JP2007246809A - メタ型全芳香族ポリアミド溶液の製造方法 - Google Patents

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知義 千葉
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Abstract

【課題】メタ型全芳香族ポリアミド溶液の製造に際し、発生する塩化水素を無機アルカリを中和剤として用いて中和する場合、中和時間を短縮し、生産性の向上を図る。
【解決手段】芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸クロライドとを有機溶媒中で重合した後、該重合で副生する塩化水素を無機アルカリで中和するに際し、前処理により平均粒径10μm以下まで微粒化した無機アルカリを用いて乾式中和を行い、成形に適したメタ型全芳香族ポリアミド溶液を生産性よく製造する。
【選択図】なし

Description

本発明はメタ型全芳香族ポリアミド溶液の製造法に関するものであり、さらに詳しくは、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸クロライドとを有機溶媒中で重合した後、該重合で副生する塩化水素を効率的に中和して成形性などが良好なメタ型全芳香族ポリアミド溶液を製造する方法に関するものである。
メタ型全芳香族ポリアミドは、分子骨格が殆ど芳香環から構成されているため、優れた耐熱性と寸法安定性とを有しており、産業用途において繊維、フィルム、ペーパーなどとして耐熱性、耐炎性が重視される用途に用いられている。
このように各分野で利用価値の高いメタ型全芳香族ポリアミドは、特公昭35−13247号公報(特許文献1)に記載の界面重合法あるいは特公昭35−14399号公報(特許文献2)に記載のいわゆる低温溶液重合法に従って芳香族ジカルボン酸クロライドと芳香族ジアミン及び/又は芳香族アミノカルボン酸クロライドを重合せしめることにより製造されている。
前者の界面重合法の場合は、ポリマーの重合度の調節が困難であり、また、ポリマーを単離、洗浄、乾燥し、さらに再溶解するなど、いくつもの工程を経て成形物を製造するという煩わしさがある。
これに対して、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの有機溶媒中で低温溶液重合を行う方法は、重合度の調節が容易であり、重合に引き続いて重合反応で副生した塩化水素を溶媒に可溶性の塩を形成する中和剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウムなどの無機アルカリ、で中和することによって成形に供し得る重合溶液を得ることが可能である。中和後の重合溶液は長時間安定な均一溶液として存在するので、これを湿式あるいは乾式成形することにより繊維、フィルム、パルプ状粒子などの製造が可能であり、従って、メタ型全芳香族ポリアミドの製造では低温溶液重合法が多く採用されている。
しかし、この低温溶液重合法の一つの欠点として、重合反応で副生する塩化水素の中和工程の難しさがある。すなわち、上述した中和剤はいずれも固体であり、固液反応は長時間を要するという問題があり、また、この固体の中和剤の反応が不十分で、中和剤が重合溶液中に残存していると、繊維、フィルムなどの製造に際して工程調子悪化やフィルター交換頻度増加の原因になるという問題がある。特に、繊度の小さい繊維の製造では、重合溶液中の未反応中和剤の存在が糸切れの多発する原因となる。そこで、中和反応を完全に行うことが必要であるが、従来は、中和反応を完全に行わせるために、反応時間を長くとる必要があり、このため生産性が犠牲になっていた。
特許第3089759号公報(特許文献3)には、全芳香族ポリアミド製造における中和工程で系内を減圧にすることにより中和時間を短縮する方法が提案されているが、この方法では炭酸ガスなどと同時に溶剤も揮発するため、重合溶液の組成比率が中和時間によって変化するという問題点がある。
特公昭35−13247号公報 特公昭35−14399号公報 特許第3089759号公報
本発明の主たる目的は、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸クロライドとを有機溶媒中で重合した後、該重合で副生する塩化水素を中和剤として無機アルカリを用いて中和する方法において、中和時間を短縮し、生産性の向上を図る方法を提供することにある。本発明のさらなる目的は、乾式中和を行っても溶液中に中和剤が残存しない、成形性の良好なメタ型全芳香族ポリアミド溶液を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上述の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、中和剤として使用する無機アルカリとして、前処理によって微細粒子化して特定の平均粒経の範囲に調整したものを使用することで、中和時間を短縮でき、生産性の向上を図ることが可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸クロライドとを有機溶媒中で重合した後、該重合で副生する塩化水素を中和してメタ型全芳香族ポリアミド溶液を製造するに際し、塩化水素を含む重合溶液を、前処理により微粒化した平均粒径10μm以下の無機アルカリを用いて乾式中和することを特徴とする方法である。
この方法では、特に、前処理によって平均粒径1〜8μmの微粒子とした無機アルカリを使用することが効果的である。また、中和剤として使用する無機アルカリは、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の無機アルカリであることが好ましい。
無機アルカリの前処理方法としては、ボールミル、ジェットミルなどを用いた乾式粉砕法が好ましいが、無機アルカリを実質的に変質させることなく、固体粒子の平均粒径を上記範囲まで減少させることが出来る手段であれば、上記手段に限定されるものではない。
本発明の全芳香族ポリアミド溶液の製造法によれば、低温溶液重合で副生した塩化水素の中和時間が大幅に短縮され、全芳香族ポリアミド溶液の製造の生産性向上を図ることができる。また、繊維やフィルムなどの製造における工程調子を改善することもできる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明を実施する際に用いられるメタ型全芳香族ポリアミドを構成する単量体(原料モノマー)としての芳香族ジアミンとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン及びこれらの芳香環にハロゲン原子、炭素数1〜3の低級アルキル基などの置換基を有する誘導体、例えば2,4−トルイレンジアミン、2,6−トルイレンジアミン、2,4−ジアミノクロルベンゼン、2,6−ジアミノクロルベンゼンなどが例示される。一方、芳香族ジカルボン酸クロライドとしては、イソフタル酸クロライド及びこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルコキシ基などの置換基を有する誘導体、例えば3−クロルイソフタル酸クロライド、3−メトキシイソフタル酸クロライドなどが例示される。本発明では、メタ型全芳香族ポリアミドを構成する芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸クロライドとも、これらに限定されるものではない。また、本発明の目的を阻害しない範囲内で、共重合成分としてパラ型の芳香族ジアミン及び/又はパラ型の芳香族ジカルボン酸クロライドなど、例えば、パラフェニレンジアミン、テレフタル酸、ナフタレン2,6ジカルボン酸、あるいはこれらの芳香環にハロゲン原子や炭素数1〜3の低級アルキル基などの置換基を有するもの、を少量使用してもよい。
本発明の溶液重合で使用する有機溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。これらは単独で使用するのが好ましいが、2種以上の混合溶媒として使用してもよい。本発明では、必要に応じ、さらに上記以外の有機溶媒が少量含有しても差し支えない。
本発明で溶液重合に用いる重合槽の形式は特に限定されないが、竪型重合槽の場合、例えば、ダブルヘリカルリボン型、パドル型、プロペラ型などの撹拌翼を備えたものが用いられる。ニーダの場合は、フィッシュテール型やゼット型のブレードを取り付けたものが用いられる。いずれも減圧可能な構造のものが好適である。また、連続重合の場合は、減圧が可能なコンテニアスニーダなどが適当である。
重合反応で副生した塩化水素は、溶媒に可溶性の塩を形成する中和剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸リチウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウムなどの無機アルカリで中和することにより、重合溶液を成形用原液とすることができる。無機アルカリの添加方法としては、乾式中和法、すなわち無機アルカリを固体状で重合溶液に添加して中和する方法が、従来から採用されているスラリー添加法(湿式中和法)に比較して、重合工程でのポリマー濃度に制限がなく、工程の煩雑さがないので、好ましい。
かかる乾式中和法では、中和剤である無機アルカリをそのまま添加すると、中和時間が長くかかり、かつ未反応の中和剤が溶液中に残存しやすい。このため、本発明方法では、該無機アルカリを予め前処理することによりその平均粒経を特定範囲に調整した微粒子として使用する。
無機アルカリの前処理方法としては、ボールミル、ジェットミルなどを用いた乾式粉砕法が好ましいが、その手段は特に限定されるものではない。前処理時の無機アルカリの安定性などを考慮して、乾式粉砕を窒素などの不活性ガス雰囲気下で乾式粉砕を行うのが特に好ましい。
本発明では、前処理により無機アルカリの平均粒径を10μm以下の微粒子とすることが必要であり、特に平均粒径を1〜8μmとするが好ましい。平均粒径が10μmより大きい場合には中和時間が長くかかり、本発明の目的を達成し難いので好ましくない。ただし、平均粒径を1μm未満にすると粒子が凝集を起こしやすくなり、かえって中和時間が長くなる。
本発明では、前処理した無機アルカリの粒度分布は、上記平均粒径付近に高いピークを有するシャープな粒度分布を有し、粒径が10μmより大きいものや粒径が1μm未満の粒子の含有割合が全体の20重量%以下のものが好適である。
前処理した無機アルカリの添加量は、副生する塩化水素に対して90〜100モル%の範囲が適当であり、好ましくは95〜100モル%の範囲である。該無機アルカリの添加は、常温〜100℃で行うことが好ましい。この範囲より低温では反応速度が十分でなく、高温になると溶媒が蒸発するので好ましくない。添加開始から反応完結までの時間は、無機アルカリの種類、量や温度にもよるが、通常、20〜60分である。
前処理をしない無機アルカリを使用した場合、特に中和反応が進行して塩化水素が希薄となった中和末期系での残存中和剤は、塩化水素との中和反応が鈍化するため、完全に中和するには相当な長時間を要するが、本発明においては中和時間の大幅な短縮が可能となる。また、このように前処理した無機アルカリで中和した重合溶液は未反応の無機アルカリ粒子を含まないため、例えば、このポリマー溶液から繊維を製造する場合、紡糸調子が良好で、また、延伸時に異物による糸切れが低減するため、工程調子を改善することができる。
なお、中和反応で形成された塩化カルシウムなどの無機塩化物は腐蝕性があるので、重合溶液配管、紡糸口金、フィルム形成用の流延ドラム、流延ベルトなどの腐蝕を防止するため、必要に応じて、腐蝕防止剤を加えてもよい。腐蝕防止剤としては、トリエチルアミン、アンモニア、プロピレンオキサイド、硝酸リチウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが使用でき、発生塩化水素量に対して1〜150モル%を添加することにより、腐蝕防止に効果がある。
次に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって些かも限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例に示す「部」は全て重量部を表わし、「%」は全て重量%を表わす。また、物性の測定法、効果の評価は以下の方法により行った。
<粒径測定>
レーザー回折・散乱式粒度分布測定器を用いて粒度分布を測定し、平均粒経を求めた。
<残存粒子評価>
ガラス板上にドクターブレードで重合溶液を流延し、デジタルマイクロスコープを用いて溶液中の残存中和剤粒子を評価した。
<固有粘度(IV)>
ポリマーを97%濃硫酸に溶解し、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した。
[実施例1]
温度計、撹拌装置及び原料投入口を備えた反応容器に、水分率が100ppm以下のN−メチルピロリドン(以下、NMPと略す)854.8部を入れ、このNMP中にメタフェニレンジアミン(以下、MPDAと略す)83.4部を溶解し、0℃に冷却した。この冷却したジアミン溶液にイソフタル酸クロライド(以下、IPCと略す)156.9部を徐々に撹拌しながら添加し反応させた。この反応で溶液の温度は70℃に上昇した。反応開始から40分間攪拌を継続した後、前処理によって平均粒径を4μmとした水酸化カルシウム粉末を57.1部添加し、40分間撹拌して反応を終了させ、反応容器から重合溶液を取り出し、透明な重合溶液を得た。
この際、無機アルカリの前処理としては、平均粒径15μmの水酸化カルシウム粉末をボールミルにより窒素雰囲気下で粉砕し、平均粒径4μmとする処理を行った。
この重合溶液からポリメタフェニレンイソフタルアミドを単離してIVを測定したところ1.85であった。また、溶液のポリマー濃度は16%であった。これをデジタルマイクロスコープで観察したところ、残存粒子のない溶液であることが確認された。
[実施例2]
実施例1と同様に、温度計、撹拌装置及び原料投入口を備えた反応容器に、NMP753.8部を入れ、このNMP中にMPDA85.7部を溶解し、0℃に冷却した。この冷却したジアミン溶液にIPC160.5部を徐々に攪拌しながら添加し反応させた。この反応で溶液の温度は70℃に上昇した。反応開始から40分攪拌を継続した後、実施例1と同様の前処理により平均粒径4μmとした水酸化カルシウム粉末を58.7部添加し、40分間攪拌して反応を終了させ、反応容器から重合溶液を取り出し、透明な重合溶液を得た。
この重合溶液からポリメタフェニレンイソフタルアミドを単離してIVを測定したところ1.43であった。また、溶液のポリマー濃度は17.8%であった。これをデジタルマイクロスコープで観察したところ、残存粒子のない溶液であることが確認された。
[比較例1]
実施例1と同様にして、NMP731.5部を入れ、このNMP中にMPDA93.4部を溶解し、0℃に冷却した。この冷却したジアミン溶液にIPC175.1部を徐々に攪拌しながら添加し反応させた。この反応で溶液の温度は70℃に上昇した。反応開始から40分間攪拌を継続した後、前処理を行わない平均粒径15μmの水酸化カルシウム粉末を64.0部添加し、40分間攪拌して反応を終了させ重合溶液を取り出し、透明な重合溶液を得た。
この重合溶液からポリメタフェニレンイソフタルアミドを単離してIVを測定したところ1.61であった。また、溶液のポリマー濃度は19.3%であった。これをデジタルマイクロスコープで観察したところ、未反応の水酸化カルシウムが無数に存在することがわかった。

Claims (3)

  1. 芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸クロライドとを有機溶媒中で重合した後、該重合で副生する塩化水素を中和してメタ型全芳香族ポリアミド溶液を製造するに際し、塩化水素を含む重合溶液を、前処理により微粒化した平均粒径10μm以下の無機アルカリを用いて乾式中和することを特徴とするメタ型全芳香族ポリアミド溶液の製造方法。
  2. 前処理により微粒化した無機アルカリの平均粒径が1〜8μmであることを特徴とする請求項1記載のメタ型全芳香族ポリアミド溶液の製造方法。
  3. 中和剤として使用する無機アルカリが、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の無機アルカリであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のメタ型全芳香族ポリアミド溶液の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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