JP4416489B2 - インクジェットヘッド及び画像記録装置 - Google Patents

インクジェットヘッド及び画像記録装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4416489B2
JP4416489B2 JP2003421013A JP2003421013A JP4416489B2 JP 4416489 B2 JP4416489 B2 JP 4416489B2 JP 2003421013 A JP2003421013 A JP 2003421013A JP 2003421013 A JP2003421013 A JP 2003421013A JP 4416489 B2 JP4416489 B2 JP 4416489B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
recording liquid
ink
nozzle
recording
nozzle plate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003421013A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005178132A (ja
Inventor
壽一 古川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ricoh Co Ltd filed Critical Ricoh Co Ltd
Priority to JP2003421013A priority Critical patent/JP4416489B2/ja
Publication of JP2005178132A publication Critical patent/JP2005178132A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4416489B2 publication Critical patent/JP4416489B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Description

本発明は、インクジェットヘッド及び画像記録装置に関し、さらに詳しくは、撥インク性、滑インク性を示す吸着防止層と記録液の組み合わせが最適なはじき性を示すようにノズル面の材質を決定するようにしたインクジェットヘッド及び該インクジェットヘッドを搭載した画像記録装置に関する。
複数のノズルを備えたインクジェットヘッドを主走査方向に移動させながらインク滴を吐出させることと、記録媒体を副走査方向に移動させることとによって、記録媒体上に画像データに従った画像を形成するようにしたインクジェット記録装置が多くの分野で使用されている。ノズルから記録液を吐出して記録媒体上に画像を形成する際、樹脂と顔料を含む記録液を用いることで、画質の良い印刷物が得られることが知られている。画質が良くなる理由は定かでないが、顔料が記録媒体に定着すると、樹脂が記録媒体の表面をコーティングして、印刷物に耐水性を付加するとともに、光沢性や彩度を向上するといった効果があると考えられている。また、記録媒体に対する吸着性も高く、印厚物は擦れても色落ちし難くなる。
しかし、このような樹脂成分と顔料を含む記録液は、記録媒体だけでなくインクジェットヘッドのノズル面にも特に吸着しやすいという不具合がある。したがって、ノズル面には吸着を防ぐ効果が特に高い吸着防止層を付与する必要がある。
従来技術として、このようなインクジェットヘッドのノズル面に対してインクの付着・吸着を防ぐために、ノズル面に撥インク性を有する吸着防止層を備える技術が知られている。
例えば、吸着防止層としては蓮の葉の構造に例えられるような微細な凹凸構造を有する層とする方法がある。
また、別の吸着防止層としては、ノズル面を固体表面張力の低い高分子でコーティングする、もしくはノズル面を形成する基材自体を固体表面張力の小さい高分子とする方法がある。代表的な固体表面張力の低い材料として、フッ素系樹脂、Ni−PTFE共析メッキ、シリコーン系樹脂が一般的に知られている。シリコーン樹脂は、撥水、発油性に優れるものの、それのみでは硬度が低い等の理由から、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等他の樹脂系との併用、または変性した材料を用いることが多い。
こうした固体表面張力の小さい材料でノズル面を覆うことで、付着した記録液をワイピングブレードで拭き取ることにより容易に除くことができる。このとき、ワイピングブレードを押し当てる圧力が強いほど、記録液の拭き取りが容易になる。しかし、強い押し当て圧力のワイピングブレードで繰り返してノズル面を摩擦すると、吸着防止層は磨耗したり、傷が付いたりして撥インク性を失ってしまう問題が生じる。
この問題を防ぐために、従来は吸着防止層を高硬度の材料で形成することが考えられてきた。特許文献1に記載された「インクジェット記録ヘッドの製造方法」によれば、金属製ノズルプレートのノズル面を硬いフッ素系高分子の共析メッキでコーティングし、PTFEの柔らかさをNi電鋳で補う技術が提案されている。また、特許文献2に記載された「インクジェット記録ヘッドの製造方法」によれば、ノズル面を硬いUV硬化型樹脂で覆い、固体表面張力を含有させたETFEの微粒子で低くした材料でコーティングする技術が提案されている。また、特許文献3に記載された「含フッ素エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた表面改質方法、インクジェット記録ヘッド、インクジェット記録装置」によれば、パーフルオロアルキル基を有するフッ素樹脂とエポキシ樹脂が重合したポリマーでノズル面を覆う技術が提案されている。このように、従来は撥インク性を示す材料の中でよりワイピング耐久性のある硬度の高い材料を追い求めてきた。
また、ノズル面におけるインクの除去しやすさについて着目した技術の例として、特許文献4、特許文献5、特許文献6に記載された「インクジェット記録装置」が知られている。しかし、特許文献4、特許文献5、特許文献6には、25μlの記録液を、ノズル面を覆う吸着防止層と同じ撥水膜とノズル面上に1mmに浮かせた状態の親水性のラバー部材で挟み込み、ラバー部材をある周回速度で動かしたとき、記録液がラバー部材に追随して移動する最大速度を測定した値を規定して、これをRMV(Receding Meniscus Velocity)値とする規定法が掲載されており、RMV値の大きな材料ほどワイピング時の液離れが良いとしている。
特開平4−339662号公報 特開2003−191478号公報 特開2003−191479号公報 特開2003−154671号公報 特開2003−191478号公報 特開2003−191479号公報
しかし、樹脂と顔料を含有する記録液のように液体の付着力が大きな作用を及ぼす記録液では、拭き取りに必要な負荷が大きいという問題がある。前記負荷に対して吸着防止層の硬度を高めることでワイピング耐久性を求めようとすると、同系の樹脂では硬度の高い疎水性樹脂ほど液体のはじき性が低くなる傾向があるため、このような吸着防止層を採用した場合、記録液の分散安定性を高めるために界面活性剤を多く含有する記録液や、画質を改善するために表面張力が15〜30mN/mといった低表面張力の記録液を採用することは難しい。
そこで、発明者等はこの問題を相対的な目で捉え、ワイピングブレードの押し当て圧力が小さくても十分に記録液を拭き取れる材料、すなわちノズル面におけるインクの除去しやすさについて着目し、液離れの良い材料でノズル面が覆われていれば、必要なワイピングブレードの押し当て圧力を低く抑えることができ、磨耗や擦傷といった問題が解決でき、ワイピング耐久性を確保できるという、従来の多くの報告例とは異なる発想で考えた。
ノズル面におけるインクの除去しやすさについては、特許文献4〜6に記載されているが、ここでは前述したように、25μlの記録液を、ノズル面を覆う吸着防止層と同じ撥水膜とノズル上に1mm浮かせた状態の親水性ラバー部材で挟み込み、ラバー部材をある周回速度で動かしたとき、記録液がラバー部材に追随して移動する最大速度を測定してこれをRMV値とし、RMV値の大きな材料ほど液離れが良いとしている。
しかし、インクジェットヘッドとは別に撥水膜を有していることから、ノズル孔に残る記録液とノズル面上の記録液が連通していることによるアンカー効果が考慮されておらず、さらに記録液に遠心力が加わる要素があるにもかかわらず、始めに記録液が置かれる回転の中心からの距離が規定されていない等、ノズル面のインクの除去しやすさを純粋に表したパラメータとするには不十分である。
本発明は、撥インク性、滑インク性を示す吸着防止層をインクジェットヘッドのノズルプレートの表面、つまりノズル面に形成する際、撥インク性、滑インク性の値が最適となり記録液の液離れが良くなるようにインクジェットヘッドのノズル面の材質を決定することを目的とする。
また、記録液の液離れが良いインクジェットヘッドを搭載することによって、インクジェットヘッドのノズル面にインクが付着することなく、被記録媒体の表面を汚すことのないインクジェットヘッド及び画像記録装置を提供することを目的とする。
更に、インクジェットヘッドのノズル面に対するワイピングブレードの押し当て圧力を低く抑え、ワイピング耐久性を確保し、また磨耗や擦傷といった問題を解決することを目的とする。
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、樹脂と顔料を含有する記録液を吐出するインクジェットヘッドであって、前記記録液を吐出するノズルが配置されているノズル面には、前記記録液に対してはじき性を有する吸着防止層を形成し、前記吸着防止層はフッ素樹脂シロキサンブロック型に重合したポリマー、またはアクリル樹脂シロキサンブロック型に重合したポリマーからなることを特徴とするインクジェットヘッド。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記記録液は、界面活性剤を含有することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のインクジェットヘッドを搭載したことを特徴とする画像記録装置であることを特徴とする。
本発明は、樹脂と顔料を含有する記録液を吐出するインクジェットヘッドのノズルが配置されているノズル面は、記録液に対して撥インク性、滑インク性を有する吸着防止層が形成されているので、記録液の液離れが良く、また吸着防止層は前記記録液25μlにおける転落角が20°以下のはじき性とすることにより、ワイピング耐久性を確保できるワイピング押し当て圧力の範囲で記録液を十分にノズル層から拭き取ることが可能となる。
また、記録液の液離れが良いインクジェットヘッドを搭載することによって、インクジェットヘッドのノズル面にインクが付着することなく、被記録媒体の表面を汚すことのないインクジェットヘッド及び画像記録装置を提供することが可能となる。
図1は、本発明の実施例のインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。
図1に示すインクジェット記録装置1は、本体筐体2の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ3、キャリッジ3に搭載した本発明を実施したインクジェットヘッド4、インクジェットヘッドへインクを供給するインクカートリッジ5等で構成される印字機構部等を収納する。本体筐体2の下方部には前方側から多数枚の記録用紙を積載可能な給紙カセットを抜き差し自在に装着することができ、また記録用紙を手差しで給紙するための手差しトレイを開倒することができ、給紙カセット或いは手差しトレイから給送される記録用紙を取り込み、印字機構部によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイに排紙する。
印字機構部は、左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド6と従ガイドロッド7とでキャリッジ3を主走査方向に摺動自在に保持し、キャリッジ3にはブラック(Bk)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のインク滴を吐出する本発明に係るインクジェットヘッド4を複数のノズルが主走査方向と交差する方向に配列して、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ3にはインクジェットヘッド4に各色のインクを供給するための各色のインクカートリッジ5を交換可能に装着している。
ここで、キャリッジ3は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド6に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド7に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ3を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ8で回転駆動する駆動プーリと従動プーリとの間にタイミングベルト9を張装し、このタイミングベルト9をキャリッジ3に固定しており、主走査モータ8の正逆回転によりキャリッジ3が往復駆動される。
一方、給紙カセットにセットした記録用紙をインクジェットヘッド4の下方側に搬送するために、給紙カセットから記録用紙を分離、給送するローラ群を有し、これらのローラ群はギヤ列11を介して副走査モータ10によって回転駆動され、記録用紙は副走査方向に搬送される。
記録時には、キャリッジ3を移動させながら画像信号に応じてインクジェットヘッド4を駆動することにより、停止している記録用紙にインク滴を吐出して1行分を記録し、記録用紙を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または記録用紙の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ記録用紙を排紙する。
図2は、インクカートリッジの外観を示す斜視図、図3は、インクカートリッジの内部構造を示す断面図である。
インクカートリッジ5を構成するカートリッジ筐体21には、インクが充填された多孔質体からなる液吸収体22が収容され、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持するように上蓋26によって密封される。カートリッジ筐体21の底部にはインクジェットヘッドへインクを供給する液供給口23が形成されており、カートリッジ筐体21の底部に嵌合するキャップ部材33に形成された液漏れ防止突部34がシールリング25を介して液供給口23を封止している。上蓋26には、大気開放口27が形成され、上蓋26に形成された溝28とシール部材29とによって、カートリッジ筐体21内の空間Aと外気間を適当な連通路で連通させて、使用時に空間Aが過度に負圧となることを防止する。
また、カートリッジ筐体21にはカートリッジ位置決め突部24を備え、上蓋26にはカートリッジ着脱用突状部30、カートリッジ着脱用指掛け部31、カートリッジ着脱用窪み部32を備え、更にキャップ部材33にはカートリッジ着脱用指掛け部35を備えていることにより、キャリッジ3の所定位置に正確にかつ容易にインクカートリッジ5を装填することができる。
図4は、本発明の実施例のインクジェットヘッドを示す図で、図4(A)はノズル面を示し、図4(B)は図4(A)のX−X断面を示す。
図4に示すインクジェットヘッド4は、ブラックBkのインクを吐出するノズル41Bkを有するインクジェットヘッド41と、ブラックBkのインクを吐出するノズル47Bk、イエローYのインクを吐出するノズル47Y、マゼンタMのインクを吐出するノズル47M、シアンCのインクを吐出するノズル47Cが主走査方向に並列したインクジェットヘッド42とが副走査方向に一体的に結合したインクジェットヘッドの例である。
インクジェットヘッド4は、発熱抵抗体46Bk、46Y、46M、46Cを含む基板43とノズルプレート44により各色の液室45Bk、45Y、45M、45Cが形成され、画像情報に応じて各液室内の基板43に形成された発熱体である発熱抵抗体46Bk、46Y、46M、46Cを駆動してそれぞれの液室内に気泡を発生させ、それぞれのノズル47Bk、47Y、47M、47Cよりインク滴を吐出させ、更に吐出するインク滴の量を調整して階調記録を行うものである。ここで、ノズルプレート44の表面には吐出したインク滴が付着することがないように、インクに対しはじき性を有する吸着防止層48が形成されているが、吸着防止層48の詳細については後述する。
図5は、図4と異なるインクジェットヘッドのノズル面を示す図である。
図4に示したインクジェットヘッドは、ブラックBk、イエローY、マゼンタM、シアンCの4色インクを用いた例であるが、淡マゼンタLM、淡シアンLC等を含め、より多色であっても同様に適用できる。
図5に示すインクジェットヘッド4は、ブラックBkのインクを吐出するノズル47Bk、イエローYのインクを吐出するノズル47Y、マゼンタMのインクを吐出するノズル47M、淡マゼンタLMのインクを吐出するノズル47LM、シアンCのインクを吐出するノズル47C、淡シアンLCのインクを吐出するノズル47LCが主走査方向に並列したインクジェットヘッドの例で、階調性に優れた、高品質の記録が可能となる。ノズルプレートの表面には吐出したインク滴が付着することがないように、インクに対しはじき性を有する吸着防止層が形成されている
本発明は、撥インク性、滑インク性を示す吸着防止層をインクジェットヘッドのノズルプレートの表面、つまりノズル面に形成する際、撥インク性、滑インク性の値が最適となり記録液の液離れが良くなるようにノズル面の材質を決定するようにしたものである。ノズル面における記録液の液離れのよさを直接的に表すパラメータとして、記録液の転落角を採用する。
図6は、転落角の意味を模式的に示す図であって、プレートの材質がPTFEとHC2000((株)東レ・ダウコーニング社製)の場合を示している。
転落角とは、ある一定量の液滴を付着させたプレートの傾斜角度θを、水平0°から垂直90°に徐々に傾けていったとき、液滴が滑落する角度θのことである。より小さい転落角で液滴が滑落するプレートほど、液滴をプレートに対して平行な方向の力(mgsinθ)が小さくても動かせることを示すため、より小さい力で液滴を除くことができることを表す指標になる。転落角を指標とすることにより、測定装置を容易に小型化することができ、なおかつ、直接インクジェットヘッドを評価できる評価方法とすることができる。以後、液離れの良さの度合いをそれぞれ、水、油、記録液に対して滑水、滑油、滑インク性と表す。
一般に、固体表面張力が小さい材料は撥水性が高いといわれる。フッ素樹脂のように固体表面張力の小さい材料はその代表で、フッ素樹脂がコーティングされたプレートに液滴が触れると、液滴はより球形に近い形になろうとして、プレートとの接触面積が小さくなる。接触面積が小さければ、液滴はプレートとの摩擦が小さくなり、転落角も小さくなる。ただし、固体表面張力が小さい材料は撥水性が高く転落角も低い傾向があることは事実であるが、必ずしも固体表面張力の小さい撥水性の高い材料の方が転落角も小さい材料であるとはいえないことに注意しなければならない。
例えば、固体表面張力が低く、撥水角が高いことで知られる水5μlに対し、PTFEで撥水角ψは110°、転落角θは15°である。これに対し、HC2000(東レ・ダウコーニング社製)では、PTFEよりも撥水角ψが低く90°程度であるが、転落角θは5°程度となり、PTFEより低くなる。すなわち、図6では、HC2000はPTFEよりも弱い力で表面から液を除くことができることを示している。このことは、撥水角ψが高い材料ほど滑水性が高いとは必ずしもいえないことを示している。特に、樹脂と顔料を含有する記録液のように、液体の付着力が大きな作用を及ぼす記録液の評価においては、単純に液体とノズル面の静止接触角(撥インク角)で液離れの良さを評価することは的を外れているといえる。
1.本発明は、以下のような知見に基づくもので、プレートの滑水性、滑インク性は固体表面張力の低さという化学的な面からの作用だけではなく、吸着防止層の弾性、摺動性、すべり性といった物理的な作用が伴うと、特に高い滑水性、滑インク性を示すものと考えられる。
また、滑水性が高い材料は弱い力で容易に付着した記録液を除くことができるため、弱いワイピング押し当て圧力で記録液を拭き取ることができる。したがって、非常に高い滑水性を有する吸着防止層であれば、硬度が低くてもワイピング耐久性を確保することが可能である。
2.樹脂と顔料を含有する記録液25μlに対し、インクジェットヘッドのノズル面で、記録液の転落角が20°以下となるような記録液とノズル面を共に備えた画像記録装置では、ワイピング耐久性を確保できるワイピング押し当て圧力の範囲内で記録液を十分にノズル面から拭き取ることができた。
本発明におけるワイピング耐久性の確保とは、あるワイピング押し当て圧力で2000回のワイピングを行ってもインクを拭き残し無く拭き取れることを指している。無論、転落角が20°以下となるような吸着防止層でインクジェットヘッドのノズル面を形成することは、ノズル面の耐久性を確保する上で、色材の種類によらず、染料であっても良いし、樹脂を含まなくても有効である。
3.吸着防止層は、記録液に対してはじき性を有するものが望ましい。記録液に対し転落角が20°以下となるような滑インク性を示すプレートであっても、ノズル面が親水性ではじき性が無い吸着防止層であると、ノズル孔のメニスカスの形成・維持が困難であり、吐出安定性の確保が難しい。
4.記録液を吐出するノズルは樹脂ノズルが望ましい。UV硬化型樹脂でノズルを形成することで、半導体プロセスを用いて容易に多チャンネルノズルを有するインクジェットヘッドの作成を可能にすることができる。
5.記録液を吐出するインクジェットヘッドは、発熱体を有するインクジェットヘッドが望ましい。発熱体による記録液の膜沸騰で吐出するインクジェットヘッドは半導体プロセスを用いて容易に多数設置でき、容易に多チャンネルノズルを有するインクジェットヘッドの作成を可能にすることができる。
6.吸着防止層は、ある程度の記録液のはじき性を有することが要求されるため、シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂で形成されることが望ましく、特にシリコーン系樹脂は滑水性、滑インク性が高いため、より望ましい。
シリコーンポリマーは硬いものほど撥インク性は乏しくなり、柔らかい物では撥インク性が十分でも強度的に弱い傾向がある。シリコーンゴムと呼称されるものからシリコーンレジンと呼称される比較的柔らかいシリコーンが特に有用である。硬度はHMで25[N/mm2]以上であることが望ましい。
また、シリコーンオイル・フッ素オイルを焼き付けることでも優れた撥インク性を示す皮膜を得ることができる。
7.吸着防止層はシリコーン樹脂とアクリル樹脂の混合物、又はシリコーン樹脂とフッ素樹脂の混合物であっても良い。ただし、それぞれの樹脂の分子鎖がブロック重合したような中間的な高分子を相溶化剤として共に混合しないと、相分離が大きくなってしまい吸着防止層にムラが生じてしまう。大きなムラがノズル孔周辺にあると、はじき性に差異が生じて吐出曲がりの原因になる。海島構造を形成した場合、島の最大径はノズル径の1/50以下であることが望ましい。
8.あるいは、シリコーン樹脂とアクリル樹脂の重合高分子、シリコーン樹脂とフッ素樹脂の重合高分子だけで構成されていても良い。
図7は、高分子成分が重合する際の重合の形態を示す図である。
重合の形態は、図7(A)に示すような直鎖に近いブロック型に重合した高分子、図7(B)に示すような簾状のグラフト型に重合した高分子、図7(C)に示すようなこれらが組み合わさったブロック・グラフト型に重合した高分子であっても良い。さらには、図7(D)に示すように複雑に網状に架橋した構造の高分子であっても良い。
中でも、簾型に分子鎖の長さがある程度揃った分子をグラフト重合することで、例えばパーフルオロアルキル基がシロキサンに簾状にグラフト重合すると、パーフルオロアルキル基が界面方向に分子鎖がそろい、先端のフッ化メチル基の作用で特にはじき性の高い吸着防止層とすることができる。
図8は、パーフルオロアルキル基がシロキサンに簾状にグラフト重合するときの構造を示している。
9.直鎖状にブロック重合しているハイブリッド高分子、例えばフッ素樹脂がシリコーン樹脂と直鎖状にブロック重合したハイブリッド高分子、あるいはシリコーン樹脂、フッ素樹脂、及びこれらシリコーン樹脂及びフッ素樹脂に対して適切な相溶化剤の3種類以上のポリマーを混合した混合物では、硬化膜を形成するとシリコーン樹脂とシリコーン樹脂がミクロ相分離して、表面は微細な海島構造、またはラメラ構造となる。シリコーン樹脂を構成する面とフッ素樹脂を構成する面では固体表面張力が異なるため表面自由エネルギーの部分的な差異を生じ、ちょうど蓮の葉構造と同様の効果が生まれる。ただし、物理的に凸凹がある蓮の葉構造の場合と異なり、平坦な塗装膜が作成可能であるため凸部の磨耗や凹部への汚れの入り込みといったことによる劣化は無い。撥水角が150度以上となるような超撥水性を示す材料も見つかっている。
複雑に網状に架橋した構造では、例えばシリコーン樹脂を中心にフッ素樹脂やアクリル樹脂、又はビウレット、イソシアヌレート、アダクト、2官能プレポリマーといった架橋剤ポリマー、特にブロック型ヘキサメチレンジイソシアヌレートといったウレタン樹脂等で複雑に網状に架橋した構造を有する高分子とすることで、シリコーンの硬度を高めることができる。架橋剤となる高分子によっては、ゴム弾性を持たせることも可能である。
あるいは、水酸基及びシリル基をシリコーン樹脂に持たせUV硬化型とすることで、高い硬度を得ることもできる。
10.ノズルに傷をつける可能性のある物体として、インクジェット記録装置が紙詰まりもしくはコックリングを起こしたときの記録媒体がある。吸着防止膜はノズル孔周辺部に傷がつくと吐出曲がり,ノズルダウンの原因になるため、また、傷は撥インク性を低下させ、ワイピング不良の原因にもなるため、少なくとも鉛筆硬度でH以上の硬度があることが望ましい。より望ましくは鉛筆硬度3H以上であり、鉛筆硬度3H以上であればシリカを表面に塗布した特殊紙であっても容易には磨耗により傷がつかない耐擦傷性が確保できる。
11.吸着防止層はワイパーとの動摩擦係数μが0.3以下であると磨耗し難く、擦傷性も低くなる。また、ワイパーのびびりも抑えられるため、インクの拭き残しが無くなる。ワイピングブレードはノズルプレートのノズル面の磨耗を抑えるために、硬度60以下のやわらかい材料が望ましい。
12.吸着防止層は記録液の後退接触角が30°以上である材料からなることが望ましく、後退接触角が30°未満であるとノズル孔に充填された記録液のメニスカスの維持ができず、吐出安定性を確保することができない。
本発明のインクジェットヘッドに用いられる記録液は、色材として、顔料、染料のいずれでも用いることができ、混合して用いることもできる。
記録液に用いる顔料として特に限定はないが、例えば以下に挙げる顔料が好適に用いられる。また、これらの顔料は複数種類を混合して用いても良い。
有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラツク、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
無機顔料としては、酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉が挙げられる。これらの顔料の粒子径は0.01〜0.30μmで用いることが好ましく、0.01μm以下では粒子径が染料に近づくため、耐光性、フェザリングが悪化してしまう。また、0.30μm以上では、ヘッドの目詰まりやプリンタ内のフィルタでの目詰まりが発生し、吐出安定性を得ることができない。
ブラック顔料インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が、15〜40ミリミクロン、BET法による比表面積が、50〜300m2/g、DBP吸油量が、40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。このようなものとしては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.40、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上、三菱化成製)、RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL400R、REGAL660R、MOGUL L(以上、キヤボット製)、Color Black FW1、Color Black FW18、Color Black S170、Color Black S150、Printex 35、Printex U(以上、デグッサ製)等の市販品を使用することができる。
カラー顔料インクに使用される有機顔料の具体例としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラツク、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられ、無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉等が挙げられる。
顔料は樹脂によって被覆しても良く、樹脂被覆することによって印刷物の擦過性を向上させることができる。
本発明の記録液に用いられる染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料で耐水、耐光性が優れたものが用いられる。これら染料は複数種類を混合して用いても良いし、あるいは必要に応じて顔料等の他の色材と混合して用いても良い。これら着色剤は、本発明の効果が阻害されない範囲で添加される。
以下、染料の種類毎に具体例を示す。
(a)酸性染料及び食用染料として
C.I.アシッド・イエロー 17,23,42,44,79,142
C.I.アシッド・レッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289
C.I.アシッド・ブルー 9,29,45,92,249
C.I.アシッド・ブラック 1,2,7,24,26,94
C.I.フード・イエロー 3,4
C.I.フード・レッド 7,9,14
C.I.フード・ブラック 1,2
(b)直接染料として
C.I.ダイレクト・イエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144
C.I.ダイレクト・レッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227
C.I.ダイレクト・オレンジ 26,29,62,102
C.I.ダイレクト・ブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202
C.I.ダイレクト・ブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171
(c)塩基性染料として
C.I.ベーシック・イエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91
C.I.ベーシック・レッド 2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112
C.I.ベーシック・ブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155
C.I.ベーシック・ブラック 2,8
(d)反応性染料として
C.I.リアクティブ・ブラック 3,4,7,11,12,17
C.I.リアクティブ・イエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67
C.I.リアクティブ・レッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97
C.I.リアクティブ・ブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95等が使用できる。
本発明のインクジェットヘッドに使用する記録液を所望の物性にするため、あるいは乾燥によるインクジェットヘッドのノズルの詰まりを防止するためなどの目的で、色材の他に、水溶性有機溶媒を使用することが好ましい。水溶性有機溶媒には湿潤剤、浸透剤が含まれる。湿潤剤は乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止することを目的に添加される。
湿潤剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエ−テル額;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノ−ル等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。これらの溶媒は、水とともに単独もしくは複数混合して用いられる。
また、浸透剤は記録液と被記録材の濡れ性を向上させ、浸透速度を調整する目的で添加される。浸透剤としては、下記式(I)〜(IV)で表されるものが好ましい。すなわち、下記式(I)のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、式(II)のアセチレングリコール系界面活性剤、式(III)のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、並びに式(IV)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤は、液の表面張力を低下させることができるので、濡れ性を向上させ、浸透速度を高めることができる。
Figure 0004416489
Figure 0004416489
Figure 0004416489
Figure 0004416489
前記式(I)〜(IV)の化合物以外では、例えばジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類を用いることができるが、特にノニオン性フッ素系界面活性剤が好ましい。
本発明に用いられる記録液のpHは、3〜11であることが好ましく、接液する金属部材の腐食防止の観点から、6〜10であることがさらに好ましい。
本発明に用いる記録液の表面張力は、前記のように、裏移り,及び裏移りに伴う画像乱れを防止するために、γ≦30mN/mであることが好ましく、被記録材(記録媒体)との濡れ性と、液滴を粒子化させるための両立性の観点から、15≦γ≦30mN/mであることが更に好ましい。
本発明の記録液の粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましく、吐出安定性の観点からは3.0〜10.0cPであることが更に好ましい。
本発明の記録液は防腐防黴剤を含有することができる。防腐防黴剤を含有することによって、菌の繁殖を抑えることができ、保存安定性、画質安定性を高めることができる。
防腐防黴剤としては、ベンゾトリアゾール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、イソチアゾリン系化合物、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が使用できる。
本発明の記録液は防錆剤を含有することができる。防錆剤を含有することによって、ヘッド等の接液する金属面に被膜を形成し、腐食を防ぐことができる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が使用できる。
本発明の記録液は酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤を含有することによって、腐食の原因となるラジカル種が生じた場合にも酸化防止剤がラジカル種を消滅させることで腐食を防止することができる。酸化防止剤としては、フェノール系化合物類、アミン系化合物類が代表的であるが、フェノール系化合物類としては、ハイドロキノン、ガレート等の化合物、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のヒンダードフェノール系化合物が例示され、アミン系化合物類としては、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N’−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニルエチレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン等が例示される。また、後者としては、硫黄系化合物類、リン系化合物類が代表的であるが、硫黄系化合物としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジブチレート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が例示され、リン系化合物類としては、トリフェニルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールフォスファイト等が例示される。
本発明の記録液はpH調整剤を含有することができる。pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン類、硼酸、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等を用いることができる。
その他、本発明の記録液は必要に応じ、消泡剤、コロイダルシリカ、糖類、アクリルモノ等を含有することができる。
以下、本発明のインクジェットヘッドに用いる記録液及びノズルプレートについて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの具体例によって制限されるものではない。
(1)樹脂被覆型ブラック分散体の製造方法
a.ポリマー溶液の調製
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下漏斗を備えたフラスコ(容積1L)内を窒素ガスで十分置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成(株)製、商品名:AS−6)4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。
次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー(東亜合成(株)製、商品名:AS−6)36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50%のポリマー溶液800gを得た。
ポリマー溶液の一部を乾燥し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(標準:ポリスチレン、溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したところ、ポリマーの重量平均分子量は15000であった。
b.樹脂被覆型ブラック分散体の調製
上記aで得られたポリマー溶液22.2g、カーボンブラック26.0g、1mol/Lの水酸化リチウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g及びイオン交換水30gを十分に攪拌した後、3本ロールミル〔(株)ノリタケカンパニー製、商品名:NR−84A〕を用いて20回混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に攪拌した後、エパポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、固形分量が20.0重量%の樹脂被覆型ブラック顔料分散体160gを得た。
(2)記録液の製造方法
以下に示す成分を混合、攪拌後、テフロン(R)フィルタ(0.8μm)にてろ過して、記録液を製造した。
<記録液A>
樹脂被覆ブラック顔料分散体 50部(ブラック顔料固
形分濃度10部)
グリセリン 25部
界面活性剤 FS−300 ((株)Du Pont) 2部
2−ピロリドン 2部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2部
チオ硫酸ナトリウム 0.2部
防腐防黴剤(アビシア社製、PROXEL LV(s)) 0.4部
消泡剤(信越化学社製、KM−72F) 0.1部
イオン交換水 残量
なお、上記配合液を更にLiOH水溶液でpH10.5に調整して用いた。
<記録液B>
樹脂被覆ブラック顔料分散体 50部(ブラック顔料固
形分濃度10部)
グリセリン 25部
2−ピロリドン 2部
オレフィンSTG(信越化学製) 2.0部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2部
チオ硫酸ナトリウム 0.2部
防腐防黴剤(アビシア社製、PROXEL LV(s)) 0.4部
消泡剤(信越化学社製、KM−72F) 0.1部
イオン交換水 残量
なお、上記配合液を更にLiOH水溶液でpH10.5に調整して用いた。
<記録液C>
樹脂被覆ブラック顔料分散体 50部(ブラック顔料固
形分濃度10部)
グリセリン 25部
2−ピロリドン 2部
オレフィンE1010 2.0部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2部
チオ硫酸ナトリウム 0.2部
防腐防黴剤(アビシア社製、PROXEL LV(s)) 0.4部
消泡剤(信越化学社製、KM−72F) 0.1部
イオン交換水 残量
なお、上記配合液を更にLiOH水溶液でpH10.5に調整して用いた。
<記録液D>
樹脂被覆ブラック顔料分散体 50部(ブラック顔料固
形分濃度10部)
グリセリン 25部
2−ピロリドン 2部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2部
チオ硫酸ナトリウム 0.2部
防腐防黴剤(アビシア社製、PROXEL LV(s)) 0.4部
消泡剤(信越化学社製、KM−72F) 0.1部
イオン交換水 残量
なお、上記配合液を更にLiOH水溶液でpH10.5に調整して用いた。
(3)ノズルプレート用付着防止剤評価方法
以下に示すポリマーをUV硬化性樹脂で作成したノズルプレートフィルムに塗布して、ノズルプレートA〜Lを作成した。塗布方法はスピンコート[3000rpm 15秒間]で行った。また、塗布後それぞれのポリマーの硬化条件に合わせて硬化を行った。
<ノズルプレートA>
シリコーンレジン(ポリシラン)
ポリマー〔シリコーン〕:SR2316〔(株)東レ・ダウコーニング〕
硬化条件:25℃/24時間
上記シリコーンレジンの原液を表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に硬化条件:25℃/24時間で硬化を行い撥インク性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
<ノズルプレートB>
フッ素樹脂
ポリマー〔フッ素樹脂〕:デムナムDSX(ダイキン工業製)
硬化条件:25℃/30秒
上記フッ素樹脂溶液の原液を表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に硬化条件:25℃/30秒で硬化を行い、撥インク性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
<ノズルプレートC>
混合物重量分立(シリコーン/フッ素ポリマー/相溶化剤):(8/1/1)
ポリマー〔シリコーン〕:SR2316〔(株)東レ・ダウコーニング〕
ポリマー〔フッ素ポリマー〕:PFE((株)ダイキン)
ポリマー〔相溶化剤〕:X−22−822((株)信越化学)
上記シリコーン、フッ素ポリマー、相溶化剤を重量費8:1:1でフッ素系溶剤HFE−7100((株)住友3M)に固形分濃度10%となるように溶解して溶解液を作成した。概溶解液で表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に硬化条件:25℃/30分で硬化を行い、撥インク性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
<ノズルプレートD>
混合物重量分立(シリコーン/アクリルポリマー/相溶化剤):(8/1/1)
ポリマー〔シリコーン〕:SR2316〔(株)東レ・ダウシリコーン〕
ポリマー〔アクリルポリマー〕:スミペックス(PMMA)〔(株)住友化学〕
ポリマー〔相溶化剤〕:KF−413〔(株)信越化学〕
硬化条件:25℃/30分
上記シリコーン、アクリルポリマー、相溶化剤を重量費8:1:1でフッ素系溶剤HFE−7100((株)住友3M)に溶解して溶解液を作成した。概溶解液で表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に硬化条件:25℃/10分で硬化を行い、撥インク性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
<ノズルプレートE>
混合物重量分立(フッ素ポリマー/アクリルポリマー/相溶化剤):(5/5/4)
ポリマー〔シリコーン〕:スミペックス(PMMA)〔(株)住友化学〕
ポリマー〔フッ素樹脂〕:PTFE((株)ダイキン)
ポリマー〔相溶化剤〕:ETFE((株)ダイキン)
硬化条件:25℃/30分
上記フッ素ポリマー、アクリルポリマー、相溶化剤を重量費5:5:4でフッ素系溶剤HFE−7100((株)住友3M)に溶解して溶解液を作成した。概溶解液で表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に硬化条件:25℃/30分で硬化を行い、撥インク性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
<ノズルプレートF>
ポリマー(シリコーン・フッ素ポリマー重合樹脂):ZX−007c〔(株)富士化成工業〕
架橋剤〔イソシアネ−ト〕:MF−B60X〔(株)旭化成〕
硬化条件:140℃/30分
上記シリコーン・フッ素ポリマー重合樹脂と架橋剤が含まれた溶液を混合し、キシレンで希釈して固形分濃度35%に調整した溶解液を作成した。このときのイソシアネートのイソシアネート基とシリコーンのOH基の割合がNCO/OH=1.2/1.0となる混合比で混合を行った。前記溶解液で表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に25℃で30分間放置し、溶剤を十分に蒸発させた後、硬化条件140℃/30分で硬化を行い、撥インク性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
<ノズルプレートG>
ポリマー(シリコーン・アクリルポリマー重合樹脂):ACS−1064(日本ペイント)
硬化条件:UV硬化 600mJ/cm2
上記ACS−1064(日本ペイント)の原液を表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。塗布後に25℃で60分間放置し、溶剤を十分に蒸発させた後、UV照射装置(120w/m,500rpm)を用いて600mJ/cm2の照射エネルギーを加えて十分に硬化させた。
<ノズルプレートH>
ポリマー(フッ素樹脂・アクリル樹脂重合樹脂):ルミフロン((株)旭硝子)
硬化条件:常温硬化/48時間
上記フッ素ポリマー・アルキルポリマー重合樹脂を含む溶剤を表面に親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。塗布後に25℃で48時間放置し、十分な乾燥を行った。
<ノズルプレートI>
ポリマー〔シリコーン〕:ZX−022〔(株)富士化成工業〕
硬化条件:25℃/24時間
上記シリコーンレジンを表面に親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に硬化条件:25℃/30分で放置し、十分な乾燥を行い溶剤を蒸発させた後、120℃/2時間の硬化条件で加熱硬化を行い、撥水性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
<ノズルプレートJ>
Ni−PTFE共析メッキ
UV硬化性樹脂で作成したノズルプレートフィルムにNi無電解メッキした薄膜に対してNi−PTFE電鋳メッキをメッキ処理するにより撥水性を示す皮膜を得た。
<ノズルプレートK>
ポリマー〔親水性アルキルポリマー〕:ハイドロテクト〔(株)TOTO〕
硬化条件:25℃/24時間
上記親水性アルキルポリマーをUV硬化性樹脂で作成したノズルプレートフィルムにスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。親水性を示す滑水性の高い皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
<ノズルプレートL>
ポリマー〔シリコーン〕:HC2000〔(株)東レ・ダウコーニング〕
硬化条件:25℃/24時間
上記シリコーンレジンの原液を表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に硬化条件:25℃/24時間で硬化を行い撥水性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
(実施例1)
25μlの記録液AをノズルプレートAを用いたインクジェットヘッドのノズル面に滴下し、転落角を測定した。記録液の滴下はインクジェットヘッドには記録液Aが十分に充填されており、メニスカスが形成されている状態で行った。
次に、同様に25μlの記録液をノズル面に滴下し、硬度10〜100のゴムブレードで拭き取りを硬度の低いものから行ったとき、前記ノズルプレートから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度を得た。
次に、前記記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードで拭き取りを行い、200回ゴムブレードで拭き取りを行うたびに前記と同様に転落角の測定を行い、2000回まで繰り返して転落角の値を得た。
(実施例2)
ノズルプレートBを用いたインクジェットヘッドを使用する他は実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートBにおける記録液の転落角、ノズルプレートBから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
(実施例3)
ノズルプレートCを用いたインクジェットヘッドを使用する他は実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートCにおける記録液の転落角、ノズルプレートCから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
(実施例4)
ノズルプレートDを用いたインクジェットヘッドを使用する他は実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートDにおける記録液の転落角、ノズルプレートDから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
(実施例5)
ノズルプレートEを用いたインクジェットヘッドを使用する他は実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートEにおける記録液の転落角、ノズルプレートEから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
(実施例6)
ノズルプレートFを用いたインクジェットヘッドを使用する他は実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートFにおける記録液の転落角、ノズルプレートFから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
(実施例7)
ノズルプレートGを用いたインクジェットヘッドを使用する他は実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートGにおける記録液の転落角、ノズルプレートGから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
(実施例8)
ノズルプレートHを用いたインクジェットヘッドを使用する他は実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートHにおける記録液の転落角、ノズルプレートHから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
(比較例1)
ノズルプレートIを用いたインクジェットヘッドを使用する他は、実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートIにおける記録液の転落角、ノズルプレートから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
(比較例2)
ノズルプレートJを用いたインクジェットヘッドを使用する他は、実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートJにおける記録液の転落角、ノズルプレートJから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
表1は、実施例1〜8のノズルプレートA〜H、比較例1、2のノズルプレートI、Jを用いて、前記した付着防止剤評価方法に基づいて行った結果得られた、転落角とワイピング回数の関係を示す。
図9は、表1の結果をグラフ化して示す図で、付着防止剤によって転落が異なるとともに転落角がワイピング回数とともに変化する様子を示す。
Figure 0004416489
(実施例9)
ノズルプレートAを用いたインクジェットヘッドにおいて、記録液Aの印写評価を行った。
また、実施例1と同様にして測定を行い、さらにノズルプレートLにおける記録液A 25μlの転落角、及び記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードで2000回のワイピングを繰り返したときの転落角の値を測定した。
(比較例3)
ノズルプレートKを用いたインクジェットヘッドを用いる他は実施例9と同様にして、記録液Aの印写評価を行った。
表2は、実施例9と比較例3の結果を示す。
Figure 0004416489
実施例9、及び比較例3の比較から、高い滑インク性を示す吸着防止コーティングポリマーとして撥インク性を示す材料だけではなく、超親水性と呼ばれるポリマーでコーティングすることでも滑インク性を高めることができる。ただし、ノズル口近傍が濡れやすいため超親水性ポリマーでコーティングした場合、ノズル口のインクのメニスカスが安定せず、印写させることが難しくなることが分かる。少なくとも、安定したメニスカスを得るには後退接触角〔後退し始め〕は少なくとも30°以上であることが望ましい。
鉛筆硬度と印写評価
(実施例10)
実施例9に加えて、更に実施例1のノズルプレートAの鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度の測定基準はJIS−K−5400に準拠し、ノズルプレートに対して45°の角度で鉛筆を当て、荷重750gの負荷をかけたとき、傷が付く最小の硬度を測定した。また、ノズルプレートAを備えたインクジェットヘッドを搭載した、IPSIO JET300 〔(株)リコー製〕の改造機を用いて普通紙Type6200〔(株)リコー製〕を折り曲げた意図的に紙詰まりが発生する用紙で印刷を行ったとき、紙詰まり後のノズル口の傷を原因とする噴射異常(吐出不良,吐出曲がり)の有無(噴射異常なし…○,噴射異常あり…×)を検査する紙ジャム試験を行った。
(比較例4)
ノズルプレートLを用いた他は実施例10と同様にして、転落角、拭き取りが可能な最小のワイパー強度、ワイピング性、ワイピング耐久性、後退接触角〔後退し始め〕、鉛筆硬度、紙ジャム試験による噴射異常の有無を確認した。
表3は、実施例10及び比較例4の結果を示す。
表3に示すノズルプレートA及びノズルプレートLの鉛筆硬度の印写評価の比較から、吸着防止層の硬度が鉛筆硬度H未満の場合、ワイピング耐久性があっても、紙詰まりにより傷が付くことで噴射異常が生ずることが分かる。ワイピング耐久性は、吸着防止層の硬度の他にワイパーとノズルプレートの摩擦係数の大きさも関わっており、すべり性が良い材料ならば、柔らかい材料でもワイピング耐久性を確保でき得る。しかし、紙詰まりは、折れた紙の角でノズル面が引っかかれるため、たとえすべり性が良くても柔らかくて脆い材料では傷が付きやすい。
紙詰まりは、インクジェットプリンタにおいて安定動作を妨げる原因となるものであって、その発生を極力回避しなければならないが、市場において折れた紙を装填してしまうこと等を原因とする十分起こりうる事故であるため、これを回避するためノズルプレートの鉛筆硬度はH以上であることが望ましい。
Figure 0004416489
(実施例11)
ノズルプレートAを吸着防止層に有するインクジェットヘッドを搭載したIPSIO JET300改造機を用い、記録液Aでベタと、文字と、ブラック(Bk)のベタ中にMの文字を印刷した記録物を作成し、(1)画像濃度画質、(2)カラーブリード、(3)フェザリングを前記記録物から測定した。
評価方法、評価基準、及びブラックインクの処方は、次に示すとおりである。
(1)画像濃度画質
記録液Aでベタのパッチパターンを(株)リコーの普通紙Type6200に印字して印字サンプルを作成した。前記パッチパターンに対し、X−Riteで画像濃度の計測を行った。
(2)カラーブリード
プリンタを用い、ブラックインクのベタ中にMS明朝体のフォントでMの文字が記録液Aで印字されたパターンを(株)リコーの普通紙Type6200に印字して印字サンプルを作成した。前記パターンに対して境界線滲みについて目視で評価を行った。
評価基準は以下のとおりである。
◎:色の境界線の滲みは視認できない。
○:色の境界線滲みは一部で滲んでいるが、目立たない。
×:色の境界線がはっきりしないほど文字は滲んでいる。
(3)フェザリング
プリンタを用いて記録液Aで印字したで文字が入ったパターンを(株)リコーの普通紙Type6200に印字して印字サンプルを作成した。前記文字の滲みについて目視で評価を行った。
評価基準は以下のとおりである。
◎:文字の境界線の滲みは視認できない。
○:文字の境界線滲みは一部で滲んでいるが、目立たない。
×:文字の境界線がはっきりしないほど文字は滲んでいる。
ブラック(Bk)インク
キャボジェット300(キャボット社製、樹脂分散型顔料) 10.0部
1,3―ブタンジオール 22.5部
グリセリン 7.5部
界面活性剤 1.0部
2−ピロリドン 2.0部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2部
チオ流酸ナトリウム 0.2部
水 残量
(実施例12)
実施例11と記録液Bを用いる他は実施例11と同様にして記録液Bの画像濃度、フェザリング、及び、カラーブリードの評価を行った。
(比較例5)
実施例11と記録液Cを用いる他は実施例11と同様にして記録液Bの画像濃度、フェザリング、及び、カラーブリードの評価を行った。
(比較例6)
実施例11と記録液Dを用いる他は実施例11と同様にして記録液Bの画像濃度、フェザリング、及び、カラーブリードの評価を行った。
(比較例7)
実施例11とノズルプレートIを用いる他は実施例11と同様にして記録液Aの画像濃度、フェザリング、及び、カラーブリードの評価を行った。
(比較例8)
実施例12とノズルプレートIを用いる他は実施例12と同様にして記録液Bの画像濃度、フェザリング、及び、カラーブリードの評価を行った。
(比較例9)
比較例5とノズルプレートIを用いる他は比較例5と同様にして記録液Cの画像濃度、フェザリング、及び、カラーブリードの評価を行った。
(比較例10)
比較例6とノズルプレートIを用いる他は比較例6と同様にして記録液Dの画像濃度、フェザリング、及び、カラーブリードの評価を行った。
表4は、実施例11,12及び比較例5〜10の結果を示す表である。
実施例11,12及び比較例5、6の結果の比較から、表面張力の低い記録液ほど転落角が高くなることが分かる。あるいは、表面張力15mN/cm2以下の記録液Cを用いた場合、文字滲みが生じるため好ましくない。また、表面張力30mN/cm2以下の記録液Cを用いた場合、記録液の埋まりが悪いため、画像濃度が低くなってしまう。
したがって好ましい記録液の表面張力は15mN/cm2〜30mN/cm2であるといえる。ただし、比較例7〜10の評価結果のように、ノズルプレートと記録液の組み合わせが転落角が21°以上となるような撥インク性を示す場合、ノズル面の撥インク性を十分に確保することができないため、ノズル面が濡れてしまってノズル口での記録液のメニスカスの確保ができなくなるため、前記のような好ましい表面張力の記録液を安定して印字できなくなる。
Figure 0004416489
本発明の実施例のインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。 インクカートリッジの外観を示す斜視図である。 インクカートリッジの内部構造を示す断面図である。 本発明の実施例のインクジェットヘッドを示す図で、図4(A)はノズル面を示し、図4(B)は図4(A)のX−X断面を示す。 本発明の実施例の図4と異なるインクジェットヘッドのノズル面を示す図である。 転落角の意味を模式的に示す図で、プレートの材質がPTFEとHC2000の場合を示す。 高分子成分が重合する際の重合の形態を示す図である。 パーフルオロアルキル基がシロキサンに簾状にグラフト重合するときの構造を示す図である。 表1の結果をグラフ化して示す図で、転落角がワイピング回数とともに変化する様子を示す。
符号の説明
1…インクジェット記録装置、2…本体筐体、3…キャリッジ、4…インクジェットヘッド、5…インクカートリッジ、6…主ガイドロッド、7…従ガイドロッド、8…主走査モータ、9…タイミングベルト、10…副走査モータ、11…ギヤ列、21…カートリッジ筐体、22…液吸収体、23…液供給口、24…カートリッジ位置決め突部、25…シールリング、26…上蓋、27…大気開放口、28…溝、29…シール部材、30…カートリッジ着脱用突状部、31…カートリッジ着脱用指掛け部、32…カートリッジ着脱用窪み部、33…キャップ部材、34…液漏れ防止突部、35…カートリッジ着脱用指掛け部、43…基板、44…ノズルプレート、45…液室、46…発熱抵抗体、47…ノズル、A…空間。

Claims (3)

  1. 樹脂と顔料を含有する記録液を吐出するインクジェットヘッドであって、前記記録液を吐出するノズルが配置されているノズル面には、前記記録液に対してはじき性を有する吸着防止層を形成し、前記吸着防止層はフッ素樹脂シロキサンブロック型に重合したポリマー、またはアクリル樹脂シロキサンブロック型に重合したポリマーからなることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記記録液は、界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
  3. 請求項1又は2に記載のインクジェットヘッドを搭載したことを特徴とする画像記録装置。
JP2003421013A 2003-12-18 2003-12-18 インクジェットヘッド及び画像記録装置 Expired - Fee Related JP4416489B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003421013A JP4416489B2 (ja) 2003-12-18 2003-12-18 インクジェットヘッド及び画像記録装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003421013A JP4416489B2 (ja) 2003-12-18 2003-12-18 インクジェットヘッド及び画像記録装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005178132A JP2005178132A (ja) 2005-07-07
JP4416489B2 true JP4416489B2 (ja) 2010-02-17

Family

ID=34782369

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003421013A Expired - Fee Related JP4416489B2 (ja) 2003-12-18 2003-12-18 インクジェットヘッド及び画像記録装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4416489B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4999056B2 (ja) * 2005-09-27 2012-08-15 株式会社リコー インクジェットヘッド用ノズル板、ヘッドおよびこれを用いたインクジェット記録装置、方法、インクジェット記録用インク
JP2007105942A (ja) * 2005-10-12 2007-04-26 Sharp Corp インクジェットヘッド、インク吐出装置、及び、インクジェットヘッドの製造方法
JP5170500B2 (ja) * 2006-02-23 2013-03-27 株式会社リコー インクジェットヘッド用ノズル板、ヘッド、インクジェット記録用インクおよびこれを用いたインクジェット記録装置、記録方法
JP5112714B2 (ja) 2006-02-27 2013-01-09 株式会社リコー インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
US8544987B2 (en) * 2010-08-20 2013-10-01 Xerox Corporation Thermally stable oleophobic low adhesion coating for inkjet printhead front face
US8226207B2 (en) * 2009-11-24 2012-07-24 Xerox Corporation Coating for an ink jet printhead front face
US8096649B2 (en) * 2009-11-24 2012-01-17 Xerox Corporation Image conditioning coating
JP6582397B2 (ja) * 2014-11-21 2019-10-02 株式会社リコー インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
KR102286377B1 (ko) * 2014-11-21 2021-08-04 제록스 코포레이션 불소실리콘 소유성 저접착 항-습윤 코팅물

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005178132A (ja) 2005-07-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10717297B2 (en) Inkjet recording method and inkjet recording apparatus
KR100898516B1 (ko) 액체 방울 토출 헤드 및 화상 형성 장치, 액체 방울 토출장치, 기록 방법
RU2638758C2 (ru) Способ струйной записи и устройство для струйной записи
JP5112714B2 (ja) インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
US8173227B2 (en) Recording ink, ink media set, ink cartridge, ink recorded matter, inkjet recording apparatus, and inkjet recording method
US8240836B2 (en) Recording ink, ink media set, ink cartridge, ink recorded matter, inkjet recording apparatus, and inkjet recording method
EP1937485B1 (en) Ink-media set, ink jet recording method and ink jet recording apparatus
EP2028242B1 (en) Inkjet ink, and ink cartridge, inkjet recording method, inkjet recording apparatus and ink record using the same
US7533961B2 (en) Imaging method and image forming apparatus
JP6582397B2 (ja) インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
US7837299B2 (en) Liquid ejecting head and method of manufacturing the same, image forming apparatus, liquid drop ejecting device, and recording method
JP4936738B2 (ja) 液体吐出ヘッド及び画像形成装置
JP2008101192A (ja) 記録用インク、並びにインクメディアセット、インクカートリッジ、インク記録物、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法
EP1945456B1 (en) Liquid ejecting head, image forming apparatus
JP2017105159A (ja) インクジェット記録方法、インクジェット記録装置
JP5568862B2 (ja) インクジェット記録用インク、インクカートリッジ、記録方法及び記録物
US7766454B2 (en) Liquid discharge head, liquid discharger, and image forming apparatus, including silicone resin layer formed on discharge side of head
JP6808942B2 (ja) インク、インクカートリッジ、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及びインク記録物
JP4416489B2 (ja) インクジェットヘッド及び画像記録装置
JP4627422B2 (ja) 液滴吐出ヘッドの製造方法
JP5286874B2 (ja) 記録用インク、並びにインクカートリッジ、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、及びインク記録物
JP5157730B2 (ja) インクジェット用インク、並びにインクカートリッジ、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法、及びインク記録物
JP2017043082A (ja) インクジェット記録方法、インクジェット記録装置
JP2024047539A (ja) インク、画像形成装置、及び画像形成方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051020

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20081010

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081028

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081212

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090317

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090514

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20091124

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20091124

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4416489

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121204

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131204

Year of fee payment: 4

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees