JP2007252280A - マンノシルエリスリトールリピッドの分離回収方法 - Google Patents

マンノシルエリスリトールリピッドの分離回収方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2007252280A
JP2007252280A JP2006081762A JP2006081762A JP2007252280A JP 2007252280 A JP2007252280 A JP 2007252280A JP 2006081762 A JP2006081762 A JP 2006081762A JP 2006081762 A JP2006081762 A JP 2006081762A JP 2007252280 A JP2007252280 A JP 2007252280A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mannosyl erythritol
lipid
fatty acid
erythritol lipid
water
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2006081762A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4654415B2 (ja
Inventor
Tomotake Morita
友岳 森田
Tokuma Fukuoka
徳馬 福岡
Tomohiro Imura
知弘 井村
Masaru Kitamoto
大 北本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2006081762A priority Critical patent/JP4654415B2/ja
Publication of JP2007252280A publication Critical patent/JP2007252280A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4654415B2 publication Critical patent/JP4654415B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【課題】有機溶媒や特殊な作業設備あるいは大容量連続遠心分離機といった特殊な装置を用いることなく、マンノシルエリスリトールリピッドを簡便かつ効率よく分離回収することができる方法を提供する。
【解決手段】マンノシルエリスリトールリピッドを含有する水性液体、特にシュードザイマ属に属する微生物の培養液において、脂肪酸を共存させて非水溶性の凝集物を生成させ、該凝集物からマンノシルエリスリトールリピドと脂肪酸とを分離する。
【選択図】なし

Description

本発明は、バイオサーファクタントの一種であるマンノシルエリスリトールリピッドの分離回収方法に関する。
糖脂質は、脂質に1〜数十個の単糖が結合した物質であり、生体内において細胞間の情報伝達に関与し、神経系及び免疫系の機能維持にも重要な役割を果たしていることなどが明らかにされつつある。また、糖脂質は,糖の性質に由来する親水性と脂質の性質に由来する親油性の二つの性質を合わせ持つ両親媒性物質であり、このような性質を有する両親媒性物質は界面活性物質と呼ばれている。石油化学工業が隆盛となるまでは、レシチン、サポニン等の生体成分由来の界面活性剤(バイオサーファクタント)が利用されていた。近年、石油化学工業の発展により合成界面活性剤が開発され、その生産量が飛躍的に増加し、日常生活には無くてはならない物質となったが、この合成界面活性剤の使用量の拡大に伴って環境汚染が広がり、社会問題が生じている。このため、安全性が高く、環境に対する負荷を低減できる生分解性の高い界面活性物質の開発が望まれている。
従来より、微生物が生産する界面活性物質としては、糖脂質系、アシルペプタイド系、リン脂質系、脂肪酸系及び高分子系の界面活性物質の5つに分類されている。これらの中でも、糖脂質系の界面活性剤が最もよく研究されており、細菌及び酵母による多くの種類の界面活性物質が報告されている。
前記細菌としては、Pseudomonas属によるラムノリピッド(非特許文献1及び2参照)とユスチラジン酸(非特許文献3参照)、Rhodococcus属によるトレハロースリピッド(非特許文献4参照)などが知られている。しかし、いずれも生産量は15g/L以下である。
前記酵母としては、Candida属によるソホロースリピッドとマンノシルエリスリトールリピッド(特許文献1参照)などが知られている。
前記ソホロースリピッドについては、Candida bombicolaを用いてグルコースとオレイン酸の流加培養法により200時間で180g/Lの効率的なソホロースリピッドの生産が可能であることが報告されている(非特許文献5参照)。
前記マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)については、Candida sp.B−7株を用いて5質量%の大豆油から5日間で35g/L(生産速度:0.3g/L/h、原料収率:70質量%)のMELの生産が可能であることが報告されている(非特許文献6及び7参照)。また、Candida antarctica T−34株を用いて8質量%の大豆油から8日間で38g/L(生産速度:0.2g/L/h、原料収率:48質量%)のMELの生産が可能であることが報告されている(非特許文献8及び9参照)。同じく、Candida antarctica T−34株を用いて6日間隔で計3回の逐次流加により24日後に25質量%のピーナッツ油から110g/L(生産速度:0.2g/L/h、原料収率:44質量%)のMELの生産が可能であることが報告されている(非特許文献10参照)。
Candida sp.SY−16株を用いて10質量%の植物油脂から回分培養法により200時間で50g/L(生産速度:0.25g/L/h、原料収率:50質量%)のMELの生産が可能であると共に、流加培養法により20質量%の植物油から200時間で120g/L(生産速度:0.6g/L/h、原料収率:50質量%)のMELの生産が可能であることが報告されている(非特許文献11参照)。
Pseudozyma aphidis株を用いて80質量%の植物油脂から流加培養法により24時間で13.9g/L(生産速度:0.57g/L/h、原料収率:92質量%)のMELの生産が可能であることが報告されている(非特許文献12参照)。
また、醤油醸造工程において副産物として生産されるしょうゆ油(あぶら)を原料としてCandida antarctica T−34株を用いて7日間で8質量%のしょうゆ油から17g/L(生産速度:0.1g/L/h、原料収率:21質量%)のMELの生産が可能であることが提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、化学合成による界面活性剤と比較した場合の価格差は未だ歴然としており、商業利用をコストパフォーマンスの高い物に限定する要因となっている。生産コストを引き上げている要因の一つは、培養終了からの分離精製工程である。
マンノシルエリスリトールリピッドの有効な精製手段の一つは、有機溶媒による抽出方法である。この方法は、酢酸エチルなどの有機溶剤で非水溶性物質を抽出する方法であり、多くの研究者によって用いられているマンノシルエリスリトールリピッドの精製手段である。この方法は、培養終了液からマンノシルエリスリトールリピッドを菌体や水溶性物質と分離して、さらにその後、シリカゲルカラムによるクロマトグラフィーで、原料として添加した油基質や脂肪酸といった共雑物とマンノシルエリスリトールリピッドを高純度に精製することもできる。この方法では、高純度なマンノシルエリスリトールリピッドを得ることができるが、培養液の数倍容量の有機溶剤を使用する必要がある。ここで得られたマンノシルエリスリトールリピッドから有機溶剤を除去したり、その廃液処理には、専用の設備およびエネルギーが必要になり、生産コストの上昇につながる。さらに、有機溶剤の使用は、一般的に環境への負荷および作業者の健康面への影響という観点からも好ましいものではない。
その他、121℃という高温で培養終了液を処理してマンノシルエリスリトールリピッド含有固形物を生じ、分離する方法が報告されている(非特許文献13参照)。この方法は有機溶剤を用いないが、高温処理のための設備とエネルギーが必要であり、また、マンノシルエリスリトールリピッドの分子構造への悪影響が懸念される。さらに本方法では、最終的にマンノシルエリスリトールリピッドを得るために、下記の遠心操作による菌体の分離が必要であるため非効率的である。
培養終了液を遠心分離してマンノシルエリスリトールリピッドと菌体や原料成分を分離する方法が知られている(特許文献3参照)。この方法では有機溶媒を用いる必要がないが、最下層にマンノシルエリスリトールリピッド、中間に菌体、上層に培養液が配向するため、最下層のマンノシルエリスリトールリピッドを効率よく得ることができない。さらに、大型の遠心分離機やその稼動エネルギーも必要である。
したがって、有機溶媒や作業設備あるいは大容量連続遠心分離機といった特殊な装置を用いることなく、さらに菌体などの水溶性物質を除去できる、簡便な生成方法が求められている。このような精製方法によれば、マンノシルエリスリトールリピッドはより安価に、かつより少ない環境負荷をもって市場に提供されることになり、産業上極めて有利となり得る。
特開2002−45195号公報 特開2002−101847号公報 特開2004−254595公報 S.Itoh, H.Honda, Ftonami and T.Suzuki: J. Antibiotics,23,885(1971). M.Yamaguti, A.Sato and R.Yukuyama: Chem.Ind.,17,741(1976). S.S.Bhattacharijee,R.H.Haskins and P.A.Golin: Carbohyd.Res.,13,235(1970). P.Rapp, H.Boch, V.Wary and F.Wagner: J.Gen.Microbiol.,115,491(1979). U.Rau, C.Manzke and F.Wagner: Biotechnol.Lett., 18, 149(1996). T.Nakahara, H.Kawasaki, T.Sugisawa, Y.Takamori and T.Tabuchi: J.Ferment.Technol., 61, 19(1983). H.Kawasaki, T.Nakahara, M.Oogaki and T.Tabuchi: J.Ferment.Technol., 61, 143(1983). D.Kitamoto, S.Akiba, C.Hioki and T.Tabuchi: Agric.Biol.Chem., 54, 31(1990). D.KItamoto, K.Haneishi, T.Nakahara and T.Tabuchi: Agric.Biol.Chem., 54, 37(1990). D.Kitamoto, K.Fijishiro, H.Yanagishita, T.Nakane and T.Nakahara: Biotechnol.Lett., 14, 305(1992). 金,伊炳大,桂樹徹,谷吉樹:平成10年日本生物工学会大会要旨,p195. U.Rau, L.A.Naguyen, H.Roeper, H.Koch and S.Lang: Appl.Microbiol.Biotechnol.,(2005). U.Rau, L.A.Naguyen, H.Roeper, H.Koch and S.Lang: Eur.J.Lipid Sci.Technol.,107,373(2005).
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消することにあり、有機溶媒や作業設備あるいは大容量連続遠心分離機といった特殊な装置を用いることなく、培養終了液等のマンノシルエリスリトールリピド含有水性溶液から、簡便かつ効率的にマンノシルエリスリトールリピッドを分離回収する方法を提供する点にある。
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、マンノシルエリスリトールリピド生産菌をしたマンノシルエリスリトールリピドの生産において、培養液中に生成する凝集物は、マンノシルエリスリトールリピドと脂肪酸からなり、該凝集物中のマンノシルエリスリトールリピドの含有割合は、培養液中にその他の部分に含まれるマンノシルエリスリトールリピドの割合に比べ、遙かに高いことを見いだした。そして、この凝集物は、培養液において沈殿物として得られるか、あるいは共存する脂肪酸の量を増加させることにより容易に沈殿させることが可能であり、しかも、この凝集物は、65℃以上に加温することで高濃度マンノシルエリスリトールリピッドと脂肪酸とに簡単に分離できることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)マンノシルエリスリトールリピッドを含有する水性液体から、マンノシルエリスリトールリピドを分離、回収する方法であって、上記水性液体において脂肪酸の共存下生成する非水溶性の凝集物を採取し、該凝集物からマンノシルエリスリトールリピドと脂肪酸の溶液を回収することを特徴とする、上記マンノシルエリスリトールリピドの分離回収方法。

(2)凝集物を沈殿させる量の脂肪酸を共存させ、凝集物を沈殿物として採取することを特徴とする、上記(1)に記載の分離回収方法。

(3)マンノシルエリスリトールリピドを含有する水性液体が、マンノシルエリスリトールリピド生産菌の培養液であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の分離回収方法。

(4)マンノシルエリスリトールリピド生産菌が、シュードザイマ属に属する微生物であることを特徴とする、上記(3)に記載の分離回収方法。

(5)シュードザイマ属に属する微生物がシュードザイマ・パラアンタクティカに属する微生物であることを特徴とする、上記(4)に記載の分離回収方法。

(6)、凝集物を65℃以上に加温して、マンノシルエリスリトールリピドと脂肪酸溶液を回収することを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の分離回収方法。

(7)凝集物を水で洗浄する工程を含むことを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の分離回収方法。
本発明によれば、有機溶媒や特殊な作業設備あるいは大容量連続遠心分離機といった特殊な装置を用いることなく、例えば、マンノシルエリスリトールリピド生産菌の培養液などの、マンノシルエリスリトールリピド含有水性溶液から凝集物を採取し、この凝集物から高濃度のマンノシルエリスリトールリピッドを極めて簡便にかつ効率的に分離回収することができる。
本発明は、マンノシルエリスリトールリピッドの分離回収方法であって、簡便かつ有機溶媒や特殊な装置を用いない方法であり、以下の方法を含む。
すなわち、本発明のマンノシルエリスリトールリピッドの分離回収方法は、マンノシルエリスリトールリピドを含有する水性液体において脂肪酸の共存下生成する凝集物を得て、該凝集物からマンノシルエリスリトールリピドと脂肪酸溶液を回収するものである。より具体的には、培養で得られたマンノシルエリスリトールリピッドを培養微生物自体が生産した脂肪酸と共存させ、あるいは脂肪酸を培養液に添加することで、脂肪酸との非水溶性凝集物を得て、マンノシルエリスリトールリピドを回収するものである。
上記凝集物は、共存する脂肪酸量を多くすることにより、沈殿物として採取できる。また、採取した凝集物は、必要により一回以上水洗した後、65℃以上の温度、好ましくは65〜80℃の温度に加温するのみで短時間(5〜15分間)のうちに、マンノシルエリスリトールリピドと脂肪酸を含有する上層と、共雑物を含有する下層とに分離する。したがって、本発明によれば、上記温度下でデカンテーションを行うことにより、簡単にマンノシルエリスリトールリピドと脂肪酸の溶液を回収することができる。
本発明の分離精製方法により得られた高濃度マンノシルエリスリトールリピッドと脂肪酸溶液は、有機溶媒で培養終了液から抽出したマンノシルエリスリトールリピッドと脂肪酸の抽出物と同等の純度であり、そのまま原料として製品に配合し得る。さらに、得られた高濃度マンノシルエリスリトールリピッドは、必要ならばカラムクロマトグラフィーの工程を経ることで高純度のマンノシルエリスリトールリピッドとすることができる。
したがって、本発明により、培養液からのマンノシルエリスリトールリピッド分離回収に必要なコストを低減するだけでなく、環境及び作業者への負担を軽減することで、マンノシルエリスリトールリピッドはより安価かつ安全に市場に提供され得る。
(目的生産物)
本発明の目的生産物であるマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)は、下記構造式(1)で表される化合物である。
前記構造式(1)において、R〜Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アセチル基、又は炭素原子数1〜14、好ましくは3〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪酸残基を表す。
前記マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)は、高い界面活性作用を有し、界面活性剤又はファインケミカルの種々の触媒として用いられる。ヒト急性前骨髄性白血病細胞性HL60株にマンノシルエリスリトールリピッドを作用させると顆粒系を分化させる白血病細胞細胞分化誘導作用があり、また、ラット副腎髄質褐色細胞腫由来のPC12細胞にマンノシルエリスリトールリピッドを作用させると神経突起の伸長が生ずる神経系細胞株分化誘導作用等の生理活性作用を有する。更に、微生物産生の糖脂質として初めて、メラノーマ細胞のアポトーシスを誘導することが可能となり(X. Zhao et. al., Cancer Research,59, 482−486(1999))、癌細胞増殖抑制作用がある。これらの生理作用から見て、マンノシルエリスリトールリピッドには抗ガン剤等の医薬としての用途が期待される。また、マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)には生分解性があり、高い安全性を有すると考えられているものである。
(使用微生物)
本発明の使用微生物については、マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有するものであれば特に制限はなく、例えばシュードザイマ属に属する微生物が挙げられ、このうち特に好ましい微生物としては、シュードザイマ・アンタクティカ、シュードザイマ・ルギュローサ、シュードザイマ・パラアンタクティカに属する微生物が挙げることができる。この中でもシュウドザイマ・パラアンタクティカが最も好ましい。すなわち、シュードザイマ・パラアンタクティカに属する微生物は、特に、マンノシルエリスリトールリピドと脂肪酸からなる凝集物の生成割合が高く、該微生物を用いることにより、効率的なマンノエリスリトールリピドの生産が可能となる。
(マンノシルエリスリトールリピッドの生産)
本発明における使用微生物の培養条件については、マンノシルエリスリトールリピッドが生産可能な培地であれば特に制限はなく、適宜選定することができる。
具体的には、酵母に対して一般に用いられる培地を使用でき、このような培地として、例えば、YPD培地(イーストイクストラクト10g、 ポリペプトン20g、及びグルコース100g)を挙げることができる。
本発明においては、培地に植物油等の油脂類を添加することが好ましい。本発明の使用微生物は、マンノシルエリスリトールリピドとともに脂肪酸を産生し、非水溶性凝集物を生じるが、脂肪酸の産生が少なく、凝集物の生成が抑制されているかあるいは凝集物が浮遊している場合であって、凝集物の沈殿量を多くする場合には、培養液に脂肪酸を添加すればよい。
培養液に共存させる脂肪酸としては、炭素数10〜18の飽和あるいは不飽和脂肪酸を用いる。
本発明においては、本発明の使用微生物を脂肪酸、あるいは脂肪酸エステル等の脂肪酸に変換しうる原料の共存下培養し、培養終了後に凝集物を採取し、該凝集物から、マンノシルエリスリトールリピドと脂肪酸を分離するが、培養液に培地成分及び脂肪酸を連続的あるいは間欠的に添加し、培養を継続させながら生成する凝集物を沈殿物として培養槽底部から連続して取り出すことも可能である。このような連続発酵法は、マンノシルエリスリトールリピドの大量生産に適している。
以下に、本発明について実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
(実施例1)
a)保存培地(麦芽エキス3g/L、酵母エキス3g/L、ペプトン5g/Lグルコース10g/L、寒天30g/L)に保存しておいたPseudozyma parantarctica JCM 11752株を、 グルコース20g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウムム1g/L、リン酸2水素カリウム0.5g/L、及び硫酸マグネシウム0.5g/Lの組成の液体培地4mLが入った試験管に1白金耳接種し30℃で振とう培養を行い、次いで、得られた菌体培養液を所定量の大豆油160g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム1g/L、リン酸2水素カリウム0.5g/L、及び硫酸マグネシウム0.5g/Lの組成の液体培地20mLの入った坂口フラスコに接種して、35℃で10日間振とう培養を行った。
このとき、培養液中に固形の非水溶性凝集物が生じていることを発見した。非水溶性凝集物を含む培養液の様子を図1に示す。培養液をデカンテーションで除いた後、非水溶性凝集物は水で洗浄した。水で洗浄後の非水溶性凝集物を図2に示す。
上記培養液と非水溶性凝集物に含まれるマンノシルエリスリトールリピッド、脂肪酸及び残存する原料油脂の量を、酢酸エチルで抽出した後に薄層クロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーで調べた。マンノシルエリスリトールリピッドの標準として、Pseudozyma antarctica JCM 10317株を上記と同じ条件で培養し、原料油脂等の不純物を取り除いた精製標品を用いた。マンノシルエリスリトールリピッド標準における、MEL−A,MEL−B及びMEL−Cはそれぞれ順に一般式中(R1、2=炭素原子数1〜14の脂肪酸残基、R3、4=アセチル基)、同(R1、2=炭素原子数1〜14の脂肪酸残基、R3=水素原子、R4=アセチル基)及び同(R1、2=炭素原子数1〜14の脂肪酸残基、R3=アセチル基、R4=水素原子)で表される化合物を示す。また、それぞれに含まれる菌体量も調べた。
非水溶性凝集物は65℃に5分間静置すると粘性物質となり、さらに濃緑色の液体成分が生じ、図3に示すように、完全に二層に分離した。薄層クロマトグラフィーによって調べた。上記培養液と非水溶性凝集物に含まれるマンノシルエリスリトールリピッド、脂肪酸及び残存する原料油脂の量を、酢酸エチルで抽出した後の薄層クロマトグラフィーの結果を図4に示す。図4によれば、ほとんどのマンノシルエリスリトールリピッドと脂肪酸は65℃に5分間静置後に得られた上層の液体部分にのみ存在している。すなわち、得られた濃緑色の液体は高濃度マンノシルエリスリトールリピッドと脂肪酸の混合液である。当該下層に見られる少量のマンノシルエリスリトールリピッドと脂肪酸は上層を分取後の残りが混入したものと考えられる。高速液体クロマトグラフィーで調べたMEL量と菌体量を表1に示す。表1によれば、非水溶性凝集物中に菌体は含まれず、生産されたマンノシルエリスリトールリピッドの90%以上が含まれる。
(実施例2)
カラムクロマトグラフィーで精製したマンノシルエリスリトールリピッド標品0.1gを水1ml中に分散させた後、大豆油、ミリスチン酸、ミリスチン酸メチル、リノール酸メチルをそれぞれ0.1ml添加し、一晩、35℃で振とう攪拌した。その後、室温に放置した。振とう攪拌後、室温放置後の様子を図5に示す。水のみを添加したものを対照として示す。図5によれば、全ての場合、攪拌によって白濁液が得られた。これはマンノシルエリスリトールリピッドと各油および脂肪酸は水中に分散しているためである。室温放置した後、ミリスチン酸を添加した場合において、非水溶性の凝集物が生じた。この非水溶性の凝集物は培地を傾けても流れ落ちず、水で洗浄することができる。液体部分と非水溶性の凝集物に含まれる成分を薄層クロマトグラフィーで調べたところ、マンノシルエリスリトールリピッドとミリスチン酸の大部分は非水溶性の凝集物中に検出された。結果を図6に示す。したがって、この非水溶性の凝集物は、マンノシルエリスリトールリピッドは脂肪酸の固形物である。さらに、この固形物は65℃で5分間静置することで完全に溶液状態となった(図7)。
(実施例3)
a)保存培地(麦芽エキス3g/L、酵母エキス3g/L、ペプトン5g/Lグルコース10g/L、寒天30g/L)に保存しておいたPseudozyma antarctica KM-34株(FERMP-20730)を、 グルコース20g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウムム1g/L、リン酸2水素カリウム0.5g/L、及び硫酸マグネシウム0.5g/Lの組成の液体培地4mLが入った試験管に1白金耳接種し30℃で振とう培養を行い、次いで、得られた菌体培養液をグルコース40g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム1g/L、リン酸2水素カリウム0.5g/L、及び硫酸マグネシウム0.5g/Lの組成の液体培地20mLの入った坂口フラスコに接種して、30℃で10日間振とう培養を行った。
このとき、培養液中に上記固形の非水溶性凝集物は生じていなかったが、脂肪酸(ミリスチン酸)を添加してしばらくすると非水溶性凝集物が生じた。非水溶性凝集の様子は図5に示すものと同様であった。
非水溶性凝集物を水で1回洗浄した後、65℃に5分間静置して液体成分を得た。この層に含まれるマンノシルエリスリトールリピッド、脂肪酸及び残存する原料油脂の量を、酢酸エチルで抽出した後に薄層クロマトグラフィーによって調べた。その結果を図8に示す。図8によれば、分離処理を行わず、培養液全体から酢酸エチルで抽出したマンノシルエリスリトールリピッドの量と、分離処理して得られた凝集物中に含まれるマンノシルエリスリトールリピッドの量はほぼ同じである。したがって、このマンノシルエリスリトールリピッド分離回収手段は、最も効率の良い有機溶媒による抽出手段と比べても損失がない。
Pseudozyma parantarctica JCM 11752株の培養液中に生じた非水溶性凝集物の写真である。 Pseudozyma parantarctica JCM 11752株の培養液中に生じた非水溶性凝集物を水で洗浄後の写真である。 非水溶性凝集物を65℃で5分間静置した後に得られる液体層の様子を示す写真である。 培養液と非水溶性凝集物中に含まれる成分をそれぞれ薄層クロマトグラフィーで分析した結果を示す図である。 マンノシルエリスリトールリピッドと脂肪酸あるいは油脂の混合液の様子を示す写真である。 マンノシルエリスリトールリピッドとミリスチン酸の混合液において得られた固形物と残りの液体部分に含まれる成分を薄層クロマトグラフィーで分析した結果を示す図である。 マンノシルエリスリトールリピッドと脂肪酸の混合液において得られた固形物が65℃で完全に溶液となることを示す写真である。 Pseudozyma antarctica KM-34株(FERMP-20730)の培養液と脂肪酸を添加することで生じた非水溶性凝集物中に含まれる成分を薄層クロマトグラフィーで分析した結果を示す図である。

Claims (7)

  1. マンノシルエリスリトールリピッドを含有する水性液体から、マンノシルエリスリトールリピドを分離、回収する方法であって、上記水性液体において脂肪酸の共存下生成する非水溶性の凝集物を採取し、該凝集物からマンノシルエリスリトールリピドと脂肪酸の溶液を回収することを特徴とする、上記マンノシルエリスリトールリピドの分離回収方法。
  2. 凝集物を沈殿させる量の脂肪酸を共存させ、凝集物を沈殿物として採取することを特徴とする、請求項1に記載の分離回収方法。
  3. マンノシルエリスリトールリピドを含有する水性液体が、マンノシルエリスリトールリピド生産菌の培養液であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の分離回収方法。
  4. マンノシルエリスリトールリピド生産菌が、シュードザイマ属に属する微生物であることを特徴とする、請求項3に記載の分離回収方法。
  5. シュードザイマ属に属する微生物がシュードザイマ・パラアンタクティカに属する微生物であることを特徴とする、請求項4に記載の分離回収方法。
  6. 凝集物を65℃以上に加温して、マンノシルエリスリトールリピドと脂肪酸溶液を回収することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の分離回収方法。
  7. 凝集物を水で洗浄する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の分離回収方法。
JP2006081762A 2006-03-23 2006-03-23 マンノシルエリスリトールリピッドの分離回収方法 Active JP4654415B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006081762A JP4654415B2 (ja) 2006-03-23 2006-03-23 マンノシルエリスリトールリピッドの分離回収方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006081762A JP4654415B2 (ja) 2006-03-23 2006-03-23 マンノシルエリスリトールリピッドの分離回収方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007252280A true JP2007252280A (ja) 2007-10-04
JP4654415B2 JP4654415B2 (ja) 2011-03-23

Family

ID=38627146

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006081762A Active JP4654415B2 (ja) 2006-03-23 2006-03-23 マンノシルエリスリトールリピッドの分離回収方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4654415B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017167914A1 (fr) 2016-03-31 2017-10-05 Oleon N.V. Procédé d'extraction de glycolipides et glycolipides obtenus
CN108619996A (zh) * 2018-04-26 2018-10-09 南京理工大学 一种甘露糖赤癣糖醇脂的分离纯化方法
KR102471992B1 (ko) * 2022-05-24 2022-11-29 디케이바이오 주식회사 친환경 만노실에리트리톨 리피드 제조방법

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004020647A1 (en) * 2002-08-24 2004-03-11 Cerestar Holding B.V. Process for producing and recovering mannosylerythritol lipids from culture medium containing the same
JP2004254595A (ja) * 2003-02-26 2004-09-16 Hiroshima Pref Gov マンノシルエリスリトールリピッドの製造方法
JP2005104837A (ja) * 2003-08-22 2005-04-21 Hiroshima Pref Gov 糖脂質及びその製造方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004020647A1 (en) * 2002-08-24 2004-03-11 Cerestar Holding B.V. Process for producing and recovering mannosylerythritol lipids from culture medium containing the same
JP2004254595A (ja) * 2003-02-26 2004-09-16 Hiroshima Pref Gov マンノシルエリスリトールリピッドの製造方法
JP2005104837A (ja) * 2003-08-22 2005-04-21 Hiroshima Pref Gov 糖脂質及びその製造方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017167914A1 (fr) 2016-03-31 2017-10-05 Oleon N.V. Procédé d'extraction de glycolipides et glycolipides obtenus
CN108619996A (zh) * 2018-04-26 2018-10-09 南京理工大学 一种甘露糖赤癣糖醇脂的分离纯化方法
KR102471992B1 (ko) * 2022-05-24 2022-11-29 디케이바이오 주식회사 친환경 만노실에리트리톨 리피드 제조방법

Also Published As

Publication number Publication date
JP4654415B2 (ja) 2011-03-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5470857B2 (ja) 糖型バイオサーファクタント生産能を有する微生物及びそれを用いる糖型バイオサーファクタントの製造方法
JP5990575B2 (ja) 微細藻類からのスクアレンの抽出方法
US9303231B2 (en) Method for continuously enriching an oil produced by microalgae with ethyl esters of DHA
CN111406110B (zh) 藻类多不饱和脂肪酸的制备
JP2008247845A (ja) 酸型ソホロースリピッドの生産方法
JP6171229B2 (ja) ソホロリピッドの製造方法および該製造方法により得られたソホロリピッドを含有するソホロリピッド含有組成物
JP4803434B2 (ja) マンノシルエリスリトールリピッドの高効率生産方法
JP4654415B2 (ja) マンノシルエリスリトールリピッドの分離回収方法
CN108026502B (zh) 用于浓缩包含产油酵母的粘质生物质的细胞悬液的方法
JPH0365948B2 (ja)
JP5622190B2 (ja) 新規微生物及びそれを用いる糖型バイオサーファクタントの製造方法
JP4735971B2 (ja) マンノシルエリスリトールリピッドの生産方法
JP4978908B2 (ja) マンノシルエリスリトールリピッドの製造方法
JP2009207493A (ja) 植物の発酵産物を培地に用いるバイオサーファクタントの生産方法
JP2008245607A (ja) 酵母及びその利用
EP4335858A1 (en) Method for purifying sophorolipid
JP2011050279A (ja) 脂肪族化合物の製造方法
JP5565796B2 (ja) 新規微生物及びそれを用いる糖型バイオサーファクタントの製造方法
JP4982885B2 (ja) バイオサーファクタントの生産方法
JP2923756B2 (ja) エタノールを用いたラムノリピッドの製造方法
US9309544B2 (en) Method for producing fatty acid ester
JP2698052B2 (ja) エイコサペンタエン酸生産性微生物
JP5145540B2 (ja) マンノシルアルジトールリピッド及びその製造方法
JP2010041991A (ja) マンノシルエリスリトールリピッドの製造方法
JPH0763382B2 (ja) 微生物によるエイコサペンタエン酸含有脂質の製造法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080327

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20101130

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20101201

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140107

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4654415

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140107

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250