JP2007247022A - 一方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インヒビターレス法により一方向性電磁鋼板を製造するに際し、成分として特にSb:0.035〜0.30%,Mn:{0.04+Sb(%)}%以上 0.50%以下を含有させ、焼鈍分離剤の主剤であるマグネシアとして、不純物であるCl濃度:0.01〜0.05%、CAA40%値:40〜90秒で、かつその水和水分量が1.0mass% 3.0mass%以下のものを用い、かつ焼鈍分離剤中に、マグネシア:100質量部に対して、Ti化合物をTi換算で0.3〜8質量部含有させ、さらに二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上 900℃以下の滞留時間を40時間以上 150時間以下とする。
【選択図】図3
Description
(a)高温加熱を行うためにエネルギー原単位が高い。
(b)溶融スケールが発生し易く、またスラブ垂れも生じ易いため、製品の表面欠陥を生じ易い。
(c)スラブ表層の過脱炭が生じ易い。
例えば、特許文献12には、鋼スラブ中にインヒビター成分を含有させなくても、工業的に方向性電磁鋼板が製造できる技術(インヒビターレス法)が開示されている。
すなわち、特許文献13には、NおよびSの含有量を〔ppmN〕2+[ppmS]2≦6400に従って抑制すると共に、脱炭焼鈍の600℃から750℃にかけての昇温速度を15℃/s以上に制御し、かつ脱炭焼鈍の均熱過程の水素分圧に対する水蒸気分圧の比である雰囲気酸化性(P[H2O]/P[H2])を0.6以下の範囲に制御する技術が提案されている。
また、特許文献14には、焼鈍分離剤として、MgO:100重量部に対してTi酸化物を0.1〜9.0重量部含有するものを用い、最終仕上げ焼鈍は、900℃以上1050℃以下の温度域における5時間以上15時間以下の保持を不活性ガスの含有率が50vol%以上の雰囲気中にて行う工程を含み、かつこの工程における950℃以上の温度域に2時間以上10時間以下で滞留させる技術が提案されている。
さらに、特許文献15には、一次再結晶焼鈍後の鋼板における結晶粒径を8〜25μm の範囲とし、二次再結晶焼鈍の昇温過程における 800〜900℃の平均昇温速度を0.5〜5℃/hの範囲とし、二次再結晶焼鈍の昇温過程にて、900℃と800℃での鋼板窒素量差を−10ppm〜+25ppmの範囲とすることを特徴とする技術が提案されている。
さて、発明者らは、まず既に提案した特許文献14と特許文献15の技術を基に、さらに磁気特性と被膜特性を改善・安定化することを試みた。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
しかしながら、一方でSbは、脱炭焼鈍時の鋼板の酸化速度を低減する効果が非常に大きいので、Sb添加量が増すと、脱炭焼鈍板サブスケールの酸化物量が少なくなることに起因すると思われる製品被膜の欠陥が増大した。
すなわち、Sb:0.035%以上 0.30%以下で、Mn:{0.04+Sb(%)}%以上 0.50%以下の時に、優れた磁気特性と被膜特性を有する方向性電磁鋼板を安定して製造できることを見出したのである。なお、Mn量の上限は、Sb量の上限値が0.30%であるので、Mn量の上限は少なくともその場合の下限値(0.34%)以上であればよいこと、また一定量以上の添加はコスト面で不利なだけでなく、磁束密度の低下を招くことから、0.50%とした。
というのは、マグネシアの粉体特性を制御することによって被膜特性や磁気特性を改善する技術については、これまでにも多くの提案がなされているが、そのほとんどは、MnSやMnSe,AlNなどのインヒビター成分を用いるものや、脱炭焼鈍後の窒化処理によって(Al, Si)Nなどのインヒビターを形成させるものに関してであり、インヒビターレス成分系では、これらに関する研究がほとんどなされていなかったからである。
すなわち、鋼板をコイル状に巻き取って最終仕上げ焼鈍をする以上、コイルの内・中・外巻き部では、熱履歴や雰囲気などの焼鈍条件にある程度の差が生じてしまう。しかしながら、その差に起因する磁気特性や被膜特性の差をできるだけ抑制し、さらなる特性の向上を図るためには、上記したような焼鈍分離剤中への添加物の制御が効果的であることが判明したのである。
(1)質量%で、C:0.01〜0.10%,Si:2.5〜4.5%,酸可溶性Al:40ppm以上 100ppm未満,N:30ppm以上 60ppm未満,Sb:0.035〜0.30%,Mn:{0.04+Sb(%)}%以上 0.50%以下および(S+0.405Se):50ppm未満を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるけい素鋼スラブを、1250℃以下の温度で加熱後、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行い、ついで脱炭・一次再結晶焼鈍後、マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を水でスラリー状にして鋼板表面に塗布したのち、二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって一方向性電磁鋼板を製造するに当たり、
a)焼鈍分離剤の主剤であるマグネシアとして、その粉体特性が、不純物であるClの濃度:0.01〜0.05%、CAA40%値:40〜90秒である粉体を選択し、この粉体をスラリー状にして塗布、乾燥させた後のマグネシアの水和水分量が1.0mass% 3.0mass%以下になるように水和させた焼鈍分離剤を、一次再結晶板の表面に塗布、乾燥させる、
b) 焼鈍分離剤中に、マグネシア:100質量部に対して、Ti化合物をTi換算で0.3〜8質量部含有させる、
c) 二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上 900℃以下の滞留時間を40時間以上 150時間以下とする
ことを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
さて、発明者らは、インヒビターレス成分系でSbを利用することで、優れた磁気特性と被膜特性を有する方向性電磁鋼板を安定して製造できる手段の開発に取り組んだ。その結果、上記の発明を完成するに至ったのであるが、この知見は、以下に述べる実験室レベルでの多岐にわたる実験・検討の末に、得られたものである。
(実験1)
C:0.02〜0.06%,Si:3.0〜3.5%,酸可溶性Al:40ppm以上 100ppm未満, N:30ppm以上 60ppm未満,Sb:0.01〜0.30%,Mn:0.05%以上 0.50%以下,(S+0.405Se):50ppm未満,Cu:0.01〜0.50%,Cr:0.01〜0.30%,P:0.002〜0.10%の成分範囲であり、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる多数の真空鋼塊を、1200℃に加熱後、熱間圧延し、950〜1100℃の温度で熱延板焼鈍を施したのち、冷間圧延にて最終板厚:0.29mmまで圧延した。その後、H2−H2O−N2中、800〜900℃の温度で脱炭・一次再結晶焼鈍を施した後、マグネシアを主成分とし、マグネシア:100質量部に対して0.1〜20.0質量部のTiO2を含有する焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上 900℃以下の滞留時間を10時間以上 200時間以下とする二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施した。その後、水洗して未反応の焼鈍分離剤を除去し、試料の被膜外観を調査した後、りん酸マグネシウム、コロイダルシリカおよびクロム酸を主成分とするコーティングを施した。
かくして得られた試料の磁気特性(磁束密度B8,鉄損W17/50 )と被膜密着性について調査した。なお、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
同図に示したとおり、一部の例外はあるものの、マグネシア:100質量部に対して TiO2をTi換算で0.3〜8質量部添加した場合に、比較的良好な被膜密着性が得られていることが分かる。
同図に示したとおり、一部の例外はあるものの、800℃以上 900℃以下の滞留時間が40時間以上 150時間以下の場合に、比較的優れた磁気特性が得られていることが分かる。
同図によれば、Sb:0.035%以上で、かつMn:{0.04+Sb(%)}%以上の場合に、磁気特性と被膜特性の両者に優れた方向性電磁鋼板が得られることがわかる。
すなわち、前記した知見は、従来のインヒビターを用いた方向性電磁鋼板の素材成分とは異なるインヒビターレス成分系の下で、特にSb量との関係で得られた新規知見である。
これに対して、鋼中Mn量を増加すると、図5に示すように、脱炭焼鈍時に生成する酸化物量が増すので、Sb量増によるサブスケール量の低減を補うことができる。
さらに、(Fe,Mn)2SiO4でMn比が増した方が、上記オリビン形成反応において、Mgの置換が進行し易い、すなわちオリビン形成反応が進行し易いことも、鋼中Mn量が増すと被膜特性が向上する理由の一つと考えられる。なお、Mn量を一定にしてSb量を増すと、オリビン形成反応は遅くなる。従って、Sb量を増すと被膜特性が劣化する原因は、脱炭焼鈍板サブスケールの酸化物量が減少することと、二次再結晶焼鈍過程でオリビン形成反応が遅くなることの二点と考えられるが、Mn量を増すことにより両者を同時に改善できることが、Sb増量による被膜特性の劣化をMn増量により補える理由と考えられる。
2MgO+SiO2→Mg2SiO4 --- (1)
(Fe,Mn)2SiO4+MgO→(Fe,Mn)2-XMgXSiO4+[Mg1-X, (Fe,Mn)X]O --- (2)
(a)Mn:0.09%+Sb:0.04%の試料に比べて、(b)Mn:0.09%+Sb:0.06%の試料では、(a)で約1030cm-1にみられるピークが低波数側に止まっていてオリビン形成が遅いことが分かるが、(c)Mn:0.12%+Sb:0.06%の試料では、オリビン形成が(b)よりも進行し、(a)並み以上になっていることが分かる。
実験1の結果に基づき、素材Mn,Sb量がそれぞれ、Sb:0.035%以上かつMn:{0.04+Sb(%)}%以上の成分系で実験を行ったが、同じ出鋼チャージでもコイル単位で被膜特性が大きく劣化する場合があった。さらに、大型コイルで被膜特性の劣化が顕著であり、特にコイルの中心部で被膜外観が劣悪な場合があった。
なお、コイルの大型化に伴う被膜特性の劣化については、特開平11−158558号公報や特開平11−181525号公報で、「コイルが大型になるとコイルの中心部のコイル層間の雰囲気が過剰に高くなり、被膜欠陥や磁気特性の劣化が発生する傾向が強くなる」と述べられている。そして、最終仕上げ焼鈍時のコイル層間雰囲気は、焼鈍分離剤中のMgOの水和水から発生するH2Oの分圧や通入雰囲気のH2分圧によって変化し、雰囲気の酸化性が高いと被膜形成反応が抑制されて被膜劣化が生じ易くなることが示されている。
そして、上記のような被膜劣化を改善するために、特開平11−158558号公報や特開平11−181525号公報では、MgOの製造方法や粉体特性(CAA40%, CAA80%, 比表面積, Ig.loss等)に関する提案がなされている。また、特許第3707144号公報では、鋼板に塗布・乾燥させた後のMgOの水和水分量をMgOに対して1.0mass%以上3.9mass%以下にする技術が提案されている。
しかしながら、そのほとんどは、MnS, MnSe, AlNなどのインヒビターを用いるものや脱炭焼鈍後の窒化処理によって(Al, Si)Nなどのイ ンヒビターを形成させる製造方法に適用するものに関してであり、インヒビターレス成分系では、マグネシアに関する研究がほとんどなされていなかった。
そこで、インヒビターレス成分系の電磁鋼板を製造するのに適正なマグネシアに関する検討を行った。
このようにして、脱炭焼鈍後の鋼板を10コイル (板幅:1200mm, 各コイルの質量:15トン)用意し、表1に示す10種類のマグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、巻き取った後、二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上900℃以下の滞留時間を60時間にする二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍に供した。
なお、焼鈍分離剤中には、マグネシア:100質量部に対して4質量部のTiO2を配合した。また、マグネシアの水和水分量は、スラリーの水和温度や水和時間を変更することによって、表1に示す一定範囲になるように制御した。
かくして得られた各製品コイルのコイル中央部での磁気特性(磁束密度B8,鉄損W17/50)、被膜外観および被膜密着性について調査した。なお、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
得られた結果を表1にまとめて示す。
なお、ここでCAA40%は、クエン酸:28.0g、無水安息香酸ナトリウム:0.25g、1%フェノールフタレインアルコール液:2.0mlを純水に溶かし1000mlとした溶液を、200ml容積ビーカーに100mlをとり、30±0.5℃に温度を上げ、直径:8mm、長さ:35mmでプラスチック外装の磁石の回転子を入れ、 30±0.5℃の温度に調整した恒温槽付きマグミキサーにセットし、pHメーターの電極をクエン酸溶液中に入れ、ここに、2.0gのMgOを液中に投入して10秒後に回転子を900rpmで回転させて液を撹拌し、液中に投入してからpHが8.0になるまでの時間を測定するという方法で測定した。
前述したように、本成分系を適用することで、サブスケール中の酸化物として、(Fe,Mn)2SiO4の化学式で表されるファイヤライト生成量が増すことが、ある程度の被膜特性改善に寄与している。そして、本発明の要件の一つである昇温過程800℃以上900℃以下の滞留時間を40時間以上150時間以下にする二次再結晶焼鈍では、800℃以上900℃以下 の温度域での被膜形成の主反応は、マグネシアとシリカが直接に反応してフォルステライトを形成する反応ではなく、ファイヤライト中のFeあるいはMnの一部がMgに置換する反応(オリビン形成反応)なので、脱炭焼鈍板サブスケール中にある程度のファイヤライトが存在した方が被膜形成が進行し易く、最終的な被膜特性が向上すると考えられる。また、(Fe,Mn)2SiO4でMn比が増した方が、上記オリビン形成反応において、Mgの置換が進行し易い、すなわちオリビン形成反応が進行し易いことも、鋼中Mn量が増すことにより被膜特性が向上する原因の一つと考えられる。
これに対し、本発明のインヒビターレス成分系では、従来のMnS, MnSe, AlN等のインヒビターを用いる場合よりも、鋼板表面が酸化され易いために、マグネシアの水和水分量をより低くして、オリビン形成反応が生じる直前の温度までは鋼板表層の酸化を充分に抑制することが、コイル中央部において均一・良好な被膜を形成させるために必要であると考えられる。
C:0.036%, Si:3.25%, 酸可溶性Al:75ppm, N:45ppm, Sb:0.053%, Mn:0.11%, (S+0.405Se):21ppm, Cu:0.08%およびCr:0.05%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる複数の方向性けい素鋼板用スラブを、1250℃に加熱後、熱間圧延により板厚:2.2mmの熱延板とした。ついで、1025℃で60秒間の熱延板焼鈍後、冷間圧延により最終冷延板厚:0.29mmとした。ついで、これらの冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、H2−H2O−N2雰囲気中にて脱炭焼鈍を施した。
このようにして、脱炭焼鈍後の鋼板を8コイル (板幅:1200mm, 各コイルの質量:15トン)用意し、不純物Cl量:0.03%, CAA40%値:70秒のマグネシアを、スラリーの水和温度と水和時間を変更することによって表2に示すように水和水分量を変更して、鋼板表面に塗布し、巻き取った後、二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上900℃以下の滞留時間を80時間にする二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍に供した。なお、焼鈍分離剤中には、マグネシア100質量部に対して2質量部のTiO2を配合した。
かくして得られた各製品コイルのコイル中央部での磁気特性(磁束密度B8,鉄損W17/50)、被膜外観および被膜密着性について調査した。なお、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
得られた結果を表2にまとめて示す。
C:0.047%, Si:3.42%, 酸可溶性Al:55ppm, N:36ppm, Sb:0.04%, Mn:0.10%,(S+0.405Se):27ppm, Cu:0.12%, Cr:0.04%およびP:0.012%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる複数の方向性けい素鋼板用スラブを、1150℃に加熱後、熱間圧延により板厚:2.0mmの熱延板とした。ついで、1050℃で45秒間の熱延板焼鈍を行ったのち、冷間圧延により最終冷延板厚:0.285mmとした。この時、最終冷間圧延は、少なくとも1パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150〜250℃になるような圧延とした。ついで、これらの冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、H2−H2O−N2雰囲気中にて脱炭焼鈍を施した。
その後、マグネシアを主成分とし、マグネシア:100質量部に対しTi換算で0〜10質量部のTiO2およびSr換算で0〜8質量部のSrSO4あるいはSr(OH)2・8H2Oを配合した焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上 900℃以下の滞留時間を70時間とする二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍に供した。なお、マグネシアは、不純物Cl量:0.02%, CAA40%値:80秒のものを、スラリーの水和温度と水和時間を制御することによって水分水和量が2.0〜2.5mass%になるように塗布した。
かくして得られた各製品コイルのコイル中央部での磁気特性(磁束密度B8,鉄損W17/50)、被膜外観および被膜密着性について調査した。なお、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
得られた結果を、横軸をマグネシア:100質量部に対するTiO2配合量(Ti換算)、縦軸をマグネシア100質量部に対するSr化合物配合量(Sr換算)にして、図7に示す。
C:0.01〜0.10%
Cは、一次再結晶組織を改善するために必要な元素であるが、含有量が0.01%に満たないと良好な一次再結晶組織が得られず、一方0.10%を超えると脱炭焼鈍時の脱炭負荷が増大して生産性が低下することから、C量は0.01〜0.10%に限定する。
Siは、鋼の電気抵抗を高くして渦電流損を低下させるために有用な元素であり、本発明では2.5%以上含有させる必要がある。しかしながら、4.5%を超えると冷間圧延が著しく困難になるため、Si量は2.5〜4.5%に限定する。
インヒビターレス法で二次再結晶を発現させて方向性電磁鋼板を製造するためには、不純物元素であるAlは100ppm未満にする必要がある。しかしながら、40ppm以上の微量な酸可溶性Alは、脱炭焼鈍時に鋼板表面に形成される酸化膜を緻密にし、二次再結晶焼鈍時の窒素の増減を抑制して、二次再結晶粒のゴス方位への集積を向上させ、磁気特性を改善するのに有効なので、本発明では酸可溶性Alを40ppm以上 100ppm未満の範囲で含有させるものとする。
同様に、インヒビターレス法で二次再結晶を発現させて方向性電磁鋼板を製造するためには、不純物元素であるNは60ppm未満にする必要がある。但し、二次再結晶焼鈍時における窒素の増減を抑制するためには、30ppm以上含有させた方がよいので、本発明ではNは30ppm以上 60ppm未満の範囲で含有させるものとする。
Sbは、二次再結晶焼鈍時の鋼板窒素量の増加を非常に効果的に抑制するので、優れた磁気特性を得るためおよび磁気特性を安定化させるためには必須の元素であり、その効果を十分に発揮させるには0.035%以上添加する必要がある。しかしながら、含有量が0.30%を超えると脱炭焼鈍時の脱炭性が非常に悪くなり、工業的大量生産には不適となるので、Sb量は0.035〜0.30%に限定する。
インヒビターレス成分系でSbを利用して優れた磁気特性と被膜特性を有する方向性電磁鋼板を製造する際の問題点は、Sb添加量を増した時の被膜特性の劣化にある。この問題を解決するのには、Sb量に応じてMn量を増すことが効果的であるので、Mn量の下限は{0.04+Sb(%)}%とした。なお、上限は、Sb量の上限値が0.30%であるので、Mn量の上限は少なくともその場合の下限値(0.34%)以上であればよいこと、また一定量以上の添加はコスト面で不利なだけでなく、磁束密度の低下を招くことから、0.50%とした。
不純物元素であるSおよびSeは、インヒビターレス法で二次再結晶を発現させて方向性電磁鋼板を製造するためには、(S+0.405Se)で50ppm未満にする必要がある。というのは、(S+0.405Se)量が50ppm以上である場合には、二次再結晶が困難となり、磁気特性の劣化を招くからである。
Sn:0.03〜0.50%
Snは、磁気特性の向上・安定化作用を有する元素であるが、含有量が0.03%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.50%を超えると良好な一次再結晶組織が得られないので、Sn量は0.03〜0.50%の範囲にするのが好ましい。
Cuは、鋼板表層の酸窒化を抑制することによって、磁気特性の劣化を抑制する作用を有する元素である。しかしながら、含有量が0.03%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.50%を超えると表面に「へげ」と呼ばれる欠陥が発生し易くなるので、Cu量は0.03〜0.50%の範囲にするのが好ましい。
Niは、集合組織を改善して磁束密度を向上させる作用効果を有する元素である。しかしながら、含有量が0.03%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.50%を超えて添加してもそれ以上の効果に乏しいばかりか、圧延性も劣化するおそれがあるので、Ni量は0.03〜0.50%の範囲にするのが好ましい。
Crは、被膜特性の改善に有効な元素であるが、0.03%未満では目立った改善効果が得られず、一方0.30%を超えると磁気特性が劣化する傾向にあるので、Cr量は0.03〜0.30%の範囲にするのが好ましい。
Pは、粒界偏析により冷延−再結晶後の集合組織を改善して磁束密度を向上させる働きがある。しかしながら、含有量が0.01%未満では十分な効果が得られず、一方0.10%を超えると良好な一次再結晶組織が得られないので、P量は0.01〜0.10%の範囲にするのが好ましい。
Moは、表面性状を改善する効果がある。しかしながら、含有量が0.005%未満では十分な効果が得られず、一方0.10%を超えると脱炭焼鈍時の脱炭性が劣化するので、Mo量は0.005〜0.10%の範囲にするのが好ましい。
従来から用いられている製鋼法で、上記成分に調整した溶鋼を、連続鋳造法あるいは造塊法で鋳造し、必要に応じて分塊工程を挟んでスラブを製造する。また、直接鋳造法を用いて100mm以下の厚さの薄鋳片を直接製造してもよい。
なお、冷間圧延は、常温で行っても良いし、あるいは常温よりも高い温度、例えば150〜300℃程度に上げて圧延する温間圧延としてもよい。また、冷間圧延途中で150〜300℃の範囲での時効処理を1回または複数回行ってもよい。
その後、この脱炭焼鈍を施した鋼板表面に、マグネシアを主体とした焼鈍分離剤を、水でスラリー状にして塗布した後、乾燥させる。ここで、良好な被膜特性を得るためには、マグネシアの粉体特性として、不純物のCl濃度が0.01〜0.05%、CAA40%値が40〜90秒である粉体を選択し、該粉体をスラリー状にして塗布・乾燥させた後のマグネシアの水和水分量が1.0mass%以上 3.0mass%以下になるように水和させた焼鈍分離剤を用いることが重要である。ここで、水和水分量は、スラリーの水和温度と平均水和時間によって制御する必要がある。
また、本発明において、「マグネシア主体」とは、上記したような各化合物を含む焼鈍分離剤において、マグネシアを少なくとも80mass%以上含有することを意味する。
というのは、800℃以上 900℃以下での滞留時間が上記の範囲を外れると、前掲図2に示したように、磁気特性の低下を招くからである。
さらに、最終冷延後、最終仕上げ焼鈍後あるいは絶縁コーティングの被成後に、既知の磁区細分化処理を行うことは、さらなる鉄損の低減に有効である。
なお、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
なお、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
なお、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.01〜0.10%,Si:2.5〜4.5%,酸可溶性Al:40ppm以上 100ppm未満,N:30ppm以上 60ppm未満,Sb:0.035〜0.30%,Mn:{0.04+Sb(%)}%以上 0.50%以下および(S+0.405Se):50ppm未満を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるけい素鋼スラブを、1250℃以下の温度で加熱後、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行い、ついで脱炭・一次再結晶焼鈍後、マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を水でスラリー状にして鋼板表面に塗布したのち、二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって一方向性電磁鋼板を製造するに当たり、
a)焼鈍分離剤の主剤であるマグネシアとして、その粉体特性が、不純物であるClの濃度:0.01〜0.05%、CAA40%値:40〜90秒である粉体を選択し、この粉体をスラリー状にして塗布、乾燥させた後のマグネシアの水和水分量が1.0mass% 3.0mass%以下になるように水和させた焼鈍分離剤を、一次再結晶板の表面に塗布、乾燥させる、
b) 焼鈍分離剤中に、マグネシア:100質量部に対して、Ti化合物をTi換算で0.3〜8質量部含有させる、
c) 二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上 900℃以下の滞留時間を40時間以上 150時間以下とする
ことを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項1において、焼鈍分離剤中にさらに、マグネシア:100質量部に対して、Sr化合物をSr換算で0.2〜5質量部含有させることを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
- 請求項1または2において、けい素鋼スラブが、さらに質量%で、Sn:0.03〜0.50%,Cu:0.03〜0.50%,Ni:0.03〜0.50%,Cr:0.03〜0.30%,P:0.01〜0.10%およびMo:0.005〜0.10%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
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