JP2007211356A - カーボンナノファイバーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高品質のカーボンナノファイバーを生産性よく製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】アクリロニトリル系ポリマー等の熱炭化性ポリマーからなる炭素前駆体繊維から、凍結粉砕、擦過等により炭素前駆体繊維中のフィブリル間を物理的に引き離すことでフィブリルを分離して炭素前駆体フィブリルを得た後、該炭素前駆体フィブリルを焼成してカーボンナノファイバーを得る、カーボンナノファイバーの製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】アクリロニトリル系ポリマー等の熱炭化性ポリマーからなる炭素前駆体繊維から、凍結粉砕、擦過等により炭素前駆体繊維中のフィブリル間を物理的に引き離すことでフィブリルを分離して炭素前駆体フィブリルを得た後、該炭素前駆体フィブリルを焼成してカーボンナノファイバーを得る、カーボンナノファイバーの製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、カーボンナノファイバーの製造方法に関する。
カーボンナノファイバーとは、繊維状炭素のうち直径が102 nmのオーダー前後のものをいい、直径が101 nmのオーダー前後にまで小さくったものはカーボンナノチューブと呼ばれている(非特許文献1)。以下、カーボンナノチューブも含めて「カーボンナノファイバー」と総称する。
カーボンナノファイバーは、樹脂材料に導電性を付与したり、樹脂材料の機械的性質を向上したりする目的で添加するフィラーとして有用な材料である。また最近では、燃料電池の電極材料やガス吸蔵材料としても期待されている。
カーボンナノファイバーは、樹脂材料に導電性を付与したり、樹脂材料の機械的性質を向上したりする目的で添加するフィラーとして有用な材料である。また最近では、燃料電池の電極材料やガス吸蔵材料としても期待されている。
カーボンナノファイバーの製造方法としては、気相法(アーク放電法、レーザー昇華法、化学気相分解法)が知られている。しかし、気相法で得られたカーボンナノファイバーの内部には、金属触媒が残存するため、純度が低下する問題がある。
金属触媒の混入を避ける方法としては、紡糸技術により繊維状の熱炭化性ポリマーのドメインを得て、これを焼成することにより金属触媒を含まない高純度(高品質)のカーボンナノファイバーを得る方法(紡糸法)が提案されている。紡糸法によって得られるカーボンナノファイバーは、紡糸法カーボンナノファイバーと呼ばれている。
金属触媒の混入を避ける方法としては、紡糸技術により繊維状の熱炭化性ポリマーのドメインを得て、これを焼成することにより金属触媒を含まない高純度(高品質)のカーボンナノファイバーを得る方法(紡糸法)が提案されている。紡糸法によって得られるカーボンナノファイバーは、紡糸法カーボンナノファイバーと呼ばれている。
紡糸法としては、以下の方法が開示されている。
(1)炭素前駆体樹脂を熱分解消失性ポリマーに被覆したコアシェルポリマーを、熱分解消失性ポリマー中に分散し溶融紡糸することにより前駆体繊維を得た後、該前駆体繊維を炭素化することによりカーボンナノファイバーを得る方法(特許文献1)。
(2)熱可塑性樹脂と炭素前駆体有機化合物との混合物を紡糸して炭素繊維前駆体を得て、これを熱処理して炭素繊維安定化前駆体を得た後、熱可塑性樹脂を熱分解もしくは溶媒による溶解により除去し、熱可塑性樹脂を除去した炭素繊維安定化前駆体を炭素化することによりカーボンナノファイバーを得る方法(特許文献2)。
(1)炭素前駆体樹脂を熱分解消失性ポリマーに被覆したコアシェルポリマーを、熱分解消失性ポリマー中に分散し溶融紡糸することにより前駆体繊維を得た後、該前駆体繊維を炭素化することによりカーボンナノファイバーを得る方法(特許文献1)。
(2)熱可塑性樹脂と炭素前駆体有機化合物との混合物を紡糸して炭素繊維前駆体を得て、これを熱処理して炭素繊維安定化前駆体を得た後、熱可塑性樹脂を熱分解もしくは溶媒による溶解により除去し、熱可塑性樹脂を除去した炭素繊維安定化前駆体を炭素化することによりカーボンナノファイバーを得る方法(特許文献2)。
(1)、(2)の方法では、繊維状の熱炭化性ポリマーのドメインを得るために、ドメイン間に、熱分解消失性ポリマーや溶媒で溶解する熱可塑性樹脂を存在させて、ドメイン間に明瞭な距離または界面を持たせることが必要不可欠である。しかし、熱分解消失性ポリマー、熱可塑性樹脂等の炭素化しない物質を用いるため、炭素化収率が低く、生産性が低いという問題がある。
遠藤守信、「炭素nano構造のtailoring〜ナノカーボンと新機能〜」、炭素、炭素材料学会、2001年、No.200、p.202−205 特開2002−29719号公報
特開2004−176236号公報
遠藤守信、「炭素nano構造のtailoring〜ナノカーボンと新機能〜」、炭素、炭素材料学会、2001年、No.200、p.202−205
本発明の目的は、高品質のカーボンナノファイバーを生産性よく製造できる製造方法を提供することにある。
本発明のカーボンナノファイバーの製造方法は、熱炭化性ポリマーからなる炭素前駆体繊維からフィブリルを分離して炭素前駆体フィブリルを得る工程と、該炭素前駆体フィブリルを焼成する工程とを有することを特徴とする。
本発明のカーボンナノファイバーの製造方法においては、トータル延伸倍率が2.0〜20.0の炭素前駆体繊維を用いることが好ましい。
炭素前駆体繊維からフィブリルを分離する方法としては、(i)凍結粉砕により炭素前駆体繊維中のフィブリル間を物理的に引き離すことでフィブリルを分離する方法、または(ii)擦過により炭素前駆体繊維中のフィブリル間を物理的に引き離すことでフィブリルを分離する方法が好ましい。
本発明のカーボンナノファイバーの製造方法においては、トータル延伸倍率が2.0〜20.0の炭素前駆体繊維を用いることが好ましい。
炭素前駆体繊維からフィブリルを分離する方法としては、(i)凍結粉砕により炭素前駆体繊維中のフィブリル間を物理的に引き離すことでフィブリルを分離する方法、または(ii)擦過により炭素前駆体繊維中のフィブリル間を物理的に引き離すことでフィブリルを分離する方法が好ましい。
本発明のカーボンナノファイバーの製造方法によれば、高品質のカーボンナノファイバーを生産性よく製造できる。
本発明のカーボンナノファイバーの製造方法は、熱炭化性ポリマーからなる炭素前駆体繊維からフィブリルを分離して炭素前駆体フィブリルを得る工程(以下、分離工程と記す。)と、該炭素前駆体フィブリルを焼成する工程(以下、焼成工程と記す。)とを有する方法である。
「熱炭化性ポリマー」とは、焼成により炭素化されるポリマーである。熱炭化性ポリマーとしては、例えば、アクリロニトリル系ポリマー、セルロース類、ポリイミド類、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリジビニルベンゼン等が挙げられ、アクリル繊維の製造設備を転用でき、カーボンナノファイバーを生産性よく製造できる点から、アクリロニトリル系ポリマーが好ましい。
アクリロニトリル系ポリマーとしては、アクリロニトリルの単独重合体、アクリロニトリルと他のモノマーとの共重合体、これらの混合物が挙げられる。他のモノマーとしては、焼成工程において環化反応が促進される点からは、メタクリル酸、イタコン酸が好ましく、紡糸工程において紡糸安定性が向上する点からは、アクリルアミドが好ましい。
「炭素前駆体繊維」とは、熱炭化性ポリマーが繊維状になったものである。炭素前駆体繊維には、繊維軸方向に延びるフィブリルが複数形成されている。該フィブリルの集合体である炭素前駆体繊維を、分離工程を経ずにそのまま焼成した場合には、通常の炭素繊維が得られる。
「フィブリル」とは、単繊維中の内部構造であって、直径100〜1000nmの大きさを持つものであり(繊維学会編、「繊維便覧」、第3版、丸善株式会社、平成16年12月15日、p.1)、繊維状の熱炭化性ポリマーのドメインである。本発明における炭素前駆体繊維は、通常、炭素前駆体繊維を構成するポリマーの90%以上は熱炭化性ポリマーであり、繊維状の熱炭化性ポリマーのドメイン間に、熱分解消失性ポリマーや熱可塑性樹脂を存在させる、特許文献1、2に記載の炭素前駆体繊維とは全く異なる。
炭素前駆体繊維は、熱炭化性ポリマーを紡糸し、延伸することで得られる。
紡糸法としては、溶融紡糸法、溶液紡糸法が挙げられる。溶液紡糸法としては、乾式紡糸法、乾湿式紡糸法、湿式紡糸法が挙げられる。
紡糸法としては、溶融紡糸法、溶液紡糸法が挙げられる。溶液紡糸法としては、乾式紡糸法、乾湿式紡糸法、湿式紡糸法が挙げられる。
溶液紡糸法における、紡糸原液の溶剤としては、熱炭化性ポリマーを溶解する溶剤であればよく、例えば、熱炭化性ポリマーがアクリロニトリル系ポリマーである場合、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド等が挙げられる。溶液紡糸法においては、通常のアクリル繊維と同様の紡糸設備を用いることができる。通常の湿式紡糸法によって得られたアクリル繊維には、フィブリル構造が確認されている(繊維学会編、「繊維便覧」、第3版、丸善株式会社、平成16年12月15日、p.173)。
延伸法としては、紡糸法として溶液紡糸法を採用した場合、凝固糸を沸水中で延伸する方法が好ましい。この場合、膨潤状態の炭素前駆体繊維が得られる。膨潤状態とは、炭素前駆体繊維が水や溶剤を含む状態をいう。膨潤状態の炭素前駆体繊維を乾燥することで乾燥状態の炭素前駆体繊維が得られる。乾燥状態の炭素前駆体繊維をさらに加圧蒸気中で延伸してもよい。
延伸倍率は、トータルで2.0〜20.0が好ましい。トータル延伸倍率を2.0以上とすることにより、得られるカーボンナノファイバーの結晶性が高くなり、機械的強度が充分に発現する。トータル延伸倍率を20.0以下とすることにより、炭素前駆体繊維に発生する毛羽が抑えられ、焼成工程を安定して実施できる。トータル延伸倍率とは、紡糸法によって得られた、延伸前の原糸に対する、最終的に得られた炭素前駆体繊維の延伸倍率である。
「炭素前駆体フィブリル」とは、炭素前駆体繊維から分離したフィブリルである。炭素前駆体フィブリルは、カーボンナノファイバーの前駆体となる。炭素前駆体フィブリルは、焼成により分解収縮を経てカーボンナノファイバーになるため、その直径は特に制限されない。
炭素前駆体フィブリルは、熱炭化性ポリマーからなる炭素前駆体繊維からフィブリルを分離して得ることができる。
炭素前駆体繊維中のフィブリルは、フィブリル間の接着のために明瞭な界面を持たず、フィブリルを単体で得ることが難しいため、以下の方法で分離することが好ましい。
(i)膨潤状態の炭素前駆体繊維を凍結粉砕することにより、炭素前駆体繊維中のフィブリル間を物理的に引き離すことでフィブリルを分離する方法。
(ii)乾燥状態の炭素前駆体繊維を擦過することにより、炭素前駆体繊維中のフィブリル間を物理的に引き離すことでフィブリルを分離する方法。
炭素前駆体繊維中のフィブリルは、フィブリル間の接着のために明瞭な界面を持たず、フィブリルを単体で得ることが難しいため、以下の方法で分離することが好ましい。
(i)膨潤状態の炭素前駆体繊維を凍結粉砕することにより、炭素前駆体繊維中のフィブリル間を物理的に引き離すことでフィブリルを分離する方法。
(ii)乾燥状態の炭素前駆体繊維を擦過することにより、炭素前駆体繊維中のフィブリル間を物理的に引き離すことでフィブリルを分離する方法。
凍結粉砕または擦過することにより、炭素前駆体繊維中のフィブリル間に物理的な空間が生じる。本発明においては、これを「分離」と呼び、分離されたフィブリルを「炭素前駆体フィブリル」と呼ぶ。
炭素前駆体繊維からフィブリルを分離せずに焼成すると、フィブリル同士が融着炭化するため、カーボンナノファイバーは得られない。したがって、分離工程は、本発明の最大のポイントである。
炭素前駆体繊維からフィブリルを分離せずに焼成すると、フィブリル同士が融着炭化するため、カーボンナノファイバーは得られない。したがって、分離工程は、本発明の最大のポイントである。
カーボンナノファイバーの生産性を高めるために、炭素前駆体繊維を数本から数万本束ねた炭素前駆体繊維束を凍結粉砕または擦過することが好ましい。
凍結粉砕における凍結温度は、−10℃以下が好ましく、工業的に短時間で凍結状態を得る点から、−100℃以下がより好ましい。
凍結粉砕における凍結温度は、−10℃以下が好ましく、工業的に短時間で凍結状態を得る点から、−100℃以下がより好ましい。
擦過する方法としては、炭素前駆体繊維よりも硬い物質(例えば、金属物)で炭素前駆体繊維を擦る方法、炭素前駆体繊維束とした後、炭素前駆体繊維同士を擦る方法が挙げられる。カーボンナノファイバーの生産性の点から、炭素前駆体繊維束を擦過する方法が好ましい。
焼成工程は、通常、炭素前駆体フィブリルを酸化雰囲気下200〜300℃で30〜60分熱処理する耐炎化工程と、耐炎化物を不活性雰囲気下1000〜2000℃で処理する炭素化工程とを有する。炭素化工程の炭素化温度とカーボンナノファイバーの弾性率とは比例関係にあるため、高弾性のカーボンナノファイバーを得るために、炭素化温度を2000℃以上としても構わない。
カーボンナノファイバーの直径は、以下のようにして制御できる。
炭素前駆体繊維を延伸することで、内部構造であるフィブリルの直径が細くなるため、フィブリルを分離して得られる炭素前駆体フィブリルの直径も細くなり、その結果、カーボンナノファイバーの直径も細くなる。すなわち、カーボンナノファイバーの直径は、炭素前駆体繊維のトータル延伸倍率により制御できる。
炭素前駆体繊維を延伸することで、内部構造であるフィブリルの直径が細くなるため、フィブリルを分離して得られる炭素前駆体フィブリルの直径も細くなり、その結果、カーボンナノファイバーの直径も細くなる。すなわち、カーボンナノファイバーの直径は、炭素前駆体繊維のトータル延伸倍率により制御できる。
カーボンナノファイバーおよび炭素前駆体フィブリルの存在は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて確認できる。例えば、加速電圧5.0kV、観察倍率100,000倍の条件で観察すればカーボンナノファイバーおよび炭素前駆体フィブリルの存在が確認できる。
以上説明した本発明のカーボンナノファイバーの製造方法にあっては、熱炭化性ポリマーからなる炭素前駆体繊維からフィブリルを分離して炭素前駆体フィブリルを得る工程と、該炭素前駆体フィブリルを焼成する工程とを有する方法であるため、従来の気相法のように金属触媒が混入することがなく、高純度、高品質のカーボンナノファイバーが得られる。
また、炭素前駆体繊維を構成するポリマーのほとんど(通常90%以上)は、熱炭化性ポリマーであるため、従来の紡糸法のように繊維状の熱炭化性ポリマーのドメイン間に熱分解消失性ポリマーや熱可塑性樹脂を存在させる場合に比べ、炭素化収率が高く、カーボンナノファイバーの生産性が高く、カーボンナノファイバーを安価に提供できる。
すなわち、本発明は、炭素前駆体繊維を構成するフィブリルが、繊維状の熱炭化性ポリマーのドメインであることに着目し、炭素前駆体繊維からフィブリルを分離し炭素前駆体フィブリルを得ることができれば、これを焼成することで炭素化収率の点で極めて有効なカーボンナノファイバーが得られることを見出したものである。これまで、このような報告はなされていない。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例において、「質量部」および「質量%」は、それぞれ単に「部」および「%」と記す。
本実施例において、「質量部」および「質量%」は、それぞれ単に「部」および「%」と記す。
(評価方法)
凝集状態にあるカーボンナノファイバーおよび炭素前駆体フィブリルを、電界放出型電子顕微鏡(FE−SEM)(日本電子(株)製、JSM−7400F)を用い、加速電圧2.0〜5.0kV、観察倍率10,000〜100,000倍の条件で観察した。
凝集状態にあるカーボンナノファイバーおよび炭素前駆体フィブリルを、電界放出型電子顕微鏡(FE−SEM)(日本電子(株)製、JSM−7400F)を用い、加速電圧2.0〜5.0kV、観察倍率10,000〜100,000倍の条件で観察した。
〔製造例1〕
アクリロニトリル系ポリマーの合成:
重合釜に、蒸留水、モノマー(アクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸)、重合開始剤(過硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム)を入れ、重合釜内を50℃で撹拌し、共重合体を得た。共重合体を洗浄、乾燥して、アクリロニトリル単位/アクリル酸メチル単位/メタクリル酸単位=95/4/1(質量比)のアクリロニトリル系ポリマーを得た。
アクリロニトリル系ポリマーの合成:
重合釜に、蒸留水、モノマー(アクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸)、重合開始剤(過硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム)を入れ、重合釜内を50℃で撹拌し、共重合体を得た。共重合体を洗浄、乾燥して、アクリロニトリル単位/アクリル酸メチル単位/メタクリル酸単位=95/4/1(質量比)のアクリロニトリル系ポリマーを得た。
〔製造例2〕
炭素前駆体繊維の製造:
N,N−ジメチルアセトアミド79部にアクリロニトリル系ポリマー21部を溶解させ、紡糸原液を調製した。開口径0.075mm、開口数3000のノズルから85g/minで紡糸原液をN,N−ジメチルアセトアミド水溶液(濃度68%、38℃)の凝固浴中に吐出し、溶液紡糸法により凝固糸を得た。
ついで、凝固糸を沸水中で2.0倍に延伸し、膨潤状態の炭素前駆体繊維を得た。膨潤状態の炭素前駆体繊維に添油し、これを乾燥させて、乾燥状態の炭素前駆体繊維を得た。乾燥状態の炭素前駆体繊維を加圧蒸気中で8.6倍に延伸し、乾燥させて、トータル延伸倍率が17.2の炭素前駆体繊維(1)を得た。
炭素前駆体繊維の製造:
N,N−ジメチルアセトアミド79部にアクリロニトリル系ポリマー21部を溶解させ、紡糸原液を調製した。開口径0.075mm、開口数3000のノズルから85g/minで紡糸原液をN,N−ジメチルアセトアミド水溶液(濃度68%、38℃)の凝固浴中に吐出し、溶液紡糸法により凝固糸を得た。
ついで、凝固糸を沸水中で2.0倍に延伸し、膨潤状態の炭素前駆体繊維を得た。膨潤状態の炭素前駆体繊維に添油し、これを乾燥させて、乾燥状態の炭素前駆体繊維を得た。乾燥状態の炭素前駆体繊維を加圧蒸気中で8.6倍に延伸し、乾燥させて、トータル延伸倍率が17.2の炭素前駆体繊維(1)を得た。
〔製造例3〕
製造例2の凝固糸を沸水中で2.0倍に延伸し、膨潤状態の炭素前駆体繊維を得た。膨潤状態の炭素前駆体繊維に添油し、これを乾燥させて、乾燥状態の炭素前駆体繊維を得た。乾燥状態の炭素前駆体繊維を加圧蒸気中で6.3倍に延伸し、乾燥させて、トータル延伸倍率が12.6の炭素前駆体繊維(2)を得た。
製造例2の凝固糸を沸水中で2.0倍に延伸し、膨潤状態の炭素前駆体繊維を得た。膨潤状態の炭素前駆体繊維に添油し、これを乾燥させて、乾燥状態の炭素前駆体繊維を得た。乾燥状態の炭素前駆体繊維を加圧蒸気中で6.3倍に延伸し、乾燥させて、トータル延伸倍率が12.6の炭素前駆体繊維(2)を得た。
〔製造例4〕
製造例2の凝固糸を沸水中で8.4倍に延伸し、トータル延伸倍率が8.4の膨潤状態の炭素前駆体繊維(3)を得た。
製造例2の凝固糸を沸水中で8.4倍に延伸し、トータル延伸倍率が8.4の膨潤状態の炭素前駆体繊維(3)を得た。
〔実施例1〕
分離工程:
炭素前駆体繊維(1)を5cm切り出して、片側1cm部分をカミソリの自重で繊維中央側から端に向かって1回擦ると微量の凝集物が得られた。凝集物をFE−SEMにて観察したところ、炭素前駆体フィブリルが確認された。前記操作を100回繰り返すことで炭素前駆体フィブリルの凝集物を得た。
分離工程:
炭素前駆体繊維(1)を5cm切り出して、片側1cm部分をカミソリの自重で繊維中央側から端に向かって1回擦ると微量の凝集物が得られた。凝集物をFE−SEMにて観察したところ、炭素前駆体フィブリルが確認された。前記操作を100回繰り返すことで炭素前駆体フィブリルの凝集物を得た。
焼成工程:
炭素前駆体フィブリルの凝集物を、空気雰囲気下250℃で60分間処理して耐炎化物を得た。引き続き、耐炎化物を、窒素雰囲気下で室温から2000℃まで10℃/分で昇温させながら焼成し、さらに2000℃で60分間焼成し、ついで2000℃から室温まで−10℃/分で降温させながら焼成することによって焼成物を得た。焼成物をFE−SEMにて観察したところ、焼成物中には直径50nmのカーボンナノファイバーが含まれていることが確認された。焼成物のFE−SEM像を図1に示す。
炭素前駆体フィブリルの凝集物を、空気雰囲気下250℃で60分間処理して耐炎化物を得た。引き続き、耐炎化物を、窒素雰囲気下で室温から2000℃まで10℃/分で昇温させながら焼成し、さらに2000℃で60分間焼成し、ついで2000℃から室温まで−10℃/分で降温させながら焼成することによって焼成物を得た。焼成物をFE−SEMにて観察したところ、焼成物中には直径50nmのカーボンナノファイバーが含まれていることが確認された。焼成物のFE−SEM像を図1に示す。
〔実施例2〕
炭素前駆体繊維(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして分離工程を行い凝集物を得た。凝集物をFE−SEMにて観察したところ、炭素前駆体フィブリルが確認された。
該炭素前駆体フィブリルを用いて、実施例1と同様にして焼成工程を行い、焼成物を得た。焼成物をFE−SEMにて観察したところ、焼成物中には直径100nmのカーボンナノファイバーが含まれていることが確認された。焼成物のFE−SEM像を図2に示す。
炭素前駆体繊維(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして分離工程を行い凝集物を得た。凝集物をFE−SEMにて観察したところ、炭素前駆体フィブリルが確認された。
該炭素前駆体フィブリルを用いて、実施例1と同様にして焼成工程を行い、焼成物を得た。焼成物をFE−SEMにて観察したところ、焼成物中には直径100nmのカーボンナノファイバーが含まれていることが確認された。焼成物のFE−SEM像を図2に示す。
〔実施例3〕
膨潤状態の炭素前駆体繊維(3)を1cm切り出し、液体窒素温度にて凍結させ、凍結粉砕機にて10分間粉砕して粉砕品を得た。粉砕品をFE−SEMにて観察したところ炭素前駆体フィブリルが確認された。
該炭素前駆体フィブリルを用いて、実施例1と同様にして焼成工程を行い、焼成物を得た。焼成物をFE−SEMにて観察したところ、焼成物中には直径200nmのカーボンナノファイバーが含まれていることが確認された。焼成物のFE−SEM像を図3に示す。
膨潤状態の炭素前駆体繊維(3)を1cm切り出し、液体窒素温度にて凍結させ、凍結粉砕機にて10分間粉砕して粉砕品を得た。粉砕品をFE−SEMにて観察したところ炭素前駆体フィブリルが確認された。
該炭素前駆体フィブリルを用いて、実施例1と同様にして焼成工程を行い、焼成物を得た。焼成物をFE−SEMにて観察したところ、焼成物中には直径200nmのカーボンナノファイバーが含まれていることが確認された。焼成物のFE−SEM像を図3に示す。
〔比較例1〕
炭素前駆体繊維(2)を1cm切り出し、分離工程を行わずに炭素前駆体繊維側面をFE−SEMで観察したところ、炭素前駆体フィブリルは観察されなかった。
また、分離工程を行わずに炭素前駆体繊維(2)を20cmに固定して、空気雰囲気下250℃で60分間処理して耐炎化物を得た。引き続き、耐炎化物を、窒素雰囲気下で室温から2000℃まで10℃/分で昇温させながら焼成し、さらに、2000℃で60分間焼成し、ついで2000℃から室温まで−10℃/分で降温しながら焼成することで焼成物を得た。焼成物をFE−SEMで観察したところ、カーボンナノファイバーは確認できなかった。焼成物のFE−SEM像を図4に示す。
炭素前駆体繊維(2)を1cm切り出し、分離工程を行わずに炭素前駆体繊維側面をFE−SEMで観察したところ、炭素前駆体フィブリルは観察されなかった。
また、分離工程を行わずに炭素前駆体繊維(2)を20cmに固定して、空気雰囲気下250℃で60分間処理して耐炎化物を得た。引き続き、耐炎化物を、窒素雰囲気下で室温から2000℃まで10℃/分で昇温させながら焼成し、さらに、2000℃で60分間焼成し、ついで2000℃から室温まで−10℃/分で降温しながら焼成することで焼成物を得た。焼成物をFE−SEMで観察したところ、カーボンナノファイバーは確認できなかった。焼成物のFE−SEM像を図4に示す。
本発明の製造方法により得られたカーボンナノファイバーは、高品質、かつ安価であるため、樹脂材料に導電性を付与したり、樹脂材料の機械的性質を向上したりする目的で添加するフィラー;燃料電池の電極材料やガス吸蔵材料として有用である。
Claims (1)
- 熱炭化性ポリマーからなる炭素前駆体繊維からフィブリルを分離して炭素前駆体フィブリルを得る工程と、
該炭素前駆体フィブリルを焼成する工程と
を有するカーボンナノファイバーの製造方法。
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JP2006029406A Withdrawn JP2007211356A (ja) | 2006-02-07 | 2006-02-07 | カーボンナノファイバーの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2007211356A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013163884A (ja) * | 2012-02-13 | 2013-08-22 | Nitta Ind Corp | カーボンナノチューブを含有するビニロン繊維およびその製造方法 |
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2006
- 2006-02-07 JP JP2006029406A patent/JP2007211356A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2013163884A (ja) * | 2012-02-13 | 2013-08-22 | Nitta Ind Corp | カーボンナノチューブを含有するビニロン繊維およびその製造方法 |
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