JP2007202432A - 耐熱性カタラーゼ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記の性質を有する耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質。
(A)作用:過酸化水素に作用して水と酸素に分解する、(B)熱安定性:pH7.0の下で、pH7.0の下、30℃〜50℃で20分間の熱処理により95%以上、60℃での熱処理により80%以上、70℃での熱処理により50%以上のカタラーゼ活性が残存する、(C)pH安定性:pH6.0〜10.0の下、室温で20分間の処理により95%以上、pH5での処理により40%以上、pH4での処理により20%以上の活性が残存する、(D)分子量:33〜35KDaである、(E)由来:好熱性菌由来である
【選択図】なし
Description
[1]下記の性質を有する耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質。
(A)作用:過酸化水素に作用して水と酸素に分解する
(B)熱安定性:pH7.0の下、pH7.0の下、30℃〜50℃で20分間の熱処理により95%以上、60℃での熱処理により80%以上、70℃での熱処理により50%以上のカタラーゼ活性が残存する
(C)pH安定性:pH6.0〜10.0の下、室温で20分間の処理により95%以上、pH5での処理により40%以上、pH4での処理により20%以上の活性が残存する
(D)分子量:33〜35kDaである
(E)由来:好熱性菌由来である
[2]好熱好酸性菌由来である上記[1]に記載のタンパク質。
(a)配列認識番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列認識番号2に示すアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつ、耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質
[4]配列認識番号4又は配列認識番号6のアミノ酸配列からなる上記[3]に記載のタンパク質
[5]耐熱、耐酸性カタラーゼ活性を有する上記[3]又は[4]に記載のタンパク質。
[6]上記[3]〜[5]のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子。
[7]以下の(a)または(b)のポリヌクレオチドからなる遺伝子。
(a)配列認識番号1に示す塩基配列を含むポリヌクレオチド
(b)配列認識番号1に示す塩基配列を含むポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
[8]配列認識番号3又は配列認識番号5の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなる上記[7]に記載の遺伝子。
[9]耐熱、耐酸性カタラーゼ活性を有するタンパク質をコードする上記[7]又は[8]に記載の遺伝子。
[10]上記[7]〜[9]のいずれかに記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
[11]上記[10]に記載の組換えベクターを含有する形質転換体。
[12]上記[11]に記載の形質転換体を培養し、得られた培養物から耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質を採取する耐熱性カタラーゼの製造方法。
[13]前記形質転換体が大腸菌である場合に、1〜5mMの塩化マンガンを含有する培地で培養する上記[12]に記載の耐熱性カタラーゼの製造方法。
また、本発明の耐熱性カタラーゼのアミノ酸配列、並びに塩基配列が明確になったことから、遺伝子工学的手法を用いて低コストかつ工業的に大量生産することが可能となった。
更には、本発明の耐熱性カタラーゼは熱安定性が高いため、その製造においても、加熱処理により容易に夾雑タンパク質を不溶性画分として容易に除去できるため簡便に調製が容易である。例えば、遺伝子工学的手法により製造する場合においても、宿主由来のその他のタンパク質を容易に除去することができる。したがって、精製度を向上させることができ、信頼性の高い酵素を製造できるという利点がある。
[15]燃料電池の正極側で副生される過酸化水素を分解する上記[14]に記載の過酸化水素の分解方法。
本発明の耐熱性カタラーゼの理化学的性質は以下の通りである。
従来公知のカタラーゼと同様、過酸化水素に作用して水と酸素に分解する。
本発明の耐熱性カタラーゼは、熱安定性に優れる酵素である。
本発明の耐熱性カタラーゼは、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)中での20分間の熱処理に対して60℃以下であれば実質的に活性が低下しないことが好ましい。本明細書で、実質的に活性が低下しないとは、測定誤差範囲を考慮し、90%以上、好ましくは95%以上の活性が残存する場合をいう。また、上記と同条件の70℃での熱処理により50%以上、80℃での熱処理により30%以上、90℃での熱処理によっても20%以上活性が残存することが好ましい。
本発明の耐熱性カタラーゼは、pH安定性に優れる酵素であることが好ましい。
本発明の耐熱性カタラーゼは、pH3.0〜4.0の50mMの酢酸緩衝液、pH5.0〜8.0の50mMリン酸緩衝液、pH9.0〜10.0のグリシン−NaOH緩衝液の各緩衝液中での室温で20分間の処理に対して、pH6.0〜10では、実質的に活性が低下しないことが好ましい。更に好ましくは、pH11程度まで活性を保持でき、特に好ましくはpH12程度まで活性を保持できる。また、上記と同条件のpH5での処理によって40%以上、pH4での処理によって20%程度の活性が残存することが好ましい。
本発明の耐熱性カタラーゼの由来は、好熱性菌である。好ましくは、好熱好酸性菌である。ここで、好熱性菌とは、一般に55℃以上の高温環境下で生育する細菌である。特に、75℃までの温度で生育する細菌を中等度好熱性菌と、75℃以上で生育する細菌を高度好熱性菌と、また、90℃以上で生育する細菌は超好熱性菌と分類される。本発明においては、いずれをも含むが、特には高度好熱性菌、および超好熱性菌を意味する。好熱性菌は、温泉、熱水域、深海熱水鉱床、工場排水等の人工的熱水環境等から多種分類されている。また、ここで、好熱好酸性菌とは、上記好熱性菌の性質に加え、低いpH、一般には至適pHがpH5以下、特にはpH3以下で生育可能な細菌である。そして、好熱好酸性菌は、高温酸性温泉、火山の硫気噴気口、海底の熱水噴気口付近等より分離されている。特には、箱根、伊豆等の高温かつ酸性の温泉に生息する細菌であることが好ましい。
本発明の耐熱性カタラーゼは、そのアミノ酸組成の違いにより異なる分子量を有していてもよいが、好ましくは、約33〜35kDaの分子量を有する。
本発明の耐熱性カタラーゼは、所謂、マンガン型カタラーゼであると考えられる。そのため、下記実施例10に示す通り、本発明の耐熱性カタラーゼは、アジ化ナトリウム等、活性部位に位置する鉄イオンに結合することでタンパク質の活性を阻害する様式で作用する阻害剤によっては、その活性が阻害されない。カタラーゼの多くは、その活性部位においてプロトポルフィリンIX−鉄錯体を補欠分子族として有する、所謂「ヘム型カタラーゼ」である。しかしながら、プロトポルフィリンIX−鉄錯体の代わりにマンガンイオンをその触媒機構に利用するカタラーゼが知られている。そして、「ヘム型カタラーゼ」と区別して「マンガン型カタラーゼ」と称される。このような、マンガン型カタラーゼとして、現在までに、Lactobacillus plantarum、Thermoleophilum album、及びThermus thermophilus HB8等の数種類程度が知れているのみである。また、これらの細菌の至適生育条件は、Lactobacillus plantarumは、34.0℃、pH7.5であり、Thermoleophilum albumは、55℃、pH7.5、及びThermus thermophilus HB8は、75℃、pH7.5である。即ち、これらは、中温性、若しくは好熱性の好中性菌である。したがって、本発明の耐熱性カタラーゼの好適産生菌である好熱好酸性菌由来のマンガン型カタラーゼは、現在までには報告されていない。
また、本発明の耐熱性カタラーゼとして、これに限定されるものではないが、配列認識番号2のアミノ酸配列を含むものが好適に例示される。更に、耐熱性カタラーゼの性質を保持している限り、配列認識番号2のアミノ酸配列において、特定のアミノ酸に改変が生じている改変部位を有するアミノ酸配列を含むものであってもよい。なお、本発明の耐熱性カタラーゼは広範なpH環境下において安定性を示し、特に酸性条件下においても活性を保持できることが好ましい。改変とは、改変の基礎となるタンパク質のアミノ酸配列のうち、1または複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および付加の少なくとも1つからなる改変が生じていることを意味する。そして、「1または複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び付加の少なくとも1つからなる改変」とは、改変の基礎となるタンパク質をコードする遺伝子に対する公知のDNA組換え技術、点変異導入方法等によって、欠失、置換、挿入又は付加することができる程度の数のアミノ酸が、欠失、置換、挿入又は付加されることを意味し、これらの組み合わせをも含む。
本発明の耐熱性カタラーゼ遺伝子は、上記の本発明の耐熱性カタラーゼをコードする遺伝子である。例えば、配列認識番号2に記載されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドであり、一具体例としては、配列認識番号1に示す塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。ここで、本発明におけるポリヌクレオチドにはDNA及びRNAの双方が含まれ、DNAである場合には、1本鎖であると、二本鎖であるとは問わない。
そして、本発明の組換えベクターは、適当なベクターに本発明の遺伝子を組み込むことによって取得することができる。利用可能なベクターとしては、外来DNAを組み込め、かつ宿主細胞中で自律的に複製可能なものであれば特に制限はない。したがって、ベクターは、本発明の耐熱性カタラーゼ遺伝子を挿入できる少なくとも1つの制限酵素部位の配列を含むものである。例えば、プラスミドベクター(pEX系、pUC系、及びpBR系等)、ファージベクター(λgt10、λgt11、及びλZAP等)、コスミドベクター、ウイルスベクター(ワクシニアウイルス、及びバキュロウイルス等)等が包含される。
本発明の形質転換体は、本発明の耐熱性カタラーゼ遺伝子を含む組換えベクターで形質転換された宿主細胞である。ここで、宿主細胞としては、本発明の耐熱性カタラーゼを効率的に発現できる宿主細胞であれば、特に制限はない。原核生物を好適に利用でき、特には大腸菌を利用することができる。その他、枯草菌、バシラス属細菌、シュードモナス属細菌等をも利用できる。大腸菌としては、例えば、E.coli DH5α、E.coli BL21、E.coli JM109等を利用できる。更に、原核生物に限定されず真核生物細胞を利用することが可能である。例えば、Saccharomyces cerevisiae等の酵母、Sf9細胞等の昆虫細胞、CHO細胞、COS−7細胞等の動物細胞等を利用することも可能である。形質転換法としては、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポソームフェクション法、マイクロインジェクション法等を公知の方法を利用することができる。
本発明の耐熱性カタラーゼの製造方法は、上記本発明の形質転換体を培養し、得られた培養物から耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質を採取することにより行なう。即ち、上記本発明の形質転換体を培養する培養工程と、前記培養工程で発現した前記タンパク質を回収する回収工程とを備える。このように、適当な宿主で発現させることによって、低コストで本発明の耐熱性カタラーゼの大量生産が可能となる。
本発明の過酸化水素の分解方法は、本発明の耐熱性カタラーゼを、過酸化水素に接触させることにより行なわれる。即ち、過酸化水素を含む試料に、本発明の耐熱性カタラーゼを接触させる工程を備えて構成される。カタラーゼは過酸化水素を分解して無害な酸素と水を産生する性質を有する。更に、本発明の耐熱性カタラーゼは、特に高温、好ましくは広範囲なpHにおいて極めて安定に活性を示すという特徴を有している。そのため、食品、その他の産業分野において、残留過酸化水素の分解に極めて有効である。特には、高温、若しくは高温酸性条件下での適用に特に有用である。
カタラーゼ遺伝子のクローニング
Metallosphaera hakonensis(以下、「M.hakonensis」と略する場合がある。)のゲノムDNAからカタラーゼをコードする遺伝子をクローニングするための検討を行った。
クローニングは、M.hakonensis(ATCC Number:51241)から常法により調製したゲノムDNAを鋳型としてPCR増幅することにより行なった。
混合プライマーA1
5‘−gagcatatgttYctUagRat−3’ (配列認識番号7)
混合プライマーA2
5’−ctaaagcttaYttUgcYttYtc−3’ (配列認識番号8)
混合プライマーB1
5’−gagcatatgttYttRagRat−3’ (配列認識番号9)
混合プライマーB2
5’−ctaggatccaYttUgcYttYtc−3’ (配列認識番号10)
プライマーC1
5’−gagcatatgttcctgagga−3’ (配列認識番号11)
プライマーC2
5’−ctaaagcttacttggccttct−3’ (配列認識番号12)
B=c+g+t; D=a+g+t; H=a+c+t;
I=dI(イノシン); K=g+t; M=a+c;
N=a+c+g+t; R=a+g; S=c+g; U=dU(ウラシル);
V=a+c+g; W=a+t; Y=c+t
結果を図1に示す。図1中、レーン1〜6は、夫々、サンプル1〜6に対応する。
即ち、図1中、レーン1〜3は、M.hakonensisのゲノムDNAからのカタラーゼ遺伝子のクローニング結果を示す。そして、レーン1はプライマーセットA、レーン2はプライマーセットB、レーン3はプライマーセットCでの増幅結果を示す。
図1中、レーン4〜6は、T.aquaticusのゲノムDNAからのカタラーゼ遺伝子のクローニング結果を示す。そして、レーン1はプライマーセットA、レーン2はプライマーセットB、レーン3はプライマーセットCでの増幅結果を示す。
なお、図1中、レーンMはDNAサイズマーカー(Lambda DNA BstP I digest:Takara-bio社製)の電気泳動結果を示す。
塩基配列決定並びにアミノ酸配列の推定
実施例1で取得したカタラーゼをコードすると思われる遺伝子の塩基配列の決定を行なった。また、得られた塩基配列の配列情報に基づいて、アミノ酸配列を推定した。
実施例1で取得したM.hakonensisのゲノムDNAからカタラーゼをコードすると思われる遺伝子の塩基配列の決定を行なった。詳細には、実施例1で取得したM.hakonensisのゲノムDNAからの遺伝子断片(プライマーセットAによる増幅断片、即ち、実施例1のサンプル1)を、プラスミドDNAであるpGEM-T Easy Vector(Promega社製)に、pGEM-T Easy Vector System(Promega社製)を用いて製造業者の指示に従ってクローニングを行なった。クローニング後、反応液を大腸菌JM109株に形質転換し、形質転換体から調製したプラスミドDNAを鋳型として塩基配列の決定を行なった。塩基配列の決定は、BigDye Terminator Cycle Sequencing Kit V3.1(Applied-Biosystems社製)を用いて、製造業者の指示に従って、サイクルシーケンシング反応を実行した。このとき、シーケンシングプライマーとしては、SP6 Promoter primer(Promega社製)、並びにT7 Promoter primer(Promega社製)を使用した。反応後、反応液の全量をDNA蛍光シーケンサー(ABI PRISM 377, Applied-Biosystems社製)に供して、塩基配列を決定した。
結果を図2に示す。
図2は、実施例1で取得されたM.hakonensisカタラーゼをコードすると思われる遺伝子の塩基配列(配列認識番号3)を示す。また、かかる塩基配列に基づく推定アミノ酸配列(配列認識番号4)を下段に提示する。
図3は、実施例1で取得されたT.aquaticusカタラーゼをコードすると思われる遺伝子の塩基配列(配列認識番号13)を示す。また、かかる塩基配列に基づく推定アミノ酸配列(配列認識番号14)を下段に提示する。
相同性検索
実施例2にて判明したM.hakonensisカタラーゼをコードすると思われる推定アミノ酸配列と、公知の高度好熱性菌であるPyrobaculum calidifontis、Thermoleophilum album、Thermus brockianus及びThermus thermophilus由来の既知のカタラーゼのアミノ酸配列のアラインメントを行なった。
図4中、(*)は、アライメントを行なった5種類全てのアミノ酸残基が同じ箇所を示す。
図4中、(・)は、アライメントを行なった5種類のうち、3、又は4種類のアミノ酸残基が同じ箇所を示す。
組換えカタラーゼの製造方法の検討−1
大腸菌を宿主細胞として用いて、組換えカタラーゼの発現系を構築すると共に、大腸菌からの精製手法についての検討を行った。なお、本実施例においては、大腸菌からの精製手法中における、熱処理、及び酸処理の有効性に関して検討を行った。
上記実施例1で取得されたM.hakonensisカタラーゼ遺伝子のPCR増幅産物(プライマーセットAによる増幅断片、即ち、実施例1のサンプル1)を精製した。精製には、DNA purification kit(GE社製)を用いた。精製後、制限酵素Nde I−Hind IIIで切断してDNA断片を得た。得られたDNA断片を、制限酵素Nde I−Hind IIIで切断されたプラスミドDNA(pET22b:Novagen社製)に連結した。連結に際して、DNA Ligation Kit(Takara-bio社製)を用いた。連結後、大腸菌、E.coli BL21(DE3)を形質転換して形質転換体を作成した。
上記で得られた細胞破砕処理液を4000×gにて4℃で30分間の遠心分離を行ない、上澄み液を収集した。以下、サンプルI−2と称する。
緩衝液−A:
50mM トリス−塩酸(pH7.5)、5mM B−メルカプトエタノール、2mM EDTA、100mM NaCl
緩衝液−B:
50mM トリス−塩酸、0.2mM EDTA、0.1mM DTT
緩衝液−C:
50mM トリス−塩酸、0.2mM EDTA、0.1mM DTT、50% グリセロール
(結果)
結果を図5に示す。
図5(A)中、レーン1〜4は、夫々、サンプルI−1〜4に対応する。即ち、M.hakonensisカタラーゼ遺伝子を保持する形質転換体からのカタラーゼの製造を検討した結果であり、熱処理を、68℃にて10分間の条件下にて行なったサンプルである。
詳細には、図5(A)中、レーン1は、サンプルI−1(超音波破砕処理+蛋白可溶化処理)の電気泳動結果を示す。
図5(A)中、レーン2は、サンプルI−2(超音波破砕処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
図5(A)中、レーン3は、サンプルI−3(超音波破砕処理+熱処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
図5(A)中、レーン4は、サンプルI−4(超音波破砕処理+透析+酸処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
詳細には、図5(B)中、レーン1は、サンプルII−1(超音波破砕処理+蛋白可溶化処理)の電気泳動結果を示す。
図5(B)中、レーン2は、サンプルII−2(超音波破砕処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
図5(B)中、レーン3は、サンプルII−3(超音波破砕処理+熱処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
図5(B)中、レーン4は、サンプルII−4(超音波破砕処理+透析+酸処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
詳細には、図5(C)中、レーン1は、サンプルIII−1(超音波破砕処理+蛋白可溶化処理)の電気泳動結果を示す。
図5(C)中、レーン2は、サンプルIII−2(超音波破砕処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
図5(C)中、レーン3は、サンプルIII−3(超音波破砕処理+熱処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
図5(C)中、レーン4は、サンプルIII−4(超音波破砕処理+透析+酸処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
詳細には、図5(D)中、レーン1は、サンプルIV−1(超音波破砕処理+蛋白可溶化処理)の電気泳動結果を示す。
図5(D)中、レーン2は、サンプルIV−2(超音波破砕処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
図5(D)中、レーン3は、サンプルIV−3(超音波破砕処理+熱処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
図5(D)中、レーン4は、サンプルIV−4(超音波破砕処理+透析+酸処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
組換えカタラーゼの製造方法の検討−2
実施例4に続いて、更に、大腸菌を宿主細胞として用いて、組換えカタラーゼの発現系を構築すると共に、大腸菌からの精製手法についての検討を行った。なお、本実施例においては、宿主細胞である大腸菌の培養培地に含まれる塩化マンガン濃度に関して検討を行った。
本実施例において、宿主細胞である大腸菌の培養培地に含まれる塩化マンガン濃度の、カタラーゼの発現量、及び熱安定に与える影響に関して検討を行った。ここで、検討した塩化マンガン濃度は0.1mM、及び1mMである。
結果を図6に示す。
図6(A)中、レーン1〜3は、夫々、サンプルV−1〜3に対応する。即ち、M.hakonensisカタラーゼ遺伝子を保持する形質転換体からのカタラーゼの製造を検討した結果であり、培養を0.1mM濃度の塩化マンガンの存在下で行なったサンプルである。
詳細には、図6(A)中、レーン1は、サンプルV−1(超音波破砕処理+蛋白可溶化処理)の電気泳動結果を示す。
図6(A)中、レーン2は、サンプルV−2(超音波破砕処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
図6(A)中、レーン3は、サンプルV−3(超音波破砕処理+熱処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
詳細には、図6(A)中、レーン4は、サンプルVI−1(超音波破砕処理+蛋白可溶化処理)の電気泳動結果を示す。
図6(A)中、レーン5は、サンプルVI−2(超音波破砕処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
図6(A)中、レーン6は、サンプルVI−3(超音波破砕処理+熱処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
詳細には、図6(B)中、レーン1は、サンプルVII−1(超音波破砕処理+蛋白可溶化処理)の電気泳動結果を示す。
図6(B)中、レーン2は、サンプルVII−2(超音波破砕処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
図6(B)中、レーン3は、サンプルVII−3(超音波破砕処理+熱処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
詳細には、図6(B)中、レーン4は、サンプルVIII−1(超音波破砕処理+蛋白可溶化処理)の電気泳動結果を示す。
図6(B)中、レーン5は、サンプルVIII−2(超音波破砕処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
図6(B)中、レーン6は、サンプルVIII−3(超音波破砕処理+熱処理+遠心分離)の電気泳動結果を示す。
組換えカタラーゼの製造方法の検討−3
大腸菌を宿主細胞として用いて、組換えカタラーゼの発現系を構築すると共に、大腸菌からの精製手法についての検討を行った。本実施例においては、異なる塩化マンガン濃度で形質転換体を培養することにより製造した組換えカタラーゼについてカタラーゼ活性の測定を行い、塩化マンガン濃度が組換えカタラーゼの活性に与える影響を検討した。
上記実施例5において調製された組換えカタラーゼの活性を測定することにより、培養時における塩化マンガン濃度の活性に与える影響を検討した。ここで、検討したサンプルは、実施例5で調製したサンプルV−3、VI−3、VII−3、及びVIII−3である。
詳細には、0.1%過酸化水素と、上記で取得したカタラーゼサンプル100μLとを、50mMのトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)に混合し、60℃にて30分間反応させた。反応後、過酸化水素濃度を波長240nmの吸光度で測定し、過酸化水素の分解量を求めてカタラーゼ活性とした。そして、サンプルVII−3(即ち、形質転換体:M.hakonensisカタラーゼ、塩化マンガン濃度:0.1mM)による過酸化水素の分解量を100%として、各サンプルについて相対活性を算出した。
結果を図7に示す。
0.1mMの塩化マンガンを含む培地で培養したM.hakonensisカタラーゼ遺伝子を保持する大腸菌から調製した組換えカタラーゼは、カタラーゼ活性を示さなかった(サンプルV−3)。一方、1mMの塩化マンガンを含む培地で培養した大腸菌から調製したカタラーゼは、高いカタラーゼ活性を示した(サンプルVII−3)。
以上の結果より、0〜0.1mMの塩化マンガン濃度下での培養では、活性の有するカタラーゼが取得できないことが判明した。一方、1mM以上の塩化マンガン濃度下での培養においては、高い活性の有するカタラーゼが取得できることが判明した。したがって、実施例4、及び5の結果とも併せて、1mM以上の塩化マンガン濃度での培養によって、熱安定性が高く、かつ、活性の高い組換えカタラーゼを製造できることが判明した。
組換えカタラーゼの活性確認−1
M.hakonensisカタラーゼのpH安定性を検討した。
pH3.0、4.0、5.0、6.0、8.0、9.0、及び10.0の各pH条件下におけるカタラーゼ活性を測定することにより、M.hakonensisカタラーゼのpH安定性を検討した。M.hakonensisカタラーゼとしては、上記実施例5で調製したサンプルVII−3を用い、原液を100倍希釈して用いた。即ち、M.hakonensisカタラーゼ遺伝子を保持する形質転換体を1mMの塩化マンガン存在下で培養した後、菌体の超音波破砕処理、熱処理、及び遠心分離によってカタラーゼを精製単離したサンプルを用いた。
pH3.0、及び4.0の各緩衝液は、50mMの酢酸緩衝液にて調製し、所望のpH条件に調整した。
pH5.0、6.0、7.0、及び8.0の各緩衝液は、50mMのリン酸緩衝液にて調製し、所望のpH条件に調整した。
pH9.0、及び10.0の各緩衝液は、50mMのグリシン−NaOH緩衝液にて調製し、所望のpH条件に調整した。
結果を図8に示す。
pH5.0においても、pH8.0における約40%のカタラーゼ活性を保持できることが確認された。また、PH4.0においても約20%のカタラーゼ活性を残存していることが確認された。以上の結果より、酸性条件下においても、本発明のカタラーゼは、その活性を残存できることが判明した。また、アルカリ性条件下においても、pH9.0〜10.0においてもカタラーゼ活性を実質的に保持できることが確認された。また、pH11.0、若しくはpH12.0付近まで活性を維持できることが推測される。
組換えカタラーゼの活性確認
M.hakonensisカタラーゼの熱安定性を更に検討した。
30、40、50、60、70、80、及び90℃の各温度条件下におけるカタラーゼ活性を測定することにより、M.hakonensisカタラーゼの熱安定性を検討した。ここで、M.hakonensisカタラーゼとしては、実施例7で活性測定に用いたのと同じサンプル、即ち、実施例5で調製したサンプルVII−3を用いた。
結果を図9に示す。
30℃〜60℃においては、M.hakonensisカタラーゼは、ほぼ100%の活性を保持できることが確認できた。また、70℃においても、50%のカタラーゼ活性を残存できることが確認でき、80〜90℃においても20〜30%程度の活性を残存できることが確認できた。以上の結果より、本発明で製造されたM.hakonensisカタラーゼは、高温条件下においても安定してその活性を発揮できる熱安定性に優れた酵素であることが判明した。
組換えカタラーゼの活性確認−3
実施例8に続いて、M.hakonensisカタラーゼの熱安定性を更に検討した。
60、70、80、90℃の各温度条件下におけるカタラーゼ活性を測定することにより、M.hakonensisカタラーゼの熱安定性を検討した。ここで、M.hakonensisカタラーゼとしては、実施例7、及び8で活性測定に用いたのと同じサンプル、即ち、実施例5で調製したサンプルVII−3を用いた。
結果を図10に示す。
1mMの塩化マンガンを含む培地で培養した大腸菌から調製したM.hakonensisカタラーゼは、80℃までの熱処理に対して安定した活性を示すことが確認された。詳細には、60℃までの熱処理に対しては、M.hakonensisカタラーゼ活性の実質的な低下は確認されなかった。また、70℃にて50分間の熱処理に対しては、M.hakonensisカタラーゼ活性は60%以上の活性を、80℃にて50分間の熱処理に対しても、M.hakonensisカタラーゼ活性は20%以上の活性を保持できることが確認された。
組換えカタラーゼの活性確認−4
カタラーゼ阻害剤として知られているアジ化ナトリウムによって、その活性が影響されるかどうかを検討することにより、M.hakonensisカタラーゼの反応機構の解明を行なった。
カタラーゼ阻害剤であるアジ化ナトリウム存在下におけるM.hakonensisカタラーゼの活性に与える影響を検討した。M.hakonensisカタラーゼとしては、実施例7、8、及び9で活性測定に用いたのと同じサンプル、即ち、実施例5で調製したサンプルVII−3を用いた。
結果を図11に示す。
本発明により製造されたM.hakonensisカタラーゼは、アジ化ナトリウムによっては、その酵素活性が影響されなかった。
一方、コントロールとして用いたマウス肝臓抽出カタラーゼ調製液は、アジ化ナトリウムによってその酵素活性が阻害された。
以上の結果より、本発明のM.hakonensisカタラーゼがヘム型カタラーゼではなく、マンガン型カタラーゼであろうことが理解される。
Claims (15)
- 下記の性質を有する耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質。
(A)作用:過酸化水素に作用して水と酸素に分解する
(B)熱安定性:pH7.0の下、30℃〜50℃で20分間の熱処理により95%以上、60℃での熱処理により80%以上、70℃での熱処理により50%以上のカタラーゼ活性が残存する
(C)pH安定性:pH6.0〜10.0の下、室温で20分間の処理により95%以上、pH5での処理により40%以上、pH4での処理により20%以上のカタラーゼ活性が残存する
(D)分子量:33〜35kDaである
(E)由来:好熱性菌由来である - 好熱好酸性菌由来である請求項1に記載のタンパク質。
- 以下の(a)または(b)のタンパク質。
(a)配列認識番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列認識番号2に示すアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつ、耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質 - 配列認識番号4又は配列認識番号6のアミノ酸配列からなる請求項3に記載のタンパク質
- 耐熱、耐酸性カタラーゼ活性を有する請求項3又は4に記載のタンパク質。
- 請求項3〜5のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
- 以下の(c)または(d)のポリヌクレオチドからなる遺伝子。
(c)配列認識番号1に示す塩基配列を含むポリヌクレオチド
(d)配列認識番号1に示す塩基配列を含むポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド - 配列認識番号3又は配列認識番号5の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなる請求項7に記載の遺伝子。
- 耐熱、耐酸性カタラーゼ活性を有するタンパク質をコードする請求項7又は8に記載の遺伝子。
- 請求項7〜9のいずれか一項に記載の遺伝子を含有する組換えベクター
- 請求項10に記載の組換えベクターを含有する形質転換体。
- 請求項11に記載の形質転換体を培養し、得られた培養物から耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質を採取する耐熱性カタラーゼの製造方法。
- 前記形質転換体が大腸菌である場合に、1〜5mMの塩化マンガンを含有する培地で培養する請求項12に記載の耐熱性カタラーゼの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載のタンパク質を、過酸化水素に接触させることにより、過酸化水素を分解する過酸化水素の分解方法。
- 燃料電池の正極側で副生される過酸化水素を分解する請求項14に記載の過酸化水素の分解方法。
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