JP2013163884A - カーボンナノチューブを含有するビニロン繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のビニロン繊維の製造方法は、ポリビニルアルコール系重合体、カーボンナノチューブ及び水を含有し、円すい−平板形回転粘度計により温度25℃の条件において測定される、せん断速度100(1/秒)における粘度に対するせん断速度10(1/秒)における粘度の割合であるチキソトロピー指数(TI)が2.1〜3.0である紡糸原液を、湿式紡糸により繊維化する段階を含むことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明の紡糸原液は、ポリビニルアルコール系重合体、カーボンナノチューブ、及び水を必須成分として含有する。なお、本発明の紡糸原液中の各成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
チキソトロピー指数(TI)=η10/η100
上記式中、η10はせん断速度10(1/秒)における粘度、η100はせん断速度100(1/秒)における粘度である(η10とη100の単位は同じである)。
上記粘度測定は、円すい−平板形回転粘度計(コーンプレート型粘度計とも称する)を用いて行うことができる。より具体的には、例えば、ブルックフィールド社製、コーンプレート型粘度計「HBDV−2+PRO」を用いて行うことができる。また、粘度測定は、測定対象である紡糸原液を1時間静置した後に、25℃の条件で測定する。
本発明のビニロン繊維の製造方法は、本発明の紡糸原液を、湿式紡糸により繊維化する段階を少なくとも含む。
本発明の紡糸原液を湿式紡糸により繊維化する段階においては、本発明の紡糸原液を紡糸原液(紡糸溶液)として用い、湿式紡糸(湿式紡糸法)により繊維化し、紡出糸(繊維)を得る。上記湿式紡糸法は、公知のビニロン繊維(ポリビニルアルコール系繊維)の製造方法における湿式紡糸法を用いることができる。具体的には、例えば、本発明の紡糸原液を口金(紡糸口金)から凝固液中に吐出(紡出)して繊維化し、紡出糸を得る。
本発明のビニロン繊維の製造方法により、本発明のビニロン繊維が得られる。本発明のビニロン繊維(本発明のビニロン繊維の製造方法により製造されたビニロン繊維)は、ポリビニルアルコール系重合体より形成されたポリビニルアルコール系繊維である。本発明のビニロン繊維はカーボンナノチューブを少なくとも含有する。本発明のビニロン繊維は、未延伸糸であってもよいし、延伸糸であってもよい。
本発明のビニロン繊維はカーボンナノチューブを含有するため、本発明のビニロン繊維を焼成することにより、カーボンナノチューブの集合体(本発明のカーボンナノチューブ集合体)を得ることができる。本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法は、本発明のビニロン繊維の製造方法によりビニロン繊維(本発明のビニロン繊維)を得る工程と、上記本発明のビニロン繊維を焼成してカーボンナノチューブ集合体を得る工程とを少なくとも含む。本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法は、上記工程以外の工程を含んでもよい。なお、上記「本発明のビニロン繊維を焼成してカーボンナノチューブ集合体を得る工程」を「焼成工程」と称する場合がある。
上記焼成工程においては、少なくとも1本の本発明のビニロン繊維を焼成することにより、カーボンナノチューブ集合体を作製する。
本発明のカーボンナノチューブ集合体は、複数のカーボンナノチューブが集合して構成された集合体である。本発明のカーボンナノチューブ集合体は、複数のカーボンナノチューブを必須の構成成分として構成されている。本発明のカーボンナノチューブ集合体は、カーボンナノチューブ以外の構成成分を含有してもよい。上記カーボンナノチューブ以外の構成成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール系重合体(焼成工程で残存したもの等)、分散剤などの添加剤(焼成工程で残存したもの等)などが挙げられる。
本発明のビニロン繊維の製造方法及び本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法に用いる、カーボンナノチューブの好ましい製造方法を以下に記載する。ただし、本発明は以下の記載により限定されない。以下のカーボンナノチューブの製造方法によれば、得られたカーボンナノチューブ中に含まれる束状集合物の割合が少なく、直径のばらつきの小さなカーボンナノチューブであって、なおかつ滑らかな表面のカーボンナノチューブが得られやすい。また、紡糸原液中で独立した状態で分散しやすいカーボンナノチューブが得られやすい。このため、上記カーボンナノチューブを用いることにより紡糸原液の粘度のせん断速度依存性を発現する効果がより一層向上する。また、上記カーボンナノチューブを用いることにより、ビニロン繊維中でのカーボンナノチューブの配向性がより一層向上し、より優れた配向性を有するカーボンナノチューブ集合体が得られるため好ましい。なお、以下では、カーボンナノチューブの好ましい製造方法により得られるカーボンナノチューブを「カーボンナノチューブ(B)」と称する場合がある。また、「カーボンナノチューブの好ましい製造方法」を「カーボンナノチューブ(B)の製造方法」と称する場合がある。
上記カーボンナノチューブ(A)を得る工程(CNT作製工程)は、化学気相成長法のうち基板成長法(基板成長CVD法)によりカーボンナノチューブを合成する段階を少なくとも含む。上記CNT作製工程は、さらに、基板成長CVD法によりカーボンナノチューブを合成する段階以外の段階を含んでもよい。
上記カーボンナノチューブ(B)を得る工程(CNT精製工程)は、上記CNT作製工程で得られた上記カーボンナノチューブ(A)を酸に浸漬する段階を少なくとも含む。上記CNT精製工程は、さらに、カーボンナノチューブ(A)を酸に浸漬する段階以外の段階を含んでもよい。
上記中和段階は、カーボンナノチューブの表面に付着した酸を中和する段階であり、例えば、上記濾過段階で濾過されたカーボンナノチューブを中和する段階である。上記中和段階で用いる中和剤としては、公知の中和剤を用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
上記洗浄段階は、カーボンナノチューブを洗浄する段階であり、例えば、上記中和段階で中和されたカーボンナノチューブまたは上記濾過段階で濾過されたカーボンナノチューブを洗浄する段階である。洗浄方法としては、公知の洗浄方法を用いることができ、例えば、純水による洗浄等が挙げられる。
上記乾燥段階は、カーボンナノチューブを乾燥する段階であり、例えば、上記洗浄段階で洗浄されたカーボンナノチューブを乾燥する段階である。乾燥方法としては、公知の乾燥方法を用いることができ、例えば、熱風乾燥機による乾燥、自然乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。乾燥温度は、特に限定されないが、20〜100℃が好ましい。また、乾燥時間は、特に限定されないが、1〜48時間が好ましい。
本発明のビニロン繊維の製造方法及び本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法に用いる、本発明の紡糸原液の好ましい製造方法を以下に記載する。ただし、本発明は以下の記載により限定されない。なお、以下の本発明の紡糸原液の好ましい製造方法により得られる本発明の紡糸原液を「紡糸原液(C)」と称する場合がある。また、「本発明の紡糸原液の好ましい製造方法」を「紡糸原液(C)の製造方法」と称する場合がある。
上記カーボンナノチューブ(B)とポリビニルアルコール系重合体と水とを混合する段階においては、カーボンナノチューブ(B)とポリビニルアルコール系重合体と水とを少なくとも含む混合液が得られればよい。上記混合液は、界面活性剤等の分散剤を含有してもよい。上記界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
紡糸原液(C)の製造方法は、さらに、上記カーボンナノチューブ(B)とポリビニルアルコール系重合体と水とを少なくとも含む混合液の濃度を調整する段階を含んでもよい。上記の濃度を調整する方法としては、例えば、上記混合液中に含まれる水の一部を減圧留去する方法(減圧留去法)、混合液中に含まれる水の一部を加熱により除去する方法等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコール系重合体の固化抑制の観点から、減圧留去法が好ましい。即ち、紡糸原液(C)の製造方法は、例えば、上記水分散液(c1)と上記水溶液(c2)とを混合して混合液(c3)を得る段階と、上記混合液(c3)中に含まれる水の一部を減圧留去する段階とを含んでもよい。減圧留去法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ロータリーエバポレーター、蒸留装置を用いた減圧留去法が挙げられる。
(CNT作製工程)
電子ビーム物理蒸着(EB−PVD)法を用いて、表面積約50mm2のシリコン基板上に、厚さ3nmのアルミニウム(Al)の薄膜を蒸着し、さらにその上に、厚さ2nmの鉄(Fe)の薄膜を蒸着して、シリコン基板/アルミニウム薄膜/鉄薄膜の構成を有する多層基板を作製した。
直径160mmの石英管中に、上記多層基板を置き、真空下で700℃まで加熱した。次いで、上記石英管中にアセチレンガスを、200Paの条件で流し、上記多層基板上で、カーボンナノチューブを合成した。
多層基板上に成長したカーボンナノチューブ[カーボンナノチューブ(A)に相当する]を多層基板より剥離、採取した。
上記で得られたカーボンナノチューブを、混酸[濃硫酸(濃度98%):濃硝酸(濃度60%、密度1.38g/cm3)=3:1(体積比)]中に2時間浸漬した。その後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メンブレンフィルター(孔径:0.2μm)により濾過し、フィルターに捕集されたカーボンナノチューブを0.1モル/Lアンモニア水で中和し、純水で洗浄し、60℃、24時間の条件で乾燥した。
上記乾燥後のカーボンナノチューブ100mgと水100gとを混合し、分散装置として回転式ホモジナイザー(アズワン株式会社製、商品名「CM−100」)を用いて、1時間分散させ、CNT水分散液(1)を得た。
クロマトグラフィー用のカラム管(ホウケイ酸ガラス製、カラム長300mm、内径20mm)にガラスビーズ(ソーダガラス製、直径0.105〜0.125mm)と水とを高さ100mmとなるように充填し、カラムを作製した。次いで、上記CNT水分散液(1)10mlをカラムに展開した。さらに、カラム中を透過した透過液のうち、カラムからの流出開始後3ml〜5mlの間の透過液を分取した。次いで、上記のカラムからの流出開始後3ml〜5mlの間の透過液2mlに対し、ポリビニルアルコール系重合体20mgを混合し、溶解させて、CNT水分散液(2)を得た。
上記CNT水分散液(2)中のカーボンナノチューブの濃度は0.1重量%であった。
上記CNT水分散液(2)216gと、ポリビニルアルコール系重合体の水溶液(ポリビニルアルコール系重合体の濃度:4.8重量%)30gとを混合し、遊星式攪拌機(株式会社シンキー製、商品名「AR−100」)を用いて、攪拌、混合した。
さらに、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧留去法により、上記で得られた混合液の濃度調整を行い、紡糸原液[紡糸原液(C)に相当する]を得た。
上記紡糸原液のチキソトロピー指数(TI)は2.77、η10は22225mPa・s、η100 は8032mPa・sであった。また、上記紡糸原液中のカーボンナノチューブの含有量(濃度)は0.72重量%であり、ポリビニルアルコール系重合体の含有量(濃度)は12.0重量%であった。
95℃の上記紡糸原液を、ギヤポンプを用いて、口金(白金口金、孔の口径0.1mm、孔数250個)から、吐出量13.1g/分の条件で、42℃の飽和硫酸ナトリウム水溶液中に紡出し、繊維化した(工程速度4.5m/分)。
次いで、得られた繊維を水で洗浄、80℃で乾燥し、さらに、延伸温度200℃、延伸倍率7倍の条件で熱延伸して、カーボンナノチューブを含有するビニロン繊維を得た。
上記ビニロン繊維の平均繊度は1.6dtexであった。また、上記ビニロン繊維100重量%中のカーボンナノチューブの含有量は6重量%であった。
長さ5cmに切断した上記ビニロン繊維1本を、シリコン基板上に置き、繊維の両端を接着剤で固定した。
次いで、上記で得られたビニロン繊維を固定した基板を、マッフル炉(ヤマト科学株式会社製、型式「FO100」)を用いて、400℃で2時間焼成し、カーボンナノチューブ集合体を得た。
上記カーボンナノチューブ集合体は、長さ5cm、幅10μm、厚さ0.7μmの線状であった。
長さ5cmに切断した上記ビニロン繊維250本を、シリコン基板上に、それぞれの繊維軸方向が同一の方向となるように、繊維軸方向と直交方向に並べ、それぞれの繊維の両端を接着剤で固定した。
次いで、上記で得られたビニロン繊維を固定した基板を、マッフル炉(ヤマト科学株式会社製、型式「FO100」)を用いて、400℃で2時間焼成し、カーボンナノチューブ集合体を得た。
上記カーボンナノチューブ集合体は、長さ5cm、幅3mm、厚さ0.7μmの膜状であった。
「紡糸原液の作製」の工程における、ポリビニルアルコール系重合体の水溶液の濃度(ポリビニルアルコール系重合体の濃度)を4.8重量%から表1に示す量に変更し、さらに、ポリビニルアルコール系重合体の水溶液30gに対するCNT水分散液(2)の混合量を216gから表1に示す量に変更し、実施例1と同様にして、紡糸原液を得た。得られた紡糸原液のチキソトロピー指数(TI)、紡糸原液中のカーボンナノチューブの含有量(濃度)、ポリビニルアルコール系重合体の含有量(濃度)は、表1のとおりである。
さらに、得られた紡糸原液を用いて、実施例1と同様にして、カーボンナノチューブを含有するビニロン繊維を得た。
ポリビニルアルコール系重合体の水溶液(ポリビニルアルコール系重合体の濃度:12.0重量%)を紡糸原液とし、実施例1と同様にして、ビニロン繊維(カーボンナノチューブを含有しないビニロン繊維)を得た。なお、上記ポリビニルアルコール系重合体は、株式会社クラレ製、商品名「クラレポバール PVA−117」(実施例1と同じ)である。
実施例、比較例で得られた、カーボンナノチューブ、紡糸原液、CNT水分散液(2)、ビニロン繊維、カーボンナノチューブ集合体について、以下の評価を行った。
実施例、比較例で得られたそれぞれの紡糸原液を評価サンプルとした。評価サンプルは、1時間静置した後に評価に用いた。
円すい−平板形回転粘度計(コーンプレート型粘度計)(ブルックフィールド社製、「HBDV−2+PRO」)を用い、温度25℃、せん断速度10(1/秒)の条件下で粘度を測定し、せん断速度10(1/秒)における粘度η10(単位:mPa・s)とした。また、同様にして、温度25℃、せん断速度100(1/秒)の条件下で粘度を測定し、せん断速度100(1/秒)における粘度η100(単位:mPa・s)とした。
せん断速度100(1/秒)における粘度η100に対する、せん断速度10(1/秒)における粘度η10の割合[=η10/η100]を求め、チキソトロピー指数(TI)とした。
実施例1〜3、比較例1で得られた紡糸原液を、シリコン基板上に、塗布厚み4μmで塗布し、400℃で2時間焼成して、評価サンプルとした。電界放出走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、「S−4300」)を用い、倍率5万倍で、視野面積4.4μm2を観察した。なお、1つの評価サンプルについて、20点で観察を行った。実施例1の紡糸原液より作製した評価サンプルを上記方法で観察した1例(SEM写真)を図17に示した。図17中の繊維状の物質がカーボンナノチューブである。
上記視野面積内のカーボンナノチューブの総個数を数えた。なお、2以上のカーボンナノチューブが集合した集合物(凝集物)については、集合物を1個として数えた。さらに、上記視野面積内の2以上のカーボンナノチューブが束状に集合した集合物(束状集合物)の個数を数えた。
上記カーボンナノチューブの総個数に対する上記束状集合物の個数の割合(%)[=(束状集合物の個数)/(カーボンナノチューブの総個数)×100]を算出し、紡糸原液中の全てのカーボンナノチューブ100%中の束状集合物の割合(%)とした。
実施例1〜3、比較例1で得られたCNT水分散液(2)を、シリコン基板上に、塗布厚み4μmで塗布し、乾燥して、評価サンプルとした。電界放出走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、「S−4300」)を用い、倍率5万倍で、視野面積4.4μm2を観察した。なお、1つの評価サンプルについて、4点で観察を行った。
上記視野面積内のカーボンナノチューブの総個数を数えた。さらに、上記視野面積内の長さ1〜10μmのカーボンナノチューブの個数を数えた。なお、2以上のカーボンナノチューブが集合した集合物(凝集物)は、個数の算出から除いた。
上記カーボンナノチューブの総個数に対する上記長さ1〜10μmのカーボンナノチューブの個数の割合(%)[=(長さ1〜10μmのカーボンナノチューブの個数)/(カーボンナノチューブの総個数)×100]を算出し、紡糸原液中の全てのカーボンナノチューブ100%中の長さ1〜10μmのカーボンナノチューブの割合(%)とした
実施例1〜3、比較例1で得られたCNT水分散液(2)中に、カーボンメッシュを浸漬して引き上げた後、乾燥して、評価サンプルとした。透過型電子顕微鏡(TEM)(FEI社製、「Tecnai 20 ST」)を用い、倍率285000倍で観察した。50個(50本)のカーボンナノチューブについて観察を行った。
上記カーボンナノチューブの直径を測定し、上記50個のカーボンナノチューブ中の、直径が0.3〜40nmであるカーボンナノチューブの個数を求めた。
観察対象であるカーボンナノチューブ総個数(50個)に対する直径が0.3〜40nmであるカーボンナノチューブの個数の割合(%)[=(直径が0.3〜40nmであるカーボンナノチューブの個数)/50個×100]を算出し、紡糸原液中の全てのカーボンナノチューブ100%中の直径が0.3〜40nmであるカーボンナノチューブの割合(%)とした。
株式会社日立ハイテクノロジーズ製、「S−4300」を用いた。
実施例1〜3、比較例1のCNT精製工程で得られたカーボンナノチューブのG/D比を、以下の方法で測定した。
CNT精製工程で得られたカラムからの流出開始後3ml〜5mlの間の透過液(CNT水分散液(2)の作製に用いる透過液)を乾燥し、得られた粉末状のカーボンナノチューブを評価サンプルとした。
上記評価サンプルを、レニショー(RENISHAW)社製、レーザーラマンマイクロスコープ(Laser Raman microscope)を用いて、下記の条件で測定した。得られたスペクトルのGピーク(1580cm-1)とDピーク(1350cm-1)の強度比を求め、G/D比とした。
<測定条件>
励起光源:アルゴンレーザー(波長:514.5nm)
倍率:1200倍
測定スポット径:4μmφ
積算回数:5回
実施例1〜3、比較例1のCNT精製工程で得られたカーボンナノチューブのG/D比は、4.1であった。
実施例1で得られた線状カーボンナノチューブ集合体の電気抵抗を、以下の方法で測定した。
カーボンナノチューブ集合体上に、電極間距離10mmとなるように、2つの銀電極を取り付けた。上記電極に直流電源を取り付け、電圧を印加し、マルチメーターにより電流値を読み取った。なお、印加電圧は、0Vから150Vまで10V間隔で、測定を行った。得られた電圧と電流の関係から電気抵抗値を算出した。
実施例1で得られた線状カーボンナノチューブ集合体の電気抵抗値は、44.4kΩ/cm、体積抵抗率は3.11×10-3Ω・cmであった。
実施例1で得られた線状カーボンナノチューブ集合体の抵抗加熱による温度上昇を、以下の方法で測定した。なお、線状カーボンナノチューブ集合体の作製の工程で、シリコン基板のかわりにホウケイ酸ガラス基板を用いて、ホウケイ酸ガラス基板上に線状カーボンナノチューブ集合体を作製して測定に用いた。測定に用いたホウケイ酸ガラス基板のサイズは、長さ75mm、幅75mm、厚さ0.7mmである。
図18に示すように、ホウケイ酸ガラス基板13上に作製したカーボンナノチューブ集合体11に、電極間距離10mmとなるように、2つの銀電極12を取り付けた。上記電極間の中間部分(片側の銀電極から約5mmの位置)であり、かつカーボンナノチューブ集合体11から0.5mm離れた位置の基板13上に、K熱電対15及び温度モニター16を取り付けた。電極12に直流電源14を取り付け150Vの電圧を印加し、上記K熱電対15により温度を測定した。なお、電圧を印加する前の基板温度及び雰囲気温度は23℃であった。
150Vの電圧を印加した際の電流値は3.38mAであった。150Vの電圧を印加して10秒後のK熱電対により測定した温度は83.3℃であった。また、150Vの電圧を印加して20秒後のK熱電対により測定した温度は105.6℃であった。さらに、150Vの電圧を印加して100秒後のK熱電対により測定した温度は133.2℃であった。なお、100秒後には温度は既に平衡に達していた。
12 銀電極
13 ホウケイ酸ガラス基板
14 直流(DC)電源
15 K熱電対
16 温度モニター
Claims (10)
- ポリビニルアルコール系重合体、カーボンナノチューブ及び水を含有し、円すい−平板形回転粘度計により温度25℃の条件において測定される、せん断速度100(1/秒)における粘度に対するせん断速度10(1/秒)における粘度の割合であるチキソトロピー指数(TI)が2.1〜3.0である紡糸原液を、湿式紡糸により繊維化する段階を含むことを特徴とするビニロン繊維の製造方法。
- 前記紡糸原液中の全てのカーボンナノチューブ100%中の、2以上のカーボンナノチューブが束状に集合した集合物の割合が10%以下である請求項1に記載のビニロン繊維の製造方法。
- 前記紡糸原液中の全てのカーボンナノチューブ100%中の、直径が0.3〜40nmであるカーボンナノチューブの割合が80〜100%である請求項1または2に記載のビニロン繊維の製造方法。
- 前記紡糸原液中の全てのカーボンナノチューブ100%中の、長さ1〜10μmのカーボンナノチューブの割合が80〜100%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のビニロン繊維の製造方法。
- 前記紡糸原液100重量%中の前記ポリビニルアルコール系重合体の含有量が6〜13重量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のビニロン繊維の製造方法。
- 前記紡糸原液100重量%中の全てのカーボンナノチューブの含有量が0.3〜0.8重量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載のビニロン繊維の製造方法。
- 前記紡糸原液を、口金から吐出量1〜50g/分で凝固液中に吐出して繊維化する請求項1〜6のいずれか1項に記載のビニロン繊維の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のビニロン繊維の製造方法によりビニロン繊維を得る工程と、前記ビニロン繊維を焼成してカーボンナノチューブ集合体を得る工程とを含むことを特徴とするカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のビニロン繊維の製造方法により製造されたビニロン繊維。
- 請求項8に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法により製造されたカーボンナノチューブ集合体。
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