JP2007217675A - 高分子電解質組成物及びその用途 - Google Patents

高分子電解質組成物及びその用途 Download PDF

Info

Publication number
JP2007217675A
JP2007217675A JP2007007774A JP2007007774A JP2007217675A JP 2007217675 A JP2007217675 A JP 2007217675A JP 2007007774 A JP2007007774 A JP 2007007774A JP 2007007774 A JP2007007774 A JP 2007007774A JP 2007217675 A JP2007217675 A JP 2007217675A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
polymer electrolyte
polymer
formula
compound
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2007007774A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4946453B2 (ja
Inventor
Yoichiro Machida
洋一郎 町田
Ryuma Kuroda
竜磨 黒田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Chemical Co Ltd filed Critical Sumitomo Chemical Co Ltd
Priority to JP2007007774A priority Critical patent/JP4946453B2/ja
Publication of JP2007217675A publication Critical patent/JP2007217675A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4946453B2 publication Critical patent/JP4946453B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Conductive Materials (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)

Abstract

【課題】ラジカル耐性に優れる高分子電解質膜、該高分子電解質膜を与える高分子電解質組成物を提供し、さらには、該高分子電解質膜を用いてなる固体高分子型燃料電池を提供する。
【解決手段】[1](a)強酸基を有する高分子電解質、(b)5価のリン原子を有する基を少なくとも1つ有する化合物、及び(c)酸化防止剤を含有することを特徴とする高分子電解質組成物。
[2]前記(b)が、下記式(6)で表される共重合体を含む[1]の高分子電解質組成物。
Figure 2007217675

(式中、Zはスルホニル基又はカルボニル基を表し、Arは2価の芳香族基、R1及びR2は水素原子又は1価の有機基を表す)
[3]前記[1]又は[2]の高分子電解質組成物を用いてなる高分子電解質膜。
[4]前記[3]記載の高分子電解質膜を用いてなる燃料電池。
【選択図】なし

Description

本発明は、高分子電解質組成物、該高分子電解質組成物を用いてなる高分子電解質膜に関する。中でも燃料電池に好適に用いられる高分子電解質組成物、高分子電解質膜に関する。
近年、高効率でクリーンなエネルギー変換装置として、燃料電池が注目を集めている。中でも、プロトン伝導性を有する高分子電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池は、コンパクトな構造で高出力が得られ、かつ簡単なシステムで運転できることから、車両用途等の移動用電源として注目されている。
固体高分子型燃料電池は、高分子鎖中にスルホン酸基やカルボン酸基等の酸基を有する高分子電解質を膜に加工し、該膜の両面に一対の電極を設けた膜−電極接合体を備え、純水素、改質水素ガス等の燃料ガス、又はメタノール、ジメチルエーテル等の液体燃料を一方の電極(燃料極)へ供給し、酸素ガスあるいは空気を酸化剤として、他方の電極(空気極)へ供給することで、起電力を得ることができる。
ところで、固体高分子型燃料電池に使用される高分子電解質膜は、耐熱性、機械的強度あるいはコストといった観点から、炭化水素系高分子(例えば、芳香族高分子等)を用いた高分子電解質膜が、近年活発に検討されている。かかる炭化水素系高分子の課題として、従来主として使用されてきたフッ素系高分子電解質(例えば、デュポン社製Nafionが挙げられる)からなる膜と比較して、長期安定性が低いことが挙げられている。この長期安定性を妨げる要因としては、種々の原因が推定されているが、その1つとして、電池稼動時に発生する過酸化物(例えば、過酸化水素等)による高分子電解質膜の劣化が知られている。
すなわち、電池反応によって、高分子電解質膜と電極の界面に形成された触媒層において過酸化物が生成、例えば前記空気極においては、プロトンの不完全還元により、過酸化水素が生成し、このようにして生成した過酸化物が、高分子電解質膜中を拡散しながらヒドロキシラジカルとなって該高分子電解質膜を劣化させると推定されている。それゆえ、高分子電解質膜のラジカルに対する耐久性(以下、「ラジカル耐性」と呼ぶ)を向上させることが、固体高分子型燃料電池の長期安定性に繋がる1つの対策とされており、例えば、Fenton試薬を用いた、酸化雰囲気における高分子電解質膜の安定性を指標として見ることができる(非特許文献1参照)。
高分子電解質膜にラジカル耐性を付与する手法として、特許文献1には、一般的にラジカル捕捉剤として使用されているヒンダードフェノール類と、過酸化物分解剤として使用されている3価の有機リン化合物又は2価の有機硫黄化合物を高分子電解質に混合した組成物によって、耐久性を改良した燃料電池用高分子電解質膜が開示されている(前記のラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤については非特許文献2参照)。
また、ホスホン酸基が直接芳香環に結合した芳香族系高分子ホスホン酸類という、特定の高分子化合物と高分子電解質とからなる高分子電解質組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
高分子材料・技術総覧編集委員会編「高分子材料・技術総覧」,株式会社産業情報技術サービスセンター,518〜520頁,2004年9月7日発行 三田達監訳「高分子大辞典」,丸善,413頁,1994年9月20日発行 特開2003−201403号公報(実施例) 特開2003−282096号公報(実施例)
しかしながら、特許文献1の燃料電池用高分子電解質膜についても、酸化雰囲気が強い環境下では、そのラジカル耐性は、必ずしも十分満足し得るものではなかった。
また、特許文献2に開示されている高分子電解質組成物から得られる高分子電解質膜は、優れたラジカル耐性を有するものであるが、酸化雰囲気下に曝露(Fenton試薬に浸漬)する時間を長くすると、重量減少率が高くなる、すなわち高分子電解質膜が劣化する場合があった。このように、益々、耐久性が要求される固体高分子燃料電池の高分子電解質膜として使用する場合、より強い酸化雰囲気に曝されたときにも、高水準のラジカル耐性を有する高分子電解質膜が切望されていた。
本発明の目的は、ラジカル耐性に優れる高分子電解質膜を得ることができる、高分子電解質組成物を提供し、さらには、該高分子電解質組成物を用いてなる高分子電解質膜、該高分子電解質膜を用いてなる高分子電解質型燃料電池を提供することにある。
本発明者らは、固体高分子型燃料電池用隔膜(高分子電解質膜)のラジカル耐性を向上させるべく、鋭意検討した結果、驚くべきことに、5価のリン原子を含む基を有する化合物と、酸化防止剤とを高分子電解質に混合した高分子電解質組成物から得られる高分子電解質膜が、各々単独で高分子電解質に混合した組成物から得られる膜よりも、著しいラジカル耐性を示すという知見を得、さらに種々の検討を加え、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記の[1]〜[12]で示される高分子電解質組成物を提供するものである。
[1]下記の成分(a)、(b)及び(c)を含有することを特徴とする高分子電解質組成物
(a)強酸基を有する高分子電解質
(b)5価のリン原子を有する基を少なくとも1つ有する化合物
(c)酸化防止剤
[2]成分(b)の成分(a)に対する重量比が0.1〜80.0重量%であることを特徴とする前記[1]記載の高分子電解質組成物
[3]成分(c)の成分(a)に対する重量比が0.05〜50.0重量%である前記[1]又は[2]記載の高分子電解質組成物
[4]成分(b)の含有量が、成分(c)の含有量よりも多いことを特徴とする前記[1]〜[3]の何れかに記載の高分子電解質組成物
[5]成分(b)が、下記式(1a)で示される化合物、又は式(1b)で示される基を有する化合物を含むことを特徴とする前記[1]〜[4]の何れかに記載の高分子電解質組成物
Figure 2007217675
(式中、Ar0、Ar1は芳香族基を表す。Lは下記式(2)又は式(3)で示される基を表し、vは1以上4以下の整数であり、vが2以上である場合、複数あるLは同一でも異なっていてもよい。Lは、Ar0、Ar1の芳香環に直接結合している。*は結合手を表す。)
Figure 2007217675
(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を表す。)
[6]成分(b)が前記式(2)で示される基を有する化合物を含むことを特徴とする前記[5]に記載の高分子電解質組成物
[7]成分(b)が、前記式(2)で示される基及び/又は前記式(3)で示される基を有する高分子化合物を含む前記[5]に記載の高分子電解質組成物
[8]前記高分子化合物が、下記式(4)で表される構造単位を有する高分子化合物を含むことを特徴とする前記[7]記載の高分子電解質組成物
Figure 2007217675
(式中、Arは炭素数4〜18の2価の芳香族基を表し、該芳香族基は置換基を有していてもよい。sはArに結合する前記式(2)で表される基の、該構造単位1個当りの平均置換基数であり、8以下の正の数を表す。R1、R2は前記と同義である。)
[9]前記高分子化合物が、下記式(5)で表される構造単位を有する高分子化合物を含むことを特徴とする前記[7]記載の高分子電解質組成物
Figure 2007217675
(式中、X10は直接結合、酸素原子又は硫黄原子である。Ar、s、R1及びR2は前記と同義である。)
[10]前記(b)が、下記式(6)で表される共重合体を含むことを特徴とする前記[7]記載の高分子電解質組成物
Figure 2007217675
(式中、Zはスルホニル基又はカルボニル基を表し、xとyは各構造単位の共重合体中のモル比率であり、0.01〜0.99を表し、xとyの合計は1である。Ar、s、R1及びR2は、前記と同義である。)
[11]成分(c)が、ヒンダードフェノール系化合物であることを特徴とする前記[1]〜[10]の何れかに記載の高分子電解質組成物
[12]成分(a)が、強酸基を有するブロックと、酸基を実質的に有さないブロックとからなるブロック共重合体であることを特徴とする前記[1]〜[11]の何れかに記載の高分子電解質組成物
さらに、本発明は、
[13]前記[1]〜[12]の何れかに記載の高分子電解質組成物を用いてなることを特徴とする高分子電解質膜
[14]前記[13]記載の高分子電解質膜を用いてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池
を提供するものである。
本発明の高分子電解質組成物から得られる高分子電解質膜は、従来の高分子電解質膜よりもラジカル耐性に優れ、当該膜を固体高分子型燃料電池の高分子電解質膜として用いることにより、耐久性、長期安定性に優れた固体高分子型燃料電池を得ることができる。
以下に、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。
成分(b)
本発明の高分子電解質組成物の成分(b)としては、5価リン原子を有する基を少なくとも1つ有する化合物である。ここで、5価のリン原子を有する基とは、リン酸基、リン酸モノエステル基、リン酸ジエステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸モノエステル基、ホスホン酸ジエステル基の何れかを示すものである。
また、これらの基が結合する残基は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれでもよく、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とを共に有する基でもよい。また、脂肪族炭化水素基としては、鎖状、環状の何れでもよい。
これらの基を有する化合物の製造方法については、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、リン酸又はリン酸エステル基を有する脂肪族炭化水素化合物の製造方法は、脂肪族アルコールにオキシ塩化リン(POCl3)を反応させリン酸エステルに転換する方法、脂肪族アルコールにオキシ塩化リン(POCl3)を反応させる際に、一部に未反応のP(O)−Cl基を残存させ、加水分解によって、P(O)−OH基に転換することにより、リン酸基やリン酸モノエステル基を有する脂肪族化合物を得る方法等が挙げられる。また、リン酸基やリン酸エステル基を有する脂肪族化合物類は、通常、樹脂・繊維の着色防止剤、酢酸ビニルポリマー可塑剤等の用途向けに市販されており、これらを用いることもできる。また、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基を有する脂肪族炭化水素化合物を製造する一例としては、脂肪族ハロゲン化物に、亜リン酸トリアルキル、亜リン酸ジアルキルを反応させ、ホスホン酸エステル基を有する脂肪族化合物を得る方法、該ホスホン酸エステル基を有する脂肪族化合物を加水分解することにより、ホスホン酸基を有する脂肪族化合物を得る方法や、カルボアニオン、アミン基又はメルカプト基を有する脂肪族化合物に対し、ホルムアルデヒドと亜リン酸を用いるマンニッヒ反応によって、ホスホン酸基を導入する方法等が挙げられる。
また、リン酸又はリン酸エステル基を有する芳香族炭化水素化合物の製造方法は、前記の脂肪族アルコールをフェノール誘導体に置き換えて実施すればよく、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基を有する芳香族炭化水素化合物の製造方法は、前記の脂肪族ハロゲン化物を芳香族ハロゲン化物に置き換える手段や、カルボアニオン、アミン基又はメルカプト基を有する脂肪族化合物を、これらの基を有する芳香族化合物に置き換えて実施すればよい。
本発明の高分子電解質組成物における成分(b)としては、5価のリン原子を有する基が芳香環に直接結合した芳香族化合物であると好ましく、下記式(1a)で示される化合物又は、式(1b)で示される基を有する化合物が挙げられる。
Figure 2007217675
(式中、Ar0、Ar1は芳香族基を表す。Lは下記式(2)又は式(3)で示される基を表し、vは1以上4以下の整数であり、vが2以上である場合Lは互いに異なっていてもよい。Lは、Ar0、Ar1の芳香環に直接結合している。*は結合手を表す。)
Figure 2007217675
(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を表す。)
ここで、Ar0、Ar1はベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環、ピリジン環、フラン環、ピロール環、ピリミジン環等の芳香族複素環、又はこれらの環に置換基(例えば、炭素数1〜4程度のアルキル基、炭素数2〜4程度のアルケニル基、炭素数2〜4程度のアルキニル基、炭素数1〜4程度のアルコキシ基、水酸基、チオール基等が挙げられる)を有する芳香環、芳香族複素環を有する基が挙げられる。
なお、式(1b)で示される基は、Lがv個、Ar1の芳香環に直接結合しているものであり、且つ、Ar1はL以外に、2個の結合手を有する基である。
ここで、式(2)におけるR1、R2、式(3)におけるR3、R4が1価の有機基である場合、当該有機基の代表例としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基、イソオクチル基、t-オクチル基、2-エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、1-メチルシクロペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-メチル-4-イソプロピルシクロヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の炭素数1〜22のアルキル基、フェニル基、トルイル基、ナフタレン基、ベンジル基等の芳香環を含む基が挙げられる。
このように、成分(b)として、上記式(1a)で示される化合物、及び/又は式(1b)で示される基を有する化合物を用いると、とりわけラジカル耐性に優れた高分子電解質膜が得られるため好ましい。
本発明の成分(b)は上記に記載の化合物を用いることができるが、製造上容易であり、5価のリン原子を含む基としては比較的安定な前記式(2)で表される基、すなわちホスホン酸基又はホスホン酸基になりえるホスホン酸エステル基が好ましい。
また、本発明の成分(b)は、成分(a)と混合して膜化するとき、ブリードしにくいとの観点から、高分子化合物であると好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルエーテルケトン、直鎖型フェノール−ホルムアルデヒド縮合樹脂、ポリスチレン、ポリ(トリフルオロスチレン)、ポリフェニレン、ポリ(2,3−ジフェニル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(アリールエーテルケトン)、ポリ(アリールエーテルスルホン)、ポリ(フェニルキノキサリン)、ポリ(ベンジルシラン)、スチレン-エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−フッ化ビニリデン共重合体、スチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の分子内に、前記リン酸基及び/又は前記ホスホン酸基を有している樹脂が挙げられ、中でもポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルエーテルケトン、ポリフェニレン、ポリ(2,3−ジフェニル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(アリールエーテルケトン)、ポリ(アリールエーテルスルホン)、ポリ(フェニルキノキサリン)、ポリ(ベンジルシラン)等の芳香族系樹脂が好ましい。
さらに、本発明に適用するリン酸基及び/又はホスホン酸基を有する高分子化合物は、前記に例示する樹脂の構造単位が、ランダムに共重合体された樹脂であっても、交互共重合体であってもよく、また、グラフト共重合体やブロック共重合体であってもよい。これらは公知の方法を組み合わせることにより製造し得る。また、これらの重合度は特に制限は無いが、通常10〜104程度、分子量にして通常103から106程度のものが使用される。重合度が、10以上でれば、得られる膜の機械的強度が高くなる傾向にあり、成膜性がより良好となるため好ましく、また104以下では、溶媒への溶解性が向上する傾向にあり、キャスト製膜などの加工性、成形性がより良好となるので、いずれの場合も好ましい。
特に、前記に示すように成分(b)としては、5価のリン原子を有する基としてホスホン酸基、あるいはホスホン酸基になりえるホスホン酸エステル基が有利であり、さらにこれらの基は芳香環に直接結合した部分構造を有すると、ラジカル耐性がより向上することから好ましく、これらの観点を合わせると、成分(b)としては、下記式(4)で示される構造単位を有する高分子化合物がとりわけ好ましいものである。
Figure 2007217675
(式中、Arは炭素数4〜18の2価の芳香族基を表し、該芳香族基は置換基を有していてもよい。sはArを含む構造単位において、該構造単位1当りの平均置換基数であり、8以下の正の数を表す。R1、R2は水素原子あるいはアルキル基を表す。)
また、前記式(4)で示される構造単位を有する高分子化合物は、下記式(5)で示される構造単位を有していると好ましい。
Figure 2007217675

(式中、X10は直接結合、酸素原子又はイオウ原子を示す。Ar、s、R1及びR2は前記と同義である。)
このように高分子主鎖を形成する2価の芳香族基Arが、直接結合、エーテル結合又はスルフィド結合で結合しているものは、公知の重縮合によって容易に得ることができるため好ましい。
とりわけ、成分(b)としては、下記式(6)で示されるホスホン酸基あるいはホスホン酸エステル基を有する高分子化合物が好ましく、当該高分子化合物は前記の特許文献1記載の方法によって得ることができる。
Figure 2007217675
(式中、Zはスルホニル基又はカルボニル基を表し、xとyは各構造単位の共重合体中のモル比率であり、0.01〜0.99を表し、xとyの合計は1である。Ar、s、R1及びR2は前記と同等の定義である。)
成分(b)が前記(6)式で表される高分子化合物であると、高分子電解質のラジカル耐性向上の面から好適である。また、R1及びR2において、一方が水素原子であると好ましく、両方が水素原子であると、より好ましい。
ここで、前記式(4)、式(5)及び式(6)に係るArの代表例としては、例えば、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−2,7−ジイル基、ナフタレン−2,3−ジイル基、ビフェニル−4,4’−ジイル基、ビフェニル−3,3'−ジイル基、p−テルフェニル−4,4''−ジイル基、2,2−ジフェニルプロパン−4',4''−ジイル基、フルオレン−2,7−ジイル基、フルオレン−3,6−ジイル基等の、炭化水素系の2価の芳香族基、カルバゾール−2,7−ジイル基、カルバゾール−3,6−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基、ジベンゾチオフェン−2,7−ジイル基、フラン−2,5−ジイル基、ジベンゾフラン−2,7−ジイル基、ジベンゾフラン−3,6−ジイル基、ジフェニルアミン−4,4'−ジイル基、ジフェニルエーテル−4,4'−ジイル基のようなヘテロ原子を含む2価の芳香族基等を挙げることができる。
また、これらの芳香族基は、置換基を有していても良く、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、2−プロピル基、t−ブチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基などの、水酸基又はハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖状又は分岐状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメトキシ基などの、ハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖状又は分岐状のアルコキシ基;フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ビフェニル基、フェノキシフェニル基、クロロフェニル基、スルホフェニル基等の、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ハロゲン原子又はスルホン酸基で置換されていてもよいフェニル基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、スルホフェノキシ基などのアルキル基、アルコキシ基又はスルホン酸基で置換されていてもよいフェノキシ基;エトキシカルボニル基などのアルキルオキシカルボニル基;エチルカルボニルオキシ基等のアルキルカルボニルオキシ基;アミノカルボニル基又はN−アルキルアミノカルボニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基等の、窒素原子がアルキル基で置換されていてもよいアミノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ウレイド基;アシルアミノ基;カルボキシル基;ヒドロキシ基;シアノ基;スルホン酸基;アミノスルホニル基等が挙げられる。
特に、本発明におけるArの好ましい例としては、例えば、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、3−メチル−1,2−フェニレン基、3−エチル−1,2−フェニレン基、3−メトキシ−1,2−フェニレン基、3−エトキシ−1,2−フェニレン基、3−ブロモ−1,2−フェニレン基、3−クロロ−1,2−フェニレン基、3,6−ジメチル−1,2−フェニレン基、4,5−ジブロモ−1,2−フェニレン基、2−メチル−1,3−フェニレン基、2−エチル−1,3−フェニレン基、2−メトキシ−1,3−フェニレン基、2−エトキシ−1,3−フェニレン基、2−ブロモ−1,3−フェニレン基、2−クロロ−1,3−フェニレン基、5−メチル−1,3−フェニレン基、5−ブロモ−1,3−フェニレン基、2−メチル−1,4−フェニレン基、2−エチル−1,4−フェニレン基、2−メトキシ−1,4−フェニレン基、2−エトキシ−1,4−フェニレン基、2−ブロモ−1,4−フェニレン基、2−クロロ−1,4−フェニレン基、2,6−ジメチル−1,4−フェニレン基、2,6−ジブロモ−1,4−フェニレン基、2−フェニル−1,4−フェニレン基、2,3−ジフェニル−1,4−フェニレン基等の置換されていてもよいフェニレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基、ビフェニル−3,3’−ジイル基、3,3’−ジフェニルビフェニル−4,4’−ジイル基、3,3’−ビスフェノキシビフェニル−4,4’−ジイル基、3,3’−ジクロロビフェニル−4,4’−ジイル基、3,3’−ジブロモビフェニル−4,4’−ジイル基、2,2’−ジクロロビフェニル−3,3’−ジイル基、2,2’−ジブロモビフェニル−3,3’−ジイル基、4,4’−ジクロロビフェニル−3,3’−ジイル基、4,4’−ジブロモビフェニル−3,3’−ジイル基等の置換されていてもよいビフェニルジイル基、カルバゾール−2,2’−ジイル基、カルバゾール−3,3’−ジイル基、N−エチルカルバゾール−2,2’−ジイル基、N−エチルカルバゾール−3,3’−ジイル基等の置換されていてもよいカルバゾールジイル基等が挙げられる。
中でも、Arは、置換されていてもよいフェニレン基又は置換されていてもよいビフェニルジイル基であることが好ましく、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、ビフェニル−4,4'−ジイル基、ビフェニル−3,3'−ジイル基等が特に好ましい。
xとyは共重合体、前記式(6)において、各構造単位の共重合体中におけるモル比率を意味し、それぞれ0.01乃至0.99を表し、xとyの合計は1であり、好ましくは、yは0.1〜0.9である。これらのモル分率は、前記構造単位を誘導するモノマーの仕込比率によって調整することができる。
一般式(6)で表されるホスホン酸基を有する共重合体において、R1及び/又はR2が水素原子である場合は、塩又は部分的に塩に変換されたものであってもよい。この場合、カチオンとしてはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンが挙げられ、特にリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。
成分(c)
本発明の高分子電解質組成物の成分(c)として用いられる酸化防止剤としては、非特許文献2にラジカル捕捉剤として挙げられているフェノール系化合物、アミン系化合物、又は、非特許文献2に過酸化物分解剤として挙げられている有機リン系化合物、有機硫黄化合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。
ここで、ラジカル捕捉剤とはフェノール系化合物のフェノール基又はアミン系化合物のアミノ基から、ラジカルに対して水素を供与して不活性化し、自身はフェノキシラジカルを有する化合物又はアミンラジカルを有する化合物となって安定化するものであり、特にフェノール系化合物の中でも、フェノール性水酸基に対して、オルト位に炭素数3以上の分岐炭化水素基を有する化合物はヒンダードフェノール系化合物と呼ばれ、ラジカルに対する水素供与反応の反応速度が速いため好適である。過酸化物分解剤とは3価リン原子又は2価硫黄原子を有する化合物であり、これらはラジカルによって自身が、5価リン原子を有する化合物又は4価硫黄原子若しくは6価硫黄原子を有する化合物に酸化されることで、ラジカルを消失させる化合物である。
前記ヒンダードフェノール系化合物の具体例としては、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ‐t-ペンチルフェニル)エチル]‐4,6-ジ‐t-ペンチルフェニルアクリレート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、トリエチレングリコールビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス[2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]1,1-ジメチルエチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン等が挙げられる。
前記アミン系化合物の具体例としては、p,p'-ジオクチルジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルコハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]、N,N'-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物、ビス(1-オクチロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及び1-トリデカノールとの混合エステル化物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及び1-トリデカノールとの混合エステル化物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物、(2,2,6,6,-テトラメチレン-4-ピペリジル)-2-プロピレンカルボキシレート、(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-プロピレンカルボキシレート等が挙げられる。
前記有機リン系化合物の具体例としては、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス[2,4-ジ(1-フェニルイソプロピル)フェニル]ペンタエリスリトールジホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルオキシ)4,4'-ビフェニレン-ジ-ホスフィン、2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエテル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン6-イル]オキシ]-N,N-ビス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2,]ジオキサフォスフェピン-6-イル]オキシ]-エチル]エタナミン、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の3価リンの化合物が挙げられる。
前記硫黄系化合物の具体例としては、ジラウリル-3,3'-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3'-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3'-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
前記の酸化防止剤は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の汎用樹脂の樹脂添加剤として市販されている市販品を使用してもよく、例えば、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製IRGANOX、IRGAFOS、住友化学(株)製Sumilizer、サイテック社製Cyanox、旭電化(株)製アデカスタブ等が挙げられる。これらを必要に応じて精製して使用してもよいが、通常、市場から容易に高純度の市販品を入手できるため、そのまま使用してもよい。あるいは、市販品に含まれる酸化防止剤の純度をGC、HPLC等の公知の方法を用いて求めることで、本発明の高分子電解質組成物における成分(b)の仕込量を決定することもできる。
前記の酸化防止剤は、1種あるいは2種以上を併用して、本発明の成分(b)として用いることができるが、特に、ヒンダードフェノール系化合物から選ばれることが好ましい。
該ヒンダードフェノール系化合物を成分(b)として用いると高分子電解質のラジカル耐性向上の面から好適である。
成分(a)
次に、本発明の高分子電解質組成物における成分(a)である強酸基を有する高分子電解質について説明する。
本発明における、強酸基を有する高分子電解質としては、強酸基を高分子の主鎖、側鎖又は末端に有するものが挙げられる。該強酸基としては、スルホン酸基(-SO3H)、スルホンアミド基(-SO2-NH2)、スルホニルイミド基(-SO2-NH-SO2-)、硫酸基(-OSO3H)、フルオロアルキレンスルホン酸基(例えば、-CF2SO3Hを挙げることができる)、下記式(7)で示される基が挙げられ、特にスルホン酸基が好ましい。高分子電解質のプロトン伝導度は、通常、1×10‐4S/cm以上であり、1×10‐3〜1S/cm程度のものが好ましく使用される。
Figure 2007217675
(式中、X11及びX12は、それぞれ独立に酸素原子、硫黄原子又は−NQ1−、Z11はカルボニル基、チオカルボニル基、−C(NQ2)−、置換基を有していてもよいアルキレン基又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。また、Q1及びQ2は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基を表す。pは、繰り返しの数を表わし、0〜10の整数を表わす。なお、pが2以上の場合、複数あるZ11はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
かかる高分子電解質の代表例としては、(A)主鎖が脂肪族炭化水素からなる高分子に強酸基を導入した高分子電解質;(B)主鎖が、一部の水素原子がフッ素で置換された脂肪族炭化水素からなる高分子に強酸基を導入した高分子電解質;(C)主鎖が芳香環を有する高分子に強酸基を導入した高分子電解質;(D)主鎖に実質的に炭素原子を含まないポリシロキサン、ポリフォスファゼンなどの高分子に、強酸基を導入した高分子電解質;(E)(A)〜(D)の強酸基導入前の高分子を構成する繰り返し単位から選ばれるいずれか2種以上の繰り返し単位からなる共重合体に強酸基を導入した高分子電解質が例示される。強酸基としては、前記の例示の中でもスルホン酸基が好適である。
ここで、前記(A)〜(E)に記載の高分子電解質を、好ましい強酸基であるスルホン酸基の場合について例示する。
上記(A)の高分子電解質としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(α−メチルスチレン)スルホン酸、等が挙げられる。
また上記(B)の高分子電解質としては、炭化フッ素系ビニルモノマと炭化水素系ビニルモノマとの共重合によって作られた主鎖と、スルホン酸基を有する炭化水素系側鎖とから構成されるスルホン酸型ポリスチレン−グラフト−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE、例えば特開平9−102322号公報)や、炭化フッ素系ビニルモノマと炭化水素系ビニルモノマとの共重合によって作られた膜に、α,β,β-トリフルオロスチレンをグラフト重合させ、これにスルホン酸基を導入して固体高分子電解質膜とした、スルホン酸型ポリ(トリフルオロスチレン)−グラフト−ポリトリフルオロエチレン膜(例えば、米国特許第4,012,303号及び米国特許第4,605,685号)等が挙げられる。
上記(C)の高分子電解質としては、主鎖が酸素原子等のヘテロ原子を有するものであってもよく、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイミド、ポリ((4-フェノキシベンゾイル)-1,4-フェニレン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルキノキサレン等の単独重合体のそれぞれにスルホン酸基が導入されたもの、スルホアリール化ポリベンズイミダゾール、スルホアルキル化ポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
また上記(D)の高分子電解質としては例えば、ポリフォスファゼンにスルホン酸基が導入された樹脂等が挙げられる。
上記(E)の高分子電解質としては、ランダム共重合体にスルホン酸基が導入されたものでも、交互共重合体にスルホン酸基が導入されたものでも、ブロック共重合体にスルホン酸基が導入されたものでもよい。ランダム共重合体にスルホン酸基が導入されたものとしては、例えば、スルホン化ポリエーテルスルホン-ジヒドロキシビフェニル共縮合体が挙げられる(例えば、特開平11−116679号公報参照)。
とりわけ、本発明の成分(a)としては、前記(C)に例示される主鎖が芳香環を有する高分子にスルホン酸基を導入した高分子電解質が好ましく、具体的には、下記式(8)で示される構造単位を有し、且つ該構造単位の少なくとも一部に上記のスルホン酸基を有する高分子電解質が好ましい。
Figure 2007217675
(式中、Ar11は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数6〜10のアリールオキシ基で置換されていてもよい2価の芳香族基を表し、R11は、直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基、スルフィニル基又はスルホニル基を示す。)
ここで、前記式(8)において、Ar11で表される基としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の2価の単環性炭化水素芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5−ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6−ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の2価の縮合系炭化水素芳香族基、3,3’−ビフェニリレン、3,4’−ビフェニリレン、4,4’−ビフェニリレン、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル、2,2−ジフェニルプロパン−4’,4’’−ジイル、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ジフェニルプロパン−4’,4’’−ジイル等の2価の多環系炭化水素系芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイル等のヘテロ環系芳香族基等が挙げられる。なかでも、2価の炭化水素系芳香族基が好ましい。
また、これらの基は、上述の如く、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数6〜10のアリールオキシ基で置換されていてもよい。ここで、炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基や、これらのアルキル基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子や、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、フェノキシ基等が置換し、かかる置換基を含み全炭素数が1〜10であるアルキル基が挙げられる。
炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基や、これらのアルコキシ基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子や、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、フェノキシ基等が置換し、この置換基を含み全炭素数が1〜10であるアルコキシ基が挙げられる。
炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基や、これらのアリール基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子や、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、フェノキシ基等が置換し、この置換基を含み全炭素数が6〜10であるアリール基が挙げられる。
また、炭素数6〜10のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜10のアリールオキシ基や、これらのアリールオキシ基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子や、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、フェノキシ基等が置換し、この置換基を含み全炭素数が6〜10であるアリールオキシ基等が挙げられる。
上記式(8)で示される構造単位にスルホン酸基を導入した構造単位の典型的な例としては、下記の10−1〜10−16が挙げられる。
Figure 2007217675
上述の構造単位の中でも、より機械強度に優れる高分子電解質を得る観点からは、10−1、10−9又は10−13が好ましい。
また、前記式(8)で示される構造単位を有する高分子電解質は、例えば、下記式(8a)、(8b)又は(8c)で表される構造単位を有していると好ましい。
Figure 2007217675
(式中、Ar21、Ar22、Ar23、Ar24、Ar25、Ar26及びAr27(以下、「Ar21〜Ar27」のように表記する)は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数6〜10のアリールオキシ基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、Q21〜Q25は、それぞれ独立に、オキシ基又はチオキシ基を示し、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、カルボニル基又はスルホニル基を示す。)
ここで、前記式(8a)、(8b)及び(8c)において、Ar21〜Ar27で表される基としては、前記Ar11と同等の基が例示される。
ここで、前記一般式(8a)で表される構造単位にスルホン酸基を導入した構造単位としては、例えば、下記式11−1〜11−7で表される構造単位が例示できる。
Figure 2007217675
また、前記一般式(8b)で表される構造単位にスルホン酸基を導入した構造単位としては、例えば、下記式12−1〜12−15で表される構造単位が例示できる。
Figure 2007217675
上述したなかでも、前記式(8b)で表される構造単位を有する高分子電解質は、下記式(9)で表される構造単位を有していると好ましい。
Figure 2007217675
(式中、R31は、カルボニル基又はスルホニル基を示し、w1及びw2は、それぞれ独立に0又は1であって少なくともいずれか一方が1であり、w3は0、1又は2であり、v1は1又は2である。)
また、前記式(8c)で表される構造単位にスルホン酸基を導入した構造単位としては、例えば、下記式13−1〜13−6で表される構造単位が例示できる。
Figure 2007217675
さらに、本発明の成分(a)として好適な高分子電解質は、前記の式(8)に示す構造単位に加え、置換されていてもよいアルキレン基又は置換されていてもよいフルオロアルキレン基を有する構造単位を含んでいてもよく、具体的には、以下に示す構造単位が挙げられる。
Figure 2007217675
ここで、kは0,1又は2であり、同一の構造単位にある複数のkは互いに同一でも異なっていてもよいが、同一の構造単位に少なくも1つのスルホン酸基があることを表す。
次に、本発明の成分(a)である高分子電解質は、上記のようにスルホン酸基を強酸基として有する構造単位からなる高分子化合物、又は前記(E)に記載のとおり、これらの構造単位からなる共重合体であってもよく、さらに共重合成分として、プロトン伝導に係わるイオン交換基を有さない構造単位を含んでいてもよい。
このようなイオン交換基を有さない構造単位についても、芳香族環を有する構造単位が好ましく、より具体的には、下記式(14)で表される構造単位が挙げられる。
Figure 2007217675
(式中、Ar41は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数6〜10のアリールオキシ基で置換されていてもよい2価の芳香族基を表し、R41は、直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基、スルフィニル基又はスルホニル基を示す。)
前記式(14)で示される構造単位を有する高分子電解質の中でも、下記式(15)で表される構造単位を有していると好ましい。
Figure 2007217675
(式中、Ar51、Ar52及びAr53は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数6〜10のアリールオキシ基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、Q51及びQ52は、それぞれ独立に、オキシ基又はチオキシ基を示し、R51は、カルボニル基又はスルホニル基を示す。)
前記一般式(15)で表される化合物において、Ar51〜Ar53で表される基としては、上記Ar11で表される基と同様のものが挙げられ、なかでも、フェニレン基が好ましい。また、Q51及びQ52としては、オキシ基(−O−)が好ましい。
とりわけ、前記イオン交換基を有さない構造単位として、下記式(16)で表される構造単位であると好ましい。
Figure 2007217675
(式中、Ar61は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭
素数6〜10のアリール基又は炭素数6〜10のアリールオキシ基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、Q61及びQ62は、それぞれ独立に、オキシ基又はチオキシ基を示し、T61及びT62は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数6〜10のアリールオキシ基を示し、R61は、カルボニル基又はスルホニル基を示し、i及びjは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。)
式中、Ar61、Q61、Q62及びR61としては、それぞれ上記のAr53、Q51、Q52及びR51と同様の基が好ましく、なかでも、Ar61としては、フェニレン基又はビフェニレン基が好ましい。さらに、T61又はT62としては、上述したAr21〜Ar27の置換基として例示した基が挙げられる。また、上記i及びjは0であることが特に好ましい。
より具体的には、前記イオン交換基を有さない構造単位としては、例えば、下記式17−1〜17−18で表される構造単位を有するものが例示できる。
Figure 2007217675
Figure 2007217675
中でも、前記イオン交換基を有さない構造単位としては前記式(16)で表される構造単位であると好ましく、前記の17−1〜10及び17−15〜18で表される構造単位の少なくとも1種が好ましく、17−1、17−3、17−5〜7及び17−15〜18で表される構造単位の少なくとも1種がより好ましく、上記17−1又は17−15〜18が特に好ましい。
また、前記イオン交換基を有さない構造単位として、前記の式(14)に示す構造単位に加え、置換されていてもよいアルキレン基又は置換されていてもよいフルオロアルキレン基を有する構造単位を含んでいてもよく、具体的には、以下に示す構造単位が挙げられる。
Figure 2007217675
Figure 2007217675
前記式(8)に例示されるスルホン酸基を有する構造単位と、式(14)に例示されるイオン交換基を有さない構造単位は高分子鎖中、ランダム共重合していてもよく、高分子鎖が分岐状になったグラフト共重合体であってもよい。
とりわけ好ましい成分(a)である高分子電解質としては、前記式(8)にスルホン酸基を導入した構造単位からなるブロック(以下、高分子電解質ブロックと呼ぶ)と、前記式(14)に例示されるイオン交換基を有さない構造単位からなるブロック(以下、高分子非電解質ブロックと呼ぶ)を各々1つ以上有するブロック共重合体が挙げられる。
該ブロック共重合体の製造方法としては、例えば、I.高分子電解質ブロックとなりうる高分子化合物1と、高分子非電解質ブロックになりうる高分子化合物2を各々別に製造し、次いで高分子化合物1と高分子化合物2をカップリングさせる方法、II.高分子電解質ブロックとなりうる高分子化合物1を予め製造し、該高分子化合物1と高分子非電解質ブロックになりうるモノマーとを共重合させる製造方法、III.高分子非電解質ブロックとなりうる高分子化合物2を予め製造し、該高分子化合物2と高分子電解質ブロックになりうるモノマーとを共重合させる製造方法、等が挙げられる。
ここで、Iの方法におけるブロック共重合体は、両末端がヒドロキシ基もしくはハロゲノ基であるか又は末端の一方がヒドロキシ基もう一方がハロゲノ基である高分子化合物1と、両末端がヒドロキシ基もしくはハロゲノ基であるか又は末端の一方がヒドロキシ基もう一方がハロゲノ基である高分子化合物2とを組み合わせて反応させることにより製造し得る。
例えば、両末端にヒドロキシ基を有する高分子化合物1と両末端にハロゲノ基を有する高分子化合物2とを塩基の作用下に求核置換的に縮合させる方法、両末端にヒドロキシ基とハロゲノ基を一つずつ有する高分子化合物1と両末端にヒドロキシ基とハロゲノ基を一つずつ有する高分子化合物2とを塩基の作用下に求核置換的に縮合させる方法、両末端にヒドロキシ基を有する高分子化合物1と両末端にヒドロキシ基を有する高分子化合物2とを4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル、ヘキサフルオロベンゼン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンなど連結基として働く化合物を用いて結合させる方法、両末端にハロゲノ基を有する高分子化合物1と両末端に高分子化合物2を有する別のポリマーとを4、4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4、4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなど連結基として働く化合物を用いるか、脱ハロゲン縮合反応により結合させる方法などが例示される。また、上記反応と同様の素反応が起こりうる反応性基を有する高分子化合物及びモノマーを重合反応させる方法によってブロック共重合体を製造し得る。尚、ここにおける各ポリマーは公知の方法に準拠して製造し得る。
ここで、上記のように連結基を使用してブロック共重合を製造する際、デカフルオロビフェニル、ヘキサフルオロベンゼン等の多官能性の連結基を用いた場合、反応条件を制御することで分岐構造を有するブロック共重合体を製造することができる。
高分子電解質組成物
本発明の高分子電解質組成物は、前記成分(a)(以下(a)と略す)に、前記成分(b)(以下(b)と略す)及び前記成分(c)(以下(c)と略す)を含有せしめてなるものであるが、(b)の(a)に対する重量比率は、通常0.1〜80.0重量%から選ばれる。ここで、(a)に対する(b)の重量比率の最小値は、0.2重量%以上であると好ましく、0.3重量%以上であるとさらに好ましく、0.4重量%以上であるととりわけ好ましく、0.5重量%以上であると特に好ましい。一方、(a)に対する(b)の重量比率の最大値は、50.0重量%以下であると好ましく、40.0重量%以下であるとさらに好ましく、30.0重量%以下であるととりわけ好ましく、20.0重量%以下であると特に好ましい。すなわち、(a)に対する(b)の重量比率は0.2〜50.0重量%であると好ましく、0.3〜40.0重量%であるとさらに好ましく、0.4〜30.0重量%であるととりわけ好ましく、0.5〜20.0重量%であると特に好ましい。前記(b)の含有量が少なすぎると、高分子電解質組成物膜のラジカル耐性の効果が小さくなり好ましくなく、前記(b)の含有量が多すぎると、燃料電池用高分子電解質膜として使用する際に、十分なプロトン伝導性が発現されないことがあり好ましくない。
一方、前記(c)の、(a)に対する重量比率は、通常0.05〜50.0重量%から選ばれる。ここで、(a)に対する(c)の重量比率の最小値は、0.1重量%以上であると好ましく、0.2重量%以上であるとさらに好ましく、0.5重量%以上であると特に好ましい。一方、(a)に対する(c)の重量比率の最大値は、25.0重量%以下であると好ましく、10.0重量%以下であるとさらに好ましく、5.0重量%以下であると特に好ましい。すなわち、(a)に対する(c)の重量比率は0.1〜25.0重量%であると好ましく、0.2〜10.0重量%であるとさらに好ましく、0.5〜5.0重量%であると特に好ましい。(c)の含有量が少なすぎると、得られる高分子電解質膜のラジカル耐性の効果が小さくなり好ましくなく、酸化防止剤の含有量が多すぎると、固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜として使用する際に、十分なプロトン伝導性が発現されないことがあり好ましくない。
また、本発明の高分子電解質組成物は、(b)の含有量が(c)の含有量よりも多いことが好ましく、こうすると一層ラジカル耐性が良好となる。(b)の含有量は、(c)の含有量に対する重量倍率で、1.2倍以上であると好ましく、1.5倍以上であるとさらに好ましく、2倍以上であると特に好ましい。
本発明の高分子電解質組成物を調製する方法は特に制限はなく、例えば、前記の、(b)及び(c)を、固体状の(a)高分子電解質と単純に混合する方法であってもよいし、前記の(b)及び(c)を、(a)高分子電解質を溶媒中に溶解せしめた溶液中に溶解させる方法であってもよいし、前記の、(b)及び(c)を、予め溶媒中に溶解あるいは分散させた状態で、(a)高分子電解質を溶媒中に溶解せしめた溶液と混合する方法であってもよい。
また、成分(a)および成分(b)は、リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基及びホスホン酸エステル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基と、強酸基とを有する高分子電解質(d)、に置き換えてもよい。(d)成分としては、例えば、
(d−1)前記式(8)で示される構造単位にスルホン酸基を導入した構造単位を有する高分子電解質の一部に、前記式(2)もしくは(3)で示される部分構造を有する高分子電解質
(d−2)前記式(8)で示される構造単位にスルホン酸基を導入した構造単位を有する高分子電解質ブロックと、前記式(14)で示される高分子非電解質ブロックとのブロック共重合体の一部に、前記式(2)もしくは(3)で示される部分構造を有する高分子電解質
(d−3)下記式(17)で示される構造単位を有する高分子電解質
Figure 2007217675
(式中、Ar71は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数6〜10のアリールオキシ基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、M1は、前記式(2)又は式(3)で示される基を表し、M2は、スルホン酸基、スルホン酸アミド基、硫酸基、フルオロアルキルスルホン酸基又は前記式(7)で示される基を表す。f、gは、それぞれ独立に1以上3以下の整数を表し、f+gは2以上4以下の整数である。R71は直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基、スルフィニル基又はスルホニル基を示す。)
前記式(17)に係るAr71は、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の2価の単環性炭化水素芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5−ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6−ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の2価の縮合系炭化水素芳香族基、3,3’−ビフェニリレン、3,4’−ビフェニリレン、4,4’−ビフェニリレン、ジフェニルメタン−4’,4’−ジイル、2,2−ジフェニルプロパン−4’,4’’−ジイル、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ジフェニルプロパン−4’,4’’−ジイル等の2価の多環系炭化水素系芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイル等のヘテロ環系芳香族基等が挙げられる。なかでも、2価の炭化水素系芳香族基が好ましい。また、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数6〜10のアリールオキシ基は前記Ar11に例示した基と同等の基である。
また、前記成分(d)を、前記の(a)、(b)及び(c)に混合してもよい。
高分子電解質膜
本発明の高分子電解質組成物を燃料電池に適用する際には、膜の状態とする事が好ましい。本発明の高分子電解質組成物を高分子電解質膜へ転化する方法に特に制限はないが、溶液状態より製膜する方法(溶液キャスト法)が好ましい。すなわち、該高分子電解質組成物を溶媒に溶解せしめた高分子電解質溶液を用いると好ましい。
具体的には、前記の、(a)、(b)及び(c)を適当な溶媒に溶解し、その溶液をガラス板上に流延塗布し、溶媒を除去することにより高分子電解質膜が作成される。製膜に用いる溶媒は、前記の、(a)高分子電解質を溶解可能であり、かつ前記の(b)及び(c)を溶解可能であるか、分散させることができ、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、前記高分子電解質溶液に適用することができる。このような溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、あるいはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。中でも、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドが、上述した成分(a)として好ましい高分子電解質に対して溶解性が高く好ましい。
また、前記高分子電解質溶液を、多孔質基材を支持体として用いて複合化させることにより得られる複合膜(高分子電解質複合膜)を用いることもできる。ここで、該支持体とは、前記高分子電解質組成物を含浸する母材となるものであり、主として高分子電解質組成物の機械的強度は柔軟性の、さらなる向上のために使用されるものであり、フィブリル形状、多孔膜形状のものが用いられる。
本発明の高分子電解質膜、あるいは高分子電解質複合膜を燃料電池に使用する場合、膜の厚みに特に制限はないが、3〜200μmが好ましく、4〜100μmがより好ましく、5〜50μmがさらに好ましい。膜厚が薄すぎると膜強度が低下する傾向にあり、膜厚が厚すぎると電気抵抗が高くなり、固体高分子型燃料電池の隔膜として好ましくない。膜厚は、高分子電解質組成物溶液濃度あるいは、高分子電解質組成物溶液の塗工量、多孔性支持膜の厚み、多孔性支持膜への塗布厚を適切に選択することにより制御できる。
燃料電池
次に本発明の燃料電池について説明する。
本発明の燃料電池は、本発明の高分子電解質組成物を用いて得られる高分子電解質膜(又は高分子電解質複合膜)を使用するものであり、この膜の両面に、触媒及び集電体としての導電性物質を接合することにより製造することができる。
該触媒としては、水素又は酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金の微粒子を用いることが好ましい。白金の微粒子は活性炭や黒鉛などの粒子状又は繊維状のカーボンに担持されて用いることが好ましい。
集電体としての導電性物質に関しても公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン織布又はカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
多孔質性のカーボン織布又はカーボンペーパーに白金微粒子又は白金微粒子を担持したカーボンを接合させる方法、及びそれを高分子電解質組成物フィルムと接合させる方法については、例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。
<実施例>
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
ラジカル耐性評価
高分子電解質膜を、3%過酸化水素と鉄イオンの濃度として4ppmもしくは20ppmの塩化第一鉄を含む60℃もしくは80℃の水溶液中に浸漬し、2時間経過後の膜の重量変化を測定することにより耐ラジカル性の評価を行った。重量維持率(%)は、2時間経過後の膜の重量を浸漬前の重量で除した値×100(%)で示している。
イオン交換容量の測定
高分子膜を0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液に2時間浸漬し、残った水酸化ナトリウムを0.1Nの塩酸水溶液で滴定することで測定した。
プロトン伝導度(膜面方向)の測定
高分子膜について、温度80℃、相対湿度90%の条件で、交流法で測定した。
酸化防止剤
下記の表1〜表5に記載の略号は、下記の市販品を示す。
BHT :Sumilizer BHT(住友化学(株)製) 2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール
C1790 :Cyanox1790(サイテック社製):1,3,5-(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸
I1330 :Irganox1330(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)
ベンゼン
I1010 :Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)
プロピオネート]
PEP36 :アデカスタブPEP-36(旭電化(株)製)
ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
TSP :Sumilizer TSP(住友化学(株)製)
ジステアリル-3,3'-チオジプロピオネート
製造例1[高分子電解質E1の製造]
特開2005−139432号公報の実施例2に記載された方法に準拠し、2,6−ジヒドロキシナフタレンと4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンから誘導される酸基を有さないブロック、ヒドロキノンスルホン酸カリウムと4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウムから誘導されるスルホン酸基を有するブロック、とからなるブロック共重合体を製造した。
該ポリマーのイオン交換容量は1.85meq/g、プロトン伝導度は8.97×10-2S/cmであった。以下、該高分子電解質をE1と略記する。
製造例2[高分子電解質E2の製造]
WO2006−095919号公報の実施例1に記載された方法に準拠し、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウムと末端クロロ型であるポリエーテルスルホン(住友化学製スミカエクセルPES5200P)を2,2’−ビピリジル存在下ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を用いて反応を行い、下記ポリアリーレン系ブロック共重合体を得た。(式中のnおよびmは各構造単位の共重合体中のモル比率を表す。)
Figure 2007217675
得られたポリマーのイオン交換容量は2.2meq/gであった。以下、該高分子電解質を高分子電解質E2とする。
製造例3[高分子電解質E3の製造]
特開2005−126684号公報の実施例5に記載された方法に準拠し、ヒドロキノンスルホン酸カリウム、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウムを反応させ、親水性オリゴマー溶液を得た。また、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンを反応させることで、疎水性オリゴマー溶液を得た。続いて、得られた親水性オリゴマー溶液と疎水性オリゴマー溶液を混合して反応させることで下記ブロック共重合体を得た。(式中のnおよびmは各構造単位の共重合体中のモル比率を表す。)
Figure 2007217675
このポリマーのイオン交換容量は1.6meq/gであった。以下、該高分子電解質をE3と略記する。
製造例4[ホスホン酸基を有する高分子化合物P1の製造]
特開平10−021943の方法に準拠し、溶媒としてジフェニルスルホン、炭酸カリウムの存在下、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと4,4’−ジヒドロキシビフェニルと4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを7:3:10のモル比にて反応させることにより、下記のランダム共重合体を合成した。(式中の数字は各構造単位の共重合体中のモル比率を表す。)
Figure 2007217675
次いで、特開2003−282096に記載の方法に準拠し、この共重合体をブロモ化、ホスホン酸エステル化、加水分解することにより、4,4’−ビフェノール由来のユニット1つに対してBrが約0.1個、ホスホン酸基が約1.2個置換された下記ホスホン酸基含有ポリマーを得た。(式中の数字は各構造単位の共重合体中のモル比率を表す。)
Figure 2007217675
このようにして得られた高分子化合物をP1とする。
製造例5[ホスホン酸基を有する高分子化合物P2の製造]
公知のアルカリ縮合法に準拠し、塩基として炭酸カリウム、反応溶媒としてN−メチルピロリドンを用い、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと4,4'−ジヒドロキシビフェニルと4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを4:6:10のモル比にて反応させることにより、下記のランダム共重合体を調製した。(式中の数字は各構造単位の共重合体中のモル比率を表す。)
Figure 2007217675
次いで、特開2003−282096に記載の方法に準拠しこの共重合体をブロモ化、ホスホン酸エステル化、加水分解することにより、4,4’−ビフェノール由来のユニット1つに対してBrが約0.05個、ホスホン酸基が約1.7個置換された下記ホスホン酸基含有ポリマーを得た。(式中の数字は各構造単位の共重合体中のモル比率を表す。)
Figure 2007217675
実施例1
製造例1で得られた高分子電解質E1をジメチルスルホキシドに溶解させ、E1の濃度が13重量%となる溶液を調製した。さらに、該溶液に製造例4で得られたP1及びSumilizer BHTを、E1に対するP1の割合が11重量%、E1に対するSumilizer BHTの割合が5重量%となるようにに加えて溶解し、高分子電解質溶液を調製した。この高分子電解質溶液をガラス板上に塗り広げ、溶媒を乾燥させ、高分子電解質膜を得た。このようにして得られた高分子電解質膜について、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を4ppm、水溶液の温度を60℃とした。結果を表1に示す。なお、表1に記載のP1、酸化防止剤の数値は、高分子電解質E1に対する高分子電解質組成物中の重量割合(重量%)を示す。
実施例2
実施例1のSumilizer BHTをCyanox1790に変更した以外は、実施例1と同様に実施し、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を4ppm、水溶液の温度を60℃とした。結果を表1に示す。
比較例1
成分(a)のみからなる高分子電解質膜について同様な試験を用い、ラジカル耐性評価を行った。
すなわち、高分子電解質E1をジメチルスルホキシドに溶解させ、E1の濃度が13重量%となる高分子電解質溶液を調製した。この高分子電解質溶液をガラス板上に塗り広げ、溶媒を乾燥させ、高分子電解質膜を得た。このようにして得られた高分子電解質膜について、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を4ppm、水溶液の温度を60℃とした。結果を表1に示す。
比較例2
成分(a)と成分(b)のみからなる高分子電解質組成物について同様な試験を用い、ラジカル耐性評価を行った。
すなわち、高分子電解質E1をジメチルスルホキシドに溶解させ、E1の濃度が13重量%となる溶液を調製した。さらに、該溶液に製造例4で得られたP1を、E1に対するP1の割合が11重量%となるように高分子電解質溶液を調製した。この高分子電解質溶液をガラス板上に塗り広げ、溶媒を乾燥させ、高分子電解質膜を得た。このようにして得られた高分子電解質膜について、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を4ppm、水溶液の温度を60℃とした。結果を表1に示す。
<成分(a)としてE1を用いた結果>
鉄イオン濃度 : 4ppm
水溶液温度 : 60℃
Figure 2007217675
表1に記載のP1、酸化防止剤の数値は、高分子電解質E1に対する高分子電解質組成物中の重量割合(重量%)を示す。
比較例3
成分(a)と成分(c)のみからなる高分子電解質組成物について同様な試験を用い、ラジカル耐性評価を行った。
すなわち、高分子電解質E1をジメチルスルホキシドに溶解させ、E1の濃度が13重量%となる溶液を調製した。さらに、当該溶液にSumilizer BHTを溶解させ、E1に対するSumilizer BHTの割合が5重量%となるように高分子電解質溶液を調製した。この高分子電解質溶液をガラス板上に塗り広げ、溶媒を乾燥させ、高分子電解質膜を得た。このようにして得られた高分子電解質膜について、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を4ppm、水溶液の温度を60℃とした。結果を表2に示す。
比較例4〜8
比較例3に記載のSumilizer BHT(E1に対して5重量%)を表2に示す酸化防止剤に変更した以外は比較例3と同様に実施し、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を4ppm、水溶液の温度を60℃とした。結果を表2に示す。
<成分(a)としてE1を用いた結果>
鉄イオン濃度 : 4ppm
水溶液温度 : 60℃
Figure 2007217675
表2に記載の酸化防止剤の数値は、E1に対する高分子電解質組成物中の重量割合(重量%)を示す。
比較例9
成分(a)と2種類の成分(c)のみからなる高分子電解質組成物について同様な試験を用い、ラジカル耐性評価を行った。
すなわち、高分子電解質E1をジメチルスルホキシドに溶解させ、E1の濃度が13重量%となる溶液を調製した。さらに、当該溶液にIrganox 1330、Irganox 1330をそれぞれE1に対して、1重量%、2重量%になるように混合し、高分子電解質溶液を調製した。この高分子電解質溶液をガラス板上に塗り広げ、溶媒を乾燥させ、高分子電解質膜を得た。このようにして得られた高分子電解質膜について、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を4ppm、水溶液の温度を60℃とした。結果を表3に示す。
比較例10〜13
比較例9に記載の、酸化防止剤の組合せを、表3に示す酸化防止剤及び配合量に変更した以外は比較例9と同様に実施し、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を4ppm、水溶液の温度を60℃とした。結果を表3に示す。
<成分(a)としてE1を用いた結果>
鉄イオン濃度 : 4ppm
水溶液温度 : 60
Figure 2007217675
表3に記載の酸化防止剤の数値は、それぞれE1に対する高分子電解質組成物中の重量割合(重量%)を示す。
実施例3
製造例2で得られた高分子電解質E2をジメチルスルホキシドに溶解させ、E2の濃度が10重量%となる溶液を調製した。さらに、該溶液に製造例5で得られたP2及びSumilizer BHTを、E2に対するP2の割合が11重量%、E2に対するSumilizer BHTの割合が1重量%となるようにに加えて溶解し、高分子電解質溶液を調製した。この高分子電解質溶液をガラス板上に塗り広げ、溶媒を乾燥させ、高分子電解質膜を得た。このようにして得られた高分子電解質膜について、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を20ppm、水溶液の温度を80℃とした。なお、表4に記載のP2および酸化防止剤の数値は、高分子電解質E2に対する重量割合(重量%)を示す。
実施例4〜6
実施例3に記載の酸化防止剤を、表4に示す酸化防止剤及び配合量に変更した以外は実施例3と同様に実施し、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を20ppm、水溶液の温度を80℃とした。結果を表4に示す。
比較例13
製造例2で得られた高分子電解質E2をジメチルスルホキシドに溶解させ、E2の濃度が10重量%となる高分子電解質溶液を調製した。この高分子電解質溶液をガラス板上に塗り広げ、溶媒を乾燥させ、高分子電解質膜を得た。このようにして得られた高分子電解質膜について、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を20ppm、水溶液の温度を80℃とした。結果を表4に示す。
比較例14
製造例2で得られた高分子電解質E2をジメチルスルホキシドに溶解させ、E2の濃度が10重量%となる溶液を調製した。さらに、該溶液に製造例5で得られたP2を、E2に対するP2の割合が11重量%となるように加えて溶解し、高分子電解質溶液を調製した。この高分子電解質溶液をガラス板上に塗り広げ、溶媒を乾燥させ、高分子電解質膜を得た。このようにして得られた高分子電解質膜について、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を20ppm、水溶液の温度を80℃とした。結果を表4に示す。
<成分(a)としてE2を用いた結果>
鉄イオン濃度 : 20ppm
水溶液温度 : 80℃
Figure 2007217675

表4に記載のP2、酸化防止剤の数値は、高分子電解質E2に対する重量割合(重量%)を示す。
実施例7
製造例3で得られた高分子電解質E3を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させ、E3の濃度が30重量%となる溶液を調製した。さらに、該溶液に製造例5で得られたP2及びSumilizer BHTを、E3に対するP2の割合が11重量%、E3に対するSumilizer BHTの割合が1重量%となるようにに加えて溶解し、高分子電解質溶液を調製した。この高分子電解質溶液をガラス板上に塗り広げ、溶媒を乾燥させ、高分子電解質膜を得た。このようにして得られた高分子電解質膜について、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を4ppm、水溶液の温度を60℃とした。結果を表5に示す。なお、表5に記載のP2および酸化防止剤の数値は、高分子電解質E3に対する重量割合(重量%)を示す。
実施例8〜10
実施例7に記載の酸化防止剤を、表5に示す酸化防止剤及び配合量に変更した以外は実施例7と同様に実施し、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を4ppm、水溶液の温度を60℃とした。結果を表5に示す。
比較例15
製造例3で得られた高分子電解質E3を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させ、E3の濃度が30重量%となる高分子電解質溶液を調製した。この高分子電解質溶液をガラス板上に塗り広げ、溶媒を乾燥させ、高分子電解質膜を得た。このようにして得られた高分子電解質膜について、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を4ppm、水溶液の温度を60℃とした。結果を表5に示す。
比較例16
製造例3で得られた高分子電解質E3を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させ、E3の濃度が30重量%となる溶液を調製した。さらに、該溶液に製造例5で得られたP2を、E3に対するP2の割合が11重量%となるように加えて溶解し、高分子電解質溶液を調製した。この高分子電解質溶液をガラス板上に塗り広げ、溶媒を乾燥させ、高分子電解質膜を得た。このようにして得られた高分子電解質膜について、ラジカル耐性評価を行った。その際、鉄イオンの濃度を4ppm、水溶液の温度を60℃とした。結果を表5に示す。
<成分(a)としてE3を用いた結果>
鉄イオン濃度 : 4ppm
水溶液温度 : 60℃
Figure 2007217675
表5に記載のP2、酸化防止剤の数値は、高分子電解質E3に対する重量割合(重量%)を示す。
実施例1〜10、比較例1〜16で得られた結果から、本発明の高分子電解質組成物は、特定のホスホン酸基含有高分子化合物と酸化防止剤の両方を有することで、添加剤が酸化防止剤だけの場合や特定のホスホン酸基含有高分子化合物だけの場合と比較して優れたラジカル耐性を示すことが明らかとなった。従って、本発明の高分子電解質膜を燃料電池用の高分子電解質膜として用いることにより、耐久性に優れた高分子電解質型燃料電池を得ることができる。

Claims (14)

  1. 下記の成分(a)、(b)及び(c)を含有することを特徴とする高分子電解質組成物。
    (a)強酸基を有する高分子電解質
    (b)5価のリン原子を有する基を少なくとも1つ有する化合物
    (c)酸化防止剤
  2. 成分(b)の成分(a)に対する重量比が0.1〜80.0重量%であることを特徴とする請求項1記載の高分子電解質組成物。
  3. 成分(c)の成分(a)に対する重量比が0.05〜50.0重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子電解質組成物。
  4. 成分(b)の含有量が、成分(c)の含有量よりも多いことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の高分子電解質組成物。
  5. 成分(b)が、下記式(1a)で示される化合物、又は式(1b)で示される基を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の高分子電解質組成物。
    Figure 2007217675
    (式中、Ar0、Ar1は芳香族基を表す。Lは下記式(2)又は式(3)で示される基を表し、vは1以上4以下の整数であり、vが2以上である場合、複数あるLは同一でも異なっていてもよい。Lは、Ar0、Ar1の芳香環に直接結合している。*は結合手を表す。)

    Figure 2007217675
    (式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を表す。)
  6. 成分(b)が前記式(2)で示される基を有する化合物を含むことを特徴とする請求項5に記載の高分子電解質組成物。
  7. 成分(b)が、前記式(2)で示される基及び/又は前記式(3)で示される基を有する高分子化合物を含むことを特徴とする請求項5に記載の高分子電解質組成物。
  8. 前記高分子化合物が、下記式(4)で表される構造単位を有する高分子化合物を含むことを特徴とする請求項7記載の高分子電解質組成物。
    Figure 2007217675
    (式中、Arは炭素数4〜18の2価の芳香族基を表し、該芳香族基は置換基を有していてもよい。sは、Arに結合する前記式(2)で表される基の、該構造単位1個当りの平均置換数であり、8以下の正の数を表す。R1、R2は前記と同義である。)
  9. 前記高分子化合物が、下記式(5)で表される構造単位を有する高分子化合物を含むことを特徴とする請求項7記載の高分子電解質組成物。
    Figure 2007217675
    (式中、X10は直接結合、酸素原子又は硫黄原子である。Ar、s、R1及びR2は前記と同義である。)
  10. 前記高分子化合物が、下記式(6)で表される共重合体を含むことを特徴とする請求項7記載の高分子電解質組成物。
    Figure 2007217675
    (式中、Zはスルホニル基又はカルボニル基を表し、xとyは各構造単位の共重合体中のモル比率であり、0.01〜0.99を表し、xとyの合計は1である。Ar、s、R1及びR2は、前記と同義である。)
  11. 成分(c)が、ヒンダードフェノール系化合物であることを特徴とすることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の高分子電解質組成物。
  12. 成分(a)が、強酸基を有するブロックと、酸基を実質的に有さないブロックとからなるブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の高分子電解質組成物。
  13. 請求項1〜12の何れかに記載の高分子電解質組成物を用いてなることを特徴とする高分子電解質膜。
  14. 請求項13記載の高分子電解質膜を用いてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
JP2007007774A 2006-01-19 2007-01-17 高分子電解質組成物及びその用途 Expired - Fee Related JP4946453B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007007774A JP4946453B2 (ja) 2006-01-19 2007-01-17 高分子電解質組成物及びその用途

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006010824 2006-01-19
JP2006010824 2006-01-19
JP2007007774A JP4946453B2 (ja) 2006-01-19 2007-01-17 高分子電解質組成物及びその用途

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007217675A true JP2007217675A (ja) 2007-08-30
JP4946453B2 JP4946453B2 (ja) 2012-06-06

Family

ID=38495285

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007007774A Expired - Fee Related JP4946453B2 (ja) 2006-01-19 2007-01-17 高分子電解質組成物及びその用途

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4946453B2 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011049211A1 (ja) * 2009-10-22 2011-04-28 Jsr株式会社 側鎖にホスホン酸基を含む芳香環を有するポリアリーレン系共重合体
JP2011514635A (ja) * 2008-03-07 2011-05-06 ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー イオン伝導性メンブラン構造
JP2011108640A (ja) * 2009-10-22 2011-06-02 Honda Motor Co Ltd 固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体
WO2012026623A1 (ja) * 2010-08-27 2012-03-01 住友化学株式会社 高分子電解質組成物および高分子電解質膜
US8854574B2 (en) 2007-08-23 2014-10-07 Citizens Electronics Co., Ltd. Film-shaped lightguide plate unit, planar light unit, display apparatus and electronic device
WO2015083544A1 (ja) * 2013-12-02 2015-06-11 ソニー株式会社 イオン交換膜、ポリマー素子、電子機器、カメラモジュールおよび撮像装置

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003201403A (ja) * 2002-01-09 2003-07-18 Jsr Corp 高分子電解質組成物およびプロトン伝導膜
JP2003282096A (ja) * 2002-01-15 2003-10-03 Toyota Motor Corp 高分子電解質組成物及びそれの用途
JP2004134294A (ja) * 2002-10-11 2004-04-30 Toyota Central Res & Dev Lab Inc 固体高分子電解質

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003201403A (ja) * 2002-01-09 2003-07-18 Jsr Corp 高分子電解質組成物およびプロトン伝導膜
JP2003282096A (ja) * 2002-01-15 2003-10-03 Toyota Motor Corp 高分子電解質組成物及びそれの用途
JP2004134294A (ja) * 2002-10-11 2004-04-30 Toyota Central Res & Dev Lab Inc 固体高分子電解質

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8854574B2 (en) 2007-08-23 2014-10-07 Citizens Electronics Co., Ltd. Film-shaped lightguide plate unit, planar light unit, display apparatus and electronic device
JP2011514635A (ja) * 2008-03-07 2011-05-06 ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー イオン伝導性メンブラン構造
WO2011049211A1 (ja) * 2009-10-22 2011-04-28 Jsr株式会社 側鎖にホスホン酸基を含む芳香環を有するポリアリーレン系共重合体
JP2011108640A (ja) * 2009-10-22 2011-06-02 Honda Motor Co Ltd 固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体
JPWO2011049211A1 (ja) * 2009-10-22 2013-03-14 Jsr株式会社 側鎖にホスホン酸基を含む芳香環を有するポリアリーレン系共重合体
WO2012026623A1 (ja) * 2010-08-27 2012-03-01 住友化学株式会社 高分子電解質組成物および高分子電解質膜
WO2015083544A1 (ja) * 2013-12-02 2015-06-11 ソニー株式会社 イオン交換膜、ポリマー素子、電子機器、カメラモジュールおよび撮像装置
CN105934467A (zh) * 2013-12-02 2016-09-07 迪睿合株式会社 离子交换膜、聚合物元件、电子设备、照相机模块及摄像装置
JPWO2015083544A1 (ja) * 2013-12-02 2017-03-16 デクセリアルズ株式会社 イオン交換膜、ポリマー素子、電子機器、カメラモジュールおよび撮像装置
US10351684B2 (en) 2013-12-02 2019-07-16 Dexerials Corporation Ion exchange membrane, polymer element, electronic apparatus, camera module, and imaging device

Also Published As

Publication number Publication date
JP4946453B2 (ja) 2012-06-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10026983B2 (en) Polymer electrolyte material, polymer electrolyte molded product using the polymer electrolyte material and method for manufacturing the polymer electrolyte molded product, membrane electrode composite, and solid polymer fuel cell
KR100933647B1 (ko) 고분자 전해질 조성물 및 이의 용도
JP4440534B2 (ja) 高分子電解質組成物及びそれの用途
US20060257706A1 (en) Polymer electrolyte composition and fuel cell
JP5028828B2 (ja) ポリアリーレン系ブロック共重合体及びその用途
USRE42299E1 (en) Polymer comprising terminal sulfonic acid group, and polymer electrolyte and fuel cell using the same
JP4946453B2 (ja) 高分子電解質組成物及びその用途
JP2006339065A (ja) プロトン伝導性高分子膜およびその製造方法およびそれを用いた燃料電池
JP2007517923A (ja) 1種以上の疎水性オリゴマーを含有するイオン伝導性コポリマー
US20070166591A1 (en) Polymer electrolyte composition and application thereof
JP2003151346A (ja) 高分子電解質組成物及びその用途
US20090269645A1 (en) Polymer, polymer electrolyte and fuel cell using the same
US20040138387A1 (en) Block copolymer and use thereof
JP3748875B2 (ja) プロトン伝導性高分子、前記高分子を含むプロトン伝導性高分子膜、その製造方法及びその高分子膜を採用した燃料電池
JP5266691B2 (ja) ポリマー、高分子電解質およびそれを用いてなる燃料電池
KR100581753B1 (ko) 연료전지용 폴리트리아졸 전해질막 및 이의 제조방법
KR102463011B1 (ko) 연료 전지용 고분자 전해질 막, 이를 포함하는 연료전지용 막-전극 어셈블리 및 연료 전지
JP4742664B2 (ja) イオン性基を有するポリマー、高分子電解質材料および高分子電解質型燃料電池
JP2007115476A (ja) 燃料電池用電解質
KR20080015020A (ko) 이온-전도성 코폴리머 및 비-이온성 폴리머를 포함하는폴리머 블랜드
JP2011018613A (ja) 固体高分子電解質膜およびその製造方法、液状組成物

Legal Events

Date Code Title Description
RD05 Notification of revocation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7425

Effective date: 20080201

RD05 Notification of revocation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7425

Effective date: 20080516

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20091127

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20111019

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111025

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111214

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120207

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120220

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150316

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150316

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees