JP2007234907A - 接合ダイオード、および接合ダイオードを作製する方法 - Google Patents

接合ダイオード、および接合ダイオードを作製する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】窒化ガリウム系半導体を用いており耐圧を向上できる接合ダイオードを提供する。
【解決手段】接合ダイオード11は、n型窒化ガリウム系半導体層13と、p型窒化ガリウム系半導体層15とを備える。n型窒化ガリウム系半導体層13は、1×1017cm−3以下のキャリア濃度を有する。p型窒化ガリウム系半導体層15は、n型窒化ガリウム系半導体層13上に設けられており、また1×1019cm−3未満のマグネシウム濃度を有する。n型窒化ガリウム系半導体層13およびp型窒化ガリウム系半導体層15はホモ接合17を成す。n型窒化ガリウム系半導体層13は、基板19上に設けられている。
【選択図】図1

Description

本発明は、接合ダイオード、および接合ダイオードを作製する方法に関する。
非特許文献1には、pin整流器が記載されている。このpin整流器は、自立GaN基板を用いる。有機金属気相成長法で、5×1016cm−3程度のn型キャリア濃度を有するn型窒化ガリウム膜がGaN基板上に成長される。次いで、1017cm−3程度のp型キャリア濃度を有するp型窒化ガリウム膜がn型窒化ガリウム膜上に成長される。
非特許文献2には、pin整流器が記載されている。このpin整流器は、自立GaN基板を用いる。有機金属気相成長法で、2×1018cm−3程度のSiドーパント濃度を有するn型窒化ガリウム膜がGaN基板上に成長される。次いで、1×1017cm−3程度のSiドーパント濃度を有するn型窒化ガリウム膜がn型窒化ガリウム膜上に成長される。この後に、1019cm−3程度のマグネシウム濃度を有するp型窒化ガリウム膜がn型窒化ガリウム膜上に成長される。
Y. Irokawa et. al, Appl. Phys. Lett. Vol. 83, No. 11 pp.2271-2273(2003) X. A. Cao, et. al., Appl. Phys. Lett. Vol. 87,053503 (2005)
窒化ガリウム系半導体を用いる接合ダイオードは、高耐圧ダイオード素子として期待されている。非特許文献2には、サファイア基板およびGaN自立基板上に形成されたpin整流器の逆方向特性が示されている。GaN自立基板のpin整流器は、170ボルト〜265ボルトの耐圧を示す(耐圧の定義:−0.1mA、−160mA/cm)。また、非特許文献1の図2には、pin整流器の逆方向特性が示されている。サファイア基板およびGaN自立基板のいずれを用いる場合でも、接合ダイオードの耐圧といった特性を向上させることが求められている。非特許文献1に記載された1017cm−3程度のp型キャリア濃度を得るためには、通常、窒化ガリウムに1019cm−3程度のマグネシウムを添加する必要がある。
発明者らは、様々な実験の結果から、接合ダイオードの耐圧を低下させている一要因を見出した。本発明は、このような事情の下に為されたものであり、窒化ガリウム系半導体を用いておりハードプブレークダウン電圧を向上できる接合ダイオードを提供することを目的とする。また、本発明は、窒化ガリウム系半導体を用いておりハードプブレークダウン電圧を向上できる接合ダイオードを作製する方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面によれば、接合ダイオードは、(a)1×1017cm−3以下のキャリア濃度を有しており基板上に設けられたn型窒化ガリウム系半導体層と、(b)1×1019cm−3未満のマグネシウム濃度を有しており前記n型窒化ガリウム系半導体層上に設けられたp型窒化ガリウム系半導体層とを備え、前記n型窒化ガリウム系半導体層および前記p型窒化ガリウム系半導体層はホモ接合を成す。
この接合ダイオードによれば、n型窒化ガリウム系半導体層とホモ接合を成すp型窒化ガリウム系半導体層のマグネシウム濃度が、1×1019cm−3未満であるので、接合ダイオードの耐圧を向上させることができる。
本発明の一側面に係る接合ダイオードでは、前記基板は、1×10cm−2以下の貫通転位密度を有する導電性窒化ガリウム領域を含むことが好ましい。この接合ダイオードによれば、導電性窒化ガリウム領域の貫通転位密度が1×10cm−2以下であれば、接合ダイオードの耐圧を向上させるために好適である。
本発明の一側面に係る接合ダイオードでは、前記基板は窒化ガリウム基板であることが好ましい。この接合ダイオードによれば、貫通転位密度1×10cm−2以下の導電性窒化ガリウム領域が提供される。
本発明の一側面に係る接合ダイオードでは、前記n型窒化ガリウム系半導体層の厚さは3マイクロメートル以上であり、前記n型窒化ガリウム系半導体層のドナー濃度が6×1016cm−3以下であることが好ましい。この接合ダイオードによれば、ハードプブレークダウンの発生に先立ってパンチスルーの生じることが無い。
本発明の一側面に係る接合ダイオードでは、前記p型窒化ガリウム系半導体層の前記マグネシウム濃度は、前記n型窒化ガリウム系半導体層のドナー濃度の5倍よりも大きいことが好ましい。この接合ダイオードによれば、空乏層を主にn型窒化ガリウム系半導体層に広がる。
本発明の一側面に係る接合ダイオードでは、前記n型窒化ガリウム系半導体層はGaNからなり、前記p型窒化ガリウム系半導体層はGaNからなることが好ましい。この接合ダイオードによれば、良好なホモ接合が提供される。GaNであれば、他の窒化物半導体の結晶成長と比較して、結晶格子の揺らぎを抑制できるとともに、意図しない不純物濃度の混入を極力抑制することが可能であり、急峻なpn接合界面を得ることができる。
本発明の一側面に係る接合ダイオードでは、前記n型窒化ガリウム系半導体層はAlGaNからなり、前記p型窒化ガリウム系半導体層はAlGaNからなることが好ましい。この接合ダイオードによれば、窒化ガリウムより大きなバンドギャップの材料からなる良好なホモ接合が提供される。AlGaNであれば、GaNと比較的類似した結晶成長条件を用いて作製することが可能であり、絶縁破壊電界が大きくなることに起因して、ダイオードの耐圧を向上させることが可能となる。
本発明の一側面に係る接合ダイオードでは、前記n型窒化ガリウム系半導体層および前記p型窒化ガリウム系半導体層の前記ホモ接合は、600ボルト以上の耐圧を示すように設けられている。
本発明の一側面に係る接合ダイオードでは、前記n型窒化ガリウム系半導体層および前記p型窒化ガリウム系半導体層の前記ホモ接合は、逆方向印加電圧−600ボルトにおいて1×10−2A/cm以下のリーク電流を示すように設けられている。
本発明の一側面に係る接合ダイオードは、前記p型窒化ガリウム系半導体層上に設けられた別のp型窒化ガリウム系半導体層を更に備え、前記別のp型窒化ガリウム系半導体層のキャリア濃度は前記p型窒化ガリウム系半導体層のキャリア濃度より大きい。
この接合ダイオードによれば、接合ダイオードの耐圧を向上できると共に、別のp型窒化ガリウム系半導体層を用いて電極との良好な接合を得ることができる。
本発明の別の側面は、窒化ガリウム系半導体を用いる接合ダイオードを作製する方法である。この方法は、(a)1×1017cm−3以下のキャリア濃度を有するn型窒化ガリウム系半導体膜を基板上に成長する工程と、(b)1×1019cm−3未満のマグネシウム濃度を有するp型窒化ガリウム系半導体膜を前記n型窒化ガリウム系半導体膜上に成長する工程とを備え、前記n型窒化ガリウム系半導体層および前記p型窒化ガリウム系半導体層はホモ接合を成す。
この接合ダイオードの作製方法によれば、n型窒化ガリウム系半導体層とホモ接合を成すp型窒化ガリウム系半導体層のマグネシウム濃度が、1×1019cm−3未満であるので、接合ダイオードの耐圧を向上させることができる。
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
以上説明したように、この発明によれば、窒化ガリウム系半導体を用いておりハードブレークダウン電圧を向上できる接合ダイオードが提供される。また、この発明によれば、窒化ガリウム系半導体を用いてハードブレークダウン電圧を向上できる接合ダイオードを作製する方法が提供される。
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明の接合ダイオード、接合ダイオードを作製する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る接合ダイオードを概略的に示す図面である。この接合ダイオードは、窒化ガリウム系半導体を用いる。接合ダイオード11は、n型窒化ガリウム系半導体層13と、p型窒化ガリウム系半導体層15とを備える。n型窒化ガリウム系半導体層13は、1×1017cm−3以下のキャリア濃度を有する。p型窒化ガリウム系半導体層15は、n型窒化ガリウム系半導体層13上に設けられており、また1×1019cm−3未満のマグネシウム濃度を有する。n型窒化ガリウム系半導体層13およびp型窒化ガリウム系半導体層15はホモ接合17を成す。n型窒化ガリウム系半導体層13は、基板19上に設けられている。
この接合ダイオードによれば、n型窒化ガリウム系半導体層13とホモ接合17を成すp型窒化ガリウム系半導体層15のマグネシウム濃度が、1×1019cm−3未満であるので、接合ダイオード11の耐圧を向上させることができる。n型窒化ガリウム系半導体層13のキャリア濃度が1×1017cm−3以下であれば、耐圧を高くできる。n型窒化ガリウム系半導体層13のキャリア濃度が1×1014cm−3以上であれば、オン抵抗を小さくできる。
接合ダイオード11は、1×10cm−2以下の貫通転位密度を有する窒化ガリウム領域を含む導電性の基板19を備える。導電性基板19の主面19a上には、ホモ接合を構成するn型窒化ガリウム系半導体層13およびp型窒化ガリウム系半導体層15が設けられている。導電性窒化ガリウム領域の貫通転位密度が1×10cm−2以下であれば、接合ダイオードの耐圧を向上させるために好適である。必要な場合には、接合ダイオード11は、基板19上に設けられたバッファ層21を含むことが好ましい。また、基板19は窒化ガリウム基板であることが好ましい。窒化ガリウム基板を用いると、貫通転位密度1×10cm−2以下の導電性窒化ガリウム領域が提供される。窒化ガリウム基板は、例えばGaN(0001)面からなる主面を有する。
また、接合ダイオード11では、p型窒化ガリウム系半導体層15のマグネシウム濃度は3×1018cm−3以下であることが好ましい。この接合ダイオードによれば、p型半導体層に発生する欠陥を抑制することができ、リーク電流を低減することが可能になり、その結果、耐圧を向上させることができるという利点がある。さらに、接合ダイオード11では、n型窒化ガリウム系半導体層13の厚さD1は3マイクロメートル以上であり、n型窒化ガリウム系半導体層13のドナー濃度が6×1016cm−3以下であることが好ましい。この接合ダイオードによれば、ハードブレークダウンに先立ってパンチスルーが生じない。
また、接合ダイオード11は、p型窒化ガリウム系半導体層13上に設けられた別のp型窒化ガリウム系半導体層23を更に備えることが好ましい。別のp型窒化ガリウム系半導体層23のキャリア濃度はp型窒化ガリウム系半導体層13のキャリア濃度より大きい。接合ダイオード11は、別のp型窒化ガリウム系半導体層23上に設けられたアノード電極25を更に備える。アノード電極25は別のp型窒化ガリウム系半導体層23にオーミック接触を成す。アノード電極25の材料としては、例えばNi/Au(50ナノメートル/100ナノメートル)を用いることができる。導電性基板19の裏面19bには、カソード電極27が設けられている。カソード電極27は、導電性基板19の裏面19bにオーミック接合を成す。カソード電極27の材料としては、例えばTi/Al/Ti/Au(20nm/100nm/20nm/300nm)を用いることができる。
接合ダイオード11のp型窒化ガリウム系半導体層15、ホモ接合17およびn型窒化ガリウム系半導体層13の一部は、基板19のエッジよりも内側に寸法D2だけ後退している。これにより、半導体領域13、1、17、23はメサを成す。
接合ダイオード11では、n型窒化ガリウム系半導体層13およびp型窒化ガリウム系半導体層15のホモ接合17は、600ボルト以上の耐圧を示すように設けられている。或いは、接合ダイオード11では、n型窒化ガリウム系半導体層13およびp型窒化ガリウム系半導体層15のホモ接合17は、逆方向印加電圧−600ボルトにおいて1×10−2A/cm以下のリーク電流を示すように設けられている。
以上説明したように、この接合ダイオードによれば、窒化ガリウム系半導体を用いており耐圧を向上できる接合ダイオードが提供される。
(第2の実施の形態)
図2は、本実施の形態に係る接合ダイオードを概略的に示す図面である。この接合ダイオードは、窒化ガリウム系半導体を用いる。接合ダイオード31は、n型窒化ガリウム系半導体層33と、p型窒化ガリウム系半導体層35とを備える。n型窒化ガリウム系半導体層33は、基板上に設けられており、また1×1017cm−3以下のキャリア濃度を有する。p型窒化ガリウム系半導体層35は、n型窒化ガリウム系半導体層33上に設けられており、また1×1019cm−3未満のマグネシウム濃度を有する。n型窒化ガリウム系半導体層33およびp型窒化ガリウム系半導体層35はホモ接合37を成す。
この接合ダイオード31によれば、n型窒化ガリウム系半導体層33とホモ接合37を成すp型窒化ガリウム系半導体層35のマグネシウム濃度が、1×1019cm−3未満であるので、接合ダイオード31の耐圧を向上させることができる。n型窒化ガリウム系半導体層33のキャリア濃度が1×1014cm−3以上であれば、オン抵抗を小さくできる。キャリア濃度が1×1017cm−3以下であれば、耐圧を高くできる。
接合ダイオード31は、サファイア基板上に設けられた3×10cm−2以上1×1010cm−2以下の貫通転位密度を有する窒化ガリウムテンプレートを含む基板39を備える。サファイア基板は(0001)面からなる主面を有する。基板39の主面39a上には、ホモ接合37を構成するn型窒化ガリウム系半導体層33およびp型窒化ガリウム系半導体層35が設けられている。必要な場合には、接合ダイオード31は、基板39上に設けられたバッファ層41を含むことが好ましい。
また、接合ダイオード31では、p型窒化ガリウム系半導体層35のマグネシウム濃度は2×1018cm−3以下であることが好ましい。この接合ダイオード31によれば、p型半導体層に発生する欠陥を抑制することができ、リーク電流を低減することが可能になり、その結果、耐圧を向上させることができるという利点がある。さらに、接合ダイオード31では、n型窒化ガリウム系半導体層33の厚さD3は3マイクロメートル以上であり、n型窒化ガリウム系半導体層33のドナー濃度が6×1016cm−3以下であることが好ましい。この接合ダイオード31によれば、ハードブレークダウンに先立ってパンチスルーが生じない。
また、接合ダイオード31は、p型窒化ガリウム系半導体層35上に設けられた別のp型窒化ガリウム系半導体層43を更に備えることが好ましい。別のp型窒化ガリウム系半導体層43のキャリア濃度はp型窒化ガリウム系半導体層33のキャリア濃度より大きい。接合ダイオード31は、別のp型窒化ガリウム系半導体層43上に設けられたアノード電極45を更に備える。アノード電極45は別のp型窒化ガリウム系半導体層43にオーミック接触を成す。アノード電極45の材料としては、例えばNi/Au(50ナノメートル/100ナノメートル)を用いることができる。
また、接合ダイオード31の別のp型窒化ガリウム系半導体層43、p型窒化ガリウム系半導体層35およびn型窒化ガリウム系半導体層33は、部分的に除かれて、この結果、メサ形状を成す。メサ形状により、n型窒化ガリウム系半導体層33がステップ状を成し、露出面33aが提供される。n型窒化ガリウム系半導体層33の露出面33a上には、カソード電極47が設けられている。カソード電極47は、n型窒化ガリウム系半導体層33の露出面33aにオーミック接合を成す。カソード電極47の材料としては、例えばTi/Al/Ti/Au(20nm/100nm/20nm/300nm)を用いることができる。
接合ダイオード31のp型窒化ガリウム系半導体層35、ホモ接合37およびn型窒化ガリウム系半導体層33の一部は、基板39のエッジよりも内側に寸法D4だけ後退している。
以上説明したように、この接合ダイオードによれば、窒化ガリウム系半導体を用いており耐圧を向上できる接合ダイオードが提供される。
(実施例1)
転位密度依存性について説明する。有機金属気相成長法によりエピタキシャル膜を成長してpn接合ダイオードを作製した。原料にはトリメチルガリウム、アンモニア、シラン、シクロペンタジエニルマグネシウム(以下、TMG、NH、SiH、CPMg)を用いた。
基板には、GaN(0001)基板およびサファイア(0001)基板上n−GaNテンプレートを用いた。GaN基板の貫通転位密度は、1×10cm−2以下であった。また、該貫通転位密度は、1×10cm−2以上であった。サファイア基板上のGaNテンプレートの貫通転位密度は、3×10cm−2以上である。また該貫通転位密度は、1×1010cm−2以下である。両基板をMOVPE装置のサセプタ上に配置する。炉内圧力を10〜101kPaに制御しながら炉内にNHとHを導入し、摂氏1000度の基板温度で10分間のクリーニングを行った。その後、基板温度を摂氏1050度に昇温し、図3(A)に示されるように、基板51の主面51a上にGaNバッファ層53を成長した。GaNバッファ層53は、n−GaNからなり、MOVPE装置のリアクタにTMG、NH、SiHを導入して成長される。その厚さは600nmである。
次に、図3(B)に示されるように、n型窒化ガリウム系半導体膜55を基板51の主面51a上に成長した。n型窒化ガリウム系半導体膜55は、1×1014cm−3以上1×1017cm−3以下のキャリア濃度を有する。n型窒化ガリウム系半導体膜55は、例えばn−GaNドリフト層からなり、SiH供給量を調整して成長される。その厚さは、例えば7μmである。本実施例では、ドリフト層のドナー濃度Ndは、例えば3×1016cm−3である。
次に、図3(C)に示されるように、p型窒化ガリウム系半導体膜57をn型窒化ガリウム系半導体膜55上に成長する。p型窒化ガリウム系半導体膜57は、1×1019cm−3未満のマグネシウム濃度を有することが好ましく、また2×1018cm−3以下のマグネシウム濃度を有することが好ましい。p型窒化ガリウム系半導体膜57は、例えばp−GaN層であり、またSiH供給を停止すると共にCPMgを供給して成長される。その厚さは、例えば500nmであり、そのMg濃度は、例えば7×1017cm−3である。n型窒化ガリウム系半導体膜55およびp型窒化ガリウム系半導体膜57はホモ接合を成す。
次に、図4(A)に示されるように、p型窒化ガリウム系半導体膜57上にコンタクト層59を成長した。コンタクト層59は、例えばp−GaNからなり、またCPMg供給量を増加してp−GaN層を成長した。その厚さは75nmである。
基板温度を室温まで降温した後、炉内からエピタキシャル基板61を取り出した。図4(B)に示されるように、各チップの境界に対応する位置に開口を有するマスク63をエピタキシャル基板61上に形成する。この後に、図4(C)に示されるように、n型窒化ガリウム系半導体膜55、p型窒化ガリウム系半導体膜57およびコンタクト層59を反応性イオンエッチング装置を用いてエッチングして、n型窒化ガリウム系半導体膜55a、p型窒化ガリウム系半導体膜57aおよびコンタクト層59aを含むメサ65を形成した。このエッチングの結果、n型窒化ガリウム系半導体膜55に到達する溝が形成され、この溝によりメサが規定される。
GaN基板上の試料では、p型オーミック金属でp−GaN層上にオーミック電極を作製し、n型オーミック金属でn−GaN基板の裏面にオーミック電極を形成した。サファイア基板上の試料でも、p−GaN層上にp型オーミック電極を作製し、メサ形成で露出されたn−GaN層表面にn型オーミック電極を形成した。
引き続く説明では、GaN基板上に作製された試料を「pn−G」として参照し、サファイア基板上に作製された試料を「pn−S」として参照する。これらの試料の電流−電圧特性を評価した。印加電圧−200Vまでの逆方向特性と順方向特性とをHP4155Bを用い、室温、大気中で測定した。
図4は、小さい印加電圧範囲における試料pn−Gおよびpn−Sの順方向特性および逆方向特性を示す図面である。試料pn−Gおよびpn−Sの特性は、特性線Cpn−G、Cpn−Sにより示されている。横軸は印加電圧(単位:ボルト)を示し、縦軸は電流密度(単位:A/cm)を示す。試料pn−Gの順方向特性は、試料pn−Sの順方向特性よりも優れている。
図6は、印加電圧0〜−200ボルトの範囲における試料pn−Gおよびpn−Sの逆方向特性を示す図面である。試料pn−Gおよびpn−Sの特性は、特性線CRpn−G、CRpn−Sにより示されている。試料pn−Gのリーク電流は、−100ボルトまでの印加電圧の範囲で約1×10−8A/cm−2以下である。試料pn−Sのリーク電流は、−100ボルトまでの印加電圧の範囲で約1×10−4A/cm−2以下である。
図7は、印加電圧0〜−1000ボルトの範囲における試料pn−Gおよびpn−Sの逆方向特性を示す図面である。試料pn−Gおよびpn−Sの特性は、特性線Rpn−G、Rpn−Sにより示されている。印加電圧−1000Vまでの逆方向特性はKeithley−2410を用いて室温のフロリナート中で測定された。試料pn−Gのハードブレイクダウン電圧は、−925ボルト(電流:6.0×10−7A/cm−2)である。試料pn−Sのハードブレイクダウン電圧は、−588ボルト(電流:5.7×10−2A/cm−2)である。
GaN基板上に配置された多数の試料チップおよびサファイア基板上に配置された試料チップのうち各5つの試料チップを選びこれらを測定した。最も良好なチップの特性を示す:
pn−G pn−S
順方向特性
・n値 1.4 2.2
・オン抵抗(単位:mΩcm) 6.3 30.5
100A/cmにおいて定義。
・オン電圧(単位:ボルト) 3.9 6.3
100A/cmにおいて定義。
逆方向特性
・リーク電流(単位:A/cm) 1×10−8以下 1×10−7
−5ボルトにおいて定義。
・リーク電流(単位:A/cm) 1×10−8以下 4×10−7
−20Vボルトにおいて定義。
・リーク電流(単位:A/cm) 1×10−8 7×10−6
−50Vボルトにおいて定義。
・リーク電流(単位:A/cm) 3×10−8 6×10−5
−100Vボルトにおいて定義。
・リーク電流(単位:A/cm) 5×10−8 3×10−4
−200Vボルトにおいて定義。
・リーク電流(単位:A/cm) 3×10−7
−600Vボルトにおいて定義。
・ハードブレイクダウン耐圧(単位:V) 925 588
・性能指数Vb/Ron(MW/cm) 136 11
・ハードブレイクダウン耐圧(単位:ボルト)815 490
5点平均値。
特にGaN基板を用いれば、逆方向リーク電流の小さいpnダイオードを作製できる。貫通転位密度1×10cm−2以下のGaN基板を用いると、ハードブレイクダウン耐圧600V以上で、逆方向600V印加時のリーク電流値が1×10−2A/cm以下である特性を有するpnダイオードを作製できる。
(実施例2)
次いで、電流−電圧特性のMg濃度に対する依存性を調べた。試料を作製する際にCPMgの流量を調節することで、Mg濃度の制御を行って、異なるアクセプタ濃度の試料を作製した。Mg濃度の変更の他は、全て同じ条件で試料を作製した。図8は、上記方法と同様にして窒化ガリウム基板上に作製された試料の接合ダイオードの耐圧とp−GaN層のMg濃度依存性を示す図面である。特性線G1、G2、G3は、それぞれ、Mg濃度1×1019cm−3、3×1018cm−3、7×1017cm−3、の試料の特性を示す。図9は、上記方法と同様にしてGaNテンプレート上に作製された試料の接合ダイオードの耐圧とp−GaN層のMg濃度依存性を示す図面である。特性線S1、S2、S3は、それぞれ、Mg濃度1×1019cm−3、3×1018cm−3、7×1017cm−3の試料の特性を示す。図10は、窒化ガリウム基板およびGaNテンプレート上に上記方法と同様にして作製された試料を用いて、pnダイオードの耐圧とp−GaN層のMg濃度との関係を示す図面である。特性線GMgは試料pn−Sの特性を示し、特性線SMgは試料pn−Sの特性を示す。図10には、データGAN1〜GAN6、SAP1〜SAP6が示されている。具体的に数値を示せば、
Mg濃度(cm−3) pn−G pn−S
1×1019 GAN1 343 SAP1 239
3×1018 GAN2 600 SAP2 358
7×1017 GAN3 925 SAP3 588
3×1017 GAN4 812 SAP4 492
7×1016 GAN5 548 SAP5 239
3×1016 GAN6 472 SAP6 190
である。
図10の特性から理解されるように、GaN基板およびGaNテンプレート上に形成された接合ダイオードのハードブレイクダウン電圧に関しては、Mg濃度に最適値が存在する。Mg濃度が1×1017cm−3よりも低いと、p型半導体層の全てが実質的に空乏化して、パンチスルー現象が生じる。このため、pn接合界面の電界強度が増加するので、耐圧は600Vよりも低下すると考えられる。これは、p型半導体層の膜厚を500nmよりも厚くすることで回避できると考えられる。
一方、Mg濃度が3×1018cm−3よりも高い(一点鎖線で示される)と、pn接合界面に欠陥が導入され、リーク電流を増加させる。このため、耐圧が悪化すると考えられる。これまでのpn接合ダイオードでは、pn接合界面のp型半導体層のMg濃度を1×1019cm−3以上としているために、耐圧−600V以上が得られていないと考えられる。
試料pn−Gにおいて、好ましくは、Mg濃度は、1×1019cm−3以下であることが好ましく、この理由は、p型半導体層に発生する欠陥を抑制できるためである。また、Mg濃度は、1×1014cm−3以上であることが好ましく、この理由は、オン抵抗を低減することが可能になるためである。さらに好ましくは、Mg濃度は、3×1018cm−3以下であることが好ましく、この理由は、p型半導体層に発生する欠陥をほとんど抑制できるためである。また、Mg濃度は、1×1016cm−3以上であることが好ましく、この理由は、不純物制御が容易であり、安定的にp型半導体層を得ることが可能になるためである。
また、試料pn−Sにおいて、好ましくは、Mg濃度は、1×1019cm−3以下であることが好ましく、この理由は、p型半導体層に発生する欠陥を抑制できるためである。また、Mg濃度は、1×1014cm−3以上であることが好ましく、この理由は、オン抵抗を低減することが可能になるためである。さらに好ましくは、Mg濃度は、3×1018cm−3以下であることが好ましく、この理由は、p型半導体層に発生する欠陥をほとんど抑制できるためである。また、Mg濃度は、1×1016cm−3以上であることが好ましく、この理由は、不純物制御が容易であり、安定的にp型半導体層を得ることが可能になるためである。
以上の説明によれば、
転位密度を1×10+7cm−2以下、
pn接合界面のMg濃度を3×10+18cm−3以下
にすることにより、特にpn接合界面に存在する欠陥が低減され、
リーク電流値(印加電圧:−600V)1×10−2A/cm未満
耐圧:600Vより大きい
性能指数:62MW/cmより大きい
順方向n値:2未満
の特性を有するpn接合ダイオードが得られる。
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
図1はGaN基板を用いる接合ダイオードを概略的に示す図面である。 図2はGaNテンプレートを用いる接合ダイオードを概略的に示す図面である。 図3は接合ダイオードの作製方法を概略的に示す図面である。 図4は接合ダイオードの作製方法を概略的に示す図面である。 図5は、小さい印加電圧範囲における試料pn−Gおよびpn−Sの順方向特性および逆方向特性を示す図面である。 図6は、印加電圧0〜−200ボルトの範囲における試料pn−Gおよびpn−Sの順方向特性および逆方向特性を示す図面である。 図7は、印加電圧0〜−1000ボルトの範囲における試料pn−Gおよびpn−Sの順方向特性および逆方向特性を示す図面である。 図8は、上記方法と同様にして窒化ガリウム基板上に作製された試料の接合ダイオードの耐圧とp−GaN層のMg濃度依存性を示す図面である。 図9は、上記方法と同様にしてGaNテンプレート上に作製された試料の接合ダイオードの耐圧とp−GaN層のMg濃度依存性を示す図面である。 図10は、窒化ガリウム基板およびGaNテンプレートを用いるpnダイオードの耐圧とp−GaN層のMg濃度との関係を示す図面である。
符号の説明
11…接合ダイオード、13…n型窒化ガリウム系半導体層、15…p型窒化ガリウム系半導体層、17…ホモ接合、19…基板、21…バッファ層、23…別のp型窒化ガリウム系半導体層、25…アノード電極、27…カソード電極、31…接合ダイオード、33…n型窒化ガリウム系半導体層、35…p型窒化ガリウム系半導体層、37…ホモ接合、39…基板、41…バッファ層、43…別のp型窒化ガリウム系半導体層、45…アノード電極、47…カソード電極

Claims (12)

  1. 1×1017cm−3以下のキャリア濃度を有しており基板上に設けられたn型窒化ガリウム系半導体層と、
    1×1019cm−3未満のマグネシウム濃度を有しており前記n型窒化ガリウム系半導体層上に設けられたp型窒化ガリウム系半導体層と
    を備え、
    前記n型窒化ガリウム系半導体層および前記p型窒化ガリウム系半導体層はホモ接合を成す、ことを特徴とする接合ダイオード。
  2. 前記p型窒化ガリウム系半導体層のマグネシウム濃度は3×1018cm−3以下である、ことを特徴とする請求項1に記載された接合ダイオード。
  3. 前記基板は、1×10cm−2以下の貫通転位密度を有する導電性窒化ガリウム領域を含む、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された接合ダイオード。
  4. 前記基板は、1×10cm−2以下の貫通転位密度を有する窒化ガリウム基板である、ことを特徴とする請求項3に記載された接合ダイオード。
  5. 前記n型窒化ガリウム系半導体層の厚さは3マイクロメートル以上であり、
    前記n型窒化ガリウム系半導体層のドナー濃度が6×1016cm−3以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された接合ダイオード。
  6. 前記p型窒化ガリウム系半導体層の前記マグネシウム濃度は、前記n型窒化ガリウム系半導体層のドナー濃度の5倍よりも大きい、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された接合ダイオード。
  7. 前記n型窒化ガリウム系半導体層はGaNからなり、
    前記p型窒化ガリウム系半導体層はGaNからなる、ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載された接合ダイオード。
  8. 前記n型窒化ガリウム系半導体層はAlGaNからなり、
    前記p型窒化ガリウム系半導体層はAlGaNからなる、ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載された接合ダイオード。
  9. 前記n型窒化ガリウム系半導体層および前記p型窒化ガリウム系半導体層の前記ホモ接合は、600ボルト以上の耐圧を示すように設けられている、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された接合ダイオード。
  10. 前記n型窒化ガリウム系半導体層および前記p型窒化ガリウム系半導体層の前記ホモ接合は、逆方向印加電圧−600ボルトにおいて1×10−2A/cm以下のリーク電流を示すように設けられている、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された接合ダイオード。
  11. 前記p型窒化ガリウム系半導体層上に設けられた別のp型窒化ガリウム系半導体層を更に備え、
    前記別のp型窒化ガリウム系半導体層のキャリア濃度は前記p型窒化ガリウム系半導体層のキャリア濃度より大きい、ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載された接合ダイオード。
  12. 窒化ガリウム系半導体を用いる接合ダイオードを作製する方法であって、
    1×1017cm−3以下のキャリア濃度を有するn型窒化ガリウム系半導体膜を基板上に成長する工程と、
    1×1019cm−3未満のマグネシウム濃度を有するp型窒化ガリウム系半導体膜を前記n型窒化ガリウム系半導体膜上に成長する工程と
    を備え、
    前記n型窒化ガリウム系半導体膜および前記p型窒化ガリウム系半導体膜はホモ接合を成す、ことを特徴とする方法。
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