JP2007240464A - 沸騰水型原子炉炉心状態監視装置 - Google Patents

沸騰水型原子炉炉心状態監視装置 Download PDF

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Abstract

【課題】原子炉内部の局所異常を、原子炉内の核熱水力動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せて精度よく検出することができる沸騰水型原子炉炉心状態監視装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置は、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成して、沸騰水型原子力プラントにおける原子炉炉心11内の状態推定を行なうように構成したものである。
【選択図】 図2

Description

本発明は、原子炉の炉心状態監視技術に係り、特に沸騰水型原子炉の炉心内部の異常現象を正確に精度よく検知し、原子炉炉心状態を監視可能な沸騰水型原子炉炉心状態監視装置に関する。
原子力プラントは極めて高い安全性が要求されるが、中でも核燃料を保持して、継続的に核反応を制御し、発生した熱を安定して熱媒体(冷却材)へと伝達する原子炉炉心の安全性は極めて重要である。
炉心の安全性の一つに燃料の熱的健全性確保がある。燃料の熱的健全性は十分な冷却が行われない場合に損なわれる可能性が大きく、その現象の一つとして沸騰遷移による熱伝達特性の悪化がある。そのような沸騰遷移現象を解析し、原子炉炉心を3次元で模擬した詳細過渡解析コードを用いて予測する技術に特許文献1(特開2005−283269号公報)に提案されたものがある。この特許文献1に開示された技術では詳細物理モデルに実原子力プラントデータを反映させることにより、解析精度を向上させている。
また、沸騰水型軽水炉の場合には核熱水力振動と呼ばれる振動現象が特別な運転条件では発生する可能性のあることが知られている。そのような振動現象は通常運転中には十分な余裕を持って発生しないように設計している。しかし、ポンプトリップなどの過渡事象発生時には、そうした不安定現象の発生する可能性のある運転領域に入ることがあり、そのような振動現象を監視する手法に関して多数の特許文献が存在する。
例えば、中性子計装信号から沸騰水型原子炉の核熱水力振動に特徴的な周波数成分の振幅の成長・減衰を時系列的に求め、熱的な制限値に対する漸近の様子を監視して、必要な警報などの注意を促す例が特許文献2(特開2005−241657号公報)に開示されている。
通常は、こうした中性子計装信号にはノイズも含め多くの周波数成分が混在していることから、統計的な処理を施して注目する周波数成分を抜き出しS/N比(Signal to Noise Ratio)を上げて、推定精度を向上させる手法が一般的である。統計的処理を施し、推定精度を向上させるひとつの例として、独立成分分析により互いに独立な振動の主成分を分離して、その成分の大きさから振動モードを推定する例が特許文献3(特開2002−221590号公報)に開示されている。
また、注目すべき振動モードに応じた中性子束空間分布を予め推定し、それらが互いに直交していることを利用して、監視したい振動モードの分布をフィルタとして用いることによりそのモード成分だけを抽出して、モード成分の変動から関連モードの安定度を監視する例が特許文献4(特開平11−238019号公報)に開示されている。この特許文献4では安定性の物理モデルを備えており、最新の炉心状態、プラント状態を基に現時点、および過渡事象発生後の任意の時点での安定性を予測する機能も備えている。
また、沸騰水型原子炉の炉心性能として重要なパラメータとして炉心流量がある。特に原子炉内蔵型再循環ポンプが原子炉圧力容器内部に複数台設置された原子力プラントでは、原子炉内再循環ポンプによる昇圧の度合いが計測し難いことから、精度良く炉心流量を推定することが困難である。そのため冷却材の熱バランスを物理的なモデルから推定して、そのバランス式に現れる炉心流量項から炉心流量を推定する手法が特許文献5(特開平9−133782号公報)に提案されている。
さらに、沸騰水型原子炉の炉心性能の監視には炉心流量以外の重要なパラメータとして、反応度係数があげられる。反応度係数あるいは反応度自体は直接測定できるものではないため、物理的なモデルを仮定した上で、実測データ(観測量)から最適手法を用いて推定するのが一般的である。例えば、炉心モデルとして中性子束1点炉モデルに、1次遅れの熱伝導モデルによる温度フィードバックと2次のボイドスィープモデルによるボイドフィードバックに、1次遅れの内部雑音源を加えた簡単なモデルを仮定して、このモデルを用いて構築したパワースペクトルと、観測信号から構築したパワースペクトルの差の2乗平均が最小になるように、非線形計画法でボイド反応度係数や、内部雑音源強度を推定する例が特許文献6(特開2005−134291号公報)に開示されている。
また、同じく中性子束1点炉モデルに冷却材温度動特性モデルを組み合せて、これに観測信号として中性子計装信号と冷却材温度信号を入力して、カルマンフィルタの予測計算から、その予測精度を対数尤度で表し、対数尤度が最大になるような温度反応度係数を推定する例が特許文献7(特開2004−279338号公報)に開示されている。原子力プラントへのカルマンフィルタの適用例としては、他に加圧水型軽水炉の1次系における加圧器水位信号、1次冷却材平均温度信号などからマスバランスをカルマンフィルタで推定して、冷却材漏洩量などを予測する例が特許文献8(特開平7−43494号公報)に記載されている。
カルマンフィルタの一般産業への適用例としては、特に高速追従性が要求される移動体認識・追跡技術や自動車などの移動体姿勢制御、エンジン制御などへの適用例が多い。例えば、ガスタービンエンジン制御においてエンジンの内部状態を拡張カルマンフィルタにより推定し、エンジンの実際の制御状態との差を補正するように制御パラメータを調整する例が特許文献9(特開2005−248946号公報)に記載されている。あるいは、画像情報から推定した車線曲率からカルマンフィルタにより車線曲率予測オブザーバーを構成して、推定された車線曲率をなるべく真の車線曲率に近づけることにより車両の車線追従性を向上させる例が特許文献10(特開2005−44208号公報)に開示されている。
カルマンフィルタの応用例は他に画像処理や音声認識などで不完全な情報から必要な情報を補完再現したり、数式レベルの物理モデルと現実の観測データから非観測データを再現して、最適な制御などを行う必要のある分野などで、関連した特許文献が多数存在する。
特開2005−283269号公報 特開2005−241657号公報 特開2002−221590号公報 特開平11−238019号公報 特開平9−133782号公報 特開2005−134291号公報 特開2004−279338号公報 特開平7−43494号公報 特開2005−248946号公報 特開2005−44208号公報
沸騰水型原子炉は、炉心内に多数の中性子検出器(局所出力領域モニタ:LPRM)を備えている。通常は原子炉炉心に装荷される燃料チャンネル16体に1本の割合で中性子検出器が配置される。この配置状態では中性子検出器(LPRM)と隣接する4体の燃料チャンネルの異常事象(チャンネル熱水力発振やチャンネル閉塞による流量減少など)は検出可能であるが、残りの外周部12本の燃料チャンネルの異常事象の検出が困難であると考えられている。
外周部の燃料チャンネルの異常事象検出が困難であるのは、熱中性子の拡散距離の短さとボイドノイズの存在がS/N比を劣化させているのが主要因であると考えられる。
燃料チャンネルの異常事象検出の根本的解決方法は、熱中性子の拡散距離に見合って多数の中性子検出器を密に配列させれば良いが、このようなハード構成を原子炉炉心に実施することは物理的に困難である。
また、中性子検出器で検出される観測データ(中性子計装信号)と炉心内の物理現象を記述する数学モデルとを組み合せることにより、中性子検出器が存在しない箇所の非観測データを推定することは可能である。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、原子炉内部の局所異常を、原子炉内の核熱水力動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せて精度よく検出することができる沸騰水型原子炉炉心状態監視装置を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、沸騰水型原子炉の炉心内部の大規模カルマンフィルタと核熱水力動特性モデルとを組み合せて、原子炉内部、特に燃料集合体における局所的な異常事象を正確に精度よく検知し、実用的な計算時間で原子炉内部の異常現象検知が可能な沸騰水型原子炉炉心状態監視装置を提供することにある。
本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置は、上述した課題を解決するために、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成して、沸騰水型原子力プラントにおける原子炉炉心内の状態推定を行なうように構成したものである。
本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置においては、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せ、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成して推定し、原子炉炉心内の局所的異常状態を正確に精度よく検出して、実用的な計算時間で原子炉炉心の異常事象検知を行なうことができる。
本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
この沸騰水型原子炉炉心状態監視装置は、原子炉炉心内部の核熱水力動特性モデルと大規模カルマンフィルタを組み合せて、原子炉炉心、特に燃料集合体における局所的な異常現象を精度良く検知し、さらに大規模カルマンフィルタに高速演算手段を適用して実用的な計算時間で原子炉内部の異常現象検知が可能な技術である。
本発明の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置は、原子炉内部の局所的異常事象を原子炉内の核熱水力動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せた計測(監視)手法で検知し、検出性の向上を図るものである。この監視装置は、カルマンフィルタによる平滑化処理によるS/N比向上と核熱水力動特性モデルの利用による計測信号の予測を組み合せることで、炉心異常に起因した微小な計測信号の特性変化から統計的に最適な手法で異常原因を推定できることに着目したものである。
原子炉内の核熱水力動特性モデルとカルマンフィルタとを組み合せた原子炉内部の炉心異常、例えば炉内局所異常の検出手法は、計測信号の統計的評価に比べて、検出感度を大幅に向上させることが可能になると考えられる。
この検出手法を適用する際、核熱水力動特性モデルの規模(状態変数量あるいは状態変数の数)が膨大、例えば1万オーダの大規模なものとなり、数値計算上限界が出てくることが考えられるが、計算上の問題は、脳波診断研究などに用いられている大規模カルマンフィルタの縮約(簡素化)計算法を利用して近似計算する手法の導入により解決させることができる。
[第1の実施形態]
図1ないし図5は本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第1実施形態を示すものである。
沸騰水型原子炉(BWR)10の炉心11内には、多数の燃料集合体(燃料チャンネル)12が装荷され、燃料集合体12間の所要位置に局所領域中性子検出器(LPRM)13が設置される。中性子検出器13は、例えば16体の燃料集合体12を平面視正方形領域として、正方形領域の4つの頂点に設置される。
各中性子検出器13は4体の燃料集合体12がそれぞれ接しているので、中性子検出器13に隣接する4体の燃料集合体12の中性子束分布の平均値が反映される。16体の燃料集合体12の正方形領域の各頂点に設置される4本の中性子検出器(LPRM)12は、原子炉炉心11の上下方向、すなわち燃料集合体の軸方向に沿う鉛直方向(上下方向)に各々等間隔配置される。
図1は原子炉炉心12の局所的平断面を示す模式図であるが、この模式図に示すように、16体の燃料集合体12の中で中性子検出器13に接する(隣り合う)燃料集合体12は、No.1,No.4,No.13およびNo.16の4体のみであり、残りの12体の燃料集合体12は中性子検出器13,13間に非隣接状態で介在され、非隣接状態の燃料集合体12の中性子束を中性子検出器13で直接検出することはできない。
典型的な熱中性子炉における熱中性子の拡散距離は数cm程度であるのに対し、各燃料集合体12のサイズは各辺が10数cm、例えば15cm程度である。燃料集合体12のサイズは熱中性子の拡散距離に比べると充分に長い。したがって、非隣接状態にある燃料集合体12の中性子束変化を中性子検出器13で直接観測することは困難である。
ただ、中性子束変動は、空間的なモード分布を基本として変動することが知られており、この空間的なモード分布から中性子検出器(LPRM)13に隣り合うことのない非隣接燃料集合体12における中性子束変動を推定することは可能である。しかし、燃料集合体12の撓み等による流路閉塞等の局所性の強い異常事象時には空間的モードへの影響が小さく、やはり中性子束の検出は困難であることが予想される。
次に、沸騰水型原子炉10の原子炉炉心における局所的異常事象の検出の困難さを解析的に説明する。
この原子炉炉心11内の局所的異常事象の解析には、炉心部分を3次元(3D)で詳細に体系化し、また、燃料チャンネル(燃料集合体)12も1本ずつ個別に模擬可能な詳細動特性解析コードを使用した。
図2では、中性子検出器13に隣接したNo.4の燃料集合体12に局所的に反応度を投入して中性子束(出力)をステップ状に変化させた場合、No.4の燃料集合体12に最近接4本の中性子検出器13の応答例を示したものである。b検出器にはステップ状に増加した応答例(レベル)が現われ、中性子束の検出が可能であるが、他の中性子検出器13(a検出器,c検出器,d検出器)には微小な逆応答例が見られる。このように、原子炉炉心11内の局所外乱の場合、炉心11全体の基本モードが殆ど変化しないため、局所外乱近傍の中性子検出器13では応答が逆に現われる。
局所外乱近傍の中性子検出器(a,cおよびd検出器)13に現われる程度の微小応答では、実際の原子力プラントの場合、中性子検出器13に常に作用する揺らぎ(雑音)成分が相乗されるため、外乱近傍の応答レベルとの区別が難しく検出は極めて困難である。
図3は、どの中性子検出器13にも隣接しない、例えばNo.3の燃料集合体12に局所反応度を投入した例を示す。
この場合には、図3に示すように、全ての中性子検出器(a〜d検出器)13の応答レベルは微小となってしまい、中性子束の検出は殆ど不可能である。
図4は、全ての中性子検出器(a〜d検出器)13から最も離れた場所の、例えばNo.7の燃料集合体12に局所反応度を投入した例である。この場合には図3の場合と同様、全ての中性子検出器(a〜d検出器)13の応答レベルは微小となり、中性子束の検出は殆ど不可能といえる。
本実施形態では原子炉炉心11内の局所的な異常現象を検出し、監視することができる沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15を提供するものである。
この沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15は、原子炉炉心11内の局所的な異常現象(事象)を現状の中性子検出器13だけを用いて検出するために、各燃料集合体12における出力などの非観測データを推定し、局所的な異常事象を精度よく検知し、監視することができるものである。
この沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15では、非観測データを原子炉炉心の核熱水力動特性を記述する物理モデル(炉心動特性モデル)の内部変数の中に含める必要がある。
原子炉炉心11の核熱水力動特性モデル(物理モデル)の状態遷移式を表わすと、一般的に状態方程式は、
[数1]
dx/dt=AX+BU+Q ……(1)
Y=HX+R ……(2)
で表わされる。ここで、Xは内部変数、Uは外部からの操作変数、Qは内部雑音、Yは観測変数、Rは観測変数に加わる観測雑音である。
一般化された状態遷移式を、沸騰水型軽水炉の炉心部核熱水力動特性方程式として具体化すると次式で表わされる。
Figure 2007240464
個々の変数の意味は、次の変数表に表示される通りである。
Figure 2007240464
(3)式から(11)式は、一般化された沸騰水型軽水炉における炉心核熱水力動特性方程式である。すなわち、(3)式と(4)式は遅発中性子の効果を含めた中性子動特性方程式である。(5)式は中性子束変動に対して1次遅れで追従する減速材(冷却材)温度動特性方程式である。(6)式と(7)式は炉心ボイド変動の動特性方程式であり、減速材温度の変化および炉心流量の変化に対してボイドの輸送効果による2次遅れの効果を含んでいる。(6)式における最後の項のεαは各燃料集合体における局所的なノイズである。(8)式が炉心流量の動特性方程式であり、ボイド変動による冷却材の循環力の変動に対して1次遅れで追従するモデルである。(9)〜(11)式が減速材温度とボイドへの核定数の依存を表すものである。
これらの動特性方程式にカルマンフィルタを適用するに当って、2つの近似を導入する。1つ目は線形化であり、定常値からの偏差(変動分)をあらためてXとすると、以下の式で表わされる。
Figure 2007240464
ここで、最後の(18)式は内部変数から観測変数、たとえばLPRMなどの中性子検出器への変換を表す。本実施形態は、通常の処理流れを通報者とその受信者間の役割から示した図である。
また、以上の方程式群には様々な時定数が含まれており、最も小さな時定数に追従するためには極めて細かい時間ステップで更新する必要があるため、実用的な計算時間で炉心状態を更新するためには、(12)式の左辺に現れる時間微分項を無視する必要がある。これは一般的に即発跳躍近似と言われ、1$($は反応度を表す単位であり、1$は即発中性子だけで原子炉を臨界にするのに必要な反応度の値である)未満の小さな反応度変化に対しては有効であることが知られている。
(12)式の中性子動特性方程式から次式が導かれる。
Figure 2007240464
すなわち、(12)式の中性子動特性方程式は、(20)式のような空間結合パラメータを導入して、(19)式のように中性子束が容易に求まる形式に変換される。求まった中性子束から観測信号への変換が(26)式で行われる。
以上が原子炉炉心11の核熱水力動特性を記述する基本物理モデルの一例である。本物理モデルでは簡略化のため炉心鉛直方向は無視して、炉心断面での平均量を扱っている。
(20)式で求められた左辺の観測信号の数は高々数10であるのに対して、右辺の炉心内部変数の数は数百から千のオーダーになる。このため、(26)式で観測量(観測データ)から内部変数を推定する場合、少ない観測量から多くの内部変数状態を推定する典型的な逆問題であり、このままでは推定できない。このため、カルマンフィルタによる最尤推定法を導入してフィルタリングする。ここで、フィルタリングとは現時点までの観測量から、内部変数の現時点での最適な推定量を求める操作のことを意味する。
再び(1)式および(2)式の状態方程式に戻ると、状態内部変数Xは燃料集合体12毎に、遅発中性子先行核密度、冷却材温度、ボイド率、およびボイド率変化の微係数の4変数から構成される状態ベクトルである。すなわち、
[数5]
X=[c,T,α,α ……(27)
これに対してYは観測量、具体的にはLPRM信号と炉心流量であり、前者は図1に示したように、中性子検出器13を取り囲む4体の燃料集合体12における中性子束の平均値に比例した値になり、後者の観測量は1つだけになる。(1)式および(2)式を時間に対して差分化すると下記の式、すなわち(1a)式、(2a)式になる。
Figure 2007240464
すなわち、内部状態変数は(19)〜(25)式で記述される状態遷移ルールに基づいて1ステップ前の推定量から更新され、更新された内部状態変数から観測信号へと変換されるのが順問題である。
これに対して、より少数の観測量から内部状態を推定する逆問題に対して、カルマンフィルタを適用する処理手順を図5に示す。すなわち、現時点から1ステップ前の状態変数の推定が終わっているとする(ステップ1:S1)。この1ステップ前の推定量に現時点での操作量と内部雑音を、炉心内部の核熱水力動特性方程式に入力(ステップ2:S2)すると、現時点での内部変数量を予測できる(ステップ3:S3)。ここまでは、通常の動特性解析と同じである。現時点での観測量がわかっている場合に、この観測量から内部変数予測量を補正して最適な内部変数量が推定できる。すなわち、ステップ4(S4)において現時点での観測量と観測雑音を加え、推定誤差の分散を最小化するようなカルマンフィルタの処理を施して、現時点での内部変数量の推定値を求めることができる。
図5に示された処理を数式で表すと(28)式〜(36)式で表わされる。
これらの式からわかるように現時点での観測量(観測データ)と1ステップ前の内部状態推定量と予測誤差の分散行列だけから、現時点での内部状態変数が推定可能であり、それ以上過去の状態を覚えておく必要が無いことから、効率的な推定が可能である。
Figure 2007240464
このように構成された本実施形態の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15において、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成(推定)して、沸騰水型原子力プラントにおける原子炉炉心内の局所的な炉心状態推定を行なうことが可能になる。
この沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15は沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとして、原子炉炉心11内の中性子束変化を空間的に複数の領域、例えば、16体の燃料集合体12の平面視から構成される正方形領域毎に扱い、またその領域に対応した複数の燃料集合体12内でのボイド率変化や燃料温度変化を模擬して、観測データとして複数の中性子束検出器13からの観測(LPRM)信号を用いて、観測されていない中性子検出器信号や各燃料集合体での中性子束変化などを推定・再構成して原子炉炉心11内の異常状態の有無、異常位置、異常の程度を検出し、原子炉炉心状態監視を正確に精度よく行なうものである。
第1実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15は、炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成して、沸騰水型原子力プラントにおける原子炉炉心内の状態推定を行なうものである。
[第2の実施形態]
図6ないし図8は、本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第2実施形態を示すものである。
図6は、第1実施形態の図4に示された沸騰水型原子炉10の炉心11内の局所的な異常状態の例を改めて示すものである。
第2実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Aでは、原子炉炉心11に装荷される多数の燃料集合体12のうち、全ての中性子検出器(a〜d検出器)13から平均的に最も遠いNo.7の燃料集合体12で中性子束レベルが上昇した例を示す。
この場合、No.7の燃料集合体12の周辺の4つの中性子検出器(a〜d検出器)13では、第1実施形態に示すように、すなわち、図6(B)に示すように、中性子束レベルの上昇を検知し、検出することが困難である。
しかしながら、No.7の燃料集合体12の中性子束レベルは、図6(A)に点線fで示すように実際はステップ状に上昇している。図6(B)に示す中性子検出器13からの観測信号(観測データ)だけでなく、図6(A)に示すような非観測量である燃料集合体12の個々の中性子束レベルを推定し、推定した中性子束レベル(出力)を擬似観測信号fとして用いる。この擬似観測信号fを用いて原子炉炉心11の監視に用いれば、中性子検出器12からの観測信号では見過ごしてしまう原子炉炉心11の局所的異常事象を検知できる可能性がある。
原子炉炉心11の局所的異常事象、例えばNo.7の燃料集合体12の異常事象を、検知し、検出する模式図を図7に示す。
図7は、例えばNo.7の燃料集合体12の周辺全ての中性子検出器13、すなわちa〜d検出器からの中性子束レベルを物理量計測手段(中性子束監視手段)17で観測し、この観測信号を異常判断手段18に入力し、この異常判断手段18による通常監視が行なわれる。しかし、この異常判断手段18で演算処理される観測信号の信号レベル変化は図6(B)に示すように極く微小であり、異常検知の閾値未満である。
一方、物理量予測手段19により、燃料集合体12からの中性子束レベルを擬似観測信号として予測する。物理量予測手段19は第1実施形態で説明した炉心核熱水力動特性モデルとカルマンフィルタ予測の手法を組み合せて演算処理し、個々の燃料集合体12の出力(中性子束レベル)を予測したものである。個々の燃料集合体12の出力予測信号は推定信号として出力異常判断手段20に出力され、この出力異常判断手段20で図6(A)に示すようにNo.7の燃料集合体12の出力(中性子束レベル)信号fから、そのレベル値の異常検知閾値を超過しているか否かの判断を行なうことができる。
図7では、中性子検出器(LPRM)13からの観測信号を演算処理する通常監視手段22と、各燃料集合体12の個々の出力を予測した模擬観測信号(出力推定信号)を演算処理する詳細監視手段23を並行的に作用させ、信号選択手段24を介して異常検知手段25に送り、この異常検知手段25により原子炉炉心11内の局所的異常の有無を判断することができる。通常監視手段22は中性子検出器13で実際に計測された観測信号による実測監視手段であり、詳細監視手段23は、非観測量である個々の燃料集合体12の中性子束レベルを推定した推定監視手段である。これらの監視手段22,23は中央演算装置やパソコン等からなるコンピュータに内蔵される。
本実施形態の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Aは、通常監視手段22により中性子検出器13からの観測信号に基づいて行なわれる通常監視と、詳細監視手段23により個々の燃料集合体12からの出力を予測した擬似観測信号に基づいて行なわれる詳細監視を並行して行ない、いずれかに異常が検知された場合に、異常検知手段25が異常であると判定するものである。
図8は、詳細監視手段25により個々の燃料集合体12の出力応答予測を実施した例を示す。
個々の燃料集合体12の出力(中性子束レベル)の予測は、物理モデルである炉心核熱水力動特性モデルとカルマンフィルタ予測の手法を組み合せて行なわれる。図8には8×8本の燃料集合体12の出力応答を、丸印で示した4体の中性子検出器13で検出された観測(LPRM)信号と炉心流量から推定される擬似体系の例を示す。
図8に示された擬似体系の例では、左上部分に出力不安定な燃料集合体12が局在している例である。中性子検出器13に隣接する燃料集合体12だけでなく、その周辺の燃料集合体の不安定現象を予測できていることがわかる。
第2実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Aは、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成(推定)して、沸騰水型原子力プラントにおける炉心内の状態推定を行なう際、非観測データから沸騰水型原子力プラントの炉心内部状態を推定して、沸騰水型原子力プラントの原子炉炉心11における状態異常を監視するようにしたものである。
また、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとして、原子炉炉心11内の中性子束変化を空間的に複数の領域、例えば16体の燃料集合体12で構成される平面視正方形領域で扱い、またその領域に対応した複数の燃料集合体12内でのボイド率変化や燃料温度変化を模擬して、観測データとして複数の中性子検出器13からの観測信号を用い、さらに観測されていない中性子検出器信号や各燃料集合体12での中性子束変化などを推定・再構成し、原子炉炉心11の局所的な状態異常を検知し、監視するものである。
この沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Aにおいては、第1実施形態に示された非観測データから沸騰水型原子力プラントの炉心内部状態を推定して、沸騰水型原子力プラントの原子炉炉心11における局所的な状態異常を監視することにより、観測信号(観測データ)だけでは検知できないような異常状態まで検知できることが可能になる。
[第3の実施形態]
図9および図10は、本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第3実施形態を示すものである。
沸騰水型原子炉の原子炉炉心内の局所的異常状態を検知し、検出するのに、第1実施形態のように(19)〜(26)式で表わされる炉心モデルを用いた場合、膨大な計算式が必要となるが、この実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Bは、原子炉炉心11の内部状態を推定する際に、分散推定処理を効率的に行ない、計算時間を大幅に短縮し、原子炉炉心11内の異常状態の検出を実時間監視が可能なようにしたものである。
原子炉炉心11において(N×N)セルの正方形領域を対象とすると、計算に用いられる内部変数の個数は、各燃料集合体12で中性子検出器13からの4個と炉心流量が1個なので、原子炉炉心11全体では[4×(N×N)+1]個になる。すなわち、(1a)式、(2a)式の内部変数ベクトルXの次元は[4×(N×N)+1]次元である。第2実施形態で示した8×8セル領域では257次元になる。
この場合、(28)式の分散は(257×257)次元規模の大規模行列となる。また、(28)式から分散の推定には内部状態ベクトル次元の3乗に比例した回数、この場合は約1700万回もの演算を要することがわかる。
原子炉炉心11内の局所的異常状態の検出には、膨大な計算処理が必要となる事情を図9に示す。図9では、原子炉炉心11内の局所的異常状態の検出に用いられるカルマンフィルタ計算における分散の推定に膨大な計算処理を必要とすることがわかる。特に、原子炉炉心11の内部状態推定を行なうに際しては(35)式の尤度を計算して、この尤度が最大になるように、図9に示された原子炉炉心11の局所的異常状態を検出する処理ステップを繰り返し行なう必要があるので、この分散推定の処理を如何に効率的に行なうことができるかが、本手法を実時間監視に適用するに当っては重要な課題となる。
そこで、例えば分散行列を対角化すると分散の演算回数はMの2乗に比例するようになり、計算処理においてかなり高速化が期待できる。すなわち、空間の白色化を行なうことにより、(N×N)セルの各セルを空間的に独立したものとして扱う。これは(20)式で拡散係数をゼロとおくことになる。炉心が炉心流量のみで結合したものであれば、この仮定は採用できるが、現実の炉心では中性子束の空間結合は無視できないことからこの仮定は採用できない。
次に、(2a)式の観測行列Hを特異値分解することによる、観測空間を部分空間化することにより内部状態変数の次元Mを縮約(簡素化)させる方法が考えられる。沸騰水型軽水炉の中性子検出器13は既に述べたように、熱中性子の中性子拡散距離が短いことから観測できる範囲が限られている。観測空間自体が局在化していることから特異値分解により部分空間化することの意味がなくなる。
そこで、状態変数自体を固有関数展開して、状態変数空間自体を縮約してしまう手法を採用する。
ここで、固有関数展開行列をE(L,M)とする。Lが縮約後の次元であり、一般的にはL≪M、すなわちLをMよりかなり小数化しなければ縮約による計算の効率化を期待できない。すると、固有関数展開後のL次元の内部変数ベクトルは、
Figure 2007240464
なお、(40)式の一番右にあるE−1はEの一般化逆行列であり、次式で近似的に求められる。
Figure 2007240464
一般化逆行列による近似を導入したのは、Eが正方行列ではないため、その逆行列が一般的には存在しないからである。
以上の固有関数展開による内部状態の縮約による各燃料集合体12の出力予測の流れを図10に示す。すなわち、(37)式の固有関数展開を内部変数に施し、(41)式から固有関数展開行列の一般化逆行列を求める。そして、縮約された内部状態に対して燃料集合体12の出力予測値を(37)式、カルマンゲイン、分散を(38)式、(39)式および(40)式からそれぞれ推定する。
ここで、炉心モデルから状態量の予測値を(42)式で正確に求め、また分散行列の予測値を(43)式で求める。ここで、状態変数の固有関数展開による縮約で大幅に処理量が減少していることになる。
Figure 2007240464
次の処理ステップでカルマンフィルタを更新して、縮約前のカルマンゲインを推定して原子炉炉心11の内部状態の予測を行ない、同時に尤度を計算する。
Figure 2007240464
第3実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Bは、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成して、沸騰水型原子力プラントにおける原子炉炉心11内の状態推定を行なうものである。その場合において、カルマンフィルタをコンピュータ(計算機)を用いて離散的に解く際に、解法(演算処理)を高速化するために内部状態変数を固有関数で展開することにより内部状態の次元を低減化させるようにしたものである。
また、沸騰水型原子力プラントの原子炉炉心11の内部状態変数を固有関数展開ことにより内部状態の次元を低減化した際に、内部状態を復元するに際して、一般化逆行列を用いるようにしたものである。
この沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Bの具体例および効果は、第4実施形態において説明する。
第3実施形態の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Bは、固有関数展開法と一般化逆行列の計算式を導入することにより、カルマンフィルタを計算するための計算処理量を大幅に減らすことができ、原子炉炉心11内の炉心状態監視を現実的な計算時間で実行することが可能になる。
[第4の実施形態]
図11ないし図13は、本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第4実施形態を示すものである。
第4実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Cは、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成して、沸騰水型原子力プラントにおける原子炉炉心11内の状態推定を行なうものであり、カルマンフィルタをコンピュータを用いて離散的に解く場合に、解法(演算処理)を高速化するために内部状態変数を固有関数で展開することにより内部状態の次元を低減化し、原子炉炉心11の内部状態変数を固有関数展開することにより内部状態の次元を低減化した際に、内部状態を復元するに際して、一般化逆行列を用いるようにしたものである。
また、原子炉炉心11の内部状態変数を固有関数で展開し、ウェーブレット関数を用いるに際して、特に燃料集合体の平均出力などの炉心軸方向で平均化した内部パラメータを推定する場合には2次元のウェーブレット関数を用いるようしにたものである。
原子炉炉心11の内部状態変数をどのような固有関数を用いて展開するかは、対象とする体系の次元や境界条件などにより依存する。例えば、原子炉炉心11全体の中性子束を固有値展開するのであれば、中性子バランスの固有値方程式から得られる固有関数、すなわち、中性子束の空間モードが一般的であるが、対象を各燃料集合体12をセル単位とした局所変動を考慮するとなると、一般的に極めて高次のモードまで考慮せざるを得なくなる。
そこで、信号処理や画像圧縮などに広く利用されているウェーブレット関数を用いて、スケーリングされた直交ウェーブレット空間による部分空間の直交和により、元の信号空間が再構成される機能を用いる。この信号空間再構成機能を用いて、沸騰水型原子力プラントにおける原子炉炉心11内の状態推定を行なう。
第4実施形態の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Cにおいては、2次元の炉心動特性モデルを用いているので、2次元のウェーブレット関数を適用した例を述べる。モデル体系が1次元や3次元であってもそれぞれ1次元、3次元のウェーブレット関数を用いればよい。
ウェーブレット関数としても様々な関数が提案されているが、ここでは最も単純な関数系である±1の2値をとる直交行列であるアダマール行列の拡張系であるHaar関数系の2次元Haar関数を採用する。
1次元のHaar関数列は、区間[0,a]において以下の式で生成される。
Figure 2007240464
2次元への拡張も同様であり、2次元Haar関数の、例えば8×8セル体系へ適用した場合の分布パターンを図11に示す。空間的に一様な分布が最も基本的な関数となり、高次になるに従い分割が(2,1)、(1,2)、…、(8,1)、(1,8)…と進んで行き、最も高次の場合(8,8)分割と市松模様になってゆく。これらは全て互いに直交したパターンになっている。
また、4×4セル体系において、65次元から37次元に縮約(簡素化)する際の固有関数行列の例を図12に示す。固有関数行列E(9,16)を基本として、固有関数行列E(37、65)はそれを対角線上に4個配置した分布になっている。最後の1は原子炉炉心11で1個しかないパラメータである炉心流量に対するものである。
8×8セル体系を用いた具体的な計算例を図13に示す。この場合、固有関数展開により257次元から65次元に縮約している。これにより計算時間は約11分の1以下に短縮される。図13には、縮約せずに厳密な計算を行った場合の誤差と、固有関数展開を用いた場合の誤差を比較して示すが、両者にはほとんど差の無いことがわかる。予測誤差の標準偏差および尤度を比較しても以下の通りであり、固有関数展開法でも十分な精度の得られることがわかる。
[数13]
厳密な手法 :尤度=9229 予測誤差標準偏差=0.0029
固有関数展開法:尤度=9236 予測誤差標準偏差=0.0030
このように構成された本実施形態において、沸騰水型原子炉状態監視装置15Cで固有関数としてウェーブレット関数を導入することにより、予測精度をほとんど損なうことなく、カルマンフィルタを計算するための処理量を大幅に減らすことができ、炉心状態監視を現実的な計算時間で実行することが可能になる。
[第5の実施形態]
図14および図15は本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第5実施形態を示すものである。
この第5実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Dは、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成して、沸騰水型原子力プラントにおける原子炉炉心11内の状態推定を行なうものである。
この原子炉炉心11内の状態推定を行なうために、カルマンフィルタをコンピュータ(計算機)を用いて離散的に解く場合に、解法を高速化するために内部状態変数を固有関数で展開することにより内部状態の次元を低減化させ、内部状態変数の状態遷移モデルを固有関数で展開することにより状態遷移モデルを縮約するようにしたものである。
図14は、原子炉炉心11の炉心状態監視の処理の流れを示すものであり、(37)式で導入した内部状態変数の固有関数展開を内部状態の遷移方程式(42)式にも適用する。すなわち、内部状態遷移方程式として(42)式の代わりに次の式を用いる。
Figure 2007240464
すなわち、固有関数展開されL次元に縮約された状態遷移方程式を解くことになる。この内部状態変数から予測される観測値は、(45)式の代わりに次の式になる。
Figure 2007240464
従って、カルマンゲインにより更新される内部状態変数は(48)式の代わりに、
Figure 2007240464
Figure 2007240464
図15には、沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Dにおける原子炉炉心11の炉心状態監視に、8×8セルを用いた予測誤差を厳密な解法と比較した例を示す。予測誤差は図13に示された例とほぼ同じであり、精度的には問題ないことがわかる。尤度は9236、予測誤差の標準偏差は0.0030であり、定量的にも問題ないことがわかる。この解析手法を適用した場合の計算時間は、第4実施形態に示された例に比べて約30%高速化している。
このように構成された第5実施形態において、内部状態遷移方程式に対しても固有関数展開による縮約を適用することにより、予測精度をほとんど損なうことなく、カルマンフィルタを計算するための処理量を減らすことにより、炉心状態監視をより現実的な計算時間で実行することが可能になる。
[第6の実施形態]
図16および図17は、本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第6実施形態を示すものである。
この第6実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Eは、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成して、沸騰水型原子力プラントにおける原子炉炉心11内の状態推定を行なうものである。
沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルにおいて、原子炉炉心11の内部雑音を定義するに際して、その雑音が寄与する沸騰水型原子力プラント炉心範囲に応じて雑音を分割するようにしたものである。
図16に示すように、原子炉炉心11における内部雑音源は複数存在する。その中でも、例えば炉心流量や炉心圧力などは影響が炉心全体に均一に影響しやすく、原子炉炉心11にとってはグローバル雑音とみなせる。
これに対して、個々の燃料集合体12内の揺らぎはボイドや冷却材温度など燃料集合体12内に生じる局所的な雑音であり、ローカル雑音とみなせる。したがって、内部状態遷移式に内部雑音源の効果を含む際には、このような沸騰水型原子力プラント特性に基づいた雑音源の分割設定を行なう必要がある。
外部操作がない場合の状態遷移方程式は、
Figure 2007240464
今回採用した沸騰水型原子炉10の物理モデルである炉心動特性モデルを表わす(19)〜(26)式では、1〜Nが(遅発)中性子、N+1〜2Nが冷却材温度、2N+1〜3Nがボイド速度、3N+1〜4Nがボイド率、4N+1=Mが炉心流量であり、ボイド速度に局所雑音源、炉心流量にグローバル雑音源を加えている。従って、それぞれの雑音の大きさを(標準偏差)σとして、Gの構造は次式のようになる。
Figure 2007240464
沸騰水型軽水炉10の場合は、原子炉炉心11に投入される操作量以外の反応度としては、ボイド反応度と温度(燃料、冷却材)反応度が主たるものであり、通常運転時の反応度としては前者の方が大きいため、(55)式のような雑音源を考慮した。
これに対して、例えば炉内圧力を介した効果が大きいような異常事象を対象とするような場合には、圧力変化の方程式を4N+2番目に加えて、グローバル雑音源を考慮し、圧力変化によるボイド変動の効果を(23)式に追加することにより、圧力による効果の大きな過渡事象の監視に適用することが可能となる。
図17にグローバルノイズ成分を考慮しない場合の予測結果を示すが、この図から予測精度がかなり悪化していることがわかる。尤度は負の値になり、予測誤差の標準偏差も10倍になり定量的にも予測精度は大きく低下している。これはグローバルノイズ源に起因した変動が予測できずに欠落しているためであり、図17の結果はローカルノイズに起因した変動だけを予測してしまっているためである。
本実施形態に示される沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Eにおいては、内部雑音源を対象とする原子力プラント過渡事象の特性を考慮した上で、適切に設定することによりそれぞれのノイズ源に基づく過渡応答の予測精度を向上させることが可能となり、非観測な内部状態変数の予測精度も向上することにより、炉心状態監視を高精度で行なうことが可能となる。
[第7の実施形態]
図18ないし図20は、本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第7実施形態を示すものである。
この実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Fは、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成して、沸騰水型原子力プラントにおける原子炉炉心11内の状態推定を行なうものである。
沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとして、原子炉炉心11内の中性子束変化を空間的に複数の領域、例えば16体の燃料集合体12で構成される平面視正方形領域毎に扱い、またその領域に対応した複数の燃料集合体12内でのボイド率変化や燃料温度変化を模擬して、観測データとして複数の中性子検出器13からの観測(LPRM)信号を用いて、観測されていない中性子検出器信号や各燃料集合体での中性子束変化などを推定・再構成し、推測された観測されていない中性子検出器信号や各燃料集合体12での中性子束変化から燃料集合体12内で局所的に発生している出力変動の異常監視や、推測された中性子束変化の減衰特性を推定することにより原子炉炉心11の安定性を監視するものである。
図7に示された第2実施形態の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Aでは、観測信号では検知できないような異常事象の検知手順について述べた。特に沸騰水型軽水炉の場合は燃料チャンネル12内が水・蒸気二相状態に起因する密度波振動と呼ばれる不安定事象が内在する。こうした不安定事象は観測信号を統計処理することにより線形安定性の指標である減幅比を算出することが可能であり、減幅比を実時間で逐次的に評価することによりオンラインで安定性を監視できる安定性モニタが開発されている。
減幅比の推定精度は中性子検出器13からの観測信号のS/N比に依存することが大きく、特にS/N比の悪い観測信号から減幅比を推定すると実際より低めに推定してしまうことがある。例えば、特許文献4では中性子束の空間分布のモード成分を空間的なフィルタとすることにより、そのモード成分を選択的に抽出することにより実質的にS/N比を向上させて、減幅比の推定精度を上げている。
本実施形態の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Fでは、図7および図8に示したように、詳細監視手段23により非観測信号を推定することにより、観測信号では検出できなかった炉心安定度の悪化を検出することが可能である。
第7実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Fは、第2実施形態に示された監視装置15Aを応用し、不安定性の検出に適用したもので、この場合の処理フロー手順を図18に示す。
これまで、沸騰水型原子炉10の炉心安定性を監視する場合には、観測信号であるAPRMやLPRMの信号から逐次的に減幅比や共振周波数、あるいは振幅といった炉心安定性に関連した指標を算出して、その算出値から安定度の推移を判定していた。
この沸騰水型原子炉10の炉心安定性の監視は、図18の一番上の行における計測安定性監視手段30の通常安定性監視手段31による処理であり、ここで算出した安定性監視指標が不安定性判定閾値より低ければ安定であると判定される。
これに対して、本実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心手段監視装置15Fを導入し、図18の一番下の行に示すように、物理量予測手段19で推定された非観測信号に対しても同様の安定性監視指標算出処理を推定安定性監視手段33の詳細安定性監視手段34で行ない、その結果が不安定性判定閾値を超えた場合には、信号選択手段35を介して安定性検知手段36により観測信号の結果が閾値未満であっても、不安定性が検知されたと判断することができる。
図19は、本実施形態の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Fにおける原子炉炉心11の炉心状態、例えば炉心安定性の監視に適用した例を示すものである。
図19に示す例では、沸騰水型原子炉10の原子炉炉心11が多数の燃料集合体12で構成され、このうち4つの中性子検出器(a〜d検出器)13で囲まれた16体の燃料集合体12で構成される平面視正方形領域を例にとって説明する。
この正方形領域の16体の燃料集合体12のうち、No.7の燃料集合体12だけが局所的に振動を開始した場合、その周囲の4体の中性子検出器13からの検出器信号の応答は比較的微小でS/N比が悪いため、計測安定性監視手段30による観測(LPRM)信号から不安定性の検知は困難で、安定と判定される可能性が大きい。
これに対して、本実施形態の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Fは、非観測信号であるNo.7の燃料集合体12の応答が詳細運転性監視手段34で予測することができる。その応答から炉心安定度を算出することにより振動を検知できる可能性が大きく、両者の判定からOR回路である信号選択手段35により監視信号を選択することにより、不安定性が発生したと判定することが可能である。
図20は、第7実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Fを用いて原子炉炉心11の炉心状態を監視し、炉心安定性を検出した例を示す。
原子炉炉心状態の検出体系は、図19に示した検出体系と異ならない。中性子検出器13からの観測信号(LPRM信号)は物理量計測手段19で検出し、この観測信号を減幅比算出手段38に入力して減幅比を算出する。観測信号から算出した減幅比は不安定検知の一つの基準である、例えば0.8に達していないが、カルマンフィルタで予測した中心部右上のセル出力から算出した減幅比は0.8を超えており、またその振幅も明らかに他のセルの振幅に比べて大きい。
この沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Fにおいては、推測安定性監視手段33で非観測信号を予測してその応答から炉心の安定性を逐次的に評価することにより、計測安定性監視手段30による観測信号だけからは安定と判定されるような局所的な不安定事象を検知する可能性が格段に向上することにより、原子炉炉心状態監視を高精度で行なうことが可能となる。
[第8の実施形態]
図21ないし図24は、本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第8実施形態を示すものである。
この実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Gは、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成して、沸騰水型原子力プラントにおける原子炉炉心11内の状態推定を行なうものである。
この沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Gでは、沸騰水型原子力プラントの物理モデルである炉心動特性モデルとして、原子炉炉心11内の中性子束変化を空間的に複数の領域、例えば16体の燃料集合体12で構成される正方形領域毎に扱い、またその領域に対応した複数の燃料集合体12内でのボイド率変化や燃料温度変化を模擬して、観測データとして複数の中性子検出器13信号を用いて、観測されていない中性子検出器信号や各燃料集合体12での中性子束変化などを推定・再構成している。
観測されていない中性子検出器信号や各燃料集合体での中性子束変化から燃料集合体内で局所的に発生している出力変動の異常監視や、推測された中性子束変化の減衰特性を推定することにより炉心の安定性を監視し、カルマンフィルタを求めるに際して得られる尤度を最大にするように、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルにおける重要パラメータを推定することにより、そのパラメータの基準状態からの変化を監視し、炉心の状態を迅速かつ正確に精度よく監視するものである。
この沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Gは、実沸騰水型原子力プラントの炉心挙動を最尤法により推定された沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルの重要パラメータにより、炉心動特性モデルのチューニングを行ない、原子炉炉心11の炉心状態推定精度を向上させ得るものである。
原子炉炉心11の炉心状態を予測する際、予測精度の基準として(36)式の尤度を計算している。原子炉炉心状態の通常の監視においては、既に与えられた物理モデルパラメータや雑音源強度を用いて予測を行っている。予測に用いたこれらのパラメータは、本来は炉心状態の変化に伴い同時に変動してゆくものが含まれている。原子炉炉心11の炉心状態の変化で変動するモデルパラメータを実際の炉心状態に合うようにパラメータチューニングすることにより、(36)式の尤度は大きくなってゆく。逆に、尤度がなるべく大きくなるようにモデルパラメータをチューニングできれば、炉心の物理モデルの記述精度はそれだけ向上することになる。
(36)式の尤度をなるべく大きくするように(28)式の状態遷移行列に含まれるパラメータや、(54)式の雑音源行列の成分強度をチューニングすることにより、より実機の炉心状態に近い物理モデルを得ることができる。
以上の手続きの流れは、図21で示すように表われる。炉心動特性モデル、カルマンフィルタ更新、尤度計算の流れは図5と異ならないが、ここでは予め設定された反復回数の中で、(36)式の尤度が最大になるようにモデルパラメータの変更を行ない、モデルチューニングを行なうことが特徴である。
すなわち、図21のステップ5(S5)で尤度の比較を行ない、尤度が最大でなければステップ6(S6)でパラメータを変更して、再度ステップ2(S2)からステップ4(S4)まで処理を進めて、再び尤度の比較を行なう処理を、予め設定された繰り返し回数の範囲内で尤度が最大になるまで繰り返す。最適パラメータ探索には、非線形計画法などの汎用の最適化手法が用いられる。
沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Gにおける次の処理ステップの流れを図22に示す。
図22は、パラメータ更新以前の状態、あるいは予め設定された基準状態における注目監視パラメータの値を基準値として設定し、更新されたパラメータの値との比較をステップ7で行なう。ここで両者の差を、予め設定した異常判定閾値とステップ8で比較を行ない、閾値未満であれば正常、閾値以上であれば異常であるとの判定が可能となる。これがカルマンフィルタの最大尤度から推定した物理パラメータを監視することによる原子炉炉心11の炉心状態監視法の基本の流れである。
次に、沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Gの実施例を図23に示す。
図23は、原子炉炉心の炉心状態監視を行なう1つの基本的な流れであり、図5の第1の実施形態に対して、最適化によりモデルチューニングされた炉心動特性モデルを用いた炉心状態監視を行なうことが特徴である。
図24にチューニング前後のパラメータを用いて予測を行った際の誤差の比較を示すが、図24からモデルチューニングにより予測誤差が低下し、改善されていることがわかる。
このように構成された本実施形態において、カルマンフィルタの尤度を最大にするように炉心パラメータの更新を行ない、そのパラメータの基準値に対する変化を監視することにより炉心状態監視が行え、また実機の原子力プラント状態に最適にフィットするように更新されパラメータにより炉心動特性モデルをチューニングすることにより、炉心状態監視の精度が向上することにより、炉心状態監視を高精度で行なうことが可能となる。
[第9の実施形態]
図25および図26は、本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第9実施形態を示すものである。
この実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Hは、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成して、沸騰水型原子力プラントにおける炉心内の状態推定を行なうもので、図21および図22に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Gを改良したものである。
この沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Hにおいては、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとして、原子炉炉心11内の中性子束変化を空間的に複数の領域、例えば16体の燃料集合体12からなる平面視正方形領域毎に扱い、またその領域に対応した複数の燃料集合体12内でのボイド率変化や燃料温度変化を模擬して、観測データとして複数の中性子束検出器信号を用いて、観測されていない中性子検出器信号や各燃料集合体での中性子束変化などを推定・再構成する。
そして、推測された観測されていない中性子検出器信号や各燃料集合体12での中性子束変化から燃料集合体12内で局所的に発生している出力変動の異常監視や、推測された中性子束変化の減衰特性を推定することにより炉心の安定性を監視し、さらに、カルマンフィルタを求めるに際して得られる尤度を最大にするように、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルにおける重要パラメータを推定することにより、そのパラメータの基準状態からの変化を監視することにより、炉心の状態を監視する。
本実施形態に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Hでは、炉心動特性モデルの重要パラメータとして沸騰水型原子炉の炉心安定性に関係したパラメータを推定することにより、そのパラメータの基準状態からの変化を監視することにより、炉心の安定性を監視することができる。
原子炉炉心11の炉心安定性に関係するパラメータとしては、(19)〜(26)式において、反応度係数、遅発中性子先行核密度割合、熱伝導時定数、ボイドスィープ定数などがあげられる。これらの中で、特に局所的な不安定性に影響するのはボイドスィープ定数、中でも減衰定数ζである。線形なシステムを考えると減衰定数は減幅比γと次式の1対1対応で互いに結び付けられる。
Figure 2007240464
そこで図25のような手順で炉心安定性監視を行なう。すなわち、ステップ9で減衰定数から(56)式に基づいて減幅比へ変換を行ない、ステップ10で基準の減幅比との比較を行なう。そしてステップ11において、基準値からの変化量、あるいは更新された減幅比が予め設定された閾値を超えれば不安定と判断する。
(56)式を用いるのは(23)式のようなボイドスィープモデルを用いた場合であり、他のモデルを用いた場合にはそれに対応した変換方式がある。また、(56)式そのものを用いる場合と、状態遷移行列Fの固有値解析から求める方法がある。状態遷移行列Fから固有値を求めると炉心安定性に支配的な極の固有値が求められる。
炉心安定性の支配的な極の固有値、すなわち、複素固有値の実数部が負であれば最もその絶対値が小さく、0に近い固有値が支配的である。正の場合は全て不安定極になる。一般的には発振前の観測信号では検知困難な場合の安定性悪化を監視するので、支配極は複素固有値の実部が最もゼロに近い極になるので、その極の固有値から減幅比は直接変換できる。すなわち、支配極固有値の実部の絶対値をσ、虚部の絶対値をωとすれば、減幅比は次式で求められる。
Figure 2007240464
(57)式からσ>0であれば、γ>1、となり発振になることがわかる。
本実施形態における沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Hの処理の流れを図26に示す。図26では、ステップ12で状態遷移行列の固有値を求める。求まった固有値の中からステップ13で不安定性の支配極の固有値を探索する。最後にステップ14で求まった支配極固有値から(57)式に従い、減幅比に変換する。減幅比が求まれば、後は図25のステップ10、ステップ11と同じ処理で不安定化検出の判定を行なう。
このように構成された本実施形態においては、カルマンフィルタにより現状の炉心状態を表現するのに最適にチューニングされた炉心動特性モデルの、炉心安定性に関連した炉心パラメータの変化を監視することにより、炉心安定性監視の精度が向上することにより、炉心状態監視を高精度で行なうことが可能となる。
[第10の実施形態]
図27ないし図29は、本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第10実施形態を示すものである。
この実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Iは、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成して、沸騰水型原子力プラントにおける原子炉炉心11内の状態推定を行なうようにしたものである。
沸騰水型原子力プラントの原子炉炉心11の内部状態変数を固有関数展開するに際して、計算の簡素化のために固有関数としてウェーブレット関数を用いる一方、固有関数としてウェーブレット関数を用いるに際して、特に核燃料集合体の平均出力などの炉心軸方向で平均化した内部パラメータを推定する場合には2次元のウェーブレット関数を用いて内部状態変数を縮約し、高速演算処理を行なう。
沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとして、原子炉炉心11内の中性子束変化を空間的に複数の領域、例えば16体の燃料集合体12で構成される正方形領域で扱い、またその領域に対応した複数の燃料集合体12内でのボイド率変化や燃料温度変化を模擬して、観測データとして複数の中性子束検出器信号を用いて、観測されていない中性子検出器信号や各燃料集合体での中性子束変化などを推定・再構成している。
第5実施形態の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Iにおいては、推測された観測されていない中性子検出器信号や各燃料集合体12での中性子束変化から燃料集合体12内で局所的に発生している出力変動の異常監視や、推測された中性子束変化の減衰特性を推定することにより炉心の安定性を監視している。炉心の安定性の監視には、カルマンフィルタを求めるに際して得られる尤度を最大にするように、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルにおける重要パラメータを推定することにより、そのパラメータの基準状態からの変化を監視することにより、炉心の状態を監視するものである。
また、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルにおいて、原子炉炉心11の内部雑音を定義するに際して、その雑音が寄与する沸騰水型原子力プラント炉心範囲に応じて雑音を分割しているが、分割化された内部雑音において、局所的な変動の駆動源となる雑音の強度の基準状態からの変化を監視することにより、原子炉炉心11内における局所的な変動現象を監視するようになっている。
この沸騰水型原子力プラントにおいて、原子炉炉心11の内部雑音源の与え方の導入に際して、(19)〜(26)式を基本の炉心動特性モデルとして採用し、ローカルなボイド雑音源とグローバルな炉心流量雑音源を仮定した場合の内部雑音源構造行列は(55)式のようになる。すなわち、独立な雑音源強度の分布した対角行列である。この独立な雑音源強度をチューニングパラメータとして、最大尤度が得られるような雑音源強度分布を推定する。
本実施形態における沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Iの処理の流れを図27に示す。基本的には図21のパラメータチューニングと同じ手順であり、非線形計画法などの最適化手法を用いて、ある繰り返し回数内で尤度が最大になるような雑音源強度分布を推定する。基準状態における雑音源強度分布が推定されているとして、図21のステップ1からステップ6を繰り返す。図21との違いは、モデルパラメータが内部雑音源分布に変わるだけである。監視対象とする炉心状態に対する最適な内部雑音源分布がステップ15で推定されれば、基準状態の雑音源分布と比較をステップ16で行ない、その変化量、あるいは雑音源強度の絶対値が異常判定の設定値を超えればステップ17で異常と判定する。更に異常と判定された場合には、その雑音源の種類や場所をステップ18で特定する。
図28では中心より左上の例えば、(3,3)の燃料集合体12における内部雑音強度が異常に上昇した場合、基準状態における内部雑音源強度を仮定した場合の予測結果を示す。この場合は、中性子検出器13からの観測信号の振幅自体が増大しているため、その周辺の複数の燃料集合体で均一に振幅の増大を予測している。したがって、原子炉炉心11内の異常の発生した(3,3)の燃料集合体12の推定誤差は大きなものになっている。これに対して、図27の処理手順で異常燃料集合体における雑音源強度をチューニングした場合の予測結果を図29に示す。図29では異常の発生した燃料集合体12の振幅を正しく推定しており、従って推定誤差も減少していることがわかる。
このように構成された本実施形態の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Iにおいて、カルマンフィルタにより現状の原子炉炉心11状態を表現するのに最適にチューニングされた炉心動特性モデル内部の雑音源強度分布から原子炉炉心11内の局所的な異常現象を検出することが可能となる。
[第11の実施形態]
図30および図31は、本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第11実施形態を示すものである。
この実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Jは、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成して推定し、沸騰水型原子力プラントにおける炉心内の状態推定を行なうようにしたものである。
沸騰水型原子力プラントの原子炉炉心11の内部状態変数を固有関数展開するに際して、計算の簡素化のために固有関数としてウェーブレット関数を用いる一方、固有関数としてウェーブレット関数を用いるに際して、特に核燃料集合体の平均出力などの炉心軸方向で平均化した内部パラメータを推定する場合には2次元のウェーブレット関数を用いて内部状態変数を縮約し、高速演算処理を行なう。
沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとして、原子炉炉心11内の中性子束変化を空間的に複数の領域、例えば16体の燃料集合体12で構成される平面視正方形領域で扱い、またその領域に対応した複数の燃料集合体12内でのボイド率変化や燃料温度変化を模擬して、観測データとして複数の中性子束検出器信号を用いて、観測されていない中性子検出器信号や各燃料集合体での中性子束変化などを推定・再構成している。
また、推測された観測されていない中性子検出器信号や各燃料集合体12での中性子束変化から燃料集合体12内で局所的に発生している出力変動の異常監視や、推測された中性子束変化の減衰特性を推定することにより炉心の安定性を監視する一方、コンピュータを用いて離散的にカルマンフィルタを求めるに際して得られる尤度を最大にするように、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルにおける重要パラメータを推定することにより、そのパラメータの基準状態からの変化を監視することにより、炉心の状態を監視するものである。
さらに、この沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Jは、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルにおいて、原子炉炉心11のシステムの内部雑音を定義するに際して、その雑音が寄与する沸騰水型原子力プラント炉心範囲に応じて分割された内部雑音を、重要(キー)パラメータとして、局所的な変動の駆動源となる雑音の強度の基準状態からの変化を監視することにより、原子炉炉心11内における局所的な変動現象を監視する一方、内部雑音源強度を推定するに当たり、運転状態と内部雑音源強度分布の相関関係をあらかじめ求めておき、その相関関係と任意の運転状態で推定した内部雑音源とを比較することにより炉心の異常状態を検出するようしにたものである。
図30に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Jにおいて、原子炉炉心11の内部雑音源分布は運転状態により変化するが、通常運転時には内部雑音波変化には一定の関係がある。例えば、炉心流量雑音はインターナルポンプの強制循環時には運転状態にほとんど依存せずほぼ一定であるが、ポンプが停止した自然循環状態では有意に低下する。また、ボイド雑音は一般的には定格運転状態で最大で、出力や流量の低下に対しては単調に減少する傾向にある。
そこで、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルで用いる原子炉内の内部雑音の通常運転時の相関関係を予め用意しておく。炉心流量のような観測信号のあるものは運転時に測定した定常雑音データから求めれば良い。ボイド雑音のような非観測雑音に関しては、第10実施形態の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Iで述べた処理手順により最適な雑音源強度分布を、実機の運転状態ごとに求めておけばよい。
以上のように求めた沸騰水型原子力プラントの通常運転時、すなわち正常時の雑音源強度分布と運転状態、例えば出力と流量、再循環モードなどとの相関関係を求めておき、データベースとして用意しておく。そして、任意の運転時の内部雑音源強度推定値をその相関関係と比較して、その関係からある閾値を超えて離れた場合には異常であると判定する。
図30は、第11実施形態に示された沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Jの処理手順(ステップ)を示すものである。まず、既に述べた処理手順によりステップ0(ステップ0)で、雑音源強度分布と運転状態との相関関係をデータベースとして用意してあるとする。ステップ15で推定された現在の炉心状態の雑音源強度分布を、上記データベースとステップ19で比較する。そして、その雑音強度の比較結果、正常時の相関関係から設定された異常判定閾値を超えて現在の炉心状態の雑音源強度分布が離れていれば、現在の炉心状態に何らかの異常が発生している可能性があると判定できる。異常個所の推定は、ステップ18で同様に行なって特定する。
以上の処理手順を相関関係の応答(感度)曲面を用いて図31に具体的に示す。ボイド雑音などは、運転状態、すなわち出力と流量に対して図31の符号Aで示すような相関関係があるとする。ある運転状態、出力Bと流量Cの状態におけるこの応答曲面上の点Dは規準の正常状態である。
これに対して、最新の炉心状態における雑音源強度がEであるとして、それが予め設定された異常判定閾値Fの感度曲線を超えていたとすると、この炉心状態は異常であると判定できる。
図31において符号Aは沸騰水型原子力プラントの正常時内部雑音源強度感度曲線を示し、符号Dは正常時の内部雑音源強度の感度曲面上の点である。また、符号Eは沸騰水型原子力プラントの異常時の内部雑音源強度の点であり、符号はその異常判定閾値の感度曲線を示すものである。
本実施形態の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置15Jにおいて、カルマンフィルタにより現状の炉心状態を表現するのに最適にチューニングされた炉心動特性モデル内部の雑音源強度分布を、予め正常な運転状態で作成された運転条件と内部雑音源強度分布の相関関係と比較することにより、炉心内の局所的な異常現象を検出することが可能となる。
本発明の実施形態では、沸騰水型原子炉に適用した例を示したが、加圧水型原子炉等の軽水炉にも必要に応じて適用することができる。
本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第1実施形態を示すもので、原子炉炉心内の局所的平面を示す模式図。 第1実施形態において、原子炉炉心内の局所的異常現象の挙動と検出例を示す模式図。 第1実施形態において、原子炉炉心内の局所的異常現象の挙動例を示す模式図。 第1実施形態において、原子炉炉心内の局所的異常現象の挙動例を示す模式図。 第1実施形態において、処理の流れを示す図。 本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第2実施形態を示すもので、原子炉炉心内の局所的現象の正常と異常例を示す模式図。 第2実施形態において、原子炉炉心内の局所的異常現象の判定手順を示す構成図。 第2実施形態において、燃料集合体の出力予測表示例を示す説明図。 本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第3実施形態を示すもので、原子炉炉心内の局所的異常状態の処理ステップ例を示す説明図。 第3実施形態における局所的異常状態の処理ステップ例を示す説明図。 本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第4実施形態を示す固有関数分布例の説明図。 第4実施形態において、固有関数行列構造例を示す図。 第4実施形態における固有関数展開法を適用した燃料集合体出力予測例を示す説明図。 本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第5実施形態を示すもので、状態遷移方程式に固有関数展開法を適用した処理手順を示す説明図。 第5実施形態において、状態遷移方程式に固有関数展開法を適用した燃料集合体出力予測を示す説明図。 本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第6実施形態を示すもので、原子炉炉心の内部雑音源例を示す模式図。 第6実施形態において、内部雑音源例を適正に考慮しない予測例を示す説明図。 本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第7実施形態を示す構成図。 第7実施形態において、炉心不安定性の検知例を示す模式図。 第7実施形態において、炉心不安定性の検知例を示す説明図。 本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第8実施形態を示すもので、内部パラメータチューニングの処理手順を示す構成図。 第8実施形態において、内部パラメータチューニングによる異常検知の処理手順を示す図。 第8実施形態において、内部パラメータチューニングされた炉心モデルを用いた監視手順を示す図。 第8実施形態において、内部パラメータチューニングされた炉心モデルを用いた監視例を示す説明図。 本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第9実施形態を示すもので、内部パラメータチューニングによる安定性監視手順を示す説明図。 第9実施形態において、内部パラメータチューニングによる安定性監視手順を示す説明図。 本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第10実施形態を示すもので、内部雑音源分布推定による異常事象監視手順を示す説明図。 第10実施形態において、内部雑音源分布推定による異常事象監視例の説明図。 第10実施形態において、内部雑音源分布推定による異常事象監視例の説明図。 本発明に係る沸騰水型原子炉炉心状態監視装置の第11実施形態を示すもので、原子炉炉心の内部雑音源分布推定による異常事象監視手順を示す説明図。 第11実施形態において、内部雑音源分布推定による異常事象監視例による判定手順を示す図。
符号の説明
10 沸騰水型原子炉(BWR)
11 原子炉炉心
12 燃料集合体(燃料チャンネル)
13 中性子検出器(LPRM)
15,15A〜15J 沸騰水型原子炉炉心状態監視装置
17 物理量計測手段(中性子束監視手段)
18 異常判断手段
19 物理量予測手段
20 出力異常判断手段
22 通常監視手段(実測監視手段)
23 詳細監視手段(推定監視手段)
24 信号選択手段
25 異常検知手段
30 計測安定性監視手段
31 通常安定性監視手段
33 推測安定性監視手段
34 詳細安定性監視手段
35 信号選択手段
36 安定性検知手段

Claims (16)

  1. 沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとカルマンフィルタを組み合せることにより、炉心パラメータの観測データから非観測データを再構成して、沸騰水型原子力プラントにおける原子炉炉心内の状態推定を行なうように構成したことを特徴とする沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。
  2. 前記再構成された非観測データから沸騰水型原子力プラントの炉心内部状態を推定し、沸騰水型原子力プラントの炉心における状態異常を監視するように構成したことを特徴とする請求項1記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。
  3. 沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルとして、炉心内の中性子束変化を空間的に複数の領域で扱い、上記領域に対応した複数の燃料集合体内でのボイド率変化や燃料温度変化を模擬して、観測データとして複数の中性子束検出器信号を用いて、観測されていない中性子検出器信号や各燃料集合体での中性子束変化などを推定・再構成するように構成したことを特徴とする請求項1記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。
  4. コンピュータを用いてカルマンフィルタを離散的に解く場合、演算処理を高速化するために内部状態変数を固有関数で展開し、内部状態の次元を低減化させることを特徴とする請求項1記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。
  5. 前記沸騰水型原子力プラントの原子炉炉心の内部状態変数を固有関数展開することにより内部状態の次元を低減化した場合、内部状態を復元するに際して、一般化逆行列を用いることを特徴とする請求項4記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。
  6. 前記沸騰水型原子力プラントの原子炉炉心の内部状態変数を固有関数展開するに際して、固有関数としてウェーブレット関数を用いることを特徴とする請求項4記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。
  7. 前記固有関数としてウェーブレット関数を用いるに際して、特に核燃料集合体の平均出力などの炉心軸方向で平均化した内部パラメータを推定する場合、2次元のウェーブレット関数を用いることを特徴とする請求項6記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置
  8. 前記コンピュータを用いてカルマンフィルタを離散的に解く場合、演算処理を高速化するために内部状態変数の状態遷移モデルを固有関数で展開することにより状態遷移モデルを縮約することを特徴とする請求項4記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。
  9. 前記沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルにおいて、原子炉炉心の内部雑音を定義するに際して、その雑音が寄与する沸騰水型原子力プラント炉心範囲に応じて内部雑音を分割することを特徴とする請求項1記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。
  10. 前記推測された観測されていない中性子検出器信号や各燃料集合体での中性子束変化から燃料集合体内で局所的に発生している出力変動の異常監視や、推測された中性子束変化の減衰特性を推定することにより炉心の安定性を監視することを特徴とする請求項3記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。
  11. 前記カルマンフィルタを求めるに際して得られる尤度を最大にするように、沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルにおける重要パラメータを推定することにより、そのパラメータの基準状態からの変化を監視することにより、炉心の状態を監視することを特徴とする請求項10記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。
  12. 実沸騰水型原子力プラントの炉心挙動を最尤法により推定された沸騰水型原子力プラントの炉心動特性モデルの重要パラメータにより、炉心動特性同モデルのチューニングを行ない、状態推定精度を向上させ得るように構成したことを特徴とする請求項11記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。
  13. 前記重要パラメータとして沸騰水型原子炉の炉心安定性に関係したパラメータを推定することにより、そのパラメータの基準状態からの変化を監視することにより、原子炉炉心の安定性を監視することを特徴とする請求項11記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。
  14. 前記重要パラメータとして分割化された内部雑音において、局所的な変動の駆動源となる雑音の強度の基準状態からの変化を監視することにより、原子炉炉心内における局所的な変動現象を監視することを特徴とする請求項11記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。
  15. 前記内部雑音源強度を推定するに当たり、運転状態と内部雑音源強度分布の相関関係をあらかじめ求めておき、その相関関係と任意の運転状態で推定した内部雑音源とを比較することにより原子炉炉心の異常状態を検出することを特徴とする請求項14記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。
  16. 前記沸騰水型原子力プラントの原子炉炉心の内部状態変数を固有関数展開するに際して、固有関数としてウェーブレット関数を用いる一方、固有関数としてウェーブレット関数を用いるに際して、各燃料集合体の平均出力などの炉心軸方向で平均化した内部パラメータを推定する場合、2次元のウェーブレット関数を用いて内部状態変数を縮約することを特徴とする請求項8ないし15記載の沸騰水型原子炉炉心状態監視装置。

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