JP2007246634A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、優れた耐候性と高い耐衝撃性を有する、新規な熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、複数の層から構成されるコア(bc)を有するグラフト共重合体(B)0.5〜20重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、前記コア(bc)が、多官能性単量体を0.1〜1.5重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc1)40〜98重量%、および多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)2〜60重量%から構成され、さらに、グラフト共重合体(B)100重量部に対し、(C)物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物を0.01〜3.0重量部含有することを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、優れた耐候性と高い耐衝撃性を有する、熱可塑性樹脂およびグラフト共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物に関する。
熱可塑性樹脂の耐衝撃性を改良するために、乳化重合法や懸濁重合法で得られるジエン系またはアクリレート系のグラフト共重合体を熱可塑性樹脂に添加することが従来から広く利用されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、ジエン系のグラフト共重合体を熱可塑性樹脂に配合して使用すると、耐衝撃性は改良されるが耐候性が悪いため、製造された成形品を屋外で使用した場合には、耐衝撃性が著しく低下するという欠点がある。それゆえ、屋外用途耐衝撃性改良剤として、ジエン系の耐候性を改良し、かつ耐衝撃性を付与するため、アルキル(メタ)アクリレートを主体としたグラフト共重合体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
一般に、(メタ)アクリレート系のゴムは、ジエン系のゴムに比べて耐衝撃性の改良効果が小さいことから、熱可塑性樹脂への配合量を多くする必要がある。しかしながら、熱可塑性樹脂の耐衝撃性を改良する分野では、耐衝撃性改良剤であるグラフト共重合体の配合量をできる限り少なくすることが、品質面あるいはコスト面から望まれており、その点を改良するための検討が長年にわたり実施されてきた(例えば、特許文献3〜5参照)。
グラフト共重合体による熱可塑性樹脂への耐衝撃性付与効果を改良する方法は種々知られているが、中でも、グラフト共重合体中の(メタ)アクリレート系ゴムのガラス転移温度を下げる、あるいはグラフト共重合体中の(メタ)アクリレート系ゴムの重量比を上げる等、グラフト共重合体中の軟質成分の質および量を向上する方法が、その目的において効果的であることが知られている。特に、グラフト共重合体中のゴムの重量比を90重量%以上にすることは、高度に耐衝撃性を付与するための効果的な方法であると思われる。
例えば、グラフト共重合体中のゴムの重量比が高い耐衝撃性改良剤を得るために、最内層ポリマーを特定の単量体組成とし、耐衝撃性改良剤の粒子径を特定の範囲に規定した技術が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
しかしこの方法では、ゴムの重量比を高くすることができるものの、耐衝撃性改良剤の粒子径に制限があることで耐衝撃性以外の品質の低下が避けられない等の課題がある。例えば、グラフト共重合体の粒子径を大きくすることは、成形体の表面光沢に代表される物性の低下を引き起こすことが知られている。また、塩化ビニル系樹脂組成物中における耐衝撃性改良剤の粒子径は、大きい場合には応力集中度の増大効果があるものの、同時に粒子間距離が長くなることによる応力集中度の低下が起こることが知られており、特に、耐衝撃性改良剤の配合部数が少ない場合には粒子間距離が長くなることの影響が大きくなり、充分に耐衝撃性改良効果が得られないという問題があることから、満足な方法とは言えない。
一方、粘着質なゴム状高分子ラテックスを粘着性の少ない樹脂粉体として回収する方法として、分子中にカルボキシル基および/または水酸基を有する高分子量ポリアニオンをゴムラテックスに添加し、その混合ラテックスをアルカリ土類金属の少なくとも1種を含有する水溶液に滴下する方法が知られている(例えば、特許文献7参照)。
しかしこの方法では、高分子量ポリアニオンをゴムラテックス中のゴム固形分100重量部に対し少なくとも2〜8重量部、好ましくは4〜6重量部加えなければ、回収した樹脂粉体の粘着性を抑制できないと記載されている。通常、高分子ラテックスに対し4重量部以上もの異物(即ち、この場合は高分子量ポリアニオン)を添加すると、種々の目的で使用されうる回収ポリマー組成物自体が有する本来の品質が低下することが容易に想定できる。特に、熱可塑性樹脂等への耐衝撃性付与の目的において、できる限り配合量を削減することが望まれている耐衝撃性改良剤に適応した場合、耐衝撃性付与効果等の品質の低下は避けられないことから、満足な方法とは言い難い。
また、グラフト共重合体の耐衝撃性改良効果を高めるために、0.1〜5重量%の範囲で架橋剤量を選択した複数の架橋密度を有する層からなるゴム質コアを含有するグラフト共重合体に関する技術が開示されている(例えば、特許文献8参照)。
しかしながら架橋密度が高いことがより耐衝撃性改良効果を付与できることについては開示も示唆もされておらず、即ち、ゴム質コアの架橋密度を下げることで耐衝撃性改良効果を付与していることから、グラフト共重合体ラテックスから粉体を回収する際に、粒子の塊状化や粗大化が起こる可能性がある。このため、高度に耐衝撃性を改良できないことから、満足な方法とは言い難い。
つまり、耐衝撃性向上と耐衝撃性改良剤添加による加工性、品質の低下やコスト上昇という相反する両物性を高いレベルで満足させうる熱可塑性樹脂組成物の開発が、未だ期待され続けているのが現状である。
特公昭39−19035号公報 特公昭51−28117号公報 特公昭42−22541号公報 特開平2−1763号公報 特開平8−100095号公報 韓国特許公開第2004−62761号明細書 特開昭52−37987号公報 特表2005−515280号公報
本発明は、優れた耐候性と高い耐衝撃性を有する、新規な熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
上記のような現状に鑑み、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定の層構造を有するグラフト共重合体(B)を熱可塑性樹脂組成物に配合した場合に、耐候性を低下させることなく、優れた耐衝撃性を発現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、複数の層から構成されるコア(bc)を有するグラフト共重合体(B)0.5〜20重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、前記コア(bc)が、多官能性単量体を0.1〜1.5重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc1)40〜98重量%、および多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)2〜60重量%から構成され、さらに、グラフト共重合体(B)100重量部に対し、(C)物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物を0.01〜3.0重量部含有することを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)が、コア(bc)中の少なくとも最外部に存在することを特徴とする、前記の熱可塑性樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)が、コア(bc)中の少なくとも最内部に存在することを特徴とする、前記いずれかの熱可塑性樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記グラフト共重合体(B)が、前記複数の層から構成されるコア(bc)60〜99.5重量%、および(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体を重合してなるシェル(bs)0.5〜40重量%からなることを特徴とする、前記いずれかの熱可塑性樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記多官能性単量体を0.1〜1.5重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc1)が、アクリル酸エステル80〜99.9重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体0〜19.9重量%、および多官能性単量体0.1〜1.5重量%を重合してなることを特徴とする、前記いずれかの熱可塑性樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)が、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、水溶性アルギン酸誘導体、寒天、ゼラチン、カラギーナン、グルコマンナン、ペクチン、カードラン、ジェランガム、およびポリアクリル酸誘導体から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、前記いずれかの熱可塑性樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)が、水溶性アルギン酸誘導体であることを特徴とする、前記の熱可塑性樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記熱可塑性樹脂(A)が、塩化ビニル系樹脂であることを特徴とする、前記いずれかの熱可塑性樹脂組成物に関する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、優れた耐候性と高い耐衝撃性を発現することができる。
本発明のグラフト共重合体(B)中における複数の層から構成されるコア(bc)は、多官能性単量体を0.1〜1.5重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc1)40〜98重量%、および多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)2〜60重量%(但し、bc1とbc2の総量は100重量%)から構成される層構造を有するものであるが、前記多官能性単量体を0.1〜1.5重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc1)および多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)については、例えば、各々が1層であってもよく、または少なくともいずれかの層が2層以上から構成されうる多層構造であっても好適に使用されうる。中でも、多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)は、高度に耐衝撃性改良効果を付与できる点から、コア(bc)中の最外部および/または最内部に存在することが好ましい。前記コア(bc)の多層構造は、種々の目的に応じて任意に選択されうる。
本発明のグラフト共重合体(B)は、多官能性単量体の含有量が異なる単量体混合物を重合してなる複数の層から構成されるコア(bc)60〜99.5重量%、および(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体を重合してなるシェル(bs)0.5〜40重量%(但しコアとシェルの総量は100重量%)から構成される層構造を有するものが好ましい。更に、グラフト共重合体(B)におけるコア(bc)とシェル(bs)の重量比率は、高い耐衝撃性改良効果と、グラフト共重合体(B)を熱可塑性樹脂組成物に配合して成形した際の加工性の両立の観点から、コア(bc)は70〜98重量%がより好ましく、60〜95重量%が特に好ましい。シェル(bs)は2〜30重量%がより好ましく、5〜40重量%が特に好ましい。前記シェル(bs)については、例えば、1層であってもよく、または2層以上から構成されうる多層構造であっても良い。前記グラフト共重合体(B)の多層構造は、種々の目的に応じて任意に選択されうる。
本発明において多層構造の概念については、例えば、多官能性単量体を0.1〜1.5重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc1)が内層で、多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)が外層となる場合について説明すると、通常は、層(bc1)に層(bc2)が完全に被覆した層構造が一般的であるが、(bc1)と(bc2)の重量比等によっては、層構造を形成するための外層量が不充分な場合もありうる。そのような場合は、前記のような完全な層構造である必要はなく、層(bc1)の一部を層(bc2)が被覆した構造であってもよく、或いは層(bc1)の一部に層(bc2)の構成要素である単量体がグラフト重合した構造も好適に用いることができる。なお、上記層構造の概念は、本発明のグラフト共重合体(B)におけるコア(bc)とシェル(bs)の層構造、またはコア(bc)中若しくはシェル(bs)中において多層構造が形成される場合にも同様に当てはまる。
本発明のグラフト共重合体(B)は、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、マイクロサスペンション重合法、ミニエマルション重合法、水系分散重合法などにより製造することができる。中でも、構造制御が容易である点から、乳化重合法により製造されたグラフト共重合体を好適に用いることができる。
前記グラフト共重合体(B)のコア(bc)における多官能性単量体を0.1〜1.5重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc1)の重量比率については、コア(bc)中に40〜98重量%含まれることが好ましく、更には50〜95重量%がより好ましく、60〜90重量%が特に好ましい。コア(bc)中の多官能性単量体を0.1〜1.5重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc1)の重量比率が40重量%未満の場合、あるいは98重量%を超える場合には、本発明のグラフト共重合体(B)を用いた熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性改良効果が劣る傾向がある。
前記コア(bc)における多官能性単量体を0.1〜1.5重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc1)の組成としては、多官能性単量体を0.1〜1.5重量%含有する限り特に制限されないが、耐候性等の観点から、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系のゴム状重合体であることが好ましい。中でも、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性に代表される品質の観点から、例えば、アクリル酸エステル80〜99.9重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体0〜19.9重量%、および多官能性単量体0.1〜1.5重量%(但し、これらの単量体の総量は100重量%)を重合してなる、ゴム状重合体であることが好ましい。更には、アクリル酸エステル85〜99.8重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体0〜14.8重量%、および多官能性単量体0.2〜1重量%を重合してなるゴム状重合体がより好ましい。前記層(bc1)中における多官能性単量体の重量比率が0.1重量%未満の場合は、成形中にグラフト共重合体(B)が形状を維持できない可能性があり、耐衝撃性改良効果が発現しにくくなる場合がある。逆に、層(bc1)中における多官能性単量体の重量比率が1.5重量%を超える場合は、耐衝撃性改良効果が得られにくくなる傾向にある。なお、本発明において(メタ)アクリルとは、特に断らない限り、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
前記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル等のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基を有するアクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有するアクリル酸エステル類、またはアルコキシル基を有するアクリル酸エステル類が挙げられる。中でも重合の容易さの点から、炭素原子が2〜8個のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
前記メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル等のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基を有するメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有するメタクリル酸エステル類、またはアルコキシル基を有するメタクリル酸エステル類が挙げられるが、中でも、例えば、グラフト共重合体(B)を塩化ビニル系樹脂組成物に配合して成形した際の加工性の点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジルがより好ましい。
前記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン等が挙げられるが、中でも、例えば、グラフト共重合体(B)を塩化ビニル系樹脂組成物に配合して成形した際の加工性の点から、スチレンがより好ましい。
前記ビニルシアン化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられるが、中でもアクリロニトリルがより好ましい。
前記多官能性単量体としては、例えば、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、モノエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、1,3−ブチレンジメタクリレートが挙げられるが、中でも、高度に耐衝撃性付与効果が得られる点から、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、1,3−ブチレンジメタクリレートがより好ましい。
本発明のコア(bc)における多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)の重量比率については、コア(bc)中に2〜60重量%含まれることが好ましく、更には5〜50重量%がより好ましく、10〜40重量%が特に好ましい。コア(bc)における多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)の重量比率が60重量%を超える場合、あるいは2重量%未満の場合には、耐衝撃性改良効果が得られにくくなる傾向にある。
前記コア(bc)における多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)の組成としては、多官能性単量体を1.6〜15重量%含有している限り特に制限されないが、耐候性等の観点からポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル系のゴム状重合体であることが好ましい。中でも、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性に代表される品質の観点から、例えば、アクリル酸エステル80〜98.4重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体0〜18.4重量%、および多官能性単量体1.6〜15重量%(但し、これらの単量体の総量は100重量%)を重合してなるゴム状重合体であることが好ましい。更には、アクリル酸エステル85〜98.2重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体0〜13.2重量%、および多官能性単量体1.8〜10重量%を重合してなるゴム状重合体がより好ましい。層(bc2)中における多官能性単量体の重量比率が1.6重量%未満の場合、あるいは逆に15重量%を超える場合には、耐衝撃改良効果が得られにくくなる傾向にある。
前記アクリル酸エステルとしては、例えば、前記層(bc1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でも重合の容易さの点から、炭素原子が2〜8個のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
前記メタクリル酸エステルとしては、例えば、前記層(bc1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でも、例えば、グラフト共重合体(B)を塩化ビニル系樹脂組成物に配合して成形した際の加工性の点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジルがより好ましい。
前記芳香族ビニル化合物としては、例えば、前記層(bc1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でもスチレンがより好ましい。
前記ビニルシアン化合物としては、例えば、前記層(bc1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でもアクリロニトリルがより好ましい。
前記多官能性単量体としては、例えば、前記層(bc1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でもアリルメタクリレート、ジアリルフタレート、1,3−ブチレンジメタクリレートがより好ましい。
本発明のグラフト共重合体(B)におけるシェル(bs)の組成としては特に制限はないが、熱可塑性樹脂(A)へのグラフト共重合体(B)の相溶性の観点からポリ(メタ)アクリル酸エステル系の重合体であることが好ましい。中でも、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性に代表される品質の観点から、例えば、(メタ)アクリル酸エステル80〜100重量%、多官能性単量体0〜5重量%、並びに芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体0〜20重量%(但し、これらの単量体の総量は100重量%)を重合してなる重合体であることが好ましい。更には、アクリル酸エステル0〜80重量%、メタクリル酸エステル20〜100重量%、多官能性単量体0〜5重量%、並びに芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体0〜20重量%を重合してなる重合体がより好ましい。なお、シェルの重合には必要に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。
前記アクリル酸エステルとしては、例えば、前記層(bc1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でも重合の容易さの点から、炭素原子が2〜8個のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
前記メタクリル酸エステルとしては、例えば、前記層(bc1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でも、例えば、グラフト共重合体(B)を塩化ビニル系樹脂組成物に配合して成形した際の加工性の点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジルがより好ましい。
前記芳香族ビニル化合物としては、例えば、前記層(bc1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でもスチレンがより好ましい。
前記ビニルシアン化合物としては、例えば、前記層(bc1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でもアクリロニトリルがより好ましい。
前記多官能性単量体としては、例えば、前記層(bc1)で使用されうるものと同様のものが例示されるが、中でもアリルメタクリレート、ジアリルフタレート、1,3−ブチレンジメタクリレートがより好ましい。
本発明のグラフト共重合体(B)中におけるコア(bc)の体積平均粒子径は特に限定されるものではないが、0.05〜0.35μmであることが好ましく、更には0.08〜0.3μmであることがより好ましい。グラフト共重合体(B)におけるコア(bc)の体積平均粒子径が0.35μmを超える場合は、耐衝撃性改良効果が発現しにくくなる場合があり、例えば、本発明のグラフト共重合体(B)を、熱可塑性樹脂組成物に配合して成形した成形体の表面光沢等の品質が低下する虞がある。一方、グラフト共重合体(B)におけるコア(bc)の体積平均粒子径が0.05μm未満の場合は、耐衝撃性改良効果が発現しにくくなる場合がある。なお、上記体積平均粒子径は、例えば、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)を用いることにより測定することができる。
また、前記グラフト共重合体(B)の構造については特に制限されるものではないが、耐衝撃性を高度に改良する観点から、一般に応力集中度の増大効果が高いことが知られている、例えば、内部に中空部分を有する構造や凝集部分を有する構造などが好適に使用されうる。
上記したグラフト共重合体(B)は、熱可塑性樹脂(A)に配合することにより、高い耐衝撃性を発現させうるだけでなく、耐候性や成形体の表面光沢に代表される物性を低下させない熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
上記したグラフト共重合体(B)は公知の方法に従って製造することができるが、一般的な製造方法は、例えば、特開2002−363372号公報、特開2003−119396号公報、特開平9−286830号公報等に詳細に記述されている。ただし、これらに限定されるものではない。
本発明の組成物においては、熱可塑性樹脂に対し、グラフト共重合体(B)と共に、物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)を含有させることに特徴を有する。ここで物理ゲルとは、高分子間の水素結合やイオン結合あるいはキレート形成などによって形成される物理的橋架けによるゲルを意味する。また、物理ゲルを形成する性質を有するとは、水溶性高分子化合物単独の水溶液に、無機塩や酸等のゲル化剤の添加により、粘性流体(ゾル)から弾性体(ゲル)への変化が視覚的にとらえられることを意味し、本発明において、物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)とは、上記性質を有する水溶性高分子化合物と定義する。
本発明で用いることのできる物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物としては、上記性質を発現できるものであれば特に制限はないが、例えば、次の群から選ばれた1種または2種以上の混合物からなる水溶性高分子化合物を用いることができる。例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等の水溶性アルギン酸誘導体、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、寒天、ゼラチン、カラギーナン、グルコマンナン、ペクチン、カードラン、ジェランガム、ポリアクリル酸誘導体等が例示されうる。本発明においては、その目的を達成する意味において、これらの中でもカルボキシメチルセルロース、水溶性アルギン酸誘導体、若しくはポリアクリル酸誘導体がより好ましく、中でも水溶性アルギン酸誘導体が最も好ましく使用されうる。
なお、上記水溶性アルギン酸誘導体中のマンヌロン酸とグルロン酸の比率には特に制限はないが、グルロン酸比率が高いほど物理ゲルの形成能力が高くなる傾向にあるため好ましく、通常は水溶性アルギン酸誘導体中のグルロン酸比率が5重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。また、上記水溶性アルギン酸誘導体に代表される水溶性高分子化合物の分子量には特に制限はないが、製造時の移液性の点から、B型粘度計により測定した1.0重量%濃度における水溶液の粘度が2〜22000mPa・sであることが好ましく、2〜1000mPa・sであることがより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における(C)物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物の添加方法としては、まず(C)を前記グラフト共重合体(B)に配合した上で、これを耐衝撃性改良剤として熱可塑性樹脂(A)に配合するのが効果的である。特に前記グラフト共重合体(B)のラテックスに(C)物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物を添加して、これを処理する方法が有効である。
本発明における物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)の含有量は、グラフト共重合体(B)100重量部に対し、0.01〜3.0重量部であることが好ましく、更には0.05〜1.8重量部であることがより好ましい。物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)の含有量が0.01重量部よりも少ない場合は、耐衝撃性改良剤となるグラフト共重合体(B)を回収する際に粗大化や塊状化が起こりやすくなる傾向にあり、これらの粗大化あるいは塊状化したグラフト共重合体が存在する場合は耐衝撃性付与効果が劣る傾向がある。逆に、物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)の含有量が3.0重量部よりも多い場合は、グラフト共重合体を回収する際に粗大化や塊状化の抑制効果は向上するものの、耐衝撃性改良剤中に多量の水溶性高分子化合物(それに由来する物質を含む)が残存してしまい、耐衝撃性付与効果や成形加工時の熱安定性等の品質が低下する傾向にある。
また、本発明においては、物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)と共にゲル化剤を使用することが好ましい。本発明において使用され得るゲル化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、よう化カリウム、よう化リチウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸カドミウム、塩化バリウム、塩化第一鉄、塩化マグネシウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、鉄ミョウバン等の無機塩類、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸類、酢酸、蟻酸等の有機酸類、および酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、蟻酸ナトリウム、蟻酸カルシウム等の有機酸の塩類を単独または混合したものを用いることができる。これらの中でも、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸カドミウム、塩化バリウム、塩化第一鉄、塩化マグネシウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、鉄ミョウバン等の無機塩類、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸類、酢酸、蟻酸等の有機酸類を、単独または2種以上混合したものが好適に使用されうる。
なお本発明において、物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)として水溶性アルギン酸誘導体を用いる場合は、ゲル化剤として、塩化カルシウム、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウムなどが好適に使用されうる。
前記ゲル化剤の添加量には特に制限はないが、ゲル化剤の大部分はゴム状重合体回収時における水洗工程により洗い流すことが可能で、グラフト共重合体(B)100重量部に対し1重量部未満残留していることが好ましく、更には0.01〜0.5重量部であることがより好ましい。グラフト共重合体(B)100重量部に対するゲル化剤の残留量が1重量部を超える場合には、例えば、熱可塑性樹脂に配合し、成形する際の加工性が変化する可能性があり、高い耐衝撃性効果が発現しにくくなる傾向があるだけでなく、成形体が黄変するなどの問題を引き起こす虞がある。
なお、グラフト共重合体(B)の回収時におけるゲル化剤の使用量は、グラフト共重合体(B)100重量部に対するゲル化剤の残留量が、1重量部未満であれば特に制限はないが、回収の容易さ、および製造コストの観点から、グラフト共重合体(B)に対し0.2〜20重量部が好ましく、更には1〜10重量部がより好ましい。
本発明において、物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)を、好ましくは共にゲル化剤を含有させる目的は、(1)グラフト共重合体(B)の凝固粒子中に非粘着性の物理ゲルが共存することにより、回収途中の凝固粒子の耐ブロッキング性および凝固粒子形態保持性(凝固粒子への弾性の付与)を向上させることができる、(2)グラフト共重合体(B)の凝固粒子を乾燥した後においても、凝固粒子中に非粘着性の物理ゲルの乾燥物が共存することにより、凝固粒子の耐ブロッキング性および凝固粒子形態保持性(凝固粒子への弾性の付与)を向上させ、粗大化や塊状化を抑制できるためである。
また、本発明のグラフト共重合体(B)には、さらに融着防止剤を添加することができる。本発明で用いることのできる融着防止剤には特に制限はないが、耐衝撃性改良効果等の品質と粗大化や塊状化を抑制する効果をより高いレベルで満足させることが可能となる点から、例えば、陰イオン性界面活性剤の多価金属塩および/またはシリコンオイルが好適に使用されうる。
本発明における熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、カーボネート系樹脂、アミド系樹脂、エステル系樹脂、オレフィン系樹脂などを好適に使用することが可能である。しかし、これらに限定されるものではない。
中でも、特に本発明におけるグラフト共重合体(B)を塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性改良剤として用いた場合に、優れた効果を発現しうることから、塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。なお、本発明において塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルホモポリマー、または塩化ビニルから誘導された単位を少なくとも70重量%含有する共重合体を意味し、これに該当する公知のものが使用できる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高い耐衝撃性を有し、加工性に優れ、良好な表面光沢を得ることができるグラフト共重合体(B)を用いることから、従来では達成が困難であった優れた物性バランスを達成することが可能となる。熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(B)の含有量は特に限定されないが、品質面およびコスト面から、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、0.5〜20重量部であることが望ましく、0.5〜10重量部がより好ましく、1〜7重量部であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂(A)100重量部に対するグラフト共重合体(B)の含有量が20重量部を超えた場合には、耐衝撃性改良効果は充分であるが耐衝撃性以外の品質が低下する可能性があることやコストが上昇する場合がある。一方、グラフト共重合体(B)の含有量が0.5重量部未満の場合は、充分な耐衝撃性改良効果が得られにくくなる場合がある。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、滑剤、加工助剤等の添加剤を適宜添加することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法としては特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、熱可塑性樹脂(A)並びにグラフト共重合体(B)および物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)を含む粉体等を予めヘンシェルミキサー、タンブラーなどを用いて混合した後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロールなどを用いて溶融混練することにより樹脂組成物を得る方法などを採用することができる。
次に本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
(グラフト共重合体G1の作製)
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素流入口、単量体と乳化剤の添加装置を有するガラス反応器に、脱イオン水160重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.04重量部を仕込み、窒素気流中で攪拌しながら45℃に昇温した。次にブチルアクリレート(以下、BAとも言う)8.95重量部、アリルメタクリレート(以下、AMAとも言う)0.05重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合物を仕込み、その10分後にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01重量部と硫酸第一鉄・7水和塩0.005重量部を蒸留水5重量部に溶解した混合液、およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2重量部を仕込んだ。1時間攪拌後、パルミチン酸カリウム0.15重量部を蒸留水2重量部に溶解した水溶液を仕込んだ。次にBA30.85重量部、AMA0.15重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.06重量部からなる単量体の混合物を1.5時間を要して滴下した。単量体の混合物の滴下開始から1時間後、パルミチン酸カリウム0.15重量部を蒸留水2重量部に溶解した水溶液を仕込んだ。単量体の混合物の滴下終了後、1時間攪拌し、BA44.10重量部、AMA0.90重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.09重量部からなる単量体の混合物を2時間を要して滴下した。単量体の混合物の滴下開始から30分後および1.5時間後に、パルミチン酸カリウム0.15重量部を蒸留水2重量部に溶解した水溶液を仕込んだ。単量体の混合物滴下終了後、1時間攪拌を続け、多官能性単量体比率0.5重量%の層(bc1)47重量%および多官能性単量体比率2.0重量%の層(bc2)53重量%からなる、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)により測定した体積平均粒子径が0.19μmのコア(bc)ラテックスを得た。このコア(bc)ラテックスにシェル(bs)成分として、メチルメタクリレート(以下、MMAとも言う)13.20重量部、ブチルメタクリレート(以下、BMAとも言う)1.80重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.03重量部からなる単量体の混合物を45分間を要して滴下した。滴下終了後、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部を添加し、さらに1時間攪拌を続けて重合を完結させ、グラフト共重合体G1のラテックスを得た。
グラフト共重合体G1のラテックス(ポリマー固形分100重量部)に、1.5重量%濃度のアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ社製アルギテックスLL)水溶液(B型粘度計により測定した水溶液粘度が120mPa・s)をアルギン酸ナトリウム固形分がグラフト共重合体G1の固形分100重量部に対し0.4重量部となるように添加し、3分間撹拌混合して混合ラテックスを作製した。温度20℃の混合ラテックスを、加圧ノズルの一種である旋回流式円錐ノズルでノズル径0.6mmを用い、噴霧圧力3.7kg/cm2にて、塔底部液面からの高さ5m、直径60cmの円筒状の装置中に、体積平均液滴径が約200μmの液滴となるように噴霧した。それと同時に、30重量%濃度の塩化カルシウム水溶液を、塩化カルシウム固形分がグラフト共重合体G1の固形分100重量部に対し5〜15重量部となるように二流体ノズルにて空気と混合しながら、液滴径0.1〜10μmで噴霧した。塔内を落下した混合ラテックス液滴は、塔底部にて30℃の1.0重量%濃度の塩化カルシウム水溶液を入れた受槽に投入され、これを回収した。
得られた凝固ラテックス粒子水溶液に、5重量%濃度のパルミチン酸カリウム水溶液をパルミチン酸カリウム固形分がグラフト共重合体G1の固形分100重量部に対し1重量部となるよう添加し、これを熱処理した後、脱水、乾燥することにより、白色樹脂粉末を調製した。
(塩化ビニル系樹脂組成物の調製、成形体の調製および評価)
塩化ビニル樹脂(カネビニールS−1001、株式会社カネカ製、平均重合度1000)100重量部、鉛系ワンパック安定剤(LGC3203、ACROS社製)4.5重量部、酸化チタン4.5重量部、炭酸カルシウム8重量部、メチルメタクリレート系重合体(該重合体0.1gを100mlのクロロホルムに溶解した溶液の30℃における比粘度が0.5未満のメチルメタクリレート系重合体)の加工助剤(カネエースPA−20、株式会社カネカ製)0.5重量部、および前記白色樹脂粉末をグラフト共重合体G1の添加量が6重量部となるように配合し、これをヘンシェルミキサーにてブレンドしてパウダーコンパウンドを得た。
得られたパウダーコンパウンドを8インチテストロールを用い、180℃で5分間混練りした後、190℃のプレスで15分間加圧して厚さ3.0mmの成形体を得た。この成形体から耐衝撃性試験片を作製し、JIS K−7111に準じてシャルピー強度を測定した。シャルピー強度の結果を表1に示す。
(比較例1)
(グラフト共重合体G2の作製)
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素流入口、単量体と乳化剤の添加装置を有するガラス反応器に、脱イオン水160重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.04重量部を仕込み、窒素気流中で攪拌しながら45℃に昇温した。次にBA8.95重量部、AMA0.05重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合物を仕込み、その10分後にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01重量部と硫酸第一鉄・7水和塩0.005重量部を蒸留水5重量部に溶解した混合液、およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2重量部を仕込んだ。1時間攪拌後、パルミチン酸カリウム0.15重量部を蒸留水2重量部に溶解した水溶液を仕込んだ。次にBA74.95重量部、AMA1.05重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.15重量部からなる単量体の混合物を3.5時間を要して滴下した。単量体の混合物の滴下開始から1時間後、2時間後および3時間後に、それぞれパルミチン酸カリウム0.15重量部を蒸留水2重量部に溶解した水溶液を仕込んだ。単量体の混合物の滴下終了後、1時間攪拌し、多官能性単量体比率1.29重量%の層のみからなる、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)により測定した体積平均粒子径が0.19μmのコア(bc)ラテックスを得た。このコア(bc)ラテックスにシェル(bs)成分として、MMA13.20重量部、BMA1.80重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.03重量部からなる単量体の混合物を45分間を要して滴下した。滴下終了後、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部を添加し、さらに1時間攪拌を続けて重合を完結させ、グラフト共重合体G2のラテックスを得た。
使用するラテックスをグラフト共重合体G2のラテックスに変更する以外は、実施例1と同様の方法で白色樹脂粉末を回収した。グラフト共重合体G2の白色樹脂粉末を使用する以外は、実施例1と同様の方法で成形体を得、シャルピー強度を測定した。シャルピー強度の結果を表1に示す。
表1には、実施例1および比較例1で得られたグラフト共重合体のコア(bc)中の各層の組成と多官能性単量体の重量比率、層(bc1)/層(bc2)の重量比率、コア(bc)全体における多官能性単量体の重量比率、コア(bc)の体積平均粒子径、シェル(bs)の組成、コア(bc)/シェル(bs)の重量比率、物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)の種類とグラフト共重合体100重量部に対する添加量、実施例1および比較例1で得られたグラフト共重合体から製造された樹脂粉末を塩化ビニル系樹脂に配合してロール・プレス成形した成形体の耐衝撃強度(シャルピー強度:23℃)を示した。
Figure 2007246634
実施例1および比較例1の結果より、グラフト共重合体(B)中のコア(bc)全体における多官能性単量体の重量比率が同じでも、コア(bc)が、本発明で規定する多官能性単量体の含有量が異なる単量体混合物を重合してなる複数の層から構成されていれば、高い耐衝撃性改良効果が得られることがわかる。
(実施例2)
(グラフト共重合体G3の作製)
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素流入口、単量体と乳化剤の添加装置を有するガラス反応器に、脱イオン水160重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.05重量部を仕込み、窒素気流中で攪拌しながら50℃に昇温した。次にBA8.82重量部、1,3−ブチレンジメタクリレート(以下、BDMとも言う)0.18重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合物を仕込み、その10分後にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01重量部と硫酸第一鉄・7水和塩0.005重量部を蒸留水5重量部に溶解した混合液、およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2重量部を仕込んだ。1時間攪拌後、ラウリル硫酸ナトリウム0.15重量部を蒸留水2重量部に溶解した水溶液を仕込んだ。次にBA80.59重量部、AMA0.41重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.03重量部からなる単量体の混合物を4時間を要して滴下した。単量体の混合物の滴下開始から1時間後、2時間後および3時間後に、それぞれラウリル硫酸ナトリウム0.15重量部を蒸留水2重量部に溶解した水溶液を仕込んだ。単量体の混合物の滴下終了後、1時間攪拌し、多官能性単量体比率2.0重量%の層(bc2)10重量%、および多官能性単量体比率0.5重量%の層(bc1)90重量%からなる、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)により測定した体積平均粒子径が0.16μmのコア(bc)ラテックスを得た。このコア(bc)ラテックスにシェル(bs)成分として、MMA9.50重量部、BA0.50重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.02重量部からなる単量体の混合物を30分間を要して滴下した。滴下終了後、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部を添加し、さらに1時間攪拌を続けて重合を完結させ、グラフト共重合体G3のラテックスを得た。
グラフト共重合体G3のラテックス(ポリマー固形分100重量部)に、1.5重量%濃度のアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ社製アルギテックスLL)水溶液(B型粘度計により測定した水溶液粘度が120mPa・s)をアルギン酸ナトリウム固形分がグラフト共重合体G3の固形分100重量部に対し0.4重量部となるように添加し、3分間撹拌混合して混合ラテックスを作製した。温度20℃の混合ラテックスを、加圧ノズルの一種である旋回流式円錐ノズルでノズル径0.6mmを用い、噴霧圧力3.7kg/cm2にて、塔底部液面からの高さ5m、直径60cmの円筒状の装置中に、体積平均液滴径が約200μmの液滴となるように噴霧した。それと同時に、30重量%濃度の塩化カルシウム水溶液を、塩化カルシウム固形分がグラフト共重合体G3の固形分100重量部に対し5〜15重量部となるように二流体ノズルにて空気と混合しながら、液滴径0.1〜10μmで噴霧した。塔内を落下した混合ラテックス液滴は、塔底部にて30℃の1.0重量%濃度の塩化カルシウム水溶液を入れた受槽に投入され、これを回収した。
得られた凝固ラテックス粒子水溶液に、5重量%濃度のパルミチン酸カリウム水溶液をパルミチン酸カリウム固形分がグラフト共重合体G3の固形分100重量部に対し1.5重量部となるよう添加し、これを熱処理した後、脱水、乾燥することにより、白色樹脂粉末を調製した。
(塩化ビニル系樹脂組成物の調製、成形体の調製および評価)
塩化ビニル樹脂(カネビニールS−1001、株式会社カネカ製、平均重合度1000)100重量部、鉛系ワンパック安定剤(LGC3203、ACROS社製)4.5重量部、酸化チタン4.5重量部、炭酸カルシウム8重量部、メチルメタクリレート系重合体(該重合体0.1gを100mlのクロロホルムに溶解した溶液の30℃における比粘度が0.5未満のメチルメタクリレート系重合体)の加工助剤(カネエースPA−20、株式会社カネカ製)0.5重量部、および前記白色樹脂粉末をグラフト共重合体G3の添加量が7重量部となるように配合し、これをヘンシェルミキサーにてブレンドしてパウダーコンパウンドを得た。
得られたパウダーコンパウンドを8インチテストロールを用い、180℃で5分間混練りした後、190℃のプレスで15分間加圧して厚さ3.0mmの成形体を得た。この成形体から耐衝撃性試験片を作製し、JIS K−7111に準じてシャルピー強度を測定した。シャルピー強度の結果を表2に示す。
(比較例2)
(グラフト共重合体G4の作製)
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素流入口、単量体と乳化剤の添加装置を有するガラス反応器に、脱イオン水160重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.05重量部を仕込み、窒素気流中で攪拌しながら50℃に昇温した。次にBA8.95重量部、BDM0.05重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合物を仕込み、その10分後にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01重量部と硫酸第一鉄・7水和塩0.005重量部を蒸留水5重量部に溶解した混合液、およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2重量部を仕込んだ。1時間攪拌後、ラウリル硫酸ナトリウム0.15重量部を蒸留水2重量部に溶解した水溶液を仕込んだ。次にBA80.59重量部、AMA0.41重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.03重量部からなる単量体の混合物を4時間を要して滴下した。単量体の混合物の滴下開始から1時間後、2時間後および3時間後に、それぞれラウリル硫酸ナトリウム0.15重量部を蒸留水2重量部に溶解した水溶液を仕込んだ。単量体の混合物の滴下終了後、1時間攪拌し、多官能性単量体比率0.6重量%の層10重量%、および多官能性単量体比率0.5重量%の層90重量%からなる、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)により測定した体積平均粒子径が0.16μmのコア(bc)ラテックスを得た。このコア(bc)ラテックスにシェル(bs)成分として、MMA9.50重量部、BA0.50重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.02重量部からなる単量体の混合物を30分間を要して滴下した。滴下終了後、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部を添加し、さらに1時間攪拌を続けて重合を完結させ、グラフト共重合体G4のラテックスを得た。
使用するラテックスをグラフト共重合体G4のラテックスに変更する以外は、実施例2と同様の方法で白色樹脂粉末を回収した。グラフト共重合体G4の白色樹脂粉末を使用する以外は、実施例2と同様の方法で成形体を得て、シャルピー強度を測定した。シャルピー強度の結果を表2に示す。
表2には、実施例2および比較例2で得られたグラフト共重合体のコア(bc)中の各層の組成と多官能性単量体の重量比率、層(bc1)/層(bc2)の重量比率、コア(bc)全体における多官能性単量体の重量比率、コア(bc)の体積平均粒子径、シェル(bs)の組成、コア(bc)/シェル(bs)の重量比率、物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)の種類とグラフト共重合体100重量部に対する添加量、実施例2および比較例2で得られたグラフト共重合体から製造された樹脂粉末を塩化ビニル系樹脂に配合してロール・プレス成形した成形体の耐衝撃強度(シャルピー強度:23℃)を示した。
Figure 2007246634
実施例2および比較例2の結果より、グラフト共重合体(B)中のコア(bc)が、本発明で規定する多官能性単量体の含有量が異なる単量体混合物を重合してなる複数の層から構成されていれば、高い耐衝撃性改良効果が得られることがわかる。
(実施例3)
(グラフト共重合体G5の作製)
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素流入口、単量体と乳化剤の添加装置を有するガラス反応器に、脱イオン水160重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.2重量部を仕込み、窒素気流中で攪拌しながら50℃に昇温した。次に2−エチルヘキシルアクリレート(以下、2−EHAとも言う)8.82重量部、BDM0.18重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合物を仕込み、その10分後にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01重量部と硫酸第一鉄・7水和塩0.005重量部を蒸留水5重量部に溶解した混合液、およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2重量部を仕込んだ。1時間攪拌後、ラウリル硫酸ナトリウム0.15重量部を蒸留水2重量部に溶解した水溶液を仕込んだ。次に2−EHA4.41重量部、AMA0.09重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.002重量部からなる単量体の混合物を15分間を要して滴下した。15分間攪拌後、BA74.13重量部、AMA0.37重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.027重量部からなる単量体の混合物を3.75時間を要して滴下した。単量体の混合物の滴下開始から1時間後、2時間後および3時間後に、それぞれラウリル硫酸ナトリウム0.15重量部を蒸留水2重量部に溶解した水溶液を仕込んだ。単量体の混合物の滴下終了1時間後、BA1.90重量部、AMA0.10重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.0006重量部からなる単量体の混合物を一括で追加した後1時間攪拌し、多官能性単量体比率2.0重量%の層(bc2)15重量%、多官能性単量体比率0.5重量%の層(bc1)83重量%、および多官能性単量体比率5.0重量%の層(bc2)2重量%からなる、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)により測定した体積平均粒子径が0.14μmのコア(bc)ラテックスを得た。このコア(bc)ラテックスにシェル(bs)成分として、MMA4.00重量部、BA6.00重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.02重量部からなる単量体の混合物を30分間を要して滴下した。滴下終了後、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部を添加し、さらに1時間攪拌を続けて重合を完結させ、グラフト共重合体G5のラテックスを得た。
グラフト共重合体G5のラテックスを使用する以外は実施例2と同様の方法で白色樹脂粉末を調製した。グラフト共重合体G5の白色樹脂粉末を使用する以外は、実施例2と同様の方法で成形体を得て、シャルピー強度を測定した。シャルピー強度の結果を表3に示す。
(比較例3)
(グラフト共重合体G6の作製)
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素流入口、単量体と乳化剤の添加装置を有するガラス反応器に、脱イオン水160重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.2重量部を仕込み、窒素気流中で攪拌しながら50℃に昇温した。次に2−EHA8.95重量部、BDM0.05重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合物を仕込み、その10分後にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01重量部と硫酸第一鉄・7水和塩0.005重量部を蒸留水5重量部に溶解した混合液、およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2重量部を仕込んだ。1時間攪拌後、ラウリル硫酸ナトリウム0.15重量部を蒸留水2重量部に溶解した水溶液を仕込んだ。次に2−EHA4.48重量部、AMA0.02重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.002重量部からなる単量体の混合物を15分間を要して滴下した。15分間攪拌後、BA76.12重量部、AMA0.38重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.028重量部からなる単量体の混合物を3.75時間を要して滴下した。単量体の混合物の滴下開始から1時間後、2時間後および3時間後に、それぞれラウリル硫酸ナトリウム0.15重量部を蒸留水2重量部に溶解した水溶液を仕込んだ。単量体の混合物の滴下終了後1時間攪拌し、多官能性単量体比率0.5重量%の層のみからなる、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)により測定した体積平均粒子径が0.14μmのコア(bc)ラテックスを得た。このコア(bc)ラテックスにシェル(bs)成分として、MMA4.00重量部、BA6.00重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.02重量部からなる単量体の混合物を30分間を要して滴下した。滴下終了後、クメンハイドロパーオキサイド0.01重量部を添加し、さらに1時間攪拌を続けて重合を完結させ、グラフト共重合体G6のラテックスを得た。
グラフト共重合体G6のラテックスを使用する以外は実施例2と同様の方法で白色樹脂粉末を調製した。グラフト共重合体G6の白色樹脂粉末を使用する以外は、実施例2と同様の方法で成形体を得て、シャルピー強度を測定した。シャルピー強度の結果を表3に示す。
表3には、実施例3および比較例3で得られたグラフト共重合体のコア(bc)中の各層の組成と多官能性単量体の重量比率、層(bc1)/層(bc2)の重量比率、コア(bc)全体における多官能性単量体の重量比率、コア(bc)の体積平均粒子径、シェル(bs)の組成、コア(bc)/シェル(bs)の重量比率、物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)の種類とグラフト共重合体100重量部に対する添加量、実施例3および比較例3で得られたグラフト共重合体から製造された樹脂粉末を塩化ビニル系樹脂に配合してロール・プレス成形した成形体の耐衝撃強度(シャルピー強度:23℃)を示した。
Figure 2007246634
実施例3および比較例3より、グラフト共重合体(B)中のコア(bc)が、多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)の複数層からなる層構造であっても、本発明で規定する多官能性単量体の含有量が異なる単量体混合物を重合してなる複数の層から構成されていれば、高い耐衝撃性改良効果が得られることがわかる。

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、複数の層から構成されるコア(bc)を有するグラフト共重合体(B)0.5〜20重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、前記コア(bc)が、多官能性単量体を0.1〜1.5重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc1)40〜98重量%、および多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)2〜60重量%から構成され、さらに、グラフト共重合体(B)100重量部に対し、(C)物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物を0.01〜3.0重量部含有することを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)が、コア(bc)中の少なくとも最外部に存在することを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記多官能性単量体を1.6〜15重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc2)が、コア(bc)中の少なくとも最内部に存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記グラフト共重合体(B)が、前記複数の層から構成されるコア(bc)60〜99.5重量%、および(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体を重合してなるシェル(bs)0.5〜40重量%からなることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記多官能性単量体を0.1〜1.5重量%含有する単量体混合物を重合してなる層(bc1)が、アクリル酸エステル80〜99.9重量%、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物の群から選ばれる1種以上の単量体0〜19.9重量%、および多官能性単量体0.1〜1.5重量%を重合してなることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 前記物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)が、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、水溶性アルギン酸誘導体、寒天、ゼラチン、カラギーナン、グルコマンナン、ペクチン、カードラン、ジェランガム、およびポリアクリル酸誘導体から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、請求項1及至5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 前記物理ゲルを形成する性質を有する水溶性高分子化合物(C)が、水溶性アルギン酸誘導体であることを特徴とする、請求項6記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 前記熱可塑性樹脂(A)が、塩化ビニル系樹脂であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
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