JP2007224296A - 腐朽材からの多糖類取得方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】白色腐朽菌キノコ栽培後の腐朽材から効率よくヘミセルロースを含む各種の有効成分を抽出することができる、新しい腐朽材からの多糖類取得方法の提供。
【解決手段】マイタケ、ハナビラタケ、ヒラタケ、コフキサルノコシカケ、エリンギ、ナメコおよびシイタケのいずれかである白色腐朽菌キノコ栽培後の腐朽材に加圧熱水を接触させることで、腐朽材から多糖類を抽出する。好適には、加圧熱水にアルカリを添加し、抽出された多糖類はキシロースを主成分とするヘミセルロースである。
【選択図】なし
【解決手段】マイタケ、ハナビラタケ、ヒラタケ、コフキサルノコシカケ、エリンギ、ナメコおよびシイタケのいずれかである白色腐朽菌キノコ栽培後の腐朽材に加圧熱水を接触させることで、腐朽材から多糖類を抽出する。好適には、加圧熱水にアルカリを添加し、抽出された多糖類はキシロースを主成分とするヘミセルロースである。
【選択図】なし
Description
本願発明は、キノコ栽培後の廃菌床である、腐朽材からの多糖類取得方法に関するものである。
従来、木材の腐朽については、自然の中での採取観察が主流であった。それによると、白色腐朽と褐色腐朽とで、腐朽の状態が異なっており、例えば、褐色腐朽ではセルロース等の繊維質の分解が起こって、セルロースの重合度も急速に小さくなることが知られている。一方、白色腐朽では、マイタケやハナビラタケ、シイタケ等の白色腐朽菌キノコはリグニンの分解を伴っているが、セルロースの重合度は大きく変化しないことが知られている。
近年では、マイタケやハナビラタケ、シイタケ、ブナシメジ等のキノコ栽培が盛んになり、それと同時に、これらキノコ栽培後には、大量の廃菌床、すなわち腐朽材(粉)が排出されている。そして、その適切な処理の一つとして、これら腐朽材を再利用することが種々検討されている。例えば、キノコ栽培廃菌床を堆肥化させる製造方法(特許文献1)や、キノコ栽培廃菌床をキノコの再栽培に利用するための方法(特許文献2)等が提案されている。
ところで、このセルロースについては、バイオマスとして利用することが検討されている(例えば、非特許文献1)。そこで、上記のとおり、白色腐朽菌キノコを栽培した後の腐朽材には、多くのセルロースが分解せずに残存していることから、このセルロースを含むセルロース系をバイオマスとして利用することで、白色腐朽菌キノコの栽培後の腐朽材について、有効利用することができることが考慮することができる。
しかしながら、上記のような非特許文献1の方法は、腐朽材を利用したものではなく、菌糸や菌塊等を含有しない広葉樹であるイタジイの木粉を利用したものであるため、依然として、白色腐朽菌キノコ栽培後に生じる腐朽材の有効な利用方法については、全くなされていないのが実情であった。
特開平11-171677号公報
特許第2638399号(特開平6-25号公報)
日本エネルギー学会誌、第77巻第3号、1998年
そこで、本願発明はこのような背景から、白色腐朽菌キノコの栽培後の腐朽材に残存する各種有効成分、特にセルロース系成分であるヘミセルロースに着目し、この腐朽材から効率よくヘミセルロースを含む各種の有効成分を抽出することのできる、新しい腐朽材からの多糖類取得方法を提供することを課題としている。
本願発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、白色腐朽菌キノコ栽培後の腐朽材に加圧熱水を接触させることで、腐朽材から多糖類を抽出することを特徴とする。
また、第2には、白色腐朽菌キノコは、マイタケ、ハナビラタケ、ヒラタケ、コフキサルノコシカケ、エリンギ、ナメコおよびシイタケのいずれかであり、第3には、加圧熱水の温度が、150℃から225℃の範囲であることを特徴とする。
さらに、第4には、加圧熱水にアルカリを添加すること、そして、第5には、抽出される多糖類は、キシロースを主成分とするヘミセルロースであることを特徴とする。
以上のとおりの本願発明によって、第1から第5の発明によれば、白色腐朽菌キノコ栽培後の腐朽材から効率よくヘミセルロースを含む各種の有効成分を抽出することができる。
本願発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の最良の形態について説明する。
本願発明は、マイタケやハナビラタケ、ヒラタケ、コフキサルノコシカケ、エリンギ、ナメコ、シイタケ等の各種の白色腐朽菌キノコを栽培した後のキノコ栽培廃菌床、すなわち腐朽材から効率よく腐朽材に含有される各種有効成分、なかでも多糖類を特に効率よく抽出する多糖類取得方法である。
具体的には、上記のとおりの腐朽材に加圧熱水を接触させることで、この腐朽材を水溶化(可溶化)して抽出可能として、多糖類を抽出することを特徴としている。ここで、腐朽材の形状としては、特に限定されるものではなく、たとえば、所要の大きさに細断した塊状でもよいし、粉砕した粉状でもよい。また、腐朽材の原料(由来)についても特に制限されるものではなく、例えば、広葉樹由来等が挙げられる。
通常、腐朽材には、栽培したキノコの菌糸や菌塊等が付着しているが、本願発明においては、これら菌糸や菌塊等を残存したまま抽出処理を行ってもよいし、取り除いてから抽出処理を行ってもよい。より好ましくは、あらかじめ菌糸塊を取り除くことが考慮される。
本願発明における、「加圧熱水」は亜臨界水であり、この亜臨界水は、250℃付近で加水分解力が最大となり、有機物を高速で水に溶ける低分子に分解することができる。また、亜臨界水とすることで、水でありながら、油を抽出する力が強く、有機物中の油はほぼ100%瞬時に抽出することもできる。通常、亜臨界水とは、水の臨界点以下の温度および圧力の水のことである。さらに説明すると、この水の臨界点とは、水の温度が374℃、圧力が218atm(647K、22.1MPa)とすることで、水と水蒸気の密度が等しくなり、水(液体)か水蒸気(気体)かの区別がつかない状態になる。この点が臨界点である。
この点を考慮するとともに、さらに効率よく、腐朽材に含有するヘミセルロースをはじめとする有効成分を抽出するために、本願発明における加圧熱水(亜臨界水)の温度は、150℃から225℃の範囲、特に160℃から210℃の範囲とすることが好ましい。また、圧力については、0.1MPaから10MPa程度の範囲とすることが考慮されるが、より高い圧力とすることが好ましい。なお、加圧熱水(亜臨界水)となる原水は、通常の水道水でも使用できるが、イオン交換水や蒸留水、フィルター濾過した濾過水(たとえば、限外濾過水)等のように十分に精製した水を用いることが好ましい。また、加圧熱水にアルカリを添加して加圧アルカリ熱水とすることで、さらに効率よく腐朽材から有効成分を抽出することができる。このアルカリの添加とは、通常は、0.01N以上のNaOHやKOH等のアルカリ水溶液を用いることによって実施される。
また、上記アルカリ水溶液には、抽出時に還元末端からのピーリング反応による多糖類の分解、低分子化を防ぐために、例えば、NaBH4等を添加することも有効である。
そして、本願発明によって抽出される有効成分は、具体的にはセルロース系の多糖類であり、なかでもキシロースを主成分とするヘミセルロースが効率よく抽出される。
なお、本願発明を実施する際には、腐朽材をあらかじめ切断、もしくは、粉砕等の処理を施して、小塊ないし粉末としておいてもよい。その大きさについては限定しないが、例えば、10から100メッシュ程度に粉砕することで効率的に本願発明を実施することができる。
図1は、本願発明における加圧熱水処理方法を実施するための装置の一構成例を示した構成模式図である。
この図1に沿って本願発明の加圧熱水処理方法について説明すると、図1に例示した装置は、抽出器(1)、ガスボンベ(2)、圧力調整弁(3)、高圧ポンプ(4)、タンク(5)、加熱器(6)、冷却器(7)および受器(8)を備えた、熱水流通式の装置(以下、熱水流通式装置とすることがある)であり、腐朽材からヘミセルロース等の有効成分の抽出を効率よく行うことができる。具体的には、試料である腐朽材を抽出器(1)に充填し、試料が流出しないよう抽出器(1)の両端をフィルターでキャップし、装置に接続する。そして、系内(熱水流通式装置内)の空気をガスボンベ(2)から供給される窒素ガスで置換し、圧力調整弁(3)で系内(熱水流通式装置内)の圧力を所定圧に調節した後、高圧ポンプ(4)でタンク(5)に貯留されている溶媒の供給を開始する。溶媒は、ヒーティングコイル(61)等を具備したオイルバス等の加熱器(6)内で所定温度に加熱されて加圧熱水状態となり、抽出器(1)内に流入し、試料の抽出が行われる。抽出物を伴った溶媒は冷却器(7)で冷却された後、圧力調整弁(3)を通過して、水溶液として最終的に受器(8)で回収される。回収されたこの水溶液を、蒸留や凍結乾燥等の公知の方法で脱水して粉末状等とすることができる。なお、このように粉末状とすることで、保存性もよくすることができる。
このように、熱水流通式装置等のような耐圧性の密閉容器内で、腐朽材に含まれる有効成分の抽出は、150℃以上225℃以下の加圧熱水、あるいは、これにアルカリを添加した加圧熱アルカリ水と、試料である腐朽材とを接触させることによって行われる。
もちろん、本願発明において利用できる加圧熱水装置は、上記流通式加圧熱水装置以外にも、例えば、バッチ式加圧熱水装置等も利用することができる。なお、流通式加圧熱水装置の利点は、抽出成分の屈折率をモニターすることができるため、連続的に抽出状態を監視することができ、一方、バッチ式加圧熱水装置の利点は、抽出状態を連続的に監視することは難しいが、コストや大量処理の観点で優れている。
抽出に使用する熱水量としては、通常、試料である腐朽材の重量に対し、10から100倍重量の水を用いる。また、抽出時間については、試料の大きさ(粉末状の場合では、粒度)によっても異なるため、特に限定されるものではないが、通常は、例えば、160℃以上210℃以下の温度において70から90分である。
このような特徴を有する多糖類取得方法によって、従来では困難であった白色腐朽菌キノコを栽培した後に大量に排出される廃菌床、つまり腐朽材を多角的に応用することができる。すなわち、従来では、通常、キノコ栽培後の腐朽材を構成する木粉の分解は、250℃以上という高温の加圧熱水で生じるが、本願発明の方法によって、150℃から225℃という比較的低温で分解することができるため、低エネルギーで、腐朽材から多糖糖類、なかでもキシロースを主成分とするヘミセルロースを大量に、かつ、効率よく抽出して取得することができる。そして、このヘミセルロースをバイオマス、例えば、アルコール発酵等に利用することができ、さらには、燃料電池へのエネルギーとして利用することも考慮できる。
また、上記のとおり、ヘミセルロースはキシロースを主成分としていることから、食品添加に応用することもできる。
以下に実施例を示し、さらに詳しく、本願発明について説明する。もちろん、以下の例によって本発明が限定されることはない。
以下の実施例において、腐朽材の加圧熱水処理には、図1に例示した熱水流通式の装置(以下、熱水流通式装置とすることがある)を利用した。また、腐朽材は、白色腐朽菌キノコであるマイタケの栽培後の廃菌床を試料として使用し、その際には付着している菌糸や菌塊を取り除いた。
実施例1:マイタケ腐朽材の加圧熱水処理
<1> 栽培後の腐朽材(以下、菌床とする)
流通式加圧熱水処理装置を用いて、あらかじめ凍結乾燥したマイタケ栽培後の菌床を以下に示す条件で加圧熱水処理を行った。また、その際、デジタル糖度計を用いて、糖度を示すBrix%を求め、処理時の抽出状態を知るモニターとした。
実施例1:マイタケ腐朽材の加圧熱水処理
<1> 栽培後の腐朽材(以下、菌床とする)
流通式加圧熱水処理装置を用いて、あらかじめ凍結乾燥したマイタケ栽培後の菌床を以下に示す条件で加圧熱水処理を行った。また、その際、デジタル糖度計を用いて、糖度を示すBrix%を求め、処理時の抽出状態を知るモニターとした。
加圧熱水処理条件は:
・試料:5g
・流速:5mL/min
・圧力:50kgf/min (=約5MPa)
・温度:処理1 30〜260℃(2.5℃/min)
処理2 130℃(1hr)→180℃(1hr)→230℃
処理3 180℃(1hr)→210℃(1hr)→240℃
<2> 全糖量分析
抽出物中の糖含有量はフェノール硫酸法で決定した。
・試料:5g
・流速:5mL/min
・圧力:50kgf/min (=約5MPa)
・温度:処理1 30〜260℃(2.5℃/min)
処理2 130℃(1hr)→180℃(1hr)→230℃
処理3 180℃(1hr)→210℃(1hr)→240℃
<2> 全糖量分析
抽出物中の糖含有量はフェノール硫酸法で決定した。
上記<1>で得た加圧熱水処理後の抽出物(処理1)をフラクション毎に、それぞれ0.5M水酸化ナトリウムに溶解して、40μg/mLの試料溶液を調整した。この溶液0.6mlを試験管にとり、5wt%のフェノール水溶液0.5mLを加え、濃硫酸2.6mLを速やかに液面に直接滴下するように加えた後、よく混合し、30分間静置後、波長490nmにおける吸光度を測定した。
また、検量線は、D−グルコースを0.5M水酸化ナトリウムに溶解し、0、20、40、60、80μg/mLに調整したグルコース溶液を用いて、上記と同様の操作で作成し、各抽出物の糖含有率を求めた。
<3> 結果
(1) 処理1から処理3それぞれの条件での温度とBrix濃度(%)、抽出物収量の関係を図2〜4に示した。なお、抽出重量%は180〜210℃で35%、30〜180℃で14%であった。
<3> 結果
(1) 処理1から処理3それぞれの条件での温度とBrix濃度(%)、抽出物収量の関係を図2〜4に示した。なお、抽出重量%は180〜210℃で35%、30〜180℃で14%であった。
図2より、70〜90分の間で多くの抽出物が得られていることが確認でき、図3からは、155℃から210℃で抽出されるBrix%が高く、特に180℃から210℃においては極めて高いことから、この温度領域で菌床から糖類が抽出されることが推定された。また、図4では、210℃以上でも抽出物が得られることが確認できた。
(2) 次に糖含有率とBrix%(図2)の比較を図5に示した。
(2) 次に糖含有率とBrix%(図2)の比較を図5に示した。
図5に示したとおり、糖含有率とBrix%は、ほぼ同じ傾向を示した。70〜90分の間でもっとも糖含有率が高いことから、図5からでも、180℃から210℃で糖が多いことが考慮することができた。
実施例2:抽出物の組成
<1> 糖含有率とタンパク質含有率
各抽出物の糖含有率とタンパク質含有率について検討した結果を図6に示した。
実施例2:抽出物の組成
<1> 糖含有率とタンパク質含有率
各抽出物の糖含有率とタンパク質含有率について検討した結果を図6に示した。
多糖の含有率は、温度の上昇とともに高くなり、200℃では90%にも達した。その後、タンパク質含有率についても増加し、250℃では、収量は少ないが、その成分にはタンパク質が多く含まれることが確認できた。
<2> 抽出多糖の同定
(1)180℃抽出物の多糖分析
180℃抽出物50mgにNaBH45mg、0.1MのNAOD1.0mLを加えて溶解し、下記に示す条件で13C−NMRスペクトル測定を行った。化学シフトの標準物質はアセトニトリルを用いた。
<2> 抽出多糖の同定
(1)180℃抽出物の多糖分析
180℃抽出物50mgにNaBH45mg、0.1MのNAOD1.0mLを加えて溶解し、下記に示す条件で13C−NMRスペクトル測定を行った。化学シフトの標準物質はアセトニトリルを用いた。
13C−NMRスペクトル測定条件は:
測定温度:30℃、
積算回数:3000回、であった。
測定温度:30℃、
積算回数:3000回、であった。
図7には、180℃抽出物(多糖)の13C−NMRスペクトルを示した。この結果をペントースについて報告している文献[京都大学、木材研究・資料17号(1983)、152−153]の記載と比較すると、102.5(C−1)、73.5(C−2),74.5(C−3),77.2(C−4)および63.8(C−5)の主要シグナルが確認されていることから、180℃抽出多糖は、β(1→4)キシロペントースであると判断することができた。
(2)抽出多糖の構成単糖の同定
そこで、180℃抽出多糖を加水分解して得た単糖と、D−キシロースの13C−NMR測定を行い、スペクトルの比較を行った。
(2)抽出多糖の構成単糖の同定
そこで、180℃抽出多糖を加水分解して得た単糖と、D−キシロースの13C−NMR測定を行い、スペクトルの比較を行った。
測定について説明すると、180℃抽出物60mgを試験管に入れ、さらに2M塩酸3mLを加えた。90℃で8時間加水分解処理を行い、その後2M水酸化ナトリウム3mLで中和し、凍結乾燥して試料とした。この試料100mgをD2O1mLに溶解し、13C−NMRスペクトルを測定した。また、標準単糖として、D−キシロース50mgをD2O1mLに溶解したものを、同様に測定した。
結果は、図8に示したとおり、加水分解して得た単糖は、D−キシロースであることが確認することができた。なお、図8の(A)はD−キシロースについて、(B)は180℃抽出単糖について示している。
(3)タンパク質含有率の測定
抽出物中のタンパク質含有率は、Lowry法で決定した。
(3)タンパク質含有率の測定
抽出物中のタンパク質含有率は、Lowry法で決定した。
各フラクションを蒸留水に溶解し、0.5mL/mLの試料溶液を調整した。この溶液0.1mLを試験管にとり、2%(W/V)NA2CO3含有0.1MのNaOH 50mL、0.6(W/V)CuSO4・5H2O1mL、1%(W/V)酒石酸ナトリウムカリウム1mLで調整した溶液を1.5mlずつ加え、素早く攪拌した後、再び室温で30分間静置し、波長500nmの吸光度を測定した。
また、検量線は、BSAで0、0.025、0.5、0.75、1.0mg/mLに調整した標準液を用い、上記と同様の操作で作成し、各フラクションのタンパク質含有率を求めた。その結果、上記図5に示したように、250℃付近でタンパク質成分が増加することが確認できた。
実施例3:コフキサルノコシカケ樹木の加圧熱水抽出
<1>等速昇温による抽出
実施例1と同様にして加圧熱水抽出を行った。
実施例3:コフキサルノコシカケ樹木の加圧熱水抽出
<1>等速昇温による抽出
実施例1と同様にして加圧熱水抽出を行った。
図9には、コフキサルノコシカケ樹木を加圧熱水処理抽出した時の時間と流出液Brixと温度の関係を示した。通水開始35分すなわち通水温度30℃から110℃ぐらいの間ではBrixは0%であったが、その後さらに昇温したところBrixの値は上昇し、約200℃に達した時点で最大値0.6%を示した。さらに225℃まで昇温し、約50分保持しつつ、通水を続けたところBrixは徐々に減少し、120分で0を示したためこの時点で225℃までにおける抽出が完了したと判断した。表1には、各抽出温度域における収率を示した。150℃以下は抽出物の収率は低いが、さらに昇温していくと抽出物の収率は175℃から200℃においては24%であり200℃から225℃では15%であった。既報の研究より、150℃以下で抽出される成分が少ないのは、一般的に木材中に数%の割合で含まれる細胞内含有成分(ミネラル、ペクチン質、遊離糖、色素)および水溶性リグニンのみがこの温度領域で抽出されるからである。一方、150℃以上で抽出される成分が多いのは、木材中の主構成成分であるリグニン、セルロース、ヘミセルロースにおいて、140℃〜200℃でヘミセルロースおよびリグニン、230℃付近からセルロースを中心とする成分が分解抽出されたと考えられる。
<2>多段階昇温による抽出
上記<1>での等速昇温の抽出では、150℃から225℃の温度で分解される成分が多いことが示唆された。そこで段階昇温160℃、180℃、200℃の3段階で抽出を行った。図10より、通水開始35分、すなわち通水温度約180℃では、Brix0.2%で一定だったが、その後、さらに昇温したところBrixの値は上昇し、約180℃に達したところで最大値0.9%を示した。さらに200℃まで昇温したところBrixの値は徐々に減少し0%を示したため、この時点で200℃までにおける抽出が完了したと判断した。表2より、160℃、180℃における収率はそれぞれ21%と比較的高い収率を示した。ところが200℃における収率は10%と低く、これらの抽出物の収率変化は、Brixの変化と同じような傾向を示した。以上のことより、160℃、180℃でヘミセルロースおよびリグニンが分解抽出されていると考えられる。さらに残渣が多く得られたということは、セルロースのほぼ全量および一部ニ分解リグニンが残っていると考えられる。
上記<1>での等速昇温の抽出では、150℃から225℃の温度で分解される成分が多いことが示唆された。そこで段階昇温160℃、180℃、200℃の3段階で抽出を行った。図10より、通水開始35分、すなわち通水温度約180℃では、Brix0.2%で一定だったが、その後、さらに昇温したところBrixの値は上昇し、約180℃に達したところで最大値0.9%を示した。さらに200℃まで昇温したところBrixの値は徐々に減少し0%を示したため、この時点で200℃までにおける抽出が完了したと判断した。表2より、160℃、180℃における収率はそれぞれ21%と比較的高い収率を示した。ところが200℃における収率は10%と低く、これらの抽出物の収率変化は、Brixの変化と同じような傾向を示した。以上のことより、160℃、180℃でヘミセルロースおよびリグニンが分解抽出されていると考えられる。さらに残渣が多く得られたということは、セルロースのほぼ全量および一部ニ分解リグニンが残っていると考えられる。
1 抽出器
2 ガスボンベ
3 圧力調整弁
4 高圧ポンプ
5 タンク
6 加熱器
61 ヒーティングコイル
7 冷却器
8 受器
2 ガスボンベ
3 圧力調整弁
4 高圧ポンプ
5 タンク
6 加熱器
61 ヒーティングコイル
7 冷却器
8 受器
Claims (5)
- 白色腐朽菌キノコ栽培後の腐朽材に加圧熱水を接触させることで、腐朽材から多糖類を抽出することを特徴とする腐朽材からの多糖類取得方法。
- 白色腐朽菌キノコは、マイタケ、ハナビラタケ、ヒラタケ、コフキサルノコシカケ、エリンギ、ナメコおよびシイタケのいずれかであることを特徴とする請求項1の多糖類取得方法。
- 加圧熱水の温度が、150℃から225℃の範囲であることを特徴とする請求項1または2の多糖類取得方法。
- 加圧熱水にアルカリを添加することを特徴とする請求項1から3いずれかの多糖類取得方法。
- 抽出される多糖類は、キシロースを主成分とするヘミセルロースであることを特徴とする請求項1から4いずれかの多糖類取得方法。
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