JP2007246613A - 水素ガスの発生を抑制するカチオン電着塗料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】カチオン電着塗装における、発生した水素ガスを取り除いて、ピンホールの発生を抑制する技術の提供。
【解決手段】ホウ酸を含有する水素ガスの発生を抑制するカチオン電着塗料組成物、それを用いた水素ガス発生抑制方法およびカチオン電着塗装方法。
【選択図】なし

Description

本発明は水素ガスの発生を抑制するカチオン電着塗料組成物、それに用いる水素ガス発生抑制剤、カチオン電着塗料組成物の水素ガス抑制方法および水素ガスの発生を抑制したカチオン電着塗装方法に関する。
電着塗装は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、自動車車体等の大型で複雑な形状を有し、高い防錆性が要求される被塗物の下塗り塗装方法として汎用されている。また、他の塗装方法と比較して、塗料の使用効率が極めて高いことから経済的であり、工業的な塗装方法として広く普及している。カチオン電着塗装は、カチオン電着塗料中に被塗物を陰極として浸漬させ、電圧を印加することにより行なわれる。
カチオン電着塗装では、被塗物である陰極表面において、カチオン性の塗膜形成性樹脂の沈着が起こって樹脂被膜が塗着していく。同時に陰極表面では、水の電気分解も起こっており、次の様な反応で、水素の発生が起こる。
Figure 2007246613
発生した水素ガスは、揮散していけば何の問題も生じないが、電着塗装により形成された塗膜中に取り込まれたりすると、いわゆるピンホールとして塗膜欠陥の原因となる。水素ガスの発生は、多くの自動車の車体などに使用されている亜鉛メッキ鋼板の場合には通常の鋼板などと同じ電着塗装条件では、より多量に発生する傾向にあり、塗膜欠陥となる傾向も高く、水素ガスの発生をコントロールすることが望まれている。
水素ガスの発生をコントロールして、ピンホールの発生を抑制する技術は、あまり多く検討されていないが、特許文献1(特開平5−51798号公報)には亜鉛メッキ鋼板のカチオン電着塗装において、印加電圧を最初水素ガス発生が限度以下に抑制される電圧値に設定して所定量電着し、その後高い電圧値に変化させる方法が記載されている。この方法は電着塗装の電圧の細かくコントロールしなければならず煩雑である。
特許文献2(特開2002―121498号公報)には、アニオン電着塗料における中和度をコントロールして、水素ガスの発生を抑制する方法が記載されているが、アニオン電着であるので、被塗装物表面上で水素ガスが発生しないので、カチオン電着塗装の技術とは相違する。
特開平5−51798号公報 特開2002―121498号公報
本発明はカチオン電着塗装における、水素ガスの発生自体を抑制するのでは無く、発生した水素ガスを取り除いて、ピンホールの発生を抑制する技術を提供する。
すなわち、本発明は、ホウ酸を含有する水素ガスの発生を抑制するカチオン電着塗料組成物を提供する。
ホウ酸は塗料に対して0.001〜10重量%の量で配合するのが好ましい。
本発明は、また、ホウ酸を主成分とするカチオン電着塗料用水素ガス発生抑制剤を提供する。
さらに、本発明は、ホウ酸をカチオン電着塗料組成物に配合することを特徴とするカチオン電着塗料組成物の水素ガス発生抑制方法を提供する。
また、本発明は、ホウ酸を含むカチオン電着塗料組成物中で被塗物をカチオン電着することを特徴とする水素ガスの発生を抑制するカチオン電着塗装方法を提供する。
本発明での水素ガスの抑制は、以下のような反応にしたがって進行していると考えられるが、必ずしもこの理論に限定されるものではない。水素ガスの発生は前述のように、以下の化学式で記載することができる。
Figure 2007246613
この反応に対してホウ酸は、次のような反応式に基づいて発生した水素ガスを捕獲して、B1014(ボラン)として貯蔵する。
Figure 2007246613
すなわち、水の電気分解で発生した水素ガスは、ホウ酸と反応してボランとして貯蔵され、ガス状で存在するものの量が低下する。したがって、水素ガスが原因で発生するピンホールと呼ばれる塗膜欠陥も有効に防止することができるのである。
以下、本発明をより詳細に説明する。一般にカチオン電着塗料は、カチオン性のエポキシ樹脂(特に、アミン変性エポキシ樹脂)とその樹脂の硬化剤(特に、ブロック化イソシアネート硬化剤)を基本的成分としており、その他に顔料や添加剤を含み、水性媒体中に分散したものである。
ホウ酸
ホウ酸は、白色の固体であるが、好ましくはホウ酸水溶液の形でカチオン電着塗料組成物中に配合する。ホウ酸の配合量は、塗料に対して通常0.001〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは1〜5重量%である。0.001重量%より少ないと、発生した水素ガスの捕獲量が少なく、ピンホールの防止に役立たない。10重量%より多いと、ホウ酸の水に対する溶解度以上に達して、添加量に比例した効果が得られない。
電着塗料組成物
本発明の電着塗装方法において、一般に使用される任意の電着塗料組成物を用いることができる。電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂、硬化剤および必要に応じて顔料や添加剤を含むものが挙げられる。以下、それぞれの成分について説明する。
カチオン性エポキシ樹脂
本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807、(同、エポキシ当量170)などがある。
特開平5−306327号公報に記載される、下記式
Figure 2007246613
[式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。]で示されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂をカチオン性エポキシ樹脂に用いてもよい。耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られるからである。
エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入する方法としては、例えば、メタノールのような低級アルコールでブロックされたブロックポリイソシアネートとポリエポキシドを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副生する低級アルコールを系内より留去することで得られる。
特に好ましいエポキシ樹脂はオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂である。耐熱性及び耐食性に優れ、更に耐衝撃性にも優れた塗膜が得られるからである。
二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂が得られることは公知である。このオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の具体例及び製造方法は、例えば、特開2000−128959号公報第0012〜0047段落に記載されており、公知である。
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような適当な樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
これらのエポキシ樹脂は、開環後0.3〜4.0meq/gのアミン当量となるように、より好ましくはそのうちの5〜50%が1級アミノ基が占めるように活性水素化合物で開環するのが望ましい。
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィド及び酸混合物がある。1級、2級又は/及び3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数のものを併用して用いてもよい。
硬化剤
本発明で使用する硬化剤は、ポリイソシアネートをブロック剤でブロックして得られたブロックポリイソシアネートが好ましく、ここでポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーも硬化剤として使用してよい。
ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートであることが好ましい。形成される塗膜が耐候性に優れるからである。
脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートの好ましい具体例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添TDI、水添MDI、水添XDI、IPDI、ノルボルナンジイソシアネート、それらの二量体(ビウレット)、三量体(イソシアヌレート)等が挙げられる。
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
ブロック剤としては、低温硬化(160℃以下)を望む場合には、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムおよびβ−プロピオラクタムなどのラクタム系ブロック剤、及びホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系ブロック剤を使用するのが良い。
カチオン性エポキシ樹脂と硬化剤とを含むバインダーは、一般に、電着塗料組成物の全固形分の25〜85質量%、好ましくは40〜70質量%を占める量で電着塗料組成物に含有される。
顔料
本発明で用いられる電着塗料組成物は、通常用いられる顔料を含んでもよい。使用できる顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、チタンホワイト、カーボンブラック及びベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等、が挙げられる。
顔料は、一般に、電着塗料組成物の全固形分の1〜35質量%、好ましくは10〜30質量%を占める量で電着塗料組成物に含有される。
顔料分散ペースト
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を顔料分散樹脂と呼ばれる樹脂と共に予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂ワニスと共に水性媒体中に分散させて調製する。顔料分散樹脂ワニスとしては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂ワニスは5〜40質量部、顔料は10〜30質量部の固形分比で用いる。
上記顔料分散用樹脂ワニスおよび顔料を、樹脂固形分100質量部に対し10〜1000質量部混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得る。
電着塗料組成物の調製
電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂、硬化剤、及び顔料分散ペーストを水性媒体中に分散することによって調製される。また、通常、水性媒体にはカチオン性エポキシ樹脂の分散性を向上させるために中和剤を含有させる。中和剤は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。その量は少なくとも20%、好ましくは30〜60%の中和率を達成する量である。
硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級又は/及び3級アミノ基、水酸基等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にカチオン性エポキシ樹脂の硬化剤に対する固形分質量比で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。
電着塗料は、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズオキサイドのようなスズ化合物や、通常のウレタン開裂触媒を含むことができる。鉛を実質的に含まないものが好ましいため、その量はブロックポリイソシアネート化合物の0.1〜5質量%とすることが好ましい。
電着塗料組成物は、水混和性有機溶剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、及び顔料などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。
本発明では、ホウ酸は、電着塗料組成物に直接添加しても良いが、前述の樹脂や顔料ペーストに予め配合した形で電着塗料組成物中に導入しても良い。
電着塗料組成物を用いて電着塗装を行う場合の被塗物は、予め、浸漬、スプレー方法等によりリン酸亜鉛処理等の表面処理の施された導体であることが好ましいが、この表面処理が施されていないものであっても良い。また、導体とは、電着塗装を行うに当り、陰極になり得るものであれば特に制限はなく、金属基材が好ましい。
電着が実施される条件は一般的に他の型の電着塗装に用いられるものと同様である。印加電圧は大きく変化してもよく、1ボルト〜数百ボルトの範囲であってよい。電流密度は通常約10アンペア/m〜160アンペア/mであり、電着中に減少する傾向にある。
本発明の電着塗装方法によって電着した後、被膜を昇温下に通常の方法、例えば焼付炉中、焼成オーブン中あるいは赤外ヒートランプで焼付ける。焼付け温度は変化してもよいが、通常約140℃〜180℃である。本発明の電着塗装システムによって塗装された塗装物は、最終水洗の後、乾燥、焼付けされることによって、硬化電着塗膜が形成され、これにより塗装工程が完了する。
本発明は、またホウ酸をカチオン電着塗料組成物に配合することによるカチオン電着塗料組成物の水素ガス発生抑制方法も提供する。上述のように、単にホウ酸をカチオン電着塗料組成物に配合することで水素ガスの発生が抑制される。ホウ酸の配合量は、前述の通り、0.001〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは1〜5重量%である。
また、本発明は、ホウ酸を含むカチオン電着塗料組成物中で被塗物をカチオン電着することを特徴とする水素ガス発生を抑制するカチオン電着塗装方法を提供する。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものと解してはならない。
製造例1
水酸基を有するカチオン性樹脂(A)
撹拌機、冷却器、窒素導入管、温度計及び滴下ロートを備えたフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(質量比=8/2)92部、メチルイソブチルケトン(MIBK)95部及びジブチル錫ジラウレート0.5部を加え、これらを撹拌しながらメタノール21部を更に滴下した。反応は室温から始めたが、発熱により60℃まで昇温した。その後、30分間反応を継続した後に、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル57部を滴下ロートから滴下し、更にビスフェノールA−プロピオンオキサイド5モル付加体42部を加えた。反応は主に60〜65℃の範囲で行い、赤外線スペクトルを測定しながら、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
このようにして得られたブロックポリイソシアネートに、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂365部を加え、125℃まで昇温した。その後、ベンジルジメチルアミン1.0部を加え、エポキシ当量410になるまで130℃で反応させた。続いて、ビスフェノールA87部を前記フラスコに加えて、120℃で反応させたところ、エポキシ当量が1190となった。その後、冷却し、ジエタノールアミン11部、N−メチルエタノールアミン24部及びアミノエチルエタノールアミンのケチミン化合物(79質量%MIBK溶液)25部を加え、110℃で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分80%になるまで希釈し、水酸基を有するカチオン性樹脂(A)を得た。
製造例2
硬化剤(B)
撹拌機、冷却器、窒素導入管、温度計及び滴下ロートを備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート723部、メチルイソブチルケトン333部及びジブチル錫ジラウレート0.01部を加えて70℃まで昇温した。
そして内容物が均一に溶解した後、メチルエチルケトンオキシム610部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応温度70℃を保持したまま、赤外線スペクトルを測定しながら、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで反応を継続して硬化剤(B)を得た。
製造例3
メインエマルション(C)
製造例1で得た水酸基を有するカチオン性樹脂(A)67部(固形分換算)、製造例2で調製した硬化剤(B)33部(固形分換算)を均一に混合し、その後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルを固形分に対して2%とジブチル錫ジラウレートを固形分に対して2%添加した。ここへ酢酸を加え、中和率50.0%(樹脂のカチオン性基に対する中和率)となるようにし、イオン交換水を加えて固形分が37.0質量%となるまで希釈した。
その後、固形分が41.9質量%となるまで減圧下でMIBK及び水の混合物を除去し、メインエマルション(C)を調製した。
製造例4
顔料分散ペースト(D)
エポキシ当量450のビスフェノール型エポキシ樹脂に2−エチルヘキサノールのハーフブロック化イソホロンジイソシアネートを反応させ、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−プロパノール及びジメチロールプロピオン酸で3級スルホニウム化して3級スルホニウム化率70.6質量%、樹脂固形分60質量%の顔料分散用樹脂ワニスを調製した。
顔料分散用樹脂ワニスを50.0部、イオン交換水100.0部及び下記表1の粒状混合物100.0部をサンドグラインドミルで分散し、これをさらに粒度が5μm以下になるまで粉砕して顔料分散ペースト(D)(固形分52.0質量%)を得た。
Figure 2007246613
実施例1
製造例3で得られたメインエマルション(C)979.5部、製造例4で得られた顔料分散ペースト(D)284.0部、イオン交換水1236.5部を混合することで、固形分20.0%のカチオン電着塗料組成物を得た。
4Lステンレスビーカに、上記カチオン電着塗料組成物を入れた。この塗料にホウ酸を水に溶解して、カチオン電着塗料組成物の固形分で0.01%になるように配合した。冷延鋼板(JIS G3141、SPCC−SD)をサーフダインSD−5000(日本ペイント社製)で処理したリン酸亜鉛処理冷延鋼板をカチオン電着塗料組成物に浸漬し、液温30℃で30秒間200ボルトとなるように昇温し、150秒間200ボルトを保持して電圧を印加して、電着塗膜を形成した。得られた塗板を水洗し、160℃で10分間焼き付けし、塗面状態を目視観察して、ガスピン個数を数えた。数えたガスピン個数を表1に示す。
別のリン酸亜鉛処理冷延鋼板について、印加電圧を220V、240V、260V、280Vおよび300Vにして電着塗装したのち、上記同様に焼付けた後ガスピン個数を数えた。各印加電圧でのガスピン個数を表1に示す。
ガスピンが発生し始めた電圧を発生電圧として、表1に示す。また、ガスピンホールの直径を測定し、以下の基準で極小〜大に分類し、表1に結果を記載した。
極小…0.1mm以下
小…0.1〜0.3mm
中…0.3〜0.5mm
大…0.5mm以上
実施例2〜4
ホウ酸を表1に示す配合量で配合して、実施例1と同様に評価を行なった。結果を表1に示す。尚、実施例1の280Vでの塗装板の写真を図1として図示する。
比較例1
ホウ酸を配合せずに実施例1と同様に電着塗装を行い、評価を行った。結果を表1に示す。比較例1の280Vでの塗装板の写真を図2として図示する。
Figure 2007246613
上記試験結果から明らかなように、本発明のホウ酸を配合しない例(比較例1)では、水素ガスが多くの量で発生していることが解る。一方、ホウ酸を配合した例(実施例)では、すべての場合に水素ガス発生抑制効果が示されている。
実施例1の280Vでの塗装板の写真を示す図である。 比較例1の280Vでの塗装板の写真を示す図である。

Claims (5)

  1. ホウ酸を含有する水素ガスの発生を抑制するカチオン電着塗料組成物。
  2. ホウ酸を塗料に対して0.001〜10重量%の量で含有する請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
  3. ホウ酸を主成分とするカチオン電着塗料用水素ガス発生抑制剤。
  4. ホウ酸をカチオン電着塗料組成物に配合することを特徴とするカチオン電着塗料組成物の水素ガス発生抑制方法。
  5. ホウ酸を含むカチオン電着塗料組成物中で被塗物をカチオン電着することを特徴とする水素ガスの発生を抑制するカチオン電着塗装方法。
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JP2007246608A (ja) * 2006-03-14 2007-09-27 Nippon Paint Co Ltd カチオン電着塗料組成物およびそれを用いる二次タレ防止方法

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