JP2007202280A - インバータモジュールの検査方法及び検査装置 - Google Patents

インバータモジュールの検査方法及び検査装置 Download PDF

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Abstract

【課題】複数のスイッチング素子と複数のダイオードが組み合わされてインバータモジュールとされたときに生じる特有の不具合を発見する。
【解決手段】本発明の検査方法は、P側スイッチング素子群の中から選択された2つ以上のP側スイッチング素子、若しくは、N側スイッチング素子群の中から選択された2つ以上のN側スイッチング素子に誘導負荷を接続する(S12)。次に、誘導負荷が接続された複数のスイッチング素子の各制御端子に順に短パルス信号を入力し(S14)、各スイッチング素子から出力される出力信号を測定する(S16)。そして、測定された出力信号が発振しているか否かを判定する(S18)。
【選択図】 図7

Description

本発明は、インバータモジュールの検査方法及び検査装置に関する。
モータ等の機器を駆動するためにインバータモジュールが用いられている。インバータモジュールは、複数のインバータユニットを備えている。インバータユニットは、インバータモジュールのP側入力端子に接続されたP側スイッチング素子と、P側スイッチング素子に直列に接続されたN側スイッチング素子を有している。N側スイッチング素子の他端は、インバータモジュールのN側入力端子に接続されている。P側スイッチング素子及びN側スイッチング素子のそれぞれにはダイオードが逆並列に接続されている。P側スイッチング素子及びN側スイッチング素子には、例えば、IGBTやパワーMOSFET等の半導体素子が用いられる。
上述したインバータモジュールによってモータ等を駆動する際には、P側入力端子が直流電源の+極に接続され、N側入力端子が直流電源の−極に接続される。各インバータユニットのP側スイッチング素子とN側スイッチング素子の中間点は、それぞれモータ等の交流入力端子に接続される。各インバータユニットのP側スイッチング素子の制御端子及びN側スイッチング素子の制御端子には、所定のタイミングで駆動信号が入力される。これによって、各インバータユニットのP側スイッチング素子とN側スイッチング素子がスイッチングし、P側スイッチング素子とN側スイッチング素子の中間点から交流信号が出力される。モータは、インバータモジュールから出力された交流信号によって駆動する。
上述したインバータモジュールは、複数のスイッチング素子と複数のダイオードから構成されている。このため、インバータモジュールが正常に機能するためには、インバータモジュールに組み込まれる各スイッチング素子の特性や各ダイオードの特性が重要となる。そこで、スイッチング素子の特性やダイオードの特性を単体の状態(チップ状態)で測定して選別し、特性の揃ったスイッチング素子やダイオードを組み立てて半導体装置を製造する技術が提案されている(特許文献1)。
特許文献1は、複数個のIGBTチップと複数個のダイオードチップを同一パッケージ内に並置した半導体装置の製造技術を開示している。この技術によると、まず、IGBTチップのスイッチング特性(ターンオン時間、ターンオフ時間等)を測定し、スイッチング特性の揃ったIGBTチップを選別する。次に、選別されたIGBTチップに対して静特性(飽和電圧、コレクタ・エミッタ耐圧等)を測定し、静特性の揃ったIGBTチップを選別する。また、ダイオードチップに対しては、静特性および逆回復特性の測定を行い、これらの特性が規格値内であるものを選別する。さらに、選別したダイオードから、逆回復特性のばらつきが10%以内となるようにダイオードチップを選別する。そして、選別されたIGBTチップとダイオードチップを組み込んで半導体装置を製造する。
特開2000−74988号公報
しかしながら、特性の揃ったスイッチング素子と、特性の揃ったダイオードによってインバータモジュールを構成しても、インバータモジュールとして使用するとスイッチング素子等が破壊する場合がある。上述した従来の技術では、スイッチング素子やダイオードの特性を単体でしか測定していないため、これらが組み合わされたときに発生する特有の不具合を発見できないという問題がある。
本発明は上述した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のスイッチング素子と複数のダイオードが組み合わされてインバータモジュールとされたときに生じる特有の不具合を発見することができる検査方法及び検査装置を提供することである。
本発明者らは、上述した課題を解決するために、まず、インバータモジュールでモータ等の機器を実際に駆動して検査を行うことを検討した。しかしながら、素子破壊を生じたインバータモジュールによってモータ等の機器を実際に駆動しても、インバータモジュールから出力される信号の波形には異常は生じなかった。
そこで、本発明者らは、さらに種々の検討を行った結果、素子破壊を生じたインバータモジュールでは、P側スイッチング素子群の中から選択された2以上のスイッチング素子(又は、N側スイッチング素子群の中から選択された2以上のスイッチング素子)を誘導負荷に接続して、これらのスイッチング素子を高速で順にスイッチングすると、これらのスイッチング素子から出力される信号が発振することを発見した。本発明は、かかる知見に基づき創作されたものである。
すなわち、本発明の検査方法は、P側入力端子に接続されたP側スイッチング素子と、P側スイッチング素子に直列に接続されると共にN側入力端子に接続されたN側スイッチング素子と、P側スイッチング素子に逆並列に接続されたP側ダイオードと、N側スイッチング素子に逆並列に接続されたN側ダイオードとから構成されるインバータユニットを複数備えたインバータモジュールを検査する。
この検査方法では、まず、P側スイッチング素子群の中から選択された2つ以上のP側スイッチング素子(若しくは、N側スイッチング素子群の中から選択された2つ以上のN側スイッチング素子)に誘導負荷を接続する。次に、誘導負荷が接続された複数のスイッチング素子の各制御端子に順に短パルス信号を入力する。そして、各制御端子に短パルス信号を入力したときの各スイッチング素子から出力される出力信号を測定し、測定された出力信号が発振しているか否かを判定する。
この検査方法によってスイッチング素子を駆動すると、不具合を有するインバータモジュールでは各スイッチング素子から出力される信号が発振し、不具合を有しないインバータモジュールでは各スイッチング素子から出力される信号が発振しない。したがって、各スイッチング素子から出力される信号の発信の有無を判定することで、インバータモジュールが不具合を有するか否かを判断することができる。
上述した駆動方法によって不具合を有するインバータモジュールを駆動したときに、各スイッチング素子から出力される信号が発振する推測理由を下記に示す。ただし、本発明の技術はその推測理由によって制約されるものではなく、あくまで特許請求の範囲に記載されている客観的要件に従う。
本発明の駆動方法によると、P型スイッチング素子群から選択された2以上のP型スイッチング素子(あるいは、N型スイッチング素子群から選択された2以上のN型スイッチング素子)を順に駆動する。このため、インバータモジュールでモータ等の機器を実際に駆動する場合よりも、これらのスイッチング素子を高速でスイッチングできる。スイッチング素子を高速でスイッチングすると、そのスイッチング素子と逆並列に配置されたダイオードは、ON状態から逆回復状態に短時間で切換えられる。これによって、スイッチング素子の異常なスイッチング(発振)が誘発されると考えられる。なお、1つのインバータユニットのP型スイッチング素子(又はN型スイッチング素子)のみを高速でスイッチングしても、スイッチング素子の異常なスイッチングは誘発されない。これは、複数のインバータユニットが相互に影響して異常なスイッチングを誘発しているものと思われる。
なお、本発明の駆動方法が、インバータモジュールでモータ等の機器を実際に駆動する場合よりも、スイッチング素子を高速でスイッチングできる理由について説明しておく。インバータモジュールでモータ等の機器を駆動する際に高速でスイッチング素子をスイッチングすると、同一のインバータユニットのP側スイッチング素子とN側スイッチング素子が同時にオン状態となり短絡することがあるため、直前のスイッチング素子がターンオフしてから次のスイッチング素子がターンオンするまでの時間間隔をある程度長く設定しなければならない。これに対して、本発明の駆動方法では、異なるインバータユニットのP型スイッチング素子(又はN型スイッチング素子)のみを順にスイッチングするため、上述した短絡といった問題は生じない。このため、本発明の駆動方法によると、スイッチング素子を高速でスイッチングすることができる。
上記の検査方法において、短パルス信号は、直前のスイッチング素子がターンオフしてから次のスイッチング素子がターンオンするまでの時間間隔が1μs以下となるように設定されていることが好ましい。このような構成によると、不具合を有するインバータモジュールにおいて発生するスイッチング素子の異常なスイッチングを誘発し易くなり、インバータモジュールが不具合を有するか否かの判定を容易に行うことができる。
なお、出力信号が発振したか否かの判定は、出力信号の電圧と予め設定された電圧値とを比較することで行うことができる。すなわち、スイッチング素子がターンオンすると出力信号が設定電圧値を超え、スイッチング素子がターンオフすると出力信号が設定電圧値より低くなるように、設定電圧値を設定する。このように設定電圧値を設定し、出力信号と設定電圧値を比較すると、スイッチング素子がターンオン(またはターンオフ)したか否かを判断することができる。したがって、スイッチング素子の制御端子への信号がオンの状態でスイッチング素子がターンオン(またはターンオフ)すれば、出力信号が発振していると判定することができる。
具体的な方法としては、例えば、出力信号と設定電圧値の比較結果の出力が変化した回数をカウントし、そのカウントした回数によって出力信号の発振の有無を判断することができる。あるいは、出力信号が設定電圧値より低い状態から設定電圧値より高い状態に変化した回数、または、出力信号が設定電圧値より高い状態から設定電圧値より低い状態に変化した回数により判定することもできる。
また、本発明は、上述した検査方法を実施することができる新規な検査装置を提供する。すなわち、本発明の検査装置は、P側入力端子に接続されたP側スイッチング素子と、P側スイッチング素子に直列に接続されると共にN側入力端子に接続されたN側スイッチング素子と、P側スイッチング素子に逆並列に接続されたP側ダイオードと、N側スイッチング素子に逆並列に接続されたN側ダイオードとから構成されるインバータユニットを複数備えたインバータモジュールを検査する装置であって、被検対象となるインバータモジュールのP側入力端子及びN側入力端子に接続される直流電源と、被検対象となるインバータモジュールのP側スイッチング素子群の中から選択された2以上のP側スイッチング素子、若しくは、N側スイッチング素子群の中から選択された2以上のN側スイッチング素子に接続される誘導負荷と、誘導負荷が接続された複数のスイッチング素子の各制御端子に順に短パルス信号を入力させる短パルス信号入力部と、各制御端子に短パルス信号が入力されたときの各スイッチング素子から出力される出力信号を測定する出力信号測定部と、出力信号測定部によって測定された出力信号が発振しているか否かを判定する判定部と、を有する。
この検査装置では、検査対象となっているインバータモジュールを直流電源と誘導負荷に接続し、誘導負荷が接続されたスイッチング素子に短パルス信号入力部より短パルス信号を入力する。出力信号測定部はスイッチング素子の出力信号を測定し、判定部は測定結果から出力信号の発信の有無を判断する。したがって、この検査装置によると上述した検査方法を好適に実施することができる。
なお、上記の短パルス信号入力部は、直前のスイッチング素子がターンオフしてから次のスイッチング素子がターンオンするまでの時間間隔が1μs以下となるように、各制御端子に短パルス信号を入力させることが好ましい。
また、判定部は、出力信号の電圧が予め設定された電圧値を超えた回数に基づいて出力信号の発振の有無を判定することができる。
以下、本発明を具現化した一実施形態について図面を参照して説明する。図1は検査対象となるインバータモジュール10と、インバータモジュール10を検査する検査装置(高圧電源40,電圧検出回路48,パルスジェネレータ52等)とを併せて示す図である。まず、検査対象となるインバータモジュール10について説明する。
図1に示すようにインバータモジュール10は、入力する直流電力を3相の交流電力(U相,V相,W相)に変換するインバータ回路(22〜33)と、インバータ回路(22〜33)を駆動する制御回路20を有している(すなわち、インバータモジュール10は、いわゆるIPM(インテリジェント・パワー・モジュール)である)。
インバータ回路(22〜33)は、P側入力端子12に接続されたP側配線16と、N側入力端子14に接続されたN側配線18との間に設けられている。P側配線16とN側配線18の間にはコンデンサ34も配されている。コンデンサ34は、インバータ回路(22〜33)に入力する直流電源電圧を安定化している。
インバータ回路(22〜33)は、U相の交流電力を出力するインバータユニット(22〜25)と、V相の交流電力を出力するインバータユニット(26〜29)と、W相の交流電力を出力するインバータユニット(30〜33)を有している。
U相のインバータユニット(22〜25)は、IGBT22と、IGBT22に直列に接続されたIGBT24を有している。IGBT22とIGBT24の接続点からU相の交流電力が出力される。IGBT22のコレクタ端子はP側配線16に接続されており、IGBT22のエミッタ端子はIGBT24のコレクタ端子に接続されている。IGBT24のエミッタ端子はN側配線18に接続されている。IGBT22,24のゲート端子は、制御配線36a,36bによって制御回路20に接続されている。IGBT22,24は、制御回路20によってオン・オフされる。
また、IGBT22にはダイオード23が逆並列に接続されている。IGBT24にはダイオード25が逆並列に接続されている。ダイオード23,25は、誘導負荷に蓄積された電磁エネルギーによって生じるフライホイール電流をIGBT22,24のエミッタ端子側からコレクタ端子側に流す経路を形成する。
なお、図から明らかなように、V相のインバータユニット(26〜29)とW相のインバータユニット(30〜33)は、U相のインバータユニット(22〜25)と同一構成を有している。また、IGBT22,24,26,28,30,32には、素子単体のスイッチング特性及び静特性が略同一のものが用いられている。ダイオード23,25,27,29,31,33にも、素子単体の静特性及び逆回復特性が略同一のものが用いられている。
制御回路20は、外部から入力される信号に応じてインバータ回路(22〜33)のIGBT22,24,26,28,30,32をオン・オフする。例えば、インバータモジュール10によって車載用モータを駆動する場合は、モータ制御部(モータECU)からのPWM信号が制御回路20に入力される。制御回路20は、モータECUから入力されるPWM信号に基づいてIGBT22,24,26,28,30,32をオン・オフする。これによって、インバータモジュール10からモータの回転状態に応じた3相交流電力が出力される。
次に、上述したインバータモジュール10を検査する検査装置について説明する。検査装置は、インバータモジュール10の入力側に接続される高圧電源40と、インバータモジュール10の出力側に接続される誘導負荷46と、インバータモジュール10の制御回路20に接続されるパルスジェネレータ52と、誘導負荷46の両端の電位差を計測する電圧検出回路48と、電圧検出回路48で検出された信号の処理等を行うコンピュータ54とから構成される。
高圧電源40は、インバータモジュール10の仕様に応じた出力の直流電源である。例えば、インバータモジュール10によって車載用モータを駆動する場合、その車載用モータを駆動するバッテリーに応じた出力の直流電源とされる。高圧電源40の+極はインバータモジュール10のP側入力端子12に接続され、高圧電源40の−極はインバータモジュール10のN側入力端子14に接続される。
誘導負荷46は、インバータモジュール10によって駆動される機器に応じた抵抗値及びインダクタンスを有するコイルが用いられる。例えば、インバータモジュール10によって車載用モータを駆動する場合は、その車載用モータに応じた抵抗値及びインダクタンスを有するコイルが用いられる。
誘導負荷46は、インバータ回路(22〜33)のP側のIGBT22,26,30から選択された2つのIGBT、または、N側のIGBT24,28,32から選択された2つのIGBTに接続される。図1にはU相のP側IGBT22とV相のP側IGBT26に接続された状態が示されている。図1から明らかなように、IGBT22とIGBT26に誘導負荷46を接続する場合、誘導負荷46の一端を配線42によってIGBT22とIGBT26のエミッタ端子に接続し、誘導負荷46の他端を配線44によってN側配線18に接続する。また、V相のP側のIGBT26とW相のIGBT30に誘導負荷46を接続する場合は図5に示すように接続する。
なお、N側のIGBT24,28,32に接続する場合、誘導負荷46の一端をN側のIGBT24,28,32の中から選択した2つのIGBTのコレクタ端子に接続し、誘導負荷46の他端をP側配線18に接続する。図6にはU相のN側IGBT24とV相のN側のIGBT28に誘導負荷46を接続した例を示している。
パルスジェネレータ52は、中継基板50を介して制御回路20に接続されている。パルスジェネレータ52は制御回路20に信号を入力し、これによって制御回路20はIGBT22,24,26,28,30,32のゲート端子にパルス信号を入力する。したがって、パルスジェネレータ52が請求項でいう短パルス信号入力部に相当する。
パルスジェネレータ52は、制御回路20に入力する信号を制御することで、任意のIGBT22,24,26,28,30,32をオン・オフすることができ、また、IGBT22,24,26,28,30,32をオンしている時間、並びに、直前のIGBTをターンオフしてから次のIGBTをターンオンするまでの時間間隔を任意に調整することができる。パルスジェネレータ52から制御回路20に入力される信号は、コンピュータ54によって設定される。
電圧検出回路48は、誘導負荷46に接続され、誘導負荷46の両端の電位差(すなわち、誘導負荷46に接続されたIGBTの出力信号の電圧)を検出する。電圧検出回路48はコンピュータ54に接続されている。電圧検出回路48の出力はコンピュータ54に入力される。
コンピュータ54には、汎用のパーソナルコンピュータを用いることができる。コンピュータ54には、パルスジェネレータ52と電圧検出回路48が接続される。コンピュータ54は、パルスジェネレータ52から制御回路20に入力する信号の設定を行う。これによって、インバータモジュール10の任意のIGBTを、任意のタイミングでオン・オフすることができる。また、コンピュータ54は、電圧検出回路48からの出力を解析し、IGBTの出力信号が発振しているか否かの判定をする。すなわち、コンピュータ54は、インバータモジュール10が正常か異常かを判定する(不具合の有無を判定する)。
次に、上述した検査装置を用いてインバータモジュール10を検査する際の検査フローを説明する。図7に示すように、まず、インバータモジュール(IPM)10を検査装置にセットする(S10)。すなわち、インバータモジュール10の入力側に高圧電源40を接続し、インバータモジュール50の制御回路20に中継基板50を介してパルスジェネレータ52を接続する。
次に、インバータモジュール10のIGBT22,24,26,28,30,32の中から選択した2つのIGBTに誘導負荷46を接続する(S12)。すなわち、P側のIGBT22,26,30から選択された2つのIGBT、または、N側のIGBT24,28,32から選択された2つのIGBTに誘導負荷46を接続する。
インバータモジュール10に誘導負荷46を接続すると、次に、パルスジェネレータ52から制御回路20に信号を入力し、制御回路20から誘導負荷46に接続されたIGBTのゲート端子にパルス信号を入力させる(S14)。これによって、誘導負荷46に接続されたIGBTが順にスイッチングされ、このIGBTのスイッチングに応じてIGBTから出力される信号の電圧が変化する。
誘導負荷46に接続されたIGBTのゲート端子にパルス信号を入力すると同時に、パルス信号が入力されたIGBTから出力される出力信号の電圧を検出する(S16)。すなわち、電圧検出回路48によって誘導負荷46の両端の電位差を検出する。
図2はIGBT22とIGBT26に誘導負荷46を接続し、IGBT22のゲート端子とIGBT26のゲート端子にパルス信号を入力したときの、IGBT22,26のゲート端子に入力される信号の電圧と、IGBT22,26から出力される出力信号の電圧が模式的に示されている(正常な素子の波形)。図2に示すように、IGBT22,26のゲート端子には順にパルス信号が入力され、それによってIGBT22,26は順にスイッチングする。IGBT22,26から出力される出力信号は、IGBT22,26のスイッチングに応じてオン状態(数Vの状態)とオフ状態(0Vの状態)に切り替わる。
次に、コンピュータ54は、電圧検出回路48で検出される信号が発振しているか否か(IGBTが異常なスイッチングをしているか否か)を判定する(S18)。すなわち、誘導負荷に接続されたIGBTが異常な素子である場合、IGBTから出力される出力信号が発振する。コンピュータ54は、出力される信号が発振しているか否かを判定することで、誘導負荷46に接続されたIGBTが正常か異常かを判定する。
図3は、IGBT22とIGBT26が異常な素子の場合に、IGBT22,26から出力される出力信号の電圧を模式的に示している(異常な素子の波形)。図3から明らかなように、IGBT22,26から出力される信号は、IGBT26のゲート端子にパルス信号を入力する際に発振が生じている(すなわち、IGBT26が異常なスイッチングを行っている)。コンピュータ54は、電圧検出回路48で検出される信号が図3に示すような発振現象を生じているか否かを判断する。
ここで、発振現象を生じているか否かの判断は、出力信号と予め設定されたスクリーニング電圧を比較することによって行うことができる。例えば、図4に示すように、出力信号がオン状態の電圧値より低く、出力信号がオフ状態の電圧値より高い、スクリーニング電圧を設定する。出力信号が発振すると(IGBTが異常なスイッチングを行うと)、出力信号の電圧はスクリーニング電圧より高い状態から低い状態へ、また、低い状態から高い状態への移行を繰返す。したがって、出力信号とスクリーニング電圧を比較し、出力信号とスクリーニング電圧とが交差するポイントをカウントすることで、出力信号が発振しているか否かを判断することができる。すなわち、IGBTのゲートがオンしている間に出力信号とスクリーニング電圧とが交差すれば(交差回数n≧1)、出力信号は発振していると判定できる。図4に示す例では交差回数n=4となっている。一方、IGBTのゲートがオンしている間に出力信号とスクリーニング電圧とが交差しなければ(n=0)、出力信号は発振していないと判断できる。
コンピュータ54によって出力信号が発振していると判定されると(S18でYES)、インバータモジュール10はNG品(不良品)と判定される(S24)。出力信号が発振していないと判定されると(S18でNO)、全てのIGBTの組合せについて検査したか否かが判断される(S20)。
全てのIGBTの組合せについて検査を行っている場合(S20でYES)、検査したインバータモジュール10は良品と判定される(S26)。一方、全てのIGBTの組合せについて検査を行っていない場合(S20でNO)、誘導負荷46を接続するIGBTを変更し(S22)、ステップS14からの処理を繰り返す。これによって、全てのIGBTの組合せ、すなわち、IGBT(22,26),IGBT(26,30),IGBT(30,22),IGBT(24,28),IGBT(28,32),IGBT(32,24)について検査が行われる。
ここで、自動車に搭載されるモータを駆動するインバータモジュールに対して本実施形態の検査を行った実験例を説明しておく。図8は、直前のIGBTがターンオフしてから次のIGBTがターンオンするまでの時間間隔tを変えながら本実施形態の検査を行ったときの、発振現象の有無(交差回数)と正常/異常の関係を示している。図中、黒丸,黒三角,黒四角は素子破壊が生じたインバータモジュールのデータであり、白丸は素子破壊が生じなかったインバータモジュールのデータである。
図8から明らかなように、素子破壊が生じたインバータモジュールでは、時間間隔tが1μsを超える条件では発振現象が現れず(すなわち、交差回数n=0)、時間間隔tが1μs以下の条件で発振現象が生じた(すなわち、交差回数n>0)。一方、素子破壊が生じていないインバータモジュールでは、時間間隔tが1μs以下の条件でも発振現象が生じていなかった(すなわち、交差回数n=0)。上記の結果より、自動車に搭載されるインバータモジュールでは、時間間隔tを1μs以下として検査を行うことで、インバータモジュールが正常か異常かを判断することができる。なお、時間間隔tは、検査対象となるインバータモジュールに応じて適宜設定することが好ましい。
上述した説明から明らかなように本実施形態の検査方法では、インバータモジュール10の状態でIGBT22,24,26,28,30,32の各組合せについて検査する。このため、IGBT22,24,26,28,30,32とダイオード23,25,27,29,31,33を組み合わせてインバータモジュール10としたときに発生する特有の不具合を発見することができる。
以上、本発明の好適ないくつかの実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
例えば、上述した実施形態では、誘導負荷46を2つのIGBTに接続して検査する例を説明したが、本発明はこのような形態に限られない。例えば、図9に示すように、誘導負荷46を3つのIGBT22,26,30に接続して検査を行うようにしてもよい。この場合、IGBT22→IGBT26→IGABT30の順に、これらのIGBTをスイッチングさせて検査する。また、N側のIGBT24,28,32についても、これら3つのIGBT24,28,32に誘導負荷46を接続して検査を行えばよい。3つのIGBTに誘導負荷を接続すると、検査するIGBTの組合せが減り、短時間で検査を行うことができる。
また、上述した実施形態では、3相交流出力のインバータモジュールを検査する例であったが、本発明の検査対象となるインバータモジュールは3相交流出力に限られず、任意の数のインバータユニットが組み合わされたインバータモジュールを検査することができる。
なお、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
本実施形態に係るインバータモジュールの構成と、このインバータモジュールを検査する検査装置の構成を併せて示す図。 検査対象となっている各IGBTのゲート端子に入力される信号の電圧と、各IGBTから出力される出力信号の電圧を模式的に示す図(正常な素子の波形)。 検査対象となっている各IGBTのゲート端子に入力される信号の電圧と、各IGBTから出力される出力信号の電圧を模式的に示す図(異常な素子の波形)。 出力信号の発振の有無を判断する手法を説明するための図。 接続される誘導負荷を変更した状態を示す図。 N側のIGBTに誘導負荷を接続した状態を示す図。 本実施形態の検査装置を用いた検査手順を示すフローチャート 本実施形態の検査を車載用モータを駆動するインバータモジュールに実施したときの実験データ。 誘導負荷を3つのIGBTに接続した状態を示す図。
符号の説明
10・・インバータモジュール
20・・制御回路
22,24,26,28,30,32・・IGBT
23,25,27,29,31,33・・ダイオード
40・・高圧電源
46・・誘導負荷
48・・電圧検出回路
52・・パルスジェネレータ
54・・コンピュータ

Claims (6)

  1. P側入力端子に接続されたP側スイッチング素子と、P側スイッチング素子に直列に接続されると共にN側入力端子に接続されたN側スイッチング素子と、P側スイッチング素子に逆並列に接続されたP側ダイオードと、N側スイッチング素子に逆並列に接続されたN側ダイオードとから構成されるインバータユニットを複数備えたインバータモジュールの検査方法であって、
    P側スイッチング素子群の中から選択された2つ以上のP側スイッチング素子、若しくは、N側スイッチング素子群の中から選択された2つ以上のN側スイッチング素子に誘導負荷を接続する工程と、
    誘導負荷が接続された複数のスイッチング素子の各制御端子に順に短パルス信号を入力する工程と、
    各制御端子に短パルス信号を入力したときの各スイッチング素子から出力される出力信号を測定する工程と、
    測定された出力信号が発振しているか否かを判定する工程と、を有することを特徴とするインバータモジュールの検査方法。
  2. 前記短パルス信号は、直前のスイッチング素子がターンオフしてから次のスイッチング素子がターンオンするまでの時間間隔が1μs以下となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のインバータモジュールの検査方法。
  3. 前記判定工程は、出力信号の電圧と予め設定された電圧値とを比較することで出力信号の発振の有無を判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のインバータモジュールの検査方法。
  4. P側入力端子に接続されたP側スイッチング素子と、P側スイッチング素子に直列に接続されると共にN側入力端子に接続されたN側スイッチング素子と、P側スイッチング素子に逆並列に接続されたP側ダイオードと、N側スイッチング素子に逆並列に接続されたN側ダイオードとから構成されるインバータユニットを複数備えたインバータモジュールを検査する装置であって、
    被検対象となるインバータモジュールのP側入力端子及びN側入力端子に接続される直流電源と、
    被検対象となるインバータモジュールのP側スイッチング素子群の中から選択された2以上のP側スイッチング素子、若しくは、N側スイッチング素子群の中から選択された2以上のN側スイッチング素子に接続される誘導負荷と、
    誘導負荷が接続された複数のスイッチング素子の各制御端子に順に短パルス信号を入力させる短パルス信号入力部と、
    各制御端子に短パルス信号が入力されたときの各スイッチング素子から出力される出力信号を測定する出力信号測定部と、
    出力信号測定部によって測定された出力信号が発振しているか否かを判定する判定部と、を有することを特徴とするインバータモジュールの検査装置。
  5. 短パルス信号入力部は、直前のスイッチング素子がターンオフしてから次のスイッチング素子がターンオンするまでの時間間隔が1μs以下となるように、各制御端子に短パルス信号を入力させることを特徴とする請求項4に記載のインバータモジュールの検査装置。
  6. 判定部は、出力信号の電圧と予め設定された電圧値とを比較することで出力信号の発振の有無を判定することを特徴とする請求項4又は5に記載のインバータモジュールの検査装置。
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