JP2007212356A - 物性値算出方法、物性値算出プログラム、および、コンピュータ読取可能な記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】未知の物質の飽和蒸気圧および活量係数を容易に算出できるようにする。
【解決手段】シミュレーション装置は、実験データに基づいて混合溶液中の各物質の気相および液相のモル分率を決定し(S10)、適宜決定した定数を利用しNRTL式およびAntoine式に従って各物質についての活量係数と飽和蒸気圧を暫定的に算出し(S20〜S50)、そして、算出結果である活量係数および飽和蒸気圧と上記の液相のモル分率を利用して各物質の気相のモル分率(yi(cal))を算出する(S60〜S80)。そして、実験データに基づいて決定した気相のモル分率(yi(exp))とyi(cal)から各物質についての△yiを算出し、混合溶液内のすべての物質の△yiの総和が所定の条件を満足すれば、そのときに利用した各物質についての定数を、各物質の飽和蒸気圧および活量係数を算出するための式の定数として出力する(S110)。
【選択図】図2
【解決手段】シミュレーション装置は、実験データに基づいて混合溶液中の各物質の気相および液相のモル分率を決定し(S10)、適宜決定した定数を利用しNRTL式およびAntoine式に従って各物質についての活量係数と飽和蒸気圧を暫定的に算出し(S20〜S50)、そして、算出結果である活量係数および飽和蒸気圧と上記の液相のモル分率を利用して各物質の気相のモル分率(yi(cal))を算出する(S60〜S80)。そして、実験データに基づいて決定した気相のモル分率(yi(exp))とyi(cal)から各物質についての△yiを算出し、混合溶液内のすべての物質の△yiの総和が所定の条件を満足すれば、そのときに利用した各物質についての定数を、各物質の飽和蒸気圧および活量係数を算出するための式の定数として出力する(S110)。
【選択図】図2
Description
本発明は、物性値算出方法に関し、特に、飽和蒸気圧および活量係数を算出する物性値算出方法、物性値算出プログラム、および、コンピュータ読取可能な記録媒体に関する。
物質の飽和蒸気圧とは、当該物質の液相と蒸気とが一定温度において平衡状態にあるときに得られる当該物質の一定の蒸気圧力である。そして、このような物質の飽和蒸気圧は、たとえば、非特許文献1にも記載されるように、当該物質を蒸留操作によって分離および/または精製する際に、気相と液相の平衡状態での関係を考慮するために必要とされる、重要な物性値である。
従来から、混合液における気相と液相の平衡関係は、非特許文献2等に示されるように、以下に示す低圧気液平衡の式に基づいて求めることができる。
yipT=γixipi sat(T)
なお、上記の式中で、iは混合液中の各物質を特定するための変数であり、yiは気相中の物質iのモル分率であり、pTは或る温度Tにおける全圧であり、γiは物質iの活量係数であり、xiは液相中の物質iのモル分率であり、そして、pi sat(T)は或る温度Tでの物質iの飽和蒸気圧である。
なお、上記の式中で、iは混合液中の各物質を特定するための変数であり、yiは気相中の物質iのモル分率であり、pTは或る温度Tにおける全圧であり、γiは物質iの活量係数であり、xiは液相中の物質iのモル分率であり、そして、pi sat(T)は或る温度Tでの物質iの飽和蒸気圧である。
つまり、ユーザは、混合液の中から物質iを単離する際には、当該物質iのγiとpi sat(T)が得られれば、上記の式に従って、ある圧力、ある温度での物質iの液相組成(xi)および気相組成(yi)を得ることができる。
物質の飽和蒸気圧は、一般に、非特許文献3等に示されるように、Antoineの式やWagnerの式、Front−Kalkwarfの式に基づいて求めることができる。ここでは、一例として、Antoineの式を式(1)として示す。
式(1)では、飽和蒸気圧はpsatで示され、また、A,B,Cは物質ごとに決められる定数であり、Tは絶対温度(K)である。
また、活量係数は、一般に、非特許文献4等に示されるように、2成分系であれば、Margules式、Van Laar式、Wilson式、NRTL(Non Random Two−Liquid)式等に基づいて、また、多成分系であればWilson式、NRTL式、UNIQUAC式等に基づいて、求めることができる。ここでは、一例として、多成分系のNRTL式を式(7)として示す。式(7)では、活量係数はγiで示されている。iとは多成分系の中で活量係数を求める対象となる物質に対応した記号であり、jは多成分系の中のそれ以外の物質に対応した記号である。また、式(2)〜式(6)には、式(7)で利用される定数であるGij、Gji、τij、τji、αij、αji、gij、gjj、gji、giiの各値の定義が示されている。
上記した式(1)および式(7)等のような式を利用して活量係数を求めようとする場合、まず、各式で利用される定数を決定する必要がある。定数は、一般的には、まず、所定の物質(液相)を、密閉容器において所定の温度で平衡状態とし、当該容器中の液相および気相のそれぞれにおける所定の物質のモル分率を求め、その値に合うように活量係数の計算値を収束させることによって、決定されることが考えられる。
ただし、従来、多成分系の場合、混合溶液中の全ての物質の活量係数を求めるためには、2成分の組み合わせごとに液相や気相でのモル分率自体を求めた上で、推算や実験をすることによって定数および活量係数を決定しなければならず、実用的にこれらを求めることは困難であった。
また、混合溶液中の全ての物質の飽和蒸気圧を求めるには、まず、純物質を単離してその飽和蒸気圧を求めなければならず、多成分系の中に未知物質が存在する場合、通常、単離された当該未知物質は入手困難であることから、当該物質を含む混合溶液中のすべての物質の飽和蒸気圧を求めることは困難であった。
液相や気相でのモル分率は、対象となる物質の単離が可能であれば、容易に得られると考えられる。しかしながら、単離のために必要な飽和蒸気圧等の物性値が、単離を行なわないと得られないという問題があった。
本発明は、かかる実情に鑑み考えだされたものであり、その目的は、未知の物質を含む混合溶液において、当該未知の物質の飽和蒸気圧および活量係数を容易に算出できるようにすることである。
本発明に従った物性値算出方法は、物質の飽和蒸気圧および活量係数を算出するための物性値算出方法であって、特定の物性値が既知の基準物質を含み密閉容器内で気液平衡状態にされた混合溶液について、前記基準物質の前記特定の物性値に基づいて、前記混合溶液に含まれる各物質の液相および気相のモル分率を決定するモル分率決定ステップと、前記モル分率決定ステップで決定した前記混合溶液に含まれる各物質の液相および気相のモル分率を、前記混合溶液の温度と関連付けて記憶するステップと、第1の定数群を含み温度と飽和蒸気圧の相関式である第1の相関式に基づいて前記混合溶液内の各物質の暫定的な飽和蒸気圧を算出する飽和蒸気圧算出ステップと、第2の定数群を含み温度と液相のモル分率の相関式である第2の相関式に基づいて前記混合溶液内の各物質の暫定的な活量係数を算出する活量係数算出ステップと、前記活量係数算出ステップで算出した暫定的な活量係数、前記飽和蒸気圧算出ステップで算出した暫定的な飽和蒸気圧、および、前記モル分率決定ステップで決定した前記混合溶液内の各物質の液相のモル分率に基づいて、前記密閉容器内の気液平衡状態での前記混合溶液内の各物質の分圧を算出する分圧算出ステップと、前記分圧算出ステップで算出した分圧に基づいて、前記密閉容器内の気相の全圧を算出する全圧算出ステップと、前記分圧算出ステップで算出した各物質の分圧と前記全圧算出ステップで算出した気相の全圧に基づいて、前記所定の温度での前記密閉容器内の前記混合溶液内の各物質の気相のモル分率を算出する気相モル分率算出ステップと、前記モル分率決定ステップで決定した気相のモル分率と前記気相モル分率算出ステップで算出した気相のモル分率が所定の条件を満たしているか否かを判断する判断ステップと、前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていると判断した場合に、前記暫定的な活量係数の算出に利用した第1の定数群を前記所定の物質に関する前記所定の温度での前記第1の相関式に利用される定数群として出力し、かつ、前記暫定的な飽和蒸気圧の算出に利用した第2の定数群を前記所定の物質についての第2の相関式に利用される定数群として出力する、定数群出力ステップとを含むことを特徴とする。
また、本発明に従った物性値算出方法では、前記活量係数算出ステップおよび前記飽和蒸気圧算出ステップは、前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていないと判断した場合に、前記第1の定数群および前記第2の定数群の少なくとも一方に代入する値を変更して、前記混合溶液内の各物質の前記暫定的な飽和蒸気圧および前記暫定的な活量係数を再度算出し、前記分圧算出ステップ、前記全圧算出ステップ、および、前記気相モル分率算出ステップは、前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていないと判断した場合に、再度算出された前記暫定的な飽和蒸気圧および前記暫定的な活量係数に基づいて、前記混合溶液内の各物質の分圧、前記混合溶液内の気相の全圧、および、前記混合溶液内の各物質の気相のモル分率を算出し、前記判断ステップは、前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていないと判断した場合に、前記モル分率決定ステップで決定した気相のモル分率と前記気相モル分率算出ステップで再度算出された前記気相のモル分率が所定の条件を満たしているか否かを判断することが好ましい。
また、本発明に従った物性値算出方法では、前記モル分率決定ステップは、前記密閉容器内の気液平衡状態にある前記混合溶液の液相および気相のガスクロマトグラフの入力を受付けるステップと、前記密閉容器内で気液平衡状態にある前記混合溶液の液相および気相のガスクロマトグラフにおいて各ピークの面積を算出するステップと、前記液相および気相のガスクロマトグラフの前記基準物質に対応するピーク以外のピークに対応する成分のマススペクトルに基づいて、前記混合溶液内の各物質の分子量を決定するステップと、前記ガスクロマトグラフにおける各ピークの面積と前記決定された前記混合溶液内の各物質の分子量とに基づいて、前記所定の物質の液相のモル分率および気相のモル分率を決定するステップとを含むことが好ましい。
また、本発明に従った物性値算出方法では、前記第1の定数群を含む温度と飽和蒸気圧との相関式は、飽和蒸気圧をpsatとし、第1の定数群をA、B、および、Cとし、前記所定の温度の絶対温度をTとした場合に、式(1)で表されることが好ましい。
また、本発明に従った物性値算出方法では、前記第2の定数群を含む温度と液相のモル分率との相関式は、前記所定の物質を含む溶液がN個の物質を含み、前記所定の物質iの活量係数をγiとし、前記N個の物質の中の前記所定の物質以外の物質を物質jとし、Tを気体定数とし、xを各物質の前記所定の物質を含む溶液の中のモル分率とし、物質jと物質iに関する前記第2の定数群であるGij、Gji、τij、τji、αij、αji、gij、gjj、gji、giiをそれぞれ次の式(2)〜(6)で表されるものとした場合に、式(7)で表されることが好ましい。
本発明に従った物性値算出プログラムは、物質の飽和蒸気圧および活量係数を算出するための物性値算出プログラムであって、コンピュータに、特定の物性値が既知の基準物質を含み密閉容器内で気液平衡状態にされた混合溶液について、前記基準物質の前記特定の物性値に基づいて、前記混合溶液に含まれる各物質の液相および気相のモル分率を決定するモル分率決定ステップと、前記モル分率決定ステップで決定した前記混合溶液に含まれる各物質の液相および気相のモル分率を、前記混合溶液の温度と関連付けて記憶するステップと、第1の定数群を含み温度と飽和蒸気圧の相関式である第1の相関式に基づいて前記混合溶液内の各物質の暫定的な飽和蒸気圧を算出する飽和蒸気圧算出ステップと、第2の定数群を含み温度と液相のモル分率の相関式である第2の相関式に基づいて前記混合溶液内の各物質の暫定的な活量係数を算出する活量係数算出ステップと、前記活量係数算出ステップで算出した暫定的な活量係数、前記飽和蒸気圧算出ステップで算出した暫定的な飽和蒸気圧、および、前記モル分率決定ステップで決定した前記混合溶液内の各物質の液相のモル分率に基づいて、前記密閉容器内の気液平衡状態での前記混合溶液内の各物質の分圧を算出する分圧算出ステップと、前記分圧算出ステップで算出した分圧に基づいて、前記密閉容器内の気相の全圧を算出する全圧算出ステップと、前記分圧算出ステップで算出した各物質の分圧と前記全圧算出ステップで算出した気相の全圧に基づいて、前記所定の温度での前記密閉容器内の前記混合溶液内の各物質の気相のモル分率を算出する気相モル分率算出ステップと、前記モル分率決定ステップで決定した気相のモル分率と前記気相モル分率算出ステップで算出した気相のモル分率が所定の条件を満たしているか否かを判断する判断ステップと、前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていると判断した場合に、前記暫定的な活量係数の算出に利用した第1の定数群を前記所定の物質に関する前記所定の温度での前記第1の相関式に利用される定数群として出力し、かつ、前記暫定的な飽和蒸気圧の算出に利用した第2の定数群を前記所定の物質についての第2の相関式に利用される定数群として出力する、定数群出力ステップとを実行させることを特徴とする。
また、本発明に従った物性値算出プログラムでは、前記活量係数算出ステップおよび前記飽和蒸気圧算出ステップは、前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていないと判断した場合に、前記第1の定数群および前記第2の定数群の少なくとも一方に代入する値を変更して、前記混合溶液内の各物質の前記暫定的な飽和蒸気圧および前記暫定的な活量係数を再度算出し、前記分圧算出ステップ、前記全圧算出ステップ、および、前記気相モル分率算出ステップは、前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていないと判断した場合に、再度算出された前記暫定的な飽和蒸気圧および前記暫定的な活量係数に基づいて、前記混合溶液内の各物質の分圧、前記混合溶液内の気相の全圧、および、前記混合溶液内の各物質の気相のモル分率を算出し、前記判断ステップは、前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていないと判断した場合に、前記モル分率決定ステップで決定した気相のモル分率と前記気相モル分率算出ステップで再度算出された前記気相のモル分率が所定の条件を満たしているか否かを判断することが好ましい。
また、本発明に従った物性値算出プログラムでは、前記モル分率決定ステップは、前記密閉容器内の気液平衡状態にある前記混合溶液の液相および気相のガスクロマトグラフの入力を受付けるステップと、前記密閉容器内で気液平衡状態にある前記混合溶液の液相および気相のガスクロマトグラフにおいて各ピークの面積を算出するステップと、前記液相および気相のガスクロマトグラフの前記基準物質に対応するピーク以外のピークに対応する成分のマススペクトルに基づいて、前記混合溶液内の各物質の分子量を決定するステップと、前記ガスクロマトグラフにおける各ピークの面積と前記決定された前記混合溶液内の各物質の分子量とに基づいて、前記所定の物質の液相のモル分率および気相のモル分率を決定するステップとを含むことが好ましい。
また、本発明に従った物性値算出プログラムでは、前記第1の定数群を含む温度と飽和蒸気圧との相関式は、飽和蒸気圧をpsatとし、第1の定数群をA、B、および、Cとし、前記所定の温度の絶対温度をTとした場合に、式(1)で表されることが好ましい。
また、本発明に従った物性値算出プログラムでは、前記第2の定数群を含む温度と液相のモル分率との相関式は、前記所定の物質を含む溶液がN個の物質を含み、前記所定の物質iの活量係数をγiとし、前記N個の物質の中の前記所定の物質以外の物質を物質jとし、Tを気体定数とし、xを各物質の前記所定の物質を含む溶液の中のモル分率とし、物質jと物質iに関する前記第2の定数群であるGij、Gji、τij、τji、αij、αji、gij、gjj、gji、giiをそれぞれ次の式(2)〜(6)で表されるものとした場合に、式(7)で表されることが好ましい。
本発明に従ったコンピュータ読取可能な記録媒体は、上記した物性値算出プログラムを記録していることを特徴とする。
本発明によれば、飽和蒸気圧が未知の物質を含む混合溶液についての物性の測定結果を利用することによって、種々の値の算出や種々の判断を行なうことによって、当該未知の物質についての飽和蒸気圧および活量係数を算出するための式の定数を得ることができる。これにより、未知の物質の飽和蒸気圧および活量係数を決定することができる。つまり、本発明によれば、未知の物質を含む混合溶液において、当該混合溶液から未知の物質を単離することなく、当該未知の物質の飽和蒸気圧および活量係数を算出できる。
図1は、本実施の形態において物性値の算出を行なうための装置(シミュレーション装置)のブロック図である。シミュレーション装置は、当該装置の全体的な動作を制御するCPU(central processing unit)11、CPU11の動作プログラムを含む種々の情報を記憶するハードディスク(HD)13、外部から挿入されるCD−ROM(compact disc read only memory)やDVD(Digital Versatile Disk)等のディスク100に記憶された情報を読取るディスクドライブ14、CPU11のワークエリアとなるRAM(random access memory)15、ユーザからの情報の入力を受付ける入力部16、および、液晶ディスプレイ等で構成される表示部18を備えている。CPU11は、入出力インターフェイス(I/O)12を介して、HD13、ROM14、RAM15、入力部16、データベース17、および、表示部18と接続されている。
CPU11は、HD13に記憶されているプログラムを実行することもできるし、ディスク100等、シミュレーション装置から着脱可能な記録媒体に記録されたプログラムを実行することもできる。
図1に示されたシミュレーション装置は、混合溶液中の各物質について飽和蒸気圧と活量係数とを決定する処理(物性値算出処理)を実行する。ここで、このような処理について、当該処理のフローチャートである図2を参照しつつ説明する。なお、シミュレーション装置では、上記混合溶液中の各物質について物性値算出処理を実行することにより、各物質の飽和蒸気圧が算出される。そして、この混合溶液における各物質の活量係数を求めることができる。
物性値算出処理が実行される際には、分子量および飽和蒸気圧を求める式についての定数(本実施の形態では、Antoine式の定数A〜C)が既知である物質(以下、基準物質と呼ぶ)を含む混合溶液が準備される。そして、当該混合溶液中の基準物質を含む各物質の液相および気相のモル分率を算出するために、当該混合溶液が気液平衡状態にされて、当該混合溶液の気相および液相のガスクロマトグラフが測定される。
また、物性値算出処理では、上記の混合溶液の各物質について、暫定的な飽和蒸気圧が算出される。この飽和蒸気圧の算出には、たとえば式(1)として示すAntoineの式を利用できる。
式(1)では、飽和蒸気圧はpsatで示されている。また、A,B,Cは物質ごとに決められる定数であり、Tは絶対温度(K)である。
物性値算出処理では、上記の混合溶液中の各物質について、後述する所定の条件が成立するまで、パラメータA〜Cの値を変更して暫定的な飽和蒸気圧の算出が繰り返される。ここで、定数A〜Cの初期値は特に限定されないが、Antoineの式の場合、たとえば、Aは0〜5000程度、Bは−5000〜0程度、Cは0〜5000程度である。そして、所定の条件が成立すると、当該条件が成立したときに利用されたA〜Cが、対応する物質についてのA〜Cとされる。
なお、本発明では、飽和蒸気圧の算出に利用できる式はAntoineの式に限定されない。Wagnerの式や、Front−Kalkwarfの式等の、他の式に基づいて算出されても良い。本発明によれば、後述する所定の条件が成立するまで、混合溶液中の各物質について、飽和蒸気圧を算出するための式(Antoineの式に限定されない)における定数に代入する値を変えることによって暫定的な飽和蒸気圧の算出が繰り返される。そして、所定の条件が成立すると、シミュレーション装置は、そのときに利用されていた定数の値を、その物質の飽和蒸気圧を算出するための式に利用される定数の値として出力する。
また、物性値算出処理では、上記の混合溶液中の各物質について、後述する所定の条件が成立するまで、算出の条件を変えて、暫定的な活量係数の算出が繰り返される。活量係数の算出には、たとえば、式(7)として示されるNRTL式が利用される。
式(7)では、活量係数はγiで示されている。iとは多成分系の中で活量係数を求める対象となる物質に対応した記号であり、jは多成分系の中のそれ以外の物質に対応した記号である。また、式(2)〜式(6)には、式(7)で利用される定数であるGij、Gji、τij、τji、αij、αji、gij、gjj、gji、giiの各値の定義が示されている。
ここで、bij=gij−gjj、かつ、bji=gji−giiであり、さらに式(6)から、NRTL式では、定数は、bij、bji、αijの3種類と考えることができる。上記したように暫定的な活量係数の算出が繰り返される際、算出の条件として、この3種類の定数の値が変更される。そして、所定の条件が成立すると、シミュレーション装置は、そのときに定数に代入されていた値を、その物質についての活量係数を算出するための定数として出力する。
また、式(7)では、xiは混合溶液についての物質iの液相のモル分率を示す。また、本明細書では、yiは混合溶液についての物質iの気相のモル分率を示す。
本発明では、活量係数の算出に利用する式はNRTL式に限定されない。Margules式、Van Laar式、Wilson式、Wilson式、UNIQUAC式等の他の式に基づいて算出されても良い。つまり、本発明によれば、所定の条件が成立するまで、活量係数を算出するための式(NRTL式に限定されない)が利用されて暫定的な活量係数の算出が繰り返される。なお、暫定的な活量係数の算出が繰り返される際には、当該式の定数として代入する値が変更される。そして、所定の条件が成立すると、シミュレーション装置は、そのときに定数に代入されていた値を、その物質についての活量係数を算出するための定数として出力する。
図2を参照して、物性値算出処理では、CPU11は、まずステップS10で、上記した混合溶液中の各物質の液相のモル分率xiおよび気相のモル分率yiを算出する。ここでのモル分率は、たとえば、密閉容器内で気液平衡状態にある混合溶液の液相および気相のガスクロマトグラフから算出される。
具体的には、混合溶液の液相のガスクロマトグラフから、対象となる物質の面積百分率組成xAIを算出して、その値をxiに決定し、また、混合溶液の気相のガスクロマトグラフから、対象となる物質の面積百分率組成yAIを算出して、その値をyiに決定する。なお、ここで算出される気相のモル分率yiは、混合溶液について実験的に求められる値である。一方、本実施の形態では、後述するように、Antoine式およびNRTL式に基づいて暫定的に算出されるyiの計算値が得られる。そこで、本明細書では、2つのyiを区別するために、ステップS10において実験的に求められるyiを適宜yi(exp)と記述し、暫定的に算出されるyiの計算値をyi(cal)と記述する。
液相のモル分率xiおよび気相のモル分率yiの算出について、さらに具体的に説明する。CPU11は、面積百分率組成xAIおよび面積百分率組成yAIをそれぞれ以下の式(8)および式(9)に基づいて算出する。
式(8)において、Axi,Axjは、それぞれi,jで特定される物質の混合溶液の液相のガスクロマトグラフの面積百分率であり、Mwi,Mwjは、それぞれi,jで特定される物質の分子量である。なお、物質の分子量は、未知の場合には、たとえば、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC−MC)において、ガスクロマトグラフの各ピークに対応するマススペクトルから、求めることができる。また、式(9)において、Ayi,Ayjは、それぞれi,jで特定される物質の混合溶液の気相のガスクロマトグラフの面積百分率であり、Mwi,Mwjは、それぞれi,jで特定される物質の分子量である。
また、本実施の形態では、測定対象となる混合溶液を、気液平衡状態として、気相と液相を導入することから、このような導入が可能なヘッドスペース試料導入装置を具備したガスクロマトグラフ装置を利用されることが好ましい。なお、本実施の形態のシミュレーション装置では、混合溶液の液相および気相についてのガスクロマトグラフおよびマススペクトル(の測定結果)が入力されればよく、必ずしも、ガスクロマトグラフ質量分析装置等の測定用の装置に直接的に接続されている必要はない。また、本実施の形態では、シミュレーション装置は、少なくとも混合溶液の液相および気相の各物質のモル分率を決定できればよく、決定の方法は、ガスクロマトグラフによるものに限定されない。
次に、CPU11は、ステップS20で、NRTL式の定数(上記したbij、bji、αij)を決定する。なお、この場合、定数は、初回には、予め定められた値またはユーザによって入力された値に決定され、それ以降(後述するステップS100におけるNO判断時に、処理が戻された際)には、たとえば収束関数等が利用されることによって、それまで決定された値から適宜変更されるように、決定される。
そして、CPU11は、ステップS30で、直前に実行したステップS20において決定した定数を利用して、物質iの活量係数γiを算出する。
次に、CPU11は、ステップS40で、Antoine式の定数(上記したA,B,C)を決定する。なお、この場合、定数は、初回には、予め定められた値またはユーザによって入力された値に決定され、それ以降(後述するステップS100におけるNO判断時に、処理が戻された際)には、たとえば収束関数等が利用されることによって、それまで決定された値から適宜変更されるように、決定される。
そして、CPU11は、ステップS50で、直前に実行したステップS40において決定した定数を利用して、物質iの飽和蒸気圧pi satを算出する。
次に、CPU11は、ステップS60で、ステップS30で算出した活量係数γi、ステップS50で算出した飽和蒸気圧pi sat、および、ステップS10で決定した液相のモル分率xiを利用し、上記した低圧気液平衡の式に基づいて、物質iの分圧piを算出する。
次に、CPU11は、ステップS70で、ステップS60と同様に混合溶液中のすべての物質の気相での分圧を算出し、それらの総和(全圧pT)を算出する。
次に、CPU11は、ステップS80で、ステップS60で算出したpiとステップS70で算出したpTを利用して、物質iの気相の分圧の計算値(yi(cal))を算出する。
次に、偏差を算出する。具体的には、CPU11は、ステップS90で、ステップS10で決定したyi(yi(exp))とステップS80で算出したyi(cal)の差(絶対値)のyi(cal)に対する割合(△yi)を算出する。なお、本発明において、偏差の算出方法はこれに限定されない。たとえば、最小二乗法やニュートン法等の他の方法が利用されても良い。
そして、CPU11は、ステップS100で、ステップS90で算出した△yiが予め定められた設定値以下であるか否かを判断し、そうであればステップS110でそのときに利用していた、各物質についてのAntoine式の定数(A,B,C)、および、NRTL式についての各2物質間の定数(bij、bji、αij)を出力して、処理を終了する。一方、△yiが予め定められた設定値を越えている場合には、ステップS20へ処理を戻す。これにより、NRTL式やAntoine式に利用される定数が変更されて、再度、飽和蒸気圧pi satと活量係数γiの算出が行なわれる。
以上説明した本実施の形態では、まず、混合溶液中の各物質の気相および液相のモル分率が実験データ(ガスクロマトグラフ)に基づいて算出される(S10)。
次に、各物質について、モル分率と温度と活量係数の相関式(NRTL式)および温度と飽和蒸気圧の相関式(Antoine式)に利用される定数が適宜決定され、決定された定数と温度やモル分率(実験データに基づいて算出されたモル分率)がこれらの式に代入されることにより、暫定的に活量係数と飽和蒸気圧が算出される(S20〜S50)。なお、暫定的な活量係数と飽和蒸気圧の算出に用いられる温度は、混合溶液の温度である。
そして、算出結果である暫定的な活量係数および飽和蒸気圧と、混合溶液についての実験データから求められる各物質の液相のモル分率とが利用されて、混合溶液の各物質についての気相のモル分率の計算値(上記したyi(cal))が算出される(S60〜S80)。
なお、yi(cal)が算出される際には、まず、混合溶液中の各物質についての分圧が算出される(S60)。分圧piは、以下の式(10)で示す低圧気液平衡の式から導かれる式(11)に基づき、上記の暫定的な活量係数および飽和蒸気圧と実験データから求められた液相のモル分率が利用されて、算出される。
yipT=γixipi sat(T) …(10)
pi=γixipi sat(T) …(11)
そして、混合溶液内のすべての物質について算出された分圧piの和が算出されることによって、密閉容器内の全圧pTが算出され(S70)、各物質の全圧pTに対する分圧piの比として、yi(cal)が算出される(S80)。
pi=γixipi sat(T) …(11)
そして、混合溶液内のすべての物質について算出された分圧piの和が算出されることによって、密閉容器内の全圧pTが算出され(S70)、各物質の全圧pTに対する分圧piの比として、yi(cal)が算出される(S80)。
そして、上記した割合△yiが算出されて(S100)、割合△yiに対する判断がなされる。なお、割合△yiに対する判断は、混合溶液内のすべての物質のそれぞれに対して算出された割合△yiの総和に対して行なわれる。
そして、所定の条件が成立した割合△yiの算出に利用した各物質についての定数(A,B,C,bij,bji,αij)が、各物質の飽和蒸気圧および活量係数を算出するための式の定数として、出力される(S110)。
以上説明した本実施の形態では、所定の条件が成立するまで上記した割合△yiが算出されるが、本実施の形態のシミュレーション装置における割合△yiの算出の終了条件はこれに限定されない。シミュレーション装置は、ユーザ等によって指定される回数だけ上記した割合△yiを算出し、指定回数算出された割合△yiをそのとき利用した各物質についての定数(A,B,C,bij,bji,αij)の組とともにすべて記憶し、その中で所定の条件を満たす(たとえば、最小値)割合△yiを算出したときに利用した定数(A,B,C,bij,bji,αij)の組を、各物質についての定数として出力しても良い。
また、本実施の形態のシミュレーション装置は、定数を出力するとともに、当該定数を適宜記憶し、対応する物質の飽和蒸気圧や活量係数を算出しても良い。たとえば、出力される定数を利用し、対応する物質の温度が入力されることに応じて、Antoine式に基づいて当該入力された温度での飽和蒸気圧を算出する。また、出力される定数を利用し、2つの物質の混合溶液についてのモル分率と温度を入力されることにより、NRTL式に基づいて、これらの物質の活量係数を算出する。
本発明のシミュレーション装置による活量係数および飽和蒸気圧の算出の一実施例として、n−hexane(HAN),2−propanol(IPA),toluene(TOL),n−heptane(NHP)の4物質を含む混合溶液を用い、NHPのみの飽和蒸気圧が既知(Antoine式の定数(A,B,C)が既知)であるとして、他の物質のAntoine式の定数およびNRTL式の定数を求めた。
なお、表1に、4物質のAntoine式の定数(A,B,C)の文献値を示す。
また、表2に、4物質についてのNRTL式についての2物質間の定数の文献値を示す。なお、表2では、b12,b21は、それぞれ上記したbij,bjiを意味し、b12,b21の「1」とは表2中の(1)の欄に記載された物質を意味し、b12,b21の「2」とは表2中の(2)の欄に記載された物質を意味する。
まず、混合溶液として、表3〜表5に条件1〜条件98として示したような、温度および上記の4種類の物質の濃度が異なる98種類の混合溶液を準備し、これらのそれぞれについての液相および気相のクロマトグラフをシミュレーション装置に入力した。
これに応じて、シミュレーション装置は、この98種類の混合溶液のそれぞれについて、表3〜表5に示すような液相と気相の組成(モル分率)を算出し、RAM15に記憶する。
表3〜表5において、Eは常用対数を示している。つまり、表3中の「2.36E−01」とは、「0.236」を意味する。
次に、シミュレーション装置は、RAM15から各条件の液相のモル分率と温度を読出し、bij、bji、αijを適宜読出し、NRTL式に従って、それぞれの混合溶液内の各物質について、暫定的な活量係数を算出し、RAM15に記憶する。これにより、RAM15には、表6に示すようなγ101〜γ498が記憶される。
なお、γ101〜γ498は、それぞれ、活量係数の算出結果である数値を意味する。また、表6では、HANについての活量係数がγ101〜γ198で示され、IPAについての活量係数がγ201〜γ298で示され、TOLについての活量係数がγ301〜γ398で示され、NHPについての活量係数がγ401〜γ498で示されている。
また、γ101〜γ498の算出の際に読出されるbij、bji、αijは、混合溶液内の物質の2物質の組ごとに設定されたものである。つまり、混合溶液4種類の物質が含まれる場合には、2物質の組合わせが6種類考えられるため、bij、bji、αijの値の組は6種類の組合せに対して1組ずつ利用されることになる。
次に、シミュレーション装置は、RAM15から各条件の温度を読出し、A、B、Cを適宜読出し、Antoine式に従って、それぞれの混合溶液内の各物質についての暫定的な飽和蒸気圧を算出し、RAM15に記憶する。これにより、RAM15には、表7に示すようなpsat101〜psat498が記憶される。
なお、psat101〜psat498は、それぞれ、飽和蒸気圧の算出結果である数値を意味する。また、表7では、HANについての飽和蒸気圧がpsat101〜psat198で示され、IPAについての飽和蒸気圧がpsat201〜psat298で示され、TOLについての飽和蒸気圧がpsat301〜psat398で示され、NHPについての飽和蒸気圧がpsat401〜psat498で示されている。
次に、シミュレーション装置は、各条件について算出した暫定的な活量係数と飽和蒸気圧を読出し、クロマトグラフから求めた各条件での液相のモル分率を読出し、そして、上記した式(11)に従って、各条件での各物質の分圧を算出し、RAM15に記憶する。これにより、RAM15には、表8に示すようなp101〜p498が記憶される。
なお、p101〜p498は、それぞれ、分圧の算出結果である数値を意味する。また、表8では、HANについての分圧がp101〜p198で示され、IPAについての飽和蒸気圧がp201〜p298で示され、TOLについての飽和蒸気圧がp301〜p398で示され、NHPについての飽和蒸気圧がp401〜p498で示されている。
次に、シミュレーション装置は、各条件について、算出した各物質の分圧の総和(全圧pT)を算出し、RAM15に記憶する。これにより、条件1〜条件98のそれぞれについての全圧pTとして、表9に示すようなpT1〜pT98がRAM15に記憶される。
なお、pT1〜pT98は、それぞれ、全圧の算出結果である数値を意味する。
次に、シミュレーション装置は、上記のp101〜p498とpT1〜pT98を読出して、各条件での各物質の気相のモル分率を算出し、RAM15に記憶させる。これにより、RAM15には、表10に示すようなy(cal)101〜y(cal)498が記憶される。
次に、シミュレーション装置は、上記のp101〜p498とpT1〜pT98を読出して、各条件での各物質の気相のモル分率を算出し、RAM15に記憶させる。これにより、RAM15には、表10に示すようなy(cal)101〜y(cal)498が記憶される。
なお、y(cal)101〜y(cal)498は、それぞれ、気相のモル分率の算出結果である数値を意味する。また、表10では、HANについての気相のモル分率がy(cal)101〜y(cal)198で示され、IPAについての気相のモル分率がy(cal)201〜y(cal)298で示され、TOLについての気相のモル分率がy(cal)301〜y(cal)398で示され、NHPについての気相のモル分率がy(cal)401〜y(cal)498で示されている。
次に、シミュレーション装置は、クロマトグラフから算出した各物質の各条件での気相のモル分率(y(exp):表3〜表5参照)と上記のy(cal)101〜y(cal)498とを読出し、以下の式(12)に従って、各条件での各物質の△yを算出する。
これにより、RAM15には、表11に示すような△y101〜△y498が記憶される。
なお、△y101〜△y498は、それぞれ、算出結果である数値を意味する。また、表11では、HANについての算出結果が△y101〜△y198で示され、IPAについての算出結果が△y201〜△y298で示され、TOLについての算出結果が△y301〜△y398で示され、NHPについての算出結果が△y401〜△y498で示されている。
そして、シミュレーション装置は、△y101〜△y498の総和Σ△yを算出し、所定の条件が成立したか否かを判断する。所定の条件は、適宜ユーザ等によって設定可能なものであると考えられる。なお、たとえば、所定の条件が、総和Σ△yが予め定められた設定値以下となることとされれば、シミュレーション装置では、そのような判断がなされる。そして、シミュレーション装置は、所定の条件が成立したΣ△yを算出したときに利用していた定数(bij、bji、αij、A、B、C)を、混合溶液内の各物質の活量係数および飽和蒸気圧を求める式の定数であるとして出力する。
表12および表13に、シミュレーション装置が出力した各物質についての定数(A、B、C)および各2物質間の定数(bij、bji、αij)の一例を推算値として示す。
表1と表12の対応する各値を比較することにより、また、表2と表13の対応する各値を比較することにより理解されるように、本発明に従ったシミュレーション装置は、文献値に対して精度の高い推算値を出力できる。
本実施例では、気液平衡状態にある混合溶液についてその温度と各物質の気相および液相のモル分率が実験データに基づいて求められると、それらを用い、そして、適宜NRTL式の定数(bij、bji、αij)が定められることによって暫定的に活量係数が算出され、さらに、適宜Antoine式の定数(A,B,C)が定められることによって飽和蒸気圧が算出される。そして、これらの算出結果と実験データに基づいて求められた気相および液相のモル分率とによってΣ△yが求められて、所定の条件が成立したかどうかの判断がなされる。そして、所定の条件が成立すれば、その時点で利用されていた定数が、各式の定数として出力される。なお、暫定的な活量係数の算出と暫定的な飽和蒸気圧の算出については、たとえば、マイクロソフト(登録商標)社のソフトウェアであるエクセル(登録商標)のソルバーという機能によって実現されるような、利用される定数が適宜変更される回帰計算が行なわれる。
なお、暫定的な活量係数と飽和蒸気圧を算出することによって行なわれるΣ△yの算出は、当該Σ△yが所定の設定値以下となる回帰条件が成立するまで実行されても良いし、または、ユーザ等によって指定された回数だけ実行されても良い。指定された回数実行される場合には、シミュレーション装置は、各回で算出したΣ△yをRAM15に蓄積し、そして、Σ△yの最小値が算出されたときに各式に利用した定数を、混合溶液の各物質についての定数として出力する。
以上説明した実施例では、すべての条件のすべての物質について、活量係数が算出された後で飽和蒸気圧が算出されたが、本発明はこれに限定されない。これらの値は、△yiを算出するために算出されるものであるため、算出される順番は問われない。つまり、たとえば、条件の番号順に、活量係数と飽和蒸気圧が算出されても良い。
以上説明した実施例では、混合溶液を構成する複数の物質の中の、少なくとも1つの物質は、分子量および飽和蒸気圧を算出するための式に用いる定数(A,B,C)が既知である必要がある。そして、上記の計算が行なわれる際には、この物質についての定数(A,B,C)が固定値として代入されている。
混合溶液中に、分子量および飽和蒸気圧が既知の物質が含まれていない場合には、そのような物質を混合溶液中に添加し、当該物質が含まれた状態で、液相および気相の各物質のモル分率を算出し、上記の計算を行なえば良い。なお、添加される物質は、混合溶液中の各物質が著しい非理想性を示さないために、添加前に混合溶液を構成する物質と化学構造が類似していることが好ましい。また、添加される物質は、計算の精度を上げるために、添加前に混合溶液を構成する物質と蒸気圧が近いことが好ましい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
11 CPU、12 I/O、13 HD、14 ディスクドライブ、15 RAM、16 入力部、18 表示部、100 ディスク。
Claims (11)
- 物質の飽和蒸気圧および活量係数を算出するための物性値算出方法であって、
特定の物性値が既知の基準物質を含み密閉容器内で気液平衡状態にされた混合溶液について、前記基準物質の前記特定の物性値に基づいて、前記混合溶液に含まれる各物質の液相および気相のモル分率を決定するモル分率決定ステップと、
前記モル分率決定ステップで決定した前記混合溶液に含まれる各物質の液相および気相のモル分率を、前記混合溶液の温度と関連付けて記憶するステップと、
第1の定数群を含み温度と飽和蒸気圧の相関式である第1の相関式に基づいて前記混合溶液内の各物質の暫定的な飽和蒸気圧を算出する飽和蒸気圧算出ステップと、
第2の定数群を含み温度と液相のモル分率の相関式である第2の相関式に基づいて前記混合溶液内の各物質の暫定的な活量係数を算出する活量係数算出ステップと、
前記活量係数算出ステップで算出した暫定的な活量係数、前記飽和蒸気圧算出ステップで算出した暫定的な飽和蒸気圧、および、前記モル分率決定ステップで決定した前記混合溶液内の各物質の液相のモル分率に基づいて、前記密閉容器内の気液平衡状態での前記混合溶液内の各物質の分圧を算出する分圧算出ステップと、
前記分圧算出ステップで算出した分圧に基づいて、前記密閉容器内の気相の全圧を算出する全圧算出ステップと、
前記分圧算出ステップで算出した各物質の分圧と前記全圧算出ステップで算出した気相の全圧に基づいて、前記所定の温度での前記密閉容器内の前記混合溶液内の各物質の気相のモル分率を算出する気相モル分率算出ステップと、
前記モル分率決定ステップで決定した気相のモル分率と前記気相モル分率算出ステップで算出した気相のモル分率が所定の条件を満たしているか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていると判断した場合に、前記暫定的な活量係数の算出に利用した第1の定数群を前記所定の物質に関する前記所定の温度での前記第1の相関式に利用される定数群として出力し、かつ、前記暫定的な飽和蒸気圧の算出に利用した第2の定数群を前記所定の物質についての第2の相関式に利用される定数群として出力する、定数群出力ステップとを含む、物性値算出方法。 - 前記活量係数算出ステップおよび前記飽和蒸気圧算出ステップは、前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていないと判断した場合に、前記第1の定数群および前記第2の定数群の少なくとも一方に代入する値を変更して、前記混合溶液内の各物質の前記暫定的な飽和蒸気圧および前記暫定的な活量係数を再度算出し、
前記分圧算出ステップ、前記全圧算出ステップ、および、前記気相モル分率算出ステップは、前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていないと判断した場合に、再度算出された前記暫定的な飽和蒸気圧および前記暫定的な活量係数に基づいて、前記混合溶液内の各物質の分圧、前記混合溶液内の気相の全圧、および、前記混合溶液内の各物質の気相のモル分率を算出し、
前記判断ステップは、前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていないと判断した場合に、前記モル分率決定ステップで決定した気相のモル分率と前記気相モル分率算出ステップで再度算出された前記気相のモル分率が所定の条件を満たしているか否かを判断する、請求項1に記載の物性値算出方法。 - 前記モル分率決定ステップは、
前記密閉容器内の気液平衡状態にある前記混合溶液の液相および気相のガスクロマトグラフの入力を受付けるステップと、
前記密閉容器内で気液平衡状態にある前記混合溶液の液相および気相のガスクロマトグラフにおいて各ピークの面積を算出するステップと、
前記液相および気相のガスクロマトグラフの前記基準物質に対応するピーク以外のピークに対応する成分のマススペクトルに基づいて、前記混合溶液内の各物質の分子量を決定するステップと、
前記ガスクロマトグラフにおける各ピークの面積と前記決定された前記混合溶液内の各物質の分子量とに基づいて、前記所定の物質の液相のモル分率および気相のモル分率を決定するステップとを含む、請求項1または請求項2に記載の物性値算出方法。 - 物質の飽和蒸気圧および活量係数を算出するための物性値算出プログラムであって、
コンピュータに、
特定の物性値が既知の基準物質を含み密閉容器内で気液平衡状態にされた混合溶液について、前記基準物質の前記特定の物性値に基づいて、前記混合溶液に含まれる各物質の液相および気相のモル分率を決定するモル分率決定ステップと、
前記モル分率決定ステップで決定した前記混合溶液に含まれる各物質の液相および気相のモル分率を、前記混合溶液の温度と関連付けて記憶するステップと、
第1の定数群を含み温度と飽和蒸気圧の相関式である第1の相関式に基づいて前記混合溶液内の各物質の暫定的な飽和蒸気圧を算出する飽和蒸気圧算出ステップと、
第2の定数群を含み温度と液相のモル分率の相関式である第2の相関式に基づいて前記混合溶液内の各物質の暫定的な活量係数を算出する活量係数算出ステップと、
前記活量係数算出ステップで算出した暫定的な活量係数、前記飽和蒸気圧算出ステップで算出した暫定的な飽和蒸気圧、および、前記モル分率決定ステップで決定した前記混合溶液内の各物質の液相のモル分率に基づいて、前記密閉容器内の気液平衡状態での前記混合溶液内の各物質の分圧を算出する分圧算出ステップと、
前記分圧算出ステップで算出した分圧に基づいて、前記密閉容器内の気相の全圧を算出する全圧算出ステップと、
前記分圧算出ステップで算出した各物質の分圧と前記全圧算出ステップで算出した気相の全圧に基づいて、前記所定の温度での前記密閉容器内の前記混合溶液内の各物質の気相のモル分率を算出する気相モル分率算出ステップと、
前記モル分率決定ステップで決定した気相のモル分率と前記気相モル分率算出ステップで算出した気相のモル分率が所定の条件を満たしているか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていると判断した場合に、前記暫定的な活量係数の算出に利用した第1の定数群を前記所定の物質に関する前記所定の温度での前記第1の相関式に利用される定数群として出力し、かつ、前記暫定的な飽和蒸気圧の算出に利用した第2の定数群を前記所定の物質についての第2の相関式に利用される定数群として出力する、定数群出力ステップとを実行させる、物性値算出プログラム。 - 前記活量係数算出ステップおよび前記飽和蒸気圧算出ステップは、前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていないと判断した場合に、前記第1の定数群および前記第2の定数群の少なくとも一方に代入する値を変更して、前記混合溶液内の各物質の前記暫定的な飽和蒸気圧および前記暫定的な活量係数を再度算出し、
前記分圧算出ステップ、前記全圧算出ステップ、および、前記気相モル分率算出ステップは、前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていないと判断した場合に、再度算出された前記暫定的な飽和蒸気圧および前記暫定的な活量係数に基づいて、前記混合溶液内の各物質の分圧、前記混合溶液内の気相の全圧、および、前記混合溶液内の各物質の気相のモル分率を算出し、
前記判断ステップは、前記判断ステップで前記所定の条件を満たしていないと判断した場合に、前記モル分率決定ステップで決定した気相のモル分率と前記気相モル分率算出ステップで再度算出された前記気相のモル分率が所定の条件を満たしているか否かを判断する、請求項6に記載の物性値算出プログラム。 - 前記モル分率決定ステップは、
前記密閉容器内の気液平衡状態にある前記混合溶液の液相および気相のガスクロマトグラフの入力を受付けるステップと、
前記密閉容器内で気液平衡状態にある前記混合溶液の液相および気相のガスクロマトグラフにおいて各ピークの面積を算出するステップと、
前記液相および気相のガスクロマトグラフの前記基準物質に対応するピーク以外のピークに対応する成分のマススペクトルに基づいて、前記混合溶液内の各物質の分子量を決定するステップと、
前記ガスクロマトグラフにおける各ピークの面積と前記決定された前記混合溶液内の各物質の分子量とに基づいて、前記所定の物質の液相のモル分率および気相のモル分率を決定するステップとを含む、請求項6または請求項7に記載の物性値算出プログラム。 - 請求項6〜請求項10のいずれかに記載の物性値算出プログラムを記録した、コンピュータ読取可能な記録媒体。
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