JP2007236811A - 蒸気温熱具 - Google Patents

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Abstract

【課題】発生した水蒸気の保温効果が高い蒸気温熱具を提供すること。
【解決手段】収容体12内に、被酸化性金属、水、電解質及び反応促進剤を含有する水蒸気発生部11が収容されている。収容体12から所定温度の水蒸気が外部へ放出可能になっている。収容体12はその周縁部に断熱部を有している。断熱部は、収容体12の周縁部において、第1の面13と第2の面14とを接合して形成された周縁接合部15からなることが好ましい。周縁接合部15が、第1の面13と第2の面14とを接合して形成され且つ閉じた形状を有している接合部位16と、接合部位16によって取り囲まれた非接合部位17とを有していることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、所定温度の水蒸気の発生が可能な蒸気温熱具に関する。
本出願人は先に、空気中の酸素と被酸化性金属との酸化反応に伴う発熱によって発生する所定温度の水蒸気を利用した湿熱シートを提案した(特許文献1参照)。この湿熱シートは、これを人体の腰部や肩に装着することで所定温度に加熱された水蒸気が適用される。その結果、全身の血行が促進され、適用部位の温度が上昇するのみならず、指先などの末梢温度も上昇するという効果が奏される。この湿熱シートの効果は、発生した水蒸気の温度の低下を抑制することで一層高まると考えられる。
特開2005−199051号公報
従って本発明の目的は、前述した湿熱シートよりも性能が一層向上した蒸気温熱具を提供することにある。
本発明は、収容体内に、被酸化性金属、水、電解質及び反応促進剤を含有する水蒸気発生部が収容されてなり、該収容体から所定温度の水蒸気が外部へ放出可能になっており、該収容体はその周縁部に断熱部を有している蒸気温熱具を提供するものである。
本発明の蒸気温熱具は保温効果が高いものである。それによって本発明の蒸気温熱具によれば、これを適用した部位の温度が効果的に高まる。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の蒸気温熱具の一実施形態としての蒸気温熱タオルを示す一部破断斜視図である。図2は、図1におけるII−II線断面図である。図1及び図2に示す蒸気温熱タオル10は略扁平な形状であり、水蒸気発生部11及び該水蒸気発生部11を収容する収容体12を備えている。収容体12は扁平なものであり、複数のシート材を貼り合わせて、水蒸気発生部11が収容される密閉空間が形成されたものである。扁平な形状を有する収容体12は、第1の面13及びそれと反対側に位置する第2の面14を有している。各面13,14は何れも空気及び水蒸気の透過が可能になっている。従って、以下の説明では面13を「第1の通気面13」と呼び、面14を「第2の通気面14」と呼ぶこととする。水蒸気発生部11には、被酸化性金属のほかに水等が含まれており、水蒸気発生部11が酸素と接触して発熱することを利用して、所定温度に加熱された水蒸気を発生させている。
図1に示すように、タオル10は矩形状をしている。このタオル10は長辺とそれに直交する短辺とを有しているが、タオル10の形態はこれに限られず四辺が同じ長さである正方形であってもよい。またタオル10は矩形に限られず、タオルとして用いられ得る形状であればその形状に制限はない。
タオル10は、その第1の通気面13の側が使用者の肌面に対向し、第2の通気面14の側が外方を向くように使用される。水蒸気発生部11の発熱によって発生した水蒸気は、第1の通気面13を通じて対象物である肌面に付与されるようになっている。先に述べた通り、収容体12の各面は通気面となっているが、水蒸気は、第2の通気面14に比較して、第1の通気面13を通じて優先的に放出されるようになっている。この理由については後述する。
タオル10は、第1の通気面13を使用者の肌に当接させた状態下に第1の通気面13を通じて水蒸気発生部11から生じた水蒸気を使用者の肌に直接適用してこれを湿潤させる。それによって蒸しタオルを用いた場合と同様の効果が奏される。しかも蒸しタオルと異なり、本実施形態のタオルでは、適度な温度の水蒸気の発生が持続するので、肌を湿潤させるのみならず、適用部位及びその周辺の皮膚温度を上昇させ、また全身の皮膚平均温度も上昇させる。それによって、発汗が促進されてサウナ浴的な代謝促進の効果が生じる。つまり、身体に負担をかけずに心地よく汗をかき、また血行が促進されるという有利な効果が生じる。また、この効果は、体力が低下している者、例えば高齢者等の介護を要する者向けの代替入浴法としても有効である。高齢者等の入浴には、血圧の上昇や心拍数の増大などが懸念されるが、本実施形態のタオル10を用いた代替入浴法にはそのようなおそれがない。更に、本実施形態のタオル10によれば、身体が温まることで脳波(アルファ波)が上昇し、リラクセーション効果も期待できる。従って、本実施形態のタオル10は、看護用のタオルとして特に有用である。看護とは、病気や怪我をしている者を病院内外で手当てしたり世話したりすることのみならず、寝たきり或いはそれに近い者を病院内外で世話すること、つまり介護することを含む概念である。
水蒸気が外部へ放出される面である第1の通気面13は通気部位の面積が1〜20000cm2、特に200〜15000cm2であることが、使用者の身体の広い面積にわたって水蒸気を付与し得る点から好ましい。
本実施形態のタオル10は、通常の蒸しタオルの代替として用いられ得るものであるから、布タオルに類似の剛性ないしドレープ性を有していることが望ましい。この観点から、本実施形態においてはタオル10の剛性値を好ましくは0.01〜10N/幅8cmに設定し、更に好ましくは0.1〜5N/幅8cmに設定している。この範囲の剛性値とすることで、取り扱い性や、風合い、肌触りに優れたタオルとすることができる。タオル10の剛性値は、水蒸気発生部11や収容体12の材質を適切に選択することで調整することができる。タオル10の剛性値は、曲げ強度試験機「RTA−500」(株式会社オリエンテック)にて測定する。測定方法は、蒸気温熱タオルから長さ10cm、幅8cmの矩形の試験体を切り出す。この試験体を、スパン間距離50mmで両端を支える。この状態下に試験体中央部を、幅50mm、先端半径5mmの押圧部材にて、クロスヘッドスピード20mm/minで負荷を与える。そのときの最大荷重を剛性値とする。
また、本実施形態のタオル10は、通常の蒸しタオルの代替として用いられ得るものであるから、その目的に適った大きさを有していることが好ましい。具体的には、その面積が10〜5000cm2、特に200〜2000cm2であることが好ましい。厚みは0.1〜50mm、特に0.5〜10mmが好ましい。このこと、及び前述の剛性値に関連して、タオル10は、面積(cm2)に対する厚み(mm)の比率(面積/厚み)が、0.2〜20000cm2/mm、特に10〜1000cm2/mmであることが、十分に広い面積を有しつつ、風合い、肌触りに優れたタオルとすることができる点から好ましい。
先に述べた通り、本実施形態のタオル10においては、第1の通気面13及び第2の通気面14の通気度を適切に調整することで、第1の通気面13を通じて水蒸気が優先的に放出されるようになっている。具体的には、第2の通気面の通気度を、第1の通気面の通気度よりも大きくしている。JIS P8117によって測定される通気度は、一定の圧力のもとで100mlの空気が通過する時間で定義されるものだから、通気度が大きいことは、空気の通過に時間がかかることを意味している。即ち通気性が低いことを意味している。逆に、通気度が小さいことは、通気性が高いことを意味している。このように、通気度の大小と通気性の高低とは逆の関係になっている。通気性に関して第1の通気面13及び第2の通気面14を比較すると、第1通気面13の方が、第2の通気面14よりも通気性が高くなっている。つまり、第2の通気面14は通気性を有するものの、第1の通気面13よりも低い通気性を有している。
通気性の高低が前述の関係になっている条件下で、第2の通気面の通気度を好ましくは100〜30000秒/(100ml・6.42cm2)、更に好ましくは1000〜25000秒/(100ml・6.42cm2)、一層好ましくは5000〜20000秒/(100ml・6.42cm2)とすることで、空気は第2の通気面14を通じて優先的に流入すると共に、水蒸気は第1の通気面13を通じて優先的に放出されることが本発明者らの検討の結果判明した。その結果、タオル10の寸法が大きい場合であっても、発熱体11の全体にわたる空気の供給が安定的に行われ、発熱体11が均一に発熱する。そして発熱によって発生した水蒸気は、第1の通気面13を通じて使用者の肌面に均一に付与される。
シート材料の気体の透過させやすさを表す物性値としては、前述の通気度の他に透湿度(JIS Z0208、40℃、90%RH、以下、透湿度というときにはこの方法の測定値をいう)が知られている。そして、使い捨てカイロのような発熱具における通気性シート材料の水蒸気の透過のさせやすさは、専ら透湿度によって表されている。これに対して本実施形態においては、透湿度ではなく、通気度によって気体の透過のさせやすさを評価している。そして、通気度の値を調整することで、両面が通気性を有する蒸気温熱タオル10において、優先的に一方の面から水蒸気を放出させることが可能となったものである。この理由は、通気度と透湿度とで、その測定条件が相違することに起因していると本発明者らは考えている。透湿度は静水圧下で測定されるのに対し、通気度は加圧下に測定される。本実施形態のタオル10においては、発熱体11の発熱によって水蒸気が発生し、収容体12内は正圧状態になっている。このような状態下での気体の透過のさせやすさを評価するには、静水圧下で測定される透湿度を用いるよりも、加圧下で測定される通気度を用いた方が、実際の状態に合っていると考えられる。
先に述べた通り、外方を向く面である第2の通気面14は、外部から空気を流入させるものの、外部への水蒸気の放出量は、第1の通気面13よりも低いものとなっている。即ち、第2の通気面14を通じての空気の流入量が多いからと言って、水蒸気の放出量も多いとは言えないのである。この理由の一つは、収容体12の各面が通気性を有していることにある。つまり、第1の通気面13と第2の通気面14の通気度のバランスが、第2の通気面14における空気の流入量及び水蒸気の放出量に影響している。そこで、第2の通気面14を通じての空気の流入を確保しつつ、水蒸気の放出を抑制させる観点から、第2の通気面14の通気度を、第1の通気面13の通気度の5倍以上、特に10倍以上とすることが好ましい。或いは、第1の通気面13の通気度と第2の通気面14の通気度との比(第2の通気面/第1の通気面)を0〜0.5、特に0〜0.2とすることも好ましい。これによって、第2の通気面14を通じての水蒸気の放出を一層減じさせることができ、且つ第1の通気面13を通じての水蒸気の放出を一層増加させることができる。
第1の通気面13の通気度そのものは、第2の通気面14の通気度、及び第2の通気面14と第1の通気面13との通気度の比率が先に述べた範囲となることを条件として、0.01〜15000秒/(100ml・6.42cm2 )、特に0.01〜10000秒/(100ml・6.42cm2)であることが好ましい。これによって、第2の通気面14を通じての水蒸気の放出を更に一層減じさせることができ、且つ第1の通気面13を通じての水蒸気の放出を更に一層増加させることができる。
第1の通気面13及び第2の通気面14は、それらの通気度をコントロールすることに加えて、それらの透湿度もコントロールすることで、発熱体11の発熱特性が良好なものとなる。通気度が水蒸気の放出の程度に関連しているのに対して、透湿度は空気の流入の程度に関連している。この理由は、先に述べた透湿度の測定条件から明らかなように、透湿度は静水圧下で測定されるものなので、大気圧下での空気の通過のしやすさを評価するのに適しているからである。第1の通気面13の透湿度は1000〜6000g/(m2・24h)、特に2000〜6000g/(m2・24h)であることが好ましい。一方、第2の通気面14の透湿度は800〜6000g/(m2・24h)、特に1000〜5000g/(m2・24h)であることが好ましい。なおJISで定められた透湿度は、所定量の塩化カルシウムを用いて測定されるために、吸湿重量に上限があり6000g/(m2・24h)以上の透湿度を測定することが困難である。本発明はJISの測定方法に従うので透湿度の上限を6000g/(m2・24h)としたが、実際には6000g/(m2・24h)以上の透湿度のものも用いることができる。
先に述べた通り、シート材料の気体の透過させやすさを表す物性値としては、通気度と透湿度が代表的なものである。両者の相関関係は、シート材料によってまちまちである。つまり、シート材料によっては両者間に或る程度の相関関係がある場合もあれば、相関関係がない場合もある。従って、本実施形態において、各通気面の通気度に加えて透湿度の好ましい範囲を設定することは、技術的な意義を有するものである。
ところで、蒸気温熱タオルにおける着用者の肌に対向する面のみが通気面である構造の場合には、空気はタオルの周縁部から流入することになる。従って、そのような構造のタオルは、その面積が大きくなると、周縁部と中央部とで空気の供給の程度が相違することに起因して発熱の程度も相違してしまう。つまり、発熱が不均一になりやすくなる。これに対して本実施形態のタオル10では、肌に対向しない第2の通気面14を通じて空気が供給されるので、比較的面積の大きい本実施形態のタオル10であっても、均一な発熱が可能である。つまり、両面が通気性を有する構造の本実施形態のタオル10は、その面積が大きい場合に、両面通気性であることの意義が顕著となる。
本実施形態においては、蒸気温熱タオル10から使用者の肌へ適用される水蒸気の温度の低下を抑制することを目的として、収容体12はその周縁部に断熱部を有している。断熱部は、発生した水蒸気がタオル10の周縁部から外部へ逃げ出ることを防止して、タオル10から発生した水蒸気が外気と直接接触することを防止することが可能な構造を有している。本実施形態のタオル10においては、図1及び図2に示すように、収容体12がその周縁部に、第1の通気面13と第2の通気面14との接合で形成された周縁接合部15からなる断熱部を有している。周縁接合部15は、水蒸気発生部11の周囲を連続して取り囲むように形成されており、該周縁接合部15には水蒸気発生部11が存在していない。
タオル10から発生した水蒸気が外気とが直接接触することを効果的に抑制する観点から、周縁接合部15、即ち断熱部の幅W1は1〜500mm、特に10〜100mmであることが好ましい。なお、本実施形態におけるタオル10では、周縁接合部15の幅は四辺の何れにおいても同じであるが、これに制限されない。また、周縁接合部15は、水蒸気発生部11を連続して取り囲むように形成されているが、これに限られず水蒸気発生部11を断続的に取り囲むように周縁接合部15が形成されていてもよい。
図1及び図2に示す通り、周縁接合部15は、閉じた形状をしている接合部位16と、該接合部位16によって取り囲まれた非接合部位17とを有している。非接合部位17には空間が形成されており、その空間が空気の貯留部となっている。周縁接合部15がこのような構造を有していることで、非接合部位17に形成されている空間が、タオル10から発生した水蒸気の調節部となる。その結果、タオル10から発生した水蒸気と外気とが直接接触することが一層効果的に抑制される。この観点から、非接合部位17の幅W2は0.5〜500mm、特に1〜80mmであることが好ましい。また、周縁接合部15に占める非接合部位17の面積は好ましくは95%以下、更に好ましくは30〜95%、一層好ましくは30〜90%である。
周縁接合部15、即ち断熱部の面積は、タオル10の第1の通気面13における通気部位の面積と関連している。具体的には、周縁接合部15の面積と第1の通気面13における通気部位の面積との比(前者/後者)が好ましくは0.01〜1、更に好ましくは0.1〜0.9であると、タオル10の全体の面積を過度に大きくすることなく、周縁接合部15によってタオル10から発生した水蒸気が外気と直接接触することが一層効果的に防止される。
図2に示すように、タオル10における第1の通気面13及び第2の通気面14は何れもシート材から構成されている。どのようなシート材を用いるかは、シート材の通気度、透湿度、風合い、肌触り、強度、粉体の漏れ出し防止等を考慮して適宜決定すればよい。通気度を支配し且つ粉体の漏れ出しを防止するシート材としては、メルトブローン不織布や透湿性フィルムが好適に用いられる。透湿性フィルムは、熱可塑性樹脂及び該樹脂と相溶性のない有機又は無機のフィラーの溶融混練物をフィルム状に成形し、一軸又は二軸延伸して得られたものであり、微細な多孔質構造になっている。強度を付与する目的で用いられるシート材としては、スパンボンド不織布が好適に用いられる。また風合いを良好にする目的で用いられるシート材としては、サーマルボンド不織布が好適に用いられる。種々の通気度及び透湿度を有するシート材を組み合わせて積層シートを構成することで、各通気面の通気度及び透湿度を所望の値に設定する自由度が増す。一例として、三層構造の積層シートにおいて、最内層としてスパンボンド不織布を用い、中間層としてメルトブローン不織布を用い、最外層としてサーマルボンド不織布を用いることができる。
収容体12に収容される発熱体11は、被酸化性金属、反応促進剤、電解質及び水を含む発熱シート又は発熱粉体からなる。発熱体11が発熱シートからなる場合には、発熱シートは被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物、電解質及び水を含む繊維シートから構成されていることが好ましい。つまり、発熱シートは、被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物及び電解質を含む繊維シートが含水状態となっているものであることが好ましい。特に、発熱シートは、被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物を含有する成形シートに、電解質水溶液を含有させて構成されていることが好ましい。発熱シートとしては、湿式抄造により得られたシート状物や、発熱粉体を紙等で挟持してなる積層体等が挙げられる。そのような発熱シートは、例えば本出願人の先の出願に係る特開2003−102761号公報に記載の湿式抄造法や、ダイコーターを用いたエクストルージョン法を用いて製造することができる。一方、発熱体11が発熱粉体からなる場合には、発熱粉体は被酸化性金属、反応促進剤、保水剤、電解質及び水を含んで構成されていることが好ましい。発熱シート及び発熱粉体のうち、温度分布を均一化する事が容易であり、また、被酸化性金属の担持能力が優れている点から、発熱シートを用いることが好ましい。
本実施形態のタオル10は、その使用前は、その全体が酸素バリア性を有する包装材(図示せず)によって包装されて、発熱体11が空気中の酸素と接触しないようになされている。酸素バリア性の材料としては、例えばその酸素透過係数(ASTM D3985)が10cm3・mm/(m2・day・MPa)以下、特に2cm3・mm/(m2・day・MPa)以下であるようなものが好ましい。具体的にはエチレン−ビニルアルコール共重合体やポリアクリロニトリル等のフィルム、又はそのようなフィルムにセラミック若しくはアルミニウム等を蒸着したフィルムが挙げられる。
水蒸気発生部11が発熱シートからなる場合、該発熱シートは60〜90重量%の被酸化性金属、5〜25重量%の反応促進剤及び5〜35重量%の繊維状物を含む成形シートに、該成形シート100重量部に対して、1〜15重量%の電解質を含む電解質水溶液が30〜80重量部含有されて構成されていることが好ましい。一方、水蒸気発生部11が発熱粉体からなる場合、該発熱粉体は、30〜80重量%の被酸化性金属、1〜25重量%の反応促進剤、3〜25重量%の保水剤、0.3〜12重量%の電解質、20〜60重量%の水から構成されていることが好ましい。発熱シートや発熱粉体を構成する各種材料としては、当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを用いることができる。また、前記の特開2003−102761号公報に記載の材料を用いることもできる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態における断熱部は、接合部位16と非接合部位17とを有する周縁接合部15から構成されていたが、これに代えて、図3(a)に示すように、接合部位16のみからなる周縁接合部15から断熱部が構成されていてもよい。また図3(b)に示すように、収容体12の周縁部から外方に向けて延設されたスポンジ等の発泡体18を空気の貯留部として用い、これによって断熱部を構成してもよい。更に、図3(c)に示すように周縁接合部15を、接合部位16と、該接合部位16に隣接し且つ該接合部位16の外方に位置する、非接合部位19とから構成してもよい。非接合部位19においては第1の通気面13と第2の通気面14との端部が離間したフリーの状態になっており、いわゆる口開きの状態になっている。
また前記実施形態においては、収容体12の二つの面13,14の何れもが通気性を有していたが、これに代えて、肌に対向する面である第1の面13のみが通気性を有し、外方を向く第2の面は難通気性ないし非通気性であってもよい。
また前記実施形態は、本発明の蒸気温熱具を蒸気温熱タオルに適用した例であるが、本発明の蒸気温熱具の適用例はこれに限られず、例えば本出願人の先の出願に係る特開2005−199051号公報に記載の湿熱シートや、特開2002−65714号公報に記載の視力改善治療具等にも同様に適用できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
(1)シート状発熱体の製造
<原料組成物配合>
・被酸化性金属:鉄粉、同和鉱業株式会社製、商品名「RKH」:84重量%
・繊維状物:パルプ繊維(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名 NBKP「Mackenzi(CSF200mlに調整)」):8重量%
・活性炭:平均粒径45μm、(日本エンバイロケミカル株式会社製、商品名「カルボラフィン」)8重量%
前記原料組成物の固形分(繊維状物、被酸化性金属及び活性炭の合計)100重量部に対し、カチオン系凝集剤であるポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC(株)製、商品名「WS4020」)0.7重量部およびアニオン系凝集剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製、商品名「HE1500F」0.18重量部を添加した。更に、水(工業用水)を、固形分濃度が12%となるまで添加し、スラリーを得た。
<抄造条件>
前記スラリーを用い、これを抄紙ヘッドの直前で0.3%に水希釈し、傾斜型短網抄紙機によって、ライン速度15m/分にて抄紙して湿潤状態の成形シートを作製した。
<乾燥条件>
成形シートをフェルトで挟持して加圧脱水し、そのまま140℃の加熱ロール間に通し、含水率が5%以下になるまで乾燥した。乾燥後の坪量は450g/m2、厚さは0.45mmであった。このようにして得られた成形シートの組成を熱重量測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6200)を用いて測定した結果、鉄84%、活性炭8%、パルプ8%であった。
<シート状発熱体の作製>
得られた成形シートを80mm×100mmに切り取り、2枚を重ね合わせ、成形シート100重量部に対し電解液量が50重量部となるように、下記電解液を注入した。毛管現象を利用して成形シート全体に電解液を浸透させてシート状発熱体を得た。
<電解液>
電解質:精製塩(NaCl)
水:工業用水
電解液濃度:5%
<蒸気温熱タオルの作製>
第1の通気面は、PETのスパンボンド不織布、PPのメルトブローン不織布、PPとレーヨンのスパンボンド不織布を積層して用いた。通気度は測定される下限値である0.01秒/(100ml・6.42cm2)、透湿度は測定上限値(6000g/(m2・24h))を超えていた。第2の通気面は、炭酸カルシウムを含む延伸された多孔質のポリエチレン透湿性フィルムを内側に配し、エアスルー不織布を外側に配して構成した。透湿性フィルムの坪量は45g/m2であった。エアスルー不織布は、ポリエチレンテレフタレートを芯とし、ポリエチレンを鞘とする芯鞘型複合繊維を原料とし、坪量が20g/m2であった。第2の通気面の通気度は10000秒/(100ml・6.42cm2)、透湿度は1000g/(m2・24h)であった。
これらの材料を用いて図1及び図2に示す長方形の収容体を製造し、その内部に、前記のシート状発熱体を収容した。これによって蒸気温熱タオルを得た。蒸気温熱タオルにおける周縁接合部の幅W1は、長手方向前後端部においては40mm、幅方向両側部においては20mmであった。周縁接合部における非接合部位15の幅W2は、長手方向前後端部においては30mm、幅方向両側部においては10mmであった。周縁接合部に占める非接合部位の面積は60%であった。蒸気温熱タオルの面積は800cm2、厚みは1.5mmであった。第1の通気面の通気部位の面積は496cm2であった。タオルの面積(cm2)に対する厚み(mm)の比率(面積/厚み)は533cm2/mmであった。蒸気温熱タオルの剛性値は0.5N/幅8cmであった。
〔実施例2〕
周縁接合部の構造を図3(a)に示すものとする以外は実施例1と同様にして蒸気温熱タオルを得た。周縁接合部の幅W1は40mmであった。
〔比較例1〕
第1の通気面と第2の通気面とを幅5mmでシールする以外は実施例1と同様にして蒸気温熱タオルを得た。
〔評価1〕
図4(a)に示すように、実施例及び比較例で得られた蒸気温熱タオル10を、平坦なビニールベッド20上に載置した。このとき、第1の通気面13をビニールベッド20と対向させて、該ビニールベッド20へ向けて水蒸気が放出されるようにした。第1の通気面13の中央部に第1温度センサー21を取り付けた。また、第1の通気面13の中央部に対向するビニールベッド20上に第2温度センサー22を取り付けた。更に、蒸気温熱タオル10の周縁接合部に対向するビニールベッド20上に第3温度センサー23を取り付けた。これに加え、蒸気温熱タオル10の端縁から5cm外方の位置におけるビニールベッド20上に第4温度センサー24を取り付けた。各温度センサーは、その一方の面のみが温度を検知できる構造になっている。蒸気温熱タオル10を酸素(空気)と接触させた時点を時間ゼロとして、各温度センサーの位置における温度の経時変化を観測した。その結果を図4(b)ないし(d)に示す。
図4(b)ないし(d)に示す結果から明らかなように、各実施例の蒸気温熱タオルにおいては、タオル10の温度とビニールベッド20の温度との間に大きな開きがないのに対して、比較例の蒸気温熱タオルにおいては、タオル10の温度とビニールベッド20の温度との間に大きな開きがあることが判る。特筆すべきは、図4(b)に示すように、周縁接合部15に非接合部位17が存在する場合には、周縁接合部15の温度が上昇することである。このことは、非接合部位17を有する周縁接合部15の断熱効果が非常に高いことを意味している。
〔評価2〕
実施例1で得られた蒸気温熱タオルを、健常な8人の被験者の肩胛骨、腰部及腹部の3箇所に同時に適用し、被験者の前額、胸部、背部、上腕、前腕、手の甲、大腿及び脛における皮膚表面温度を測定した。測定は、LTST08−12(グラム社製のサーミスタ式の表面温度測定器)を用いて行った。各部位での皮膚表面温度を平均し、更に被験者8名の皮膚表面温度を平均して、平均皮膚温度を算出した。その結果を図5に示す。
図5に示す結果から明らかなように、蒸気温熱タオルを適用することで、平均皮膚温度が適用前に比べて約1.1℃上昇することが判る。また図には示していないが、蒸気温熱タオルを適用した部位における皮膚表面温度は約3℃上昇した。
〔評価3〕
評価2による測定と同時に、被験者の脳波(アルファ波)、発汗量、拡張期血圧及び心拍数を測定した。アルファ波は、開眼状態下に、多用途脳波計SYNAFIT1000(NEC社製)によって測定した。発汗量は体重計HV−G/HW−Gシリーズ:デジタル台はかり(エー・アンド・デイ社製)によって測定した。血圧及び心拍数はデジタル自動血圧計HEM−712C(オムロン社製)によって測定した。その結果、アルファ波が45%上昇し、発汗量が8.12g/(min・m2)増加した。血圧及び心拍数に変化はなかった。これらの結果から、蒸気温熱タオルの適用によって、被験者の身体(心臓)に負担を掛けずに、サウナ効果、リラックス効果、擬似入浴効果があることが判る。
図1は、本発明の蒸気温熱具の一実施形態としての蒸気温熱タオルを示す一部破断斜視図である。 図2は、図1におけるII−II線断面図である。 図3(a)及び(b)はそれぞれ断熱部の他の構造を示す図(図2相当図)である。 図4(a)は、温度センサーの取付位置を示す模式図であり、図4(b)ないし(d)は各測定位置における温度の経時変化を示すグラフである。 図5は、蒸気温熱タオルを身体に適用したときの平均皮膚温度の経時変化を示すグラフである。
符号の説明
10 蒸気温熱タオル
11 水蒸気発生部
12 収容体
13 第1の通気面
14 第2の通気面
15 周縁接合部
16 接合部位
17 非接合部位

Claims (10)

  1. 収容体内に、被酸化性金属、水、電解質及び反応促進剤を含有する水蒸気発生部が収容されてなり、該収容体から所定温度の水蒸気が外部へ放出可能になっており、該収容体はその周縁部に断熱部を有している蒸気温熱具。
  2. 蒸気温熱具の厚み(mm)に対する蒸気温熱具の面積(cm2)の比率(面積/厚み)が、0.2〜20000cm2/mmである請求項1記載の蒸気温熱具。
  3. 前記収容体が、肌に近い側に位置する第1の面と、肌から遠い側に位置する第2の面とを有し、少なくとも第1の面が通気性を有しており、第1の面の側を使用者の肌に当接させた状態下に第1の面を通じて水蒸気発生部から生じた水蒸気を使用者の肌に適用する請求項1又は2記載の蒸気温熱具。
  4. 第2の面が第1の面よりも低い通気性を有するか、又は第2の面が難通気性ないし非通気性である請求項3記載の蒸気温熱具。
  5. 前記断熱部が、前記収容体の周縁部において、第1の面と第2の面とを接合して形成された周縁接合部からなる請求項3又は4記載の蒸気温熱具。
  6. 前記周縁接合部が、第1の面と第2の面とを接合して形成され且つ閉じた形状を有している接合部位と、該接合部位によって取り囲まれた非接合部位とを有している請求項5記載の蒸気温熱具。
  7. 前記断熱部の幅が1〜500mmである請求項1ないし6の何れかに記載の蒸気温熱具。
  8. 前記断熱部の面積と第1の面における通気部位の面積との比(前者/後者)が0.01〜1である請求項3ないし7の何れかに記載の蒸気温熱具。
  9. 前記水蒸気発生部が、湿式抄造により製造されたシート状物からなるか、又は粉体からなる請求項1ないし8の何れかに記載の蒸気温熱具。
  10. 第1の面における通気部位の面積が1〜20000cm2である請求項3ないし9の何れかに記載の蒸気温熱タオル。
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