JP2004250314A - GaN単結晶基板、窒化物系半導体エピタキシャル基板、電界放出型陰極装置、フィールドエミッション表示装置及びその製造方法 - Google Patents

GaN単結晶基板、窒化物系半導体エピタキシャル基板、電界放出型陰極装置、フィールドエミッション表示装置及びその製造方法 Download PDF

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Masanori Ueno
昌紀 上野
Eiryo Takasuka
英良 高須賀
Chen Pen
チェン ペン
Chua Suujin
チュア スージン
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Abstract

【課題】基板のドット構造の形成が容易なGaN単結晶基板、窒化物系半導体エピタキシャル基板、電界放出型陰極装置、フィールドエミッション表示装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るGaN単結晶基板10は、少なくともNHを含むガス雰囲気中で熱処理されて、表面12aに微細突起14A,14Bが複数形成されていることを特徴とする。このGaN単結晶基板10においては、熱処理によって基板表面12aにドット構造の微細突起14A,14Bが形成されている。すなわち、このGaN単結晶基板14は、簡便な熱処理のみでドット構造が形成され、特別な表面処理や多くの工程を必ずしも必要とはしないため、ドット構造を容易に形成することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、GaN単結晶基板、窒化物系半導体エピタキシャル基板、電界放出型陰極装置、フィールドエミッション表示装置及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、窒化物系化合物半導体において、ドット状の構造で代表される低次元構造が注目されている。ドット構造の応用として、電界放出型陰極素子や青紫色量子ドットレーザが挙げられる。
【0003】
電界放出型陰極素子は、ドット状の陰極に電圧を印加して電子を放出させるものであり、放出させた電子を蛍光板に照射することによって表示装置に利用することができる。これは、原理上CRT(Cathode Ray Tube)と同じであるため、高い表示品質が得られると同時に、装置の薄型化及び表示面積の拡大が容易であり、将来のフラットパネルディスプレイとして期待されている。ここで、電界放出型陰極素子に求められる要素として、エミッション電流の大きさがある。そして、このエミッション電流の増大には、例えば、小さな表面仕事関数(すなわち、小さな電子親和力)、鋭い先端形状等が必要である。
【0004】
まず、小さな電子親和力を有する材料としては、電子親和力が0(若しくは負)といわれているAlNが好適である。また、AlNに限らず、n型の導電性を得やすい上に非常に安定であるとの理由から、窒化物系化合物半導体(例えば、GaNなど)が電界放出型陰極素子に適している。
【0005】
また、陰極のドット構造が鋭い先端形状であれば、その先端部に電界が集中する。ドット構造をこのような形状にするために、様々な方法が試みられている。例えば、Proc. Topical Workshop on III−V nitrides, p.181(Nagoya, 1985)では、GaNエピタキシャル層の上にドット状の開口部を有するSiOマスクを形成し、その上にGaNを選択成長させることによってドット状GaNを形成している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した従来の方法には、次のような課題が存在している。すなわち、ドット構造の形成には多くの工程(例えば、表面の濡れ性を低減させる処理工程)が必要であり、非常に煩雑であるという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、基板のドット構造の形成が容易なGaN単結晶基板、窒化物系半導体エピタキシャル基板、電界放出型陰極装置、フィールドエミッション表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るGaN単結晶基板は、少なくともNHを含むガス雰囲気中で熱処理されて、表面に微細突起が複数形成されていることを特徴とする。
【0009】
このGaN単結晶基板においては、熱処理によって基板表面にドット構造の微細突起が形成されている。すなわち、このGaN単結晶基板は、簡便な熱処理のみでドット構造が形成され、特別な表面処理や多くの工程を必ずしも必要とはしないため、ドット構造を容易に形成することができる。
【0010】
また、微細突起は、略円錐形状であることが好ましい。このように、微細突起が略円錐形状となることにより、突起先端に電界が集中し電子が放出されやすくなる。
【0011】
また、微細突起は、n型の導電性を有するGaNで構成されていることが好ましい。例えば、このようなGaN単結晶基板を電界放出型陰極に応用したときに突起表面に効率的に電子を供給できるので、エミッション電流を増加することができる。
【0012】
本発明に係る窒化物系半導体エピタキシャル基板は、上記GaN単結晶基板の微細突起が形成された表面上に、AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)層が積層されていることを特徴とする。
【0013】
この窒化物系半導体エピタキシャル基板においては、上述したGaN単結晶基板が採用されており、このGaN単結晶基板においては簡便な熱処理のみでドット構造が形成され、特別な表面処理や多くの工程を必ずしも必要とはしない。そのため、この窒化物系半導体エピタキシャル基板も容易に作製することができる。また、この窒化物系半導体エピタキシャル基板においては、AlGaInN層が、例えば、AlGaN(x+y=1)であれば、電界放出型陰極装置に適した積層構造となる。
【0014】
また、AlGaInN層は、n型の導電性を有することが好ましい。例えば、このような窒化物系半導体エピタキシャル基板を電界放出型陰極装置に応用すると、微細突起の表面に効率的に電子を供給することができるので、電界放出型陰極装置のエミッション電流を高めることができる。
【0015】
本発明に係る電界放出型陰極装置は、上記GaN単結晶基板、若しくは窒化物系半導体エピタキシャル基板の裏面に陰極電極が取り付けられて形成された陰極基板と、陰極基板から放出される電子が入射する陽極電極とを備えることを特徴とする。
【0016】
この電界放出型陰極装置においては、陰極基板から平板状陽極電極へと電子が移動する。その際、陰極基板の窒化物系半導体エピタキシャル基板の微細突起の先端部に電界が集中して、該微細突起から電子が放出される。
【0017】
本発明に係るフィールドエミッション表示装置は、上記GaN単結晶基板、若しくは窒化物系半導体エピタキシャル基板の裏面に陰極電極が取り付けられて形成された陰極基板と、陰極基板から放出される電子が入射して蛍光する陽極プレートとを備えることを特徴とする。
【0018】
このフィールドエミッション表示装置においては、上述したGaN単結晶基板、若しくは窒化物系半導体エピタキシャル基板が採用されており、このGaN単結晶基板及び窒化物系半導体エピタキシャル基板においては簡便な熱処理のみでドット構造が形成され、特別な表面処理や多くの工程が必ずしも必要ではない。そのため、このフィールドエミッション表示装置も容易に製造することができる。また、この装置の表示面の拡大化及び平坦化を図ることが可能である。
【0019】
本発明に係るGaN単結晶基板の製造方法は、表面が研磨されたGaN単結晶基板を、少なくともNHを含むガス雰囲気中で熱処理することにより、表面に複数の微細突起を形成することを特徴とする。
【0020】
このGaN単結晶基板の製造方法においては、熱処理によって基板表面にドット構造の微細突起が形成される。すなわち、このGaN単結晶基板の製造方法によれば、簡便な熱処理のみで基板表面にドット構造を形成することができ、特別な表面処理や多くの工程が必ずしも必要ではしないため、ドット構造を有する基板を容易に作製することができる。
【0021】
また、熱処理の際、GaN単結晶基板の基板温度が985℃以下であることが好ましい。GaN単結晶基板の基板温度を985℃以下にして所定の熱処理を施すことで、上述した微細突起を基板表面に確実に形成することができる。
【0022】
また、ガスには、Hガスが含まれていることが好ましい。このように、熱処理時にHガスを補充することでGaNの分解が促進されて、上記微細突起が形成されやすくなる。
【0023】
また、ガスには、Nガスが含まれていることが好ましい。このように、熱処理時にNガスを補充して窒素分圧を増加させることにより、上記微細突起が安定して存在しやすい状態となる。そのため、微細突起の数を容易に増加させることができる。
【0024】
また、GaN単結晶基板がn型の導電性を有しており、熱処理の際、ガスにGaN内でドナーとなる不純物を含むガスを添加することが好ましい。この場合、微細突起が導電性を帯びさせることができる。
【0025】
また、不純物を含むガスは、SiH、Si、GeH、O、HOのうち、少なくとも一つを含むことが好ましい。この場合、Si,Ge,Oが微細突起に取り込まれてドナーとして働き、微細突起がn型の導電性を帯びることとなる。
【0026】
本発明に係る窒化物系半導体エピタキシャル基板の製造方法は、上記GaN単結晶基板の製造方法によって得られるGaN単結晶基板の微細突起が形成された表面上に、AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)層を積層することを特徴とする。
【0027】
この窒化物系半導体エピタキシャル基板の製造方法においては、上述したGaN単結晶基板の表面上にAlGaInN層が積層されている。すなわち、簡便な熱処理のみでドット構造が形成されたGaN単結晶基板が採用することで、窒化物系半導体エピタキシャル基板を容易に作製することができる。また、この窒化物系半導体エピタキシャル基板の製造方法において、AlGaInN層を、例えば、AlGaN(x+y=1)にすれば、電界放出型陰極装置に適した積層構造にすることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明に係るGaN単結晶基板、窒化物系半導体エピタキシャル基板、電界放出型陰極装置、フィールドエミッション表示装置及びその製造方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0029】
図1は、本実施形態に係るGaN単結晶基板の概略断面図であり、図2は、図1のGaN単結晶基板の原子間力顕微鏡による俯瞰写真である。また、図3は、図1のGaN単結晶基板の原子間力顕微鏡による平面写真であり、図4は、図3のA−A′断面図である。
【0030】
図1〜図4に示すように、GaN単結晶基板10は、平坦な基板12の基板表面12a上に円錐形状の突起(微細突起)14Aが複数形成されている。この突起14Aは、後述の表面熱処理により形成されるものであり、それぞれの高さは10〜20nm程度である。また、この突起14Aの断面は、ほぼ2等辺三角形となっている。さらに、突起14Aの基板表面12aにおける略円形の接触面12bの直径Dは、200〜800nm程度となっている。
【0031】
また、GaN単結晶基板10に形成される突起の別の態様を図5〜7に示す。図5は、上述した突起14Aとは異なる形状の突起(微細突起)14Bが形成されたGaN単結晶基板の原子間力顕微鏡による俯瞰写真である。また、図6は、図5のGaN単結晶基板の原子間力顕微鏡による平面写真であり、図7は、図6のB−B′断面図である。
【0032】
図5〜7に示すように、GaN単結晶基板10の表面12a上には、突起14Aよりも鋭い突起14Bが形成されている。この突起14Bは、突起14Aと同等の熱処理(後述)によって形成されるものであり、その高さは40〜80nm程度である。また、この突起14Bの断面は、突起14Aの断面同様に2等辺三角形をしており、この2等辺三角形の先端角は、突起14Aのそれよりも鋭い(40〜60度程度)。さらに、突起14Bの基板表面12aにおける略円形の接触面12bの直径Dは50〜100nm程度となっている。
【0033】
次に、GaN単結晶基板10の製造工程を説明する。
(A)まず、GaN単結晶である表面が平坦な基板12を製造し、製造された基板12を研磨材を用いて表面研磨し、純水等を用いて液体洗浄する(単結晶基板製造工程)。
(B)次に、基板12を所定の混合ガスG1の雰囲気内に配置し、基板温度T1で時間t1の間、加熱する(表面処理工程)。
【0034】
以下、詳説する。
【0035】
まず、単結晶基板製造工程として、製造された基板12を、研磨材を用いて表面研磨し、純水等を用いて液体洗浄する。この液体洗浄には、純水の他、有機溶剤、酸、アルカリ溶液を用いてもよい。製造された基板12の表面には、機械研磨ダメージによる加工変質層が存在するが、これは好適な表面処理によって除去する。
【0036】
次に、表面処理工程として、基板12をNHを含む混合ガスG1雰囲気中で熱処理する。この熱処理により、基板表面12a上には上述した突起14Aまたは突起14Bが形成される。このように、所定の熱処理により基板表面12aに突起14A,14Bが形成される過程は、次のように考えられる。
【0037】
まず、基板12上にNHガスが供給されると、NHがNとHとに分解される。そして、分解したHがGaNと反応し、Ga原子が生成される。これらの反応は、下記式(1)、(2)で表される。
【数1】
Figure 2004250314
【数2】
Figure 2004250314
【0038】
そして、Ga原子は、高温化で基板表面12aをマイグレーションし、NHと反応してGaN核が形成され、突起14A,14Bが形成されることとなる。なお、この反応は下記式(3)で表される。
【数3】
Figure 2004250314
【0039】
以上のような熱処理によって突起14A,14Bが基板表面12aに形成される。
【0040】
また、表面熱処理工程の際、熱処理温度は、上述の各反応の速度、Ga原子のマイグレーション長さ及びGa原子の脱離速度等に影響を及ぼす。つまり、基板温度T1が高いほど、Ga原子のマイグレーション距離は長くなるので、Ga原子は研磨傷部分等の表面欠陥に到達して、そこに堆積しやすくなる。これに対して、基板温度T1が低いと、Ga原子が研磨傷部分等に到達する前にNHと反応してGaNが生成し核発生するので、突起14A,14Bが形成される。このような機構で基板表面12aに突起14A,14Bが形成されると考えられるが、それに適した温度を鋭意検討した結果、基板温度は985℃以下が好ましいことを発明者らは見出した。したがって、表面熱処理工程において、基板温度T1は985℃以下であることが好ましい。
【0041】
なお、上述した工程では、(2)式に示したとおり、GaNがHの存在下で分解して、Ga原子が形成されることが重要である。しかしながら、(1)式の反応速度は非常に遅く、1000℃でも数%のNHしかHとNとに分解されない。この程度のHの量では、上述の表面処理を進行させるには十分ではないため、表面熱処理工程において、混合ガスG1は、NHとHガスとの混合ガスであることが好ましい。
【0042】
また、混合ガスG1雰囲気中の窒素の分圧を高くすれば、形成された突起14A,14Bの熱分解速度を下げることができる。すなわち、突起14A,14Bが安定的に基板表面12aで核生成して、突起14A,14Bが微細になりやすくなると共に、多数形成されやすくなる。ただし、Nは反応に寄与できる活性な窒素ラジカルを供給しにくいので、NHの供給は不可欠である。そのため、表面熱処理において、混合ガスG1は、NHとNとの混合ガスであることが好ましい。なお、以上の理由により、混合ガスG1として、NH、H及びNの混合ガスを採用することがさらに好ましいことはいうまでもない。
【0043】
なお、図2〜図4に示した突起14Aは、基板温度985℃、NH=11slm、N=5slm、圧力200Torr、5minという条件下で形成される。一方、図5〜図7に示した突起14Bは、基板温度985℃、NH=11slm、H=5slm、圧力200Torr、5minという条件下で基板12上に形成される。
【0044】
以上詳細に説明したように、本発明に係る実施形態によれば、ドット構造として多数の微細な突起(突起状GaN)14A、14Bを、熱処理のみの簡単な工程で基板表面12aに形成できるため、従来のドット構造の製造方法に比べて、ドット構造を容易に形成することができる。
【0045】
なお、GaN単結晶基板10に導電性が有れば、基板10の裏面に1つの電極を形成することができるため、素子面積を低減することができる等の効果がある。出願人らによって開発されたこのGaN単結晶基板10は、不純物を制御することにより、GaN単結晶基板10にn型の導電性を持たせることができた。そして、GaN単結晶で構成された基板12の導電型がn型である場合には、表面熱処理時に、GaNにとってn型となる不純物を含むガスを混合ガスG1中に添加して、突起14A,14Bをn型の導電性を持たせることにより、GaN単結晶基板10が応用される各種窒化物系化合物半導体装置の特性を向上させることが可能である。
【0046】
ここで、GaN単結晶基板10を電界放出型陰極装置に応用する場合について説明する。図8に示すように、電界放出型陰極装置20は、上述したGaN単結晶基板10の裏面12cに陰極電極22が取り付けられた陰極基板24と、この陰極基板24と所定距離だけ離間して対面する平板状陽極電極26とを備えている。この電界放出型陰極装置においては、陰極基板24のGaN単結晶基板10に形成された突起14A,14Bから電子が放出され、その電子が陽極電極26に到達する(図中の破線矢印)。陰極基板24のGaN単結晶基板10の突起14A,14Bは略円錐形状であるため、突起先端部に電界が集中し、電子が放出されやすい。なお、上述したようにGaN単結晶基板10の表面熱処理時に、GaNにとってn型となる不純物を含むガスを混合ガスG1中に添加すれば、突起14A,14Bがn型となる。それにより、電界放出型陰極装置20において、突起14A,14Bに効率的に電子を供給できるようになり、高いエミッション電流を実現することができる。この混合ガスG1に添加するドーピングガスとしては、SiH、Si、GeH、O、HOが適当であり、Siや、Geや、Oが突起14A,14Bに取り込まれてドナーとして働き、突起14A,14Bがn型の導電性を帯びることとなる。いずれも極微量で結晶中に取り込まれてn型として働くので、ドーピング量を制御するには、水素等で希釈したガスをマスフローコントローラ等で正確に流量制御して添加する必要がある。
【0047】
また、図8に示した電界放出型陰極装置20を、図9及び図10に示したフィールドエミッション表示装置30に応用してもよい。図9は、フィールドエミッション表示装置30を示した概略構成図であり、図10は、図9のフィールドエミッション表示装置30の要部(X)拡大図である。すなわち、フィールドエミッション表示装置30は、上述した陰極基板24と該陰極基板24にマトリクス状に配置された陰極電極31とゲート電極32とを有する陰極プレート33と、この陰極プレート33と所定距離だけ離間して対面する陽極プレート34とを備えている。ゲート電極32は、絶縁膜35を介して陰極基板24上に載置されており、複数の小孔36を有している。なお、この小孔36の底には上述した陰極基板24の突起14A,14Bが露出している。また、陽極プレート34は、透光性を有すると共に、陰極プレート33のマトリクスに対応したマトリクス状セル38に区分けされている。これら各セル38には、R、G、Bの蛍光材料が塗布されている。あらかじめ陽極プレート34には高電界V1が印加されており、陰極電極31とゲート電極32との間に電圧V2が印加されると、お互いの交点に対応した穴から電子が放出され、陽極プレート34のセル38に衝突し、蛍光が発せられる。このようにフィールドエミッション表示装置30には、上述した電界放出型陰極24が採用されており、この電界放出型陰極24のGaN単結晶基板においては簡便な熱処理のみで突起(ドット構造)14A,14Bが形成され、特別な表面処理や多くの工程が必ずしも必要ではないため、容易に製造することができる。また、陰極基板24を複数並べることにより大型で平坦な陰極プレート33を作製可能なため、この装置30の陽極プレート(表示面)34の拡大化及び平坦化を図ることが可能である。
【0048】
次に、GaN単結晶基板10上に、適切な気相成長法(例えば、OMVPE法など)を用いて、AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)をヘテロ成長させた窒化物系半導体エピタキシャル基板について、図11を参照しつつ説明する。
【0049】
図11に示すように、窒化物系半導体エピタキシャル基板40は、上述したGaN単結晶基板10の突起14A,14Bが形成された表面12aに、AlGaIn1−x−yN層42が積層されている。すなわち、基板表面12aがAlGaIn1−x−yN層42で覆われている。それにより、各種窒化物系化合物半導体装置により適した形態となっている。より具体的に説明すると、例えば、GaN単結晶基板10上にAlGaN(x+y=1)42を形成すれば、電界放出型陰極装置(図8参照)に適した積層構造となる。すなわち、電界放出型陰極装置20のGaN単結晶基板10に代えて、窒化物系半導体エピタキシャル基板40を用いることにより、電子を放出しやすくエミッション電流を高くすることができるためである。これは、AlNの電子親和力はほぼ0といわれているので、AlGaNの電子親和力も0に近づくという知見に基づいている。なおこの場合、エミッション電流を高めるために、AlGa1−xN層42にn型の導電性をもたせることが好ましい。
【0050】
以上説明したような窒化物系半導体エピタキシャル基板40は、表面12aに突起14が形成されたGaN単結晶基板10上に、AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)層42が形成されているため、GaN単結晶基板10においては簡便な熱処理のみで突起(ドット構造)14A,14Bが形成されている。そのため、GaN単結晶基板10のドット構造の形成に特別な表面処理や多くの工程を必ずしも必要とはしないため、この窒化物系半導体エピタキシャル基板40も、容易に作製することができる。
【0051】
【実施例】
GaN基板をMOCVD装置内で各種条件で熱処理した。使用したMOCVD装置60は、図12に模式的に示すように、基板面12aに対して垂直方向から原料ガスを噴射する縦型の成長炉である。この成長炉60は、原料供給口62a及び排気口62bが設けられた水冷外壁62と、この水冷外壁62内に配置され、設置される基板12を回転する試料台64と、下方から試料台64を加熱するヒータ66とから構成されている。なお、符号68は、原料ガスが基板12に到達するまでに加熱されて反応してしまうのを防ぐために、原料ガスを冷却するための水冷ジャケットである。熱処理時のNHは、11slm、HあるいはNは、5slmとした。
【0052】
熱処理後に表面を原子間力顕微鏡で観察した結果を表1に示す。
【表1】
Figure 2004250314
【0053】
表1から明らかなように、985℃以下の熱処理ではいずれも突起14A,14Bの発生が認められた。一方、990℃以上の熱処理では、基板表面に小さな孔(ピット)が形成されたり、基板表面が平坦になったりし、突起14A,14Bの形成は認められなかった。なお、表1より、突起の直径Dや高さは熱処理条件を選ぶことにより、所望の値にすることができることがわかる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、基板のドット構造の形成が容易なGaN単結晶基板、窒化物系半導体エピタキシャル基板、電界放出型陰極装置、フィールドエミッション表示装置及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係るGaN単結晶基板の概略断面図である。
【図2】図1のGaN単結晶基板の原子間力顕微鏡による俯瞰写真である。
【図3】図1のGaN単結晶基板の原子間力顕微鏡による平面写真である。
【図4】図3のA−A′断面図である。
【図5】異なる形状の突起が形成されたGaN単結晶基板の原子間力顕微鏡による俯瞰写真である。
【図6】図5のGaN単結晶基板の原子間力顕微鏡による平面写真である。
【図7】図6のB−B′断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る電界放出型陰極装置を示す概略構成図である。
【図9】本発明の実施形態に係るフィールドエミッション表示装置を示す概略構成図である。
【図10】図9に示したフィールドエミッション表示装置の要部(X)拡大図である。
【図11】本発明の実施形態に係る窒化物系半導体エピタキシャル基板の概略断面図である。
【図12】本発明の実施例に使用されたMOCVD装置の成長炉の模式図である。
【符号の説明】
10…GaN単結晶基板、12…基板、12a…表面、14A,14B…突起、20…電界放出型陰極装置、22…陰極、24…陰極基板、26…陽極プレート、30…フィールドエミッション表示装置、33…陰極プレート、34…陽極プレート、40…窒化物系半導体エピタキシャル基板、42…AlGaInN層、60…MOCVD装置。

Claims (14)

  1. 少なくともNHを含むガス雰囲気中で熱処理されて、表面に微細突起が複数形成されていることを特徴とするGaN単結晶基板。
  2. 前記微細突起が、略円錐形状であることを特徴とする請求項1に記載のGaN単結晶基板。
  3. 前記微細突起は、n型の導電性を有するGaNで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のGaN単結晶基板。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のGaN単結晶基板の前記微細突起が形成された表面上に、AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)層が積層されていることを特徴とする窒化物系半導体エピタキシャル基板。
  5. 前記AlGaInN層は、n型の導電性を有することを特徴とする請求項4に記載の窒化物系半導体エピタキシャル基板。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のGaN単結晶基板、若しくは窒化物系半導体エピタキシャル基板の裏面に陰極電極が取り付けられて形成された陰極基板と、
    前記陰極基板から放出される電子が入射する陽極電極とを備えることを特徴とする電界放出型陰極装置。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のGaN単結晶基板、若しくは窒化物系半導体エピタキシャル基板の裏面に陰極電極が取り付けられて形成された陰極基板と、
    前記陰極基板から放出される電子が入射して蛍光する陽極プレートとを備えることを特徴とするフィールドエミッション表示装置。
  8. 表面が研磨されたGaN単結晶基板を、少なくともNHを含むガス雰囲気中で熱処理することにより、前記表面に複数の微細突起を形成することを特徴とするGaN単結晶基板の製造方法。
  9. 前記熱処理の際、前記GaN単結晶基板の基板温度が985℃以下であることを特徴とする請求項8に記載のGaN単結晶基板の製造方法。
  10. 前記ガスには、Hガスが含まれていることを特徴とする請求項8又は9に記載のGaN単結晶基板の製造方法。
  11. 前記ガスには、Nガスが含まれていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載のGaN単結晶基板の製造方法。
  12. 前記GaN単結晶基板がn型の導電性を有しており、
    前記熱処理の際、前記ガスにGaN内でドナーとなる不純物を含むガスを添加することを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載のGaN単結晶基板の製造方法。
  13. 前記不純物を含むガスは、SiH、Si、GeH、O、HOのうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項12に記載のGaN単結晶基板の製造方法。
  14. 請求項8〜13のいずれか一項に記載のGaN単結晶基板の製造方法によって得られるGaN単結晶基板の前記微細突起が形成された表面上に、AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)層を積層することを特徴とする窒化物系半導体エピタキシャル基板の製造方法。
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