JP2007252463A - 血液処理用フィルター装置の製造方法及び血液処理用フィルター装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】軟質ポリ塩化ビニル製シートとポリエステル製不織布の組み合わせのように、一般には同時溶融が困難な組み合わせである場合でも、スパークが発生し難く安定生産性に優れるように高周波溶着しても充分な耐破裂性を有する血液処理用フィルター装置が得られる製造方法、及び血液処理用フィルター装置を提供する。
【解決手段】可塑性シート状非多孔質体2とメイン多孔質体4との間にサブ多孔質体3を配置し、この積層物を高周波溶着することにより第1シール区域6を形成する工程を含み、血液の入口1と出口2とが多孔質体によって隔てられた血液処理用フィルター装置を製造する方法において、前記メイン多孔質体4の一部または全部に、極性官能基を有するポリマー材料で表面改質された誘電率(ε)1.58以上の高誘電率多孔質体を用いることを特徴とする血液処理用フィルター装置の製造方法。
【選択図】 図2

Description

本発明は、シート状非多孔質体と多孔質体とを含む積層物を高周波ウェルダーによって溶着する血液処理用フィルター装置の製造方法及び血液処理用フィルター装置に関する。特に、実質的に接着性を持たない、または一般には同時溶融が困難であるシート状非多孔質体と多孔質体との接合部を含むが、その実使用条件下に於ては十分な耐破裂性を有する血液処理用フィルター装置の製造方法、及び血液処理用フィルター装置に関する。
従来、浮き輪や血液バッグ、ポリ袋等に代表される軟質ポリ塩化ビニル製シートやポリオレフィンフィルム等のシート状非多孔質体同士の溶着物には、使用に際してその接合部に圧力や荷重が加わるために、優れた耐破裂性が要求されてきた。その要求に応える溶着物を生産する技術として、高周波溶着やヒートシール等の溶着技術が多用されてきた。例えば、融点が80℃〜250℃の範囲内にある樹脂材から構成される第1の層と、1MHzにおける誘電率をε2、誘電力率をtanδ2としたとき、ε2・tanδ2が0.05以上の樹脂材から構成される第2の層と、第1の層と同一の樹脂材から構成される第3の層からなる複合基材を高周波溶着またはヒートシールで溶着した医療容器が開示されている(特許文献1)。
また、シート状非多孔質体と多孔質体からなるフィルター装置の溶着に際しても、これらの技術の応用展開が試みられている。例えば、シート状非多孔質体と多孔質体を高周波で直接一体化し、その一体化したシール区域の外側でも、入口側と出口側のシート状非多孔質体を溶着することで血液の漏れを防止したフィルター装置(特許文献2)や、シール区域からの多孔質体のはみ出し幅を一定の範囲とすることによって、遠心時のシール区域の耐割れ性を向上させたフィルター装置(特許文献3)が開示されている。
さらに、血液の流れが阻害されることなくろ過できるフィルター装置として、シート状非多孔質体フレームと一旦溶着し、該フレームをさらに入口を有するシート状非多孔質体と出口を有するシート状非多孔質体で挟み、溶着して作製したフィルター装置(特許文献4)や、出口側容器側の間に厚み1cmに換算した時の通気度が3〜40cc/cm2/秒のフィルター要素を含む可撓性フィルター装置(特許文献5)が知られている。
しかしながら、特許文献2から5の技術は遠心や血液濾過における取り扱い性の改善に着目したものであり、本発明のように、生産時にはスパークが発生し難く安定生産が可能な条件で溶着しつつも、充分な耐破裂性を有する血液処理用フィルターを得るという新たな視点に着目した検討はなされていない。
一方、シート状非多孔質体と多孔質体とを含む積層物を高周波によって溶着した際に、溶着部位の断面構造が、非多孔質体材料のみからなる層A、非多孔質体材料と多孔質体材料とが混在している複合材料層B、および多孔質体材料のみからなる層Cの少なくとも3層からなり、複合材料層Bと多孔質体材料層Cとの境界線長さLBCが1.2〜2.5mmの範囲であれば耐破裂性に優れるフィルター装置となることが知られている(特許文献6)。
しかし、ここで開示されている多孔質体材料とシート状非多孔質体で充分な耐破裂性を持たせる為には高周波溶着エネルギーを高める必要があり、そのような条件で生産を行うとスパークが発生しやすく不良率が増加する問題があった。また、スパークの発生を抑えるため印加する陽極電流値を下げると溶着に時間がかかり、生産性の低下を招くという問題が生じ、安定生産の面からの課題が残っていた。即ち、特許文献6の技術は高周波溶着によるフィルター装置の生産性向上の観点からの検討が充分ではなく、本発明者らが本検討によって見出した特定範囲の誘電率を有する高誘電率多孔質体を充填することが血液処理用フィルター装置の生産性向上には極めて重要である、ということの記載及び示唆はない。
特許第3112484号公報 国際公開第02/03909号パンフレット 国際公開第01/91880号パンフレット 欧州特許出願公開第0526678号明細書 国際公開第02/04045号パンフレット 国際公開第03/059611号パンフレット
本発明は、上記の従来技術の問題点を克服したシート状非多孔質体と多孔質体からなる血液処理用フィルター装置の製造方法、及び血液処理用フィルター装置を提供することを目的とする。
詳しくは、従来技術とは違って、スパークが発生し難く安定生産性に優れるように高周波溶着しても充分な耐破裂性を有する血液処理用フィルター装置が得られる製造方法、及び耐破裂性に優れた血液処理用フィルター装置を提供することを目的とする。
さらに詳しくは、軟質ポリ塩化ビニル製シートとポリエステル製不織布の組み合わせのように、一般には同時溶融が困難な組み合わせである場合でも、スパークが発生し難く安定生産性に優れるように高周波溶着しても充分な耐破裂性を有する血液処理用フィルター装置が得られる製造方法、及び血液処理用フィルター装置を提供することを目的とする。
上記目的を解決するため、本発明者らは、多孔質体の誘電率εに着目して鋭意検討を重ねた。その結果、従来の高周波溶着方法において、熱可塑性高分子であるシート状非多孔体と、特定の範囲の誘電率εを持つ高誘電率多孔質体を含む多孔質体を用いる製造方法、及び血液処理用フィルター装置により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下を含む。
(1)熱可塑性シート状非多孔質体とメイン多孔質体との間に平均繊維直径が3.0μmを超え50μm以下のサブ多孔質体を配置し、この積層物を高周波溶着することにより第1シール区域を形成する工程を含み、血液の入口と出口とが多孔質体によって隔てられた血液処理用フィルター装置を製造する方法において、前記メイン多孔質体の一部あるいは全てに、極性官能基を有するポリマー材料で表面改質された誘電率εが1.58以上の高誘電率多孔質体を用いることを特徴とする血液処理用フィルター装置の製造方法。
(2)高誘電率多孔質体を30重量%以上含むメイン多孔質体を用いる、(1)記載の血液処理用フィルター装置の製造方法。
(3)厚み方向中央部分に高誘電率多孔質体を配置したメイン多孔質体を用いる、(1)または(2)記載の血液処理用フィルター装置の製造方法。
(4)不織布状のメイン多孔質体を用いる、(1)乃至(3)の何れかに記載の血液処理用フィルター装置の製造方法。
(5)表面がポリマー材料によるコーティングにより改質されている高誘電率多孔質体を用いる、(1)乃至(4)の何れかに記載の血液処理用フィルター装置の製造方法。
(6)多孔質体の周縁部近傍とシート状非多孔質体とを全周に渡って溶着することにより第1シール区域を形成する、(1)記載の血液処理用フィルター装置の製造方法。
(7)第1シール区域の外周全周に渡って二枚以上のシート状非多孔質体が一体化された第2シール区域を形成する、(1)または(6)記載の血液処理用フィルター装置の製造方法。
(8)少なくとも血液の入口と出口、熱可塑性シート状非多孔質体、メイン多孔質体、平均繊維直径が3.0μmを超え50μm以下のサブ多孔質体からなり、前記熱可塑性シート状非多孔質体と前記メイン多孔質体との間に前記サブ多孔質体が配置され溶着された第1シール区域を有し、血液の入口と出口が多孔質体によって隔てられている血液処理用フィルター装置であって、前記メイン多孔質体の一部または全てが、極性官能基を有するポリマー材料で表面改質された誘電率εが1.58以上の高誘電率多孔質体を含むことを特徴とする、血液処理用フィルター装置。
(9)メイン多孔質体が高誘電率多孔質体を30重量%以上含む、(8)記載の血液処理用フィルター装置。
(10)メイン多孔質体がその厚み方向中央部分に高誘電率多孔質体を配置している、(8)または(9)記載の血液処理用フィルター装置。
(11)メイン多孔質体が不織布である、(8)乃至(10)の何れかに記載の血液処理用フィルター装置。
(12)高誘電率多孔質体の表面がポリマー材料によってコーティングにより改質されている、(8)乃至(11)の何れかに記載の血液処理用フィルター装置。
(13)第1シール区域が多孔質体の周縁部近傍の全周に渡って形成されている、(8)記載の血液処理用フィルター装置。
(14)第1シール区域の外側全周に渡って流体の入口側のシート状非多孔質体と流体の出口側のシート状非多孔質体が溶着された第2シール区域を持つ、(8)または(13)記載の血液処理用フィルター装置。
本発明によれば、前記発明の構成を有することにより、スパークが発生し難く安定生産性に優れた高周波溶着が可能となると同時に、充分な耐破裂性を有する血液処理用フィルター装置を得ることができる。さらに、軟質ポリ塩化ビニル製シートとポリエステル製不織布の組み合わせのように、一般には同時溶融が困難な組み合わせである場合でも、スパークが発生し難く安定生産性に優れ、しかも時間を延ばさずに溶着することが可能となると同時に、充分な耐破裂性を有する血液処理用フィルター装置を得ることができる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明は、高周波溶着によって血液処理用フィルター装置を製造する方法であり、また血液処理用フィルター装置に関するものである。
先ず、高周波による2材料以上の被溶着物の製造方法について簡単に説明する。高周波溶着は、高周波の印加エネルギーにより材料が内部で発熱し、この熱エネルギーで材料同士が溶融接着することで達成される。従って、内部で発生する熱での溶融のしやすさが溶着の成否を決める重要な因子となる。この際、材料の単位体積当たりの単位時間に発生する材料の発熱量P[W/cm3]は次式(1)および(2)で表されることが知られている。
P=(5/9)・E2・f・ε・tanδ・10-12[W/cm3] (1)
E=V/d[V/m] (2)
ここで、E[V/m]は電界強度、f[Hz]は印加周波数、εは材料の誘電率、tanδは材料の誘電力率、V[V]は印加電圧、d[m]は被溶着物を高周波溶着用の金型に挟んだときの金型間距離である。
以上のことから明らかなように、高周波溶着時に材料で発生する熱エネルギー、つまり材料の発熱量Pは、材料側因子の誘電率εと誘電力率tanδ、機械側因子の電界強度Eの2乗、周波数fに比例する。従って、材料が同じであるならば、電流を上げて電圧を高める、金型間距離を小さくする、溶着時間を長くする等によって材料内部で発生する熱量を制御できる。即ち、高周波溶着によって血液処理用フィルター装置を製造するには、金型にシート状非多孔質体と多孔質体との積層物をセットし、適切な金型間距離と周波数で電圧を所定時間印加して高周波を発生させ、熱溶融させる方法を例示することができる。
これらの各因子のレベルは、用いる材料の特性や製造する血液処理用フィルター装置のサイズ、耐破裂性のレベル等を勘案して印加電圧、印加電流、印加周波数、金型間距離等が適宜設定される。
本発明においては、先ず、熱可塑性シート状非多孔質体とメイン多孔質体との間にサブ多孔質体を配置する。次に、この積層物を高周波溶着装置の金型にセットして一定の圧力でプレスした後、前述のとおり高周波溶着することにより第1シール区域を形成する。その際、前記メイン多孔質体の一部あるいは全てに、極性官能基を有するポリマー材料で表面改質された誘電率εが1.58以上の高誘電率多孔質体を用いることを特徴とする。
本発明で言うシート状非多孔質体とは、熱可塑性のシート状もしくはフィルム状の軟質高分子であり、図4あるいは図5に示すような血液の流通部分に穴の開いたシート状非多孔質体(シート状非多孔質体フレーム)も含む。その素材を例示すると、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−スチレンの共重合体またはその水添物、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体またはその水添物等の熱可塑性エラストマー、および、ポリオレフィン、エチレン−エチルアクリレート等の軟化剤と熱可塑性エラストマーの混合物等が挙げられ、中でも生産性の点および入手のしやすさから、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン、およびこれらを主成分とする熱可塑性エラストマーが好ましく、更に軟質ポリ塩化ビニル、熱可塑性エラストマーが好ましい。
なお、シート状非多孔質体2に血液の入口1、出口5が設けられており、これらで多孔質体3,4を挟み込み(図1を参照)、その後溶着することによって血液処理用フィルター装置を得ることができる(図2を参照)。または血液の入口1、出口5になる部品をシート状非多孔質体2と、多孔質体3,4と予め溶着させたシート状非多孔質体フレーム8との間に挟み込み、さらに溶着することによっても、血液の入口1と出口5が多孔質体3,4によって隔てられた血液処理用フィルター装置が得られる(図3及び図4を参照)。
本発明で言う血液の入口及び出口とは、血液処理用フィルター装置の外面に二箇所設けられた流通及び接続のための部分のことであり、一方は血液を該フィルター装置内部へ導入する部分であり、他方は該フィルター装置内部の多孔質体を通過した血液を外部へ導出する部分である。これらの入口及び出口は、該フィルター装置内部の多孔質体によって隔てられて設置されている。
具体的には、図2あるいは図5に示すように、シート状非多孔質体2の外面に設置された部品を例示することができる。このような入口1と出口5は、シート状非多孔質体2上に穴やスリットを形成し、別途成形された流通及び接続のための部品を接着剤やヒートシールまたは高周波溶着により接着して作ることができる。または、図4に示すように、円形チューブ1,5をシート状非多孔質体2とシート状非多孔質体フレーム8の間に挿入し、シート状非多孔質体2とシート状非多孔質体フレーム8とは接着させるがチューブは開口したままとし、この部分に入口と出口としての機能を持たせても良い。あるいは、入口1と出口5がシート状非多孔質体を生産する段階で同時に一体成形されたものでも良い。血液の入口1及び出口5用の部品の素材は、例示すると、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−スチレンの共重合体またはその水添物、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体またはその水添物等の熱可塑性エラストマー、および、ポリオレフィン、エチレン−エチルアクリレート等の軟化剤と熱可塑性エラストマーの混合物等が挙げられ、中でも生産性の点および入手のしやすさから、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン、およびこれらを主成分とする熱可塑性エラストマーが好ましく、更に軟質ポリ塩化ビニル、熱可塑性エラストマーが好ましい。一方でヒートシール、高周波溶着等でシート状非多孔質体に入口と出口となる部品を接着させて大量に生産する場合には、シート状非多孔質体と熱的、電気的性質が近く、素材間に接着性のあるものが好ましい。
本発明で言うメイン多孔質体とは、採血された後に抗凝固剤や保存液を加える等の人的な処理がなされて調製された血液製剤を濾過することができる、連続する細孔を持つシート状多孔構造体であり、不織布、織布、編布、繊維塊等の繊維状多孔質体、あるいはスポンジ状多孔質体、多孔膜、粒子の焼結体等の三次元網目状連続細孔を有する非繊維状多孔質体を挙げることができる。この中でも、生産性と取り扱い性に優れる不織布あるいはスポンジ状多孔質体が好ましく、コストが低いことから不織布が最も好ましい。
メイン多孔質体が不織布の場合、その平均繊維直径は0.3μm以上3.0μm以下が好ましく、さらに0.8μm以上2.5μm以下であることがより好ましい。一方、メイン多孔質体がスポンジ状多孔質体である場合、その平均細孔径は1μm以上60μm以下が好ましく、更には2μm以上30μm以下が好ましく、3μm以上20μm以下であることがより好ましい。平均繊維直径が0.3μm未満、あるいは平均細孔径が1μm未満である場合、安定して製造することが難しくなるばかりか、血液処理フィルターとして使用する場合には、血液を濾過する際の圧力損失が高すぎるために濾過流速が低下し、血球の目詰まりが増加する傾向にあるため好ましくない。平均繊維直径が3.0μmを超える、あるいは平均細孔径が60μmを超えると、血液処理フィルターとして使用する場合、多孔質体の比表面積が小さくなることにより、白血球等の濾過により取り除きたい成分の除去能力が低下するため好ましくない。
不織布あるいはスポンジ状多孔質体の素材としては特に限定はないが、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリ−4−メチルペンテン、セルロース、セルロールアセテート等を挙げることができる。この中でも生産性の点および入手のしやすさから、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレンは好ましい素材であり、特に不織布の場合には、ポリエステルが好ましい。
なお、繊維直径の測定は以下の手順によって行う。実質的に均一と認められる繊維状多孔質体の一部をサンプリングし、走査電子顕微鏡などを用いて写真に撮る。サンプリングに際しては、繊維状多孔質体を一辺が0.5cmの正方形によって区分し、その中から6箇所をランダムサンプリングする。ランダムサンプリングするには、例えば上記各区分に番号を設定した後、乱数表を使うなどの方法で必要個所の区分を選べば良い。また、繊維状多孔質体の表裏両面のうち、初めにサンプリングした3区分は一方の面(便宜上、以下X面と呼ぶ)について、また残りの3区分は他方の面(X面の裏面、便宜上、以下Y面と呼ぶ)について、その中央部分を拡大倍率500〜2500倍で写真に撮る。拡大倍率は繊維状多孔質体の平均繊維直径により、測定を行い易い繊維の直径が撮影できる倍率を選択する。
サンプリングした各区分について中央部分及びその近傍の個所の写真を撮っていき、その写真に撮られた繊維の合計本数が100本を越えるまで写真を撮る。このようにして得た写真について、写っている全ての繊維の直径を測定する。ここで直径とは、繊維軸に対して直角方向の繊維の幅をいう。測定した全ての繊維の直径の和を、繊維の数で割った値を平均繊維直径とする。但し、複数の繊維が重なり合っており、他の繊維の陰になってその幅が測定できない場合、また、複数の繊維が溶融するなどして、太い繊維になっている場合、更に著しく直径の異なる繊維が混在している場合、等々の場合には、これらのデータは削除する。また、X面とY面とで明らかに平均繊維直径が異なる場合には、もはやこれを単一な繊維状多孔質体とは認めない。ここで「明らかに平均繊維直径が異なる」とは、統計的に有意差が認められる場合をいう。この場合は、X面側とY面側とを異なる繊維状多孔質体としてとらえ、両面の境界面を見つけた後、分別し、両者の平均繊維直径を別々に測定し直す。
また、スポンジ状多孔質体の平均細孔径は、水銀圧入法で測定した値を示す。即ち、水銀圧入圧0.1psiaの時の水銀圧入量を0%、水銀圧入圧180psiaの時の水銀圧入量を100%としたときの、50%の水銀圧入圧に相当する細孔径を平均細孔径とする。
本発明においては、上記したメイン多孔質体の中でも、極性官能基を有するポリマー材料で表面改質され、周波数100kHzにおける誘電率εが1.58以上の範囲である繊維状多孔質体を高誘電率多孔質体と定義し、メイン多孔質体の一部あるいは全てにかかる高誘電率多孔質体を用いることが必要である。高誘電率多孔質体の形態としては、織布、編布、繊維塊等の繊維状多孔質体を挙げることができるが、生産性と取り扱い性の点から、不織布が好ましい。
高周波溶着については、式(1)および(2)を用いて先に説明したとおり、材料の発熱量Pは、材料側因子の誘電率εと誘電力率tanδ、機械側因子の電解強度Eに比例するので、材料の誘電率ε及び誘電力率tanδがより高いと発熱量はより上がり、溶着しやすくなると考えられていた。
ところが、本発明者らが検討を進めたところ、シート状非多孔質体が熱可塑性高分子であるとき、本発明のような多孔構造を有する多孔質体と十分に溶着させるには、多孔質体の誘電力率tanδの影響は小さく、誘電率εが主な溶着支配因子であることをつきとめた。即ち、誘電率εが特定の高い範囲にある高誘電率多孔質体を含むことによって、スパークが発生し難く安定生産性に優れた高周波溶着が可能となると同時に、充分な耐破裂性を有する血液処理用フィルター装置を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
本発明によれば、メイン多孔質体全てに、誘電率εが1.58より小さい多孔質体を用いると高周波による溶着が難くなり、得られる血液処理用フィルター装置の耐破裂性の低下が生じたり、バラツキの増加を招く危険がある。しかしながら、耐破裂性を高めるために溶着時間を長くする、または陽極電流値を上げて高周波の印加エネルギーを大きくすると、生産性の低下やスパークが発生し易くなる等の不具合が発生する恐れがある。スパークが発生するとシール領域に欠陥が生じ、シール部に穴が開き、その穴から血液が漏れるため血液処理用フィルター装置として機能しないといった不具合が発生する危険が高まり好ましくない。またスパークした際には材料の焦げが付近に付着し、血液処理用フィルター装置内部に混入する恐れがある。
以上の理由から、本発明においては、メイン多孔質体の一部あるいは全てに誘電率εが1.58以上の高誘電率多孔質体を用いて高周波溶着することが必要である。但し、誘電率εが1.86を超えると高誘電率多孔質体の高周波応答性が高くなり、溶着時の電流、電圧、溶着時間の僅かな差で溶着状態が変化するという生産安定性の低下を招く恐れがあるため、高誘電率多孔質体の誘電率εの範囲は好ましくは1.58以上1.86以下であり、より好ましくは1.59以上1.80以下であり、さらに好ましくは1.60以上1.70以下である。
ここで、本発明における多孔質体の誘電率εの測定手順を説明する。
本発明の誘電率εは、ASTM−D150−95に準じた測定方法に従い、また多孔質体材料を密度0.60g/cm3に圧縮して測定した値である。本発明において、装置はSolartron社製126096型誘電体インピーダンス測定システム一式であり、1260インピーダンスアナライザ、1296誘電体測定用インターフェイス、12962Aサンプルホルダを組み合わせたシステムを使用した。サンプルホルダはガードリング付円板電極であり、主電極サイズは直径20mmを選択する。測定室温は26±1℃、湿度は40±3%とする。
測定サンプルは、多孔質体を直径25〜30mmの円にカットし、重量を測定して、密度を0.60g/cm3になるように、サンプル全体を均一に圧縮する。圧縮した際のサンプル厚みは1.5〜2.5mmとなるように、必要枚数カットし、重ね合わせて調整する。密度を0.60g/cm3に圧縮することが困難な場合は、事前に圧縮試験機を用い、サンプルを目標とするサンプル厚み以上の厚みに圧縮加工したものを、測定時に電極で挟み込み、密度が0.60g/cm3となる厚みに圧縮調整して測定しても良い。なお、サンプルホルダの電極部分に歪が生じると、マイクロメータ表示値の距離と実際の電極間距離が異なり、または平行度が悪くなって測定値の信頼性が得られなくなる。従って、電極部分に歪が生じないような注意が必要である。
誘電率εの測定は、周波数100kHzで行う。ただし、振動等で測定値がばらつく可能性があるので、100kHzを含む1MHzから10kHzまでの範囲で、異なる周波数毎に5点以上、より正確には10点以上測定する。測定後、100kHzにおけるサンプルのキャパシタンス(C値)を読み取り、またその前後周波数のキャパシタンス曲線を確認し、100kHzにおけるC値に外部環境によるノイズが入っていないことを確認する。ノイズが入っており100kHzのC値が前後周波数のキャパシタンス曲線から外れていた場合はそのまま再測定する。サンプルのキャパシタンスC値を測定後、サンプルホルダからサンプルを取り出し、同じ電極間距離において空気のキャパシタンス(C0値)を同様に測定する。100kHzにおけるサンプルのC値及び空気のC0値から誘電率ε(ε=C/C0)を算出する。このような測定を、同一材料から少なくとも3サンプル、より確度を高めるためには5サンプルを作製し、各々1回測定し、その平均値を誘電率εとする。
本発明においては、高誘電率多孔質体は、極性官能基を有するポリマー材料により表面改質されている。メイン多孔質体の全てが本発明で言う高誘電率多孔質体よりも低い誘電率εである場合は、極性官能基を有するポリマー材料で表面改質することにより、多孔質体材料全体の誘電率εを上昇させ、高誘電率多孔質体に加工して用いる。その際、以下に述べるポリマー材料の種類や、多孔質体表面のポリマーの存在量により誘電率εを所望の値に変化させることができる。また、メイン多孔質体の一部または全てが、既に本発明で言う高誘電率多孔質体である場合であっても、表面改質によってより好ましい範囲の誘電率εに改質することができる。
表面改質されていることが必要な理由は定かではないが、多孔質体表面に存在するポリマー材料がより早く溶融し始めることにより多孔質体自体の溶融を促進し、またポリマー材料が接着剤のごとき役割を担うことにより、多孔質体表面間の溶融接着がよりスムーズに促進され、多孔質体同士の溶融接着がより安定するものと推定される。その結果、耐破裂性をより安定することが出来るものと考えられる。
ポリマー材料としては、例えば水酸基、アミノ基等の官能基を有する高周波応答性の高いポリマー材料が好ましい。特に、血液の流れ性改善や白血球との親和性向上を目的として、非イオン性親水基と塩基性含窒素官能基を有するポリマー材料が好ましい。この場合、塩基性窒素原子の含量は0.2重量%以上4.0重量%以下が好ましく、非イオン性親水基としては水酸基、アミド基、ポリエチレンオキシド鎖などを挙げることができる。
非イオン性親水基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ビニルアルコール(酢酸ビニルを重合して得られた高分子を加水分解することにより調製したもの)、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。上記モノマーの中でも、入手の容易さ、重合時の取り扱い易さ、白血球含有液の処理性能などの観点から、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
塩基性含窒素官能基としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、4級アンモニウム基など、及びピリジル基、イミダゾル基等の含窒素芳香環基等が挙げられる。塩基性含窒素官能基を有するモノマーとしては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリル酸の誘導体、アリルアミン、p−ビニルピリジン、4−ビニルイミダゾール等の含窒素芳香族化合物のビニル誘導体、及び上記のビニル化合物をハロゲン化アルキル等と反応させることにより得られる4級アンモニウム塩などが挙げられる。
表面改質の方法としては、既知の技術を用いて行うことができ、例えばコーティング、表面グラフト重合等が挙げられるが、操作が簡便であること、コストを低く抑えることができること等により、コーティングが好ましい。
表面改質によるポリマーの存在量は、多孔質体の単位表面積あたり、好ましくは2mg/m2以上35mg/m2以下、さらには3mg/m2以上23mg/m2以下、最も好ましくは4mg/m2以上11mg/m2以下が相応しい。
多孔質体表面にあるポリマー材料の存在量の算出方法は、表面改質前後の重量変化から簡易的に求めることができる。また、コーティング等の物理的方法によって多孔質体表面にポリマー材料を導入している場合には、ポリマー材料のみを溶解する良溶媒でポリマー材料を溶解させ、溶解量を定量することでポリマー材料の存在量を算出することも可能である。また、多孔質体そのものを溶媒により全溶解させて核磁気共鳴分光法(NMR)により算出する方法や、ポリマー材料中にアミノ基などの荷電性官能基が含まれていて、その共重合組成が既知の場合には、その荷電性官能基にイオン的に吸着する色素を用いる色素吸着法による算出も可能である。
例えば正の荷電を有するアミノ基などの塩基性基を有するポリマー材料の場合、負の荷電を有するトリパンブルーのような色素をその塩基性部分に吸着させ、その吸着量または吸光度の変化量から多孔質体表面にある塩基性基の量を定量化することができる。より具体的には、トリパンブルーを含む、pHが約6の水溶液を調製してこれを元液とする。次にこの元液を多孔質体に適当量含浸させ、16時間以上室温で接触させた後、元液を多孔質体に含浸させた後の上清液を波長578nmの可視光で測定し、元液と上清液の吸光度の差から多孔質体単位重量当たり、または多孔質体単位表面積当たりのポリマー材料の存在量を算出する。
なお、多孔質体の比表面積はBET吸着法により算出した値とする。自動比表面積測定装置(SHIMADZU TriStar3000)を使用し、約0.3gの多孔質体を測定する。
本発明においては、メイン多孔質体として、高誘電率多孔質体を30重量%以上含むものを用いることが好ましい。30重量%より少ない場合、メイン多孔質体のうち高誘電率多孔質体が寄与する割合が減り、高周波によるメイン多孔質体の溶融が不十分となり、溶着された血液処理用フィルター装置の耐破裂性の低下、あるいは耐破裂性のバラツキが大きくなる、といった不具合が懸念される。メイン多孔質体の高誘電率多孔質体が占める割合は、55重量%以上がより好ましく、80重量%以上が更に好ましく、全てが高誘電率多孔質体であることが最も好ましい。
さらに本発明においては、メイン多孔質体として、高誘電率多孔質体をその厚み方向中央部分に配置して用いることが好ましい。高周波溶着を行った場合、メイン多孔質体は厚み方向の中央部分から昇温し始める。従って、この中央部分に高誘電率多孔質体を配置することにより、中央部分の昇温が早く進み、その熱が中央部分周囲へより早く伝わり、溶融すべき多孔質体全体を素早く、より均一に昇温、溶融させることができるためである。ここで、厚み方向中央とは、血液処理用フィルター装置に積層されたメイン多孔質体を、シート状非多孔質体の面に対し直角方向に切断してその断面を見たとき、メイン多孔質体の断面厚み方向で、その中央を含む部分を言う。
本発明のサブ多孔質体は、血液中に含まれる微小凝集物の除去と、高周波による溶融時にその細孔部分に溶融した材料を保持し、アンカー構造を形成して接合部分の耐破裂性を確保する機能がある。従って、本発明の血液処理用フィルター装置においては、図1および図3で示すように、シート状非多孔質体2とメイン多孔質体4の間にサブ多孔質体3を配置する。かかる機能を満足するサブ多孔質体3は、平均繊維直径が3μmを超え50μm以下の繊維状多孔質体であり、さらに8μm以上36μm以下がさらに好ましく、10μm以上28μm以下が最も好ましい。またサブ多孔質体の平均繊維直径は、メイン多孔質体4として繊維状多孔質体を使用する場合、その平均繊維直径よりも大きいことが好ましい。
サブ多孔質体の形態としては、織布、編布、繊維塊等の繊維状多孔質体を挙げることができるが、生産性と取り扱い性の点から、不織布が好ましい。またサブ多孔質体は、その機能から必ずしも高誘電率多孔質体を用いなくても良く、素材としても特に限定はない。使用しうる素材の例として、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリ−4−メチルペンテン、セルロース、セルロールアセテート等を挙げることができる。この中でも生産性の点および入手のしやすさから、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレンは好ましい素材であり、特にポリエステルが好ましい。
本発明においては、シート状非多孔質体2とメイン多孔質体4との間にサブ多孔質体3を配置した後、この積層物を高周波溶着することにより、帯状の第1シール区域6を形成する(図2、4、5を参照)。具体的には、図2に示すように、高誘電率多孔質体を含むメイン多孔質体4をサブ多孔質体3で挟み、更に2枚のシート状非多孔質体2で挟むように配置し一体化する、あるいは図4に示すように、メイン多孔質体4をサブ多孔質体3で挟み、更に2枚のシート状非多孔質体フレーム8で挟むように配置し一体化する、あるいは図5に示すように、シート状非多孔質体フレーム8とメイン多孔質体4の間にサブ多孔質体3を配置し一体化した形態を例示することができる。
この第1シール区域6は、シート状非多孔質体2と多孔質体3,4とを高周波溶着して一体化する際に、強度の観点から多孔質体の周縁部全周に渡って形成することが好ましい。
さらに、本発明においては、第1シール区域6の外側全周に渡って2枚以上のシート状非多孔質体同士を溶着し一体化することにより、第2シール区域7を形成することが好ましい。第2シール区域を形成することにより、例えば図2に示すように、第1シール区域からはみ出る多孔質体が外界に露出することが防がれるので、本フィルター装置を医療用具として使用する場合には、無菌性の確保の観点からも好ましい。
また、図4あるいは図5で示すような第1シール区域6のみでは多孔質体3,4をシート状非多孔質体で密封できない場合、第1シール区域6を形成した多孔質体を両面から覆うようにさらに別の2枚のシート状非多孔質体2を配置し、これと第1シール区域を持つシート状非多孔質体フレーム8を一体化させて第2シール区域7を作ることで、多孔質体は密封され、無菌性を保つことが可能となる。第2シール区域7は、高周波溶着やヒートシールなどで溶融接着することにより行うことができる。
[実施例]
以下実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって範囲を限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における共通の血液処理用フィルター装置作製方法、測定方法を下記に示す。
[血液処理用フィルター装置の耐圧時間測定方法]
(1)血液処理用フィルター装置の作製方法
メイン多孔質体、サブ多孔質体を91mm×74mmの長方形に切断し、これらを積層した積層物を作製した。図2に示すように、この積層物の上下に91mm×74mm以上の大きさにカットした、血液の入口および出口を有するシート状非多孔質体を配置した。
これを高周波溶着用の金型に挟み、高周波を印加した。高周波印加を停止してそのまま金型に挟んだ状態で5秒間冷却後、溶着されたフィルター装置を金型から取り出した。なお、高周波溶着に用いた金型は、長方形のフィルター装置が作製できる金型を用いた。即ち、溶着部位の長方形形状のうち、長辺の内周長さが74mm、短辺の内周長さが57mmであり、シール幅が3.5mmであり、そのシール幅のうち平面部が2mmで、その内周側に曲率半径1.0mm、外周側に曲率半径0.5mmの丸みを有している金型であった。高周波溶着は、最大高周波出力5KW、発振周波数40.46MHz、また温調機として溶着金型を取り付けている定盤内に20℃の冷却水を循環させる冷却水循環装置を備えた高周波溶着機を使用した。
(2)血液処理用フィルター装置の耐圧時間測定方法
血液処理用フィルター装置に一定圧力をかけた時、破裂するまでの時間を測定する方法である。血液入口に軟質ポリ塩化ビニル製チューブを溶剤で接着し、金属の導管を接続する接続部を作製した。一方、出口は片止めした軟質ポリ塩化ビニル製チューブを接着させて密封した。血液入口のチューブに金属導管を接続し、この導管に圧気ラインを接続した。その後、フィルターを水温30℃の水中に沈め、フィルター装置が水面上に出ないように水面に網状固定板を取り付け1分間待機した。フィルター装置を水中に沈めたままの状態で、導管から80kPaの空気を注入し、フィルター装置の第1シール区域から空気が漏れるまでの時間を測定した。時間は秒単位とし、その対数値を評価値とした。同様の操作を5回行い、平均値を破裂時間Log秒とした。なお、作製時にスパークが発生していない血液処理用フィルター装置を測定した。
[スパーク頻度]
上述した血液処理用フィルター装置を100個毎、高周波溶着し、そのときのスパークの頻度をカウントした。
シート状非多孔質体として厚み0.41mmの軟質ポリ塩化ビニル製シートを用いた。血液の入口および出口は軟質ポリ塩化ビニル製シートに穴を形成し、別途成型した軟質ポリ塩化ビニル製の部品を高周波溶着により接続することで作製した。
サブ多孔質体として、平均繊維直径が12μm、目付が30g/m2、厚みが0.21mmのポリエステル製不織布を用いた。メイン多孔質体は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(97モル%)とN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(3モル%)からなるコポリマー(以下、HM−3と略す)でコーティングした2種類(メインA、メインB)のポリエステル製不織布を用いた。メインAは平均繊維直径1.7μm、目付が66g/m2、厚み0.40mm、コート量(ポリマーの存在量)7.3mg/g、誘電率ε1.58のポリエステル製不織布であり、メインBは平均繊維直径1.2μm、目付40g/m2、厚み0.20mm、コート量(ポリマーの存在量)7.4mg/g、誘電率ε1.58のPET製不織布であった。なお、コーティングは以下の方法で行った。まずHM−3を水/エタノールの混合溶媒(水/エタノールの重量比が5/95)に溶解し、0.1重量%の溶液を調製した。この溶液にメインA及びBを浸し、余分な液を除去した後、40℃で16時間真空乾燥を行った。
サブ多孔質体、メインA、メインBを、サブ多孔質体(4枚)−メインA(1枚)−メインB(32枚)−メインA(1枚)−サブ多孔質体(4枚)の順に積層した。血液処理用フィルター装置は、上述した多孔質体の積層体の上下を上述した軟質ポリ塩化ビニル製シートで挟み、溶着部位の断面厚みが1.4mmになるように作製した。なお、陽極電流を0.53A、溶着時間を6.0秒とした条件で高周波溶着を行った。
この様にして作製した血液処理用フィルター装置の耐圧時間、スパーク発生数を測定した。その結果を表1に示す。
メインA、メインBのコート量を変更し、誘電率εを変更した以外は、実施例1と同様の方法で血液処理用フィルター装置を作製し、実施例1と同じ試験を行った。メインAのコート量は8.2mg/g、誘電率εは1.59に変更され、メインBのコート量は8.8mg/g、誘電率εは1.60に変更されていた。その結果を表1に示す。
メインA、メインBのコート量を変更し、誘電率εを変更した以外は、実施例1と同様の方法で血液処理用フィルター装置を作製し、実施例1と同じ試験を行った。メインAのコート量は10.4mg/g、誘電率εは1.62に変更され、メインBのコート量は11.1mg/g、εは1.62に変更されていた。その結果を表1に示す。
メインA、メインBのコート量を変更し、誘電率εを変更した以外は、実施例1と同様の方法で血液処理用フィルター装置を作製し、実施例1と同じ試験を行った。メインAのコート量は17.7mg/g、誘電率εは1.68に変更され、メインBのコート量は18.2mg/g、誘電率εは1.71に変更されていた。その結果を表1に示す。
メインA、メインBのコート量を変更し、誘電率εを変更した以外は、実施例1と同様の方法で血液処理用フィルター装置を作製し、実施例1と同じ試験を行った。メインAのコート量は28.6mg/g、誘電率εは1.84に変更され、メインBのコート量は32.3mg/g、誘電率εは1.86に変更されていた。その結果を表1に示す。
メインAを、HM−3を実施例1と同様の方法でコーティングした平均繊維直径1.7μm、目付66g/m2、厚み0.40mm、コート量7.0mg/g、誘電率ε1.56のポリエステル製不織布(メインC)に変更し、またメインB32枚のうち上下各10枚(計20枚)を、HM−3を実施例1と同様の方法でコーティングした平均繊維直径1.2μm、目付40g/m2、厚み0.20mm、コート量9.2mg/g、誘電率ε1.57のポリエステル製不織布(メインD)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で血液処理用フィルター装置を作製し、実施例1と同じ試験を行った。その結果を表1に示す。
メインAをメインCに変更し、またメインB32枚のうち上下各6枚(計12枚)をメインDに変更した以外は、実施例1と同様の方法で血液処理用フィルター装置を作製し、実施例1と同じ試験を行った。その結果を表1に示す。
メインAをメインCに変更し、またメインB32枚のうち上下各2枚(計4枚)をメインDに変更した以外は、実施例1と同様の方法で血液処理用フィルター装置を作製し、実施例1と同じ試験を行った。その結果を表1に示す。
メインB32枚のうち上下各12枚(計24枚)以外の中央部分8枚をメインDに変更した以外は、実施例1と同様の方法で血液処理用フィルター装置を作製し、実施例1と同じ試験を行った。その結果を表1に示す。
[比較例1]
メインAを平均繊維直径1.7μm、目付が66g/m2、厚み0.40mm、コーティングなし、誘電率ε1.54のポリエステル製不織布に変更し、メインBを平均繊維直径1.2μm、目付40g/m2、厚み0.20mm、コーティングなし、誘電率ε1.56のポリエステル製不織布に変更した以外は、実施例1と同様の方法で血液処理用フィルター装置を作製し、実施例1と同じ試験を行った。その結果を表1に示す。
[比較例2]
メインAをメインCに変更し、またメインB全てをメインDに変更した以外は、実施例1と同様の方法で血液処理用フィルター装置を作製し、実施例1と同じ試験を行った。その結果を表1に示す。
[比較例3]
陽極電流を0.56Aに変更した以外は、比較例2と同様の方法で血液処理用フィルター装置を作製し、実施例1と同じ試験を行った。その結果を表1に示す。
本発明は、輸血用の血液から微小凝集物や白血球のような好ましくない成分を除去する血液処理用フィルター装置の製造方法として有用であり、この血液処理用フィルター装置は、血液の微小凝集物の除去フィルター、血液中の特定の細胞を捕捉するフィルター等、血液処理用フィルター装置として有用である。特に血液中の白血球を除去する白血球除去フィルター装置として有用である。
本発明の血液処理用フィルター装置を高周波溶着で作製する前の、各部品が積層された断面図。 図1を高周波溶着して作製された、本発明の血液処理用フィルター装置の例を示す断面図。 本発明の別仕様の血液処理用フィルター装置を高周波溶着する前の、シート状非多孔質体フレームを含む高周波溶着前の各部品が積層された断面図。 図3を高周波溶着し作製された、本発明の血液処理用フィルター装置の別仕様の例を示す断面図。 本発明のさらに別仕様の、シート状非多孔質体フレームを含む血液処理用フィルター装置の例を示す断面図。 図2の血液処理用フィルター装置の平面図。
符号の説明
1:血液の入口
2:シート状非多孔質体
3:サブ多孔質体
4:高誘電率多孔質体を含むメイン多孔質体
5:血液の出口
6:第1シール区域
7:第2シール区域
8:シート状非多孔質体フレーム

Claims (14)

  1. 熱可塑性シート状非多孔質体とメイン多孔質体との間に平均繊維直径が3.0μmを超え50μm以下のサブ多孔質体を配置し、この積層物を高周波溶着することにより第1シール区域を形成する工程を含み、血液の入口と出口とが多孔質体によって隔てられた血液処理用フィルター装置を製造する方法において、前記メイン多孔質体の一部あるいは全てに、極性官能基を有するポリマー材料で表面改質された誘電率εが1.58以上の高誘電率多孔質体を用いることを特徴とする血液処理用フィルター装置の製造方法。
  2. 高誘電率多孔質体を30重量%以上含むメイン多孔質体を用いる、請求項1記載の血液処理用フィルター装置の製造方法。
  3. 厚み方向中央部分に高誘電率多孔質体を配置したメイン多孔質体を用いる、請求項1または2記載の血液処理用フィルター装置の製造方法。
  4. 不織布状のメイン多孔質体を用いる、請求項1乃至3の何れかに記載の血液処理用フィルター装置の製造方法。
  5. 表面がポリマー材料によるコーティングにより改質されている高誘電率多孔質体を用いる、請求項1乃至4の何れかに記載の血液処理用フィルター装置の製造方法。
  6. 多孔質体の周縁部近傍とシート状非多孔質体とを全周に渡って溶着することにより第1シール区域を形成する、請求項1記載の血液処理用フィルター装置の製造方法。
  7. 第1シール区域の外周全周に渡って二枚以上のシート状非多孔質体が一体化された第2シール区域を形成する、請求項1または6記載の血液処理用フィルター装置の製造方法。
  8. 少なくとも血液の入口と出口、熱可塑性シート状非多孔質体、メイン多孔質体、平均繊維直径が3.0μmを超え50μm以下のサブ多孔質体からなり、前記熱可塑性シート状非多孔質体と前記メイン多孔質体との間に前記サブ多孔質体が配置され溶着された第1シール区域を有し、血液の入口と出口が多孔質体によって隔てられている血液処理用フィルター装置であって、前記メイン多孔質体の一部または全てが、極性官能基を有するポリマー材料で表面改質された誘電率εが1.58以上の高誘電率多孔質体を含むことを特徴とする、血液処理用フィルター装置。
  9. メイン多孔質体が高誘電率多孔質体を30重量%以上含む、請求項8記載の血液処理用フィルター装置。
  10. メイン多孔質体がその厚み方向中央部分に高誘電率多孔質体を配置している、請求項8または9記載の血液処理用フィルター装置。
  11. メイン多孔質体が不織布である、請求項8乃至10の何れかに記載の血液処理用フィルター装置。
  12. 高誘電率多孔質体の表面がポリマー材料によってコーティングにより改質されている、請求項8乃至11の何れかに記載の血液処理用フィルター装置。
  13. 第1シール区域が多孔質体の周縁部近傍の全周に渡って形成された、請求項8記載の血液処理用フィルター装置。
  14. 第1シール区域の外側全周に渡って流体の入口側のシート状非多孔質体と流体の出口側のシート状非多孔質体が溶着された第2シール区域を有する、請求項8または13記載の血液処理用フィルター装置。

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