JP2007231879A - エンジン始動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジン始動装置において、高いエンジン回転速度に迅速に到達することを可能にすることである。
【解決手段】エンジン始動装置10は、遊星歯車機構30に接続される始動モータ21と、遊星減速機ケース36と筐体との間に設けられるゼンマイ81と、プランジャ14によって駆動される作動機構60と、スタータピニオン42を一方端に有する始動駆動軸部48と、遊星減速機ケース36を一方向にのみ回転できるように規制するラチェット装置85を含んで構成される。作動機構60が第1状態にあるときは、始動モータ21によってゼンマイ81が巻き上げられ、第2状態にあるときは、ラチェット装置85が外れ、ゼンマイ81に蓄えられたエネルギが解放され、始動モータ21の駆動パワーとゼンマイ81の駆動パワーとが重畳して、エンジン70を始動する。
【選択図】図1
【解決手段】エンジン始動装置10は、遊星歯車機構30に接続される始動モータ21と、遊星減速機ケース36と筐体との間に設けられるゼンマイ81と、プランジャ14によって駆動される作動機構60と、スタータピニオン42を一方端に有する始動駆動軸部48と、遊星減速機ケース36を一方向にのみ回転できるように規制するラチェット装置85を含んで構成される。作動機構60が第1状態にあるときは、始動モータ21によってゼンマイ81が巻き上げられ、第2状態にあるときは、ラチェット装置85が外れ、ゼンマイ81に蓄えられたエネルギが解放され、始動モータ21の駆動パワーとゼンマイ81の駆動パワーとが重畳して、エンジン70を始動する。
【選択図】図1
Description
本発明は、エンジンの始動装置に係り、特に、始動モータを用いるエンジンの始動装置に関する。
エンジンを始動するために、始動用のモータを用いるいわゆる電動スタータにおいては、起動トルクを大きくするために減速機を用いている。このような減速機としては、遊星歯車式と平行2軸方式とが知られている。
遊星歯車式減速機を用いる電動スタータとしては、高速回転型モータを始動モータとして用い、これを遊星歯車式減速機で回転速度を減速し、駆動トルクを増幅して必要なエンジン始動トルクを確保している。遊星歯車式減速機においては、リングギアが減速機ケースに固定されて回転しないようにされ、始動モータの出力軸はサンギアと結合され、ピニオンギアを支持するキャリアに一体化されているキャリア軸からエンジン始動のための駆動トルクが増幅されて取り出される。なお、ピニオンギアは、プラネタリギア、すなわち遊星歯車とも呼ばれる。
なお、キャリア軸から取り出される駆動トルクをエンジンに伝えて始動させるには、ピニオン飛び込み式と呼ばれる機構が用いられる。すなわち、キャリア軸には、キャリア軸の回転は伝えるが、軸方向に移動可能な駆動軸が連結されており、駆動軸は一方向クラッチを介してスタータピニオンと接続される。移動時には、駆動軸が軸方向に移動され、スタータピニオンがエンジンのフライホイール部ギアに飛び込んで噛み合う。このように、遊星歯車式減速機を用いる電動スタータにおいては、ピニオン飛込み式機構を用いて、減速機によって増幅された駆動トルクがエンジンに供給される。
減速機によるトルク増幅にゼンマイを付加することによりエンジンの始動性を改善する電動スタータとしては、特許文献1に開示されるように、リコイルスタータと始動モータとを組み合わせたエンジンの始動装置において、始動モータとエンジンとの係合時の衝撃を吸収するために蓄力ゼンマイを用いるものがある。
ここでは、クランクシャフトと同軸のスタータシャフトと、始動モータの出力軸とが平行2軸に配置され、その間に多段減速機が設けられる。そしてスタータシャフトにリコイルスタータが設けられるとともに、これと直列にドライブカムが配置され、クランクシャフトのプーリとラチェット式ワンウェイクラッチによって接続される。また、ドライブカムのほぼ中間部に多段減速機のファイナルギアが回転自在に緩挿され、その内側にファイナルギアと一体構造のゼンマイケースが配置される。ゼンマイケースには、外端がゼンマイケース、内端がドライブカムと係合する蓄力ゼンマイが内装されている。
リコイルスタータを使用するときは、ロープを引っ張ってリールを回転させ、リールに設けられたラチェットを介してドライブカムを回転させてエンジンを始動する。始動モータを使用するときは、多段減速機を介しファイナルギアが回転し、ドライブカムを回転させてエンジンを始動する。そして、ファイナルギアが回転することで蓄力ゼンマイが蓄力され、ドライブカムを回転させ、エンジンの回転変動により発生する衝撃負荷を吸収する。このように、蓄力ゼンマイを用いることで、エンジンの回転変動により発生する衝撃によりクラッチ部、ファイナルギア、始動モータを損傷することが防止できるとともに、駆動トルクが平滑化されてエンジン始動性が改善される。
このように一般的な減速機付きエンジン始動装置においては、始動モータにDCモータを用い、これにバッテリ電圧を印加するだけの簡単な駆動回路構成を組むため、モータ回転速度の上昇と共にモータトルクが低下する。このため、始動トルクは大きく取れるが、エンジン回転速度をあまり高く取れず、このような構成においては、高いエンジン回転速度に迅速に到達することが困難である。
例えば、車両の運行において燃費性能を向上させるために、車両停止時にエンジンを停止させるエコランモードが用いられる場合には、運転者の意思と関係なくエンジンの停止と再起動とが行なわれるため、運転者に違和感を与えないためには、迅速なエンジン再起動が必要である。
迅速にエンジンを再起動させるには、エンジン回転数を短時間に高い回転速度まで上昇させればよい。しかし、従来技術の遊星歯車機構でトルクを増幅する方式において、始動のための回転速度を上げるには、固定されたリングに対しキャリアの回転速度を上げることになり、そのためにはサンギアの回転速度を上げる必要がある。したがって、サンギアに接続される始動モータが大型化し、消費電力が増加する。
特許文献1では、蓄力ゼンマイを介して始動モータの駆動力をスタータシャフトに伝える構成を取り、これによりエンジン始動時の大きなトルク変動を緩和する。これにより始動モータの負荷トルク変動が小さくなり、エンジンの始動性能が向上する。しかし、駆動トルク変動を蓄力ゼンマイを用いて滑らかにしているだけであり、高いエンジン回転速度に迅速に到達することができない。
このように、従来技術の減速機付きエンジン始動装置においては、高いエンジン回転速度に迅速に到達することに課題がある。
本発明の目的は、高いエンジン回転速度に迅速に到達することを可能にするエンジン始動装置を提供することである。
本発明に係るエンジン始動装置は、遊星歯車機構のサンギアに接続される始動モータと、遊星歯車機構のキャリアに接続される始動駆動軸部と、遊星歯車機構のリングギアと接続され、始動モータの回転方向と逆方向に巻かれることでエネルギを蓄積するゼンマイ機構と、始動駆動軸部とエンジン始動軸との間を接続しあるいは接続を解放する始動接続切換手段と、始動駆動軸部を固定しあるいは回転自在に解放することでキャリアを固定しあるいは回転自在に切り換えるキャリア固定切換手段と、ゼンマイ機構を始動モータの逆回転方向にのみ巻かれるようにするラチェット装置のラチェットを解除する解除機構と、始動動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、解除機構を作動させない状態で、かつキャリア切換手段によりキャリアを固定状態として、始動モータを起動し、ゼンマイにエネルギを蓄積させる始動モータ起動手段と、始動接続切換手段によって始動駆動軸部とエンジン始動軸とを接続状態とし、キャリア固定切換手段によりキャリアを回転自在状態とし、解除機構を作動させてゼンマイの蓄積エネルギを解放し、始動モータの駆動パワーと、解除されたゼンマイの駆動パワーとを重畳させてエンジン始動軸を始動させるエンジン始動手段と、を含むことを特徴とする。
また、本発明に係るエンジン始動装置において、 始動切換手段と、キャリア固定切換手段と、解除機構とを連動して作動させる作動機構であって、始動切換手段の接続解放状態と、キャリア固定切換手段の固定状態と、解除機構が作動していない状態の第1状態と、始動切換手段の接続状態と、キャリア固定切換手段の回転自在状態と、解除機構の作動状態の第2状態との間で作動切換を行なう作動機構を備えることが好ましい。
また、本発明に係るエンジン始動装置において、始動駆動軸部は、キャリアに直結されるキャリア軸と、キャリア軸の回転力を伝えるとともにキャリア軸の軸方向に移動自在の中間機構であって、一方側に作動機構と係合する作動駆動軸を、他方側にキャリア固定切換手段として筐体にかみ合い可能なピニオンを、作動駆動軸とピニオンとの間にワンウェイクラッチを有する中間機構と、を含み、作動機構が第1状態にあるときには、ピニオンが筐体とかみ合って回転拘束状態とされ、ワンウェイクラッチの作用によりキャリア軸が回転拘束状態となり、作動機構が第2状態にあるときには、ピニオンが筐体から解放され回転自在状態とされ、ワンウェイクラッチの作用によりキャリア軸が回転自在となることが好ましい。
また、本発明に係るエンジン始動装置において、作動機構は、作動駆動軸を先端に有する揺動アームと、突出位置と引込位置との間で移動して揺動アームを揺動させるプランジャ軸とを含み、プランジャ軸は、引き込位置にあるときに、ゼンマイ機構に設けられる一方向係合歯とかみ合うラチェット歯を有するラチェット装置を落とし込んでラチェットを解除する解除溝を有し、作動機構が第1状態にあるときには、プランジャ軸を突出位置とし、ラチェット装置を解除溝に落とし込まずに、揺動アームを揺動し作動駆動軸によって中間機構を移動させてピニオンを回転拘束状態とし、作動機構が第2状態にあるときには、プランジャ軸を引込位置とし、ラチェット装置を解除溝に落とし込んでラチェットを解除し、揺動アームを揺動し作動駆動軸によって中間機構を移動させてピニオンを回転自在状態とすることが好ましい。
上記構成により、減速機構として用いる遊星歯車機構において、サンギアに始動モータが接続され、キャリアに始動駆動軸部が接続され、リングギアには、始動モータの回転方向と逆方向に巻かれることでエネルギを蓄積するゼンマイ機構が接続される。さらに、始動駆動軸部とエンジン始動軸との間を接続しあるいは接続を解放する始動接続切換手段と、始動駆動軸部を固定しあるいは回転自在に解放することでキャリアを固定しあるいは回転自在に切り換えるキャリア固定切換手段と、ゼンマイ機構を始動モータの逆回転方向にのみ巻かれるようにするラチェット装置のラチェットを解除する解除機構とが設けられる。そして、始動は、第1段階として、解除機構を作動させない状態で、かつキャリア切換手段によりキャリアを固定状態として、始動モータを起動し、ゼンマイにエネルギを蓄積させ、第2段階として、始動接続切換手段によって始動駆動軸部とエンジン始動軸とを接続状態とし、キャリア固定切換手段によりキャリアを回転自在状態とし、解除機構を作動させてゼンマイの蓄積エネルギを解放し、始動モータの駆動パワーに解放されたゼンマイの駆動パワーとを重畳させてエンジン始動軸を始動させる。
したがって、始動モータを大型化することなく、高いエンジン回転速度に迅速に到達することが可能となる。
また、作動機構は、始動切換手段と、キャリア固定切換手段と、解除機構とを連動して作動させ、第1状態で、始動切換手段を接続解放状態に、キャリア固定切換手段を固定状態に、解除機構を作動していない状態とし、第2状態で、始動切換手段を接続状態に、キャリア固定切換手段を回転自在状態に、解除機構を作動状態とする。このように複数の手段の状態変化を1つの作動機構の操作で行うことができるので、構成が簡単となる。
また、始動駆動軸部は、キャリアに直結されるキャリア軸と、キャリア軸の回転力を伝えるとともにキャリア軸の軸方向に移動自在の中間機構を含んで構成される。そして、中間機構は、作動駆動軸と、ピニオンと、それらの間のワンウェイクラッチを有し、作動機構が第1状態にあるときには、ピニオンが筐体とかみ合って回転拘束状態とされ、ワンウェイクラッチの作用によりキャリア軸が回転拘束状態、すなわち始動駆動軸部が固定状態となり、作動機構が第2状態にあるときには、ピニオンは筐体から解放され回転自在状態とされ、ワンウェイクラッチの作用によりキャリア軸が回転自在、すなわち始動駆動軸部が回転自在となる。この中間機構は、従来技術のピニオン飛込み式機構に対応する機構である。したがって、一部に周知の機構を用いながら、高いエンジン回転速度に迅速に到達することが可能となる。
また、作動機構のプランジャ軸にラチェット装置を落とし込んでラチェットを解除する解除溝が設けられる。そして、作動機構が第1状態にあるときには、プランジャ軸を突出位置とし、ラチェット装置を解除溝に落とし込まずに、揺動アームを揺動し作動駆動軸によって中間機構を移動させてピニオンを回転拘束状態とし、作動機構が第2状態にあるときには、プランジャ軸を引込位置とし、ラチェット装置を解除溝に落とし込んでラチェットを解除し、揺動アームを揺動し作動駆動軸によって中間機構を移動させてピニオンを回転自在状態とする。したがって、周知の構造である中間機構を作動機構によって操作しつつ、同じ作動機構によってラチェットの解除を行なわせることができる。
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下において、エンジン始動装置は、ハイブリッド車両に駆動源として駆動用モータと共に搭載されるエンジンの始動のための装置として説明するが、ハイブリッド車両以外の車両用エンジンの始動のための装置であってもよい。また、一般的に始動モータによって始動されるエンジンの始動装置であればよく、車両用以外の用途のエンジンの始動のための装置であってもよい。
図1は、ハイブリッド車両に搭載されるエンジン始動装置10の構成を説明する図である。ここではエンジン始動装置10の構成要素ではないが、ハイブリッド車両の駆動源74であるエンジン70と駆動用モータ72と、駆動源74の動作を制御するHV制御部94とが図示されている。また、エンジン始動装置10が係合してエンジン70を始動するエンジン始動軸とのインタフェースであるフライホイール部ギア71も図示されている。
エンジン始動装置10は、図1において断面図で示される機構部90と、機構部90を構成する各要素の動作を全体として制御する始動制御部92とを含んで構成される。始動制御部92は、HV制御部94と協働し、ハイブリッド車両の始動時、及び走行時において、機構部90を制御してエンジン70を迅速に始動させる機能を有する。
エンジン始動装置10の機構部90は、スタータフロントケース11、スタータモータケース12、スタータモータリアケース13、プランジャケース14、プランジャリアケース15から構成される始動装置筐体の中に、始動モータ21、プランジャ51、遊星歯車機構30等を含んで構成される。
始動モータ21は、スタータモータとも呼ばれ、エンジン70を始動するための小型モータである。かかる始動モータは、例えば、12Vの電源で回転駆動されるDCモータを用いることができる。図2は、始動モータ21の特性図で、横軸にモータ回転速度、縦軸にモータトルクが取られている。ここで示されるモータ回転速度及びモータトルクは、始動モータ21の出力軸であるモータ軸22の回転数及び出力トルクである。図2に示されるように、始動モータ21は、低速時において高いモータトルクを出力するが、回転速度が上がるにつれてモータトルクが低下する。したがって、そのままでは、始動トルクは高く取ることができるが、高いエンジン速度に迅速に到達することが困難である。
遊星歯車機構30は、サンギア31、リングギア32、ピニオンギア33と周知の要素を含む。ピニオンギア33は、プラネタリギアとも呼ばれる。サンギア31は、遊星歯車機構30において内周側に配置される外歯歯車で、その中心軸は始動モータ21のモータ軸22に直結接続される。リングギア32は、遊星歯車機構において外周側に配置される内歯歯車で、遊星減速機ケース36に固定されて接続される。ピニオンギア33は、リングギア32とサンギア31との間に配置される外歯歯車で、同じ形状のものが通常数個用いられる。キャリア34は、その数個のピニオンギア33を一体として支持する円環状の部材であり、ピニオンギア33がサンギア31の周りを公転するときは、サンギア31の中心軸の周りに回転する。キャリア軸35は、キャリア34の中心軸方向に延伸する軸であり、したがって、サンギア31の中心軸、すなわち始動モータ21のモータ軸22と同軸方向に延伸する軸である。
遊星減速機ケース36は、遊星歯車機構30を支持するとともにゼンマイ81と接続する段付筒状の部材であり、その意味で、巻き上げによってエネルギを蓄え、解放によってエネルギを放出するゼンマイ機構の一部を構成する部材である。段付筒状の部材は、大きな外形部分と小さな外形部分とを有する。段付筒状の中心軸は、サンギア31の中心軸、すなわちモータ軸22と同軸である。大きな外形部分の内径側にはリングギア32が固定され、外周側には、後述するラチェット装置85のラチェット歯と噛み合う一方向係合歯37が設けられる。したがって、遊星減速機ケース36は、ラチェット機構によって規定される回転方向にのみ回転可能である。小さな外形部分は、中央貫通穴を有するフランジで、中央貫通穴には、キャリア軸35が延伸する。フランジの外周は、ゼンマイ81の内側端が固定される。
ゼンマイ81は、らせん状に巻かれたバネ部材で、上記のように内側端は遊星減速機ケース36の小さい外形部分のフランジに固定され、外側端はスタータフロントケース11に固定される。そして、遊星減速機ケース36、すなわちリングギア32がラチェット機構によって規定される回転方向に回転すると、ゼンマイ81は巻き込まれてエネルギを蓄えることができ、ラチェット機構が回転規制を解除すると、それまでに蓄えたエネルギを、遊星減速機ケース36を回転する駆動パワーとして放出することができる。後述するように、ゼンマイ81が巻かれるときは、キャリア34が固定で、サンギア31が入力側、リングギア32が出力側であるので、サンギア31の回転方向と逆の方向にリングギア32が回転する。すなわち、サンギア31に直結される始動モータ21の回転方向と逆の方向にリングギア32が回転するときにゼンマイ81が巻かれてエネルギを蓄え、エネルギを放出するときは、始動モータ21の回転方向と同じ方向にリングギア32を回転させる。かかるゼンマイ81は、帯板状のバネ鋼をらせん状に巻いて得ることができる。また、帯板状の繊維強化樹脂(FRP)をらせん状に巻いて硬化させて得ることもできる。
作動駆動軸41と、ワンウェイクラッチ45とスタータピニオン42とは、キャリア軸35の回転力を伝えるとともにキャリア軸35の軸方向に移動自在の中間機構40を構成する。キャリア軸35は上記のようにキャリア34に直結されるので、キャリア軸35と中間機構40とは、遊星歯車機構30を介して始動モータ21の駆動力をエンジン70に伝えるための始動駆動軸部48を構成する。つまり、図1において、エンジン始動のための駆動力は、単にキャリア軸35で伝達されるのではなく、キャリア軸35と中間機構40とで構成される複合的な始動駆動軸部48で伝達される。
作動駆動軸41は、キャリア軸35の外周に配置される鍔付円筒状の部材であり、鍔の部分が後述の作動機構60と係合し、円筒状の中央の貫通穴にはキャリア軸35が通る。貫通穴の一部に軸方向に沿って張り出して設けられる案内部39は、キャリア軸35に軸方向に沿って設けられた案内溝38に案内されるためのものである。この構成において、作動機構60によって鍔の部分がキャリア軸35の軸方向に沿って押されると、案内部39がキャリア軸35の案内溝38に沿って案内されて、作動駆動軸41全体がキャリア軸35の回転力を伝えるとともにキャリア軸35の軸方向に移動する。
ワンウェイクラッチ45は、作動駆動軸41とスタータピニオン42との間に設けられるクラッチで、作動駆動軸41側、すなわち始動モータ21側からスタータピニオン42を駆動する場合には回転が伝わるが、エンジン70が始動してスタータピニオン42側から始動モータ21を駆動するようになると空転する機能を有する。例えば、スタータピニオン42が回転拘束状態に固定されると、ワンウェイクラッチ45の作用によって作動駆動軸41、キャリア軸35も回転拘束され、キャリア34が回転拘束され固定される。逆にスタータピニオン42が回転自在状態のときは、キャリア34も回転可能となる。
スタータピニオン42は、従来技術で周知のピニオン飛込み式機構のスタータピニオンと同様の機能を有するもので、スタータフロントケース11に設けられたスタータピニオン回転止め87と噛み合うときはワンウェイクラッチ45を介してキャリア34を回転拘束状態とし、スタータピニオン回転止め87から外れてフライホイール部ギア71と係合するときはキャリア34の回転をエンジン70に伝えて始動させるものである。
このように、スタータピニオン42とスタータピニオン回転止め87とは、相互に噛み合いあるいは噛み合いから外れることで、キャリア34を固定しあるいは回転自在に切り換えるキャリア固定切換手段としての機能を有する。また、スタータピニオン42とフライホイール部ギア71とは、相互に噛み合いあるいは噛み合いから外れることで、始動駆動軸部48とエンジン70の始動軸との間を接続しあるいは接続を解放する始動接続切換手段としての機能を有する。スタータピニオン42がこのような噛み合いを選択できるのは、ワンウェイクラッチ45を介して作動駆動軸41がキャリア軸35に沿って移動するためである。作動駆動軸41がキャリア軸35に沿って移動できるのは、次に述べる作動機構60の作用による。
図1において、プランジャ51と、プランジャロッド52と、ドライブレバー61とは、作動機構60を構成する。作動機構60は、上記の作動駆動軸41をキャリア軸35の軸方向に沿って左右に移動させてスタータピニオン42の噛み合い状態を切り替える機能と共に、遊星減速機ケース36とラチェット装置85との係合を制御してゼンマイ81を巻き上げ又は解放する機能を有する。
プランジャ51は、内部に駆動用ソレノイドを有し、ソレノイドに与える信号に従ってプランジャロッド52を突き出しあるいは引き込む機能を有する装置である。プランジャロッド52は、プランジャ51から突き出す棒状の部材で、プランジャ軸に相当する。プランジャロッド52の先端にはドライブレバー61の一方端が接続される。また、プランジャロッド52の外周の一部に、ラチェット装置85を落とし込める形状と深さを有する溝55が設けられる。
ドライブレバー61は、支点63の周りに揺動可能に配置される板状の揺動アームで、一方端がピン62によってプランジャロッド52の先端に接続され、他方端には作動駆動軸41の鍔部分と係合する回転リング64が設けられる。したがって、プランジャロッド52が引き込み位置にあるときはドライブレバー61が支点63の周りに反時計方向に回転して作動駆動軸41を図1の紙面上で左側に移動させ、逆にプランジャロッド52が突き出し位置にあるときはドライブレバー61が支点63の周りに時計方向に回転して作動駆動軸41を図1の紙面上で右側に移動させることができる。なお、図1は、プランジャロッド52が突き出し位置の場合が示されており、したがって作動駆動軸41が紙面上で右側に移動し、スタータピニオン42がスタータピニオン回転止め87と噛み合っている。
ラチェット装置85は、遊星減速機ケース36の外周に設けられる一方向係合歯37に係合するラチェット歯を有し、遊星減速機ケース36を一方向にのみ回転可能にする機能を有する。回転可能な方向は、サンギア31の回転と逆方向、すなわち始動モータ21の回転方向と逆方向である。ラチェット装置85のラチェット歯は、付勢力を有して遊星減速機ケース36の一方向係合歯37に噛み合っており、その付勢力によって、一方向係合歯37は一歯ごとにラチェット歯によって逆転防止されながら回転することができる。
ラチェット装置85は、ラチェット歯が設けられる側と反対側の裏面でプランジャロッド52と接している。そして、プランジャケース14に設けられる案内部によって、プランジャロッド52の軸方向と垂直方向に移動可能に案内される。上記のように、プランジャロッド52には溝55が設けられ、プランジャロッド52の移動によって溝55がちょうどラチェット装置85の裏面に来ると、ラチェット装置85はその溝55に落とし込まれる。そのときには、ラチェット歯が一方向係合歯37から離れ、もはや遊星減速機ケース36を一方向にのみ回転規制をすることができなくなり、ゼンマイ81が巻き上げられ蓄えられているエネルギによって遊星減速機ケース36が逆方向に回転可能となる。すなわち、始動モータ21の回転方向と同じ方向に回転可能となる。この意味で、溝55は、ラチェット装置85のラチェット解除機構の機能を有する。
このように、プランジャ51と、プランジャロッド52と、ドライブレバー61とで構成される作動機構60は、プランジャ51の作動によって、様々な他の要素の状態を変更する機能を有する。ここで、プランジャ51の作動位置に関連づけて、他の要素の状態変更をまとめる。プランジャ51の突出状態を作動機構60の第1状態とし、引込状態を作動機構60の第2状態とする。
第1状態では、プランジャロッド52が突き出すので、ドライブレバー61が支点63周りに図1の紙面上で時計方向に回転し、その先端で作動駆動軸41をキャリア軸35に沿って図1の紙面上で右側に移動させ、スタータピニオン42がスタータピニオン回転止め87と噛み合い、フライホイール部ギア71とは噛み合っていない。これにより、遊星歯車機構においてキャリア34が固定される。また、このときにプランジャロッド52における溝55は、ラチェット装置85の真下にはないので、ラチェット装置85のラチェット歯は、遊星減速機ケース36の一方向係合歯37と噛み合い、ラチェットが効いている。すなわち、作動機構が第1状態になると、キャリア固定切換手段がキャリア固定状態となり、始動接続切換手段が解放状態となり、ラチェット装置については解除機構が作動しない状態となる。
第2状態では、プランジャロッド52が引き込むので、ドライブレバー61が支点63周りに図1の紙面上で反時計方向に回転し、その先端で作動駆動軸41をキャリア軸35に沿って図1の紙面上で左側に移動させ、スタータピニオン42がスタータピニオン回転止め87から外れ、フライホイール部ギア71とは噛み合う。これにより、遊星歯車機構においてキャリア34が回転可能となる。また、このときにプランジャロッド52における溝55がラチェット装置85の真下に来て、ラチェット装置85のラチェット歯は、遊星減速機ケース36の一方向係合歯37から噛み合いが外れ、ラチェットが解除される。すなわち、作動機構が第2状態になると、キャリア固定切換手段がキャリア回転自在状態となり、始動接続切換手段が接続状態となり、ラチェット装置については解除機構が作動する状態となる。
始動制御部92は、機構部90の各要素の動作を制御する機能を有し、具体的にはHV制御部94と協働し、車両の走行状態に応じて、始動モータ21とプランジャ51の作動を制御する。そして、エンジン70の始動が必要なときに、始動モータ21を作動させ、さらに所定のタイミングでプランジャ51を作動させ、作動機構により、キャリア固定切換手段と、始動接続切換手段と、ラチェットの解除機構の状態を変更し、効果的なエンジン70の始動を実行する。かかる機能は、ソフトウェアで実現でき、具体的には、対応するエンジン始動プログラムを実行することで実現できる。機能の一部をハードウェアで実現してもよい。かかる始動制御部92は、車両用コンピュータで構成でき、場合によってはHV制御部94の機能の一部として構成することもできる。
かかるエンジン始動装置10の動作を、図3のフローチャート等を用いて説明する。なお、以下では図1で説明した要素と同一の要素については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図3は、ハイブリッド車両において、エンジンの始動に関して始動制御部92の処理手順と、それに対応する機構部90の各要素の動作を示すものである。図4から図12は、図3の手順の流れに従って各手順の内容を説明する図である。図4から図6は、作動機構60が第1状態と第2状態との間にあるときの各要素の状態、遊星歯車機構の状態、遊星歯車機構の共線図をそれぞれ示す。同様に図7から図9は、作動機構60が第2状態にあるときの各要素の状態、遊星歯車機構の状態、遊星歯車機構の共線図をそれぞれ示す。同様に図10から図12は、作動機構60が第1状態にあるときの各要素の状態、遊星歯車機構の状態、遊星歯車機構の共線図をそれぞれ示す。
図3において、通常状態では始動モータ21とプランジャ51は共に非通電状態、すなわち、エンジン始動装置10は初期状態にあり、そこでは作動機構60が第1状態になるように初期設定される。すなわち、プランジャ51が突出状態となり、キャリア34は回転が止められて固定状態にされ、ラチェット装置85は溝55の真上に位置せずラチェットが効いている作動状態とされる(S10)。その状態は、図1で説明した状態と同じである。なお、後述するように、車両の減速時に回生電力を用いる等によってゼンマイ81が巻き上げられるので、この初期状態においては、ゼンマイ81が巻き上げられた状態とされている。これにより、エンジン始動を迅速に行うことができる。
次に、HV制御部94等から始動制御部92がエンジン始動指令を受け取る(S12)と、始動制御部92はプランジャ51に通電する(S14)。これによってプランジャロッド52が引き込まれる。上記の説明では、プランジャロッド52が引き込まれると、作動機構60の作用により、スタータピニオン42がフライホイール部ギア71と噛み合う第2状態になるものとしているが、実際にはその途中の状態がある。図4は、第1状態から第2状態に遷移する途中の状態を示す図である。ここでは、スタータピニオン42がスタータピニオン回転止め87から外れ、キャリア止めが解除される(S16)。すなわち、キャリア34が回転可能となるが、まだスタータピニオン42がフライホイール部ギア71と噛み合っていない。そして、ラチェット装置85は溝55の真上に位置せずラチェットが効いている作動状態のままである。したがって、遊星減速機ケース36はゼンマイ81を巻き上げ方向にのみ回転可能である。
ここで始動制御部92は始動モータ21に通電する(S18)。上記のように遊星減速機ケース36は、ゼンマイ81を巻き上げ方向にのみ回転可能になっているが、上記のようにゼンマイ81はすでに十分巻き上がっているので、始動モータ21はそれ以上ゼンマイ81を巻き上げない。それは、遊星歯車機構30において、始動モータ21に接続されるサンギア31の歯数をaとし、ゼンマイ81を巻き上げる遊星減速機ケース36に接続されるリングギア32の歯数をcとして、ゼンマイ81の最大巻き上げトルクが、始動モータ21の最大トルクのc/aになるように設定されているからである。これにより、ゼンマイ81が巻き上がったところで、それ以上始動モータ21はゼンマイ81を巻き上げることをしない。すなわちリングギア32は回転に対し固定状態とされる。このようにゼンマイ81の最大巻き上げトルクを設定することで、ゼンマイ81の過剰な巻き上げが防止され、それと共に、リングギア32と一体である遊星減速機ケース36の逆回転を防止するラチェット装置85のラチェットが外れたときにリングギア32が逆回転することを防止できる。
図5は、そのときの遊星歯車機構の各要素の様子を模式的に示す図である。ここでは上記のように、リングギア32が固定状態となる。そして、キャリア34は回転可能であるので、サンギアの回転方向を例えば時計方向(CW)としてピニオンギア33は反時計方向(CCW)に回転し、リングギア32が固定であるので、リングギア32は時計方向(CW)に回転する。
図6は、図5の遊星歯車機構の動作を共線図で説明するものである。ここで、サンギア31の歯数がa、リングギア32の歯数がcである。リングギア32が回転止めの状態では、サンギア31の回転数xを入力として、キャリア34の回転数yを出力とする共線図によって、ax=(a+c)yの関係になることが知られている。つまり、キャリア34は、サンギア31と同じ方向に回転し、その回転速度は、y=(a+c/a)xとなる。これにより、スタータピニオン42が減速し、その分トルクを大きくして、サンギア31と同じ方向に回転することになる。
ここでは、ゼンマイ81と、それに関係するラチェット装置85、その解除機構である溝55とが全く機能していない。つまり、図4から図6の動作状態は、ゼンマイ等を含まない従来のピニオン飛込み式機構を用いる遊星歯車式減速機を備えるエンジン始動装置と同じである。この従来型のエンジン始動装置では、図6の共線図からわかるように、リングギアが固定されている状態であるので、エンジンの始動の速度を高くするためキャリア軸の回転速度を上げようとするときは、必然的にサンギアの回転速度を上げることが必要になり、始動モータが大型化することになる。上記のように、これが従来型の問題点である。
プランジャ51への通電を続けることで、プランジャロッド52はさらに引き込まれ、スタータピニオン42が、フライホイール部ギア71に噛み合う(S20)。これによって、始動モータ21によるエンジン70の駆動が開始する(S22)。そして、ラチェット装置85が溝55の真上に位置するようになってラチェットが解除される(S24)。これによって遊星減速機ケース36が回転可能となり、ゼンマイ81の蓄えられていたエネルギが解放され、遊星減速機ケース36をサンギア31と同じ回転方向に回転させる。すなわちリングギア32が始動モータ21の回転方向と同じ方向に回転する。その様子が図7に示されている。この状態が作動機構60の第2状態である。
図8は、そのときの遊星歯車機構の各要素の様子を模式的に示す図である。ここでは上記のように、解除機構である溝55にラチェット装置85が落ち込んでラチェットが解除され、ゼンマイ81のエネルギ解放によって、リングギア32をサンギア31と同じ方向に回転させる。このゼンマイ81の巻き戻しによる回転は、ピニオンギア33を介してキャリア34をサンギア31と同じ方向に回転させる。図5で説明したように、キャリア34は、始動モータ21によって回転されるサンギア31とピニオンギア33によってもサンギア31と同じ方向に回転させられるので、キャリア34は、始動モータ21による駆動パワーに、ゼンマイ81の解放エネルギによる駆動パワーが重畳して回転される。つまり、ゼンマイによる駆動パワーのアシストが行われる(S26)。この重畳された駆動パワーが、スタータピニオン42とフライホイール部ギア71との噛み合いで、エンジン70に伝えられ、エンジン70が十分なトルクと十分な速度で始動することができる。
図9は、図6と同様に、図8の遊星歯車機構の動作を共線図で説明するものある。ここではリングギア32が、ゼンマイ81の巻き戻しエネルギによって、相当の回転速度を有することになる。したがって、サンギア31の回転速度を上げなくても、キャリア34の回転速度が上昇することが分かる。図9では、参考のため、図6で説明した共線図を破線で示してある。図6で説明したキャリア34の回転速度yに比べ、ゼンマイアシストのある場合のキャリア34の回転速度Yは高くなる。すなわちY>yである。図9の例では図6で説明したサンギア31の回転速度xに比べ、ゼンマイアシストのある場合のサンギア31の回転速度Xを小さくできる。すなわちX<xとすることが可能で、キャリア34の回転数を上げながら始動モータ21を小型化することも可能となる。
再び図3に戻り、ゼンマイ81が蓄えたエネルギを解放した後は、ゼンマイ81が自由に動作できるので、エンジン70の負荷変動による振動を吸収するダンパとして働く。すなわちゼンマイダンピングを行うことができる(S28)。このようにして、エンジン70の始動が完了(S30)し、ゼンマイダンピングの効果によって振動の少ないエンジン走行を行うことができる。
エンジン走行に入ると、始動モータ21の役割が終わるので、HV制御部94からの情報により始動制御部92は始動モータ21の通電を止め、始動モータ21が停止する(S32)。そして、プランジャ51への通電も停止され、図示されていない復帰機構により、プランジャ51は突出状態となり、作動機構60が第1状態となって、キャリア34を回転止めの状態とし、ラチェット装置85のラチェットが働く状態となる(S34)。その状態は、図1で説明した状態と同じであり、作動機構が第1状態にある。そのときの各要素の状態を図10に示す。そしてエンジン走行が続けられる。
エンジン走行を続けている適当な機会に、ゼンマイ81の巻き上げが行われる。好ましくは車両の減速時に回生発電電力を用いてゼンマイ81の巻き上げを行うことがよい。例えば、車両が回生発電を行っている状態である情報をHV制御部94から始動制御部92が受け取ると、始動制御部92は、始動モータ21を通電する(S36)。あるいは、回生発電によってゼンマイ81を巻き上げる機会がなかったときは、車両停止の情報を受け取ったとき、車両停止に先立ってゼンマイ81の巻き上げのために、バッテリ電力を用いて始動モータ21に通電する。
これによって始動モータ21のモータ軸22が回転をはじめ、遊星歯車機構のサンギア31を回転させる。図11は、そのときの遊星歯車機構の各要素の様子を模式的に示す図である。上記のように、作動機構60が第1状態にあるときは、キャリア34が回転止めの状態にある。そして、リングギア32は、サンギア31と逆方向のみ回転可能となっている。したがって、図11に示すように、サンギアの回転方向を例えば時計方向(CW)とすると、ピニオンギア33はキャリア34固定の位置のままで反時計方向(CCW)に回転し、それに応じてリングギア32は反時計方向(CCW)に回転する。リングギア32の反時計方向回転は、ラチェット装置85の作用によって、ゼンマイ81を巻き上げる方向にのみ回転させるので、これによりゼンマイ81は巻き上げられ、エネルギを蓄える(S38)。なお、上記のように、ゼンマイ81が十分巻き上げられると、それ以上には巻き上げが行われず、始動モータ21が停止する(S40)。
図12は、図11の遊星歯車機構の動作を共線図で説明するもので、横軸はギアの歯数に応じたサンギア31、キャリア34、リングギア32の位置を示し、縦軸はこれらの要素の回転速度を示す。ここで上記のようにサンギア31の歯数はa、リングギア32の歯数はcである。キャリア34が回転止めの状態では、サンギア31の回転数xを入力として、リングギア32の回転数yを出力とする共線図によって、ax=−cyの関係になることが知られている。つまり、リングギア32は、サンギア31と逆方向に回転し、その回転速度は、y=−(c/a)xとなる。これにより、ゼンマイ81がサンギア31と逆方向に巻き上げられることになる。
再び図3に戻り、車両走行において燃費性能を向上させるためにHV制御部94からエコラン指令が出される(S42)と、これによりエンジン70が停止し(S44)、エコランが実施される(S46) 。そして、再びHV制御部からエコラン解除の指令が出されると、エンジン始動のためにS12の工程に戻り、以下、上記の各工程が実行される。
ゼンマイアシストを用いたエンジン始動装置の特性について以下に説明する。図13は、横軸にエンジン始動指令からの経過時間をとり、縦軸にエンジン回転速度をとって、各種のエンジン始動装置の立ち上がり特性を比較して示す図である。図1以下で説明したゼンマイアシストのエンジン始動装置の特性100は、ゼンマイアシストのない遊星歯車式減速機を備えるエンジン始動装置の特性102に比べ、応答性がよく、立ち上がり特性がきわめて良好であることが分かる。また、特許文献1で説明した、ゼンマイを振動吸収に用いる2軸式減速機を備えるエンジン始動装置の特性104に比べても応答性がよく、立ち上がり特性が優れている。特に、ゼンマイアシストを用いるエンジン始動装置の特性100は、予めエネルギをゼンマイに蓄えておくため他の方式に比べ、すばやいエンジン回転上昇と、最高エンジン回転速度の高さを得ることができる。
図14は、図1以下で説明したゼンマイアシストのあるエンジン始動装置の特性100と、従来技術であるゼンマイアシストのない遊星歯車式減速機を備えるエンジン始動装置の特性102とを比較して示す図である。図14(a)は図13と同じ内容のエンジン回転数の立ち上がり特性であり、(b)は、エンジン駆動トルクに対するダンピング特性である。いずれの図も横軸は時間で、縦軸は図14(a)がエンジン回転速度、(b)がエンジン駆動トルクである。両図において、横軸の時間の原点と、時間尺度を同じに揃えてある。図14(a)と(b)とから分かるように、ゼンマイアシスト付きエンジン始動装置の特性100は、ゼンマイに蓄えたエネルギを放出する最初の短時間に、一気にエンジン回転速度を高め、エネルギ放出後はダンパとして働き、エンジン駆動トルクを平滑化して、始動モータへの負荷を減らしている。これに対し、ゼンマイアシストのないエンジン始動装置の特性102は、エンジン回転速度の立ち上がり応答が遅く、また、エンジン駆動トルクの平滑化がほとんど行われず、トルクの変動によって始動モータへの負荷が大きくなる。
図15は、ゼンマイアシストのあるエンジン始動装置の各要素のギア回転速度を比較したものである。横軸は時間で、縦軸は回転速度である。図16は、ゼンマイアシストのあるエンジン始動装置において、ゼンマイのトルクと始動モータのトルクとを比較する図である。横軸は時間、縦軸はトルクである。これらの図から、ゼンマイの駆動パワーが、始動モータの駆動パワーを十分にアシストして、始動特性を向上させていることが分かる。
10 エンジン始動装置、11 スタータフロントケース、12 スタータモータケース、13 スタータモータリアケース、14 プランジャケース、15 プランジャリアケース、21 始動モータ、22 モータ軸、30 遊星歯車機構、31 サンギア、32 リングギア、33 ピニオンギア、34 キャリア、35 キャリア軸、36 遊星減速機ケース、37 一方向係合歯、38 案内溝、39 案内部、40 中間機構、41 作動駆動軸、42 スタータピニオン、45 ワンウェイクラッチ、48 始動駆動軸部、51 プランジャ、52 プランジャロッド、55 溝、60 作動機構、61 ドライブレバー、62 ピン、63 支点、64 回転リング、70 エンジン、71 フライホイール部ギア、72 駆動用モータ、74 駆動源、81 ゼンマイ、85 ラチェット装置、87 スタータピニオン回転止め、90 機構部、92 始動制御部、94 HV制御部。
Claims (4)
- 遊星歯車機構のサンギアに接続される始動モータと、
遊星歯車機構のキャリアに接続される始動駆動軸部と、
遊星歯車機構のリングギアと接続され、始動モータの回転方向と逆方向に巻かれることでエネルギを蓄積するゼンマイ機構と、
始動駆動軸部とエンジン始動軸との間を接続しあるいは接続を解放する始動接続切換手段と、
始動駆動軸部を固定しあるいは回転自在に解放することでキャリアを固定しあるいは回転自在に切り換えるキャリア固定切換手段と、
ゼンマイ機構を始動モータの逆回転方向にのみ巻かれるようにするラチェット装置のラチェットを解除する解除機構と、
始動動作を制御する制御部と、
を備え、
制御部は、
解除機構を作動させない状態で、かつキャリア切換手段によりキャリアを固定状態として、始動モータを起動し、ゼンマイにエネルギを蓄積させる始動モータ起動手段と、
始動接続切換手段によって始動駆動軸部とエンジン始動軸とを接続状態とし、キャリア固定切換手段によりキャリアを回転自在状態とし、解除機構を作動させてゼンマイの蓄積エネルギを解放し、始動モータの駆動パワーと、解除されたゼンマイの駆動パワーとを重畳させてエンジン始動軸を始動させるエンジン始動手段と、
を含むことを特徴とするエンジン始動装置。 - 請求項1に記載のエンジン始動装置において、
始動切換手段と、キャリア固定切換手段と、解除機構とを連動して作動させる作動機構であって、
始動切換手段の接続解放状態と、キャリア固定切換手段の固定状態と、解除機構が作動していない状態の第1状態と、
始動切換手段の接続状態と、キャリア固定切換手段の回転自在状態と、解除機構の作動状態の第2状態との間で作動切換を行なう作動機構を備えることを特徴とするエンジン始動装置。 - 請求項2に記載のエンジン始動装置において、
始動駆動軸部は、
キャリアに直結されるキャリア軸と、
キャリア軸の回転力を伝えるとともにキャリア軸の軸方向に移動自在の中間機構であって、一方側に作動機構と係合する作動駆動軸を、他方側にキャリア固定切換手段として筐体にかみ合い可能なピニオンを、作動駆動軸とピニオンとの間にワンウェイクラッチを有する中間機構と、
を含み、
作動機構が第1状態にあるときには、ピニオンが筐体とかみ合って回転拘束状態とされ、ワンウェイクラッチの作用によりキャリア軸が回転拘束状態となり、
作動機構が第2状態にあるときには、ピニオンが筐体から解放され回転自在状態とされ、ワンウェイクラッチの作用によりキャリア軸が回転自在となることを特徴とするエンジン始動装置。 - 請求項3に記載のエンジン始動装置において、
作動機構は、作動駆動軸を先端に有する揺動アームと、突出位置と引込位置との間で移動して揺動アームを揺動させるプランジャ軸とを含み、
プランジャ軸は、引込位置にあるときに、ゼンマイ機構に設けられる一方向係合歯とかみ合うラチェット歯を有するラチェット装置を落とし込んでラチェットを解除する解除溝を有し、
作動機構が第1状態にあるときには、プランジャ軸を突出位置とし、ラチェット装置を解除溝に落とし込まずに、揺動アームを揺動し作動駆動軸によって中間機構を移動させてピニオンを回転拘束状態とし、
作動機構が第2状態にあるときには、プランジャ軸を引込位置とし、ラチェット装置を解除溝に落とし込んでラチェットを解除し、揺動アームを揺動し作動駆動軸によって中間機構を移動させてピニオンを回転自在状態とすることを特徴とするエンジン始動装置。
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---|---|---|---|
JP2006056503A JP2007231879A (ja) | 2006-03-02 | 2006-03-02 | エンジン始動装置 |
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JP2006056503A JP2007231879A (ja) | 2006-03-02 | 2006-03-02 | エンジン始動装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN102146863A (zh) * | 2011-04-06 | 2011-08-10 | 许修武 | 单缸发动机启动器 |
-
2006
- 2006-03-02 JP JP2006056503A patent/JP2007231879A/ja active Pending
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