、(c)成長させるべきガリウム元素材料(ガリウム源)および窒素原子を含有する窒素源となる気体等に加熱を行うため、鉛直上方が開放された第2の成長室300と、(d)基板収納部100で露出された基板の表面を、第1の成長室200の開放部の上方ないし第2の成長室300の開放部の上方へ移動させるための基板ステージ400と、(e)基板収納部100、第1の成長室200、第2の成長室300、および駆動部である基板ステージ400を収納するとともに、内部の残留蒸気圧を0.13Pa程度以下とする真空槽500とから構成されている。
基板収納部100は、基板ホルダ110と、この基板ホルダ110を収納するための鉛直下方が開放された石英管120と、この石英管120に巻かれたタングステン線からなる基板ヒータ130と、石英管120と基板ヒータ130との回りを取り囲むステンレス管140とを備えている。このステンレス管140は、加熱効率を高めるためのものである。
また、この第1の成長室200は、底のある石英管210と、この石英管210に巻かれたタングステン線からなるヒータ220と、石英管210とヒータ220との回りを取り囲むステンレス管230とを備えている。このステンレス管230は、加熱効率を高めるためのものである。また、この石英管210には、窒素原子を含有する窒素源となる気体等を供給するための石英管240が挿入されている。
また、第2の成長室300は、底のある石英管310と、この石英管310に巻かれたタングステン線からなるヒータ320と、石英管310とヒータ320との回りを取り囲むステンレス管330とを備えている。このステンレス管330は、加熱効率を高めるためのものである。また、この石英管310上部には、窒素原子を含有する窒素源となる気体等を供給するための石英管340が設けられており、石英管310の内部には、ガリウム元素材料Gaが収容されている。
さらに、この基板ステージ400と、第1の成長室200および第2の成長室300との間のギャップは任意に設定することができ、また基板ステージ400は、第1の成長室200および第2の成長室300の上を自由にスライド移動することができるよう形成されている。
なお、基板の温度は、基板に接触させた熱電対でモニタすることができ、第1の成長室200および第2の成長室300の底部と開口部とにもそれぞれ熱電対が接触しており、これらの熱電対により温度をモニタすることができる。
次に、図1に示す窒化ガリウム結晶成長装置を用いた、針状電子放出体の製造方法について説明する。この製造方法は、基板の一面に窒化膜を形成する窒化工程と、金属ガリウムからなる島状の種結晶体を形成する種結晶体形成工程と、種結晶体上に窒化ガリウムからなる柱状結晶体を形成する柱状結晶体形成工程と、柱状結晶体の先端に先窄み状の先鋭部を形成する先鋭部形成工程とから概略構成されている。以下、各工程について順次説明する。
(窒化工程)
まず、針状電子放出体を形成する基板を用意する。基板の材質としては、例えば単結晶シリコンからなる基板が好ましい。また、針状電子放出体を形成する基板の一面は、シリコンの(111)面であることが好ましい。この基板1の一面1aは清浄であることが好ましく、そのためには、この基板1を、硫酸−過酸化水素等のエッチング液で洗浄した後、図1に示す窒化ガリウム結晶成長装置の基板ホルダ110に取付け、基板1を基板ホルダ110ごと第1の成長室に移動させ、第1の成長室200内で0.1〜0.3mPa程度まで真空引きを行い、800〜1200℃、好ましくは900〜1100℃で、15〜60分間、好ましくは20〜40分間サーマルクリーニングを行い、表面を洗浄して清浄な一面1aとする。
次に図2(a)に示すように、この基板1の一面1a上に厚み1nm乃至50nm程度の窒化膜2を形成する。窒化膜2の形成は、窒素原子を含有する窒素源からの活性化した窒素原子Nで、基板1の一面1aの酸素を置き換えて窒化することにより行う。窒化膜2の組成は基板1の材質にもよるが、基板1の材質が単結晶シリコンの場合には、窒化膜2がSiNになる。
窒化膜形成の具体的な形成条件としては、基板温度を800〜1100℃、好ましくは950〜1000℃、より好ましくは1000℃に保つとともに、図1に示す窒化ガリウム結晶成長装置の第1の成長室200内を700〜1000℃、好ましくは800〜900℃として、この第1の成長室200内に窒素原子を含有する窒素源を流入させる。このような窒素原子を含有する窒素源としては、アンモニア、アミン基を有する化合物、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、窒素、窒素ラジカル、窒化物溶液、および窒素イオンのいずれかであるのが好ましい。そのなかでも、アンモニアが最も好ましい。この窒素原子を含有する窒素源を、5〜200cm/分、好ましくは50〜100cm/分の流量で供給し、そのまま1〜30分間、好ましくは5〜10分間、より好ましくは5分間放置して、基板1の一面1aに窒化膜2を形成する。
また、この窒化工程は、基板1の表面を、アンモニア、アミン基を有する化合物、ヒドラジン、またはヒドラジン誘導体の気体雰囲気中、より好ましくはアンモニアの気体雰囲気中にさらす、窒素雰囲気中にさらす、窒素ラジカル雰囲気中にさらす、窒化物溶液中に接触させる、および前記基板の表面に、窒素イオンを打ち込む、のいずれかの方法により行うのが好ましい。
(種結晶体形成工程)
次に、種結晶体形成工程では、図2(b)に示すように、窒化膜2の上に金属ガリウムをエピタキシャル成長させて島状の種結晶体3を形成する。
種結晶体3の具体的な形成条件としては、基板温度を500〜600℃、好ましくは540〜570℃まで低下させるとともに、基板1を基板ホルダ110ごと第2の成長室300に移動させる。また、窒素源の供給を停止して第2の成長室300内の圧力を0.1〜1mTorrに設定する。そして、ヒータ320を作動させて石英管310中のガリウム元素材料Gaを800〜850℃に加熱し、ガリウム原子を第2の成長室300内に流入させる。このようなガリウム元素材料Gaとしては金属ガリウムを用いることができる。ガリウム元素材料Gaの温度を800〜850℃に保ったまま数十秒間放置することにより、窒化膜2上に複数の島状の種結晶体3が形成される。
このようにして形成された種結晶体3は、高さが最大で10nm程度、直径が10nm〜1μm程度の表面が略球面状の結晶体となる。また、種結晶体3同士の間隔は10nm乃至1μmの範囲になる。種結晶体3を島状に形成することで、後述するように各種結晶体3の上に柱状結晶体をそれぞれ一面1aに対して垂直に形成することが可能になる。
尚、種結晶体3の形成条件の内、基板温度は600℃以下の比較的低温にすることが望ましい。基板温度が600℃を超えると、金属ガリウムが島状ではなく、膜状に成長してしまうので好ましくない。また、種結晶体3の成長を数分間に渡って行うと、金属ガリウムが窒化膜2の上に膜状に広がって種結晶体3同士が一体化してしまうので好ましくない。
また、金属ガリウムに対してシリコンは濡れ性が悪いので、基板1として単結晶シリコン基板を用いる場合には、前述のように基板1の一面1aに窒化膜(SiN膜)を形成してから種結晶体3の形成を行うことが好ましい。
(柱状結晶体形成工程)
次に、柱状結晶体形成工程では、図2(c)に示すように、金属ガリウムからなる島状の各種結晶体3の上に、窒化ガリウムをエピタキシャル成長させて柱状結晶体4をそれぞれ形成する。
柱状結晶体4の具体的な形成条件としては、基板温度を950〜1050℃、好ましくは1000℃まで昇温させるとともに、石英管340を介して第2の成長室300内に窒素源を10〜300sccm、好ましくは100sccmの流量で供給し、第2の成長室300内の圧力を0.1〜1mTorrに保つ。窒素源としては上述と同様にアンモニアを用いることが好ましい。また、ガリウム元素材料Gaの温度は800〜850℃のままに保つことが好ましい。この条件を0.5〜4時間、より好ましくは2時間維持することにより、各種結晶体3の上に柱状結晶体4がそれぞれ形成される。
このようにして形成された柱状晶体4は、高さが最大で1μm程度、直径が50nm〜500nm程度の略円柱状の結晶体となる。また、柱状結晶体4は、基板1の一面1aに対してほぼ垂直に成長する。これは、基板面と垂直方向の結晶の成長スピードが速いためと考えられる。
尚、柱状結晶体4の形成条件の内、基板温度は950℃以上の比較的高温にすることが望ましい。基板温度が950℃未満になると、例えば基板温度が880℃程度になると、窒化ガリウムが柱状ではなく、膜状に成長してしまい、更に膜状になった窒化ガリウムが単結晶化して膜にクラックが発生してしまうので好ましくない。また、種結晶体3の成長をあまり長時間に渡って行うと、窒化ガリウムが窒化膜2の上に広がって膜状になってしまうので好ましくない。
(先鋭部形成工程)
次に、先鋭部形成工程では、図2(d)に示すように、各柱状結晶体4の先端4aにそれぞれ、先窄み状の先鋭部5を形成する。この先鋭部5の形成条件としては、次の2通りの条件を例示できる。
先鋭部5の第1の形成条件としては、基板温度を850〜950℃、好ましくは920℃まで低下させるとともに、石英管340を介しての第2の成長室300内への窒素源を10〜300sccm、好ましくは100sccmの流量に保ち、第2の成長室300内の圧力についても0.1〜1mTorrに保つ。窒素源としては上述と同様にアンモニアを用いることが好ましい。また、ガリウム元素材料Gaの温度についても800〜850℃のままに保つ。このように、柱状結晶体の形成条件に対して基板温度だけを低下させる。この条件を10〜60分間、より好ましくは10〜20分間維持することにより、各柱状結晶体4の上に略円錐状(先窄み状)の先鋭部5をそれぞれ形成する。
先鋭部の第2の形成条件としては、基板温度を950〜1050℃、好ましくは1000℃に保ち、石英管340を介しての第2の成長室300内への窒素源の供給量を10〜366sccm、好ましくは50sccmの流量に低下させ、ガリウム元素材料Gaの温度については800〜850℃のままに保つ。
または、基板温度を950〜1050℃、好ましくは1000℃に保ち、窒素源の供給量を10〜300sccm、好ましくは100sccmの流量に保ち、ガリウム元素材料Gaの温度を750〜800℃の範囲に低下させる。
または、基板温度を950〜1050℃、好ましくは1000℃に保ち、窒素源の供給量を10〜300sccm、好ましくは50sccmの流量に低下させ、ガリウム元素材料Gaの温度を750〜800℃の範囲に低下させる。
上述のように、窒素源の供給量を柱状結晶体の形成条件よりも少なくするか、ガリウム元素材料Gaの温度を柱状結晶体の形成条件よりも低下させてガリウムの供給量を少なくするか、または窒素源及びガリウム源の両方の供給量を低下させることで、第2の成長室300内の圧力を0.1mTorr以下に低下させ、この状態を10〜60分間、より好ましくは10〜20分間維持することにより、各柱状結晶体4の上に略円錐状(先窄み状)の先鋭部5をそれぞれ形成する。
このようにして形成された先鋭部5は、高さが最大で300nm程度、柱状結晶体の先端4aに隣接する部分における直径が柱状結晶体4の直径を反映した50nm乃至500nm程度の略円錐状の結晶体となる。
以上の各工程を経ることによって、図2(d)に示すように、基板1の一面1a上に窒化膜2が形成され、窒化膜2上に窒化ガリウムを主成分とする複数の針状電子放出体6が一面1aの垂直方向に沿って形成される。針状電子放出体6は、種結晶体3上に柱状結晶体4及び先鋭部5が順次形成されてなるものであり、全体の高さが0.5〜1.5μm、直径が50nm〜500nmで先端が針状に尖った結晶体である。この結晶体(針状電子放出体6)は、電子親和力が1eV以下程度の窒化ガリウムによって構成されるので、電子放出特性に優れている。また、先端が尖っているので、電子放出特性がより高められる。
[電子放出素子]
図3には、針状電子放出体6を電子放出エミッタとして用いた電界放出型の電子放出素子21を示す。この電子放出素子21は、基板1と、基板1の一面1a上に形成された窒化膜2と、窒化膜2上において一面1a対してほぼ垂直に形成された複数の針状電子放出体6と、針状電子放出体6に対向配置された電子引出電極11と、針状電子放出体6及び電子引出電極11にそれぞれ電気的に接続された電源部12とから概略構成されている。針状電子放出体6と電子引出電極11との間の空間は真空に保たれている。この電子放出素子21においては、針状電子放出体6がカソード(電子放出エミッタ)となり、電子引出電極11がアノードとなる。
そして、針状電子放出体6と電子引出電極11との間に電界を印加することによって、針状電子放出体6を構成する先鋭部5の先端から電子が放出される。
本実施形態の針状電子放出体6の製造方法によれば、針状電子放出体6を構成する柱状結晶体4及び先鋭部5を電子親和力が1eV以下程度の窒化ガリウムで形成するので、電子を真空中に引き出すため電界が小さな針状電子放出体6を得ることができる。
また、針状電子放出体6を構成する種結晶体3、柱状結晶体4及び先鋭部5がいずれも、ガリウムまたは窒化ガリウムの成長条件を変えるだけで作り分けることができるので、形状が均一な電子放出体6を製造することができ、また、エッチングや研磨等の加工プロセスが不要となって製造プロセスを簡素化できる。
また、柱状結晶体6を基板1の一面1aに対して垂直に形成するので、指向性に優れた針状電子放出体6を形成することができる。
「第2の実施形態」
[電子放出素子の製造方法]
次に、本実施形態の電子放出素子の製造方法について図4及び図5を参照して説明する。図4及び図5は、電子放出素子の製造工程を示す模式図である。
本実施形態の電子放出素子の製造方法は、基板の一面上に絶縁層を積層するとともに、絶縁層に凹部を設けて一面を露出させる絶縁層形成工程と、凹部に針状電子放出体を形成する針状電子放出体形成工程と、絶縁層上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程とから概略構成される。尚、本実施形態では後述するように、絶縁層を金属ガリウムに対する濡れ性が劣る材料で形成することによって、針状電子放出体を前記凹部内のみに形成する。以下、各工程について順次説明する。
(絶縁層形成工程)
まず図4(a)に示すように、基板31を用意し、この基板31の一面31a上に厚み1μm〜10μm程度の絶縁層32を形成する。基板31としては第1の実施形態と同様に、基板面(一面31a)が(111)面である単結晶シリコン基板を用いることが好ましく、絶縁層32としてはSiO層が好ましい。このSiOからなる絶縁層32は、単結晶シリコンの表面を酸素雰囲気中で熱処理する公知の手段により形成する。
次に、図4(b)に示すように、絶縁層32の一部をエッチングして凹部33を設け、下地である基板31の一面31a(単結晶シリコンの(111)面)を露出させる。凹部33の形成には、例えば、フォトリソグラフィ法等の公知の手段を用いることができる。形成された凹部33の深さは、絶縁層32の厚みと同程度の1μm〜10μmになる。また、凹部33の幅は例えば0.5μm程度に設定される。この凹部33は、図4(b)の手前側から奥側に向かって溝状に延在している。また、凹部33の両隣には、例えば0.5μm程度の間隔を空けて別の凹部がこの凹部33とほぼ並行に設けられている。
(針状電子放出体形成工程)
次に、図4(c)に示すように、凹部33内に露出された基板31の一面31上に、種結晶体34を形成する。種結晶体34を形成するための装置並びに形成条件は、第1の実施形態における種結晶体形成工程と同様である。このようにして、高さが最大で10nm程度、直径が10nm〜1μm程度の略半球状の種結晶体34を、10nm乃至1μmの間隔を空けて複数形成する。尚、SiOからなる絶縁層32の上には単結晶体34は形成されない。これは、SiOに対する金属ガリウムの濡れ性が劣っているためである。
次に、図4(d)に示すように、各種結晶体34の上にそれぞれ、窒化ガリウムからなる柱状結晶体35及び先鋭部36を順次形成する。柱状結晶体35及び先鋭部36を形成するための装置並びに形成条件は、第1の実施形態における柱状結晶体形成工程及び先鋭部形成工程と同様である。このようにして、種結晶体34と、高さが最大で1μm程度で直径が50nm〜500nm程度の円柱状の柱状結晶体35と、高さが最大で300nm程度の略円錐状の先鋭部36とからなる針状電子放出体37が形成される。
(ゲート電極形成工程)
次に、絶縁層32及び凹部33の上に厚み1μm〜10μm程度のSOG層(SOG:Spin On Glass)を塗布して形成する。深さ1μm〜10μm程度の凹部33は針状電子放出体37と共にこのSOG層によって完全に埋める。次にCMP法によってSOG層を研摩して、図5(a)に示すように絶縁層32上面32aを露出させる。このとき凹部33は、残存したSOG層Sによって埋められたままである。
次に、図5(b)に示すように、絶縁層32の上面32a及びSOG層S上に厚み0.1μm〜0.5μmのゲート電極膜38をCVD法で形成する。ゲート電極膜38の上にはレジストからなるマスク層39を形成する。マスク層39には、凹部33の形成位置に対応する凹部40を設ける。この凹部40によってゲート電極膜38の一部が露出される。マスク層39及び凹部40の形成は、公知のフォトリソグラフィ技術を用いる。ゲート電極膜38の材質は、タングステン、クロム等が好ましく、タングステンがより好ましい。
次に、図5(c)に示すように、凹部40から露出するゲート電極膜38をエッチングして除去し、SOG層Sを露出させる。
そして図5(d)に示すように、マスク層39及びSOG層Sを除去する。SOG層Sの除去は、希フッ酸またはバッファードフッ酸をエッチング液とするウェットエッチング法により行う。これにより、凹部33の内部に形成されていた針状電子放出体37が露出される。
以上の各工程を経ることによって、図5(d)に示すように、基板31の一面31a上に窒化ガリウムを主成分とする複数の針状電子放出体37が一面31aの垂直方向に沿って形成され、針状電子放出体37の周囲には絶縁層32が形成され、絶縁層32の上面32aにはゲート電極膜38が形成される。針状電子放出体37は、種結晶体34上に柱状結晶体35及び先鋭部36が順次形成されてなるものであり、全体の高さが0.5〜1.5μm、直径が50nm〜500nmで先端が針状に尖った結晶体である。この結晶体(針状電子放出体37)は、電子親和力が1eV以下程度の窒化ガリウムから構成されるので、電子放出特性に優れている。また、先端が尖っているので、電子放出特性がより高められる。
[電子放出素子]
そして、第1の実施形態における図3と同様にして、電子引出電極を図5(d)に示す針状電子放出体37に対向して配置し、針状電子放出体37及び電子引出電極にそれぞれ電源部を電気的に接続し、針状電子放出体37と電子引出電極との間の空間を真空雰囲気とすることによって、本実施形態の電子放出素子が構成される。本実施形態の電子放出素子においては、針状電子放出体37がカソード(電子放出エミッタ)となり、電子引出電極がアノードとなり、針状電子放出体37と電子引出電極との間に位置するゲート電極膜38がゲート電極になる。
そして、針状電子放出体37と電子引出電極との間に電界を印加することによって、針状電子放出体37を構成する先鋭部36の先端から電子が放出される。電子の放出量は、ゲート電極膜38の電位を制御することによって調整できる。
以上説明したように、本実施形態の電子放出素子の製造方法によれば、絶縁層32の凹部33内に針状電子放出体37を形成してから、絶縁層32上にゲート電極膜38を形成するので、ゲート電極膜38に窒化ガリウムが付着する虞がなく、ゲート電極膜38の特性が低下する虞がない。
また、窒化ガリウムからなる柱状結晶体35及び先鋭部36を順次形成することによって針状電子放出体37を形成するので、電子を真空中に引き出すため電界が小さな電子放出素子を得ることができる。
また、絶縁層32を金属ガリウムに対する濡れ性が比較的劣るSiOで形成し、この絶縁層32に凹部33を形成することによって基板31の一面31aの一部を露出させ、この一面31aに針状電子放出体37を形成するので、凹部33の形成箇所を適宜選択することによって針状電子放出体37の形成位置を制御できる。
「第3の実施形態」
[電子放出素子の製造方法]
次に、本実施形態の電子放出素子の製造方法について図6乃至図8を参照して説明する。図6乃至図8は、電子放出素子の製造工程を示す模式図である。
本実施形態の電子放出素子の製造方法は、第2の実施形態と同様に、基板の一面上に絶縁層を積層するとともに、絶縁層に凹部を設けて一面を露出させる絶縁層形成工程と、凹部に針状電子放出体を形成する針状電子放出体形成工程と、絶縁層上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程とから概略構成される。尚、本実施形態では後述するように、絶縁層上及び凹部内に針状電子放出体を形成した後、絶縁層上の針状電子放出体を除去してからゲート電極を形成する。以下、各工程について順次説明する。
(絶縁層形成工程)
まず図6(a)に示すように、基板41を用意し、この基板41の一面41a上に厚み1μm〜10μm程度の絶縁層42を形成する。基板41としては第1の実施形態と同様に、基板面(一面41a)が(111)面である単結晶シリコン基板を用いることが好ましく、絶縁層42としてはSiO層が好ましい。SiOからなる絶縁層42は、単結晶シリコンの表面を酸素雰囲気中で熱処理する公知の手段により形成する。
次に、図6(b)に示すように、絶縁層42の一部をエッチングして凹部43を設け、下地である基板41の一面41a(単結晶シリコンの(111)面)を露出させる。凹部43の形成には、例えば、フォトリソグラフィ法等の公知の手段を用いることができる。形成された凹部43の深さは、絶縁層42の厚みと同程度の1μm〜10μmである。また、凹部43の幅は例えば0.5μm程度に設定される。この凹部43は、第2の実施形態の場合と同様に、図6(b)の手前側から奥側に向かって溝状に延在している。また、凹部43の両隣には、例えば0.5μm程度の間隔を空けて別の凹部がこの凹部43とほぼ並行に設けられている。
(針状電子放出体形成工程)
次に、図6(c)に示すように、凹部43の内部と、凹部43の外部である絶縁層42上とに、窒化膜44を形成する。窒化膜44を形成するための装置並びに形成条件は、第1の実施形態における窒化工程と同様である。このようにして、厚み1nm乃至50nm程度の窒化膜44を形成する。
次に、図6(d)に示すように、窒化膜44上に種結晶体45を形成する。種結晶体45を形成するための装置並びに形成条件は、第1の実施形態における種結晶体形成工程と同様である。このようにして、高さが最大で10nm程度、直径が10nm〜1μm程度の略半球状の種結晶体45を、10nm乃至1μmの間隔を空けて形成する。尚、図6(d)に示すように、種結晶体45は、凹部43の内部の窒化膜44aのみならず、凹部43の外部の窒化膜44bにも形成する。
次に、図6(e)に示すように、各種結晶体45の上にそれぞれ、窒化ガリウムからなる柱状結晶体46及び先鋭部47を順次形成する。柱状結晶体46及び先鋭部47を形成するための装置並びに形成条件は、第1の実施形態における柱状結晶体形成工程及び先鋭部形成工程と同様である。このようにして、種結晶体45と、高さが最大で1μm程度で直径が50nm〜500nm程度の円柱状の柱状結晶体46と、高さが最大で300nm程度の略円錐状の先鋭部47とからなる針状電子放出体48を形成する。針状電子放出体48は、凹部43内部の窒化膜44aのみならず、凹部43の外部の窒化膜44bにも形成する。
(ゲート電極形成工程)
次に、図7(a)に示すように、絶縁層42及び凹部43の上に厚み1μm〜10μm程度のSOG層49(SOG:Spin On Glass)を塗布して形成する。深さ1μm〜10μm程度の凹部43は針状電子放出体48と共にこのSOG層49によって完全に埋められる。同時に、絶縁層42上の窒化膜44bに形成された針状電子放出体48もSOG層49によって完全に埋まる。
次に、図7(b)に示すように、CMP法によってSOG層49を研摩して、絶縁層32上の窒化膜44bを露出させる。凹部43の外部に形成された柱状電子放出体48はSOG層とともに除去される。このとき凹部43は、残存したSOG層Sによって埋められたままであり、凹部43の内部の針状電子放出体48はそのまま残存される。
次に、図7(c)に示すように、SOG層Sを除去する。SOG層Sの除去は、希フッ酸またはバッファードフッ酸をエッチング液とするウェットエッチング法により行う。これにより、凹部43の内部に形成されていた針状電子放出体48が露出される。
次に、図8(a)に示すように、絶縁層42及び凹部43内部の窒化膜44をドライエッチングにより除去する。針状電子放出体48の下にある窒化膜44は、針状電子放出体48がマスクとなってエッチングされずにそのまま残される。ドライエッチングは、例えば、SFとCHFを用いた反応性イオンエッチング法を用いることが好ましい。
次に、図8(b)に示すように、絶縁層42,凹部43の内部及び針状電子放出体48の全面に、厚み0.1μm〜0.5μmの導電膜50(ゲート電極膜)をCVD法で形成する。導電膜50の材質は、タングステン、クロム等が好ましく、タングステンがより好ましい。
次に、図8(c)に示すように、導電膜50の上にレジストからなるマスク層51を形成し、このマスク層51には、凹部43の形成位置に対応する凹部52を設ける。この凹部52によって凹部43の内部の導電膜50が露出される。マスク層51及び凹部52の形成は、公知のフォトリソグラフィ技術を用いる。
次に、図8(d)に示すように、凹部43内の導電膜50に対して異方性エッチングを行う。異方性エッチングが終了したらマスク層51を除去する。
この異方性エッチングによって、先鋭部47と、凹部42内面を構成する基板41の一面41aとに形成されていた導電膜50はそれぞれ、エッチングされて除去される。
一方、絶縁層42上の導電膜50aは、マスク層51によって保護されて残存し、最終的にゲート電極膜50aとなる。
また、凹部43の側壁面及び針状電子放出体48の側壁面に形成されていた導電膜50b、50cは、基板41から離れる方向に従ってエッチング量が多くなるものの、エッチングによって完全には除去されずに残存する。このように、これら導電膜50b、50cは基板41から離れるに従って膜厚が徐々に薄くなる。
以上の各工程を経ることによって、図8(d)に示すように、基板41の一面41a上に窒化ガリウムを主成分とする複数の針状電子放出体48が一面41aの垂直方向に沿って形成され、針状電子放出体48の周囲には絶縁層42が形成され、絶縁層42の上面42aにはゲート電極膜50a(50)が形成される。針状電子放出体48は、窒化膜44上に種結晶体45、柱状結晶体46及び先鋭部47が順次形成されてなるものであり、全体の高さが0.5〜1.5μm、直径が50nm〜500nmで先端が針状に尖った結晶体である。この結晶体(針状電子放出体48)は、電子親和力が1eV以下程度の窒化ガリウムから構成されるので、電子放出特性に優れている。また、先端が尖っているので、電子放出特性がより高められる。
更に、針状電子放出体48の先鋭部47を除いた側壁面には導電膜50cが形成されているので、針状電子放出体48の電気伝導度が向上する。一方、導電膜50cは先鋭部47には形成されていないので、先鋭部47における電子放出を阻害する虞はない。
[電子放出素子]
そして、第1の実施形態における図3と同様にして、電子引出電極を図8(d)に示す針状電子放出体48に対向して配置し、針状電子放出体48及び電子引出電極にそれぞれ電源部を電気的に接続し、針状電子放出体48と電子引出電極との間の空間を真空雰囲気にすることによって、本実施形態の電子放出素子が構成される。本実施形態の電子放出素子においては、針状電子放出体48がカソード(電子放出エミッタ)となり、電子引出電極がアノードとなり、針状電子放出体48と電子引出電極との間に位置するゲート電極膜50aがゲート電極になる。
そして、針状電子放出体48と電子引出電極との間に電界を印加することによって、針状電子放出体48を構成する先鋭部47の先端から電子が放出される。電子の放出量は、ゲート電極膜50aの電位を制御することによって調整できる。
以上説明したように、本実施形態の電子放出素子の製造方法によれば、絶縁層42の凹部43内に針状電子放出体48を形成してから、絶縁層42上にゲート電極膜50aを形成するので、ゲート電極膜50aに窒化ガリウムが付着する虞がなく、ゲート電極膜50aの特性が低下する虞がない。
また、絶縁層42上及び凹部43内に針状電子放出体48を形成した後、絶縁層42上の針状電子放出体48を除去し、凹部43内の針状電子放出体48を残すので、凹部43の形成箇所を適宜選択することによって針状電子放出体48の形成位置を制御できる。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
まず、単結晶シリコンからなる基板を用意し、この基板を、硫酸−過酸化水素等のエッチング液で洗浄した後、図1に示す窒化ガリウム結晶成長装置の基板ホルダに取付けた。尚、基板の一面はシリコンの(111)面である。この基板1を第1の成長室に移動させて、サーマルクリーニングを行い、表面を洗浄して清浄な一面とした。
次に窒化工程として、基板温度を1000℃とし、窒素源としてアンモニアを100cm/分の流量で10分間供給することにより、基板の一面に厚さ30nmのSiN膜を形成した。
次に種結晶体形成工程として、基板温度を500℃まで低下させるとともに、基板を第2の成長室に移動させ、窒素源の供給を停止して第2の成長室内の圧力を0.01mTorrに設定した。そして、石英管中の金属ガリウムを820℃に加熱して数十秒間放置することにより、SiN膜上に金属ガリウムからなる複数の島状の種結晶体を形成した。種結晶体3は、高さ10nm程度、平均直径50nm程度の略半球状の結晶体であった。また種結晶体同士の間隔は0.5μm程度であった。図9には、SiN膜上に形成された種結晶体のSTM像(トンネル型電子顕微鏡像)を示す。図9に示すように、略球状の種結晶体が形成されていることが確認できた。
次に、柱状結晶体形成工程として、基板温度を1000℃まで昇温させ、第2の成長室内にアンモニアを100sccmの流量で供給し、成長室内の圧力は1mTorrに保ち、金属ガリウムの温度も820℃のままに保ち、この条件で2時間放置することにより、種結晶体の上に、高さ1μm程度、直径200nm程度の円柱状の窒化ガリウムからなる柱状結晶体を形成した。形成された柱状結晶体は、基板の一面に対してほぼ垂直に成長していた。図10には、SiN膜上に形成された柱状結晶体のSEM像(走査型電子顕微鏡像)を示す。図10に示すように、略円柱状の種結晶体が形成されていることが確認できた。
次に、先鋭部形成工程として、基板温度を920℃まで低下させ、アンモニアの流量を100sccmに保ち、成長室内の圧力についても1mTorrに保ち、金属ガリウムの温度についても820℃のままに保った状態で、20分間放置することにより、柱状結晶体の上に略円錐状(先窄み状)の先鋭部を形成した。形成された先鋭部の高さは300nm程度であった。図11には、先鋭部を平面視したSEM像(走査型電子顕微鏡像)を示す。図11に示すように、先鋭部の形成が進むにつれて先鋭部の先端が尖っていくのが確認できた。
以上の各工程を経ることによって、基板の一面のSiN膜上に、窒化ガリウムを主成分とする複数の針状電子放出体が基板一面の垂直方向に沿って形成された。形成された針状電子放出体は、種結晶体上に柱状結晶体及び先鋭部が順次形成されてなるものであり、全体の高さが1.3μm程度、直径が200nmで先端が針状に尖った結晶体であった。
この結晶体は、電子親和力が1eV以下程度の窒化ガリウムから構成されるので、電子放出特性に優れたものであった。また、先端が尖っているので、電子放出特性がより優れたものであった。
(比較例1)
上記実施例1と同様にして単結晶シリコンからなる基板を用意し、この基板に対して実施例1と同様にして窒化工程及び種結晶工程を行い、基板上にSiN膜を形成するとともにSiN膜上に種結晶体を形成した。
次に、基板温度を880℃にしたこと以外は実施例1の柱状結晶体形成工程と同様にして、柱状結晶体の形成を行ったが、基板温度が880℃では温度が低すぎたために、窒化ガリウムが柱状ではなく膜状に形成されてしまった。このため、針状電子放出体の製造が不可能になった。
図1は、本発明の針状電子放出体の製造に用いる窒化ガリウム結晶成長装置の構成図である。 図2は、本発明の第1の実施形態である針状電子放出体の製造方法を説明する工程図である。 図3は、本発明の第1の実施形態である電子放出素子の構成を示す模式図である。 図4は、本発明の第2の実施形態である電子放出素子の製造方法を説明する工程図である。 図5は、本発明の第2の実施形態である電子放出素子の製造方法を説明する工程図である。 図6は、本発明の第3の実施形態である電子放出素子の製造方法を説明する工程図である。 図7は、本発明の第3の実施形態である電子放出素子の製造方法を説明する工程図である。 図8は、本発明の第3の実施形態である電子放出素子の製造方法を説明する工程図である。 図9は、実施例1における種結晶体を示すSTM像である。 図10は、実施例1における柱状結晶体を示すSEM像である。 図11は、実施例1における先鋭部を示すSEM像である。
符号の説明
1、31、41…基板、1a、31a、41a…一面、2、44…窒化膜、3、34,45…種結晶体、4、35,46…柱状結晶体、5、36、47…先鋭部、6、37、48…針状電子放出体、11…電子引出電極、21…電子放出素子、32、42…絶縁層、33、43…凹部、38、50a…ゲート電極

Claims (7)

  1. 電界放出型の電子放出素子に備えられる針状電子放出体の製造方法であって、
    基板温度を500℃〜600℃の範囲に設定してから基板の一面上にガリウム源を供給することにより、金属ガリウムをエピタキシャル成長させて島状の種結晶体を形成する種結晶体形成工程と、
    基板温度を950℃〜1050℃の範囲に設定してから前記一面上に窒素源とガリウム源を供給することにより、窒化ガリウムをエピタキシャル成長させて前記種結晶体上に前記一面に対して垂直な柱状結晶体を形成する柱状結晶体形成工程と、
    基板温度を950℃以下にするか、若しくは、窒素源、ガリウム源のいずれか一方または両方の供給量を前記柱状結晶体形成工程よりも少なくして前記一面上に窒素源とガリウム源を供給することにより、窒化ガリウムをエピタキシャル成長させて前記柱状結晶体の先端に先窄み状の先鋭部を形成する先鋭部形成工程と、
    を具備してなることを特徴とする電子放出素子用の針状電子放出体の製造方法。
  2. 前記種結晶体形成工程の前に、前記基板の一面に窒化膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子用の針状電子放出体の製造方法。
  3. 前記窒素源が、アンモニア、アミン基を有する化合物、ヒドラジンまたはヒドラジン誘導体であり、前記ガリウム源が金属ガリウムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子放出素子用の針状電子放出体の製造方法。
  4. 基板と、前記基板上に形成される針状電子放出体と、前記針状電子放出体に対向配置される電子引出電極と、前記針状放出体の周囲に形成される絶縁層と、前記絶縁層上に形成されるゲート電極とを具備してなる電界放出型の電子放出素子の製造方法であって、
    前記基板の一面上に前記絶縁層を積層するとともに、前記絶縁層に凹部を設けて前記一面を露出させる絶縁層形成工程と、
    前記凹部に前記針状電子放出体を形成する針状電子放出体形成工程と、
    前記絶縁層上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、
    を具備してなることを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  5. 前記針状電子放出体形成工程が、
    基板温度を500℃〜600℃の範囲に設定してから前記基板の前記一面上にガリウム源を供給することにより、金属ガリウムをエピタキシャル成長させて島状の種結晶体を形成する種結晶体形成工程と、
    基板温度を950℃〜1050℃の範囲に設定してから前記一面上に窒素源とガリウム源を供給することにより、窒化ガリウムをエピタキシャル成長させて前記種結晶体上に前記一面に対して垂直な柱状結晶体を形成する柱状結晶体形成工程と、
    基板温度を950℃以下にするか、若しくは、窒素源、ガリウム源のいずれか一方または両方の供給量を前記柱状結晶体形成工程よりも少なくして前記一面上に窒素源とガリウム源を供給することにより、窒化ガリウムをエピタキシャル成長させて前記柱状結晶体の先端に先窄み状の針状部を形成する針状部形成工程と、
    からなることを特徴とする請求項4に記載の電子放出素子の製造方法。
  6. 前記絶縁層を、前記金属ガリウムに対する濡れ性が劣る材料で形成し、前記針状電子放出体を前記凹部内のみに形成することを特徴とする請求項5に記載の電子放出素子の製造方法。
  7. 前記絶縁層上及び前記凹部内に前記針状電子放出体を形成した後、前記絶縁層上の前記針状電子放出体を除去してから前記ゲート電極を形成することを特徴とする請求項5に記載の電子放出素子の製造方法。

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