JP2007247022A - 一方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コイルの全幅、全長にわたり欠陥のない均一で密着性に優れたフォルステライト質絶縁被膜を有し、かつ磁気特性にも優れた方向性電磁鋼板を、低コストで提供する。
【解決手段】インヒビターレス法により一方向性電磁鋼板を製造するに際し、成分として特にSb:0.035〜0.30%,Mn:{0.04+Sb(%)}%以上 0.50%以下を含有させ、焼鈍分離剤の主剤であるマグネシアとして、不純物であるCl濃度:0.01〜0.05%、CAA40%値:40〜90秒で、かつその水和水分量が1.0mass% 3.0mass%以下のものを用い、かつ焼鈍分離剤中に、マグネシア:100質量部に対して、Ti化合物をTi換算で0.3〜8質量部含有させ、さらに二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上 900℃以下の滞留時間を40時間以上 150時間以下とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、磁気特性と被膜特性に優れた一方向性電磁鋼板を、低コストで製造することができる方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、主として変圧器その他の電気機器の鉄心材料として使用され、磁束密度および鉄損値などの磁気特性に優れることが必要である。その一般的な製造方法としては、厚さ:100〜300mmのスラブを約1350℃以上の高温に加熱後、熱間圧延し、ついで必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶および純化を目的とした最終仕上げ焼鈍を行うという複雑な工程が採られており、最終仕上げ焼鈍時の二次再結晶によって{110}<001>方位の結晶粒を成長させている。
このような二次再結晶を効果的に発現させるためには、まず一次再結晶粒の成長を抑制するインヒビターと呼ばれる析出分散相を、均一かつ適切なサイズに分散させることが必要とされている。このようなインヒビターとしては、MnS,MnSe,AlNおよびBNに代表される硫化物、Se化合物、窒化物のような鋼中への溶解度が低いものが用いられており、熱間圧延前のスラブ加熱時にインヒビターを完全に固溶させ、その後の工程で微細に析出させる方法が採用されている。この場合、インヒビターを十分に固溶させるためには、約1350〜1400℃程度の温度でスラブ加熱を行う必要があり、普通鋼のスラブ加熱温度に比べると約200℃も高温である。
上記したような高温スラブ加熱には、以下のような欠点がある。
(a)高温加熱を行うためにエネルギー原単位が高い。
(b)溶融スケールが発生し易く、またスラブ垂れも生じ易いため、製品の表面欠陥を生じ易い。
(c)スラブ表層の過脱炭が生じ易い。
上記(b),(c)の問題を解決するために、誘導加熱炉が採用されているが、エネルギーコストの増大という問題は残されたままである。従って、省エネルギー化と低コスト化のために、スラブ加熱温度の低温化を図る研究がこれまで数多くなされてきた。
例えば、特許文献1には、Mnを0.08〜0.45%、Sを0.007%以下とすることによってスラブ加熱を低温化する技術が開示され、また特許文献2には、これにCrを添加することによって二次再結晶の安定化を図る技術が開示されている。これらはいずれも、S量を低減してスラブ加熱時のMnSの固溶を図るところに特徴がある。しかしながら、これらの技術には、コイル幅方向や長手方向での磁気特性のバラツキが生じ易いという問題があり、研究室規模での製造手段に止まっていた。その原因としては、MnSに代替するインヒビターの機能不足による二次再結晶の不安定化が挙げられる。すなわち、上記の技術は、酸可溶Alを0.010〜0.060%,Nを0.0030〜0.0130%含有し、インヒビターとしてAlNを用いるものであったが、スラブ加熱温度が低くAlNを完全固溶させることができないため、インヒビターの抑制力不足あるいは部分的な抑制力の変動が大きいことにより、磁気特性は安定化しなかった。
かような欠点を補う手段として、特許文献3には、二次再結晶焼鈍中に窒素吸収を促進させて、二次再結晶を安定化させる技術が開示されている。焼鈍分離剤中に窒化物を添加することで二次再結晶焼鈍中に窒化させ、二次再結晶を安定化させる同様な技術は、特許文献4にも開示されている。しかしながら、二次再結晶焼鈍中に窒化させる技術は、コイルの長手方向や幅方向で窒化量に差が生じるために、依然として、十分に二次再結晶の発現を安定化させることはできなかった。
上記の問題を解決するために、脱炭焼鈍後、二次再結晶焼鈍前に、鋼板に窒化処理を施して二次再結晶を安定化させる技術が、特許文献5や特許文献6、特許文献7において開示された。しかしながら、二次再結晶焼鈍前に窒化処理を施す方法は、新たな設備を必要とし、コストが増大するという問題があった。
一方、これまで必要不可欠とされてきたインヒビターを使用せずに方向性電磁鋼板を製造する試みも種々行われてきた。例えば、特許文献8、特許文献9、特許文献10および特許文献11には、三次再結晶を利用する技術が開示されているが、これらはいずれも表面エネルギー差を利用する方法であるため、板厚が薄いものに限られる。従って、現在、製品として使用されている方向性電磁鋼板の板厚は0.20mm以上がほとんどであるため、通常の製品を上記の方法で製造することは困難である。
ところが、近年になって、二次再結晶発現の重要なポイントして、インヒビターの存在の他に、一次再結晶組織において隣り合う結晶粒の方位差角が注目されるようになってきた。すなわち、方位差角が20〜45°である粒界(高エネルギー粒界)が重要な役割を果たしていることが、非特許文献1で報告され、これに基づいて、インヒビターを使用しない方向性電磁鋼板の研究が再び盛んに行われるようになってきた。
例えば、特許文献12には、鋼スラブ中にインヒビター成分を含有させなくても、工業的に方向性電磁鋼板が製造できる技術(インヒビターレス法)が開示されている。
このインヒビターレス法で製造する方向性電磁鋼板の特性向上・安定化を図るために、以下のような技術が提案されている。
すなわち、特許文献13には、NおよびSの含有量を〔ppmN〕2+[ppmS]2≦6400に従って抑制すると共に、脱炭焼鈍の600℃から750℃にかけての昇温速度を15℃/s以上に制御し、かつ脱炭焼鈍の均熱過程の水素分圧に対する水蒸気分圧の比である雰囲気酸化性(P[H2O]/P[H2])を0.6以下の範囲に制御する技術が提案されている。
また、特許文献14には、焼鈍分離剤として、MgO:100重量部に対してTi酸化物を0.1〜9.0重量部含有するものを用い、最終仕上げ焼鈍は、900℃以上1050℃以下の温度域における5時間以上15時間以下の保持を不活性ガスの含有率が50vol%以上の雰囲気中にて行う工程を含み、かつこの工程における950℃以上の温度域に2時間以上10時間以下で滞留させる技術が提案されている。
さらに、特許文献15には、一次再結晶焼鈍後の鋼板における結晶粒径を8〜25μm の範囲とし、二次再結晶焼鈍の昇温過程における 800〜900℃の平均昇温速度を0.5〜5℃/hの範囲とし、二次再結晶焼鈍の昇温過程にて、900℃と800℃での鋼板窒素量差を−10ppm〜+25ppmの範囲とすることを特徴とする技術が提案されている。
特開昭59−56522号公報 特開昭59−190325号公報 特開昭62−70521号公報 特開昭62−40315号公報 特開平2−200732号公報 特開平4−183817号公報 特開平4−235222号公報 特開昭64−55339号公報 特開平2−57635号公報 特開平7−76732号公報 特開平7−197126号公報 特開2000−129356号公報 特開2001−158919号公報 特開2004−190053号公報 特開2004−218024号公報 Act Material 45巻 (1997) 1285頁
しかしながら、従来のインヒビターを利用して製造した方向性電磁鋼板と比べた場合、その磁気特性や被膜特性の安定性には依然として劣るものがあり、特に鋼板をコイル状に巻き取って最終仕上げ焼鈍を行うことに起因して、ストリップの幅方向あるいは長手方向で磁気特性や被膜特性が劣化する場合があり、優れた品質を有する製品を安定して生産し、さらなる歩留り向上を図るためには、いまだ改善の余地を残すものであった。
この発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、コイルの全幅および全長にわたって欠陥のない均一で密着性に優れたフォルステライト質絶縁被膜を有し、かつ磁気特性にも優れた方向性電磁鋼板を、低コストで製造することができる方法を提案することを目的とする。
以下、本発明の解明経緯について説明する。
さて、発明者らは、まず既に提案した特許文献14と特許文献15の技術を基に、さらに磁気特性と被膜特性を改善・安定化することを試みた。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
第1に素材成分についてであるが、酸可溶性AlおよびNの上限は上記技術と同様、各100ppm未満、60ppm未満にする必要があったが、酸可溶性Alについては40ppm以上の微量を含有させることにより、脱炭焼鈍時に鋼板表面に形成される酸化膜が緻密になり、二次再結晶焼鈍時の窒素の増減が抑制されて、二次再結晶粒のゴス方位への集積が向上し、磁気特性が改善されることが判明した。従って、酸可溶性Alの成分範囲は40ppm以上 100ppm未満とした。また、Nについても二次再結晶焼鈍時の窒素の増減を抑制するためには、30ppm以上含有させた方がよいことが判明したので、その成分範囲は30ppm以上 60ppm未満とした。さらに、インヒビターレス法で方向性電磁鋼板を製造するためには、(S+0.405Se)の上限は50ppm未満にする必要がある。この理由は、これらの合計量が50ppm以上になると、二次再結晶が困難となり、磁気特性が劣化するからである。
さらに、Sbは二次再結晶焼鈍時の鋼板窒素量の増加を非常に効果的に抑制するので、優れた磁気特性を得るためおよび磁気特性を安定化させるためには必須の元素であり、その効果を十分に発揮させるには0.035%以上添加する必要がある。しかしながら、0.30%を超えて含有させると脱炭焼鈍時の脱炭性が非常に悪くなり、工業的大量生産には不適となるので、その成分範囲は0.035%以上 0.30%以下とする必要がある。
しかしながら、一方でSbは、脱炭焼鈍時の鋼板の酸化速度を低減する効果が非常に大きいので、Sb添加量が増すと、脱炭焼鈍板サブスケールの酸化物量が少なくなることに起因すると思われる製品被膜の欠陥が増大した。
そこで、この被膜欠陥を抑制する手段について鋭意検討を重ねた結果、この欠陥を抑制するには、Sb量に応じて鋼中Mn量を増すことが効果的であることを新たに見出した。
すなわち、Sb:0.035%以上 0.30%以下で、Mn:{0.04+Sb(%)}%以上 0.50%以下の時に、優れた磁気特性と被膜特性を有する方向性電磁鋼板を安定して製造できることを見出したのである。なお、Mn量の上限は、Sb量の上限値が0.30%であるので、Mn量の上限は少なくともその場合の下限値(0.34%)以上であればよいこと、また一定量以上の添加はコスト面で不利なだけでなく、磁束密度の低下を招くことから、0.50%とした。
第2に焼鈍分離剤の組成であるが、特許文献14にも開示されているように、インヒビターレス成分系においても、マグネシアにTi化合物を配合することは被膜特性改善に有効である。従って、本発明の成分系においてもTi化合物の適正配合量について検討した結果、マグネシア:100質量部に対して、Ti化合物をTi換算で0.3〜8質量部を含有する焼鈍分離剤を塗布することが被膜特性の改善に有効であることが判明した。
第3に、二次再結晶焼鈍パターンであるが、特許文献15に開示の「二次再結晶焼鈍の昇温過程における、800℃から900℃までの平均昇温速度を0.5〜5℃/hの範囲にすること」という技術をベースに、本発明の成分系において二次再結晶焼鈍の昇温パターンを検討した結果、800℃以上 900℃以下の滞留時間を40時間以上 150時間以下にすることが磁気特性の改善に有効であることが判明した。
これに加え、発明者らは、インヒビターレス成分系における焼鈍分離剤の主剤であるマグネシアの粉体特性が、フォルステライト質絶縁被膜の被膜特性および磁気特性に及ぼす影響について、さらに研究を進めた。
というのは、マグネシアの粉体特性を制御することによって被膜特性や磁気特性を改善する技術については、これまでにも多くの提案がなされているが、そのほとんどは、MnSやMnSe,AlNなどのインヒビター成分を用いるものや、脱炭焼鈍後の窒化処理によって(Al, Si)Nなどのインヒビターを形成させるものに関してであり、インヒビターレス成分系では、これらに関する研究がほとんどなされていなかったからである。
その結果、マグネシアの粉体特性としては、特に不純物であるClの濃度およびCAA40%値が重要で、これらを所定の範囲に制限した上で、塗布・乾燥後のマグネシアの水和水分量を所定の範囲に制御することが、極めて有効であることの知見を得た。
また、発明者らは、焼鈍分離剤中に配合するTi化合物以外の添加物についても検討したところ、Ti化合物に加え、マグネシア100質量部に対して、Sr化合物をSr換算で0.2〜5質量部を配合することで、磁気特性および被膜特性のさらなる向上に効果があることを見出した。
すなわち、鋼板をコイル状に巻き取って最終仕上げ焼鈍をする以上、コイルの内・中・外巻き部では、熱履歴や雰囲気などの焼鈍条件にある程度の差が生じてしまう。しかしながら、その差に起因する磁気特性や被膜特性の差をできるだけ抑制し、さらなる特性の向上を図るためには、上記したような焼鈍分離剤中への添加物の制御が効果的であることが判明したのである。
この発明は、以上の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨構成は次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.01〜0.10%,Si:2.5〜4.5%,酸可溶性Al:40ppm以上 100ppm未満,N:30ppm以上 60ppm未満,Sb:0.035〜0.30%,Mn:{0.04+Sb(%)}%以上 0.50%以下および(S+0.405Se):50ppm未満を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるけい素鋼スラブを、1250℃以下の温度で加熱後、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行い、ついで脱炭・一次再結晶焼鈍後、マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を水でスラリー状にして鋼板表面に塗布したのち、二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって一方向性電磁鋼板を製造するに当たり、
a)焼鈍分離剤の主剤であるマグネシアとして、その粉体特性が、不純物であるClの濃度:0.01〜0.05%、CAA40%値:40〜90秒である粉体を選択し、この粉体をスラリー状にして塗布、乾燥させた後のマグネシアの水和水分量が1.0mass% 3.0mass%以下になるように水和させた焼鈍分離剤を、一次再結晶板の表面に塗布、乾燥させる、
b) 焼鈍分離剤中に、マグネシア:100質量部に対して、Ti化合物をTi換算で0.3〜8質量部含有させる、
c) 二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上 900℃以下の滞留時間を40時間以上 150時間以下とする
ことを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
(2)上記(1)において、焼鈍分離剤中にさらに、マグネシア:100 質量部に対して、Sr化合物をSr換算で0.2〜5質量部含有させることを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
(3)上記(1)または(2)において、けい素鋼スラブが、さらに質量%で、Sn:0.03〜0.50%,Cu:0.03〜0.50%,Ni:0.03〜0.50%,Cr:0.03〜0.30%,P:0.01〜0.10%およびMo:0.005〜0.10%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、鋼スラブにインヒビター成分が含有されない、すなわちAl,S,Se等が不純物レベルである素材を用いて、低温スラブ加熱により、磁気特性と被膜特性に優れた方向性電磁鋼板を安価に製造することができる。
以下、本発明を由来するに至った実験結果について説明する。
さて、発明者らは、インヒビターレス成分系でSbを利用することで、優れた磁気特性と被膜特性を有する方向性電磁鋼板を安定して製造できる手段の開発に取り組んだ。その結果、上記の発明を完成するに至ったのであるが、この知見は、以下に述べる実験室レベルでの多岐にわたる実験・検討の末に、得られたものである。
以下、本発明を由来するに至った実験結果について説明する。
(実験1)
C:0.02〜0.06%,Si:3.0〜3.5%,酸可溶性Al:40ppm以上 100ppm未満, N:30ppm以上 60ppm未満,Sb:0.01〜0.30%,Mn:0.05%以上 0.50%以下,(S+0.405Se):50ppm未満,Cu:0.01〜0.50%,Cr:0.01〜0.30%,P:0.002〜0.10%の成分範囲であり、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる多数の真空鋼塊を、1200℃に加熱後、熱間圧延し、950〜1100℃の温度で熱延板焼鈍を施したのち、冷間圧延にて最終板厚:0.29mmまで圧延した。その後、H2−H2O−N2中、800〜900℃の温度で脱炭・一次再結晶焼鈍を施した後、マグネシアを主成分とし、マグネシア:100質量部に対して0.1〜20.0質量部のTiO2を含有する焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上 900℃以下の滞留時間を10時間以上 200時間以下とする二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施した。その後、水洗して未反応の焼鈍分離剤を除去し、試料の被膜外観を調査した後、りん酸マグネシウム、コロイダルシリカおよびクロム酸を主成分とするコーティングを施した。
かくして得られた試料の磁気特性(磁束密度B8,鉄損W17/50 )と被膜密着性について調査した。なお、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
まず、多数の試料のうち、Mnが0.08〜0.14%、Sbが0.04〜0.06%を満足する成分で、焼鈍分離剤中に添加したTiO2量が被膜密着性に及ぼす影響について調べた結果を図1に示す。
同図に示したとおり、一部の例外はあるものの、マグネシア:100質量部に対して TiO2をTi換算で0.3〜8質量部添加した場合に、比較的良好な被膜密着性が得られていることが分かる。
同様に、Mn:0.08〜0.14%かつSb:0.04〜0.06%を満足する成分で、二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上 900℃以下の温度域での滞留時間が磁気特性に及ぼす影響について調べた結果を図2に示す。
同図に示したとおり、一部の例外はあるものの、800℃以上 900℃以下の滞留時間が40時間以上 150時間以下の場合に、比較的優れた磁気特性が得られていることが分かる。
上記の解析結果を踏まえ、マグネシア:100質量部に対してTiO2をTi換算で0.3〜8質量部添加し、かつ二次再結晶焼鈍の昇温過程において 800℃以上 900℃以下の滞留時間を40時間以上 150時間以下とした条件で、素材中のMn,Sb量が磁気特性と被膜特性に及ぼす影響について調査した。得られた結果を図3(a), (b)に示す。
同図によれば、Sb:0.035%以上で、かつMn:{0.04+Sb(%)}%以上の場合に、磁気特性と被膜特性の両者に優れた方向性電磁鋼板が得られることがわかる。
なお、鋼中Mn量を増すことで被膜特性を改善する技術としては、特許文献3等に開示の技術があるが、実施例をみると、これらは酸可溶性Alを0.02〜0.03%含みインヒビターとしてAlNを用いるもの、酸可溶性Alを0.02〜0.03%含む素材で脱炭焼鈍後に窒化処理を行う、あるいは二次再結晶中に窒素吸収を促進させてAlNをインヒビターとして利用するものであった。また、Mn量を増やす目的は、仕上げ焼鈍中、鋼板表層に高温酸化によるMnOを適正量形成させることで、フォルステライト被膜の張力や密着性などを改善するところにあった。
しかしながら、本発明のインヒビターレス成分系は、上記の技術とは異なり、素材成分中の酸可溶性Alは100ppm未満である。酸可溶性Alが0.02%程度以上含まれた場合の被膜形成過程は、「Journal of Materials Engineering and performance Vol.3 (1994) 214頁(“Glass Film Structure of Grain-Oriented Silicon Steel Using Aluminum Nitride as an Inhibitor”)」や「材料とプロセス CAMP-ISIJ, Vol.6 (1993)-676(方向性珪素鋼板の仕上げ焼鈍皮膜の構造解析)」に報告されているように、酸可溶性Alがほとんどないあるいは少ない場合と異なる。従って、鋼中Mn量の影響についても、酸可溶性Alが0.02〜0.03%含まれる場合とそうでない場合とでは異なると推定できる。
すなわち、前記した知見は、従来のインヒビターを用いた方向性電磁鋼板の素材成分とは異なるインヒビターレス成分系の下で、特にSb量との関係で得られた新規知見である。
さらに、インヒビターレス成分系で、Sb量に応じて鋼中Mn量を増した時に被膜特性が改善する理由も、上記した従来技術の機構とは異なる。すなわち、前述したように、Sbは脱炭焼鈍時の鋼板の酸化速度を低減する効果が非常に大きいので、Sb量が増加すると、図4に示すように、脱炭焼鈍板サブスケールの酸化物量が少なくなり、それに起因すると推定される製品被膜の欠陥が増大した。
これに対して、鋼中Mn量を増加すると、図5に示すように、脱炭焼鈍時に生成する酸化物量が増すので、Sb量増によるサブスケール量の低減を補うことができる。
また、サブスケールの酸化物として、Mn増によりファイヤライトとシリカの生成量が増大するが、特に(S+0.405Se)量が50ppm未満である成分系では、Mn量を増加した場合、(Fe,Mn)2SiO4の化学式で表されるファイヤライト生成量が増すことも被膜改善に寄与する。すなわち、本発明の構成要件のひとつである昇温過程800℃以上 900℃以下の滞留時間を40時間以上 150時間以下にする二次再結晶焼鈍では、800℃以上 900℃以下の温度域での被膜形成の主反応は、マグネシアとシリカが直接に反応してフォルステライトを形成する下記(1)式の反応ではなく、ファイヤライト中のFeあるいはMnの一部がMgに置換する下記(2)式の反応(オリビン形成反応)なので、脱炭焼鈍板サブスケール中にある程度のファイヤライトが存在した方が被膜形成が進行し易く、最終的な被膜特性が向上すると考えられる。
さらに、(Fe,Mn)2SiO4でMn比が増した方が、上記オリビン形成反応において、Mgの置換が進行し易い、すなわちオリビン形成反応が進行し易いことも、鋼中Mn量が増すと被膜特性が向上する理由の一つと考えられる。なお、Mn量を一定にしてSb量を増すと、オリビン形成反応は遅くなる。従って、Sb量を増すと被膜特性が劣化する原因は、脱炭焼鈍板サブスケールの酸化物量が減少することと、二次再結晶焼鈍過程でオリビン形成反応が遅くなることの二点と考えられるが、Mn量を増すことにより両者を同時に改善できることが、Sb増量による被膜特性の劣化をMn増量により補える理由と考えられる。
2MgO+SiO2→Mg2SiO4 --- (1)
(Fe,Mn)2SiO4+MgO→(Fe,Mn)2-XMgXSiO4+[Mg1-X, (Fe,Mn)X]O --- (2)
図6は、素材成分の異なる脱炭焼鈍板にマグネシアを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、850℃で50時間保持した後、引き出した試料表面をフーリエ変換赤外線吸収スペクトル法(FT-IR)で測定した結果である。
(a)Mn:0.09%+Sb:0.04%の試料に比べて、(b)Mn:0.09%+Sb:0.06%の試料では、(a)で約1030cm-1にみられるピークが低波数側に止まっていてオリビン形成が遅いことが分かるが、(c)Mn:0.12%+Sb:0.06%の試料では、オリビン形成が(b)よりも進行し、(a)並み以上になっていることが分かる。
なお、特開平6−184638号公報には、脱炭焼鈍工程において生成する酸化膜成分{(Fe,Mn)O}a・{SiO2}b中のFe,Mn分が(FeO+MnO)/酸化膜中全SiO2として0.10〜0.50、かつ酸化膜中全SiO2が0.6〜1.7g/m2となるようにして脱炭焼鈍することで、均一なグラス被膜を有し、磁気特性の優れた方向性電磁鋼板を製造する技術が開示されているが、この技術の目的は、脱炭焼鈍後に窒化処理を行い、(Al,Si)N主体のインヒビターを形成する方向性電磁鋼板の製造法で良好な被膜特性と磁気特性を得ることにあり、インヒビターレス成分系で優れた磁気特性と被膜特性を有する方向性電磁鋼板を製造しようとする本発明とは技術内容が異なる。
(実験2)
実験1の結果に基づき、素材Mn,Sb量がそれぞれ、Sb:0.035%以上かつMn:{0.04+Sb(%)}%以上の成分系で実験を行ったが、同じ出鋼チャージでもコイル単位で被膜特性が大きく劣化する場合があった。さらに、大型コイルで被膜特性の劣化が顕著であり、特にコイルの中心部で被膜外観が劣悪な場合があった。
なお、コイルの大型化に伴う被膜特性の劣化については、特開平11−158558号公報や特開平11−181525号公報で、「コイルが大型になるとコイルの中心部のコイル層間の雰囲気が過剰に高くなり、被膜欠陥や磁気特性の劣化が発生する傾向が強くなる」と述べられている。そして、最終仕上げ焼鈍時のコイル層間雰囲気は、焼鈍分離剤中のMgOの水和水から発生するH2Oの分圧や通入雰囲気のH2分圧によって変化し、雰囲気の酸化性が高いと被膜形成反応が抑制されて被膜劣化が生じ易くなることが示されている。
そして、上記のような被膜劣化を改善するために、特開平11−158558号公報や特開平11−181525号公報では、MgOの製造方法や粉体特性(CAA40%, CAA80%, 比表面積, Ig.loss等)に関する提案がなされている。また、特許第3707144号公報では、鋼板に塗布・乾燥させた後のMgOの水和水分量をMgOに対して1.0mass%以上3.9mass%以下にする技術が提案されている。
このように、フォルステライト質被膜形成の一方の原料である焼鈍分離剤の主要構成物であるマグネシアは、被膜形成反応に多大な影響を及ぼすことが知られているため、その品質改善に関しては多くの研究がなされてきた。
しかしながら、そのほとんどは、MnS, MnSe, AlNなどのインヒビターを用いるものや脱炭焼鈍後の窒化処理によって(Al, Si)Nなどのイ ンヒビターを形成させる製造方法に適用するものに関してであり、インヒビターレス成分系では、マグネシアに関する研究がほとんどなされていなかった。
そこで、インヒビターレス成分系の電磁鋼板を製造するのに適正なマグネシアに関する検討を行った。
すなわち、C:0.043%, Si:3.34%, 酸可溶性Al:63ppm, N:39ppm, Sb:0.047%, Mn:0.105%および(S+0.405Se):13ppmを含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる複数の方向性けい素鋼板用スラブを、1200℃に加熱後、熱間圧延により板厚:2.4 mmの熱延板とした。ついで、1050℃で30秒間の熱延板焼鈍後、冷間圧延により最終冷延板厚:0.29mmとしてから、これらの冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、H2−H20−N2雰囲気中にて脱炭焼鈍を施した。
このようにして、脱炭焼鈍後の鋼板を10コイル (板幅:1200mm, 各コイルの質量:15トン)用意し、表1に示す10種類のマグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、巻き取った後、二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上900℃以下の滞留時間を60時間にする二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍に供した。
なお、焼鈍分離剤中には、マグネシア:100質量部に対して4質量部のTiO2を配合した。また、マグネシアの水和水分量は、スラリーの水和温度や水和時間を変更することによって、表1に示す一定範囲になるように制御した。
その後、水洗して未反応の焼鈍分離剤を除去したのち、りん酸マグネシウム、コロイダルシリカおよびクロム酸を主成分とするコーティングを施した。
かくして得られた各製品コイルのコイル中央部での磁気特性(磁束密度B8,鉄損W17/50)、被膜外観および被膜密着性について調査した。なお、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
得られた結果を表1にまとめて示す。
Figure 2007247022
同表に示したとおり、マグネシア中の不純物であるClの濃度が0.01〜0.05%、CAA40%値が40〜90秒、水和水分量が1.0mass%以上 3.0mass%%以下に該当する条件で製造した場合に、磁気特性と被膜特性に優れた製品を得ることができた。
なお、ここでCAA40%は、クエン酸:28.0g、無水安息香酸ナトリウム:0.25g、1%フェノールフタレインアルコール液:2.0mlを純水に溶かし1000mlとした溶液を、200ml容積ビーカーに100mlをとり、30±0.5℃に温度を上げ、直径:8mm、長さ:35mmでプラスチック外装の磁石の回転子を入れ、 30±0.5℃の温度に調整した恒温槽付きマグミキサーにセットし、pHメーターの電極をクエン酸溶液中に入れ、ここに、2.0gのMgOを液中に投入して10秒後に回転子を900rpmで回転させて液を撹拌し、液中に投入してからpHが8.0になるまでの時間を測定するという方法で測定した。
上述したように、特にマグネシアの水和水分量が1.0%以上3.0%以下の場合に、コイル中央部で良好な製品特性が得られる理由については、次のように考えられる。
前述したように、本成分系を適用することで、サブスケール中の酸化物として、(Fe,Mn)2SiO4の化学式で表されるファイヤライト生成量が増すことが、ある程度の被膜特性改善に寄与している。そして、本発明の要件の一つである昇温過程800℃以上900℃以下の滞留時間を40時間以上150時間以下にする二次再結晶焼鈍では、800℃以上900℃以下 の温度域での被膜形成の主反応は、マグネシアとシリカが直接に反応してフォルステライトを形成する反応ではなく、ファイヤライト中のFeあるいはMnの一部がMgに置換する反応(オリビン形成反応)なので、脱炭焼鈍板サブスケール中にある程度のファイヤライトが存在した方が被膜形成が進行し易く、最終的な被膜特性が向上すると考えられる。また、(Fe,Mn)2SiO4でMn比が増した方が、上記オリビン形成反応において、Mgの置換が進行し易い、すなわちオリビン形成反応が進行し易いことも、鋼中Mn量が増すことにより被膜特性が向上する原因の一つと考えられる。
しかしながら、上述したオリビン形成反応とその後のマグネシアとシリカによるフォルステライト形成反応を良好に進行させるためには、それに至る以前の、脱炭焼鈍後の鋼板表面に塗布するマグネシアの水和水に起因する表面酸化反応(主に鉄の酸化)を充分に抑制することが必要である。すなわち、マグネシアを主体とする焼鈍分離剤は、水に懸濁したスラリーとして鋼板に塗布されるため、乾燥させたのちも物理的に吸着したH2Oを保有するほか、一部が水和してMg(OH)2に変化している。そのため、二次再結晶焼鈍中は800℃付近まで少量ながらH2Oが放出され続ける。このH2Oによって二次再結晶焼鈍中に鋼板表面は酸化される。この酸化反応が過度に進行すると、部分的に地鉄が露出する点状欠陥発生の原因となる。そして、前述したように、コイル層間の流通性が劣るコイル中央部でこの現象は顕著になる。
これに対し、本発明のインヒビターレス成分系では、従来のMnS, MnSe, AlN等のインヒビターを用いる場合よりも、鋼板表面が酸化され易いために、マグネシアの水和水分量をより低くして、オリビン形成反応が生じる直前の温度までは鋼板表層の酸化を充分に抑制することが、コイル中央部において均一・良好な被膜を形成させるために必要であると考えられる。
(実験3)
C:0.036%, Si:3.25%, 酸可溶性Al:75ppm, N:45ppm, Sb:0.053%, Mn:0.11%, (S+0.405Se):21ppm, Cu:0.08%およびCr:0.05%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる複数の方向性けい素鋼板用スラブを、1250℃に加熱後、熱間圧延により板厚:2.2mmの熱延板とした。ついで、1025℃で60秒間の熱延板焼鈍後、冷間圧延により最終冷延板厚:0.29mmとした。ついで、これらの冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、H2−H2O−N2雰囲気中にて脱炭焼鈍を施した。
このようにして、脱炭焼鈍後の鋼板を8コイル (板幅:1200mm, 各コイルの質量:15トン)用意し、不純物Cl量:0.03%, CAA40%値:70秒のマグネシアを、スラリーの水和温度と水和時間を変更することによって表2に示すように水和水分量を変更して、鋼板表面に塗布し、巻き取った後、二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上900℃以下の滞留時間を80時間にする二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍に供した。なお、焼鈍分離剤中には、マグネシア100質量部に対して2質量部のTiO2を配合した。
その後、水洗して未反応の焼鈍分離剤を除去したのち、りん酸マグネシウム、コロイダルシリカおよびクロム酸を主成分とするコーティングを施した。
かくして得られた各製品コイルのコイル中央部での磁気特性(磁束密度B8,鉄損W17/50)、被膜外観および被膜密着性について調査した。なお、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
得られた結果を表2にまとめて示す。
Figure 2007247022
同表から明らかなように、水和水分量が1.0mass%以上3.0mass%以下の場合に、磁気特性と被膜特性に優れた製品が得られていることが分かる。
(実験4)
C:0.047%, Si:3.42%, 酸可溶性Al:55ppm, N:36ppm, Sb:0.04%, Mn:0.10%,(S+0.405Se):27ppm, Cu:0.12%, Cr:0.04%およびP:0.012%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる複数の方向性けい素鋼板用スラブを、1150℃に加熱後、熱間圧延により板厚:2.0mmの熱延板とした。ついで、1050℃で45秒間の熱延板焼鈍を行ったのち、冷間圧延により最終冷延板厚:0.285mmとした。この時、最終冷間圧延は、少なくとも1パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150〜250℃になるような圧延とした。ついで、これらの冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、H2−H2O−N2雰囲気中にて脱炭焼鈍を施した。
その後、マグネシアを主成分とし、マグネシア:100質量部に対しTi換算で0〜10質量部のTiO2およびSr換算で0〜8質量部のSrSO4あるいはSr(OH)2・8H2Oを配合した焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上 900℃以下の滞留時間を70時間とする二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍に供した。なお、マグネシアは、不純物Cl量:0.02%, CAA40%値:80秒のものを、スラリーの水和温度と水和時間を制御することによって水分水和量が2.0〜2.5mass%になるように塗布した。
その後、水洗して未反応の焼鈍分離剤を除去したのち、りん酸マグネシウム、コロイダルシリカおよびクロム酸を主成分とするコーティングを施した。
かくして得られた各製品コイルのコイル中央部での磁気特性(磁束密度B8,鉄損W17/50)、被膜外観および被膜密着性について調査した。なお、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
得られた結果を、横軸をマグネシア:100質量部に対するTiO2配合量(Ti換算)、縦軸をマグネシア100質量部に対するSr化合物配合量(Sr換算)にして、図7に示す。
同図より、マグネシア:100質量部に対してTi換算で0.3〜8質量部のTiO2を配合した場合に優れた製品特性が得られていることが分かる。中でも、マグネシア:100質量部に対してSr換算で0.2〜5質量部のSr化合物を併用して配合した場合に、とりわけ優れた製品特性が得られていることが分かる。
次に、本発明の電磁鋼板において、成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.01〜0.10%
Cは、一次再結晶組織を改善するために必要な元素であるが、含有量が0.01%に満たないと良好な一次再結晶組織が得られず、一方0.10%を超えると脱炭焼鈍時の脱炭負荷が増大して生産性が低下することから、C量は0.01〜0.10%に限定する。
Si:2.5〜4.5%
Siは、鋼の電気抵抗を高くして渦電流損を低下させるために有用な元素であり、本発明では2.5%以上含有させる必要がある。しかしながら、4.5%を超えると冷間圧延が著しく困難になるため、Si量は2.5〜4.5%に限定する。
酸可溶性Al:40ppm以上 100ppm未満
インヒビターレス法で二次再結晶を発現させて方向性電磁鋼板を製造するためには、不純物元素であるAlは100ppm未満にする必要がある。しかしながら、40ppm以上の微量な酸可溶性Alは、脱炭焼鈍時に鋼板表面に形成される酸化膜を緻密にし、二次再結晶焼鈍時の窒素の増減を抑制して、二次再結晶粒のゴス方位への集積を向上させ、磁気特性を改善するのに有効なので、本発明では酸可溶性Alを40ppm以上 100ppm未満の範囲で含有させるものとする。
N:30ppm以上 60ppm未満
同様に、インヒビターレス法で二次再結晶を発現させて方向性電磁鋼板を製造するためには、不純物元素であるNは60ppm未満にする必要がある。但し、二次再結晶焼鈍時における窒素の増減を抑制するためには、30ppm以上含有させた方がよいので、本発明ではNは30ppm以上 60ppm未満の範囲で含有させるものとする。
Sb:0.035〜0.30%
Sbは、二次再結晶焼鈍時の鋼板窒素量の増加を非常に効果的に抑制するので、優れた磁気特性を得るためおよび磁気特性を安定化させるためには必須の元素であり、その効果を十分に発揮させるには0.035%以上添加する必要がある。しかしながら、含有量が0.30%を超えると脱炭焼鈍時の脱炭性が非常に悪くなり、工業的大量生産には不適となるので、Sb量は0.035〜0.30%に限定する。
Mn:{0.04+Sb(%)}%以上 0.50%以下
インヒビターレス成分系でSbを利用して優れた磁気特性と被膜特性を有する方向性電磁鋼板を製造する際の問題点は、Sb添加量を増した時の被膜特性の劣化にある。この問題を解決するのには、Sb量に応じてMn量を増すことが効果的であるので、Mn量の下限は{0.04+Sb(%)}%とした。なお、上限は、Sb量の上限値が0.30%であるので、Mn量の上限は少なくともその場合の下限値(0.34%)以上であればよいこと、また一定量以上の添加はコスト面で不利なだけでなく、磁束密度の低下を招くことから、0.50%とした。
(S+0.405Se):50ppm未満
不純物元素であるSおよびSeは、インヒビターレス法で二次再結晶を発現させて方向性電磁鋼板を製造するためには、(S+0.405Se)で50ppm未満にする必要がある。というのは、(S+0.405Se)量が50ppm以上である場合には、二次再結晶が困難となり、磁気特性の劣化を招くからである。
以上、基本成分について説明したが、本発明では、磁気特性および被膜特性の向上を目的として以下の元素を適宜含有させることができる。
Sn:0.03〜0.50%
Snは、磁気特性の向上・安定化作用を有する元素であるが、含有量が0.03%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.50%を超えると良好な一次再結晶組織が得られないので、Sn量は0.03〜0.50%の範囲にするのが好ましい。
Cu:0.03〜0.50%
Cuは、鋼板表層の酸窒化を抑制することによって、磁気特性の劣化を抑制する作用を有する元素である。しかしながら、含有量が0.03%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.50%を超えると表面に「へげ」と呼ばれる欠陥が発生し易くなるので、Cu量は0.03〜0.50%の範囲にするのが好ましい。
Ni:0.03〜0.50%
Niは、集合組織を改善して磁束密度を向上させる作用効果を有する元素である。しかしながら、含有量が0.03%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.50%を超えて添加してもそれ以上の効果に乏しいばかりか、圧延性も劣化するおそれがあるので、Ni量は0.03〜0.50%の範囲にするのが好ましい。
Cr:0.03〜0.30%
Crは、被膜特性の改善に有効な元素であるが、0.03%未満では目立った改善効果が得られず、一方0.30%を超えると磁気特性が劣化する傾向にあるので、Cr量は0.03〜0.30%の範囲にするのが好ましい。
P:0.01〜0.10%
Pは、粒界偏析により冷延−再結晶後の集合組織を改善して磁束密度を向上させる働きがある。しかしながら、含有量が0.01%未満では十分な効果が得られず、一方0.10%を超えると良好な一次再結晶組織が得られないので、P量は0.01〜0.10%の範囲にするのが好ましい。
Mo:0.005〜0.10%
Moは、表面性状を改善する効果がある。しかしながら、含有量が0.005%未満では十分な効果が得られず、一方0.10%を超えると脱炭焼鈍時の脱炭性が劣化するので、Mo量は0.005〜0.10%の範囲にするのが好ましい。
次に、この発明の方向性電磁鋼板の好適製造条件について説明する。
従来から用いられている製鋼法で、上記成分に調整した溶鋼を、連続鋳造法あるいは造塊法で鋳造し、必要に応じて分塊工程を挟んでスラブを製造する。また、直接鋳造法を用いて100mm以下の厚さの薄鋳片を直接製造してもよい。
ついで、スラブを、通常の方法に従い加熱した後、熱間圧延により熱延コイルとする。この時のスラブ加熱温度は、エネルギーコスト低減のために1250℃以下とすることが好ましい。というのは、1250℃を超える高温スラブ加熱は、インヒビターレス法による本発明では無意味であり、コストアップとなるばかりだからである。
上記の熱間圧延後、必要に応じて熱延板焼鈍を行ったのち、1回の冷間圧延あるいは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により、最終板厚の冷延板とする。
なお、冷間圧延は、常温で行っても良いし、あるいは常温よりも高い温度、例えば150〜300℃程度に上げて圧延する温間圧延としてもよい。また、冷間圧延途中で150〜300℃の範囲での時効処理を1回または複数回行ってもよい。
ついで、最終冷間圧延板に湿水素雰囲気中にて脱炭・一次再結晶焼鈍を施す。この脱炭焼鈍により、残留C量を0.004%以下まで低減することが望ましい。
その後、この脱炭焼鈍を施した鋼板表面に、マグネシアを主体とした焼鈍分離剤を、水でスラリー状にして塗布した後、乾燥させる。ここで、良好な被膜特性を得るためには、マグネシアの粉体特性として、不純物のCl濃度が0.01〜0.05%、CAA40%値が40〜90秒である粉体を選択し、該粉体をスラリー状にして塗布・乾燥させた後のマグネシアの水和水分量が1.0mass%以上 3.0mass%以下になるように水和させた焼鈍分離剤を用いることが重要である。ここで、水和水分量は、スラリーの水和温度と平均水和時間によって制御する必要がある。
すなわち、生産ラインにおいて焼鈍分離剤スラリーは、一定量を塗布して消費した後、ほぼその消費量に見合う量を新たに調合して、残存スラリーに継ぎ足すことで、使用している。従って、水和温度については一定に制御できるものの、水和時間を一定にすることは困難であり、水和水分量をコイル全長にわたって一定値にすることは難しい。なぜなら、マグネシアの水和水分量は、水和温度が高くなる、あるいは水和時間が長くなるにつれて、高くなるからである (水和水分量の増加は、水和が進行することで、マグネシアの一部が水酸化マグネシウムになることで生じる)。但し、水和温度と平均水和時間を制御することによって、水和量をある一定範囲、例えば、2.3±0.2%などの範囲になるようにすることは可能である。
なお、不純物のCl濃度が0.01〜0.05%、CAA40%値が40〜90秒であるマグネシアを選択し、該粉体をスラリー状にして塗布・乾燥させた後のマグネシアの水和水分量が1.0%以上 3.0%以下になるようにするには、スラリーの水和温度を5〜22℃にして、鋼板のライン通板速度や焼鈍分離剤・塗布量などのスラリー消費量を勘案して、平均水和時間が20〜90分の範囲になるようにするのが望ましい。なお、不純物のCl濃度は、0.025〜0.04%とするのがより好ましい。
また、良好な被膜特性を得るためには、マグネシア:100質量部に対して、Ti化合物を Ti換算で0.3〜8質量部配合した焼鈍分離剤を塗布する必要がある。ここに、Ti化合物としては、TiO2、TiO3・H2O、TiO・(OH)2、Ti(OH)4等を用いることができる。また、マグネシア:100質量部に対してSr換算で0.2〜5質量部のSr化合物を併用して配合することは、さらなる磁気特性と被膜特性の向上・安定化に効果がある。かようなSr化合物としては、SrSO4、Sr(OH)2・8H2O、SrCO3、Sr(NO)3などを用いることができる。
なお、被膜特性の均一性の一層の向上を目的として、焼鈍分離剤中に、さらにCaOのような酸化物、MgSO4・7H2OやSnSO4のような硫化物、Na2B4O7のようなB系化合物、Sb2O3やSb2(SO4)3のようなSb系化合物のうちから選んだ1種または2種以上を、それぞれ単独または複合して、マグネシア:100質量部に対し5質量部以下で添加することもできる。
また、本発明において、「マグネシア主体」とは、上記したような各化合物を含む焼鈍分離剤において、マグネシアを少なくとも80mass%以上含有することを意味する。
さらに、焼鈍分離剤は、鋼板片面当たり4〜10 g/m2程度の範囲で塗布するのが好ましい。というのは、塗布量が4g/m2より少ないとフォルステライトの生成が不十分となり、一方10g/m2を超えるとフォルステライト質被膜が過剰に生成し厚くなるため、占積率の低下を招くからである。
その後、二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を行うが、ここで、二次再結晶焼鈍は、昇温過程において 800℃以上 900℃以下での滞留時間を40時間以上 150時間以下とする必要がある。
というのは、800℃以上 900℃以下での滞留時間が上記の範囲を外れると、前掲図2に示したように、磁気特性の低下を招くからである。
その後、鋼板表面に、りん酸塩系の絶縁コーティング、好ましくは張力を付与する絶縁コーティングを施して製品とする。絶縁被膜の種類については特に限定されないが、従来公知の絶縁被膜いずれもが適合する。例えば、特開昭50−79442号公報や特開昭48−39338号公報に記載されている、りん酸塩−クロム酸−コロイダルシリカを含有する塗布液を鋼板に塗布し、800℃程度で焼き付ける方法が好適である。
さらに、最終冷延後、最終仕上げ焼鈍後あるいは絶縁コーティングの被成後に、既知の磁区細分化処理を行うことは、さらなる鉄損の低減に有効である。
表3に示す成分組成になる鋼スラブを、ガス加熱炉により1180℃に加熱した後、熱間圧延により板厚:2.3mmの熱延板とした。ついで、1025℃で45秒間の熱延板焼鈍後、冷間圧延にて最終板厚:0.29mmとした。ついで、脱炭・一次再結晶焼鈍を行った後、マグネシアを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶焼鈍と純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を行った。表4にマグネシアの粉体特性、焼鈍分離剤の配合割合と二次再結晶焼鈍条件(800℃以上900℃以下の滞留時間)を示す。その後、りん酸マグネシウム、クロム酸およびコロイダルシリカを主成分とする絶縁コーティングを施した。
かくして得られた各製品について、コイル中央部の磁束密度(B8),鉄損(W17/50)、被膜外観および被膜密着性について調べた結果を、表4に併記する。
なお、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
Figure 2007247022
Figure 2007247022
表4から明らかなように、この発明に従う条件で製造した発明例は、いずれも良好な磁気特性および被膜特性が得られている。
表5に示す成分を有する鋼スラブを、ガス加熱炉により1200℃に加熱した後、熱間圧延により板厚2.5mmの熱延板とした。その後、1050℃で45秒間の熱延板焼鈍を行った後、冷 間圧延にて最終板厚0.285mmにした。このとき、最終冷間圧延は、少なくとも1パスは圧 延ロール出側直後の鋼板温度が150〜250℃になるような圧延を行った。ついで、一次再結晶・脱炭焼鈍を行った後、マグネシアを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶焼鈍と純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を行った。表6にマグネシアの粉体特性、焼鈍分離剤の配合割合と二次再結晶焼鈍条件(800℃以上900℃以下の滞留時間)を示す。その後、りん酸マグネシウム、クロム酸とコロイダルシリカを主成分とする絶縁コーティング施した。
かくして得られた各製品について、コイル中央部の磁束密度(B8),鉄損(W17/50)、被膜外観および被膜密着性について調べた結果を、表6に併記する。
なお、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
Figure 2007247022
Figure 2007247022
表6から明らかなように、この発明に従う条件で製造した適合例は、いずれも良好な磁気特性および被膜特性を示している。
表7に示す成分を有する鋼スラブを、ガス加熱炉により1200℃に加熱した後、熱間圧延により板厚2.7mmの熱延板とした。引き続き、冷間圧延により板厚1.6mmとした後、1025℃で60秒間の中間焼鈍を行った後、冷間圧延にて最終板厚0.22mmにした。このとき、最終冷間圧延は、少なくとも1パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150〜250℃になるような圧延を行った。ついで、一次再結晶・脱炭焼鈍を行った後、マグネシアを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶焼鈍と純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を行った。表8にマグネシアの粉体特性、焼鈍分離剤の配合割合と二次再結晶焼鈍条件(800℃以上900℃以下の滞留時間)を示す。その後、りん酸マグネシウム、クロム酸とコロイダルシリカを主成分と する絶縁コーティング施した。
かくして得られた各製品について、コイル中央部の磁束密度(B8),鉄損(W17/50)、被膜外観および被膜密着性について調べた結果を、表8に併記する。
なお、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
Figure 2007247022
Figure 2007247022
表8から明らかなように、この発明に従う条件で製造した適合例は、いずれも良好な磁気特性および被膜特性を示している。
焼鈍分離剤中のTi化合物添加量が被膜密着性に及ぼす影響を示す図である。 二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上900℃以下の滞留時間が磁気特性に及ぼす影響を示す図である。 素材中のMn,Sb量が磁気特性と被膜特性に及ぼす影響を示す図である。 素材Sb量が脱炭焼鈍板サブスケールの酸素目付け量(片面当たり)に及ぼす影響を示す図である。 素材Mn量が脱炭焼鈍板サブスケールの酸素目付け量(片面当たり)に及ぼす影響を示す図である。 二次再結晶焼鈍中、850℃で50時間焼鈍した後の鋼板表面のFT-IR測定結果を示す図である。 焼鈍分離剤中のTi化合物およびSr化合物添加量が製品特性に及ぼす影響を示す図である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.10%,Si:2.5〜4.5%,酸可溶性Al:40ppm以上 100ppm未満,N:30ppm以上 60ppm未満,Sb:0.035〜0.30%,Mn:{0.04+Sb(%)}%以上 0.50%以下および(S+0.405Se):50ppm未満を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるけい素鋼スラブを、1250℃以下の温度で加熱後、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行い、ついで脱炭・一次再結晶焼鈍後、マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を水でスラリー状にして鋼板表面に塗布したのち、二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって一方向性電磁鋼板を製造するに当たり、
    a)焼鈍分離剤の主剤であるマグネシアとして、その粉体特性が、不純物であるClの濃度:0.01〜0.05%、CAA40%値:40〜90秒である粉体を選択し、この粉体をスラリー状にして塗布、乾燥させた後のマグネシアの水和水分量が1.0mass% 3.0mass%以下になるように水和させた焼鈍分離剤を、一次再結晶板の表面に塗布、乾燥させる、
    b) 焼鈍分離剤中に、マグネシア:100質量部に対して、Ti化合物をTi換算で0.3〜8質量部含有させる、
    c) 二次再結晶焼鈍の昇温過程において、800℃以上 900℃以下の滞留時間を40時間以上 150時間以下とする
    ことを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 請求項1において、焼鈍分離剤中にさらに、マグネシア:100質量部に対して、Sr化合物をSr換算で0.2〜5質量部含有させることを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 請求項1または2において、けい素鋼スラブが、さらに質量%で、Sn:0.03〜0.50%,Cu:0.03〜0.50%,Ni:0.03〜0.50%,Cr:0.03〜0.30%,P:0.01〜0.10%およびMo:0.005〜0.10%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
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