JP2011050279A - 脂肪族化合物の製造方法 - Google Patents

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信雄 青木
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Abstract

【課題】藻類から得られる脂肪族化合物における無機元素を含む不純物の含有量を十分に低減することが可能な脂肪族化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】藻類を培養して該藻類に油脂及び、脂肪族炭化水素の少なくとも一方を含む脂肪族化合物を産生させる培養工程と、分子内にシロキサン結合を有する溶媒を用いて前記藻類から前記脂肪族化合物を抽出する抽出工程と、を有する脂肪族化合物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は脂肪族化合物の製造方法に関する。
近年、環境意識が高まってきたことに伴い、二酸化炭素の排出量を低減するために、化石燃料に代えてカーボンニュートラルな資源であるバイオマスをエネルギー源として積極的に活用しようとする試みが活発になされている。その中でも、油脂又は脂肪族炭化水素等の脂肪族化合物を産生するクロレラ等の藻類を培養し、上記脂肪族化合物を回収して液体燃料として活用する方法が提案されている。
例えば、培養された炭化水素類を産生する藻類から当該炭化水素類を回収する方法として、水と相溶せず、炭化水素類に対する溶解度が高い溶媒を用いる抽出法が検討されている。このような抽出法に用いられる抽出溶媒としては、ヘキサンやペンタン等の比較的沸点の低い脂肪族炭化水素や酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン等の極性溶媒が提案されている。(特許文献1、及び非特許文献1参照)
特開平9−803号公報
「炭酸ガス温室効果と我が国石油産業の対応に関する調査報告書」財団法人 石油産業活性化センター、1989年、122−136頁
しかし、従来の抽出法によって得られる油脂又は脂肪族炭化水素等の脂肪族化合物には、藻類の培地に由来するカリウムやリン等の無機元素を含む化合物が不純物として相当量含まれている。このような無機元素を含む不純物を多く含む上記脂肪族化合物を燃料として使用した場合、エンジンに腐食や異物の析出等の不具合が発生してしまうことが懸念される。また、上記脂肪族化合物に、化学的に転換する工程(処理工程)を施して、燃料としてより使用し易い化合物を製造する手法においても、上述の無機元素を含む不純物が、上記処理工程に使用される触媒を被毒することが懸念される。
また、上記脂肪族化合物を燃料として使用する前、又は処理工程を行う前に、触媒を用いた精製方法によって無機元素を含む不純物を除去することも考えられる。しかし、その場合には、無機元素を含む不純物が触媒を被毒するために精製装置を連続的に運転することが困難になる。このため、上記脂肪族化合物中の無機元素を含む不純物の濃度を十分に低減することが可能な手法が求められている。なお、ここで「無機元素を含む不純物」とは、必ずしも無機塩類等の無機化合物のみを意味するものではなく、例えばカリウム元素、リン元素等の無機元素を含む有機化合物をも包含する。すなわち、培地に含まれるカリウム元素、リン元素等を含む無機化合物が、藻類の代謝によってこれらの無機元素を含む有機化合物に変換されたものも包含する。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、藻類から得られる脂肪族化合物における無機元素を含む不純物の含有量を十分に低減することが可能な脂肪族化合物の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、藻類を培養して該藻類に油脂、及び脂肪族炭化水素の少なくとも一方を含む脂肪族化合物を産生させる培養工程と、分子内にシロキサン結合を有する溶媒を用いて藻類から上記脂肪族化合物を抽出する抽出工程と、を有する脂肪族化合物の製造方法を提供する。
本発明の脂肪族化合物の製造方法においては、分子内にシロキサン結合を有する溶媒がジメチルシリコーン化合物であることが好ましい。
本発明の脂肪族化合物の製造方法においては、ジメチルシリコーン化合物がヘキサメチルジシロキサンであることが、より好ましい。
本発明の脂肪族化合物の製造方法においては、藻類がクロレラ属、イカダモ属、アルスロスピラ属、ユーグレナ属、ボツリオコッカス属、及びシュードコリシスチス属からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明の脂肪族化合物の製造方法によれば、分子内にシロキサン結合を有する溶媒を用いて藻類から脂肪族化合物を抽出することで、得られる上記脂肪族化合物中に含まれるカリウム、リン等の無機元素を含む化合物の含有量を十分に低減することができる。
以下、本発明の好適な実施形態(以下、「本実施形態」ということがある。)について詳細に説明する。
本実施形態の脂肪族化合物の製造方法は、藻類を培養して該藻類に油脂、及び脂肪族炭化水素の少なくとも一方を含む脂肪族化合物を産生させる培養工程、培養した藻類を培地から分離する分離工程、分離した藻類を乾燥させる乾燥工程、分子内にシロキサン結合を有する溶媒を用いて藻類から上記脂肪族化合物を抽出する抽出工程、及び抽出した上記脂肪族化合物を回収する回収工程を有する。以下に各工程の詳細について説明する。
培養工程では、藻類を培養して該藻類に油脂、及び脂肪族炭化水素の少なくとも一方を含む脂肪族化合物を産生させる。ここで藻類とは、酸素発生型光合成を行う水中に生息する生物を含むことが好ましい。この藻類は、光合成によって二酸化炭素を固定化し、上記脂肪族化合物に変換する性質を有する。このような性質を有する藻類であれば、いずれの藻類も本実施形態の脂肪族化合物の製造方法に使用することができる。
本実施形態における上記脂肪族化合物を産生する藻類の例としては、クロレラ属、イカダモ属、アルスロスピラ属、ユーグレナ属、ボツリオコッカス属、及びシュードコリシスチス属に属する藻類が挙げられる。より具体的には、クロレラ、イカダモ、スピルリナ、ユーグレナ、ボツリオコッカスブラウニー、シュードコリシスチスエリプソイディア等を挙げることができる。ただし、藻類は、これらに限定されるものではない。
例えば、クロレラ、イカダモ、スピルリナ、ユーグレナは油脂を、ボツリオコッカスブラウニー、シュードコリシスチスエリプソイディアは脂肪族炭化水素を産生する。これらの脂肪族化合物は、通常、藻類の細胞内に蓄積される。培養工程において、細胞内に蓄積された脂肪族化合物の一部が細胞外に排出されてもよい。
培養された藻類により産生される油脂としては、脂肪族カルボン酸と、1価、又は3価の脂肪族アルコールと、からなる脂肪族エステル化合物が挙げられる。油脂は、藻類が産生するものであれば特に限定されず、例えば、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸メチル等を挙げることができる。
培養された藻類により産生される脂肪族炭化水素としては、炭素と水素からなる常温で固体、又は液体の脂肪族炭化水素が挙げられる。例えば、炭素数が15から40の範囲にある飽和、又は不飽和の脂肪族炭化水素、特に直鎖状脂肪族炭化水素が挙げられる。なお、脂肪族炭化水素は藻類が産生するものであれば特に限定されず、例えば、n−ヘプタデセン、n−エイコサジエン等が挙げられる。
本実施形態の培養工程では、それぞれの藻類において、従来から採用されている培養条件で培養することができる。通常、空気中の二酸化炭素を炭素源として光合成で増殖させる光独立栄養的培養によって、常温で、好ましくは25〜37℃で培養する。光合成のための光源は、太陽光、又は人工的な光源を用いることができる。藻類の増殖を早めるため、藻類への光照射は、2〜100キロルックスで30〜500時間行うことが好ましい。培地雰囲気中の二酸化炭素濃度は0.3〜10体積%が好ましく、培地中への溶け込みを促進するために、必要に応じて培地を撹拌、又は空気によって曝気してもよい。
培地には、CHU培地、JM培地、MDM培地等、一般的な無機培地を用いることができる。無機培地には、通常、窒素源としてCa(NO・4HOやKNOが、その他の主要な栄養成分としてKHPOやMgSO・7HO等が含まれている。また、培地には、藻類の生育に影響を与えない抗生物質等を添加してもよい。培地のpHは、3〜10が好ましい。培養期間は、初めに接種する藻体量にもよるが、0.5g/Lの藻体濃度で培養を開始した場合、1〜20日間とすることが好ましい。培養期間が1日間未満であると十分な藻体量が得られ難くなる傾向にあり、20日間を超えると培地中の栄養分が枯渇して藻類の生育が困難になる傾向にある。
分離工程では、培養工程で培養した藻類を培地から分離する。分離は、ろ過や遠心分離等の固液分離手段を用いて藻類を培地から分離することが好ましい。また、培地成分の残留量を一層低減する観点から、固液分離手段によって分離された藻類を水、好ましくは脱イオン水又は蒸留水、あるいは緩衝液等で洗浄することが好ましい。
乾燥工程では、一般的な条件で行うことが可能である。なお、効率的に水分が除去され、且つ、藻類細胞内の脂肪族化合物が酸化劣化を受けない条件で行うことが好ましい。例えば、大気中−30〜180℃の温度で行うことが好ましい。具体的な乾燥方法としては、凍結乾燥や、加温による乾燥等が挙げられる。この乾燥工程によって、藻類の固形粉末が得られる。
なお、分離工程によって培地から分離された藻類は、乾燥工程を行うことなく次の抽出工程を行ってもよく、また、分離工程を行うことなく、培養工程に引き続いて培地と共に溶媒による抽出工程を行ってもよい。但し、これらの場合には、その後の抽出工程において、抽出の対象物に、藻類とともに培地が含まれるため、より多くの溶媒を必要とする傾向がある。また、培地に含まれるカリウムやリン等の無機化合物が抽出液中に混入し易くなる傾向がある。このため上述の分離工程、及び乾燥工程を行うことが好ましい。
抽出工程では、得られた藻類の固形粉末中に含まれる脂肪族化合物、及び/又は該固形粉末に付着する脂肪族化合物を溶媒によって抽出する。ここで、従来から使用されている溶媒であるヘキサンやペンタン等の脂肪族炭化水素や、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン等の極性溶媒を用いて抽出工程を行うと、回収した脂肪族化合物中におけるカリウムやリン等の無機元素を含む不純物の無機元素換算の濃度が、脂肪族化合物の質量を基準として、各々100質量ppm以上となってしまう。このように、無機元素を含む不純物を高濃度で含有すると、回収された脂肪族化合物を燃料として利用することが困難となる。
これに対し、本実施形態の抽出工程では、分子内にシロキサン結合を有する溶媒を使用して脂肪族化合物を抽出し、溶媒と脂肪族化合物とを含む抽出液を得る。このように特定の溶媒を使用して脂肪族化合物を抽出することによって、抽出された脂肪族化合物中の無機元素を含む不純物の濃度を大幅に低減することが可能となる。
分子内にシロキサン結合を有する溶媒は特に限定されず、経済性の観点からジメチルシリコーン化合物が好ましい。ここで、ジメチルシリコーン化合物とは、ジシロキサン構造、又はトリシロキサン以上のポリシロキサン構造を有し、ケイ素に結合する置換基の全てがメチル基である化合物をいう。
また、上記溶媒の種類は、必要に応じて適宜選択することができる。ただし、抽出後の脂肪族化合物との分離、及び回収を効率的に行う観点、並びに脂肪族化合物に対する溶解性の観点から、沸点が200℃以下である溶媒を使用することが好ましい。抽出工程における溶媒としては、好ましくはヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、及びデカメチルテトラシロキサンであり、より好ましくは、ヘキサメチルジシロキサンである。
抽出工程において、藻類が産生する脂肪族化合物を、分子内にシロキサン結合を有する溶媒を用いて抽出する際の条件は、藻類の種類や溶媒の種類に応じて適宜選択することができる。藻類の乾燥質量に対する溶媒の質量比は、5〜100倍であることが好ましい。この質量比が5倍未満であると、藻類の細胞内に存在する脂肪族化合物を十分に抽出することが困難となる傾向にある。一方、上記質量比が100倍を超えると、溶媒のコストが上がるとともに、抽出後の溶媒の分離・回収に多大なエネルギーを要する傾向にある。
抽出工程における抽出温度は、20〜200℃が好ましく、20〜150℃がより好ましい。抽出温度が20℃未満であると、抽出の効率が低下する傾向にあり、200℃を超えると、回収される脂肪族化合物の一部が酸化される傾向にある。抽出時間としては、1〜60分間が好ましい。抽出時間が1分間未満であると、抽出率が低下する傾向にあり、60分間を超えると、抽出率のそれ以上の向上が殆どなく、工程が長期化する。
本実施形態において、藻類が産生する脂肪族化合物を、分子内にシロキサン結合を有する溶媒を用いて抽出する際に使用する設備、及び操作は、特に限定されない。例えば、攪拌装置付きの槽に、藻類の固形粉末、及び分子内にシロキサン結合を有する溶媒を加えて、これを攪拌して抽出を行い、その後、ろ過や遠心分離等の固液分離手段により藻類の固形粉末を除去して、脂肪族化合物の溶液を得る方法が好ましく用いられる。
なお、抽出工程の後に、抽出工程で得られた、脂肪族化合物を含む抽出溶液を水洗して、脂肪族化合物中の無機元素を含む化合物の含有量を低減してもよい。この場合、水洗した抽出溶液を乾燥する工程を行うことが好ましい。なお、水洗に際して有機相と水相の界面において固体、又は半固体状の脂肪族化合物が析出する傾向にある。このため、抽出工程の後には、抽出溶液を水洗せずに、回収工程を行うことが好ましい。
回収工程では、脂肪族化合物を含む抽出溶液から脂肪族化合物とシロキサン結合を有する溶媒とを分離し、それぞれを回収する。分離・回収の手段は特に限定されず、例えば、抽出溶液を加熱し、常圧、又は好ましくは減圧として、シロキサン結合を有する溶媒を留去する方法が好ましく用いられる。溶媒を留去する際の温度は、溶媒の種類にもよるが、50〜160℃とすることが好ましい。溶媒を留去する温度が50℃未満の場合は、溶媒の留去速度が十分に上がらない傾向にあり、160℃を超えると、回収される脂肪族化合物の一部が酸化される傾向にある。このようにして、藻類が産生する脂肪族化合物を単離することができる。
以上のようにして得られた脂肪族化合物の用途は特に限定されず、例えば、燃料基材、又は燃料基材の原料として好ましく使用される。
本実施形態の方法によって得られる脂肪族化合物は、そのまま燃料基材として用いることもできる。また、上記脂肪族化合物に対し、回収工程に引き続いて以下の化学的転換工程を施してもよい。これによって、含酸素化合物が炭化水素化合物に変換されることによってエンジン損傷等の懸念が除かれ、また流動性、及び取り扱い性が向上した液体燃料を得ることができる。
脂肪族化合物が油脂である場合は、以下に説明する化学的転換工程(A)を行うことができる。
化学的転換工程(A)は、水素化脱酸素処理、水素化分解処理、及び水素化異性化処理のうち少なくとも一つの処理を有する。
水素化脱酸素処理では、回収工程で回収された油脂、又は回収された油脂をエステル交換反応でメチルエステルに変換した化合物を水素化処理する。この水素化脱酸素処理は、油脂を水素の共存下で水素化活性を有する触媒に接触させることによって行うことができる。この処理によって、上記油脂、又は上記化合物に含まれる酸素原子を、水及び/又はアルコール等として除去することができる。また、油脂に含まれる炭素−炭素二重結合も水素化されて炭素−炭素単結合になる。したがって、この水素化脱酸素処理によって、実質的に酸素、不飽和結合を含まない炭化水素を得ることが可能となり、エンジン損傷等の懸念のない燃料基材とすることができる。
水素化分解処理では、水素化脱酸素処理で得られた脂肪族炭化水素を水素化分解することで、上記脂肪族炭化水素の一部、又は全部を分解する。この水素化分解処理は、水素の共存下で、固体酸性、及び水素化活性を有する触媒に炭化水素を接触させて、上記脂肪族炭化水素を、より炭素数の少ない脂肪族炭化水素に変換する。なお、この水素化分解処理においては、これに用いる上記触媒の作用により、水素化分解反応だけでなく、水素化異性化反応も併発することが一般的である。したがって、水素化分解処理の生成物は、該処理の原料である脂肪族炭化水素の分解物であると同時に、その少なくとも一部は異性化によって分岐鎖構造をもっていてよい。得られた分解生成物は、必要により蒸留等の手段によって沸点範囲ごとの留分に分別される。分別された脂肪族炭化水素は、ガソリンエンジン用、暖房用(灯油)、ジェットエンジン用、ディーゼルエンジン用等の基材として、それぞれに適した用途に用いられる。
水素化異性化処理では、水素化脱酸素処理、及び必要により更に水素化分解処理して得られた炭化水素を更に水素化異性化することで直鎖の脂肪族炭化水素(ノルマルパラフィン)の一部、又は全部をイソパラフィンに変換する。水素化異性化処理は、水素の共存下で、上記炭化水素を固体酸性、及び水素化−脱水素化活性を有する触媒に接触させることによって行うことができる。この処理によって、上記脂肪族炭化水素のノルマルパラフィンの含有量が低減し、低温時でも高い流動性を有する燃料基材にすることができる。このような燃料基材は、ジェットエンジン用、ディーゼルエンジン用に好ましく用いられる。
以上のように、上述の回収工程によって得られる脂肪族化合物が油脂である場合、上記化学的転換工程(A)を行うことによって、より優れた性能を有する燃料基材を得ることが可能となる。なお、化学的転換工程(A)では、上述の水素化脱酸素処理、水素化分解処理、及び水素化異性化処理から選ばれる2つ以上の処理を組み合わせて行ってもよい。
次に、上述の回収工程によって得られる脂肪族化合物が脂肪族炭化水素である場合、以下に説明する化学的転換工程(B)を行うことができる。
化学的転換工程(B)は、水素化処理、水素化分解処理、及び水素化異性化処理のうち少なくとも一つの処理を有する。
脂肪族化合物が脂肪族炭化水素である場合、脂肪族炭化水素は分子内に酸素原子を含まないが、不純物として微量の含酸素化合物等を含むことがある。また、上記脂肪族炭化水素は炭素−炭素二重結合を有することがある。水素化処理において、この脂肪族炭化水素に含まれる含酸素化合物からなる不純物の除去、及び/又は炭素−炭素二重結合の炭素−炭素単結合への変換を行うことが好ましい。水素化処理では、回収工程で回収された脂肪族炭化水素を水素の共存下で水素化活性を有する触媒に接触させることによって行うことができる。
また、上記脂肪族炭化水素の炭素数の範囲が、使用しようとする各用途の燃料に適した炭素数よりも大きい場合、上記脂肪族炭化水素を水素化分解処理して、炭素数の少ない炭化水素を得ることが好ましい。また前述のように、水素化分解処理においては、分解反応と同時に脂肪族炭化水素の水素化異性化反応が併発することから、分解生成物の少なくとも一部は分岐鎖構造を持っていてよい。
さらに、上記脂肪族炭化水素がノルマルパラフィンに富むものである場合には、水素化異性化処理によって、ノルマルパラフィンの一部、又は全部をイソパラフィンに変換することが好ましい。この処理によって、上記脂肪族炭化水素のノルマルパラフィンの含有量が低減し、低温時でも高い流動性を有する燃料基材を得ることができる。
以上のように、本実施形態の方法によって得られる脂肪族炭化水素に対して、化学的転換工程(B)を行うことによって、より優れた性能を有する燃料基材を得ることが可能となる。なお、化学的転換工程(B)では、上述の水素化処理、水素化分解処理、及び水素化異性化処理から選ばれる2つ以上の処理を組み合わせて行ってもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例、及び比較例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す組成の培養液(pH:6)1Lに対し、クロレラ(クロレラバルガリスベイジェリンクC−30株)を0.5g/Lの割合で接種して、振とう型培養器を用いて培養を行った。培養は、蛍光灯で光照射(3.5キロルックス)しながら二酸化炭素濃度5体積%の空気を0.02vvmで通気し、25℃にて2週間行った。なお、培養液に含まれるFe溶液及びA溶液の組成をそれぞれ表2及び表3に示す。
培養後、クロレラをろ過によって採取し、更に乾燥用容器に移し、乾燥機にて160℃で10秒間乾燥することによって、脂肪族化合物を含有したクロレラの固形粉末47gを得た。
Figure 2011050279
Figure 2011050279
Figure 2011050279
この固形粉末10.0gを200gのヘキサメチルジシロキサン中に分散させ、500mlのビーカー中、55℃にて30分間加熱撹拌した。分散液をろ過してろ液を回収し、更にウォーターバスで80℃に維持しながら、エバポレーターによってヘキサメチルジシロキサンを留去して、1.24gの油脂を回収した。
クロレラ固形粉末100g当たりの油脂収量(以下、藻類固形粉末100g当りの収量を「油脂等収量」という。脂肪族炭化水素を回収する場合も同様である。)は12.4gであった。得られた油脂をGC/MS法及びNMR法によって分析したところ、主成分は、炭素数14〜18の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物であった。
得られた油脂中のカリウム原子、及びリン原子等の無機元素の濃度を蛍光X線分析法によって定量したところ、油脂質量を基準とした不純物(無機元素)の合計濃度は12質量ppmであり、そのうち、カリウム原子の濃度は2質量ppmであり、リン原子の濃度は4質量ppmであった。結果を表4に示す。
(比較例1)
溶媒としてヘキサメチルジシロキサンに代えてヘキサンを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って油脂を回収した。そして、実施例1と同様にして得られた油脂の油脂等収量、主成分、及び不純物の濃度を求めた。
得られた油脂の油脂等収量は9.8gであり、主成分は実施例1と同様の油脂であった。また、得られた油脂中の不純物(無機元素)の合計濃度は630質量ppmであり、そのうち、カリウム原子の濃度は107質量ppmであり、リン原子の濃度は220質量ppmであった。結果を表4に示す。
(比較例2)
溶媒としてヘキサメチルジシロキサンに代えて酢酸エチルを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って油脂を回収した。そして、実施例1と同様にして得られた油脂の油脂等収量、主成分、及び不純物の濃度を求めた。
得られた油脂の油脂等収量は12.2gであり、主成分は実施例1と同様の油脂であった。また、得られた油脂中の不純物(無機元素)の合計濃度は790質量ppmであり、そのうち、カリウム原子の濃度は155質量ppmであり、リン原子の濃度は310質量ppmであった。結果を表4に示す。
(実施例2)
表1の培養液(pH:6)1Lに対し、ボツリオコッカスブラウニーを0.8g/Lの割合で接種して培養器を用いて培養を行った。培養は、蛍光灯で光照射(3,5キロルックス)しながら二酸化炭素濃度3体積%の空気を0.02vvmで通気し、25℃にて1週間行った。
培養後、ボツリオコッカスブラウニーをろ過によって採取し、更に乾燥用容器に移し、乾燥機にて160℃で15秒間乾燥することで、脂肪族化合物を含有したボツリオコッカスブラウニーの固形粉末32gを得た。
この固形粉末15.0gを200gのヘキサメチルジシロキサン中に分散させ、500mlのビーカー中、55℃にて30分間加熱撹拌した。分散液をろ過してろ液を回収し、更にウォーターバスで80℃に維持しながら、エバポレーターによってヘキサメチルジシロキサンを留去して、2.11gの炭化水素を回収した。油脂等収量は、14.1gであった。得られた炭化水素をGC/MS法とNMR法によって分析したところ、主成分は、炭素数31〜34の不飽和結合を有する直鎖状脂肪族炭化水素であった。
得られた油脂中のカリウム原子、及びリン原子等の無機元素の濃度を蛍光X線分析法によって定量したところ、炭化水素の質量を基準とした不純物(無機元素)の合計濃度は14質量ppmであり、そのうち、カリウム原子の濃度は4質量ppmであり、リン原子の濃度は3質量ppmであった。結果を表4に示す。
(比較例3)
溶媒としてヘキサメチルジシロキサンに代えてヘキサンを用いたこと以外は、実施例2と同様の操作を行って炭化水素を回収した。そして、実施例2と同様にして得られた炭化水素の油脂等収量、主成分、及び不純物の濃度を求めた。
得られた炭化水素の油脂等収量は13.8gであり、主成分は実施例2と同様の脂肪族炭化水素であった。また、得られた炭化水素中の不純物(無機元素)の合計濃度は660質量ppmであり、そのうち、カリウム原子の濃度は121質量ppmであり、リン原子の濃度は190質量ppmであった。結果を表4に示す。
(比較例4)
溶媒としてヘキサメチルジシロキサンに代えて酢酸エチルを用いたこと以外は、実施例2と同様の操作を行って炭化水素を回収した。そして、実施例2と同様にして得られた炭化水素の油脂等収量、主成分、及び不純物の濃度を求めた。
得られた炭化水素の油脂等収量は12.1gであり、主成分は実施例2と同様の脂肪族炭化水素であった。また、得られた炭化水素中の不純物(無機元素)の合計濃度は820質量ppmであり、そのうち、カリウム原子の濃度は165質量ppmであり、リン原子の濃度は290質量ppmであった。結果を表4に示す。
Figure 2011050279
抽出溶媒として分子内にシロキサン結合を有する溶媒を用いた実施例1、及び実施例2では、ヘキサン、又は酢酸エチルを用いた各比較例に比べて、抽出された油脂又は脂肪族炭化水素等の脂肪族化合物中のカリウム、及びリン原子の濃度を1/30〜1/100に低減することができた。

Claims (4)

  1. 藻類を培養して該藻類に油脂、及び脂肪族炭化水素の少なくとも一方を含む脂肪族化合物を産生させる培養工程と、
    分子内にシロキサン結合を有する溶媒を用いて前記藻類から前記脂肪族化合物を抽出する抽出工程と、
    を有する脂肪族化合物の製造方法。
  2. 前記溶媒がジメチルシリコーン化合物である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ジメチルシリコーン化合物がヘキサメチルジシロキサンである請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記藻類がクロレラ属、イカダモ属、アルスロスピラ属、ユーグレナ属、ボツリオコッカス属、及びシュードコリシスチス属からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜3いずれか一項に記載の製造方法。
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