JP2007236638A - 触媒反応装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】低コストであって、しかも、ハウジングの温度上昇および出口空気の温度上昇を抑制することができる触媒反応装置を提供する。
【解決手段】磁性体を含む担体に触媒を担持させた複数の網体11と、これら網体11を支持する非導電性のハウジング13と、これら網体11の担体20を誘導加熱するためのコイル12とを有する触媒反応装置10を提供する。網体11を誘導加熱によって自己発熱させるため、触媒活性温度までの立ち上がり時間が短い。また、処理する空気を高温に加熱するためのヒータを省略することが可能であり、触媒反応装置10から排出される空気の温度を抑えることができる。ハウジング13と網体11とが別体であるため、取り扱い易く、ハウジング13は加熱せず、担体20を電磁誘導により直接加熱することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、空気に含まれる悪臭成分や、VOC(揮発性有機化合物)、排ガスに含まれる未燃成分などの有害物質を分解する際に好適な触媒反応装置に関するものである。
空気中の悪臭成分や有害物質などを除去する技術として、触媒を用いて悪臭成分や有害物質などを酸化分解させる触媒燃焼法は、直接燃焼法と比べて経済的であり、広く利用されている。特許文献1には、ヒータ部と、ヒータ部で加熱した室内空気を触媒作用によって脱臭殺菌する脱臭殺菌部とを有する脱臭殺菌装置が開示されている。
また、特許文献2には、磁性材料からなる円筒体と、この円筒体の周囲に巻かれたコイルとからなる脱臭部を備えた厨芥処理機が開示されている。円筒体には、触媒が塗布または含有されている。円筒体の内部は、軸方向の内壁によって、ハニカム構造のように内部が複数の室に区画されている。この厨芥処理機では、コイルに交流電流を印加することにより、円筒体が誘導加熱され、それにより臭気の脱臭を行う。
特開2004−141383号公報 特開平9−75669号公報
特許文献1に記載の技術は、空気中の悪臭成分や有害物質などを触媒表面で酸化分解させるために、処理する対象である空気を150〜350℃程度に加熱する必要がある。したがって、酸化分解に多くのエネルギーが必要であり、空気の浄化に多大なコストがかかる。それだけでなく、浄化後の出口空気の温度が高くなり、そのまま放出することは危険であり、ある程度冷却して温度を下げたとしても冷房している室内では使い難いという問題がある。
特許文献2に記載されている脱臭部は、複数の隔壁によって内部が複数の室に区画された円筒体を誘導加熱している。このため、処理する対象である空気を加熱しなくても、触媒を酸化分解に適した温度まで加熱できるはずであり、経済的に空気を浄化できるはずである。しかしながら、誘導加熱において、被加熱体の中に誘導される電流は、その殆どが表面に集中し、表面から遠ざかると、すなわち、深部になると急激に減少する。したがって、磁性材料からなる円筒体の周囲に巻かれたコイルによって誘導される電流は表面に集中するため、円筒体の表面の温度は内部に比べて急激に上昇するが、浄化対象の空気と接する円筒体の内部を効率的に加熱できないという問題がある。
磁場を発生する交流電流の周波数を下げることにより被加熱体の深部を誘導加熱することができる。しかしながら、数cm単位の深度を誘導加熱するためには、材料にもよるが、透磁率の大きな鉄系の材料であっても1kHzあるいはそれ以下まで周波数を下げる必要がある。交流電流の周波数を下げると、発熱量(熱変換効率)が低下するだけではなく、可視聴範囲に入ると共鳴など種々の問題が発生する要因になる。また、触媒フィルタを通過する際の空気の流速を下げて接触効率を向上しようとする場合、円筒体の断面積を大きくすることが望ましい。しかしながら、円筒体の断面積を大きくすればするほど、誘導加熱では、円筒体の内部を効率よく加熱することが難しくなる。
本発明の一態様は、担体に触媒を担持させた少なくとも1枚の網体と、触媒および/または担体を誘導加熱するためのコイルとを有する触媒反応装置である。
この触媒反応装置によれば、触媒を網体に担持させ、誘導加熱によって触媒および/または担体を自己発熱させる。この触媒反応装置では、電磁誘導による被加熱体が網体であり、触媒は基本的に網体の表面(担体の表面)に存在している。このため、周波数の高い交流をコイルに流すことによって、高周波磁場(磁束)により網体の表面に誘導される電流で触媒が自己発熱する。網体の表面電流により触媒を加熱できるので、深部加熱を必要としないケースでは、透磁率の低い材料を含む担体を網状にした網体であっても高周波磁束により触媒を加熱できる。
このように、担体に触媒を担持させた少なくとも1枚の網体と、触媒および/または担体を誘導加熱するためのコイルとを組み合わせ、網体の表面に電流を誘導することにより、効率よく触媒の温度を上げることができる。そして、網体は、空気あるいは他の流体との接触面積が大きい。したがって、網体を通過する流体中の悪臭成分や有害物質などを、流体自身の温度をヒータなどで予め触媒活性温度にまで上昇させることなく、網体の表面を誘導加熱により自己発熱させることで酸化分解させることができる。このため、誘導用のコイルに供給する交流の周波数を可視聴領域まで低下させなくてもよく、十分に大きな流体の通過断面を備え、それを通過する流体を触媒反応により浄化できる触媒反応装置を提供できる。
担体は、ヒステリシス損があり、誘導加熱しやすい磁性体であることが望ましい。この場合、触媒は、必ずしも誘導加熱されるものでなくてもよい。一方、網体を支持するハウジングの一例は非導電性のものである。磁束を通過させることができるので、ハウジングの外側にコイルを巻いて内部の網体を誘導加熱できる。網体を支持する他の一例は非磁性体のものである。
また、このハウジングに、流体の流路を形成する機能を持たすことができる。そして、ハウジングと異なる網体(網体を構成する担体)に触媒を担持させることにより、網体とハウジングとを別々の材料により形成することができる。このようにすることにより、ハウジングは自己発熱し難く、網体は自己発熱し易い触媒反応装置を提供できる。このような触媒反応装置は、流体と接して触媒反応が要求される部分の温度は高くできるので、触媒反応を高効率で行うことができる。その一方で、外部と接したりする部分の温度を低く保持できるので、安全性が高い。また、空気などの被反応(被浄化)流体は、触媒あるいは担体との接触により加熱されるだけであり、流体自体を触媒反応に必要あるいはそれ以上の温度まで加熱する必要がない。したがって、触媒により脱臭するなどの浄化に要するエネルギーが少なく、経済的であり、また、空調に対して余分な熱負荷になることの少ない触媒反応装置を提供できる。
担体は、金属板あるいは金属箔(以下、箔帯という)に、ラス目加工(切れ目(ラス目)を入れる加工)を施し、その後、エキスパンド加工(引き伸ばして(エキスパンドして)網目状に加工)してなるラス金網であることが好ましい。ラス金網は、ラス網あるいはメタルラスとも称されるものであり、不織なので繊維同士(繊維状の金属同士)の磨耗がなく、耐久性が高い。しかも、それぞれが連続した一枚板なので、十分な圧縮あるいは引張り強度を持たせることが可能である。
このような網体は、ハウジングの断面積よりも大きな部分を少なくとも備えた形状の網体をハウジングの内部に圧入することにより、ねじ止めや溶接などを用いずに、ハウジング内に複数の網体を積層させることができる。また、ハウジングに網体を圧入した構造は、振動で擦れたり緩んだりする部分がなく、耐振動性および耐久性が高い。網体は、ハウジングにロウ付けまたは溶接により固定してもよい。
また、担体としてラス金網を用いた触媒反応装置は、担体がハニカム構造を有するような触媒反応装置と比べて、担持させた触媒を短時間で触媒活性温度まで昇温させることができる。
網体は、全体が多孔性であっても圧入するのに十分な強度を得ることができるが、多孔性の部分と、対角線または半径方向に延びた支持部分とを備えているデザインとしてもよく、このようなデザインとすることにより、十分な開口率と十分な強度とを容易に確保することが可能である。
この触媒反応装置の1つの形態は、複数の網体を有し、これら複数の網体を、筒状のハウジング内に、このハウジングの軸と直交するように互いに平行に配置するものである。この触媒反応装置の他の形態の1つは、網体を、筒状のハウジング内に、このハウジングの軸に沿って配置するものである。この場合、板状の網体を、ハウジングの軸に沿って配置してもよいが、1枚の網体を丸めて筒状のハウジング内に挿入したり、複数枚の網体をそれぞれ筒状にし、これらを同軸状に筒状のハウジング内に挿入したりしてもよい。さらに、網体の表面積をかせぐために、網体は、波状にまたはジグザグ状に曲げた状態で、ハウジング内に挿入してもよい。ハウジング内に、複数の網体を、流体の流れに対して平行にあるいは垂直に配置することにより、触媒との接触効率を向上し、悪臭成分や有害物質などの除去効率を向上できる。
コイルの配置の好適な1つの例は、コイルを空気が流通可能な形状とし、網体の間に配置するものである。このようにすることにより、ハウジング内の流体の流れに大きな影響を与えることなく、網体を良好に誘導加熱することができる。また、コイルがハウジングの内部に配置されるため、触媒反応装置を小型化することができ、取り扱いも簡単である。また、コイルの配置の他の例は、ハウジングの外部に巻くものである。この場合、ハウジングは、非磁性体または非導電体であることが好ましい。ハウジングは、筒状ではなく、一対の端板を有するものであってもよい。この場合、網体は、これら端板の間を跨ぐように配置し、コイルは、網体の外部に巻くようにするとよい。
図1に、空気清浄機の一例を示している。空気清浄機1は、触媒反応装置10と、この触媒反応装置10に空気などの外部流体を送り込むためのファン2と、触媒反応装置10およびファン2を駆動させるための電力供給ユニット3とを備えている。この空気清浄機1では、ファン2を駆動させ、触媒反応装置10に外部流体を送り込むことにより、触媒反応装置10により外部流体中の悪臭成分や有害物質などが酸化分解して除去され、浄化された空気が放出される。
図2に、本発明の第1の実施形態にかかる触媒反応装置10を示してある。図3に、この触媒反応装置10を図2中のIII-III線に沿って切断した断面図を示してある。図4に、この触媒反応装置10を図2中のIV-IV線に沿って切断した断面図を示してある。図5に、図4中の領域Vで囲まれた領域を拡大して示してある。図6に、網体の一部を断面にて示してある。
図2に示すように、この触媒反応装置10は、外形が円盤状の複数(9枚)の網体11と、外形が円盤状であって、網体11を電磁誘導加熱(IH:Induction Heating)するための2つのコイル12と、これらの網体11およびコイル12を支持する円筒状の非導電性のハウジング13とを備えている。非導電性のハウジング13は、耐熱性のプラスチックあるいはセラミックなどにより構成される。9枚の網体11は、3つのグループに分かれており、2つのコイル12は、それぞれのグループに挟まれた位置に設置され、コイル12に高周波の交流を流し、高周波磁束を形成することにより、3つのグループの網体11に電流を誘起して網体11が自己発熱するようにしている。
図3に示すように、磁界を発生する誘導コイル12は、基体に、ワイヤを巻いた構成であり、ハウジング13の内径と略同径の第1のリング部12aと、このリング部材の内径よりも小さい外径を有し、このリング部材と同軸に配置された第2のリング部12bと、第1のリング部材と第2のリング部材との間を繋ぐ4つの架橋部12cとを備える。これらのコイル12は、円筒状のハウジング13の内に、このハウジング13の軸Lと直交するように配置されている。
図4に示すように、網体11は、それぞれ、ハウジング13の内径と略同径のラス金網からなる担体と、この担体に担持された触媒とを有している。9枚の網体11は、円筒状のハウジング13内に、このハウジング13の軸Lと直交するように互いに平行に配置されている。図5に拡大して示すように、網体11の担体20は、アルミニウム含有耐熱性合金からなる薄板にラス目加工後、エキスパンド加工してなるラス金網である。また、図6(a)および(b)にさらに拡大して示すように、担体20の表面(孔の内面も含む)には、Alを含む酸化層23が形成されている。さらに、酸化層23には、触媒(Pb、Ptなど)24が担持されている。
以下に、網体11の形成方法の一例を説明する(図6(a)参照)。アルミニウム含有耐熱性合金(Fe−Cr−Al−La合金)を所望の混合比で調合する。アルミニウム含有耐熱性合金の好適な一例として、Crが20%、Alが6%、Laが0.05%、残りがFe(微量な不純物を除く)という組成を挙げることができる。これを溶融し、圧延を繰り返し、所定の厚みに圧延して箔帯21にする。
その後、箔帯21にラス目を入れ、エキスパンドし、延伸させ、編み目状(ラス金網)に加工する。ワイヤーメッシュ状の触媒24を形成するためには、箔帯21の厚みは1mm以下、さらには0.2mm以下程度のものを採用することが望ましい。さらに好ましくは、箔帯21の厚みは、40〜200μmである。触媒燃焼に適したラス金網の1つのパラメータは開口率であり、開口率(メッシュ相当)は、10〜20(1インチあたり10〜20目)程度になるように機械加工することが望ましい。この程度の開口率のラス金網であれば、外部流体Fの流通抵抗(通気抵抗)も高くなり過ぎず、担体20としての機械的強度や、ラス金網の加工歩留まり視点からも好ましい。なお、網体11の最終形状に合わせ、網体11の形状を円盤状にしたり、波状にまたはジグザグ状に折り返したり、円筒状に加工したり、ロール状に丸めたりする必要があれば、この段階、すなわち、以下で説明する熱処理の前に行うことが好ましい。
さらに、約850℃で、4時間、熱処理を施し、表面にアルミナ(Al)を含む耐熱性の酸化層23を形成し、担体20とする。850℃前後で熱処理することにより、Crを含む第1の被覆層とAlを含む第2の被覆層とを有する、高耐熱性・高耐久性の良好な酸化層23が形成されると考えられている。また、600℃〜850℃、望ましくは850℃前後で熱処理することにより、ウィスカーと呼ばれる結晶が形成され、酸化層23(第2の被覆層)中に、触媒24の担持能力の高いγ−Alが効率良く形成されると考えられている。これにより、担体20が形成される。このように形成した担体20は、Feを多く含む強磁性体となる。
さらに、担体20の表面(酸化層23の表面)に、白金族触媒24、例えばPtおよびPdの少なくとも一方を担持させる。これにより、触媒として機能する網体11を形成することができる。
網体11は、また、以下のように形成してもよい(図6(b)参照)。アルミニウム含有耐熱性合金の箔帯21をラス金網に加工するまでは同様である。ラス金網状に機械加工された箔帯21を低酸素状態で熱処理する。炉内を真空ポンプにより1×10−3Torr以下に減圧し、機械加工された箔帯21を低酸素状態で約900℃に加熱する(第1の熱処理)。加熱時間は、0.5〜1分(30〜60秒)である。これにより、箔帯21の表面全体(孔の内面を含む)にわたり、アルミリッチ(アルミニウム富裕)な下地層22が形成される。さらに、炉内を大気圧にし、機械加工され、第1の熱処理が済んだ箔帯21を空気中で約850℃に加熱する(第2の熱処理)。加熱時間は、約4時間である。これにより、下地層22の表面全体(孔の内面を含む)にわたり、アルミナを含む耐熱性の酸化層23が形成される。このように形成した担体20もまた、Feを多く含む強磁性体となる。
この担体20の酸化層23の表面に、白金族触媒24、例えばPtおよびPdの少なくとも一方を担持させる。これにより、触媒として機能する網体11を形成することができる。
Fe(鉄)およびCr(クロム)を含む合金からなる担体20は、低価格であって、しかも、耐熱性に優れ、高寿命である。担体20の耐熱性、耐久性、および耐摩耗性を向上させるためには、3〜7%のAl(アルミニウム)を含有するFe−Cr基合金を用いることが好ましい。さらに好ましくは、上述したように、担体20は、Fe、Cr、Al、およびLa(ランタン)を含む合金を箔帯にして、ラス目加工後、エキスパンド加工して、ラス金網としたものである。
Alを含有するFe−Cr基合金からなる担体20は、エキスパンド加工された後に、低酸素雰囲気中で熱処理することにより、表面全体にアルミリッチの下地層22を形成でき、さらに、その後、空気中で熱処理することにより酸化アルミニウム(アルミナ/Al)を含む酸化層23を形成できる。エキスパンド加工された後の箔帯21に、下地層22および酸化層23を形成することにより、多孔性で不織性の担体20でありながら、多孔加工された部分、たとえば、孔の内面やエッジなどの部分にも酸化層23を形成することができる。このため、それ自体で触媒反応を期待したり、Pt(白金)やPd(パラジウム)といった触媒反応に適した白金族金属24を担持させる酸化層23の面積を大きくすることができるので、ハウジング13内における流体と触媒24との接触面積が大きくなり、浄化能力を向上させることができる。また、振動による磨耗が少なく、耐久性が高く、さらに悪臭成分や有害物質などの浄化効率が高い触媒反応装置10を提供できる。
担体20としてLaを含有する合金を用いる場合、その含有量は、0.02〜0.07%であることが好ましく、0.03〜0.05%であることがさらに好ましい。このようにLaを含有させた合金は、850℃以下の低温で、担体20の表面に酸化アルミニウムを含む酸化層23を形成することが可能である。このときの熱処理は、650〜850℃で行うことが好ましい。このように低温で熱処理できるため、触媒24の担持に適した多孔質のγ−アルミナと考えられる酸化層23を形成することができる。
さらに、Laの含有量が0.02%程度であると、熱処理時間が長くなり、量産化し難いため、Laの含有量は0.03%以上であることが望ましい。Laの含有量が0.09%あるいはそれ以上であると、合金化に問題が生じ易い。また、この場合、酸化層23中に、多孔質ではないα−アルミナが増加する。さらに、比較的高価なLaの含有量が増加することはコストの点でも好ましくない。
この触媒反応装置10を空気清浄機1に適用する場合、ハウジング13の開口端13aおよび13bの一方の開口端(ここでは開口端13aとする)をファン2の方向に向け、各コイル12と電力供給ユニット3とを電気的に接続する。電力供給ユニット3により、触媒反応装置10の各コイル12に供給される高周波の交流電流によって、各網体11の担体20および触媒24は誘導加熱され、触媒24の温度は数秒〜数十秒で触媒活性温度にまで上昇する。本実施形態では、触媒24も磁性体であり、コイル12に発生する高周波磁束により、強磁性体の担体20が自己発熱するのみならず、触媒24それ自体も自己発熱し、急速に触媒活性温度にすることができる。
ハウジング13内において、加熱された網体11の表面(担体20に担持された触媒24の表面)にて、外部流体(空気)Fに含まれる悪臭成分や有害物質などが酸化分解される。これにより、触媒24の表面の近傍では、悪臭成分や有害物質の濃度が下がるため、触媒24から離れた位置に存在する悪臭成分や有害物質は、拡散により触媒24の表面に補給され、酸化分解される。この繰り返しにより、この空気清浄機1は、触媒24が自己発熱または担体20により加熱されるので、空気を加熱しなくても空気中の悪臭成分や有害物質などを除去できる。また、拡散により空気中の悪臭成分や有害物質を除去できるので、ファンを稼動させないスタティックな状態でも空気清浄効果を得ることができる。
ファン2を稼動させることにより、空気清浄機1の除去効率を向上できる。ハウジング13の一方の開口端13aから、ハウジング13内に送り込まれた外部流体Fは、網体11およびコイル12の間を通り、加熱された網体11の表面(担体20に担持された触媒24の表面)に接し、外部流体Fに含まれる悪臭成分や有害物質などが酸化分解される。悪臭成分や有害物質などが除去された外部流体Fは、ハウジング13の他方の開口端13bから排出される。空気清浄機1では、外部流体Fを触媒活性温度まで高温にする必要はなく、外部流体Fは、自己発熱した網体11と接することにより加熱されるだけになる。したがって、ハウジング13から放出される外部流体Fの温度上昇を低く抑えることができ、省エネで経済的な空気清浄機1を提供できる。
また、空気を触媒活性化温度まで加熱する方式の装置と比べて、排出される外部流体の温度を低く抑えることができるため、冷房時の空調負荷を軽減できる。また、ハウジング13は非導電性であり、ハウジング13自体は誘導加熱されない。したがって、触媒反応装置10の外面温度は誘導加熱により積極的には上昇しないため、取り扱いが簡単であり、配置場所も自由に設定できる。また、このタイプの触媒反応装置10は、誘導コイル12がハウジング13に収まるので、ハウジング13を非磁性体にすることにより、誘導加熱による温度上昇を低く抑えることができる。
また、担体20としてラス金網を用いているため、担体がハニカム構造を有するような触媒反応装置と比べ、軽量である。ハニカム構造体を外部から誘導加熱する場合は、空気の通路である中心部(深部)を加熱するために、効率が低く、共鳴あるいはノイズなどの要因となり易い低周波の交流を用いる必要がある。これに対し、本例の触媒反応装置10は、磁性体からなる網体11に表面電流を誘起して加熱する方式なので熱変換効率が良く、共鳴あるいはノイズなどの要因になり難い、高周波の交流により発生される高周波磁束を用いて触媒24を加熱することができる。
網体11は個々としては薄く、誘導加熱しやすいものであり、さらに、この触媒反応装置10のように、複数の網体11を、円筒状のハウジング13の内に、このハウジング13の軸Lと直交するように互いに平行に配置する、つまり、複数の網体11は、外部流体Fの流通方向に積層することにより、ハウジング13内に複雑な流路を形成できる。したがって、ハニカム構造の担体と同等あるいはそれ以上に、流体と触媒24との接触効率を高くすることが可能であり、十分な浄化性能を得ることができる。
また、この触媒反応装置10では、空気が流通可能な形状のコイル12を、網体11の間に配置しているため、ハウジング13内を流通する流体の流れを妨げることなく、網体11を良好に誘導加熱することができる。したがって、この点でも経済的であり、家庭あるいはオフィスなどで使用しやすい空気清浄機を提供できる。
さらに、ラス金網からなる担体20は、ハニカム構造を有する担体と比べて軽量であり、熱容量も小さい。したがって、網状の担体20に担持させた触媒24を短時間で触媒活性温度にまで昇温させることができる。さらに、誘導加熱は、コイル12に供給する交流電流を停止すれば網体11の加熱を停止でき、網体11の熱容量が小さいために、担体20への加熱が不足(アンダー)したり、過熱(オーバー)したりさせることなく、担体20の温度制御が容易となる。また、ラス金網は不織なので繊維同士(繊維状の金属同士)の磨耗が無いため、耐久性が高い。
なお、本実施形態の触媒反応装置10に適用されるコイル12の形状はこれに限定されるものではない。ハウジング13内に配置したときに、ハウジング13内に空気が流通可能な形状のコイル12であれば、本実施形態の触媒反応装置10にコイル12と置換して採用することができる。また、適当な枚数の網体11とコイル12とを交互に並べる配置は、網体11を効率的に誘導加熱できる好ましい配置例であるが、網体11およびコイル12の数および配置は、これに限定されるものではなく、任意に決定することができる。
図7に、本発明の第2の実施形態にかかる触媒反応装置10aを示してある。図8に、この触媒反応装置10aを図7の中のVIII-VIII線に沿って切断した断面図を示してある。この触媒反応装置10aは、第1の実施形態の触媒反応装置10と置換することで、空気清浄機1に好適に用いることができる。
この触媒反応装置10aは、外形円盤状の複数(15枚)の網体11と、これら網体11を支持する円筒状の非導電性のハウジング13と、ハウジング13の外部に巻かれたコイル12とを備えている。網体11は、それぞれ、ハウジング13の内径と略同径のラス金網からなる担体20と、この担体20に担持された触媒24を有している。15枚の網体11は、円筒状のハウジング13内に、このハウジング13の軸Lと直交するように互いに平行に配置されている。
担体20をなすラス金網の形状、担体20や触媒24の材料などを含め、他の構成は、上述した第1の実施形態の触媒反応装置10と同じであるから、重複する説明は、図面に同符号を付して省略する。この触媒反応装置10aにおいても、それぞれの網体11に表面電流を容易に誘起することができ、高い周波数の磁束により効率よく網体11を加熱できる。なお、網体11の数は、これに限定されるものではなく、任意に決定することができる。
図9に、本発明の第3の実施形態にかかる触媒反応装置10bを示してある。図10に、この触媒反応装置10bを図9中X-X線に沿って切断した断面図を示してある。この触媒反応装置10bもまた、第1の実施形態の触媒反応装置10と置換することで、空気清浄機1に好適に用いることができる。
この触媒反応装置10bは、筒状の2つの網体11と、これら網体11を覆うように支持する円筒状の非導電性のハウジング13と、ハウジング13の外部に巻かれたコイル12とを備えている。2つの筒状の網体11は、それぞれの軸L1がハウジング13の軸Lと一致するように、ハウジング13の軸Lに沿って配置されている。
担体20をなすラス金網の形状、担体20や触媒24の材料などを含め、他の構成は、上述した第1の実施形態の触媒反応装置10と同じであるから、重複する説明は、図面に同符号を付して省略する。この触媒反応装置10bでも、非導電性のハウジング13を採用できるので、ハウジング13の内部の網体11に表面電流を容易に誘起することが可能であり、高い周波数の磁束により効率よく、ハウジング13内の網体11を加熱できる。
なお、この触媒反応装置10bでは、2つの網体11を、それぞれの軸L1がハウジングの軸Lと一致するように同軸上に配置しているが、1枚の長い網体をロール状に巻いたものをハウジング内に配置しても同様の効果が得られる。また、2つの網体11は、表面積をかせぐために、ジグザグ状に曲げられた形状となっているが、ジグザグ状を省略して単に円筒状にしてもよい。
図11に、本発明の第4の実施形態にかかる触媒反応装置10cを示してある。この触媒反応装置10cは、一対の端板14aおよび14bを備えるハウジング13と、これら端板14aおよび14bの間を跨ぐように配置された3つの円筒状の網体11と、網体11の外部に巻かれたコイル12とを備えている。ハウジング13の一方の端板14aは、その中心に、外部流体Fを端板14aおよび14bの間に流入させるための開口15を有している。3つの円筒状の網体11は、それぞれの軸L1が互いに一致するように、一対の端板14aおよび14bの間に配置されている。
担体20をなすラス金網の形状、担体20や触媒24の材料などを含め、他の構成は、上述した第1の実施形態の触媒反応装置10と同じであるから、重複する説明は、図面に同符号を付して省略する。この触媒反応装置10cにおいても、網体11、特に外周の網体11に容易に電流を誘起することができ、網体11を自己加熱することが可能となる。
この触媒反応装置10cを空気清浄機1に適用する場合、一方の端板14aの開口15をファン2の方向に向けて配置すればよい。このようにすることにより、ファン2によって送り出された外部流体Fは、開口15から一対の端板14aおよび14bの間に流れ込み、3つの筒状の網体11の隙間を通って、網体11の外部に抜けるように流れる。このとき、網体11の表面(担体20に担持された触媒24の表面)にて、外部流体Fに含まれる悪臭成分や有害物質などが酸化分解される。
本発明の触媒反応装置は、脱臭装置、排ガス浄化装置、VOC除去装置を含む空気清浄機のほか、触媒によって悪臭成分や有害物質などを酸化分解する装置に、広く用いることができる。
空気清浄機の一例を示す概念図。 本発明の第1の実施形態にかかる触媒反応装置を示す断面図。 図2中III-III線に沿って切断して示す断面図。 図2中IV-IV線に沿って切断して示す断面図。 図4中領域Vで囲まれた領域を拡大して示す平面図。 (a)は網体の一例を示す断面図であり、(b)は網体の他の一例を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態にかかる触媒反応装置を示す断面図。 図7中VIII-VIII線に沿って切断して示す断面図。 本発明の第3の実施形態にかかる触媒反応装置を示す断面図。 図9中X-X線に沿って切断して示す断面図。 本発明の第4の実施形態にかかる触媒反応装置を示す断面図。
符号の説明
1 空気清浄機、 2 ファン(送風手段)
3 電力供給ユニット(電力供給手段)
10、10a、10b、10c 触媒反応装置
11 網体、 12 コイル
13 ハウジング、 14a、14b 端板
20 担体、 24 触媒
L ハウジングの軸

Claims (10)

  1. 担体に触媒を担持させた少なくとも1枚の網体と、
    前記触媒および/または担体を誘導加熱するためのコイルとを有する触媒反応装置。
  2. 請求項1において、前記担体は、磁性体を含む、触媒反応装置。
  3. 請求項1または2において、前記少なくとも1枚の網体を支持するハウジングをさらに有する、触媒反応装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記担体は、ラス目加工後、エキスパンド加工してなるラス金網である、触媒反応装置。
  5. 請求項3において、当該触媒反応装置は、複数の網体を有し、
    前記複数の網体は、筒状の前記ハウジング内に、当該ハウジングの軸と直交するように互いに平行に配置されている、触媒反応装置。
  6. 請求項3において、前記網体は、筒状の前記ハウジング内に、当該ハウジングの軸に沿って配置されている、触媒反応装置。
  7. 請求項5または6において、前記コイルは、空気が流通可能な形状であって、前記網体の間に配置されている、触媒反応装置。
  8. 請求項5または6において、前記ハウジングは、非磁性体または非導電体であって、前記コイルは、前記非磁性体または非導電体のハウジングの外部に巻かれている、触媒反応装置。
  9. 請求項3において、前記ハウジングは、一対の端板を有し、前記網体は、これら端板の間を跨ぐように配置されており、前記コイルは、前記網体の外部に巻かれている、触媒反応装置。
  10. 請求項1ないし9のいずれかに記載の触媒反応装置と、
    前記触媒反応装置に風を供給する送風手段と、
    前記送風手段に電力を供給する電力供給手段とを有する空気清浄機。
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