JP2007238773A - 塩化ビニル系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、優れた耐候性と高い耐衝撃性を有する、新規な塩化ビニル系樹脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 塩化ビニル系樹脂(A)100重量部、並びに内層(b−1)50〜95重量%および外層(b−2)5〜50重量%を有し、ガラス転移温度が20℃以下の層のみで構成されるゴム状重合体(B)0.5〜20重量部を含有する塩化ビニル系樹脂組成物であって、前記外層(b−2)が、アクリル酸エステル52〜80重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体19.9〜47.9重量%、および多官能性単量体0.1〜10重量%を重合してなることを特徴とする、塩化ビニル系樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】 塩化ビニル系樹脂(A)100重量部、並びに内層(b−1)50〜95重量%および外層(b−2)5〜50重量%を有し、ガラス転移温度が20℃以下の層のみで構成されるゴム状重合体(B)0.5〜20重量部を含有する塩化ビニル系樹脂組成物であって、前記外層(b−2)が、アクリル酸エステル52〜80重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体19.9〜47.9重量%、および多官能性単量体0.1〜10重量%を重合してなることを特徴とする、塩化ビニル系樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、優れた耐候性と高い耐衝撃性を有する、塩化ビニル系樹脂およびゴム状重合体を含有する、塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性を改良するために、乳化重合法や懸濁重合法で得られるジエン系またはアクリレート系のグラフト共重合体を塩化ビニル系樹脂に添加することが従来から広く利用されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、ジエン系のグラフト共重合体を塩化ビニル系樹脂に配合して使用すると、耐衝撃性は改良されるが耐候性が悪いため、製造された成形品を屋外で使用した場合には、耐衝撃性が著しく低下するという欠点がある。それゆえ、屋外用途耐衝撃性改良剤として、ジエン系の耐候性を改良し、かつ耐衝撃性を付与するため、アルキル(メタ)アクリレートを主体としたグラフト共重合体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
一般に、(メタ)アクリレート系のゴムは、ジエン系のゴムに比べて耐衝撃性の改良効果が小さいことから、塩化ビニル系樹脂への配合量を多くする必要がある。しかしながら、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性を改良する分野では、耐衝撃性改良剤であるグラフト共重合体の配合量をできる限り少なくすることが、品質面あるいはコスト面から望まれており、その点を改良するための検討が長年にわたり実施されてきた(例えば、特許文献3〜5参照)。
グラフト共重合体による塩化ビニル系樹脂への耐衝撃性付与効果を改良する方法は種々知られているが、中でも、グラフト共重合体中の(メタ)アクリレート系のゴムのガラス転移温度を下げる、あるいはグラフト共重合体中の(メタ)アクリレート系のゴムの重量比を上げる等、グラフト共重合体中の軟質成分の質および量を向上する方法が、その目的において効果的であることが知られている。特に、グラフト共重合体中のゴムの重量比を90重量%以上にすることは、高度に耐衝撃性を付与するための効果的な方法であると思われる。
例えば、グラフト共重合体中のゴムの重量比が高い耐衝撃性改良剤を得るために、最内層ポリマーを特定の単量体組成とし、耐衝撃性改良剤の粒子径を特定の範囲に規定した技術が開示されている(例えば、特許文献6参照)。しかしこの方法では、ゴムの重量比を高くすることができるものの、耐衝撃性改良剤の粒子径に制限があることで耐衝撃性以外の品質の低下が避けられない等の課題がある。例えば、グラフト共重合体の粒子径を大きくすることは、成形体の表面光沢に代表される物性の低下を引き起こすことが知られている。また、塩化ビニル系樹脂組成物中における耐衝撃性改良剤の粒子径は、大きい場合には応力集中度の増大効果があるものの、同時に粒子間距離が長くなることによる応力集中度の低下が起こることが知られており、特に、耐衝撃性改良剤の配合部数が少ない場合には粒子間距離が長くなることの影響が大きくなり、充分に耐衝撃性改良効果が得られないという問題があることから、満足な方法とは言えない。
つまり、耐衝撃性向上と耐衝撃性改良剤添加による加工性、品質の低下やコスト上昇という相反する両物性を高いレベルで満足させうる塩化ビニル系樹脂組成物の開発が、未だ期待され続けているのが現状である。
特公昭39−19035号公報
特公昭51−28117号公報
特公昭42−22541号公報
特開平2−1763号公報
特開平8−100095号公報
韓国特許公開公報第2004−62761号公報
本発明は、優れた耐候性と高い耐衝撃性を有する、新規な塩化ビニル系樹脂組成物を提供することを課題とする。
上記のような現状に鑑み、本発明者らは、耐候性を維持したまま優れた耐衝撃性を得るべく鋭意検討を重ねた結果、特定の層構造を有するゴム状重合体(B)を塩化ビニル系樹脂組成物に配合した場合に、耐候性を低下させることなく、著しく高い耐衝撃性を発現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、塩化ビニル系樹脂(A)100重量部、並びに内層(b−1)50〜95重量%および外層(b−2)5〜50重量%を有し、ガラス転移温度が20℃以下の層のみで構成されるゴム状重合体(B)0.5〜20重量部を含有する塩化ビニル系樹脂組成物であって、前記外層(b−2)が、アクリル酸エステル52〜80重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体19.9〜47.9重量%、および多官能性単量体0.1〜10重量%を重合してなることを特徴とする、塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記ゴム状重合体(B)の内層(b−1)が、アクリル酸エステル81〜99.9重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体0〜18.9重量%、および多官能性単量体0.1〜10重量%を重合してなることを特徴とする、前記の塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記ゴム状重合体(B)の体積平均粒子径が0.05μm〜0.35μmであることを特徴とする、前記いずれかの塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記ゴム状重合体(B)の内層(b−1)を構成するアクリル酸エステルが、炭素原子が2〜8個のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルであることを特徴とする、前記いずれかの塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記ゴム状重合体(B)の外層(b−2)を構成するアクリル酸エステルが、アクリル酸ブチルであることを特徴とする、前記いずれかの塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記ゴム状重合体(B)の外層(b−2)を構成しうるメタクリル酸エステルが、メタクリル酸メチルであることを特徴とする、前記いずれかの塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、優れた耐候性と高い耐衝撃性を得ることができる。
本発明のゴム状重合体(B)は、内層(b−1)50〜95重量%および外層(b−2)5〜50重量%(但し、内層と外層の総量は100重量%)から構成される層構造を有するものであるが、前記内層(b−1)および外層(b−2)については、例えば、各々が1層であってもよく、または少なくともいずれかの層が2層以上から構成されうる多層構造であっても好適に使用されうる。中でも、外層(b−2)は1層で構成される構造が好ましい。前記ゴム状重合体(B)の多層構造は、種々の目的に応じて任意に選択されうる。
前記多層構造については、例えば、内層(b−1)に外層(b−2)が完全に被覆した層構造が一般的であるが、内層(b−1)と外層(b−2)の重量比等によっては、層構造を形成するための外層量が不充分な場合もありうる。そのような場合は、完全な層構造である必要はなく、内層(b−1)の一部を外層(b−2)が被覆した構造であってもよく、或いは内層(b−1)の一部に外層(b−2)の構成要素である単量体がグラフト重合した構造も好適に用いることができる。なお、上記層構造の概念は、本発明における内層(b−1)中若しくは外層(b−2)中において多層構造が形成される場合にも同様に当てはまる。
本発明のゴム状重合体(B)は、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、マイクロサスペンション重合法、ミニエマルション重合法、水系分散重合法などにより製造することができる。中でも、構造制御が容易である点から、乳化重合法により製造されたゴム状重合体を好適に用いることができ、外層(b−2)が内層(b−1)にグラフトしたグラフト共重合体を用いることができる。
本発明のゴム状重合体(B)における内層(b−1)の重量比率については、ゴム状重合体(B)中に50〜95重量%含まれることが好ましく、更には50〜90重量%含まれることがより好ましく、60〜80重量%が特に好ましい。ゴム状重合体(B)における内層(b−1)の重量比率が50重量%未満の場合は、本発明のゴム状重合体(B)を用いた塩化ビニル系樹脂組成物の耐衝撃性改良効果が劣る傾向があり、逆に内層(b−1)の重量比率が95重量%を超える場合は、ゴム状重合体(B)と塩化ビニル系樹脂(A)との相溶性が低下するため、耐衝撃性改良効果が得られにくくなる傾向にある。
前記ゴム状重合体(B)における内層(b−1)の組成としては特に制限されないが、耐候性等の観点からポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル系のゴム状重合体であることが好ましい。中でも、得られる塩化ビニル系樹脂組成物の耐衝撃性に代表される品質の観点から、例えば、アクリル酸エステル81〜99.9重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体0〜18.9重量%、および多官能性単量体0.1〜10重量%(但し、これらの単量体の総量は100重量%)を重合してなる、ガラス転移温度が20℃以下のゴム状重合体であることが好ましい。更には、アクリル酸エステル85〜99.9重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体0〜14.9重量%、および多官能性単量体0.1〜5重量%を重合してなる、ガラス転移温度が20℃以下のゴム状重合体がより好ましい。なお、本発明において(メタ)アクリルとは、特に断らない限り、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
なお、前記の重合体のガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量計により測定することができるが、本発明においては、ポリマ−ハンドブック[Polymer Hand Book(J. Brandrup, Interscience1989)]に記載されている値を使用してFoxの式を用いて算出した値を用いることとする(例えば、ポリメチルメタクリレートのガラス転移温度は105℃であり、ポリブチルアクリレートは−54℃である。)。
前記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル等のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基を有するアクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有するアクリル酸エステル類、またはアルコキシル基を有するアクリル酸エステル類が挙げられる。中でも重合の容易さの点から、炭素原子が2〜8個のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
前記メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル等のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基を有するメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有するメタクリル酸エステル類、またはアルコキシル基を有するメタクリル酸エステル類が挙げられるが、中でも、ゴム状重合体(B)を配合した塩化ビニル系樹脂組成物の加工性の点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジルがより好ましい。
前記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン等が挙げられるが、中でも、ゴム状重合体(B)を配合した塩化ビニル系樹脂組成物の加工性の点から、スチレンがより好ましい。
前記ビニルシアン化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられるが、中でもアクリロニトリルがより好ましい。
前記多官能性単量体としては、例えば、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、モノエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、1,3−ブチレンジメタクリレートが挙げられるが、中でも、グラフト交叉剤としての機能を持つ点から、アリルメタクリレートがより好ましい。
本発明のゴム状重合体(B)における外層(b−2)の重量比率については、ゴム状重合体(B)中に5〜50重量%含まれることが好ましく、10〜50重量%含まれることがより好ましく、20〜40重量%が特に好ましい。ゴム状重合体(B)における外層(b−2)の重量比率が50重量%を超える場合は、本発明のゴム状重合体(B)を用いた塩化ビニル系樹脂組成物の耐衝撃性改良効果が劣る傾向があり、逆に外層(b−2)の重量比率が5重量%未満の場合は、ゴム状重合体(B)と塩化ビニル系樹脂(A)との相溶性が低下するため、耐衝撃性改良効果が得られにくくなる傾向にある。
前記ゴム状重合体(B)における外層(b−2)の組成としては、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル系のゴム状重合体が例示されるが、塩化ビニル系樹脂(A)へのゴム状重合体(B)の分散性の観点から、例えば、アクリル酸エステル52〜80重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体19.9〜47.9重量%、および多官能性単量体0.1〜10重量%(但し、これらの単量体の総量は100重量%)を重合してなる、ガラス転移温度が20℃以下のゴム状重合体であることが好ましい。更には、アクリル酸エステル60〜70重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体29.9〜39.9重量%、および多官能性単量体0.1〜5重量%を重合してなる、ガラス転移温度が20℃以下のゴム状重合体がより好ましい。
前記アクリル酸エステルとしては、例えば、内層(b−1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でもゴム状重合体(B)を配合した塩化ビニル系樹脂組成物の良好な加工性と、耐衝撃性付与効果の両立がより容易な点から、アクリル酸ブチルが最も好ましい。
前記メタクリル酸エステルとしては、例えば、内層(b−1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でもゴム状重合体(B)の塩化ビニル系樹脂への分散性の点から、メタクリル酸メチルが最も好ましい。
前記芳香族ビニル化合物としては、例えば、内層(b−1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でもスチレンがより好ましい。
前記ビニルシアン化合物としては、例えば、内層(b−1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でもアクリロニトリルがより好ましい。
前記多官能性単量体としては、例えば、内層(b−1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でもアリルメタクリレート、ジアリルフタレート、1,3−ブチレンジメタクリレートがより好ましい。
本発明におけるゴム状重合体(B)は、高度に耐衝撃性を付与する点から、ガラス転移温度が20℃以下の層のみで構成されることが好ましい。更には、内層(b−1)の全ての層のガラス転移温度は、外層(b−2)の全ての層のガラス転移温度より低いことがより好ましく、内層(b−1)の全ての層のガラス転移温度は、外層(b−2)の全ての層のガラス転移温度より20℃以上低いことが特に好ましい。
本発明のゴム状重合体(B)の体積平均粒子径は特に限定されるものではないが、0.05〜0.35μmであることが好ましく、更には0.08〜0.3μmであることがより好ましい。ゴム状重合体(B)の体積平均粒子径が0.35μmを超える場合は、耐衝撃性改良効果が発現しにくくなる場合があるだけでなく、塩化ビニル系樹脂組成物を用いて成形した成形体の表面光沢等の品質が低下する虞がある。一方、ゴム状重合体(B)の体積平均粒子径が0.05μm未満の場合は、耐衝撃性改良効果が発現しにくくなる場合がある。なお、上記体積平均粒子径は、例えば、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)を用いることにより測定することができる。
また、前記ゴム状重合体(B)の構造については特に制限されるものではないが、耐衝撃性を高度に改良する観点から、一般に応力集中度の増大効果が高いことが知られている、例えば、内部に中空部分を有する構造などが好適に使用されうる。
上記したゴム状重合体(B)は、塩化ビニル系樹脂(A)に配合することにより、高い耐衝撃性を発現させうるだけでなく、耐候性や成形体の表面光沢に代表される物性を低下させない塩化ビニル系樹脂組成物を得ることができる。
上記したグラフト共重合体(B)は公知の方法に従って製造することができるが、一般的な製造方法は、例えば、特開2002−363372号公報、特開2003−119396号公報、特開平9−286830号公報等に詳細に記述されている。ただし、これらに限定されるものではない。
本発明のゴム状重合体(B)においては、外層(b−2)の形成に前記多官能性単量体(架橋剤および/またはグラフト交叉剤)を必須成分として用いることに特徴を有する。ゴム状重合体(B)全体に対する多官能性単量体の使用量は、耐衝撃性を改良する観点から、0.1〜10重量%であることが好ましく、0.2〜5重量%であることがより好ましい。ゴム状重合体(B)全体の形成に用いる多官能性単量体の使用量が、10重量%を超えると耐衝撃性改良効果が発現しにくくなる場合がある。一方、ゴム状重合体(B)全体の形成に用いる多官能性単量体の使用量が0.1重量%未満の場合は、成形中にゴム状重合体(B)が形状を維持できない可能性があり、耐衝撃性改良効果が発現しにくくなる場合がある。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、高い耐衝撃性を有し、加工性に優れ、良好な表面光沢を得ることができるゴム状重合体(B)を用いることから、従来では達成が困難であった優れた物性バランスを達成することが可能となる。塩化ビニル系樹脂組成物中のゴム状重合体(B)の含有量は特に限定されないが、品質面、およびコスト面から、塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対し、0.5〜20重量部であることが望ましく、0.5〜10重量部がより好ましく、1〜7重量部であることが特に好ましい。塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対するゴム状重合体(B)の含有量が20重量部を超えた場合には、耐衝撃性改良効果は充分であるが、耐衝撃性以外の品質が低下する可能性があることやコストが上昇する場合がある。一方、ゴム状重合体(B)の含有量が0.5重量部未満の場合は、充分な耐衝撃性改良効果が得られにくくなる場合がある。
本発明において用いられうる塩化ビニル系樹脂(A)とは、塩化ビニルホモポリマー、または塩化ビニルから誘導された単位を少なくとも70重量%含有する共重合体を意味し、これに該当する公知のものが使用できる。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、滑剤、加工助剤等の添加剤を適宜添加することができる。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を製造する方法としては特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、塩化ビニル系樹脂(A)およびゴム状重合体(B)等を予めヘンシェルミキサー、タンブラーなどを用いて混合した後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロールなどを用いて溶融混練することにより樹脂組成物を得る方法などを採用することができる。
次に本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
(ゴム状重合体R1の作製)
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素流入口、単量体と乳化剤の添加装置を有するガラス反応器に、脱イオン水160重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.05重量部を仕込み、窒素気流中で攪拌しながら50℃に昇温した。次に2−エチルヘキシルアクリレート(以下2−EHAとも言う)8.96重量部、アリルメタクリレート(以下、AMAとも言う)0.04重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合物を仕込み、その10分後にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01重量部と硫酸第一鉄・7水和塩0.005重量部を蒸留水5重量部に溶解した混合液、およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2重量部を仕込んだ。1時間攪拌後、そこに2−EHA4.47重量部、AMA0.03重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.01重量部からなる単量体の混合物を15分間を要して滴下した。1時間攪拌後、そこにブチルアクリレート(以下、BAとも言う)74.13重量部、AMA0.37重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部からなる単量体の混合物を4時間を要して滴下した。また、前記の単量体混合物の添加とともに、1重量部のラウリル硫酸ナトリウムを5重量%濃度の水溶液にしたものを4時間にわたり連続的に追加した。単量体混合物添加終了後、1.5時間攪拌を続け、ガラス転移温度(以下、Tgとも言う):−50℃とTg:−54℃の2層の内層重合体ラテックスを得た。この重合体ラテックスに、外層成分として、BA7.16重量部、メチルメタクリレート(以下、MMAとも言う)4.78重量部、AMA0.06重量部、およびクメンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合物を50℃で30分間にわたって連続的に添加した。添加終了後、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部を添加し、さらに1時間攪拌を続けて重合を完結させた。単量体成分の重合転化率は99.0%であった。以上により、内層(b−1)含量88重量%、外層(b−2)(Tg:−10℃)含量12重量%のゴム状重合体R1のラテックスを得た。なお、このゴム状重合体R1のMICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)により測定した体積平均粒子径は、0.14μmであった。
(ゴム状重合体R1の作製)
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素流入口、単量体と乳化剤の添加装置を有するガラス反応器に、脱イオン水160重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.05重量部を仕込み、窒素気流中で攪拌しながら50℃に昇温した。次に2−エチルヘキシルアクリレート(以下2−EHAとも言う)8.96重量部、アリルメタクリレート(以下、AMAとも言う)0.04重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合物を仕込み、その10分後にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01重量部と硫酸第一鉄・7水和塩0.005重量部を蒸留水5重量部に溶解した混合液、およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2重量部を仕込んだ。1時間攪拌後、そこに2−EHA4.47重量部、AMA0.03重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.01重量部からなる単量体の混合物を15分間を要して滴下した。1時間攪拌後、そこにブチルアクリレート(以下、BAとも言う)74.13重量部、AMA0.37重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部からなる単量体の混合物を4時間を要して滴下した。また、前記の単量体混合物の添加とともに、1重量部のラウリル硫酸ナトリウムを5重量%濃度の水溶液にしたものを4時間にわたり連続的に追加した。単量体混合物添加終了後、1.5時間攪拌を続け、ガラス転移温度(以下、Tgとも言う):−50℃とTg:−54℃の2層の内層重合体ラテックスを得た。この重合体ラテックスに、外層成分として、BA7.16重量部、メチルメタクリレート(以下、MMAとも言う)4.78重量部、AMA0.06重量部、およびクメンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合物を50℃で30分間にわたって連続的に添加した。添加終了後、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部を添加し、さらに1時間攪拌を続けて重合を完結させた。単量体成分の重合転化率は99.0%であった。以上により、内層(b−1)含量88重量%、外層(b−2)(Tg:−10℃)含量12重量%のゴム状重合体R1のラテックスを得た。なお、このゴム状重合体R1のMICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)により測定した体積平均粒子径は、0.14μmであった。
ゴム状重合体R1のラテックスを温度5℃に冷却し、加圧ノズルの一種である旋回流式円錐ノズルでノズル径0.6mmを用い、噴霧圧力3.7kg/cm2にて、塔底部液面からの高さ5m、直径60cmの円筒状の装置中に、体積平均液滴径が約200μmの液滴となるように噴霧した。それと同時に、30重量%濃度の塩化カルシウム水溶液を、塩化カルシウム固形分がゴム状重合体R1固形分100重量部に対し5〜15重量部となるように二流体ノズルにて空気と混合しながら、液滴径0.1〜10μmで噴霧した。塔内を落下したラテックス液滴は、塔底部にて1℃の1.0重量%濃度の塩化カルシウム水溶液を入れた受槽に投入され、これを回収した。
得られた凝固ラテックス粒子水溶液に、5重量%濃度のパルミチン酸カリウム水溶液をパルミチン酸カリウム固形分がゴム状重合体R1固形分100重量部に対し1.5重量部となるよう添加し、熱処理した後脱水、乾燥することにより、白色樹脂粉末を調製した。
(塩化ビニル系樹脂組成物の調製、成形体の調製、および評価)
塩化ビニル樹脂(カネビニールS−1001、株式会社カネカ製、平均重合度1000)100重量部、鉛系ワンパック安定剤(LGC3203、ACROS社製)4.5重量部、酸化チタン4.5重量部、炭酸カルシウム8重量部、メチルメタクリレート系重合体(該重合体0.1gを100mlのクロロホルムに溶解した溶液の30℃における比粘度が0.5未満のメチルメタクリレート系重合体)の加工助剤(カネエースPA−20、株式会社カネカ製)0.5重量部、およびゴム状重合体R1粉末6重量部をヘンシェルミキサーにてブレンドしてパウダーコンパウンドを得た。
塩化ビニル樹脂(カネビニールS−1001、株式会社カネカ製、平均重合度1000)100重量部、鉛系ワンパック安定剤(LGC3203、ACROS社製)4.5重量部、酸化チタン4.5重量部、炭酸カルシウム8重量部、メチルメタクリレート系重合体(該重合体0.1gを100mlのクロロホルムに溶解した溶液の30℃における比粘度が0.5未満のメチルメタクリレート系重合体)の加工助剤(カネエースPA−20、株式会社カネカ製)0.5重量部、およびゴム状重合体R1粉末6重量部をヘンシェルミキサーにてブレンドしてパウダーコンパウンドを得た。
得られたパウダーコンパウンドを8インチテストロールを用い、180℃で5分間混練りした後、190℃のプレスで15分間加圧して厚さ3.0mmの成形体を得た。この成形体から耐衝撃性試験片を作製し、JIS K−7111に準じてシャルピー強度を測定した。シャルピー強度の結果を表1に示す。
(比較例1および2)
外層(b−2)の組成を表1に示した組成に変更する以外は、実施例1と同様の方法でゴム状重合体のラテックスR2およびR3を作製した。また、ゴム状重合体のラテックスR2およびR3を使用する以外は、実施例1と同様の方法で白色樹脂粉末の回収を実施した。しかしながら、ゴム状重合体R2を使用した場合は、凝固ラテックス粒子が塊状化したため樹脂粉末を回収することができなかった。
外層(b−2)の組成を表1に示した組成に変更する以外は、実施例1と同様の方法でゴム状重合体のラテックスR2およびR3を作製した。また、ゴム状重合体のラテックスR2およびR3を使用する以外は、実施例1と同様の方法で白色樹脂粉末の回収を実施した。しかしながら、ゴム状重合体R2を使用した場合は、凝固ラテックス粒子が塊状化したため樹脂粉末を回収することができなかった。
得られたゴム状重合体R3を使用する以外は、実施例1と同様の方法で成形体を得、シャルピー強度を測定した。シャルピー強度の結果を表1に示す。
表1には、実施例および比較例で得られたゴム状重合体の各層の組成とTg、内層(b−1)/外層(b−2)比率、ゴム状重合体の粒子径、および実施例および比較例で得られたゴム状重合体を塩化ビニル系樹脂に配合してロール・プレス成形した成形体の耐衝撃強度(シャルピー強度)を示した。
実施例1および比較例1、2より、ゴム状重合体(B)が本発明で規定する範囲内のものであれば、高い耐衝撃性改良効果が得られることがわかる。
Claims (6)
- 塩化ビニル系樹脂(A)100重量部、並びに内層(b−1)50〜95重量%および外層(b−2)5〜50重量%を有し、ガラス転移温度が20℃以下の層のみで構成されるゴム状重合体(B)0.5〜20重量部を含有する塩化ビニル系樹脂組成物であって、前記外層(b−2)が、アクリル酸エステル52〜80重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体19.9〜47.9重量%、および多官能性単量体0.1〜10重量%を重合してなることを特徴とする、塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記ゴム状重合体(B)の内層(b−1)が、アクリル酸エステル81〜99.9重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体0〜18.9重量%、および多官能性単量体0.1〜10重量%を重合してなることを特徴とする、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記ゴム状重合体(B)の体積平均粒子径が0.05μm〜0.35μmであることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記ゴム状重合体(B)の内層(b−1)を構成するアクリル酸エステルが、炭素原子が2〜8個のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルであることを特徴とする、請求項2または3のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記ゴム状重合体(B)の外層(b−2)を構成するアクリル酸エステルが、アクリル酸ブチルであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記ゴム状重合体(B)の外層(b−2)を構成しうるメタクリル酸エステルが、メタクリル酸メチルであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
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- 2006-03-08 JP JP2006063275A patent/JP2007238773A/ja active Pending
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