JP2007239149A - 低温可染型アクリル系繊維の染色方法及び該方法にて染色された低温可染型アクリル系繊維 - Google Patents

低温可染型アクリル系繊維の染色方法及び該方法にて染色された低温可染型アクリル系繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】 低温可染型アクリル系繊維の風合いや品質を損なうことなく、低温染色に於ける色の再現性を改善し、染色バッチ間の染色再現性や染め斑を改善可能であり、染色条件の変動に影響されることなく安定的な色相を得ることができる低温可染型アクリル系繊維の染色方法を提供すること。
【解決手段】 染料のカラー・インデックス・ネームがベーシック・イエロー28、ベーシック・レッド46及びベーシック・ブルー3の3種から選ばれる少なくとも1種、或いは少なくとも2種以上の染料を含有する40℃〜80℃の染浴で染色する。
【選択図】 なし

Description

本発明は低温染色に於ける色の再現性を改善し、染色条件の変動に影響されることなく安定的な色相を得ることが可能な低温可染型アクリル系繊維の染色方法及び該方法にて染色された低温可染型アクリル系繊維に関するものである。
一般にアクリル系繊維の染色方法としては、98℃以上の染浴中でカチオン染料を吸収させる方法があり、多彩な色調を小ロットで染色対応できるメリットがある。しかし、染色時の受熱によってアクリル系繊維の捲縮が熱セットされたり、或いは僅かな力によって繊維が引き伸ばされる等、アクリル系繊維の持つ独特の風合いが損なわれる問題がある。
この問題を解決する為、アクリル系繊維の製造段階で紡糸原液中に染料や顔料を混合して着色する原着方法や湿式紡糸浴中にカチオン染料を投入し着色するゲル染色方法などがある。しかし、これ等の方法では多様化する顧客ニーズに対応する為に膨大な色調の繊維を多数在庫する必要がある等の問題があった。
そこで、最近では上記問題を改善すべく低温染色可能なアクリル系繊維が開発され、繊維の持つ品質や風合いを損なうことなく多彩な色調を小ロットで染色対応できるものが実用化されている。また、低温染色可能なアクリル系繊維は98℃以上の高温染色に比べてカチオン染料とアクリル系繊維の親和力が弱くなる傾向にある為、染着速度の速い染料、即ちインデックス・ミックスチャー(I mix)がC以上のものを使用する染色方法が見出されている。(特許文献1、2)
しかし、本発明者の知見では、実際にそれら染料を用いて染色したところ、染色バッチ間での染色再現性やバッチ内での染め斑等が多く、安定的な色調を再現するのが困難であった。
また、低温可染型アクリル系繊維の染色機構上、カチオン染料の種類によっては繊維製品製造の過程で色調に変化が生じるものがある。これは、低温染色ではカチオン染料とアクリル系繊維のイオン結合が完全なものではない為、染料が充分に発色していないと考えられており、製品製造工程中のテンター工程の受熱でイオン結合が完全な形に進行し本来の発色を戻す現象が確認されている。上記記載のように、低温可染型アクリル繊維の染色方法に至っては、未だ安定的な色調を得る染色方法が充分検討されていないのが現状である。
特開2003−253574号公報 WO2002/053825号公報
本発明は上記の従来技術の問題点を解消し、低温染色可能なアクリル系繊維の染色再現性を改善する低温可染型アクリル系繊維の染色方法及び該方法にて染色された低温可染型アクリル系繊維を提供するものである。
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意研究の結果、染浴の温度が80℃以下の低温染色に於けるカチオン染料の染着速度は、98℃以上の沸騰染色に於ける染着速度、即ちインデックス・ミックスチャー(I mix)やK値と異なる挙動を示す知見を得た。また、低温染色後と熱処理後の発色変化を起こし易い染料の種類についても知見を得、最適な低温染色用染料の組合せを検討した結果、染色条件の変動を受けず安定的な色相と発色を示す染料の組合せを発見するに至った。
即ち本発明は、染料のカラー・インデックス・ネームがベーシック・イエロー28、ベーシック・レッド46及びベーシック・ブルー3の3種から選ばれる少なくとも1種の染料を含有する40〜80℃の染浴で染色することを特徴とする低温可染型アクリル系繊維の染色方法であり、好ましくは、前記染料のカラー・インデックス・ネームの3種から選ばれる少なくとも2種以上の染料を含有する40〜80℃の染浴で染色することを特徴とする低温可染型アクリル系繊維の染色方法である。
更に本発明は、低温可染型アクリル系繊維がアクリルニトリル40〜80重量%とハロゲン含有モノマー20〜60重量%及びスルホン酸含有モノマー0〜5重量%とよりなる重合体(A)50〜99重量部に、アクリロニトリル5〜70重量%とその他共重合可能なモノマー20〜94重量%及びスルホン酸含有モノマー1〜40重量%とよりなる重合体(B)1〜50重量部を混合した重合組成物を紡糸したものである低温可染型アクリル系繊維の染色方法であり、好ましくは、前記低温可染型アクリル系繊維に対する各染料の吸尽率が、各染色時間に於ける各染料吸尽率の平均値から±5以内であり、且つ染色後70℃で1時間乾燥した繊維を135℃の乾熱で3分間処理した時の発色変化(ΔE)が4.0以下となるカチオン染料を2種以上組合せて用いることを特徴とする低温可染型アクリル系繊維の染色方法である。
更に好ましくは、70℃の染浴にて1時間染色に於ける前記染料の低温可染型アクリル系繊維に対する飽和値(f値)に染色濃度を掛けた値の合計(Σf値)が0.05〜3.5であることが好ましい。
加えて、本発明は上記記載の低温可染型アクリル系繊維の染色方法にて染色された低温可染型アクリル繊維でもある。
本発明の低温可染型アクリル系繊維の染色方法及び該方法にて染色された低温可染型アクリル系繊維は、染色時の温度や時間等、染色バッチ間で差の発生しやすい条件変動の影響を受けることなく、且つ繊維製品製造の過程でも色調に変化の生じない安定した色相を得ることが可能な極めて工業的価値の高いものである。
本発明に用いられる染料のカラー・インデックス・ネームとは、工業用染料・顔料を用途による部属名と色名及び番号によって分類したもので、染料便覧や色染社出版の染色ノート、染料メーカーの提供するカタログ等で簡単に調べることができる。具体的には、ベーシック・イエロー28(Y−28)にはDyStar社製のAstrazon Golden Yellow GL、BASF社製のBasacryl Golden Yellow X−GFL、日本化薬社製のKayacryl Golden Yellow GL−ED、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製Maxilon Golden Yellow GL、中国慶成社製の黄金X−GLなどがあり、ベーシック・レッド46(R−46)にはDyStar社製のAstrazon Red FBL、日本化薬社製のKayacryl Red GRL−N、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製のMaxilon Red GRL、中国慶成社製の紅X−GRLなどがあり、ベーシック・ブルー3(B−3)には保土谷社製のAizen Cathilon Pure Blue 5GH、BASF社製のBasacryl Blue Green X−5GN、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製のMaxilon Blue 5G、中国慶成社製の翠藍X−GBなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明に係わる方法では上記記載のベーシック・イエロー28、ベーシック・レッド46、ベーシック・ブルー3の3種から選ばれる少なくとも1種、或いは少なくとも2種以上の染料を任意の比率で配合し、酢酸、燐酸、酒石酸の中から選ばれる染色酸でpH4〜5に調整した染浴に溶かして使用する。本発明に於いては、特定のカラー・インデックス・ネームを有する染料から1種、或いは2種以上を選択することにより、目的とする染色再現性が得られる。一方、上記カラー・インデックス・ネーム以外の染料を使用する場合、或いは併用する場合においては、染色後に安定的な色調が得られない為、好ましくない。
これ等の理由は、80℃以下の染浴で行う低温染色の場合、カチオン染料のアクリル系繊維に対する親和力が低下すると共に、染着速度もインデックス・ミックスチャー(I mix)やK値と異なる挙動を示す為と考えられている。また、低温染色ではカチオン染料とアクリル系繊維のイオン結合が完全なものでない為、染料の種類によっては充分に発色していないとも考えられている。
本発明者らの検討の結果、ベーシック・イエロー28、ベーシック・レッド46、ベーシック・ブルー3の染料の単独使用、或いは組合せ使用が最も染着速度が揃い、且つ発色の安定性に優れ、最も汎用性のある色揃えを得られることが判った。
よって、前記カラー・インデックス・ネーム以外の染料を用いた場合、染着速度が揃い難く、染着速度の速い染料が優先的に繊維に染着し、染着速度の遅い染料の染着が阻害される為、目的の色調に染色するのが困難となる。また、染色後の繊維製品製造の過程(テンター工程等の受熱)で染料と繊維のイオン結合が進行し、染色後と繊維製品製造後の発色が変化する為、色の再現が困難となる。従って本発明で規定する特定のカラーインデックスを有する染料から1種類或いは2種類以上の染料を選択して使用することが好ましい。
また、従来使用されている染斑を防止するカチオン系の緩染剤や均染剤も使用することができるが、必要量以上の使用は染料の低温可染型アクリル系繊維への染着を著しく低下させてしまう可能性がある為、必要の有無を予め調査した上で適量を使用するのが好ましい。
本発明では、上記記載のから選ばれる染料と染色酸、及び必要に応じて緩染剤又は均染剤を溶解した40〜80℃、好ましくは60〜80℃、より好ましくは65〜75℃の染浴中に低温可染型アクリル系繊維を60〜90分間浸漬する。次いで低温可染型アクリル系繊維の表面に余分に付着した染料、染色酸及び緩染剤又は均染剤を冷水にて洗い流した後、70℃以下の乾熱で乾燥させたものを繊維製品の製造用原料として用いる。70℃以下の乾熱で乾燥させる理由は、繊維へ付与しているクリンプの熱セットを回避する目的と、低温可染型アクリル系繊維が収縮性繊維の場合、乾燥中の収縮発現を抑える理由からである。
本発明の低温可染型アクリル系繊維とは、重合体(A)と重合体(B)を混合してなる重合組成物を紡糸してなるアクリル系繊維である。
重合体(A)とは、アクリロニトリル40〜80重量%とハロゲン含有モノマー20〜60重量%及びスルホン酸含有モノマー0〜5重量%からなる重合体である。
前記重合体(A)に於いては、アクリロニトリルを40〜80%用いたものが好ましいが、アクリロニトリルの含有量が40重量%未満では、得られる繊維の耐熱性が低く、アクリロニトリルの含有量が80重量%を超えると耐熱性が高くなり十分な染色性、収縮率が発現しない。
本発明の重合体(A)に於けるハロゲン含有モノマーとは、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン等に代表されるハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン類等であり、単独もしくは2種以上混合して用いる。このハロゲン含有モノマーは重合体(A)に於いて20〜60重量%用いたものが好ましい。60%を超えると疎水性が高くなり十分な染色性が得られない。また、20%未満では繊維にがさつきが生じ触感が悪い。
本発明の重合体(A)に於けるスルホン酸含有モノマーとは、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはこれらの金属塩類およびアミン塩類等であり、単独もしくは2種以上混合して用いる。本発明の重合体(A)に於いてはスルホン酸含有モノマーの含有量を0〜5%用いるが、5%を超えると繊維にボイドや膠着が生じ、強度が低下する。
本発明のアクリル系収縮繊維の製造に用いられる重合体(B)は、アクリロニトリル5〜70重量%とその他共重合可能なモノマー20〜94重量%及びスルホン酸含有モノマー1〜40重量%からなる重合体である。
前記重合体(B)に於いてはアクリロニトリルを5〜70重量%用いたものが好ましいが、70重量%を超えると耐熱性が高くなり十分な染色性、収縮率が得られない。
本発明の重合体(B)に於ける、その他共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸やメタクリル酸及びそれらの低級アルキルエステル、NまたはN,N−アルキル置換したアミノアルキルエステルやグリシジルエステル、アクリルアミドやメタクリルアミド及びそれらのNまたはN,N−アルキル置換体、アクリル酸、メタクリル酸やイタコン酸等に代表されるカルボキシル基含有ビニル単量体およびそれらのナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩等のアニオン性ビニル単量体、アクリル酸やメタクリル酸の4級化アミノアルキルエステルをはじめとするカチオン性ビニル単量体、あるいはビニル基含有低級アルキルエーテル、酢酸ビニルに代表されるビニル基含有低級カルボン酸エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン等に代表されるハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン類、さらにはスチレン等であり、これらのモノマーを単独もしくは2種以上混合して用いたものである。その他の共重合可能なモノマーは20〜94重量%である事が好ましい。20重量%未満では耐熱性が高くなり十分な染色性が得られない。特に、染色性の点で、その他共重合可能なモノマーとしてアクリル酸エステルを用いたものが好ましい。アクリル酸エステルとしてはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が好ましく、これらのモノマーを単独もしくは2種以上混合して用いたものである。
重合体(B)に於けるスルホン酸含有モノマーとは、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはこれらの金属塩類およびアミン塩類等が好ましく、単独もしくは2種以上混合して用いたものである。本発明の重合体(A)に於いて、スルホン酸含有モノマーは1〜40重量%であるものが好ましいが、40%を超えると繊維にボイドや膠着が生じ、強度が低下する。
本発明の低温可染型アクリル系繊維は、繊維中に含まれている重合体(A)および重合体(B)に於けるスルホン酸基含有モノマーの合計含有量が、重合体(A)および重合体(B)のモノマー合計量の0.1〜10重量部であり、好ましくは0.2〜5重量部であるものが良く、0.1重量%未満であると充分な染色性が得られず、10重量%を超えると繊維にボイドや膠着が生じ、強度が低下する。
本発明の重合体(A)、重合体(B)は、有機溶剤、例えばアセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドあるいは無機溶剤、例えば塩化亜鉛、硝酸、ロダン塩に溶解させて紡糸原液としたものである。
本発明に於ける低温可染型アクリル系繊維の重合体(A)と重合体(B)の混合割合は、重合体(B)が1%未満では十分な染色性が得られず、50%を超えると、繊維にボイドや膠着が生じ、強度、染色性が低下するので好ましくない。
本発明の低温可染型アクリル系繊維の製造方法は、常法の湿式あるいは乾式の紡糸法でノズルより紡出し、延伸、乾燥を行ったものである。また、得られた繊維を70〜140℃で1.3〜4.0倍に延伸して収縮性を付与した繊維でも良い。更には、70〜140℃で1.3〜4.0倍に延伸した繊維を140〜160℃で5分間熱処理することで非収縮性繊維としたものでも良い。
本発明に於ける低温可染型アクリル系繊維の形態は、単繊維繊度が1〜50dtex、繊維長が20〜170mmの原綿である。
本発明に係わる方法では、低温可染型アクリル系繊維の最適な染色濃度を算出する方法として、まず低温可染型アクリル系繊維の相対的飽和値(Sf値)を求めた後、使用するカチオン染料の低温可染型アクリル系繊維に対する飽和値(f値)を調査し、その飽和値(f値)に染色濃度を掛けた三原色の合計(Σf値)が0.05〜3.5の範囲、好ましくは0.1〜3.0の範囲で染色する。Σf値を前記範囲で染色する理由は、Σf値が0.05以下の極淡色染めの場合、染料の染着速度に関係なく短時間で完全吸尽される為、本発明の効果が発揮できず、また、Σf値が3.5以上の極濃色染めの場合、吸尽できない染料が染浴に過剰に残る為、経済的ではないためである。
(Sf値の算出方法)
本発明に於ける低温可染型アクリル系繊維の相対的飽和値(Sf値)とは、アクリル系繊維のカチオン染料を吸尽する能力指数であり、繊維を染色実施する温度で60分間、過飽和な量のマラカイト・グリーンを用いて染色し、飽和染着量を求めた後、下記の算出方法より求められる。
飽和染着量=((Ao−A)/Ao)×2.5
A:染色後染浴の618nm波長に於ける吸光度
Ao:染色前染浴の618nm波長に於ける吸光度
相対的飽和値(Sf値)=飽和染着量×400/463
低温可染型アクリル系繊維の相対的飽和値が0.1以上で淡色の染色が可能で、0.8以上で淡色から濃色、更には黒まで染色可能となる。
(Σf値の算出方法)
本発明に於けるカチオン染料の飽和値(f値)とは、カチオン染料の低温可染型アクリル系繊維に対する飽和濃度であり、繊維を染色実施する温度で60分間、淡色〜濃色の濃度で染色し、繊維が染料を90%以上吸尽した最大染料濃度を求めた後、下記の算出方法より求められる。
飽和値(f値)=相対的飽和値(Sf値)/90%以上吸尽した最大染料濃度
本発明に於けるカチオン染料の飽和値(f値)に染色濃度を掛けた三原色の合計(Σf値)とは、使用する染料のそれぞれの飽和値(f値)に染色濃度を掛け、求められた値の合計値をいい、下記の算出方法より求めることができる。
Σf値=(Y−28のf値×Y−28の染色濃度)+(R−46のf値×R−46の染 色濃度)+(B−3のf値×B−3の染色濃度)
なお、本発明における染色経時の色相変化は、下記のようにして確認した。
(染色経時の色相変化の確認方法)
染液の温度が70℃に到達した時点から染色時間を計時。開始から20〜30分毎に染色機内(オーバーマイヤー染色機)から繊維を取り出し、70℃で1時間乾燥したものと、染色が終了し同じく70℃で1時間乾燥したものを目視で比較した。
本発明の低温可染型アクリル系繊維の染色方法にて染色された低温可染型アクリル系繊維とは、本発明の染色処理が施された原綿を指す。
また、本発明によって得られた低温可染型アクリル系繊維は、染色再現性が良く、小ロットの染色時においても任意の色調に安定して染色されているため、パイル、衣料、インテリア用途等に好適であり、特に収縮性を付与した繊維については段差パイル製品におけるダウンヘアー、非収縮性の繊維についてはガードへアーとして使用することで、意匠性に優れた人工毛皮製品を得る事ができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
(製造例1)
内容積20Lの耐圧重合反応装置にイオン交換水12000g、ラウリル硫酸ナトリウム54g、亜硫酸25.8g、亜硫酸水素ナトリウム13.2g、硫酸鉄0.06g、アクリロニトリル(以下ANと記す。)294g、塩化ビニル3150gを投入し、窒素置換した。重合機内温を50℃に調整し、開始剤として過硫酸アンモニウム2.1gを投入し、重合を開始した。途中、AN2526g、スチレンスルホン酸ナトリウム30g、過硫酸アンモニウム13.8gを追加しながら、重合時間5時間10分で重合した。その後、未反応VCを回収し、ラテックスを重合機より払い出し、塩析、熱処理、ろ過、水洗、脱水、乾燥し、重合体1を得た。
次に、内容積5Lの耐圧重合反応装置にアセトン1870g、水470g、AN400g、アクリル酸メチル450g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム150gを投入し、窒素置換した。重合機内温度を65℃に調整し、開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5gを投入し重合を開始した。途中、アゾビス10gを追加しながら2時間重合し、その後70℃に昇温し2時間重合させ重合体濃度30重量%の重合体2の溶液を得た。重合体1が30重量%になるようにアセトンを加え溶解した重合体1の溶液に、重合体2の溶液を重合体の重量比が重合体1:重合体2=9:1の比率になるように混合した物を紡糸原液とした。得られた、紡糸原液を0.08mmφ、8500孔の口金を通して25℃、30重量%のアセトン水溶液中に吐出し、さらに25℃、20重量%アセトン水溶液中で2.0倍に延伸した後60℃で水洗した。ついで130℃で乾燥、更に125℃で2.0倍に延伸した後、140〜150℃の熱処理を行って7.8dtexの繊維を得た。
(実施例1)
製造例1で得られた繊維を38mmにカットした後、伸光製作所製3kg常圧パッケージ染色機にて、酢酸でpH4に調整した染浴中に中国慶成社製の黄金X−GL 0.1%omfと紅X−GRL 0.1%omfを投入し、70℃で60分間染色した。本染色に於けるΣf値は0.24であった。
染料の吸尽量を定量的に評価する為、染料投入直後と染色開始後20分、40分、60分の染液を少量抜き取り、島津製作所製の分光光度計UV−2500PCで吸光度を測定し、黄染料及び赤染料の吸尽量を求めた。尚、予め使用する染料単品の最大吸収波長は、各染料を水で0.001〜0.005%の濃度に溶解したものを前記分光光度計にかけ、350〜700nmの波長範囲で最大吸光度を示した波長をその染料の最大吸収波長とした。
また、染料の吸尽量の算出は下記の方法により求めた。
吸尽率(%)=(1−(染色開始後の吸光度/染料投入直後の吸光度))×100
黄金X−GLの最大吸収波長:437nm
紅X−GRLの最大吸収波長:531nm
上記方法にて算出した染色時間毎の各染料の吸尽率の平均値より、吸尽率のバラツキの幅が±5以内の染料処方を色相変化の少ない組合せと評価した。さらに、染色経時の色相変化は、染液の温度が70℃に到達した時点から20〜30毎に(オーバーマイヤー)染色機から繊維を取り出し、70℃で1時間乾燥したものと、所定時間後に染色が終了した繊維を同じく70℃で1時間乾燥したものとを目視で比較した。
また、染色終了後、冷水で水洗し、70℃で1時間乾燥した原綿を135℃に調整した乾燥機で3分間熱処理し、染料の発色変化を日本電色工業製の色差測定装置(RS−232C)で調査した。発色変化の度合いは、処理前後の繊維のLab値を基準とするΔEで評価し、ΔEの値が5以下のものを発色変化の少ない良好な染料とした。
(実施例2)
実施例1と同様、前記パッケージ染色機にて、酢酸でpH4に調整した染浴中に中国慶成社製黄金X−GL 0.48%omf、紅X−GRL 0.17%omf、翠藍X−GB 0.15%omfを投入し、70℃で60分間染色した。本染色に於けるΣf値は0.88であった。
尚、翠藍X−GBの最大吸収波長は654nmであった。
(実施例3)
実施例1と同様、前記パッケージ染色機にて、酢酸でpH4に調整した染浴中に中国慶成社製黄金X−GL 0.43%omf、紅X−GRL 0.46%omf、翠藍X−GB 0.36%omfの染料を投入し、70℃で90分間染色した。尚、染料の吸尽量を定量的に評価する為、染料投入直後と染色開始後20分、60分、90分の染液を少量抜き取った。本染色に於けるΣf値は1.42であった。
(実施例4)
実施例1と同様、前記パッケージ染色機にて、酢酸でpH4に調整した染浴中に中国慶成社製黄金X−GL 1.68%omf、紅X−GRL 0.47%omf、翠藍X−GB 0.10%omfの染料を投入し、70℃で90分間染色した。本染色に於けるΣf値は2.5であった。
尚、染料の吸尽量を定量的に評価する為、染料投入直後と染色開始後20分、60分、90分の染液を少量抜き取った。
(比較例1)
実施例1と同様、前記パッケージ染色機にて、酢酸でpH4に調整した染浴中に中国慶成社製黄金X−GL 0.48%omf、紅X−GRL 0.17%omf、藍X−BBL 0.15%omfの染料を投入し、70℃で60分間染色した。本染色に於けるΣf値は0.85であった。
尚、中国慶成社製藍X−BBLのカラー・インデックス・ネームは無い。
(比較例2)
実施例1と同様、オーバーマイヤー染色機にて、酢酸でpH4に調整した染浴中に中国慶成社製黄X−2RL 0.3%omf、藍X−GRRL 0.3%omfの染料を投入し、70℃で60分間染色した。本染色に於けるΣf値は0.50であった。
尚、中国慶成社製黄X−2RLのカラー・インデックス・ネームはベーシック・イエロー19、藍X−GRRLはベーシック・ブルー41であった。
実施例1、2、比較例1,2で得られた染色結果を表1に、実施例3,4の染色結果を表2に示す。
なお、本発明の染料で染色したものは、各時間で繊維の色相が揃っており、染色時間の経過と共に色調が濃くなっていた。(実施例1〜4)しかし、本発明以外の染料を用いたり、組み合わせたものは各時間で繊維の色相が異なっており、染色初期は青味のブラウンであったが、時間の経過と共に赤みのブラウンに色調が変化していた。(比較例1)
Figure 2007239149
Figure 2007239149

Claims (6)

  1. 染料のカラー・インデックス・ネームがベーシック・イエロー28、ベーシック・レッド46及びベーシック・ブルー3の3種から選ばれる少なくとも1種の染料を含有する40℃〜80℃の染浴で染色することを特徴とする低温可染型アクリル系繊維の染色方法。
  2. 染料のカラー・インデックス・ネームがベーシック・イエロー28、ベーシック・レッド46及びベーシック・ブルー3の3種から選ばれる少なくとも2種以上の染料を含有する40℃〜80℃の染浴で染色することを特徴とする低温可染型アクリル系繊維の染色方法。
  3. 低温可染型アクリル系繊維がアクリルニトリル40〜80重量%とハロゲン含有モノマー20〜60重量%及びスルホン酸含有モノマー0〜5重量%とよりなる重合体(A)50〜99重量部に、アクリロニトリル5〜70重量%とその他共重合可能なモノマー20〜94重量%及びスルホン酸含有モノマー1〜40重量%とよりなる重合体(B)1〜50重量部を混合した重合組成物を紡糸したものである請求項1または請求項2に記載の低温可染型アクリル系繊維の染色方法。
  4. 請求項3記載の低温可染型アクリル系繊維に対する各染料の吸尽率が、各染色時間に於ける各染料吸尽率の平均値から±5以内であり、且つ染色後70℃で1時間乾燥した繊維を135℃の乾熱で3分間処理した時の発色変化(ΔE)が4.0以下となるカチオン染料を2種以上組合せて用いることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の低温可染型アクリル系繊維の染色方法。
  5. 70℃の染浴にて1時間染色に於ける低温可染型アクリル系繊維に対する飽和値(f値)に染色濃度を掛けた値の合計(Σf値)が0.05〜3.5であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の低温可染型アクリル系繊維の染色方法。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の染色方法にて染色された低温可染型アクリル系繊維。
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