JP2007211085A - 研磨組成物及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】 研磨力及び研磨速度に優れ、研磨キズが目立たず、ハンドリングが軽く、研磨後の仕上がりが良い研磨組成物及びその用途を提供する。
【解決手段】 研磨粒子5〜60質量%、潤滑油1〜10質量%、有機溶剤10〜60質量%、界面活性剤0.1〜5.0質量%、増粘剤0.1〜2.0質量%及び水を含む水性乳化研磨組成物において、(イ)研磨粒子としてアルミナ及び/又はシリカ及び/又はアルミノシリケート及び/又は酸化第二錫を用い、かつ、(ロ)潤滑油としてリシノール酸トリグリセライド(ヒマシ油)及び流動パラフィン及びグリセリンを用い、かつ、(ハ)界面活性剤としてリシノール酸塩(ヒマシ油脂肪酸塩)及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを用いたことを特徴とする水性乳化研磨組成物及びその用途。

Description

本発明は、研磨組成物に関する。さらに詳しくは、自動車等の板金補修塗装作業等において、上塗り塗装後の塗装面の塗り肌を修整するために使用される研磨組成物とくに自動車塗装面のバフ研磨用に用いることが出来る研磨組成物及びその用途に関する。
自動車等の板金補修塗装作業においては、上塗り塗装後にペーパー水研ぎ及びバフ研磨を施し、新車の塗り肌と同程度まで塗膜の平滑化を行っている。特に、バフ研磨工程では、最終的に目視で研磨部分が判別できない程度まで高度に仕上げ磨きすることが求められている。
従来のバフ研磨工程で使用される研磨組成物は、研磨粒子や油脂類を溶解させた石油系溶剤等を、界面活性剤を用いて水中に分散及び乳化させたものが一般的であるが、このとき用いられる界面活性剤としては、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸からなる石鹸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、研磨粒子の分散や溶剤の乳化等を行うための必要成分であるが、揮発性がなく残留分に透明感がないために、バフ研磨仕上げ後の光沢に悪影響を及ぼすことがあった。また、潤滑性を阻害してバフ研磨作業時に塗膜上に固着することがあり、作業性に問題があった。
バフ研磨仕上げ後の光沢を向上させる方法として、研磨組成物中にジメチルシリコーンオイルを配合したり、組成物を油中乳化物とする方法が考案されている(特許文献1参照)。ジメチルシリコーンオイルは、潤滑性に優れ、屈折率が高い薄膜を形成するために塗膜の光沢を向上させることができるが、塗装時の塗料のハジキを生じさせる原因物質として敬遠されている。
また、油中乳化物にすることによって滑らかに作業性よく仕上げることができるが、引火性があり、取り扱いが困難である。
また、研磨組成物中にポリエチレンワックス等を配合して研磨跡を目立たなくさせる方法が考案されている(特許文献2参照)。しかし、研磨キズ中にワックスを埋め込んで一時的な平滑化を行っているために、経時的にワックスが脱落して研磨跡が再び目立ってくるという問題があった。本発明者らは、乳化剤の種類を限定することによって、潤滑性を改善し、光沢良く仕上げられる組成物を考案した(特許文献3、特許文献4参照)。
これらの組成物は、光沢良く仕上げることができるが、組成物の研磨力を増大させると、潤滑性が低下し、作業性に問題が生じる場合があった。
特開2000−328045号公報 特許第2848657号明細書 特開2004−025323号公報 特開2004−359831号公報
このように前記従来の自動車等の補修塗装作業に使用されるバフ研磨用組成物は、研磨粒子の研磨力を増大させると、大量に発生する研磨屑によって研磨粒子の潤滑性が損なわれ、バフ研磨仕上げ時の光沢不良や作業性の低下を引き起こすことがあった。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであって、研磨力及び研磨速度に優れ、研磨キズが目立たず、ハンドリングが軽く、研磨作業中に研磨屑が塗面へ固着することがなく、仕上がりが良い自動車等の補修塗装作業に用いられるバフ研磨に適した研磨組成物を提供することを目的とする。
これによって、従来のバフ粗研磨工程の仕上がり感が改善され、後のバフ仕上げ研磨工程の研磨作業が軽減され、作業時間が短縮できるし、場合によっては従来粗研磨〜仕上げ研磨と2工程要したものが、粗研磨仕上げの1工程に短縮することが可能となる。
本発明者らは、鋭意研究した結果、研磨力及び研磨速度に優れ、研磨キズが目立たず、ハンドリングが軽く、研磨作業中に研磨屑が塗面へ固着することがなく、仕上がりが良い自動車等の補修塗装作業に用いられるバフ研磨に適した研磨組成物を見出した。
すなわち、本発明は、研磨粒子5〜60質量%、潤滑油1〜10質量%、有機溶剤10〜60質量%、界面活性剤0.1〜5.0質量%、増粘剤0.1〜2.0質量%及び水を含む水性乳化研磨組成物において、(イ)研磨粒子としてアルミナ、シリカ、アルミノシリケート、酸化第二錫から選ばれる1種又は2種以上を用い、かつ、(ロ)潤滑油としてリシノール酸トリグリセライド(ヒマシ油)及び流動パラフィン及びグリセリンを用い、かつ、(ハ)界面活性剤としてリシノール酸塩(ヒマシ油脂肪酸塩)及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを用いたことを特徴とする水性乳化研磨組成物である。
また、本発明は、研磨粒子が結晶粒子径1μm以下のα−アルミナであって、α−アルミナの50%平均粒子径が1〜50μmであり、α−アルミナの90%粒子径が100μm以下とすることができる。
さらに、本発明は、研磨粒子が非晶質のシリカであって、シリカの50%平均粒子径が1〜50μmであり、シリカの90%粒子径が100μm以下とすることができる。
またさらに、本発明は、潤滑油として、リシノール酸トリグリセライド、流動パラフィン及びグリセリンを含み、流動パラフィン:グリセリン=4:6〜8:2であり、かつ、リシノール酸トリグリセライド:(流動パラフィン及びグリセリン)=1:9〜2:1であり、かつ、リシノール酸トリグリセライド、流動パラフィン及びグリセリンを水性乳化研磨組成物全体の1〜10質量%含むことができる。
さらに、本発明は、界面活性剤として用いるリシノール酸塩(ヒマシ油脂肪酸塩)の塩の種類が、アンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩のいずれかとすることができる。
また、本発明は、界面活性剤として用いるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの脂肪酸がオレイン酸であり、かつ、これらの界面活性剤を研磨組成物全体の0.1〜5.0質量%含むことができる。
さらに、本発明においては、界面活性剤として用いるリシノール酸塩:(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル)=2:8〜8:2(質量比)とすることができる。
また、本発明は、有機溶剤の沸点が120℃以上の飽和脂肪族炭化水素及び/又は飽和脂肪族環状炭化水素の1種又は2種以上であり、かつ、これらの有機溶剤を研磨組成物全体の10〜60質量%含むことができる。
さらに、本発明においては、増粘剤として、会合型アルカリ可溶性アクリルポリマーを用いたことを特徴とすることができる。
また、本発明は、これらの水性乳化研磨組成物を、自動車塗装面のバフ研磨用に用いることである。
本発明の研磨組成物は、表1の結果から明らかなように、研磨力及び研磨速度に優れ、研磨キズが目立たず、ハンドリングが軽く、研磨後の仕上がりが良い。しかも、研磨作業中に塗膜への研磨屑の固着がなく、円滑に作業できる研磨組成物及びその用途を提供することができた。
本発明の研磨組成物は、分散媒:分散質は、約20〜80:80〜20であるO/W型の水性乳化組成物であって、分散質は基本的に、研磨粒子、潤滑油、有機溶剤、界面活性剤、増粘剤から構成されている。
本発明で用いる、(イ)研磨粒子は、特に限定されるものではないが、アルミナ、シリカ、アルミノシリケート、又は酸化第二錫が好ましく、さらに好ましくはアルミナ、シリカである。アルミナは、焼成条件によって結晶型が異なり、結晶型により硬度が異なるため、自由に硬度を調整することができる。最も硬度が高いα−アルミナは、結晶粒子径を微細化することによって、高い研磨力のまま、研磨キズを抑制することができ、微細な結晶からなる粒子は吸油量を高め、油成分を必須とするバフ研磨組成物の研磨粒子としては極めて好適である。シリカには、結晶性と非結晶性があり、いずれもα−アルミナほど硬度は高くないが、塗装面より十分に硬く、研磨粒子として好適である。このようなシリカの例としては、硅石粉、砥ノ粉、トリポリ、焼成ケイソウ土、シラスなどが挙げられる。アルミノシリケートはアルミナ、シリカより柔らかいがソフトに研磨する材料としては優れており、仕上がり性が良い。このようなアルミノシリケートの例としては、焼成クレー、ムライトなどが挙げられる。酸化第二錫は、メタ錫酸を焼成して得られるものであって、比重が大きく、硬度は高くないが研磨力が良い。
研磨粒子の粒度は、バフ研磨に必要な研磨力によって、任意に選ぶことができるが、概ね、粗磨き用途では、50%平均粒子径は10〜50μm、90%粒子径は100μm以下が好ましく、仕上げ磨き用途では、50%平均粒子径は1〜8μm、90%粒子径は20μm以下が好ましい。粒度は粒子径で表し、粒子径は、体積基準の積算%粒子径を意味する。
粗磨き用途では、50%平均粒子径が、10μmより小さいと研磨力が十分ではなく、50μmを超えると研磨跡の修正に時間がかかる。90%粒子径が100μmを超えると研磨跡の修正が困難になる。
仕上げ磨き用途では、50%平均粒子径が1μmより小さいと研磨力が十分ではなく、8μmを超えると研磨跡が目立ち、光沢が悪くなる。90%粒子径が20μmを超えると線傷として目立つようになる。
研磨粒子の吸油量は、50ml/100g以上が好ましく、さらに好ましくは60ml/100g以上である。研磨粒子の吸油量が50ml/100gより小さいと光沢よく仕上がらない。ここでいう吸油量とは、アマニ油吸油量(JIS K 5101に規定するもの)を表す。
研磨粒子の研磨組成物全体に対する含有量は、バフ研磨の用途によって異なる。粗磨き用途では、研磨粒子の含有量は、研磨組成物全体に対して、10〜60質量%が好ましい。さらに好ましくは、10〜50質量%である。研磨粒子の含有量が研磨組成物全体に対して10質量%より少ないと研磨力が低下し、60質量%より多いと研磨粉が多くなり、作業性が低下する。一方、仕上げ磨き用途では、研磨粒子の含有量は、研磨組成物全体に対して、5〜30質量%が好ましい。さらに好ましくは、10〜20質量%である。研磨粒子の含有量が研磨組成物全体に対して5質量%より少ないと研磨力が低下し、30質量%より多いと研磨粉が多くなり、作業性が低下する。
本発明においては、(ロ)潤滑油としては、リシノール酸トリグリセライド(ヒマシ油)及び流動パラフィン及びグリセリンの混合物が必要である。
本発明において用いる流動パラフィンは、40℃における動粘度が5〜80cStのノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィンの中から選ばれ、通常複数の粘度のものを組み合わせて用いる。
流動パラフィン:グリセリン=4:6〜8:2、かつ、リシノール酸トリグリセライド:(流動パラフィン及びグリセリン)=1:9〜2:1が好ましい。
流動パラフィンがグリセリンに対して多すぎると、光沢を損ね、スッキリ仕上がらない。流動パラフィンがグリセリンに対して少なすぎると潤滑性が低下し、研磨粒子が塗膜上に焼きつきやすくなる。
一方、ヒマシ油が流動パラフィン及びグリセリンに対して多すぎると光沢を損ね、スッキリ仕上がらない。ヒマシ油が流動パラフィン及びグリセリンに対して少なすぎると、潤滑性及び光沢が低下する。なお、ヒマシ油には通常約90質量%のリシノール酸トリグリセライドが含まれている。
ヒマシ油及び流動パラフィン及びグリセリンの含有量は、研磨組成物全体の1〜10質量%が好ましい。ヒマシ油及び流動パラフィン及びグリセリンの配合量が研磨組成物全体の1質量%より少ないと潤滑性及び光沢感が低下し、10質量%より多いと仕上がりに要する時間が長くなる。
本発明において用いる界面活性剤は、(ハ)リシノール酸塩(ヒマシ油脂肪酸塩)及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルである。好ましくは、脂肪酸部分がオレイン酸であることが望ましい。リシノール酸としてヒマシ油脂肪酸を好適に用いることが出来る。
リシノール酸塩の例としては、リシノール酸アンモニウム、リシノール酸トリエチルアミン、リシノール酸モノエタノールアミン、リシノール酸ジエタノールアミン、リシノール酸トリエタノールアミン、リシノール酸プロパノールアミン、リシノール酸メチルイソプロパノールアミン、リシノール酸モルホリン、リシノール酸ナトリウム、リシノール酸カリウムなどが挙げられる。
なお、ヒマシ油脂肪酸塩には通常約90質量%のリシノール酸塩が含まれている。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの例としては、レオドールTW−O106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、レオドールTW−O320(ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート)、レオドール430(テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット)以上花王株式会社、TO−106
(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、TO−30(ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート)、GO−430(テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット)以上日光ケミカルズ株式会社などが挙げられる。
これらの界面活性剤のうち、リシノール酸塩は、組成物の潤滑性を向上させ、組成物中の研磨粒子の分散性を高め、より高濃度に研磨粒子を配合することを可能にし、組成物の研磨力を向上させるという好適な作用を有する。また、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルは、乳化物の安定性を向上させ、塗膜に残存した際に、光沢を付与するという好適な作用を有する。
これらの界面活性剤の含有量は、研磨組成物全体の0.1〜5.0質量%が好ましく、特に好ましくは、0.5〜4.0質量%である。リシノール酸塩:(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル)=2:8〜8:2の範囲が好ましく、より好ましくはリシノール酸塩:(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル)=4:6〜6:4である。界面活性剤の含有量が0.1質量%より少ないと組成物の潤滑性や仕上がり光沢感が低下する。界面活性剤の含有量が5.0質量%より多いと組成物の仕上がり速度が低下し、作業性が悪くなる。界面活性剤は、性能を妨げない範囲内で必要に応じて他の種類の界面活性剤を併用することができる。
本発明において用いる有機溶剤は、沸点が120℃以上の飽和脂肪族炭化水素及び/又は飽和脂肪族環状炭化水素が良く、研磨粒子の研磨力を向上させるために研磨組成物の塗膜に対する濡れ性を向上させたり、塗膜をわずかに軟化させたりする作用を有するものである。有機溶剤の沸点が120℃未満では乾燥が速すぎて有機溶剤の作用や乳化物の安定性が十分に得られない。
このような有機溶剤の例としては、灯油、ソルベントナフサ、ストッダードソルベント等の石油系脂肪族溶剤、ノナン、デカン、ドデカン等のノルマルパラフィン、イソパラフィン、ナフテン等の飽和脂肪族炭化水素(部分的に不飽和結合を有するモノエン、ジエン類も含む)、ショウノウ油、テレピン油、パイン油等のテルペン系溶剤、ピネン、ジペンテン等のテルペン類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの有機溶剤の含有量は、研磨組成物全体の10〜60質量%が好ましく、特に好ましくは、20〜50質量%である。有機溶剤の含有量が10質量%より少ないと研磨速度が遅くなり、60質量%より多いと水性乳化物としての安定性を保持することが困難になる。
本発明において用いる増粘剤は、周知の増粘剤ならどのようなものでも良いが、会合型アルカリ可溶性アクリルポリマーを用いるのが好ましい。
これらは、液に必要な粘性を付与すると同時に、研磨粒子の分散安定性や有機溶剤の乳化安定性を向上させる作用を有する。
また、比較的微量で効果を得ることができ、研磨作用に悪影響を及ぼしにくい。また、中性付近で安定な調剤が可能である。これらは、適当なアルカリ剤と組み合わせて中和することにより、研磨組成物全体を低粘度液状、高粘度液状、ペースト状に自由に調整することができる。
このような増粘剤の例としては、プライマルRM−4、プライマルRM−5、プライマルTT−615、プライマルTT−935、プライマルTT−950(以上ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社)、カーボポール981、カーボポール934、カーボポールETD2020、カーボポールEZ−1、カーボポールUltrez10、PEMULEN
TR−1、PEMULEN TR−2(以上BFGoodrich社)等が挙げられる。
本発明で用いる増粘剤に性能を妨げない範囲で他の増粘剤を併用しても良い。このような増粘剤としては、ポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロース、キサンタンガム等の多糖類が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
水は研磨組成物を水性乳化物とするための必須成分であって、安全に取り扱うことができる組成物を構成することを目的としている。
本発明の研磨組成物は液状から高粘度ペースト状まで任意の状態に調整することができ、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で種々の高分子増粘剤、種々のワックス類、その他の界面活性剤、その他の研磨性粉体、その他の有機溶剤、防錆剤、防腐剤、凍結防止剤、色素、香料などを配合することができる。
本発明の実施の形態をまとめると以下の通りである。
(1)研磨粒子5〜60質量%、潤滑油1〜10質量%、有機溶剤10〜60質量%、界面活性剤0.1〜5.0質量%、増粘剤0.1〜2.0質量%及び水を含む水性乳化研磨組成物において、(イ)研磨粒子としてアルミナ、シリカ、アルミノシリケート、酸化第二錫から選ばれる1種又は2種以上を用い、かつ、(ロ)潤滑油としてリシノール酸トリグリセライド(ヒマシ油)及び流動パラフィン及びグリセリンを用い、かつ、(ハ)界面活性剤としてリシノール酸塩(ヒマシ油脂肪酸塩)及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを用いたことを特徴とする水性乳化研磨組成物。
(2) 研磨粒子が結晶粒子径1μm以下のα−アルミナであって、α−アルミナの50%平均粒子径が1〜50μmであり、α−アルミナの90%粒子径が100μm以下である上記1に記載した水性乳化研磨組成物。
(3) 研磨粒子が非晶質のシリカであって、シリカの50%平均粒子径が1〜50μmであり、シリカの90%粒子径が100μm以下である上記1〜2に記載した水性乳化研磨組成物。
(4) 潤滑油として、リシノール酸トリグリセライド、流動パラフィン及びグリセリンを含み、流動パラフィン:グリセリン=4:6〜8:2であり、かつ、リシノール酸トリグリセライド:(流動パラフィン及びグリセリン)=1:9〜2:1であり、かつ、リシノール酸トリグリセライド、流動パラフィン及びグリセリンを水性乳化研磨組成物全体の1〜10質量%含む上記1〜3に記載した水性乳化研磨組成物。
(5) 界面活性剤として、リシノール酸塩(ヒマシ油脂肪酸塩)の塩の種類が、アンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩のいずれかである上記1〜4に記載した水性乳化研磨組成物。
(6) 界面活性剤として用いられているポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの脂肪酸がオレイン酸であり、かつ、これらの界面活性剤を研磨組成物全体の0.1〜5.0質量%含む上記1〜5に記載した水性乳化研磨組成物。
(7) 界面活性剤として用いられているリシノール酸塩:(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル)=2:8〜8:2(質量比)である上記1〜6に記載した水性乳化研磨組成物。
(8) 有機溶剤の沸点が120℃以上の飽和脂肪族炭化水素及び/又は飽和脂肪族環状炭化水素の1種又は2種以上であり、かつ、これらの有機溶剤を研磨組成物全体の10〜60質量%含む上記1〜7に記載した水性乳化研磨組成物。
(9) 増粘剤として、会合型アルカリ可溶性アクリルポリマーを用いたことを特徴とする上記1〜8に記載した水性乳化研磨組成物。
(10)上記1〜9のいずれか一つに記載された水性乳化研磨組成物を、自動車塗装面のバフ研磨用に用いること。
次に実施例によって本発明をさらに具体的に詳細に亘って説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
水49.7g中に会合型アルカリ可溶性アクリルポリマー(ロームアンドハースジャパン株式会社製プライマル
RM−5)2g、グリセリン(花王株式会社製)2g、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(花王株式会社製レオドールTW−O120V)1gを均一に混合し、50%平均粒子径35μmのアルミナ粉(住友化学製A−26を用い、篩で100μm以上の粗大粒子を除去したもの)20gを均一に分散させた。ストッダードソルベント(日石三菱株式会社製ニューソルベントF)20gに、流動パラフィン(クロンプトン社製)2g、ヒマシ油(伊藤製油株式会社製)2g、ヒマシ油脂肪酸(伊藤製油株式会社製)1g混合して、研磨粒子分散液中に乳化させた後、アルカリ剤として水酸化ナトリウム(試薬特級)0.3gを添加して組成物を増粘させ、実施例1の粗磨き用研磨組成物を得た。
水37g中に会合型アルカリ可溶性アクリルポリマー(ロームアンドハースジャパン株式会社製プライマル
RM−5)2g、実施例1のグリセリン2g、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(花王株式会社製レオドールTW−O120)1.5gを均一に混合し、50%平均粒子径35μmのアルミナ粉(住友化学製A−26を用い、篩で100μm以上の粗大粒子を除去したもの)15g及び50%平均粒子径3.4μmのシリカ粉(有限会社丸三工業所製S−8)15gを均一に分散させた。ストッダードソルベント(日石三菱株式会社製ニューソルベントF)20gに、流動パラフィン(クロンプトン社製)3g、ヒマシ油(伊藤製油株式会社製)3g、ヒマシ油脂肪酸(伊藤製油株式会社製)1g混合して、研磨粒子分散液中に乳化させた後、アルカリ剤としてトリエチルアミン(試薬特級)0.5gを添加して組成物を増粘させ、実施例2の粗磨き用研磨組成物を得た。
水18.5g中にアルカリ剤としてモルホリン(日本乳化剤株式会社製)0.5g、実施例1のグリセリン2g、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(花王株式会社製レオドールTW−O120)2gを均一に混合し、50%平均粒子径35μmのアルミナ粉(住友化学製A−26を用い、篩で100μm以上の粗大粒子を除去したもの)40gを均一に分散させた。ストッダードソルベント(日石三菱株式会社製ニューソルベントF)20gに、流動パラフィン(クロンプトン社製)を2g、ヒマシ油(伊藤製油株式会社製)4g、ヒマシ油脂肪酸(伊藤製油株式会社製)1g混合して、研磨粒子分散液中に乳化させた後、会合型アルカリ可溶性アクリルポリマー(BFGoodrich社製カーボポール981)の2%水溶液10gを添加して組成物を増粘させ、実施例3の粗磨き用研磨組成物を得た。
水30g中に会合型アルカリ可溶性アクリルポリマー(ロームアンドハースジャパン株式会社製プライマル
TT−615)0.5g、実施例1のグリセリン1g、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(花王株式会社製レオドールTW−O120)1gを均一に混合し、50%平均粒子径3.4μmのシリカ粉(有限会社丸三工業所製S−8)30gを均一に分散させた。ストッダードソルベント(日石三菱株式会社製ニューソルベントF)20g、合成イソパラフィン(日石三菱株式会社製アイソゾール400)10gに、流動パラフィン(クロンプトン社製)4g、ヒマシ油(伊藤製油株式会社製)2g、ヒマシ油脂肪酸(伊藤製油株式会社製)1g混合して、研磨粒子分散液中に乳化させた後、アルカリ剤としてプロパノールアミン(試薬特級)0.5gを添加して組成物を増粘させ、実施例4の粗磨き用研磨組成物を得た。
水64g中に会合型アルカリ可溶性アクリルポリマー(ロームアンドハースジャパン株式会社製プライマル
TT−615)1g、実施例1のグリセリン1g、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(花王株式会社製レオドールTW−O120)0.4gを均一に混合し、50%平均粒子径5μmのアルミナ粉(アルコア化成製P−808)10gを均一に分散させた。ストッダードソルベント(日石三菱株式会社製ニューソルベントF)20gに、流動パラフィン(クロンプトン社製)2g、ヒマシ油(伊藤製油株式会社製)1g、ヒマシ油脂肪酸(伊藤製油株式会社製)0.3g混合して、研磨粒子分散液中に乳化させた後、アルカリ剤として濃アンモニア水(試薬特級)0.3gを添加して組成物を増粘させ、実施例5の仕上げ用研磨組成物を得た。
水56.4g中に会合型アルカリ可溶性アクリルポリマー(ロームアンドハースジャパン株式会社製プライマルTT−615)1g、グリセリン1g、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(花王株式会社製レオドールTW−O120)0.8gを均一に混合し、50%平均粒子径1μmのアルミノシリケート粉(ENGELHARD 社製サテントンNO5)15gを均一に分散させた。ストッダードソルベント(日石三菱株式会社製ニューソルベントF)15g及び合成イソパラフィン(日石三菱株式会社製アイソゾール400)5gに、流動パラフィン(クロンプトン社製)3g、ヒマシ油(伊藤製油株式会社製)2g、ヒマシ油脂肪酸(伊藤製油株式会社製)0.5g混合して、研磨粒子分散液中に乳化させた後、アルカリ剤としてモノイソプロパノールアミン(シェルジャパン株式会社製)0.3gを添加して組成物を増粘させ、実施例6の仕上げ用研磨組成物を得た。
水64g中に会合型アルカリ可溶性アクリルポリマー(ロームアンドハースジャパン株式会社製プライマル
TT−615)1g、グリセリン1g、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(花王株式会社製レオドールTW−O120)0.4gを均一に混合し、50%平均粒子径1μmの酸化第二錫(日本化学産業製SH−S)10gを均一に分散させた。ストッダードソルベント(日石三菱株式会社製ニューソルベントF)20gに、流動パラフィン(クロンプトン社製)2g、ヒマシ油(伊藤製油株式会社製)1g、ヒマシ油脂肪酸(伊藤製油株式会社製)0.3g混合して、研磨粒子分散液中に乳化させた後、アルカリ剤として実施例3のモルホリン0.3gを添加して組成物を増粘させ、実施例7の仕上げ用研磨組成物を得た。
(比較例1)
実施例1でヒマシ油脂肪酸及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを配合せず、比較例1の粗磨き用研磨組成物を得た。
(比較例2)
実施例4でヒマシ油脂肪酸を配合せず、比較例2の粗磨き用研磨組成物を得た。
(比較例3)
実施例5でヒマシ油を配合せず、比較例3の仕上げ磨き用研磨組成物を得た。
(比較例4)
実施例5で流動パラフィンを配合せず、比較例4の仕上げ磨き用研磨組成物を得た。
(比較例5)
実施例5でグリセリンを配合せず、比較例5の仕上げ磨き用研磨組成物を得た。
I.粗磨き用研磨組成物の性能評価方法
普通乗用車の黒色ボンネット塗装(補修用速乾ウレタン塗料を塗装したもの)表面を耐水ペーパー#1200を用いて水研ぎした。粗磨き用コンパウンド(実施例1〜3、比較例1)とウールバフを用いてペーパー磨き跡の修正を行ない、ペーパー目(ペーパーの磨き傷)の除去速度、仕上げ後のバフ目(バフ及びコンパウンドによる磨き傷)、光沢、塗膜への研磨屑の固着状態及びポリッシャーのハンドリング性について評価した。
バフ研磨条件:電動ポリッシャー(リョービ株式会社製PE―2000)
ポリッシャー回転速度・・・1500rpm
バフ・・・ウールバフ(石原薬品製B−100)
押圧荷重・・・4kg
II.仕上げ磨き用研磨組成物の性能評価方法
上記、粗磨き用コンパウンド(実施例1)の磨き跡を仕上げ磨き用コンパウンド(実施例4〜7、比較例2〜6)とスポンジバフを用いて仕上げ研磨を行ない、バフ目(1.の磨き跡)の除去速度、仕上げ後のバフ目(バフ及びコンパウンドによる磨き傷)、光沢、塗膜への研磨屑の固着状態及びポリッシャーのハンドリング性について評価した。
バフ研磨条件:電動ポリッシャー(リョービ株式会社製PE―2000)
ポリッシャー回転速度・・・1500rpm
バフ・・・スポンジバフ(石原薬品製B−500)
押圧荷重・・・4kg
それぞれの評価結果を表1に表わす。

Figure 2007211085
(評価基準)
1.ペーパー目の除去速度:除去状態は目視評価
◎・・・10秒以内
○・・・10〜15秒
△・・・15〜20秒
×・・・20秒以上
2.バフ目の除去速度:除去状態は目視評価
◎・・・10秒以内
○・・・10〜15秒
△・・・15〜20秒
×・・・20秒以上
3.仕上げ後のバフ目:目視評価
◎・・・全くない
○・・・目立たない
△・・・やや目立つ
×・・・よく目立つ
4.光沢:60°鏡面光沢度計による評価
◎・・・90以上
○・・・85以上90未満
△・・・75以上85未満
×・・・75未満
5.塗膜への研磨屑の固着:目視評価
○・・・固着なし
×・・・固着あり
6.ポリッシャーのハンドリング性:実使用による相対比較
○・・・軽く操作できる
×・・・抵抗感があり、重く感じる
本発明の研磨組成物は、研磨力及び研磨速度に優れ、研磨キズが目立たず、ハンドリングが軽く、研磨後の仕上がりが良いばかりか、研磨作業中に塗膜への研磨屑の固着がなく、円滑に作業できるため、あらゆる塗膜に対して有効に研磨できるため、産業上の利用価値が高い。

Claims (10)

  1. 研磨粒子5〜60質量%、潤滑油1〜10質量%、有機溶剤10〜60質量%、界面活性剤0.1〜5.0質量%、増粘剤0.1〜2.0質量%及び水を含む水性乳化研磨組成物において、(イ)研磨粒子としてアルミナ、シリカ、アルミノシリケート、酸化第二錫から選ばれる1種又は2種以上を用い、かつ、(ロ)潤滑油としてリシノール酸トリグリセライド(ヒマシ油)及び流動パラフィン及びグリセリンを用い、かつ、(ハ)界面活性剤としてリシノール酸塩(ヒマシ油脂肪酸塩)及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを用いたことを特徴とする水性乳化研磨組成物。
  2. 研磨粒子が結晶粒子径1μm以下のα−アルミナであって、α−アルミナの50%平均粒子径が1〜50μmであり、α−アルミナの90%粒子径が100μm以下である請求項1に記載した水性乳化研磨組成物。
  3. 研磨粒子が非晶質のシリカであって、シリカの50%平均粒子径が1〜50μmであり、シリカの90%粒子径が100μm以下である請求項1に記載した水性乳化研磨組成物。
  4. 潤滑油として、リシノール酸トリグリセライド、流動パラフィン及びグリセリンを含み、流動パラフィン:グリセリン=4:6〜8:2であり、かつ、リシノール酸トリグリセライド:(流動パラフィン及びグリセリン)=1:9〜2:1であり、かつ、リシノール酸トリグリセライド、流動パラフィン及びグリセリンを水性乳化研磨組成物全体の1〜10質量%含む請求項1〜3に記載した水性乳化研磨組成物。
  5. 界面活性剤として用いるリシノール酸塩(ヒマシ油脂肪酸塩)の塩の種類が、アンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩のいずれかである請求項1〜4に記載した水性乳化研磨組成物。
  6. 界面活性剤として用いるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの脂肪酸がオレイン酸であり、かつ、これらの界面活性剤を研磨組成物全体の0.1〜5.0質量%含む請求項1〜5に記載した水性乳化研磨組成物。
  7. 界面活性剤として用いるリシノール酸塩:(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル)=2:8〜8:2(質量比)である請求項1〜6に記載した水性乳化研磨組成物。
  8. 有機溶剤の沸点が120℃以上の飽和脂肪族炭化水素及び/又は飽和脂肪族環状炭化水素の1種又は2種以上であり、かつ、これらの有機溶剤を研磨組成物全体の10〜60質量%含む請求項1〜7に記載した水性乳化研磨組成物。
  9. 増粘剤として、会合型アルカリ可溶性アクリルポリマーを用いたことを特徴とする請求項1〜8に記載した水性乳化研磨組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか一つに記載された水性乳化研磨組成物を、自動車塗装面のバフ研磨用に用いること。
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