JP2007237428A - 平版印刷原版 - Google Patents

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Abstract

【課題】平版印刷原版において、熱による直接描画方法に対応して製版が可能であり、特に印刷時において膜剥がれを発生させず画像部の耐刷性に優れた平版印刷原版を提供することにある。
【解決手段】支持体上に熱可塑性樹脂を殻とする微小中空粒子を含有する断熱層、熱により疎水性へ変換できる層、親水性層の順に設けたことを特徴とする平版印刷原版。
【選択図】 なし。

Description

本発明は、高い解像性を有する画像を得ることが可能で、かつ明室下での取り扱い及び処理液を必要とせず、また、特に製造コストが安価である平版印刷に用いられる印刷版に関する。
平版印刷原版は、油脂性のインキを受理する親油性の画像部分と、インキを受理しない撥油性の非画像部分からなり、一般に非画像部分は水を受け付ける親水性部分から構成されている。通常の平版印刷では、水とインキの両方を版面に供給し、画像部はインキを、非画像部は水を選択的に受け入れ、画像部上のインキを例えば紙等の被印刷体に転写させる事によって印刷がなされる。
現在、平版印刷原版は表面を親水化処理したアルミニウム板、亜鉛板、紙等の基材上に親油性のインク受理層を設けることにより製造される。これらの中では、PS版と呼ばれる表面を親水性処理した金属製支持体上にジアゾ化合物やフォトポリマー等の感光材料を用いたものや、紙やプラスチック支持体上にハロゲン化銀を感光材料として銀錯塩拡散転写法(DTR法)を利用し画像形成するものなどが一般的である。
ジアゾ化合物やフォトポリマーによってインク受理層(以降画像層という)を形成する方法は、まず金属板、紙、積層板、絶縁性基板等の基材上にジアゾ化合物やフォトポリマー等の感光材料を塗布する。次いで、光を照射して感光材料に化学変化を生じさせて、現像液に対する溶解性を変化させる。感光材料は化学変化の種類によって二つに分類される。光が照射された部分が重合・硬化して、現像液に対して不溶性になるネガ型と、逆に光が照射された部分の官能基が変化して、現像液に対する溶解性を有するようになるポジ型である。何れの場合にも、現像液による処理後に基材上に残存する、現像液に不溶の感光材料が画像層となる。
一方、DTR法を用いた平版印刷原版として特にハロゲン化銀乳剤層の上に物理現像核層を有する平版印刷原版が知られている。これは、露光されたハロゲン化銀結晶がDTR現像により化学現像を生起し黒色の銀となり親水性の非画像部を形成し、一方、未露光のハロゲン化銀結晶は現像液中の錯化剤により銀塩錯体になって表面の物理現像核層まで拡散し、核の存在により物理現像を生起してインキ受容性の物理現像銀を主体とする画像部を形成する方法である。
上記のような感光材料を用いて画像層を形成する場合に、露光方法が解像性を決定する重要な因子の一つとなっている。従来は、露光用フィルムを作製し、次いで紫外光または白色光を使用した密着露光方法を行うのが主流であった。しかし、コンピュータの進歩に伴って、コンピュータ情報からのディジタル信号を露光装置へと送信(コンピュータ・ツゥ・プレート)し、レーザを用いて直接感光材料を露光するレーザ直接描画方法が行われるようになっている。レーザ直接描画方法は、コストが安い、速度が速い、多品種少ロット品での生産性が高い等の利点がある。
このレーザ直接描画方法に対応するためには、感光材料の光学感度を高くしなければならない。ジアゾ化合物やフォトポリマーでは、光化学反応を伴うために、光学感度は低く、数〜数百mJ/cm2である。そのため、レーザ出力装置が 高出力でなければならず、装置が大きくなったり、コストが高くなるなどの問題があった。
また、ハロゲン化銀を用いたDTR法により画像形成するものでは、感度は数μJ/cm2であり簡便な半導体レーザなどでも十分露光可能であるが、逆に、 露光工程を行う前までの保存、基材への塗布工程等を、暗中もしくはセーフティライト下で行わなければならないという、製造及び製版作業の効率を著しく悪くする欠点があった。また、ジアゾ化合物やフォトポリマーにおいても、室内光や太陽光下でも反応が進行するし、高温下でも反応性に変化が生じる。さらに、酸素が存在すると、反応の阻害剤となる。したがって、露光及び現像前までは同様に暗室処置や低酸素状態化での保存が必要となっていた。さらに、上述の画像形成方法では、現像液を用いる等の液体処理を行うことが一般的であり、廃液の処理が環境問題となっているという欠点があった。
一方、処理液を使用せずにレーザーにより加熱させるだけで平版印刷原版を製版する方法も知られている。アブレーションタイプとして、例えば、特開平8−507727号(特許文献1)、同6−186750号(特許文献2)がある。ただし、アブレートした表層の飛散物による露光装置内部の汚染が問題となるため、最上層に水溶性の保護層を設けてアブレートした表層の飛散を防止し、印刷機上で保護層と共にアブレートした表層を除去する方法も提案されている。
アブレーションタイプ以外のプロセスレス印刷版としては、熱融着画像層機上現像タイプがあり、例えば特開2004−42531(特許文献3)に記載されている。また熱可塑性微粒子ポリマーと熱反応性基を有する化合物を用いたレーザーによる画像形成が可能な機上現像タイプとして、例えば特開2001−293971(特許文献4)がある。この方式は、Tgの異なる2種類の熱可塑性微粒子ポリマーを含有することが特徴であり、露光された画像部の皮膜硬化性の改善と耐刷性は向上させるものの、上記何れの方式も機上現像タイプの為に印刷機上で非画像部が剥離され、インキローラー等への剥離物の堆積が問題となる。
更に、レーザービームプリンタ等の静電転写方式のプリンタを用いて、コンピュータのデータ等を直接版材に出力する方式があり、例えば特開2001−187489(特許文献5)に記載されている。本方式では、非画像部へトナーが付着することで印刷時の地汚れになり易いという欠点があった。また、インクリボンを用いた熱溶融転写記録法による製版方式として特開2002−67523(特許文献6)があり、製版装置はレーザータイプに比べ非常に安価であるものの解像度が低い事や使用済みのリボンの廃棄が問題となる。
また、その他プロセスレス印刷版としては特許第3522450号(特許文献7)があるが、このタイプで製版し印刷する上で耐刷性が劣る等の不都合があった。その為、製版時のエネルギー量を増やすことで画像強度を増加させ耐刷性の改善に繋げていたが、出力機の寿命が短くなるまたはエネルギーコストのアップと言う問題が生じた。
直描型水なし平版印刷版で基板との接着性並びに耐刷性に優れた方法として、特開2000−330266(特許文献8)にエポキシ−尿素樹脂を利用する技術が開示されたが、本発明の断熱層においては断熱効果が低く、耐刷性が不十分であった。また、感熱性平版印刷版において、低エネルギーのレーザー照射によって画像形成が可能な方法として断熱層に発泡剤を含有させた特開2001−162959(特許文献9)や、親水性架橋断熱層を設ける事で支持体への熱拡散を抑える方法として特開2001−232960(特許文献10)が開示されたが、実用的には不十分であった。
特開平8−507727号公報 特開平6−186750号公報 特開2004−42531号公報 特開2001−293971号公報 特開2001−187489号公報 特開2002−67523号公報 特許第3522450号公報 特開2000−330266号公報 特開2001−162959号公報 特開2001−232960号公報
本発明の目的は、熱による直接描画方法に対応して製版が可能であり、特に印刷時において膜剥がれが発生することなく画像部の耐刷性に優れた平版印刷原版を提供することにある。
本発明の上記目的は鋭意検討した結果、以下の発明によって基本的に達成された。
1)支持体上に熱可塑性樹脂を殻とする微小中空粒子を含有する断熱層、熱により疎水性へ変換できる層、親水性層を少なくともこの順に設けたことを特徴とする平版印刷原版。
2)前記平版印刷原版の断熱層にエポキシ化合物を含有する請求項1記載の平版印刷原版。
本発明によれば、熱による直接描画方法に対応して製版が可能であり、特に印刷時において膜剥がれが発生することなく画像部の耐刷性に優れた平版印刷原版を提供することが可能となる。
本発明に係わる平版印刷原版の一例として、支持体の表面上に断熱層とその上に熱により疎水性へ変換する層さらにその上に最表層として親水性層が設けられている。一方、裏面はカールバランスを調整するために裏面層が設けられている。熱により疎水性へ変換する層とは熱融着性微粒子、または熱溶融性微粒子から構成される層であって、熱が与えられない場合は弱い親水性を示すが、一旦熱が加わるとその部位の層は溶融し、疎水性へと変換するものである。熱が与えられない場合の親水性レベルは低く、印刷に供せられるレベルでは無いため、その上層に親水性層を設けている。この親水性層は熱が照射される事で下層(熱による疎水性へ変換する層)が溶融されると同時に下層に取り込まれることで最表層は疎水性になる、若しくはアブレーションなどで親水性層が破壊された際、熱によって溶融した下層は疎水性へと変換し表面へ露出する。従って、本方式では、熱が与えられた部分が疎水性へと変換するために印刷時にインキを受理することが可能となる。本発明の断熱層とは熱可塑性樹脂を殻とする微小中空粒子を主成分とする層であり、この層を支持体と熱により疎水性へ変換する層間に設けることにより、平版印刷原版に与えられた熱エネルギーの支持体への伝達を防ぎ、熱により疎水性へ変換する層での熱効率を高めることが可能となる。これより、疎水性への変換効率が高まると同時に耐刷性の向上が極めて効果的に行われる。
微小中空粒子を断熱層に含有させることで特に印刷時における膜の接着性を低下させることは無いが、エポキシ化合物を含有させることはさらに印刷時における膜の接着性を高める事ができる。上記一例に示した原理の平版印刷原版を製版する方法としては、平版印刷原版にサーマル印字ヘッドによる接触やレーザー照射等がある。一方、熱が照射されていない部位は断熱層や熱による疎水性へ変換する層及び親水性層がいずれも親水性を維持している。この後に、平版印刷機に装着すれば、熱がかかり疎水性へ変換した部分にはインキが、また熱がかかっていない部分には水がそれぞれ受理され印刷が可能となる。
本発明に係わる平版印刷原版の断熱層に含まれる熱可塑性樹脂を殻とする微小中空粒子の中空率とは、微小中空粒子の半径をR、内部空隙の半径をrとするとr3/R3×100から算出される値である。この様にして算出される中空率が30%以上の中空球体が好ましく、更に好ましくは40%以上の中空率を有するものが断熱効果に優れ、熱による疎水性への変換効率が高まる。中空率が30%未満の中空粒子では、非中空粒子に比べると優れてはいるが、与えられた熱エネルギーが支持体を通じて平版印刷原版の外へ放出され易く、熱効率の向上が不十分である。また、レーザー光照射の場合も中空率が30%未満の中空粒子では光熱変換された熱エネルギーの断熱効果が不足し、印刷性の向上がなされない。
本発明微小中空粒子は0.1〜8μmの平均粒子径が好ましく、更に好ましくは0.2〜4μmである。9μmを超えるものでは、断熱層を塗布する際に不均一性を招き、嵩高であるため必要以上に膜の厚みが増大する等の不都合が生じる。一方、0.1μm未満では中空粒子の製造が困難であるばかりか、断熱効果が十分得られない等の不都合が発生する。
この微小中空粒子の殻となる熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリ−β−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸イソプロピル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、更にこれらの共重合体等が挙げられる。ただ、これらの中でも特にスチレン系樹脂及びスチレン/アクリル系共重合体樹脂及び塩化ビニリデン/アクリロニトリル系共重合体樹脂からなる微小中空粒子が断熱性に優れる。例えば、市販されている微小中空粒子として、JSR株式会社製SX866(平均粒子径0.3μm、中空率30%)、SX8782(平均粒子径1.1μm、中空率54%)等がある。
断熱層は、前記の微小中空粒子を水溶性高分子、水性高分子エマルジョンなどの親水性バインダーと共に水に分散し、これを支持体表面に塗布する。単層での塗布或いは前記熱により疎水性へ変換する層や最表層の親水性層と同時塗布することもできる。前記微小粒子の塗布量は0.1〜10g/m2であり、好ましくは0.5〜7g/m2であり、更に好ましくは1〜5g/m2である。
本発明に係わる平版印刷原版の断熱層は、親水性バインダーを含有する場合、前記微小中空粒子の含有量に対して100質量%以下の範囲であれば良い。好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。100質量%を越えると断熱効果が低下し、本発明の効果が十分得られない。下記に親水性バインダーの代表例を挙げるが、これらに限定されない。
天然物では、澱粉類、海藻マンナン、寒天およびアルギン酸ナトリウム等の藻類から得られるもの、マンナン、ペクチン、トラガントガム、カラヤガム、キサンチンガム、グアービンガム、ローカストビンガム、アラビアガム等の植物性粘質物、デキストラン、グルカン、キサンタンガム、およびレバンなどのホモ多糖類、サクシノグルカン、プルラン、カードラン、およびザンタンガムなどのヘテロ多糖等の微生物粘質物、にかわ、ゼラチン、カゼインおよびコラーゲン等のタンパク質、キチンおよびその誘導体等が挙げられる。
半天然物(半合成物)類としては、セルロース誘導体、カルボキシメチルグアーガム等の変性ガム、並びにデキストリン等の培焼澱粉類、酸化澱粉類、エステル化澱粉類等の加工澱粉等が挙げられる。一方、合成品には、ポリビニルアルコール、部分アセタール化ポリビニルアルコール、アリル変性ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等の変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸エステル部分けん化物、ポリメタクリル酸塩、及びポリアクリルアマイド等のポリアクリル酸誘導体及びポリメタクリル酸誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合物、カルボキシビニル重合物、スチレン/マレイン酸共重合物、スチレン/クロトン酸共重合物等が挙げられる。これらの中でも、特にゼラチン、変性及び無変性のポリビニルアルコール、及びセルロース誘導体が有利に使用できる。
本発明に係わる平版印刷原版の断熱層は支持体との接着性を改善するためにエポキシ化合物を含有することが好ましい。更に、エポキシ基を2つ以上含有するものが好ましい。本発明に用いられるエポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物もしくはそのプレポリマーやアクリル酸またはメタクリル酸グリシジルの重合体または共重合体等を挙げることができる。
本発明に用いる好適なエポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、Oーフタル酸ジグリシジルエステル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル若しくはエピクロロヒドリン重付加物、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル若しくはエピクロロヒドリン重付加物、ハロゲン化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル若しくはエピクロロヒドリン重付加物、ビフェニル型ビスフェノールのジグリシジルエーテル若しくはエピクロロヒドリン重付加物、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル若しくはエピクロロヒドリン重付加物、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。その他モノエポキシ化合物についても含むことができる。これらの化合物で好ましくはポリエポキシ化合物で特にグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルが好ましい。
上記化合物の市販品としては、例えばナガセケムテックス株式会社製デナコールEX810、同EX911、同EX211、同EX313、同EX421、同EX512、同EX614、同EX146、同EX192等を挙げることができるが、これらに限定され無い。これらエポキシ化合物の含有量は固形分で0.1g/m2から15g/m2であり、好ましくは1g/m2から10g/m2である。さらに好ましくは、3g/m2から7g/m2である。
本発明に係わる平版印刷原版の熱で疎水性へ変換する層としては、熱融着性微粒子、または、熱溶融性微粒子を含有する構成が好ましく用いられる。さらに好ましくは熱融着性微粒子が用いられる。
本発明に係わる熱融着性微粒子の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、好ましくは(メタ)アクリル酸−エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴムが挙げられる。これらの樹脂は粉末物を用いることは可能であるが、水分散タイプが製造上特に好ましい。また、製造する上で必要に応じて2種以上混合して使用することができ、また複数の層としても良い。
本発明に係わる熱融着性微粒子は熱が掛かった際に自己架橋するタイプが好ましい。自己架橋タイプとは、架橋剤の存在無しでも熱により三次元網状化することが可能であり、本発明に係わる熱融着性微粒子を作成する際に、共重合成分として、カルボキシル基、水酸基、メチロールアミド基、エポキシ基、カルボニル基、アミノ基などの反応性官能基を存在させることにより得ることが出来る。
本発明で用いられる熱融着性微粒子の平均粒子径は、0.005μm〜2.0μmが好ましい。さらに好ましいのは、0.01μm〜1.5μmである。平均粒径が大きすぎると解像度が劣り、小さすぎると経時安定性が悪くなる。
本発明に係わる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。具体例としては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。
本発明に係わる熱溶融性微粒子は、物性として軟化点40℃〜150℃、融点50℃〜170℃であることが好ましく、軟化点40℃〜130℃、融点60℃〜150℃であることが更に好ましい。
本発明に係わる熱溶融性微粒子の平均粒子径は、0.05μm〜8.0μmが好ましい。さらに好ましいのは、0.5μm〜6μmである。粒子径はコールターカウンター法での値である。平均粒径が大きすぎると熱溶融後の疎水性に変換し難く耐刷性に劣り、小さすぎると経時安定性が悪くなる。
本発明に係わる平版印刷原版の熱で疎水性へ変換する層に含有する熱融着性微粒子、または熱溶融性微粒子は0.1〜100g/m2の範囲で有れば良く、好ましくは5〜80g/m2である。さらに好ましくは10〜50g/m2である。また、熱融着性微粒子と熱溶融性微粒子は併用して用いることもできるが、熱融着性微粒子の含有割合が熱溶融性微粒子よりも多く含有することが好ましい。この場合、熱融着性微粒子と熱溶融性微粒子の混合量が上記記載の範囲内であればよい。
本発明に係わる平版印刷原版の熱で疎水性へ変換する層は、前述した熱融着性微粒子または/および熱融着性微粒子単独で層を構成しても良いが、支持体への塗布に対しては親水性ポリマーを含有することが好ましく、熱融着性微粒子または/および熱溶融性微粒子の添加量に対して100質量%以下の範囲であれば良い。好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。100質量%を越えると熱で疎水性への変換効率が悪くなり、耐刷性に劣る。下記に親水性ポリマーの代表例を挙げるが、これらに限定されない。
天然物では、澱粉類、海藻マンナン、寒天およびアルギン酸ナトリウム等の藻類から得られるもの、マンナン、ペクチン、トラガントガム、カラヤガム、キサンチンガム、グアービンガム、ローカストビンガム、アラビアガム等の植物性粘質物、デキストラン、グルカン、キサンタンガム、およびレバンなどのホモ多糖類、サクシノグルカン、プルラン、カードラン、およびザンタンガムなどのヘテロ多糖等の微生物粘質物、にかわ、ゼラチン、カゼインおよびコラーゲン等のタンパク質、キチンおよびその誘導体等が挙げられる。
また、半天然物(半合成物)類としては、セルロース誘導体、カルボキシメチルグアーガム等の変性ガム、並びにデキストリン等の培焼澱粉類、酸化澱粉類、エステル化澱粉類等の加工澱粉等が挙げられる。
合成品には、ポリビニルアルコール、部分アセタール化ポリビニルアルコール、アリル変性ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等の変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸エステル部分けん化物、ポリメタクリル酸塩、及びポリアクリルアマイド等のポリアクリル酸誘導体及びポリメタクリル酸誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合物、カルボキシビニル重合物、スチレン/マレイン酸共重合物、スチレン/クロトン酸共重合物等が挙げられる。
これらの中でも、特にゼラチン、変性及び無変性のポリビニルアルコール、及びセルロース誘導体が有利に使用できる。
また、本発明に係わる平版印刷原版の熱で疎水性に変換する層は、出力機の搬送性改善や感熱ヘッドに対する滑り性改善のためにシリカなどのマット剤を添加することができる。この場合、粒子の種類は特に限定されないが、平均粒子径は10μm以下が好ましい。
本発明に係わる平版印刷版は出力後の検版を行う上で視認性を確保することが好ましい。その為、熱により着色体を形成する反応体と共反応体をいずれかの層中に含有することができるが、好ましくは熱による疎水性へ変換する層に含有することが好ましい。最表層の親水性層への含有は、耐汚れ性を低下させる。これら反応体と共反応体とは、お互いの反応により着色体を形成する化合物であればよく、従来より無機または有機金属化合物と多価ヒドロキシ芳香族化合物の組み合わせ、電子供与性染料前駆体と電子受容性顕色剤の組み合わせ、ジアゾ化合物とヒドロキシ芳香族化合物などのカプラーとの組み合わせ、イミノ化合物とイソシアナート化合物の組み合わせ、また電子供与性染料前駆体とイソシアナート化合物の組み合わせなどが知られているが、特に電子供与性染料前駆体と電子受容性顕色剤、イミノ化合物とイソシアナート化合物の組み合わせが好ましい。
本発明における電子供与性染料前駆体は通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体が好ましく、これらは一般に感圧記録紙や感熱記録紙などに用いられるものに代表されるが、特に制限されるものではない。具体的な例としては、例えば下記に挙げるものなどがある。
トリアリールメタン系化合物およびインドリルフタリド系化合物としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等が挙げられる。
ジフェニルメタン系化合物としては、4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等が挙げられる。
アニリノフルオラン系化合物としては、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(4−メチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(4−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(4−エトキシアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−(4−メチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−(4−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−(4−エトキシアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−プロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−n−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−n−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−テトラヒドロフラン−2−イルメチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリルメチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−テトラヒドロフラン−2−イル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−イソペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−(2−フルオロアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−(2,6−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−3−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−3−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(3−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−フルオロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−メトキシアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(3−クロロアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(2−メトキシアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−イソペンチルオキシカルボニルアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−p−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等が挙げられる。
その他のフルオラン化合物やキサンテン系化合物としては、3−ピロリジノ−7−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−n−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−エチルアミノ−6−クロロフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2−クロロベンジルアミノ)フルオラン、ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム等が挙げられる。
スピロ系化合物としては、3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン等のスピロピラン系化合物、3′,6′−ビスジエチルアミノ−5−ジエチルアミノスピロ(イソベンゾフラン−1,9′−フルオレン)−3−オン、3′,6′−ビスジメチルアミノ−5−ジメチルアミノスピロ(イソベンゾフラン−1,9′−フルオレン)−3−オン等のフルオレン骨格を持つ化合物、3,3−ビス−[2−(4−メトキシフェニル)−2−(4−ジメチルアミノフェニル)エテニル]−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等のビニロガストリアリールメタン系化合物、N−(4−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、2,4−ビス−(フェニルスルホニル)フェノール、4−ヒドロキシ−4’−ベンジルオキシジフェニルスルフォン、2,2’−ビス−[4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ)]ジエチルエーテル等が挙げられる。これらは単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
本発明における電子供与性染料前駆体の使用量は、0.01〜6.0g/m2であり、より好ましくは0.03〜4.0g/m2の範囲で使用するのが好ましい。
これらの電子供与性染料前駆体と組み合わせて用いられる電子受容性顕色剤としては、一般に酸性物質に代表されるが、特に制限されるものではない。例えば粘土物質、フェノール誘導体、芳香族カルボン酸及びその誘導体、N,N′−ジアリールチオ尿素、N−スルホニル尿素等の尿素誘導体、またこれらの多価金属塩などを用いることができる。
具体的には、酸性白土、活性白土、ゼオライト、ベントナイト、カオリン等の粘土物質、p−フェニルフェノール、p−ヒドロキシアセトフェノン、4−ヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンゼンスルホニルオキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ジ−〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,3−ジ−〔2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,4−ジ−〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジアリル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、4,4′−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸クロロベンジル、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、没食子酸ベンジル、没食子酸ステアリル、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、ノボラックフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−t−ノニルサリチル酸、3,5−ジドデシルサリチル酸、3−メチル−5−t−ドデシルサリチル酸、5−シクロヘキシルサリチル酸、3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3−メチル−5−(α−メチルベンジル)サリチル酸等、及びこれらの亜鉛、ニッケル、アルミニウム、カルシウム等の金属塩等が挙げられる。特にアルキル基を分子内に含有する化合物が好ましく用いられる。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
本発明における電子受容性顕色剤の使用量は、使用する電子受容性顕色剤の種類に応じて選択されるが、電子供与性染料前駆体の使用量に対し、50〜2000質量%であり、より好ましくは80〜1500質量%の範囲で使用するのが好ましい。
本発明において用いられるジアゾ化合物としては、特に光分解性の芳香族系ジアゾニウム化合物が好ましく、具体的には芳香族ジアゾニウム塩、ジアゾスルホネート化合物などである。4−ジエチルアミノベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−モルホリノベンゼンジアゾニウム、2,5−ジエトキシ−4−トリルチオベンゼンジアゾニウム、4−N−エチル−N−ヒドロキシエチルベンゼンジアゾニウム、3−メチル−4−ピロリジノベンゼンジアゾニウムなどを挙げることができる。これらのテトラフルオロボレート塩、ヘキサフルオロフォスフェート塩などが疎水性が大きく、好ましい塩である。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
本発明において用いられるジアゾ化合物の使用量は、0.01〜2.0g/m2であり、より好ましくは0.03〜1.0g/m2の範囲で使用するのが好ましい。
本発明において用いられるジアゾ化合物と反応して着色体を形成するカプラーとしては、ヒドロキシ芳香族化合物、活性メチレン化合物が好ましい。具体的にはレゾルシン、フロログリシン、1−ヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ−6−スルファニルナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシビフェニル、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸テトラデシルアミド、ベンゾイルアセトアニリド、1−フェニル−3−フェニルアセトアミド−5−ピラゾロンなどが挙げられる。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
本発明において用いられるジアゾ化合物と反応して着色体を形成するカプラーの使用量は、0.01〜3.0g/m2であり、より好ましくは0.04〜1.5g/m2程度の範囲で使用するのが好ましい。
ジアゾ化合物を使用する場合、反応性を向上させるために塩基性化合物を添加することが好ましい。具体的にはトリシクロヘキシルアミン等の有機アミン類、1,2−ジシクロヘキシル−3−フェニルグアニジン等のグアニジン類、アリル尿素、エチレンチオ尿素等の尿素類、4−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、ジベンジルピペラジン等のピペラジン類、他にピペリジン類、アミジン類、ピロール類、モルホリン類等が挙げられる。本発明における塩基性化合物の使用量は、使用するジアゾ化合物の種類に応じて選択されるが、ジアゾ化合物の使用量に対し、0.01〜30質量%であり、より好ましくは0.1〜15質量%の範囲で使用するのが好ましい。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
本発明において用いられるイソシアナート化合物は、分子中にイソシアナート基を1個以上有する、常温で固体の無色または淡色の芳香族イソシアナート化合物または複素環イソシアナート化合物が好ましい。
具体的には、イソシアナート化合物の例としては、2,6−ジクロロフェニルイソシアナート、p−クロロフェニルイソシアナート、1,3−フェニレンジイソシアナート、1,4−フェニレンジイソシアナート、1,3−ジメチルベンゼン−4,6−ジイソシアナート、1,4−ジメチルベンゼン−2,5−ジイソシアナート、1−メトキシベンゼン−2,4−ジイソシアナート、1−メトキシベンゼン−2,5−ジイソシアナート、1−エトキシベンゼン−2,4−ジイソシアナート、2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、2,5−ジエトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、2,5−ジブトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、アゾベンゼン−4,4′−ジイソシアナート、ジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアナート、ナフタリン−1,4−ジイソシアナート、ナフタリン−1,5−ジイソシアナート、ナフタリン−2,6−ジイソシアナート、ナフタリン−2,7−ジイソシアナート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアナート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアナート、3,3′−ジクロロビフェニル−4,4′−ジイソシアナート、2,2′,5,5′−テトラクロロビフェニル−4,4′−ジイソシアナート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアナート、ジフェニルジメチルメタン−4,4′−ジイソシアナート、ベンゾフェノン−3,3′−ジイソシアナート、フルオレン−2,7−ジイソシアナート、アンスラキノン−2,6−ジイソシアナート、9−エチルカルバゾール−3,6−ジイソシアナート、ピレン−3,8−ジイソシアナート、ナフタレン−1,3,7−トリイソシアナート、ビフェニル−2,4,4′−トリイソシアナート、4,4′,4″−トリイソシアナートトリフェニルアミン、4,4′,4″−トリイソシアナート−2,5−ジメトキシトリフェニルアミン、p−N,N−ジメチルアミノフェニルイソシアナート、5,7−ジイソシアナート−1,1−ジメチル−6−n−プロピルインダン、5,7−ジイソシアナート−1,1,4,6−テトラメチルインダン、及びトリス(4−フェニルイソシアナート)チオフォスフェート等が挙げられる。
これらのイソシアナート化合物は、必要に応じて、フェノール類、ラクタム類、及びオキシム類等との付加化合物である、いわゆるブロックイソシアナートにして用いても良い。またジイソシアナートの2量体、例えば1−メチルベンゼン−2,4−ジイソシアナートの2量体、及び3量体であるイソシアヌレートにして用いても良い。さらに、各種のポリオール等に反応させた、例えばトリレンジイソシアナートとトリメチロールプロパンとを反応させた、ポリイソシアナートとして用いることも可能である。またイソシアナート化合物は、ブロックイソシアナート、ジイソシアナートの2量体及び3量体、及びポリイソシアナートを含めてそれぞれ単1種で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
本発明において用いられるイソシアナート化合物と加熱時反応して着色体を生じるイミノ化合物は、分子内にイミノ基を1つ以上含有するもので、具体的には、次のような化合物が挙げられる。
3−イミノイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,6,7−テトラブロモイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,6,7−テトラフルオロイソインドリン−1−オン、3−イミノ−5,6−ジクロロイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,7−トリクロロ−6−メトキシイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,7−トリクロロ−6−メチルメルカプトイソインドリン−1−オン、3−イミノ−6−ニトロイソインドリン−1−オン、3−イミノイソインドリン−1−スピロ−ジオキソラン、1,1−ジメトキシ−3−イミノイソインドリン、1,1−ジエトキシ−3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1−エトキシ−3−イミノイソインドリン、1,3−ジイミノイソインドリン、1,3−ジイミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1,3−ジイミノ−6−メトキシイソインドリン、1,3−ジイミノ−6−シアノイソインドリン、1,3−ジイミノ−4,7−ジチア−5,5,6,6−テトラヒドロイソインドリン、1−イミノナフタル酸イミド、1−イミノジフェン酸イミド、1−フェニルイミノ−3−イミノイソインドリン。
7−アミノ−2,3−ジメチル−5−オキソピロロ〔3,4b〕ピラジン、7−アミノ−2,3−ジフェニル−5−オキソピロロ〔3,4b〕ピラジン、1−(2′−シアノ−4′−ニトロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′−クロロ−5′−シアノフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′,6′−ジクロロ−4′−ニトロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(3′−クロロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′,5′−ジクロロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′,4′,5′−トリクロロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′,5′−ジメトキシフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′,5′−ジエトキシフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′−メチル−4′−ニトロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(5′−クロロ−2′−フェノキシフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(4′−N,N−ジメチルアミノフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′−メトキシ−5′−N−フェニルカルバモイルフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(6′−メチルベンゾチアゾリル−2′−イミノ)−3−イミノイソインドリン。
1−(3′−ジメチルアミノ−4′−メトキシフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′−クロロ−5′−トリフルオロメチルフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(5′,6′−ジクロロベンゾチアゾリル−2′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(4′−フェニルアミノフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(p−フェニルアゾフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ナフチル−1′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(アンスラキノン−1′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(5′−クロロアンスラキノン−1′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(N−エチルカルバゾリル−3′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ナフトキノン−1′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ピリジル−4′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ベンズイミダゾロン−6′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(1′−メチルベンズイミダゾロン−6′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(7′−クロロベンズイミダゾロン−5′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ベンズイミダゾリル−2′−イミノ)−3−イミノ−4,7−ジチアテトラヒドロイソインドリン。
1−(ベンズイミダゾリル−2′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ベンズイミダゾリル−2′−イミノ)−3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1−(2′,4′−ジニトロフェニルヒドラゾン)−3−イミノイソインドリン、1−(インダゾリル−3′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(インダゾリル−3′−イミノ)−3−イミノ−4,5,6,7−テトラブロモイソインドリン、1−(インダゾリル−3′−イミノ)−3−イミノ−4,5,6,7−テトラフルオロイソインドリン、1−(4′,5′−ジシアノイミダゾリル−2′−イミノ)−3−イミノ−5,6−ジメチル−4,7−ピラジイソインドリン、1−(シアノベンゾイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノカルボンアミドメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノカルボメトキシメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノカルボエトキシメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノ−N−フェニルカルバモイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノ−N−(3′−メチルフェニル)カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノ−N−(4′−クロロフェニル)カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン。
1−〔シアノ−N−(4′−メトキシフェニル)−カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−(シアノ−p−ニトロフェニルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノ−N−(3′−クロロ−4′−メチルフェニル)−カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−(ジシアノメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノ−1′,2′,4′−トリアゾリル−(3′)−カルバモイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノチアゾイル−2′−カルバモイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノベンズイミダゾリル−2′−カルバモイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノベンゾチアゾリル−2′−カルバモイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノベンズイミダゾリル−2′−メチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノベンズイミダゾリル−2′−メチレン〕−3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1−〔シアノベンズイミダゾリル−2′−メチレン〕−3−イミノ−5−メトキシイソインドリン、1−〔シアノベンズイミダゾリル−2′−メチレン〕−3−イミノ−6−クロロイソインドリン。
1−〔シアノベンズイミダゾリル−2′−メチレン〕−3−イミノ−4,7−ジチアテトラヒドロイソインドリン、1−〔(1′−フェニル−3′−メチル−5−オキソ)−ピラゾリデン−4′〕−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノベンズイミダゾリル−2′−メチレン〕−3−イミノ−5,6−ジメチル−4,7−ピラジイソインドリン、1−〔(1′−メチル−3′−n−ブチル)−バルビツル酸−5′〕−3−イミノイソインドリン、3−イミノ−1−スルホ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−6−クロロ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−5,6−ジクロロ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−6−ニトロ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−6−メトキシ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−4,5,7−トリクロロ−6−メチルメルカプト安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホナフトエ酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−5−ブロモナフトエ酸イミド、及び3−イミノ−2−メチル−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン−1−オン等が挙げられる。
本発明において用いられるイソシアナート化合物の使用量は、イソシアナート化合物として0.1〜2.0g/m2が適当であるが、特に、0.2〜1.5g/m2が高い発色濃度を得るため好ましい。また、電子供与性染料前駆体あるいはイミノ化合物の量はイソシアナート化合物に対し、10〜300質量%が適当であるが、特に20〜250質量%が好ましい。
本発明において反応体及び共反応体を用いるためには、塗液に該反応体及び該共反応体を含有させればよいが、塗液に含有させる方法としては、各々の化合物を単独で溶媒に溶解もしくは分散媒に分散してから混合する方法、各々の化合物を混ぜ合わせてから溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法、各々の化合物を加熱溶解し均一化した後冷却し、溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法、カプセル中にそれぞれ充填し含有させる等があるが、特に限定されない。また、分散の際に必要なら分散助剤を使用してもよい。分散媒として水を使うときの分散助剤としては比較的低分子量のポリビニルアルコール等の水溶性高分子や各種の界面活性剤が挙げられる。また、エタノール等の水溶性有機溶媒を混合してもよい。また、炭化水素類に代表される有機溶媒を分散媒として使う場合は、レシチンや燐酸エステル類等を分散助剤に用いてもよい。
本発明において用いる反応体及び共反応体の分散物の平均粒子径は、7μm以下であることが必要であり、0.1〜5μmが好ましく、特に0.1〜2μmの範囲が好ましい。
また、着色体の発色感度を調節するための添加剤として、増感剤を含有させることもできる。これらの化合物は60℃〜200℃の融点を有するものが好ましく、特に80℃〜180℃の融点の化合物が好ましい。これらを含めて一般の感熱記録紙に用いられている増感剤を使用することができる。これらの化合物としては、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等のワックス類、2−ベンジルオキシナフタレン等のナフトール誘導体、p−ベンジルビフェニル、4−アリルオキシビフェニル、m−ターフェニル等のビフェニル誘導体、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル等のポリエーテル化合物、炭酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(p−メチルベンジル)エステル等の炭酸またはシュウ酸ジエステル誘導体等があげられ、2種以上併用して添加することもできる。使用量は使用する増感剤の種類に応じて選択されるが、本発明に用いる反応体及び共反応体の使用量に対し、50質量%〜300質量%であり、より好ましくは100質量%〜200質量%の範囲で使用するのが好ましい。
本発明は平版印刷原版において耐汚れ性を向上させるために親水性層を設けることが好ましい。特に熱により疎水性へ変換できる層の上層に設ける。次に本発明の親水性層に有することが好ましいポリマーを例示するが、これらに限定されるものではない。なお、式中の数字はすべて共重合体組成中の各繰り返し単位の質量%を示す。
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P−1〜P−24に示されるポリマーは、特開平8−211614の記載内容に準じて合成することができる。また、上述したポリマーの含有量は、固形分で0.001〜3g/m2が適当であり、好ましくは0.01〜2g/m2の量になるように塗布される。より好ましくは0.1〜1g/m2の範囲である。
本発明に係わる平版印刷原版の親水性層は、上述した耐汚れ性を改善出来る親水性ポリマー以外に皮膜形成能を持ったバインダー要素を有する親水性ポリマーを併用しても良く、少なくとも最表層が親水性層となるように塗設される。使用量は本発明のポリマーに対して200質量%以下である。好ましくは、100質量%以下であり更に好ましくは10質量%以下である。200質量%を越えると耐汚れ性を改善する効果が少なくなる。また、親水性層を塗布する際は、熱により疎水性へ変換する層と同時塗布でも良く、または一旦熱により疎水性へ変換する層を塗布した後に行っても良い。
本発明の親水性層に併用することができるバインダー要素を有する親水性ポリマーとしては、以下の例が挙げられる。
天然物では、澱粉類、海藻マンナン、寒天およびアルギン酸ナトリウム等の藻類から得られるもの、マンナン、ペクチン、トラガントガム、カラヤガム、キサンチンガム、グアービンガム、ローカストビンガム、アラビアガム等の植物性粘質物、デキストラン、グルカン、キサンタンガム、およびレバンなどのホモ多糖類、サクシノグルカン、プルラン、カードラン、およびザンタンガムなどのヘテロ多糖等の微生物粘質物、にかわ、ゼラチン、カゼインおよびコラーゲン等のタンパク質、キチンおよびその誘導体等が挙げられる。
また、半天然物(半合成物)類としては、セルロース誘導体、カルボキシメチルグアーガム等の変性ガム、並びにデキストリン等の培焼澱粉類、酸化澱粉類、エステル化澱粉類等の加工澱粉等が挙げられる。
合成品には、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、部分アセタール化ポリビニルアルコール、アリル変性ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等の変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸エステル部分けん化物、ポリメタクリル酸塩、及びポリアクリルアマイド等のポリアクリル酸誘導体及びポリメタクリル酸誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合物、カルボキシビニル重合物、スチレン/マレイン酸共重合物、スチレン/クロトン酸共重合物等が挙げられる。
これらの中でも、特にゼラチン、変性あるいは未変性のポリビニルアルコール、及びセルロース誘導体が有利に使用できる。
本発明の平版印刷原版に係わる親水性層に用いるゼラチンとしては、動物のコラーゲンを原料としたゼラチンであれば全て使用できるが、豚皮、牛皮、及び牛骨から得られるコラーゲンを原料としたゼラチンが好ましい。また、ゼラチンの種類も特に制限はないが、石灰処理ゼラチン及び酸処理ゼラチンの他、特公昭38−4854号、同39−5514号、同40−12237号、及び同42−26345号公報、米国特許第2,525,753号、同第2,594,293号、同第2,614,928号、同第2,763,639号、同第3,118,766号、同第3,132,945号、同第3,186,846号、同第3,312,553号明細書、英国特許第1,033,189号明細書等に記載のゼラチン誘導体等が挙げられ、これらは1種または2種以上を組合わせて用いることができる。
ゼラチンを親水性層に用いる場合には、ゼラチン硬膜剤で硬化することができる。ゼラチン硬膜剤としては、例えば、クロム明ばんのような無機化合物、ホルマリン、グリオキサール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチラール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンのようなアルデヒド類縁化合物、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−S−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の1種もしくは2種以上を用いることができる。
本発明に係わる平版印刷原版の親水性層には、印刷地汚れ性を防止する目的で酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機物を含有させることができるが、特に親水性を有する素材であれば有機物、無機物を問わず限定されない。含有させる割合は、印刷に用いる印刷インキや湿し水等や印刷速度や印刷圧など各種条件により適宜所望の範囲で決められる。
また、本発明に係わる平版印刷原版の親水性層を塗設するために、助剤としてアニオン系、カチオン系もしくはノニオン系界面活性剤のいくつかを用いても良いし、マット剤、増粘剤、帯電防止剤等を用いることもできる。
本発明に係わる平版印刷原版の支持体としては、樹脂被覆紙、合成紙、ポリエチレンテレフタレートなどの合成もしくは半合成高分子フィルム、アルミニウムや鉄等の金属板で、平版印刷に耐えるものであれば良い。また、これらの支持体の表面は、上層として塗設される層との接着を良くするために表面処理を行うことや、レーザ光吸収性を向上させるため染色処理をすることも可能である。本発明において、好ましい支持体は樹脂被覆紙、合成紙、ポリエチレンテレフタレートなどである。
本発明の平版印刷原版の製版方法である熱による直接描画方法としては、例えば、サーマルプリントヘッド、レーザーとして炭酸ガスレーザ、窒素レーザ、Arレーザ、He/Neレーザ、He/Cdレーザ、Krレーザ等の気体レーザ、液体(色素)レーザ、ルビーレーザ、Nd/YAGレーザ等の固体レーザ、GaAs/GaAlAs、InGaAsレーザ等の半導体レーザ、KrFレーザ、XeClレーザ、XeFレーザ、Ar2等のエキシマレーザ等を挙げることができるが上記に限定されない。
本発明の平版印刷原版の製版方法において、熱による描画効率(即ち本発明の方法における平版印刷原版の疎水性変換効率と画像形成効率)を向上させるために熱で疎水性へ変換する層、親水性層の何れかに光熱変換剤を含有させることが好ましい。
光熱変換剤としては一般的に染料または顔料であれば良く、例えばカーボンブラック、シアニン、無金属または金属フタロシアニン、金属ジチオレン、アントラキノン等を挙げることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、無論この記述により本発明が制限されるものではない。尚、特にことわりのない限り、%は質量%を表す。
135g/m2の両面ポリエチレン被覆紙(RC紙)をコロナ放電加工した後、次に示す処方からなる層(断熱層、熱で疎水性へ変換する層、親水性層)を順次塗設した。
(断熱層の塗液処方)
ゼラチン 10g
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンナトリウム 5g
微小中空粒子分散体(50%分散液) Xg
活性剤(塗布助剤) 5g
ナガセケムテックス社製デナコール Yg
水を加えて全量を 333gとした。
使用する微小中空粒子分散体としてJSR株式会社製SX866(粒子径0.3μm、中空率30%)、同SX8782(粒子径1.1μm、中空率54%)を用いた。ナガセケムテックス社製デナコールはEX512とEX614を用い、それぞれの種類と添加量については表1に示す。上記により得た塗液を33g/m2(湿分塗布量)で塗布を行ない乾燥した。その後、下記熱で疎水性へ変換する層を塗布した。
(熱で疎水性へ変換する層の塗液処方)
ゼラチンを20g、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンナトリウム を5g、熱融着性微粒子(日本ゼオン製SBR LX407S4)を400g、活性剤(塗布助剤)を10gに対して100gの水を加えて溶解する。次にこの液中へ下記の分散体を投入する。電子供与性染料前駆体としては、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン10gを2%ポリビニルアルコール水溶液20gと共にペイントコンディショナーで粉砕して得た染料前駆体分散液、電子受容性顕色剤として1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン10gを2%ポリビニルアルコール水溶液20gと共にペイントコンディショナーで粉砕して得られた電子受容性顕色剤分散液、増感剤として2−ベンジルオキシナフタレン15gを2%ポリビニルアルコール水溶液30gと共にペイントコンディショナーで粉砕して得られた増感剤分散液、水を加えて全量を700gとした。上記により得た塗液を70g/m2(湿分塗布量)で塗布を行った。その後、更に下記親水性層を塗布した。
(親水性層の塗液処方)
親水性ポリマー(P8:固形分として) 5g
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンナトリウム 2g
活性剤(塗布助剤) 10g
水を加えて全量を 2000gとした。
上記により得た塗液を15g/m2(湿分塗布量)で塗布を行ない、平版印刷原版を作製した。(本発明の試料1〜8)
比較例として、表1記載の内容で比較1は断熱層に微小中空粒子分散体とナガセケムテックス社製デナコールを添加しない、比較2は断熱層に微小中空粒子分散体の代わりに粒子径が5μmのアクリル粒子(ガンツ化成株式会社製ガンツパールGB05S、水分散濃度10%)を添加するが、ナガセケムテックス社製デナコールを添加しない、比較3は断熱層に微小中空粒子分散体を添加しない代わりにエポキシ化合物エピコート1007(油化シェルエポキシ(株)製)と尿素化合物ユーバン10S60(三井化学(株)製)を添加するが、ナガセケムテックス社製デナコールを添加しない、それ以外は同条件で平版印刷原版を作製した。(本発明の比較1、2)
上記本発明の試料1〜8および本発明の比較1、2について熱で疎水性へ変換する層が設けられている方の面に、抵抗値1645Ωのサーマルヘッドを装着した大倉電気株式会社製感熱ファクシミリ印字試験装置を用いてドット密度8ドット/mm、印加電圧21V、パルス幅1.2msの条件で印字し、疎水性表面を露出させて印刷版を得た。この印刷版を用いて、オフセット印刷機(リョービイマジクス(株)製3200CD)にて印刷を行った。
耐刷性を評価するために使用した給湿液及びインキを以下に示す。
<耐刷性の評価>
1:給湿液
三菱製紙(株)SLM−OD30 3%(上水道を使用し3%にする。)
2:インキ
大日本インキ化学工業(株)社製ニューチャンピオン 墨85H
(1)印刷物の耐刷性を以下の基準で評価した。
<印刷物の耐刷状態の評価>
1:全く印刷画像の劣化がない。
2:ほとんど印刷画像は劣化しないが、やや細線画像が細る。
3:やや画像部のインキ濃度が低下する。
4:画像部のインキ濃度低下、細線部が細る。
耐刷性は10000枚印刷した後の印刷物の細線画像部(50μm細線)の細りと画像部の濃度低下の状態で評価した。
(2)印刷後の版の膜はがれ性(接着性)を以下の基準で評価した。
<印刷後の版の膜はがれ状態の評価>
1:ルーペで観察しても印刷前と全く差が無い。
2:ルーペで観察した際僅かに膜の浮きが見られる。
3:ルーペで観察した際僅かに膜剥がれが見られる。
4:膜剥がれが発生する。
これらの結果を表2に示す。
Figure 2007237428
Figure 2007237428
上記の結果から明らかなように、本発明の平版印刷原版は、熱による直接描画方法に対応して製版が可能であり、特に印刷時において膜剥がれが発生することなく画像部の耐刷性に優れた平版印刷原版を得ることが出来た。
厚さ175μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの片面に前記本発明の試料1〜8及び比較1、2作成に用いた熱で疎水性へ変換する層の塗液において染料前駆体分散液と電子受容性顕色剤分散液と増感剤分散液の代わりにカーボンブラック30gを添加する以外は同様の条件で塗液を作製した。その後実施例1と同様に塗布及び乾燥後平版印刷原版を作製した。(本発明の試料9〜16、本発明の比較3、4)
次いで、半導体レーザ照射装置(830nm)で画像部に相当する部分のレーザ照射を上記平版印刷原版(熱で疎水性へ変換する層を有する側)に行い、疎水性表面を露出させて、平版印刷版を得た。この印刷版を用いて、オフセット印刷機(リョービイマジクス(株)製3200CD)にて印刷を行った。
印刷評価項目及び条件については実施例1と同様である。これらの評価結果を表3に示す。
Figure 2007237428
上記の結果から明らかなように、本発明の平版印刷原版は、特に印刷時の膜の接着性を落とすことなく耐刷性について改善している印刷物を得ることが出来る。さらに、従来のジアゾ化合物やフォトポリマー、銀塩を用いた平版印刷原版とは異なり、明室下でも作業が行え、かつ現像液を使用することがないので環境にも非常に良好である。また、感熱プリンターや低出力のレーザーを用いての直接描画方法に対応することができ、高解像性も優れた低コストで実現可能な平版印刷版を得ることが出来る。

Claims (2)

  1. 支持体上に熱可塑性樹脂を殻とする微小中空粒子を含有する断熱層、熱により疎水性へ変換できる層、親水性層を少なくともこの順に設けたことを特徴とする平版印刷原版。
  2. 前記平版印刷原版の断熱層にエポキシ化合物を含有する請求項1記載の平版印刷原版。
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