JP2007231123A - 液体組成物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な分散安定性を示し、且つ粒子径が小さく、サイズ均一性の高い顔料微粒子を高濃度で含有する液体組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】(1)顔料の原料である複数の化合物と溶剤を混合して混合液を得る工程、(2)前記混合液を常温(但し、常温は25±15℃を表す。)以上の温度、且つ常圧(常圧は1.01325×105±0.01333×105Paを表す。)以上の圧力に保持し、前記複数の化合物を反応させて顔料を合成し、該顔料を微粒子として析出させる工程とを有する顔料微粒子を含有する液体組成物の製造方法。前記反応を高分子分散剤の存在下で行うことが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は液体組成物の製造方法に関し、良好な分散安定性を示し、且つ粒子径が小さく、サイズ均一性の高い顔料微粒子を高濃度で含有する液体組成物の製造方法に関するものである。
近年、デジタル印刷技術は非常な勢いで進歩している。このデジタル印刷技術は、電子写真技術やインクジェット技術といわれるものがその代表例であり、オフィス、家庭等における画像形成技術としてその存在感をますます高めつつある。
インクジェット技術はその中でも直接記録方法として、コンパクト、低消費電力という大きな特徴がある。また、ノズルの微細化等により急速に高画質化が進んでいる。インクジェット技術の一例は、インクタンクから供給されたインクをノズル中のヒーターで加熱して蒸発発泡し、インクを吐出させて記録媒体に画像を形成させるという方法である。他の例はピエゾ素子を振動させることでノズルからインクを吐出させる方法である。
これらの方法には、これまで水溶性の染料インクが適用されてきたが、にじみやフェザリング、耐候性などに関し問題点を有していた。これらを改善する目的として、近年では顔料インクの利用が検討されており(特許文献1参照)、実際にインク組成物中に顔料分散体を含有したインクジェット用インクも普及しはじめている。
しかしながら、顔料インクは長期保存安定性やインクジェットヘッドからの吐出安定性において、染料インクと比較して劣る場合が多い。また、顔料粒子による光散乱や光反射が生じるため、一般に顔料インクにより形成された画像は染料インクによる画像と比較して発色性が低いという傾向がある。
顔料インクの発色性を改善する方法のひとつとして顔料粒子を微細化する試みがなされている。100ナノメートル以下に微細化された顔料(以下、顔料微粒子という)は、光散乱の影響が小さく、かつ比表面積が増大するため、染料なみの発色性が得られると期待されている。
顔料粒子の微細化は、サンドミルやロールミル、ボールミルといった分散機を用いて機械的に行うのが一般的であるが、これらの方法では顔料を一次粒子付近(100ナノメートル程度)まで微細化するのが限界である。さらなる微細化が要求される場合には、多大な時間とコストを必要とするばかりか、均一な品質のものを安定供給することが困難となる(特許文献2参照)。
特許文献3や特許文献4では、顔料を溶剤に溶解させた後、顔料の貧溶剤(顔料の溶解度が低い溶剤)と混合して再析出させることを特徴とする顔料微粒子の調整法が提案されている(以下、再析出法と表現する)。しかしながら、再析出法は効果的な顔料の微細化方法であるが、顔料の溶剤に対する溶解性が低いことから、製造される顔料微粒子の濃度が極めて希薄であるため大量生産に不向きである。
一方、特許文献5では、溶媒親和性のある置換基を分子構造中に有する顔料誘導体を溶剤に溶解させ、その溶解液を、該溶剤の超臨界あるいは亜臨界条件下で熱処理することによって、顔料微粒子を製造する方法が開示されている。この方法は、前記置換基を超臨界あるいは亜臨界状態で分解・脱離させることによって、顔料を溶剤に対して不溶化させることを特徴とするが、粒子核を短時間で均一に発生させることが困難であるため、製造される顔料微粒子のサイズ均一性に問題があった。
米国特許第5085698号明細書 特開平10−110111号公報 特公平6−96679号公報 特開2004−91560号公報 特開2001−262023号公報
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、良好な分散安定性を示し、且つ粒子径が小さく、サイズ均一性の高い顔料微粒子を高濃度で含有する液体組成物の製造方法を提供するものである。
上記課題を解決するための顔料微粒子を含有する液体組成物の製造方法は、
(1)顔料の原料である複数の化合物と溶剤を混合して混合液を得る工程、
(2)前記混合液を常温(但し、常温は25±15℃を表す。)以上の温度、且つ常圧(常圧は1.01325×105±0.01333×105Paを表す。)以上の圧力に保持し、前記複数の化合物を反応させて顔料を合成し、該顔料を微粒子として析出させる工程とを有することを特徴とする。
前記反応を高分子分散剤の存在下で行うことが好ましい。
前記高分子分散剤が親水性ユニットと疎水性ユニットを有する共重合体であるのが好ましい。
前記高分子分散剤がブロック共重合体であるのが好ましい。
前記顔料がフタロシアニンあるいはフタロシアニン誘導体であるのが好ましい。
前記顔料の原料の少なくとも1つがフタロニトリルあるいはフタロニトリル誘導体であるのが好ましい。
前記溶剤が水あるいは水溶液であるのが好ましい。
本発明によれば、良好な分散安定性を示し、且つ粒子径が小さく、サイズ均一性の高い顔料微粒子を高濃度で含有する液体組成物の製造方法を提供することができる。また本発明は、顔料の合成から微粒子化までを一段階で実施するため、顔料微粒子の製造におけるコストを大幅に削減することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の顔料微粒子を含有する液体組成物の製造方法は、
(1)顔料の原料である複数の化合物と溶剤を混合して混合液を得る工程、
(2)前記混合液を常温以上の温度、且つ常圧以上の圧力に保持し、前記複数の化合物を反応させて顔料を合成し、該顔料を微粒子として析出させる工程とを有し、前記工程のいずれかに高分子分散剤が含有されることを特徴とする。ただし、本発明における常圧とは、日常生活における外気温を超えない温度範囲で、具体的には25±15℃である。また、常圧とは、日常生活における外気圧を超えない圧力範囲で、具体的には1.01325×105±0.01333×105Paである。
まず本発明において、サイズ均一性に優れたナノメートルオーダーの顔料微粒子を製造することが可能となるメカニズムについて説明する。本発明における顔料微粒子とは、顔料と高分子分散剤から構成される微粒子である。
本発明は、顔料の原料と顔料との溶剤に対する溶解性の差を利用することによって顔料微粒子を製造する製造方法であり、特に、高分子分散剤の介在下にて、原料から化学反応をともなって顔料を合成することを特徴とする。前記の(2)工程において、原料は混合液中において溶解状態で存在しており、前記原料が化学反応により顔料に転化するとともに不溶化され、高分子分散剤と相互作用しながら粒子核を生成する。さらに、化学反応の進行とともに粒子核が成長していき、目的とする顔料微粒子が形成される。
本発明は、特許文献3や特許文献4において提案されている再沈殿法と比較して、高濃度で顔料微粒子を製造することができる。一般に、顔料は溶剤に対して溶解性が小さいため、顔料を溶解させた溶解液を貧溶剤と混合することによって顔料を微粒子化する再沈殿法では、製造される顔料微粒子の濃度が希薄であり、大量生産に不向きである。添加物等により溶剤に対する顔料の溶解性を向上させることも可能であるが、この場合、顔料の溶解液と貧溶剤を混合した際に発生する粒子核が過剰数となるため、粒子核同士の合一が促進されて凝集塊を形成し、顔料微粒子を製造することが困難になる。これに対して本発明では、顔料微粒子の濃度は、原料の仕込み量によって任意に制御可能である。また本発明では、原料から化学反応により顔料を合成するため、再沈殿法と比較して粒子核の生成速度が緩やかであり、かつ高分子分散剤を介在させることによって粒子核の合一を効果的に抑制することが可能となる。
一方、特許文献5では、溶媒親和性のある置換基を分子構造中に有する顔料誘導体を溶剤に溶解させ、その溶解液を、該溶剤の超臨界あるいは亜臨界条件下で熱処理することによって、顔料微粒子を製造している。この方法は、前記置換基を超臨界あるいは亜臨界状態で分解・脱離させることによって、顔料を溶剤に対して不溶化させるが、粒子核を短時間で均一に発生させることが困難であるため、製造される顔料微粒子のサイズ均一性が乏しいという問題がある。
また本発明は、特許文献5の方法と比較して、顔料微粒子のサイズ均一性に優れることが特徴である。特許文献5では、溶媒親和性のある置換基を分子構造中に有する顔料誘導体を溶剤に溶解させ、その溶解液を前記溶剤の超臨界あるいは亜臨界条件下で熱処理し、前記置換基を分解・脱離させることによって、顔料を溶剤に対して不溶化させて微粒子化することを特長としている。この方法では粒子核を短時間で均一に発生させることが困難であるため、サイズ均一性に乏しい顔料微粒子が形成されやすい。一方、本発明では、高分子分散剤を介することよって、粒子核の合一や不均一な成長を抑制し、優れたサイズ均一性を実現することが可能となる。また特許文献5では、顔料誘導体から置換基を分解・脱離させることによって顔料微粒子を製造するため、多大なコストを必要とする。これに対し本発明は、顔料の原料から化学反応をともなって顔料微粒子を一段階で製造することができるため、生産コストを大幅に削減することが可能となる。
次に、本発明における、顔料について説明する。
本発明における顔料とは、常温、常圧において溶剤に対し不溶性の色素であると定義する。具体的な例としては、近赤外線反射材料や酸化触媒、脱臭・抗菌、助熱、排煙脱塩、ダイオキシン抑制、除虫効果、液晶パネルのバックライト用光散乱剤、蛍光材料、光導電材料等だけでなく、紫外線防止、吸着効果等の化粧品への応用、塗料、トナーあるいはインク等の色材が挙げられる。本発明においては色材が好ましく用いられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
具体的な無機顔料の例としては、コバルトブルー、セルシアンブルー、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、ライトレッド、クロムオキサイドグリーン、マルスブラック等の酸化物顔料、ビリジャン、イェローオーカー、アルミナホワイト等の水酸化物顔料、ウルトラマリーン、タルク、ホワイトカーボン等のケイ酸塩顔料、金粉、銀粉、ブロンズ粉等の金属粉、カーボンブラック等が挙げられるが、本発明に使用される顔料は上記に限定されるものではない。
また、有機顔料の具体例としては、βナフトール系アゾ顔料、ナフトールAS系アゾ顔料、モノアゾ型あるいはジスアゾ型アセト酢酸アリリド系アゾ顔料、ピラゾン系アゾ顔料、縮合系アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、サブフタロシアニン系顔料、ポルフィリン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ぺリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ジオキサジン顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、あるいは新規に合成した顔料が挙げられるが、本発明に使用される顔料は上記に限定されるものではない。
以下に、黒、シアン、マゼンタ、イエローにおいて、市販されている顔料を例示する。
黒色の顔料としては、Raven1060、Raven1080、Raven1170、Raven1200、Raven1250、Raven1255、Raven1500、Raven2000、Raven3500、Raven5250、Raven5750、Raven7000、Raven5000 ULTRAII、Raven1190 ULTRAII(以上、コロンビアン・カーボン社製)、Black Pearls L、MOGUL−L、Regal400R、Regal660R、Regal330R、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1300、Monarch 1400(以上、キャボット社製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW200、Color Black 18、Color Black S160、Color Black S170、Special Black 4、Special Black 4A、Special Black 6、Printex35、PrintexU、Printex140U、PrintexV、Printex140V(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigment Blue−3、C.I.Pigment Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:2、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等が挙げられるが、これらに限定されない。
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−5、C.I.Pigment Red−7、C.I.Pigment Red−12、C.I.Pigment Red−48、C.I.Pigment Red−48:1、C.I.Pigment Red−57、C.I.Pigment Red−112、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、C.I.Pigment Red−168、C.I.Pigment Red−184、C.I.Pigment Red−202、C.I.Pigment Red−207等が挙げられるが、これらに限定されない。
イエローの顔料としては、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow−17、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.Pigment Yellow−95、C.I.Pigment Yellow−97、C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、C.I.Pigment Yellow−151、C.I.Pigment Yellow−154等が挙げられるが、これらに限定されない。
次に本発明に用いられる顔料の原料について説明する。
本発明における顔料の原料とは、化学反応により顔料を形成する色材を合成する原料物質を意味する。具体的には、アゾ顔料におけるジアゾニウムカチオン含有化合物とベンゼン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体等の芳香族系化合物、シアニン顔料におけるインドレニン誘導体とアルデヒド含有化合物、フタロシアニン顔料におけるフタロニトリル誘導体、ジイミノイソインドリン誘導体、フタル酸無水物誘導体、フタル酸誘導体及びサブフタロシアニン誘導体、インジゴ顔料におけるインドキル誘導体、スピロピラン顔料におけるメチレンインドリン誘導体とホルミル基含有化合物が挙げられるが、本発明はこれら顔料原料と顔料の組み合わせに限定されるものではない。
本発明において、前記顔料および顔料の原料に関し、該顔料がフタロシアニンあるいはフタロシアニン誘導体である事が好ましく、該顔料の前駆体である顔料原料としては、溶剤に対して、顔料よりも溶解性が高いことが好ましい。更に好ましい原料の分子構造としては、フタロニトリル、フタロニトリル誘導体、イソインドリン誘導体、フタル酸無水物誘導体、フタル酸誘導体、オルトブロモベンゼン誘導体、オルトヨードベンゼン誘導体及びサブフタロシアニン誘導体が挙げられるが、反応収率、反応温度の観点からフタロニトリル誘導体、イソインドリン誘導体、及びサブフタロシアニン誘導体が挙げられる。
以下に本発明で使用される、フタロシアニン及びフタロシアニン誘導体の具体例を挙げるが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
Figure 2007231123
Figure 2007231123
(式中、Mは水素原子または中心金属を示す。金属は、具体的にはTi,V,Fe,Ru,Os,Co,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Zn,Cd,Al,Ga,Si,Ce等が挙げられ、金属によっては、複数または単一の有機分子または無機原子が軸配位子として存在してもよい。)
以下に本発明で使用される、フタロニトリル、及びフタロニトリル誘導体、イソインドリン誘導体、及びサブフタロシアニン誘導体の具体例を挙げるが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
フタロニトリル、及びフタロニトリル誘導体の具体例としては、
Figure 2007231123
が挙げられる。
ジイミノイソインドリンの具体例としては、
Figure 2007231123
が挙げられる。
サブフタロシアニン誘導体の具体例としては、
Figure 2007231123
が挙げられる。
上記の化合物の式中、RはCl、Br、Iまたはベンゼン環誘導体、メチル、エチル、イソプロピル、イソプロピル、ノルマルブチル、イソブチル、ノルマルペンチル、ノルマルヘキシル、ノルマルヘプチル、ノルマルオクチル等のアルキル基を示す。
次に、本発明に用いられる溶剤について説明する。
本発明における溶剤は、原料から化学反応によって顔料を合成する工程において、前記化学反応に対して不活性、あるいは活性の低い溶剤であればいかなる溶剤であっても使用することができる。本発明における溶剤は、一種類に限られるわけではなく、少なくとも一種類の溶剤が、前記化学反応に対して不活性、あるいは活性の低い溶剤であれば、複数の溶剤を適宜組み合わせて使用することも可能である。また、本発明は、前記化学反応によって顔料を合成する際に、高分子分散剤を介在させて顔料微粒子を製造する。例えば、水性インク組成物等への適用の場合、顔料微粒子を水系溶剤中で製造することが生産性の点で好ましい。本発明における溶剤のうち、少なくとも一種類以上の溶剤が、水あるいは水溶液であることが好ましい。
このような溶剤の例として、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;更にはエーテル類、エステル類、芳香族類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロビレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒、ノルマルヘキサン、トルエン、キシレン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、等N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。これらの溶剤は、単独または混合して用いることができる。また、本発明における溶剤は、以上に例示したものに限定されるわけではなく、本発明の目的を達成できる範囲において、いかなる溶剤も適用可能である。
本発明における、顔料の原料から化学反応により顔料を合成する反応条件について説明する。
本発明は、常温以上の温度、且つ常圧以上の圧力において、顔料の原料から化学反応により顔料を合成する。常温は25±15℃を表す。常圧は1.01325×105±0.01333×105Paを表す。常温以上の温度(高温)とは、40℃以上の温度である。常圧以上の圧力(高圧)とは、1.02658×105Pa以上の圧力であり、好ましくは、溶剤の密度が臨界点における密度の2.5倍以下、もしくは常温・常圧における密度の0.8倍以下の少なくとも一方を満足する亜臨界ないしは超臨界条件下に保持する場合に、本発明を効果的に実施することが可能である。
本発明において、常温以上の温度、且つ常圧以上の圧力を保持する方法として、加圧状態で容器内をヒーター等で加温することができる。また、別の方法では、マイクロウェーブにより局所加熱を施すことも可能である。ただし本発明における、常温以上の温度、且つ常圧以上の圧力を保持する方法は、これらに限定されるものではなく、本発明を良好に実施できる範囲においていかなる方法をも適用することが可能である。
本発明における高分子分散剤について説明する。
本発明の高分子分散剤は、親水性ユニットと疎水性ユニットから構成されており、親水性モノマー成分と疎水性モノマー成分を必要に応じて共重合させた共重合体を用いることが好ましい。なお、親水性とは水に対する親和性が大きく水に溶解しやすい性質であり、疎水性とは水に対して親和性が小さく水に溶解しにくい性質である。
例えば、親水性モノマー成分とは、カルボン酸、カルボン酸塩、あるいは親水性オキシエチレンユニットを多く含む構造、さらにヒドロキシル基などを有する構造などの親水性ユニットを単位構造として含有するモノマー成分が挙げられる。例えば、アクリル酸やメタクリル酸、あるいはその無機塩や有機塩などのカルボン酸塩、またポリエチレングリコールマクロモノマー、またはビニルアルコールや2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどである。ただし、本発明の高分子分散剤の親水性ユニットを構成する親水性モノマー成分はこれらに限定されない。
また、疎水性モノマー成分としては、例えばイソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などの疎水性ユニットを単位構造として含有するモノマー成分が挙げられる。具体的な例としては、スチレンやt−ブチルメタクリレートなどの疎水性モノマーを繰り返し単位として有するブロックセグメントであるが、本発明の高分子分散剤の疎水性ユニットを構成する疎水性モノマー成分はこれに限定されない。
共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれの形態を有する共重合体でもよい。特にブロック共重合体やグラフト共重合体を用いる場合には、顔料微粒子に良好な分散性を付与するだけでなく、その分子量や親水性モノマーと疎水性モノマーの共重合比によって顔料微粒子の粒子径を制御することができるため好ましい。
高分子分散剤の重量平均分子量は、500以上1000000以下であり、好ましくは1000以上1000000以下である。1000000を超えると高分子分散剤内、高分子分散剤間の絡まりあいが多くなりすぎ、逆に500未満である場合、分子量が小さく高分子分散剤が分散剤としての機能を発揮しにくくなるため、顔料微粒子に良好な分散安定性を付与することができない。重量平均分子量の測定方法は、光散乱法、X線小核散乱法、沈降平衡法、拡散法、超遠心法や各種クロマトグラフィーにより測定することができるが、本発明の重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
ただし、本発明における高分子分散剤は、これらに限定されるわけではなく、本発明を実施できる範囲においていかなる高分子分散剤も適用可能である。
本発明における高分子分散剤は、1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。上記高分子分散剤の使用割合は、特に限定されるものではなく、本発明の実施形態に合わせて適宜変更することが可能である。例えば、高分子分散剤の使用割合は、溶剤の100質量部に対して50質量部以上では高分子分散剤を完全に溶解させることが困難な場合があり、顔料1質量部に対して0.05質量部以下の場合には十分な分散効果が得られることがある。
本発明における顔料微粒子の粒子径の評価法について説明する。
本発明で算出する顔料微粒子の平均粒径・多分散度指数は、20℃において、動的光散乱(DLS)を用いて測定した値を用いているが、他の測定方法、具体的には、レーザー回折法、レーザードップラー法、遠心沈降法、field−flow fractionation法、電気的検知体法等、いずれの測定方法であっても、DLS法で測定された値へと補正されていればよい。ここで多分散度指数は、重量平均粒子径の値を数平均粒子径の値で割った値であると定義し、1.0に近いほどサイズ均一性に優れている。
本発明の製造方法により製造された液体組成物には顔料微粒子が高濃度で含有されており、例えば本発明の実施例における顔料微粒子の含有量は、液体組成物に対して2.5質量%以上であり、前記した再沈殿法による顔料微粒子の製造法と比較して格段に高濃度の液体組成物が得られる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1
図1に示す構成の装置により、顔料微粒子を含有する液体組成物を製造する。
原料であるフタロニトリル2.5質量部と、高分子分散剤であるポリ(スチレン−block−エチレンオキサイド)1.2質量部をアンモニア水100質量部と混合し、タンク1に封入して100℃に予熱して混合液1とする。次に、原料である塩化第一銅1.0質量部をテトラヒドロフラン50質量部に溶解し、タンク2に封入して50℃に予熱して混合液2とする。
タンク1とタンク2から、供給管5aを通じて混合液1と、混合液2の等量を耐圧容器6aに送液して混合液とし、さらに、耐圧容器を加熱して耐圧容器内を250℃、24MPaに保持することによって、顔料の合成及び微粒子化を行う。形成した顔料微粒子を含有する液体組成物は、供給管を通じて採集口まで送液し、回収する。
得られた顔料微粒子の平均粒子径は45nm、多分散度指数が1.10である。また、得られた顔料微粒子を含有する液体組成物に塩酸を加えて沈殿させた後、ガスクロマトグラフィーを用いて沈殿物を分析したところ、銅フタロシアニンが合成されていることが確認される。なお平均粒径の測定は、DLS―7000(大塚電子社製)で得られる値である。重量法によって求められる液体組成物に含有さている顔料微粒子の含有量は2.9質量%である。
実施例2
図2に示す構成の装置により、顔料微粒子を含有する液体組成物を製造する。
原料であるフタロニトリル3.5質量部をアンモニア水100質量部と混合し、タンク1に封入して100℃に予熱して混合液1とする。次に、原料である四塩化チタン1.7質量部をテトラヒドロフラン50質量部に溶解し、タンク2に封入して50℃に予熱して混合液2とする。さらに、高分子分散剤であるポリ(スチレン−block−アクリル酸)3.5質量部をタンク3に封入し、100℃に予熱して混合液3とする。
タンク1とタンク2、及びタンク3から、供給管5bを通じて混合液1と混合液2、及び混合液3を耐圧容器6bに送液して液体組成物とし、さらに、耐圧容器を加熱して耐圧容器内を250℃、24MPaに保持することによって、顔料合成、及び微粒子化を行う。形成した顔料微粒子を含有する液体組成物は、供給管を通じて採集口8bまで送液し、回収する。
得られた顔料微粒子の平均粒子径は40nm、多分散度指数が1.13である。また、得られた顔料微粒子を含有する水溶液に塩酸を加えて沈殿させた後、ガスクロマトグラフィーを用いて沈殿物を分析したところ、チタニルフタロシアニンが合成されていることが確認される。なお平均粒径の測定は、DLS―7000(大塚電子社製)で得られる値である。液体組成物に含有さている顔料微粒子の含有量は4.8質量%である。
比較例1
特許文献5に記載される実施例1の方法により以下のような比較実験を行う。水に可溶な銅フタロシアニンスルホン化誘導体8%水溶液を10cc/分の流速で圧力38MPa、200℃に昇温する。又脱塩水10cc/分を550℃に保持した電気ヒーター中を流通させ、圧力38MPa、500℃に昇温し、さらにこの脱塩水と該溶液を混合し、420℃(密度:0.54g/cc)で50秒間処理後、該反応物に脱塩水を10cc/分添加して250℃に冷却する。生成物の平均粒径は30nm、多分散度指数が1.92であり、ナノメートルサイズの顔料微粒子は製造できるものの、サイズ均一性において本発明の実施例に劣る場合があることが確認される。液体組成物に含有さている顔料微粒子の含有量は2.8質量%である。
本発明によれば、良好な分散安定性を示し、且つ粒子径が小さく、サイズ均一性の高い顔料微粒子を高濃度で含有する液体組成物を提供することができるので、インクジェット用の顔料インクの分野に利用することができる。
本発明の顔料微粒子を含有する液体組成物の製造装置の一例を示す概略図である。 本発明の顔料微粒子を含有する液体組成物の製造装置の他の例を示す概略図である。
符号の説明
1 タンク
2 タンク
3 タンク
3a 加熱部
4a 送液ポンプ
5a 供給管
6a 耐圧容器
7a 排圧弁
8a 採集口
3b 加熱部
4b 送液ポンプ
5b 供給管
6b 耐圧容器
7b 排圧弁
8b 採集口

Claims (7)

  1. 顔料微粒子を含有する液体組成物の製造方法であって、
    (1)顔料の原料である複数の化合物と溶剤を混合して混合液を得る工程、
    (2)前記混合液を常温(但し、常温は25±15℃を表す。)以上の温度、且つ常圧(常圧は1.01325×105±0.01333×105Paを表す。)以上の圧力に保持し、前記複数の化合物を反応させて顔料を合成し、該顔料を微粒子として析出させる工程とを有することを特徴とする顔料微粒子を含有する液体組成物の製造方法。
  2. 前記反応を高分子分散剤の存在下で行うことを特徴とする請求項1に記載の液体組成物の製造方法。
  3. 前記高分子分散剤が親水性ユニットと疎水性ユニットを有する共重合体であることを特徴とする請求項1または2記載の液体組成物の製造方法。
  4. 前記高分子分散剤がブロック共重合体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の液体組成物の製造方法。
  5. 前記顔料がフタロシアニンあるいはフタロシアニン誘導体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載の液体組成物の製造方法。
  6. 前記顔料の原料の少なくとも1つがフタロニトリルあるいはフタロニトリル誘導体である請求項1乃至5のいずれかの項に記載の液体組成物の製造方法。
  7. 前記溶剤が水あるいは水溶液であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載の液体組成物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011508806A (ja) * 2007-12-27 2011-03-17 イーストマン コダック カンパニー ポリマー分散剤で安定化された水性コロイド分散液

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