JP2007246871A - 水性樹脂分散体及びその製造方法、塗料、積層体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリオレフィン(A)に親水性高分子(B)を、(A):(B)=100:5〜100:500(重量比)の割合で結合させてなる重合体(C)を、水に分散させてなる樹脂分散体及び樹脂分散体の製造方法、並びにこれを用いた塗料、積層体。
【選択図】 なし
Description
即ち本発明は、ポリオレフィン(A)に親水性高分子(B)を、(A):(B)=100:5〜100:500(重量比)の割合で結合させてなる重合体(C)を、水に分散させてなることを特徴とする樹脂分散体に関する。
更に本発明は、前記重合体(C)が50%粒子径0.2μm以下で水に分散されてなる樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記樹脂分散体の界面活性剤含有量が、重合体(C)100重量部に対し10重量部以下である樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記親水性高分子(B)を、ポリオレフィン(A)1g当たり0.01〜5mmol結合させてなる樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記ポリオレフィン(A)が、プロピレン含量が50モル%以上であってアイソタクチックブロックとアタクチックブロックとを有するステレオブロックポリプロピレン重合体、及び/又は、プロピレン−α−オレフィン共重合体である樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記重合体(C)が、ポリオレフィン(A)に親水性高分子(B)がグラフト結合したグラフト共重合体である樹脂分散体に関する。
更に本発明は、前記親水性高分子(B)が反応性基を1分子当たり1以上有してなる樹脂分散体に関する。
更に本発明は、前記反応性基として少なくともアミノ基を有してなる樹脂分散体に関する。
本発明はまた、前記樹脂分散体からなる塗料に関する。
本発明はまた、熱可塑性樹脂成形体(F)上に、ポリオレフィン(A)に親水性高分子(B)を(A):(B)=100:5〜100:500(重量比)の割合で結合させた重合体(C)を含む層を有する積層体に関する。
本発明はまた、熱可塑性樹脂成形体(F)に、前記樹脂分散体又は前記塗料を塗布し、加熱して樹脂層を形成する積層体の製造方法に関する。
さらに、本発明の樹脂分散体を含む塗料を塗布して得られた塗装膜は耐水性、耐湿性、耐油性(耐GH性)、耐薬品性に優れる。このため1回のみの塗装で仕上げる、例えば溶剤系ラッカー型塗料のような塗装方法にも好適である。
また本発明の重合体(C)を他の樹脂と併用して複合水性樹脂分散体とすれば、他の樹脂に由来する物性値の向上、具体的には塗膜の強度、耐水性、耐候性、耐擦性、耐溶剤性などを向上させることができる。
また本発明の積層体は、塗膜密着性に優れ、幅広い工業製品に適用可能である。
なお本発明においては必ずしもすべての効果を発現することを必須とするものではなく、上記した1以上の効果があればよいものとする。
なお本発明において分散とは、分散粒子が極めて小さく単分子で分散している状態、実質的には溶解と言えるような状態を含む概念である。
[1]ポリオレフィン(A)
本発明のポリオレフィン(A)としては、反応性基を有しないポリオレフィン(A1)、又は反応性基を有するポリオレフィン(A2)を用いることができる。
[1−1]反応性基を有しないポリオレフィン(A1)
ポリオレフィン(A1)としては、公知の各種ポリオレフィン及び変性ポリオレフィンを用いることができ、特に限定されないが、例えば、エチレン又はプロピレンの単独重合体、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン又は/及びプロピレンとその他コモノマーとの共重合体が挙げられる。コモノマーとしては例えばブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、シクロペンテン、シクロヘキセン、及びノルボルネンなどの炭素数2以上のα−オレフィンコモノマーが挙げられる。α−オレフィンコモノマーとして好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンコモノマーであり、より好ましくは炭素数2〜6のα−オレフィンコモノマーである。
またα−オレフィンモノマーと酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどのコモノマーとの共重合体、芳香族ビニルモノマーと共役ジエンモノマーとから選ばれる2種以上のモノマーの共重合体の水素添加体、なども用いることができる。なお単に共重合体という場合はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。またポリオレフィン(A1)は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
ポリオレフィン(A1)として好ましい一例は、プロピレン単独重合体又は共重合体の立体規則性として、全体または部分的にアイソタクチック構造を有するものである。例えば通常のアイソタクチックポリプロピレンは勿論のこと、特開2003−231714号公報やUS4,522,982号公報に記載されているような、アイソタクチックブロックポリプロピレンや、アイソタクチックブロックとアタクチックブロックとを有するステレオブロックポリプロピレン等も好ましく使用できる。
或いは、ポリオレフィン(A1)として好ましい他の一例は、プロピレン−α−オレフィン共重合体である。このような共重合体はポリプロピレン等のホモポリマーに比べて融点が低いため、これを用いた樹脂分散体は塗装後の焼き付け温度を下げることができる利点がある。より好ましくはプロピレン含量が50モル%〜95モル%である。通常、プロピレン含量が高いほどポリプロピレン基材への密着性が増す傾向がある。好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上である。但しプロピレン含量は95モル%以下である。通常、プロピレン含量を低くすると共重合体の融点を下げることができ、例えば塗装後の焼き付け温度を下げることができる利点がある。好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは85モル%以下である。更に、共重合体の分子量分布Mw/Mnが3.0以下であることが好ましい。
ポリオレフィン(A1)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以上を総合すると、ポリオレフィン(A1)として好ましいのは、ポリオレフィンが、プロピレン含量が50モル%以上であってアイソタクチックブロックとアタクチックブロックとを有するステレオブロックポリプロピレン系重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、或いはこれらの併用である。
また配位重合の場合は、例えばチーグラー・ナッタ触媒により重合する方法又はシングルサイト触媒又はカミンスキー触媒により重合する方法が挙げられる。好ましい製法としては、シングルサイト触媒による製造方法を挙げることができる。この理由としては、一般にシングルサイト触媒はリガンドのデザインにより反応を精密に制御しやすく、分子量分布や立体規則性分布がシャープな重合体が得られ、チーグラー・ナッタ触媒による重合体に比べて融点が低いので、この重合体を用いた樹脂分散体は塗装後の焼き付け温度を下げることができるためである。シングルサイト触媒としては、例えばメタロセン触媒、ブルックハート型触媒を用いうる。メタロセン触媒ではC1対称型、C2対称型、C2V対称型、CS対称型など、重合するポリオレフィンの立体規則性に合わせて好ましい触媒を選択すればよい。好ましくはC1対称型、C2対称型のメタロセン触媒を用いることができる。
反応性基を有するポリオレフィン(A2)としては、例えば、ポリオレフィン重合時に反応性基を有しない不飽和化合物と反応性基を有する不飽和化合物とを共重合した共重合体(A2a)、又は、反応性基を有するラジカル重合性不飽和化合物をポリオレフィンにグラフト重合した重合体(A2b)、不飽和末端基を持つポリオレフィンを13族〜17族の元素基等に変換した重合体(A2c)を用いることができる。
重合体(A2b)の製法については、本発明の要件を満たす重合体を製造できれば特に限定されず、いかなる製法であってもよい。例えば、溶液変性法(溶液中で加熱攪拌して反応する方法)、溶融変性法(無溶媒で溶融加熱攪拌して反応する方法、又は、押し出し機で加熱混練して反応する方法)等が挙げられる。
反応温度は、通常50℃以上であり、好ましくは80〜300℃の範囲が好適である。より好ましくは、溶液変性法の場合は80〜200℃の範囲であり、溶融変性法の場合は150〜300℃の範囲である。反応時間は、通常2〜20時間程度である。反応時間は、通常2〜20時間程度である。
二重結合部をホウ素基やアルミニウム基に変換する方法としては、例えば、二重結合に有機ホウ素化合物や有機アルミニウム化合物を溶媒中で反応させる方法が挙げられる。
二重結合部をハロゲン元素に変換する方法としては、例えば、上記有機ホウ素基を持つポリオレフィン(A2c1)に塩基と過酸化水素水を反応させることにより水酸基を持つプロピレン系重合体に変換した後、ハロゲン基含有酸ハロゲン化物を反応させて、ハロゲン基含有エステル基に変換する方法などがある。
重合体(A2c)の製法については、本発明の要件を満たす重合体を製造できれば特に限定されず、いかなる製法であってもよいが、溶液中で加熱攪拌して反応させる方法が好ましく用いられる。溶液中で製造する場合の溶媒としては、[1−1]で挙げた溶媒を同様に用いることができる。
本発明においては、ポリオレフィン(A)として、反応性基を有しないポリオレフィン(A1)と反応性基を有するポリオレフィン(A2)の双方を、親水性高分子(B)との組合せや目的とする重合体(C)の特性等に応じて適宜用いうる。但し少なくとも、反応性基を有するポリオレフィン(A2)を含むことが好ましい。親水性高分子(B)の結合量の制御がしやすく、また結合に用いうる反応が多様であるなどの利点がある。反応性基を有するポリオレフィン(A2)のみを使用してもよい。
本発明において親水性高分子とは、25℃の水に10重量%の濃度で溶解させたときに不溶分が1重量%以下の高分子を言う。親水性高分子(B)としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に限定されず用いることができ、合成高分子、半合成高分子、天然高分子のいずれも用いることができる。反応性基を有していてもよい。
また、親水性を示す範囲内で疎水性ラジカル重合性化合物(疎水性モノマー)を共重合することができる。共重合可能な疎水性モノマーとしては、例えば炭素原子数1〜12のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーや、炭素原子数1〜12の炭化水素基を有する重合性ビニルモノマーなどが挙げられる。
炭素原子数1〜12の炭化水素基を有する重合性ビニルモノマーとしては酢酸ビニルやスチレンモノマー等が挙げられる。
または、ラジカル重合性不飽和化合物をラジカル重合開始剤の存在下で重合して高分子を形成するとともにポリオレフィン(A)に結合させ、次いで親水性高分子(B)と変性することもできる。例えば(メタ)アクリル酸t−ブチルを重合後、酸性下で加水分解しポリ(メタ)アクリル酸に変性する方法、酢酸ビニルを重合後、ケン化してポリビニルアルコールに変性する方法などが挙げられる。この場合ポリオレフィン(A)としては反応性基を結合してなるポリオレフィン(A2)も用いうるが、通常は反応性基を有しないポリオレフィン(A1)を用いる。
本発明に用いるポリビニルピロリドン樹脂は、通常、ビニルピロリドンを重合させることで得られる。
親水性を示すポリアルキレンオキサイドやポリアルキレンイミンとして好ましくは、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミンが挙げられる。
本発明に用いる親水性高分子(B)は、ポリオレフィン(A)との結合前に、これと反応しうる反応性基を1以上有しているのが好ましい。反応性基としては、例えばカルボン酸基、ジカルボン酸無水物基、及びジカルボン酸無水物モノエステル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基などが挙げられるが、好ましくは少なくともアミノ基を有する。アミノ基はカルボン酸基、無水カルボン酸基、グリシジル基、イソシアネート基など多種の反応性基と反応性が高いのでポリオレフィンと親水性高分子を結合させることが容易である。アミノ基は1級、2級、3級のいずれでもよいが、より好ましくは1級アミノ基である。
ただし反応性基を複数有していても、他より反応性の高い反応性基が1つのみであればよい。例えば複数の水酸基と、それより反応性の高い1つのアミノ基を有する親水性高分子は好ましい例である。ここで反応性とはポリオレフィン(A)の有する反応基との反応性である。
ラジカルグラフト反応によれば、炭素−炭素共有結合による結合が形成される。
反応性基を利用した反応は、ポリオレフィン(A)と親水性高分子(B)の双方に反応性基を有していてそれらを反応させて結合させるものであり、共有結合又はイオン結合が形成される。この反応としては、例えば(無水)カルボン酸基とヒドロキシル基の(開環)エステル化反応、カルボン酸基とエポキシ基との開環反応、1級又は2級アミノ基とエポキシ基との開環反応、(無水)カルボン酸基と1級又は2級アミノ基の(開環)アミド化反応又はイミド化反応、カルボン酸基と3級アミノ基の4級アンモニウム化反応、カルボン酸基とイソシアナート基のアミド化反応、1級又は2級アミノ基とイソシアナート基のウレア化反応、ヒドロキシ基とイソシアナート基のウレタン反応等が挙げられる。なかでも無水カルボン酸基と1級又は2級アミノ基の開環アミド化反応又はイミド化反応が反応性の高さの点で好ましく、更には、イミド化よりもアミド化の方がNH基とCOOH基の親水基が基中に残るため乳化の容易さの点で好ましい。各反応の反応率は1〜100%の間で任意に選べばよく、好ましくは50〜100%、さらに好ましくは70〜100%である。カルボン酸基が二塩基酸もしくはその無水物である場合は、二塩基酸もしくはその無水物一当量に対し、一当量反応させても二当量反応させてもよい。
ポリオレフィン(A)と親水性高分子(B)を結合させ重合体(C)を製造する方法としては、通常、ポリオレフィン(A)存在下で親水性モノマーを重合してポリオレフィン(A)に結合した親水性高分子(B)を形成する方法(R1)、又は予め重合した親水性高分子(B)をポリオレフィン(A)に結合させる方法(R2)がある。いずれもポリオレフィン(A)としては、反応性基を有しないポリオレフィン(A1)、又は反応性基を有するポリオレフィン(A2)、ともに用いうる。
本方法では、ポリオレフィン存在下で、親水性ラジカル重合性不飽和化合物(親水性モノマー)を重合することでポリオレフィンに結合した親水性高分子(B)を得る。親水性モノマーの重合方法は、例えば付加重合、縮合重合、開環重合などを用いうる。このとき重合後に親水性高分子を形成しうる範囲であれば疎水性ラジカル重合性不飽和化合物(疎水性モノマー)を共重合させてもよい。いずれもポリオレフィンとしては、反応性基を有しないポリオレフィン(A1)、又は反応性基を結合してなるポリオレフィン(A2)、ともに用いうる。
共重合可能な疎水性モノマーとしては、例えば炭素原子数1〜12のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーや、炭素原子数1〜12の炭化水素基を有する重合性ビニルモノマーなどが挙げられる。
炭素原子数1〜12の炭化水素基を有する重合性ビニルモノマーとしては酢酸ビニルやスチレンモノマー等が挙げられる。
反応性界面活性剤や反応性乳化剤も、水性ラジカル重合性不飽和化合物として用いることができる。例えば、特開平4−53802号公報、特開平4−50204号公報に示されるアルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキシド付加体、アルキルジプロペニルフェノールポリエチレンオキシド付加体及びそれらの硫酸エステルの塩が挙げられる。その中でもアルキルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体、同30モル付加体、同50モル付加体(第一工業製薬製、アクアロンRN−20,RN−30,RN−50)及びアルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキシド10モル付加体の硫酸エステルアンモニウム塩、同20モル付加体の硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬製、アクアロンHS−10,HS−20)が用いられる。
親水性開環重合モノマーとしてはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エチレンイミンなどが挙げられる。共重合可能な疎水性モノマーとしては、トリメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
る。
本方法では、予め重合した親水性高分子(B)をポリオレフィン(A)に結合させる。この場合親水性高分子(B)としては(2)で挙げたものを用いうる。
具体的には、例えば、まず親水性モノマーを重合して親水性高分子とする際に分子内に不飽和二重結合を残しておき、次いでラジカル重合性開始剤を用いてポリオレフィン(A)にグラフト重合させる方法がある。この場合ポリオレフィン(A)としては反応性基を有するポリオレフィン(A2)も用いうるが、通常は反応性基を有しないポリオレフィン(A1)を用いる。
これらはいずれも、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応方法については、本発明の要件を満たす重合体を製造できれば特に限定されず、いかなる方法であってもよい。例えば、溶液中で加熱攪拌して反応する方法、無溶媒で溶融加熱攪拌して反応する方法、押し出し機で加熱混練して反応する方法等が挙げられる。反応温度は、通常0〜200℃の範囲であり、好ましくは30〜150℃の範囲である。溶液中で製造する場合の溶媒としては、[1−1]で挙げた溶媒を同様に用いることができる。
本発明に係わる樹脂分散体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、重合体(C)、水、及び水以外の溶媒の混合物を調製したのち、該混合物から該溶媒を除去することにより水性分散体とする方法、重合体(C)が溶融する温度以上で溶融させた後に水を添加して分散体とする方法、などが挙げられる。
本発明の重合体(C)は水への分散性に非常に優れ、また本発明の樹脂分散体の製造方法によれば分散粒子径の細かい水性樹脂分散体が得られるので、本発明の水性樹脂分散体は分散粒子径が細かく、かつ樹脂が安定に分散している利点がある。従ってこれを用いると優れた外観の塗布品が得られる。
樹脂分散体における重合体(樹脂)の分散粒子径は、体積換算として粒径が細かい方から累積で50%の粒子径(50%粒子径、50%平均粒子径、又は体積平均粒子径とも称する。)を求めた場合、通常50%粒子径で10μm以下であり、好ましくは1μm以下である。本発明によれば、50%粒子径を0.5μm以下とすることができ、より好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.2μm以下、最も好ましくは0.1μm以下とすることができる。同じく90%粒子径を求めた場合、更に好ましくは90%粒子径を1μm以下とすることができ、特に好ましくは0.5μm以下とすることができる。分散粒子径を小さくすることで、分散安定性を向上させ、凝集が起きにくく、より安定に分散できる。また90%粒子径と50%粒子径の比が小さくなることは、粒度分布が狭くなることを意味し結果として分散安定性が向上する。
本発明の樹脂分散体は、全体に対して固形分は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上である。また好ましくは70重量%以下であり、より好ましくは60重量%以下であり、更に好ましくは50重量%以下であり、特に好ましくは40重量%以下である。固形分の量が少ないほど粘度が低く種々の塗布方法に適用でき使用しやすく、また分散体としての安定性も高い傾向にある。ただし、例えばプライマーや接着剤として使用する際に、塗布後の水の乾燥にあまり多量のエネルギーと時間をかけないためには固形分が多い方が好ましい。
但し、他の目的、用途等に応じて必要により界面活性剤を含有させてもよい。
界面活性剤としては例えばカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、反応性界面活性剤などを使用することができる。界面活性剤としては、通常、炭素数4以上のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基又はアルケニルアリール基を疎水基として有するものを用いる。好ましくは炭素数8以上であり、より好ましくは炭素数12以上である。ただし通常、炭素数30以下である。
重合体(C)100重量部に対する界面活性剤の比率は、通常50重量部以下であり、好ましくは30重量部以下である。
ただしノニオン性界面活性剤は他の界面活性剤に比べて耐水性を低下させにくいのでノニオン性界面活性剤は多少多めに含んでもよい。例えば重合体(C)100重量部に対してノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤は5重量部以下とすべき場合、ノニオン性界面活性剤は10重量部以下としてもよい。
本発明の樹脂分散体には、必要に応じて酸性物質や塩基性物質を添加することができる。酸性物質としては例えば塩酸、硫酸などの無機酸、酢酸などの有機酸が挙げられる。塩基性物質として例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モルホリンなどの有機塩基が挙げられる。
本発明の樹脂分散体には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、必要に応じて種々の添加剤を含有させることができる。例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱防止剤等の各種安定剤;酸化チタン、有機顔料等の着色剤;顔料、カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤、染料、顔料分散剤、レべリング剤、消泡剤、増粘剤、防腐剤、防かび剤、防錆剤、濡れ剤等の各種添加剤を配合使用してもよい。
また耐水性、耐溶剤性などの各種の塗膜性能をさらに向上させるために。架橋剤を分散体中の樹脂100重量部に対して0.01〜100重量部添加することができる。架橋剤としては自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数固有する化合物、多価の配位座を有する金属錯体等を用いることができる。このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。またこれらの架橋剤を組み合わせて使用してもよい。
本発明の樹脂分散体には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、必要に応じて水溶性樹脂又は水に分散しうる樹脂を混合し使用することができる。例えば塗装外観の向上(光沢の付与、或いはツヤ消し)やタック性の低減などに効果がある。界面活性剤を用いて分散しうる樹脂でもよい。水溶性樹脂としては例えば、親水性高分子(B)として挙げたような樹脂が使用でき、例えばこれら樹脂を水に溶解した水溶液を本発明の樹脂分散体と混合して用いる。
ポリオレフィン(A)と上記他の樹脂との重量比は90:10〜10:90が好ましい。即ちポリオレフィン成分と他の樹脂との合計量を100重量部として、ポリオレフィン(A)の量が10重量部以上であり、90重量部以下が好ましい。ポリオレフィン(A)の量が10重量部未満では、ポリオレフィン系基材に対する密着性が不十分となる。好ましくは15重量部以上とし、より好ましくは20重量部以上とする。ポリオレフィン(A)の量が90重量部より大きいと、このような複合水性樹脂分散体から得られる塗膜の物性、具体的には塗膜の強度、耐水性、耐候性、耐擦性、耐溶剤性などが不十分となってしまう。好ましくは85重量部以下とし、より好ましくは80重量部以下とする。
界面活性剤の含有量は、樹脂100重量部に対して通常20重量部以下とする。好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは5重量部以下、更に好ましくは2重量部以下である。界面活性剤の含有量は少ないほど、界面活性剤のブリードアウトが起きにくい。最も好ましくは界面活性剤を実質的に使用しない。
上記他の樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1以上の樹脂が好ましい。これらを含む樹脂分散体は塗料に適する。以下、これらを樹脂(D)と総称する。
本発明のアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル系重合体であれば特に限定されないが、アクリル酸及び/又はそのエステルの単独重合体又は共重合体、メタクリル酸及び/又はそのエステルの単独重合体又は共重合体を言う。なお(メタ)アクリルとはアクリル及び/又はメタクリルを指す。
アクリル樹脂には、耐水性、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性を付与するために、架橋性官能基を導入し架橋剤を併用することができる。例えば(メタ)アクリル酸グリシジルのようなエポキシ基を有する共重合体と架橋剤として多官能カルボン酸または多官能アミン、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルのような水酸基を有する共重合体と多官能イソシアネート、または、ジアセトンアクリルアミド、アクロレインのようなカルボニル基を有する共重合体とアジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドのような多官能ヒドラジンのような架橋系を用いることができる。なかでも、カルボニル基と多官能ヒドラジンによる架橋系は、一液で保存が可能でありながら、常温でも硬化が可能であるため好ましい。これらの架橋性官能基はアクリル樹脂100重量部あたり0.5重量部以上有するのが好ましく、より好ましくは1重量部以上である。ただしアクリル樹脂100重量部あたり20重量部以下有するのが好ましく、より好ましくは10重量部以下である。下限値より高いほど十分な架橋効果が得られやすく、上限値より低いほど保存安定性等が高まる傾向がある。
溶液重合、バルク重合で得られたアクリル樹脂を水性エマルジョン化し水分散体とするためには溶液の存在下もしくは不存在下で、コロイドミルなどの機械力により、乳化・分散を行い、その後に必要に応じて残留溶剤を減圧下もしくは大気圧下で留去すればよい。乳化重合又は懸濁重合を用いれば直接水性エマルジョンとしてポリマーを得ることができる。好ましい形態は乳化重合によって得られる水性エマルションである。市販品として入手可能なものとしては、中央理化工業(株)製のリカボンド、BASFジャパン(株)製のアクロナールなどがある。
本アクリル樹脂の水性樹脂分散体中のアクリル樹脂粒子の粒径は、0.01μm〜0.5μmが好ましい。また樹脂固形分が15〜70重量%であることが好ましい。液粘度は1〜50,000mPa・sが好ましい。
本発明のウレタン樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と(ii)多価イソシアネート成分とを反応させて得られるウレタンポリマー、または、上記(i)成分及び(ii)成分をイソシアネート基過剰の条件下で反応させて得られるイソシアネート基含有プレポリマーとジオール等の鎖伸長剤とを反応させて得られるウレタンポリマーが挙げられる。これらのウレタン系重合体中には酸成分(酸残基)を含有させてもよい。
前記(i)成分の1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分としては、特に限定されるものではないが、水酸基性の活性水素を有するものが好ましい。このような化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
H(式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ジオール残基、xは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物等。これらは、飽和脂肪族ジオールと置換カーボネート(炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法、前記飽和脂肪族ジオールとホスゲンを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ジオールを反応させる方法などにより得ることができる。
前記(i)成分と反応させる(ii)多価イソシアネート成分としては、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族、脂環族または芳香族の化合物が使用できる。
本ウレタン樹脂の水分散体を製造する場合、その製造方法は特に限定されないが、前述のアクリル樹脂の水分散体の製造方法に準じて製造しうる。
本ウレタン樹脂の水性樹脂分散体中のウレタン樹脂粒子の粒径は、0.01μm〜0.5μmが好ましい。また樹脂固形分が15〜70重量%であることが好ましい。液粘度は1〜10,000mPa・sが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばアジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸及び/又はその無水物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオール化合物又はエーテル基含有ジオール(ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)とを重縮合させて得られたものが挙げられる。
これらを界面活性剤の存在下または非存在下で水性エマルジョン化することによってポリエステル樹脂の水分散体が得られる。その製造方法は特に限定されないが、前述のアクリル樹脂の水分散体の製造方法に準じて製造しうる。市販品としては、東洋紡社製のバイロナールMD−1200、MD−1245などが挙げられる。
本ウレタン樹脂の水性樹脂分散体中のウレタン樹脂粒子の粒径は、0.01μm〜0.5μmが好ましい。また樹脂固形分が15〜70重量%であることが好ましい。液粘度は1〜10,000mPa・sが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂はエポキシ基を1分子中に1個以上有する重合体であれば特に限定されず、例えば多価フェノールをアルカリの存在下にエピクロルヒドリンと反応させることにより製造することができるフェノールの多価グリシジルエーテルや、このようなフェノールの多価グリシジルエーテルと上記の多価フェノールとを反応させて得られるエポキシ基含有重合体などが挙げられる。
また、エポキシ樹脂としては、フェノール系ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル及び多価アルコールのポリグリシジルエーテルも用いることができる。上記の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセロール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−2,2−プロパン、ソルビトール等が挙げられる。
市販品として代表的なものとしては、フェノールノボラック樹脂にエピクロヒドリンを付加して得られるノボラック型エポキシ樹脂を界面活性剤(乳化剤)で強制的にエマルション化した、長瀬ケムテック株式会社製デコナールEM150、ジャパンエポキシレジン株式会社製エピレッツ6006W70、5003W55、東都化成株式会社製WEX−5100、等が挙げられる。
さらに、ソルビトールやペンタエリスリトールやグリセリンなどのポリオールにエピクロヒドリンを付加したアルキルタイプのエポキシ樹脂として、長瀬ケムテック株式会社製デコナールEX−611、EX−614、EX−411、EX−313などが挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂としては、数平均分子量が1,000以上が好ましく、より好ましくは20,000以上である。但し1,000,000以下が好ましく、より好ましくは200,000以下である。
本発明のビニルエステル系樹脂は、ビニルエステル単独の重合体または、ビニルエステル単量体と他のラジカル重合性単量体との重合体を含む共重合体である。ラジカル重合性単量体としては、エチレン、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、不飽和ニトリル、アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸、α、β−不飽和ジカルボン酸類等があげられる。
本発明の樹脂分散体には顔料(E)を加えることができる。顔料(E)を含む水性樹脂分散体は塗料として好適である。
本発明の樹脂分散体又はこれを含む塗料を基材に塗布し、加熱することで樹脂層を形成し、積層体とすることができる。この樹脂層はポリオレフィン(A)に親水性高分子(B)を(A):(B)=100:5〜100:500(重量比)の割合で結合させた重合体(C)を含む層である。
本発明の樹脂分散体は、結晶性を有するオレフィン系重合体の成形体(基材)に塗布し塗膜を形成することができる。基材としてのオレフィン系重合体としては、高圧法ポリエチレン、中低圧法ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリ−1−ブテン、ポリスチレン等のオレフィン系重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体等が挙げられる。これらのオレフィン共重合体のうち、プロピレン系重合体が好ましく用いられる。また、ポリプロピレンと合成ゴムとからなる成形体、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等からなる成形体、例えば自動車用バンパー等の成形体、さらには鋼板や電着処理用鋼板等の表面処理にも用いることができる。
これら成形体にタルク、亜鉛華、ガラス繊維、チタン白、硫酸マグネシウム等の無機充填剤、顔料等が配合されている場合にも、密着性の良い塗膜を形成することができる。
基材上に樹脂層を形成する方法としては、特に限定されることなく公知の方法が使用しうる。例えば、樹脂分散体又は塗料をスプレーコート、バーコート、スピンコートやディップコート、グラビアコート等各種の塗布法が挙げられる。一般に自動車用バンパーや家電製品などの大型の成形体にはスプレーコートによる塗布が、プラスチックフィルムやシートなどにはグラビアコートやバーコートによる塗布が行われる。
本発明の積層体の基材としては熱可塑性樹脂成形体が望ましい。熱可塑性樹脂成形体(F)としては、特に限定されるものではないが、例えばポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等からなる成形体である。なかでも本発明はポリオレフィン樹脂からなる熱可塑性樹脂成形体(F)(以下、ポリオレフィン成形体と称する。)に適用すると好ましく、なかでもプロピレン系重合体からなる熱可塑性樹脂成形体(F)(以下、プロピレン系重合体成形体と称する。)に適用すると好ましい。
ポリオレフィンは、好ましくはメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が2g/10分以上であり、より好ましくは10g/10分以上、特に好ましくは25g/10分である。ただし好ましくは300g/10分以下、より好ましくは200g/10分以下である。MFRが下限値より高いとポリオレフィンの流れ性が高まる傾向にある。逆にMFRが上限値より低いと機械物性が高まる傾向にある。ポリオレフィンのMFRは、重合時に調整したものであってもよく、或いは重合後にジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド等の有機過酸化物で調整したものであってもよい。
ここで、プロピレン−エチレンブロック共重合体は、結晶性ポリプロピレン部(a単位部)とエチレン−プロピレンランダム共重合体部(b単位部)とからなる。
a単位部のポリプロピレン単独重合体のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは10g/10分以上、より好ましくは15g/10分以上、更に好ましくは20g/10分以上であり、特に好ましくは40g/10分以上である。また、好ましくは500g/10分以下、より好ましくは400g/10分以下、更に好ましくは300g/10分以下である。
一方、b単位部はプロピレンとエチレンとのランダム共重合によって得られるゴム状成分である。
b単位部のプロピレン−エチレンランダム共重合体部のプロピレン含量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは50重量%以上である。但し好ましくは85重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは75重量%以下である。プロピレン含量がこの範囲である場合、その分散性や、ガラス転移温度が適切な範囲となり、衝撃特性が良好となる傾向がある。プロピレン含量は、プロピレン−エチレンランダム共重合体部の重合時にプロピレンとエチレンの濃度比を制御することにより調整できる。
a単位部、b単位部の量については特に制限はないが、一般にa単位部は、好ましくは全体量の95重量%以下、より好ましくは50〜95重量%、更に好ましくは60〜90重量%、b単位部は、好ましくは全体量の5重量%以上、より好ましくは5〜50重量%、更に好ましくは10〜40重量%となるように調整される。b単位部の量が下限値以上であるほど耐衝撃特性が高まる傾向があり、上限値以下であるほど剛性、強度及び耐熱性が高まる傾向がある。
a単位部とb単位部の量の比率は、プロピレン単独重合体部の重合量とプロピレン−エチレンランダム共重合体部の重合量によって決まるので、それぞれの重合時間を制御すること等により調整できる。
プロピレンの重合触媒としては、通常、高立体規則性触媒が用いられる。例えば、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と、有機アルミニウム化合物及び芳香族カルボン酸エステルを組み合わせた触媒(特開昭56−100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照)、及び、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させた担持型触媒(特開昭57−63310号、同63−43915号、同63−83116号の各公報参照)等を例示することができる。更にWO91/04257号公報等に示されるようなメタロセン系触媒も挙げられる。なおメタロセン系触媒は、アルモキサンを含まなくてもよいが、好ましくはメタロセン化合物とアルモキサンとを組み合わせた触媒、いわゆるカミンスキー系触媒である。
本発明のプロピレン単独重合体及びプロピレン−エチレンブロック共重合体は、構造材料として用いるためには機械的物性に優れ剛性や耐衝撃特性が高いことが好ましい。即ち曲げ弾性率が、好ましくは300MPa以上、より好ましくは500〜3000MPa、更に好ましくは1000〜2000MPaである。この範囲内とすることで剛性に優れ構造材料として適したものとなる。またIZOD衝撃強度は、好ましくは1kJ/m2以上、より好ましくは2〜100kJ/m2、更に好ましくは5〜80kJ/m2、特に好ましくは8〜60kJ/m2である。この範囲内とすることで耐衝撃特性に優れ構造材料として適したものとなる。
熱可塑性樹脂成形体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂成形体(F)は無機フィラー成分を含有することができる。
特に、結晶性ポリオレフィンに無機フィラー成分を配合することにより成形体の曲げ弾性率、剛性などの機械的性質を向上させることができる。
具体的には、タルク、マイカ、モンモリロナイト等の板状フィラー;短繊維ガラス繊維、長繊維ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ゾノライト等の繊維状フィラー;チタン酸カリウム、マグネシウムオキシサルフェート、窒化珪素、ホウ酸アルミニウム、塩基性硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、ワラストナイト、炭酸カルシウム、炭化珪素等の針状(ウイスカー)フィラー;沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の粒状フィラー;ガラスバルーンのようなバルン状フィラー、等である。亜鉛華、チタン白、硫酸マグネシウム等の無機充填剤や顔料も使用できる。なかでも物性とコストのバランスからタルク、マイカ、ガラス繊維、ウイスカーが好ましく、より好ましくはタルク、マイカ、ガラス繊維である。
無機フィラー成分の使用量は、成形品の目的や用途によって広い範囲から選択されるが、結晶性ポリオレフィン100重量部に対し、好ましくは1〜80重量部、より好ましくは2〜75重量部、更に好ましくは5〜60重量部である。
無機フィラー成分は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以下、好ましいフィラーについて詳述する。
本発明で用いるタルクの平均粒径は、通常10μm以下、好ましくは0.5〜8μm、より好ましくは1〜7μmである。平均粒径値とは、レーザー回折法(例えば堀場製作所製LA920W)や液層沈降方式光透過法(例えば島津製作所製CP型等)による測定結果から粒度累積分布曲線を描き、これから読みとった累積量50重量%の粒径値である。本発明での値はレーザー回折法で測定した平均粒径値である。
機械的粉砕方法としては、例えばジョークラシャ−、ハンマークラシャ−、ロールクラシャー、スクリーンミル、ジェット粉砕機、コロイドミル、ローラーミル、振動ミル等の粉砕機を用いる方法が挙げられる。粉砕されたタルクは、上記平均粒径に調節するために、サイクロン、サイクロンエアセパレーター、ミクロセパレーター、シャープカットセパレター等の装置で1回又は繰り返し、湿式又は乾式分級される。
これらのタルクは、重合体との接着性或いは分散性を向上させる目的で、各種の有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等によって表面処理されていてもよい。
ガラス繊維としてはガラスチョップドストランドを用いるのが一般的である。ガラスチョップドストランドの長さは通常3〜50mmであり、繊維の径は通常3〜25μm、好ましくは8〜14μmである。
ガラスチョップドストランドとしては、シラン系化合物による表面改質や、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、オレフィン系成分などの集束剤等による表面処理を施したものを用いることが好ましい。
本発明においては、結晶性ポリオレフィンとガラス繊維との界面接着による機械的強度の向上を図るために、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体により変性したポリオレフィンを配合してもよい。特にポリプロピレンを母体として変性したものが好ましく、変性率が0.1〜10重量%のものを用いることが好ましい。
マイカは、平均粒径が2〜100μmで平均アスペクト比が10以上のものが好ましく、平均粒径が2〜80μmで平均アスペクト比が15以上のものがより好ましい。マイカの平均粒径が上記範囲内であることで、成形品の耐傷性、衝撃強度をより向上させ外観の低下が抑制できる。
マイカの製造方法は特に限定されず、前述のタルクに準じた方法で製造されるが、乾式粉砕・湿式分級又は湿式粉砕・湿式分級方式が好ましく、湿式粉砕・湿式分級方式がより好ましい。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂成形体(F)が結晶性ポリオレフィン成形体である場合、更に、エラストマー成分を含有させることができる。これにより成形体の耐衝撃強度を向上させることができる。
エラストマー成分としては、エチレン−α−オレフィンランダム共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム、スチレン含有熱可塑性エラストマー等が挙げられる。具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−1−ブテン共重合体ゴム、エチレン−1−ヘキセン共重合体ゴム、エチレン−1−オクテン共重合体ゴム等のエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム;エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体ゴム(EPDM)等のエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム;スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック体の水素添加物(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック体の水素添加物(SEPS)等のスチレン含有熱可塑性エラストマーが例示できる。
これらエラストマー成分のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、本発明の主要用途の一つである自動車外装材を考慮した場合、好ましくは0.5〜150g/10分、より好ましくは0.7〜100g/10分、更に好ましくは0.7〜80g/10分である。
エラストマー成分は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂成形体(F)は、上記以外に、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、任意の添加剤や配合成分を含有することができる。具体的には、着色するための顔料、フェノール系、イオウ系、リン系などの酸化防止剤、帯電防止剤、ヒンダードアミン等光安定剤、紫外線吸収剤、有機アルミ・タルク等の各種核剤、分散剤、中和剤、発泡剤、銅害防止剤、滑剤、難燃剤、ポリエチレン樹脂等他の樹脂、などを挙げることができる。
以上述べた樹脂に、必要に応じて各種成分を配合し、混合及び溶融混練する。混練方法は特に限定されず、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて混練・造粒することによって、本発明の熱可塑性樹脂成形体(F)を構成する熱可塑性樹脂組成物が得られる。各成分の分散を良好にするためには、好ましくは二軸押出機を用いる。
次いで熱可塑性樹脂組成物を成形し熱可塑性樹脂成形体(F)を得るが、成形方法は公知の各種方法を用いることができる。
例えば射出成形(ガス射出成形も含む)、圧縮成形、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、中空成形、回転成形、カレンダー成形、インフレーション成形、一軸延伸フィルム成形、二軸延伸フィルム成形等が挙げられる。好ましくは射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形を用いるのが好ましく、生産性等を考慮すると射出成形が特に好ましい。
本発明の積層体は、塗膜密着性に優れ、さらに剛性、耐衝撃性、に優れた物性バランスを有する。また積層体を構成する樹脂層が実質的に界面活性剤を含まない場合にはブリードアウトも生じないため外観にも優れる。また、塩素などのハロゲンを含有する必要がないため環境負荷を少なくすることができる。
例えば、バンパー、インストルメントパネル、トリム、ガーニッシュなどの自動車部品、テレビケース、洗濯機槽、冷蔵庫部品、エアコン部品、掃除機部品などの家電機器部品、便座、便座蓋、水タンクなどのトイレタリー部品、浴槽、浴室の壁、天井、排水パンなどの浴室周りの部品などの各種工業部品用成形材料として用いることができる。
<物性測定方法及び評価方法>
(1)立体規則性
(1−1)ポリプロピレンの立体規則性
ポリプロピレンの立体規則性[mmmm]は、NMR装置(日本電子(株)製、400MHz)にて13C−NMRスペクトル測定法により測定した。試料350〜500mgを、10mmφのNMR用サンプル管中で、約2.2mlのオルトジクロロベンゼンを用いて完全に溶解させた。次いで、ロック溶媒として約0.2mlの重水素化ベンゼンを加え、均一化させた後、130℃でプロトン完全デカップリング法により測定を行った。測定条件は、フリップアングル90°、パルス間隔5T1以上(T1は、メチル基のスピン格子緩和時間のうち最長の値)とした。プロピレン系重合体において、メチレン基およびメチン基のスピン格子緩和時間はメチル基のそれよりも短いので、この測定条件では、すべての炭素の磁化の回復は99%以上である。20時間以上の積算を行い測定した。
プロピレン−ブテン共重合体におけるプロピレンの含量[P]は、NMR装置(日本電子(株)製、400MHz)にて13C−NMRスペクトル測定法により測定した。試料350〜500mgを、10mmφのNMR用サンプル管中で、約2.2mlのオルトジクロロベンゼンを用いて完全に溶解させた。次いで、ロック溶媒として約0.2mlの重水素化ベンゼンを加え、均一化させた後、130℃でプロトン完全デカップリング法により測定を行った。測定条件は、パルス角90°、パルス間隔パルス間隔10秒、積算回数6000回で測定した。
プロピレン及びブテンのケミカルシフト及び含量はJ.C.Randall, Macromolecules, 11,592(1978)の記載を参考にして算出した。
はじめに試料20mgを30mlのバイアル瓶に採取し、安定剤としてBHTを0.04重量%含有するオルトジクロロベンゼン20gを添加した。135℃に加熱したオイルバスを用いて試料を溶解させた後、孔径3μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルターにて熱濾過を行い、ポリマー濃度0.1重量%の試料溶液を調製した。次に、カラムとしてTSKgel GM H−HT(30cm×4本)及びRI検出器を装着したウォーターズ(Waters)社製GPC150CVを使用し、GPC測定を行った。測定条件としては、試料溶液のインジェクション量:500μl、カラム温度:135℃、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流量:1.0ml/minを採用した。
粘度式としては[η]=K・Mαを使用し、ポリスチレンに対しては、K=1.38E−4、α=0.70を、プロピレン系共重合体に対してはK=1.03E−4、α=0.78を使用した。
重合体200mgとクロロホルム4800mgを10mlのサンプル瓶に入れて50℃で30分加熱し完全に溶解させる。材質NaCl、光路長0.5mmの液体セルにクロロホルムを入れ、バックグラウンドとした。次に溶解した重合体溶液を液体セルにいれて、日本分光(株)製FT−IR460plusを用い、積算回数32回にて赤外線吸収スペクトルを測定した。無水マレイン酸のグラフト率は、無水マレイン酸をクロロホルムに溶解した溶液を測定し検量線を作成したものを用いて計算した。そしてカルボニル基の吸収ピーク(1780cm−1付近の極大ピーク、1750〜1813cm−1)の面積から、別途作成した検量線に基づき、重合体中の酸成分含有量を算出し、これをグラフト率(重量%)とした。
日機装(株)社製マイクロトラック UPA(モデル9340 バッチ型 動的光散乱法/レーザードップラー法)を用いて測定した。分散体の密度を0.9kg/m3、粒子形状を真球形、粒子の屈折率を1.50、分散媒を水、分散媒の屈折率を1.33として測定時間120秒又は180秒にて測定し、体積換算として粒径が細かい方から累積で50%の粒子径、90%の粒子径を求めた。
樹脂分散体を固形分が20重量%になるように濃度調整した後、容量50mlの密閉容器に入れ40℃の恒温器中で3ヶ月貯蔵し、貯蔵後の分散粒子径を測定した。貯蔵前後で分散粒子径に殆ど変化がなかったものを○、分散粒子径が大きくなったもの(凝集したもの)を×とした。
自動車外装用グレードのポリプロピレンを、70mm×150mm×3mmにインジェクション成形した基板を作製し、基板表面をイソプロピルアルコールで清拭した。ここに、固形分20重量%になるように濃度調整した樹脂分散液を塗布量約5〜10g/m2となるように噴霧塗布した。次にこの塗布後の試験片をセーフベンドライヤー中で80℃で10分乾燥した後、25℃で1時間静置した。次いでその塗膜の上からベースコートとしてアクリルポリオールウレタン塗料レタンPG80III(関西ペイント社製)を、所定の硬化剤を配合し、さらに専用シンナーで粘度調整を行い、乾燥塗布量が50〜60g/m2になるように噴霧塗布し、80℃で30分焼き付けし塗装板を得た。
密着性試験と同様に作製した塗装板を、40℃の温水中に10日間浸漬し、塗装外観を目視判定した。さらに、碁盤目試験を行い、碁盤目100のうち剥離されなかった碁盤目数にて評価した。
密着性試験と同様に作製した塗装板を、20℃に保ったレギュラーガソリンとエタノールとの混合液(体積比:レギュラーガソリン/エタノール=9/1)中に浸漬して、剥離が5mmになるまでの時間を測定した。
自動車内装用グレードのポリプロピレンを、70mm×150mm×3mmにインジェクション成形した基板を作製し、基板表面をイソプロピルアルコールで清拭した。ここに、試料を、塗布後の乾燥重量が約15g/m2となるように噴霧塗布した。次にこの塗布後の試験片をセーフベンドライヤー中で70℃で20分焼付けし塗装板を得た。
40℃の状態に3日間放置後、塗装板の外観を目視及び指触し、塗膜表面への界面活性剤のブリードアウトの有無、及びその状態を以下の基準で判定した。
○:界面活性剤のブリードアウト無し
△:界面活性剤がわずかにブリードアウトしている
×:界面活性剤がブリードアウトしていて、指で触るとべたつく
[製造例1:ポリプロピレンの製造]
1,000ml丸底フラスコに、脱塩水110ml、硫酸マグネシウム・7水和物22.2gおよび硫酸18.2gを採取し、攪拌下に溶解させた。この溶液に、市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL)16.7gを分散させ、2時間かけて100℃まで昇温し、100℃で2時間攪拌を行った。その後、1時間かけて室温まで冷却し、得られたスラリーを濾過してウェットケーキを回収した。回収したケーキを1,000ml丸底フラスコにて、脱塩水500mlにて再度スラリー化し、濾過を行った。この操作を2回繰り返した。最終的に得られたケーキを、窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥し、化学処理モンモリロナイト13.3gを得た。
別のフラスコに、トリイソブチルアルミニウム(東ソー・アクゾ社製)0.2mmolを採取し、ここで得られた粘土スラリー19ml及びジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)ハフニウム131mg(57μmol)のトルエン希釈液を加え、室温で10分間撹拌し、触媒スラリーを得た(触媒の製造方法等については特開2004−002310を参照)。
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に、トルエン650g、製造例1で得られたポリプロピレン350gを入れ、容器内を窒素ガスで置換し、110℃に昇温した。昇温後、無水マレイン酸14gを加え、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナート(日本油脂社製パーブチルI)4.7gを加え、10時間同温度で攪拌を続けて反応を行った。反応終了後、系を室温付近まで冷却し、アセトンを加えて、沈殿したポリマーを濾別した。さらにアセトンで沈殿・濾別を繰り返し、最終的に得られたポリマーをアセトンで洗浄した。洗浄後に得られたポリマーを減圧乾燥することにより、白色粉末状の変性ポリマーが得られた。この変性ポリマーの赤外線吸収スペクトル測定を行った結果、無水マレイン酸基の含量(グラフト率)は、1.25重量%(無水マレイン酸基として0.125mmol/g、反応性基としては0.25mmol/g)であった。また重量平均分子量は120,000であった。
無水マレイン酸の量を28g、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナートの量を9.3gにした以外は製造例2と同様にして行った。無水マレイン酸基の含量(グラフト率)は、2.4重量%(無水マレイン酸基として0.24mmol/g、反応性基としては0.48mmol/g)であった。また重量平均分子量は100,000であった。
無水マレイン酸の量を21g、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナートの量を7.0gにした以外は製造例2と同様にして行った。無水マレイン酸基の含量(グラフト率)は、1.6重量%(無水マレイン酸基として0.16mmol/g、反応性基としては0.32mmol/g)であった。また重量平均分子量は110,000であった。
水溶性アクリル樹脂(ジョンソンポリマー(株)製ジョンクリル683(樹脂酸価160mgKOH/g))を2−アミノ−2−メチルプロパノールで中和し水に溶解した。
この水溶液(固形分濃度25重量%)20g、カーボンブラック(三菱化学社製)7.5g、酸化チタン(堺化学工業社製、R−5N)60g、消泡剤(エアープロダクト社製、サーフィノール440)2.5g、イオン交換水60g、及びジルコニアビーズ150gを混合し、ペイントシェーカーにて30分間攪拌し分散した。分散液を400メッシュの金網でろ過し、固形分濃度が50重量%の顔料分散ペーストを得た。
重合時の温度を71℃、および系内の水素濃度を8600ppmになるように導入した以外は全て製造例1と同様にしてポリプロピレンを製造し、プロピレン重合体の15.5重量%トルエン溶液を11.3kg(プロピレン重合体1.75kgに相当)得た。得られたポリプロピレンの重量平均分子量は38,000、立体規則性[mmmm]は38.9%であった。
口径45mmの2軸押し出し機(池貝鉄工(株)製PCM40)に、プロピレン−ブテン共重合体(三井化学社製、タフマーXM7070)10kg(うち1kgはペレットを冷凍粉砕して粉体としたもの)、無水マレイン酸0.2kg、パーブチルI(日本油脂社製)0.1kgをブレンドしたものを、下記押し出し条件にて溶融混練した。
・シリンダー温度: 200℃
・スクリュー回転数: 200rpm
・押し出し量: 10kg/hour
得られた変性ポリマーの赤外線吸収スペクトル測定を行った結果、無水マレイン酸基の含量(グラフト率)は、0.6重量%(無水マレイン酸基として0.06mmol/g、反応性基としては0.12mmol/g)であり、重量平均分子量は78,000であった。
[実施例1]
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に、製造例2で合成した無水マレイン酸変性ポリプロピレン30g(無水マレイン酸基の含量3.75mmol)とトルエン60gを加え、温度を110℃に昇温し完全に溶解した。次いでメトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)−2−プロピルアミン(ハンツマン社製ポリエーテルアミン;ジェファーミンM−1000、分子量1000(公称値))7.5g(7.5mmol、ポリオレフィン(A)100重量部に対し親水性高分子(B)25重量部に相当)をトルエン10gに溶解した溶液を加え110℃で3時間反応させた。
なお実施例1で用いたメトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)−2−プロピルアミン(ハンツマン社製ポリエーテルアミン;ジェファーミンM−1000)は、25℃の水に10重量%の濃度で溶解させたときに不溶分が1重量%以下であり、親水性高分子である。
無水マレイン酸変性ポリプロピレンとして製造例3で得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレン30g(無水マレイン酸基の含量7.2mmol)を使用し、ジェファーミンM−1000を14.4g(14.4mmol、ポリオレフィン(A)100重量部に対し親水性高分子(B)48重量部に相当)使用した以外は実施例1と同様にして、黄色ポリマー44gを得た。無水マレイン酸変性ポリプロピレンにポリエーテルアミンがグラフト結合したグラフト共重合体を形成している。
分散粒子径を測定したが、50%粒子径は0.011μmであった。実施例1と同様に密着性、耐水性、耐GH性を評価した。結果を表−1に示す。
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に、製造例4で合成した無水マレイン酸変性ポリプロピレン30g(無水マレイン酸基の含量4.8mmol)とトルエン70gを加え、温度を110℃に昇温し完全に溶解した。次いでジェファーミンM−1000を4.5g(4.5mmol、ポリオレフィン(A)100重量部に対し親水性高分子(B)15重量部に相当)、トルエン4.5gに溶解した溶液を加え110℃で1時間反応させた。その後モルホリン0.4g(4.5mmol)加え110℃で1時間反応させた。
分散粒子径を測定した結果、50%粒子径は0.086μmであった。実施例1と同様に密着性、耐水性、耐GH性を評価した。結果を表−1に示す。
無水マレイン酸変性ポリプロピレンの代わりに無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(東洋化成社製、無水マレイン酸基の含量(グラフト率)は2.1重量%(0.21mmol/g))を使用し、ジェファーミンM−1000を9g(9mmol、ポリオレフィン(A)100重量部に対し親水性高分子(B)30重量部に相当)使用し、トルエン 9gに溶解した以外は実施例1と同様にして、黄色ポリマー39gを得た。無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンにポリエーテルアミンがグラフト結合したグラフト共重合体を形成している。
分散粒子径を測定したが、50%粒子径は0.098μmであった。実施例1と同様に密着性、耐水性、耐GH性を評価した。結果を表−1に示す。
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に製造例2で得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレン20gとトルエン80gを入れて110℃に昇温し完全に溶解させた。50℃まで冷却した後、ポリオキシエチレンセチルエーテル(ノニオン系界面活性剤、花王(株)製エマルゲン220、HLB=14.2)3gと、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(ノニオン系界面活性剤、花王(株)製エマルゲン147、HLB=16.3)3gを添加し溶解した後、35℃まで冷却した。
製造例2で得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレン30g(無水マレイン酸基の含量3.75mmol)に、ポリエステルポリオール((株)クラレ製P−2010、分子量2000(公称値))7.5g(3.75mmol、ポリオレフィン(A)を100重量部として25重量部に相当)、ジメチルベンジルアミン0.3gを加えた以外は実施例1と同様にして黄色ポリマー37gを得た。無水マレイン酸変性ポリプロピレンにポリエステルポリオールがグラフト結合したグラフト共重合体を形成している。
なお比較例2で用いたポリエステルポリオール((株)クラレ製P−2010)は、25℃の水に10重量%の濃度で溶解させたときに不溶分が1重量%を超え、親水性高分子ではない。
実施例1〜4及び比較例1の樹脂分散体(固形分濃度:25重量%)10gに、製造例5の顔料分散ペースト(固形分濃度:50重量%)10g及び水性アクリル樹脂分散体ES−20(中央理化工業社製リカボンドES−20、固形分濃度:44%、樹脂Tg:47℃)5.7gを添加し混合した塗料を作成し、実施例1と同様に密着性、耐水性、耐GH性、及びブリードアウトを評価した。結果を表−2に表す。
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に、トルエン650g、プロピレン−ブテン共重合体(三井化学社製、タフマーXM7070)350gを入れ、容器内を窒素ガスで置換し、110℃に昇温した。昇温後無水マレイン酸35gを加え、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナート(日本油脂社製パーブチルI)10.7gを加え、10時間同温度で攪拌を続けて反応を行った。反応終了後、系を室温付近まで冷却し、アセトンを加えて、沈殿したポリマーを濾別した。さらにアセトンで沈殿・濾別を繰り返し、最終的に得られたポリマーをアセトンで洗浄した。洗浄後に得られたポリマーを減圧乾燥することにより、白色粉末状の無水マレイン酸変性ポリマーが得られた。この変性ポリマーの赤外線吸収スペクトル測定を行った結果、無水マレイン酸基の含量(グラフト率)は、2.1重量%(無水マレイン酸基として0.21mmol/g、カルボン酸基として0.42mmol/g)であった。また重量平均分子量は110,000であった。
なお、本実施例における密着性評価は以下のように行った。
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に、製造例4で合成した無水マレイン酸変性ポリプロピレン30g(無水マレイン酸基の含量4.8mmol)とトルエン70gを加え、温度を110℃に昇温し完全に溶解した。次いでモルホリン2g(23mmol)加え110℃で1時間反応させた。
得られた黄色ポリマー25gにTHF75gを加え60℃で完全に溶解させた。純水84gを同温度で1時間かけて滴下すると、黄色のポリマーが分離してしまい、樹脂分散体は得られなかった。
なおモルホリンは親水性化合物であるが、分子量は89であり親水性高分子ではない。
製造例1で得られたポリプロピレンを使用した以外は全て比較例1と同様に、操作を行い、樹脂分散体を得た。
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に、製造例1で得られたポリプロピレン25gとTHF70gを加え、温度を60℃に昇温し、完全に溶解した。ここに、メトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)−2−プロピルアミン(ジェファーミンM−1000) 9g(9mmol)をTHF27gに溶解した溶液を加えた後、温度を60℃にした。次いで、純水84gを同温度で1時間かけて滴下すると、滴下途中で白濁し、樹脂が分離してしまい、樹脂分散体は得られなかった。
即ちジェファーミンM−1000は無変性ポリプロピレンを分散させる能力がなく、界面活性剤ではない。
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に、製造例6で得た無水マレイン酸変性ポリプロピレンのトルエン溶液600g(無水マレイン酸変性ポリプロピレンの含量:240g)を加え、温度を110℃に昇温し、ジェファーミンM−1000 36.0g(36.0mmol、プロピレン系重合体100重量部に対し15重量部に相当)をトルエン54.0gに溶解した溶液を加え、110℃で1時間反応させた。
次いで、得られたポリアルキレングリコール変性ポリプロピレンのトルエン溶液100g(ポリマー含有量40g)を、還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に加え、温度を65℃に昇温した。
続いて、IPA15g及び蒸留水135gの混合溶媒を65℃にて30分かけて滴下した後、同様の操作で溶媒を減圧留去し、固形分濃度が25重量%の白色の樹脂分散体を得た。
粒子径を測定した結果、50%粒子径は0.142μmであった。また3ヶ月後の粒子径を測定し、貯蔵安定性を評価した。結果を表−4に示す。
一段目の滴下混合溶媒を、IPA120g、蒸留水30g、及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール0.4gの混合物とした以外は実施例10と同様にして、淡黄色半透明の樹脂分散体を得た。
分散粒子径を測定した結果、50%粒子径は0.084μmであった。結果を表−4に示す。
一段目の滴下混合溶媒を、IPA120g、蒸留水30g、及びN,N−ジメチルエタノールアミン0.4gの混合物とした以外は実施例10と同様にして、淡黄色半透明の樹脂分散体を得た。
分散粒子径を測定した結果、50%粒子径は0.076μmであった。結果を表−4に示す。
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に、製造例7で製造した無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体100g(無水マレイン酸基の含量6mmol)とトルエン200gを加え、温度を65℃に昇温した。次いでジェファーミンM−1000を12g(12mmol)添加し同温度で1時間反応させた。
粒子径を測定した結果、50%粒子径は0.132μmであった。結果を表−4に示す。
Claims (18)
- ポリオレフィン(A)に親水性高分子(B)を、(A):(B)=100:5〜100:500(重量比)の割合で結合させてなる重合体(C)を、水に分散させてなることを特徴とする樹脂分散体。
- 重合体(C)が50%粒子径0.5μm以下で水に分散されてなる、請求項1に記載の樹脂分散体。
- 重合体(C)が50%粒子径0.2μm以下で水に分散されてなる、請求項1に記載の樹脂分散体。
- 樹脂分散体の界面活性剤含有量が、重合体(C)100重量部に対し10重量部以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂分散体。
- ポリオレフィン(A)が実質的に塩素を含まない、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の樹脂分散体。
- 親水性高分子(B)を、ポリオレフィン(A)1g当たり0.01〜5mmol結合させてなる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の樹脂分散体。
- ポリオレフィン(A)が、プロピレン含量が50モル%以上であってアイソタクチックブロックとアタクチックブロックとを有するステレオブロックポリプロピレン重合体、及び/又は、プロピレン−α−オレフィン共重合体である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の樹脂分散体。
- ポリオレフィン(A)が、カルボン酸基、ジカルボン酸無水物基、及びジカルボン酸無水物モノエステル基からなる群より選ばれる1種以上を有する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の樹脂分散体。
- 重合体(C)が、ポリオレフィン(A)に親水性高分子(B)がグラフト結合したグラフト共重合体である、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の樹脂分散体。
- 親水性高分子(B)がポリエーテル樹脂である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の樹脂分散体。
- 親水性高分子(B)が反応性基を1分子当たり1以上有してなる、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の樹脂分散体。
- 親水性高分子(B)が反応性基として少なくともアミノ基を有してなる、請求項11に記載の樹脂分散体。
- ポリオレフィン(A)に親水性高分子(B)を(A):(B)=100:5〜100:500(重量比)の割合で結合させた重合体(C)を水に分散させた樹脂分散体の製造方法であって、該重合体(C)、水、及び水以外の溶媒の混合物を調製したのち、該混合物から該溶媒を除去することにより樹脂分散体を得ることを特徴とする、樹脂分散体の製造方法。
- 前記重合体(C)を水以外の溶媒に溶解したのち、水を添加して前記混合物とする、請求項13に記載の樹脂分散体の製造方法。
- 請求項1乃至12のいずれか1項に記載の樹脂分散体からなる、塗料。
- 熱可塑性樹脂成形体(F)上に、ポリオレフィン(A)に親水性高分子(B)を(A):(B)=100:5〜100:500(重量比)の割合で結合させた重合体(C)を含む層を有する、積層体。
- 熱可塑性樹脂成形体(F)に、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の樹脂分散体又は請求項15に記載の塗料を塗布し、加熱することにより樹脂層が形成されてなる、積層体。
- 熱可塑性樹脂成形体(F)に、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の樹脂分散体又は請求項15に記載の塗料を塗布し、加熱して樹脂層を形成する、積層体の製造方法。
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