JP2007253611A - インクジェット記録ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インク吐出面の撥インク性が長期間維持される高耐久性のインクジェット記録ヘッドを提供する。
【解決手段】フッ素樹脂の水性分散液と水溶性ポリアミドイミドとを含む塗布液をインクジェット記録ヘッドのインク吐出面に塗布し、焼成する。
【選択図】図2

Description

本発明はインクジェット記録ヘッドの製造方法に関する。
インク吐出口からインクを微細な液滴状に吐出することにより画像記録を行うためのインクジェットヘッドは、常に安定したインク吐出により高品質な画像記録を実現するため、ノズル吐出口から吐出されるインクの直進性が高度に要求される。このノズル吐出口の周辺にインクが付着すると、インク吐出口から吐出されるインクに曲がりが発生し、インクの直進性が損なわれてしまう。このため、インク吐出面であるノズルプレートの表面に撥インク膜を形成することによって撥インク性を付与し、ノズル吐出口の周縁部にインクが付着しないようにしてインク吐出時の直進性を損ねないようにすることが行われている。撥インク膜としては撥インク性に優れたフッ素樹脂膜があるが、撥インク性に優れているフッ素樹脂塗膜はその表面エネルギーが低いために、基材への密着性が低い。基材への密着性が低いと、撥インク層が脱落しやすくなり、安定した吐出を維持することが困難となり、ヘッドの耐久性が低くなるという問題がある。
そのために、フッ素樹脂塗膜の基材密着性を向上する方法が提案されている。
例えば、特許文献1では、感光性ガラスにより形成されたノズル面にポリアミド酸溶液及びポリイミド溶液の少なくとも一方を塗装、乾燥して形成したプライマー層の上にトップコート用組成物として、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体の水性分散液を塗装し、しかる後に、焼成してインクジェット記録ヘッドを製造する方法が提案されている。
同様に、特許文献2においても、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド及び/又はポリイミド、フッ素樹脂、金属粉末を含有する組成物でプライマー層を形成することが提案されている。
また、特許文献3では、ポリアリレンサルファイド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及び/又はポリイミド樹脂並びにフッ素樹脂の少なくとも3成分を分散させた塗布組成物が提案されている。
特開昭63−126758号公報 特開平6−264000号公報 特開昭53−74532号公報
特許文献1、2のように、プライマー層を形成し、その上にフッ素樹脂層を形成する方法では、撥インク層形成工程がプライマー層の塗布工程とトップコート層の形成工程という2工程からなるために、工数が増え、製造コストが高くなるという問題がある。
また、ポリアミドイミド樹脂は通常水に溶解しないので、ポリアミドイミド樹脂を含む水性の塗布溶液は通常不均一系になるが、例えば、特許文献3のように不均一系の塗布液を用いた場合、塗布むらが生じやすく、インクジェット記録ヘッドに応用した場合、インク吐出性能にバラツキが出るという問題がある。
本発明は、インク吐出面に撥インク性を持たせる従来技術における前記の問題を解決し、安定したインク吐出性能を有し、高画質の画像形成を可能にする高耐久性のインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、水溶性ポリアミドイミドを用いることにより、単一の塗布工程で密着性に優れたフッ素樹脂塗膜を形成し、前記目的を達成したものであり、下記の発明により本発明の目的が達成される。
1.
フッ素樹脂の水性分散液と水溶性ポリアミドイミドとを含む塗布液をインクジェット記録ヘッドの少なくともインク吐出面に塗布した後に、熱処理することにより、前記インク吐出面に撥インク層を形成することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
2.
前記熱処理を、300℃〜400℃の範囲内の温度で行うことを特徴とする前記1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
3.
前記フッ素樹脂がテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなることを特徴とする前記1又は前記2に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
4.
前記塗布液は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
5.
前記塗布液を塗布する被塗布面を活性化処理した後に、前記塗布液を塗布することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
6.
前記インク吐出面はノズル形成部材に形成されることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
7.
前記水溶性ポリアミドイミドは、ポリアミドイミドを塩基性極性溶媒に溶解させた塩基性極性溶液中に塩基性化合物を混合し、水を加えることにより得られたものであることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
本発明では、フッ素樹脂の水性分散液と水溶性ポリアミドイミドとを含む塗布溶液をインク吐出面に塗布して、インク吐出面に撥インク性を有する層を形成しているので、簡便で短時間の処理、即ち、ワンコート処理によりノズル面に撥インク層が設けられ、しかも、均一で密着性の高い撥インク層が形成される。従って、本発明により安定したインク吐出性能を有する高耐久性のインクジェット記録ヘッドを低コストで製造することが可能となる。
以下に、実施の形態により本発明を説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
撥インク層を形成する物質として、フッ素樹脂が用いられ、本発明の塗布液はフッ素樹脂の水性分散液を含有する。
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を用いることが出来るが、FEPは臨界表面張力が低く、撥インク性に優れており、また、熱処理温度である300℃〜400℃における溶融粘度が低く、均一な膜形成が可能な点で好ましい。
撥インク層のノズル面への密着性を上げる物質として、本発明においては、水溶性ポリアミドイミド(PAI)が用いられる。PAIは次の一般式1で表される。
Figure 2007253611
式中A、Bは有機基である。
通常PAIは水に溶解しない。このために、本発明においては、PAIを塩基性極性溶液中で、アミン化合物等の塩基性化合物と混合・攪拌し、水を徐々に加えることにより、水溶性のPAIを得た。
更に検討を行った結果、塗布液に界面活性剤を加えると、撥インク層の撥インク性を低下させることなく皮膜の密着性を向上することができ、撥インク層の耐久性を更に向上させることができる。
界面活性剤としては、特にポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いると、撥インク層の耐久性をさらに向上することができる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、次の一般式2で表される。
Figure 2007253611
Rは炭素数6以上の長鎖アルキル基であり、芳香環を有していてもよい。また、n=10〜30程度の化合物が好ましい。
撥インク層を形成する塗布方法としては、スプレーコーティング、スピンコーティング、はけコーティング、ディップコーティング、ワイヤーバーコーティング等を用いることができるが、本発明においては、ワンコート、即ち、1回の塗布工程で、密着性のよい皮膜を形成することが可能であり、効率的な塗布が可能となる。
塗布・乾燥後、塗布層は熱処理される。処理温度としては、300℃〜400℃が好ましい。
プライマー層を形成した後に、プライマー層上に撥インク性の層を形成する方法では、撥インク層形成工程に時間がかかるとともに、十分な密着性を持った皮膜を形成することが困難である。即ち、プライマー層とフッ素樹脂層との間に境界が存在するので、フッ素樹脂層は比較的密着性が低いためである。
本発明におけるように、水溶性PAIを含有する均一系の塗布液を用いた場合、基材と比較的結合力があるPAIは、基材表面付近に偏在し、フッ素樹脂が表面付近に偏在する層構成となるが、層中に境界が出来ないために、密着性がより向上すると考えられる。
本発明は、また、水系の塗布液を用いているので、環境の面、安全性の面及び経済性の面における利点を有する。
なお、基材であるノズル形成部材の塗布液に対する濡れ性を向上するために、塗布に先立って、基材表面を活性化処理することもできる。
活性化処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、オゾン処理、UV処理、エキシマレーザ処理等が用いられる。
図1、2はインクジェット記録ヘッドの一例を示す図であり、図1は概観斜視図、図2は断面図である。同図において、1はインクジェット記録ヘッド、11はインクチューブ、12はノズル形成部材(ノズルプレート)、13はノズル、14はカバープレート、15はインク供給口、16は基板、17は隔壁である。そして、インクチャネル18が隔壁17、カバープレート14及び基板16によって形成されている。
インクジェット記録ヘッド1は、カバープレート14と基板16の間に、電気・機械変換手段であるPZT等の圧電材料からなる複数の隔壁17(一部のみが示されている)で隔てられたインクチャネル18(一部のみが示されている)が多数並設されたせん断モード(シェアモード)タイプの記録ヘッドである。
ノズル形成部材12としては、機械的強度が高く、耐インク性を備え、寸法安定性に優れた、例えば、セラミック、金属、ガラス或いは樹脂を用いることができる。ガラスとしては、例えば石英、合成石英、高純度ガラス等から適宜選べば良く、樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等から適宜選べば良い。ノズル形成部材12の厚さは50μm〜500μm程度が好ましい。
駆動信号により隔壁17が変形し、インクチャネル18の容積を変化させて、インクをノズル13から吐出するとともに、インクチャネル18にインクを流入させる。
撥インク層12aはノズル形成部材12の外面、即ち、インク吐出面に 形成される。
撥インク層12aの形成方法としては、前記に説明したように、従来周知の塗布方法により形成されるが、撥インク層12aを形成した後にレーザビームを照射してノズル13が形成されるか又はノズル形成後に撥インク層12aが形成される。
インクジェット記録ヘッド1は、隔壁17によりインクチャネル18を形成するとともに、ヘッド本体Hの前面に、ノズル13を形成したノズル形成部材12を接着することにより作成される。
(1)実施例1
FEPの水性分散液と水溶性PAIを水中に添加し、塗布液を調整した。なお、FEPの固形分含有量は10質量%、水溶性PAIの固形分含有量は6質量%であり、FEPの水性分散液としては、ダイキン工業(株)製のND−1を使用し、水溶性PAIとしては、日立化成工業(株)製のHPC−1000を使用した。
(2)実施例2
実施例1で調整した塗布液にポリエチレングリコールモノドデシルエーテルを添加して塗布液を調整した。なお、ポリエチレングリコールモノドデシルエーテルの含有量を10質量%とした。
(3)実施例3
FEPの水性分散液と水溶性PAIを水中に添加し、塗布液を調整した。なお、FEPの水性分散液としては、ダイキン工業(株)製のND−1を使用し、FEPの固形分含有量は20質量%とした。また、水溶性PAIは、PAI樹脂2gをNMP1gに溶解させた溶液にN−メチルアミノエタノール0.2gを混合させ、さらに70℃で撹拌しながら水を1滴ずつ加えていき、均一系を保ったまま水を合計8g滴下し、1時間撹拌させ合成した。塗布液に用いた水溶性PAIの固形分含有量は30質量%とした。
(4)比較例
FEPの水性分散液を水で希釈し、塗布液を調整した。FEPの固形分含有量を10質量%とした。
実施例1〜3及び比較例で調整した塗布液をワイヤーバーを用いて、膜厚が50μm程度になるようにノズル形成部材(厚さ75μmのポリイミド)に塗布した。
塗布乾燥後、350℃で4時間熱処理して、撥インク層を形成した。
以上の処理により撥インク層を形成した試料について、不織布で100回擦り、後退接触角の初期値と100回摺擦後における値を協和界面科学株式会社製の接触角計CA−Xで測定した。
後退接触角は下記のインク1、2、3について測定した。
・インク1
分散染料(C.I.Disperse Yellow) 5質量%
分散剤(花王(株)製デモールC) 0.5質量%
グリセリン 20質量%
尿素 3質量%
イオン交換水 71.5質量%
・インク2
分散顔料(C.I.Pigment Yellow) 2質量%
バインダー樹脂(スチレン−アクリル酸共重合体) 5質量%
ジエチレングリコールジエチルエーテル 88質量%
N−ピロリドン 5質量%
・インク3
分散顔料(カーボンブラック) 5質量%
飽和炭化水素系溶剤(C15〜C19を中心とする直鎖及び分岐構造)
95質量%
測定結果を表1に示す。
Figure 2007253611
インクジェット記録ヘッドにおいては、インク吐出面の残留インクによる濡れがインク吐出性能に大きく影響し問題となるために、後退接触角が大きいことが重要である。表1に示すように、実施例1〜3では比較例よりも100回摺擦後の後退接触角が大きく良好な撥インク性が維持されていることが分かる。
特に、実施例2、3においては、インク3に対する後退接触角が低下することなく、撥インク性が維持されている。
このように、インク吐出面に本発明の撥インク層を設けたインクジェット記録ヘッドは良好なインク吐出性能を長期間維持することが可能となり、耐久性の高いインクジェット記録ヘッドを提供することが可能となった。
インクジェット記録ヘッドの一例の斜視図である。 インクジェット記録ヘッドの一例の断面図である。
符号の説明
1 インクジェット記録ヘッド
12 ノズル形成部材
12a 撥インク層

Claims (7)

  1. フッ素樹脂の水性分散液と水溶性ポリアミドイミドとを含む塗布液をインクジェット記録ヘッドの少なくともインク吐出面に塗布した後に、熱処理することにより、前記インク吐出面に撥インク層を形成することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  2. 前記熱処理を、300℃〜400℃の範囲内の温度で行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  3. 前記フッ素樹脂がテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  4. 前記塗布液は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  5. 前記塗布液を塗布する被塗布面を活性化処理した後に、前記塗布液を塗布することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  6. 前記インク吐出面はノズル形成部材に形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  7. 前記水溶性ポリアミドイミドは、ポリアミドイミドを塩基性極性溶媒に溶解させた塩基性極性溶液中に塩基性化合物を混合し、水を加えることにより得られたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
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