JP2007197444A - 不飽和脂肪から出発してオレフィンと、ジエステルまたは二酸とを同時生成させる方法 - Google Patents

不飽和脂肪から出発してオレフィンと、ジエステルまたは二酸とを同時生成させる方法 Download PDF

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Abstract

【課題】不飽和脂肪からアルファオレフィンと、長鎖ジエステルまたは二酸とを同時に生成させる方法を提供する。
【解決手段】a)帯域Iにおける非水性イオン液の存在下での不飽和脂肪のエチレンとのメタセシス工程と、b)帯域IIにおけるイオン液の分離・リサイクルする工程と、c)帯域IIIにおけるオレフィンフラクション(フラクションA)と、不飽和脂肪モノエステルまたは一塩基酸フラクション(フラクションB)との分離工程と、d)帯域IVにおけるフラクションBのホモメタセシス工程と、e)場合による、触媒含有イオン液をリサイクルする工程との一連の工程を包含する方法が行われる。
【選択図】図1

Description

本発明は、不飽和脂肪からオレフィンと、不飽和ジエステルまたは二酸とを同時生成させる方法に関する。
アルファオレフィン、より特定的には、1−デセンは、石油化学において望ましい合成中間体であり、通常、エチレン等の化石出発材料から全体的に製造されている。合成潤滑油であり、アルコールの調製および多く他の工業化学製造法において用いられるポリ−アルファ−オレフィン(poly-alpha-olefins:PAO)の製造において1−デセンは特に重要である。本質的に動物または植物起源でありそれ故に再生可能な出発材料からのこのようなオレフィンの製造は、潜在的に非常に興味深い。
長鎖ジエステルまたは二酸、より特定的には、9−オクタデセン−1,18−二酸は、所定のポリマーの製造における望ましい中間体であり、一般的には、石油由来のパラフィンを発酵させることによって得られる。本質的に動物または植物起源でありそれ故に再生可能な出発材料からのそれらの製造も潜在的に非常に興味深い。
前記2種の化合物は、植物または動物起源の出発材料、例えば、植物油中に主として存在する不飽和脂肪酸またはエステルからメタセシス反応によって独立して得られ得る。
本出願人の特許文献1には、少なくとも1種の非水性イオン液の存在下での不飽和脂肪のエチレンとのメタセシスのための反応が記載されている。該反応は、オレフィンフラクションと、モノアルコールまたはポリオールエステルの組成物との両方を生成させることができる。より詳細には、オレインヒマワリ種子油、オレインナタネ油または前記油のモノアルコールエステル混合物に適用された場合に、この方法は、オレフィンフラクションと、鎖の過半数が概して不飽和C10鎖によって構成されるモノアルコールまたはグリセロールエステルの組成物との両方を生成させることができる。
本出願人のフランス特許出願第06/00645号(2006年1月24日出願)には、少なくとも1種の非水性イオン液の存在下でのホモメタセシス反応によって不飽和脂肪が反応させられて、二重結合が内部の位置にある長鎖オレフィンフラクションと、モノアルコールジエステルまたは二酸の組成物との両方を生成させる方法が記載されている。より詳細には、オレインヒマワリ種子油またはオレインナタネ油のエステルの混合物に適用された場合に、この方法は、オレフィンフラクションと、鎖の過半数が概して不飽和C18鎖によって構成されるモノアルコールのジエステルまたは二酸の組成物との両方を生成させることができる。
仏国特許出願公開第2878246号明細書
本発明は、不飽和脂肪からアルファオレフィンと、長鎖ジエステルまたは二酸とを同時に生成させる方法を提供することを目的とする。
本発明は、オレフィンと、不飽和ジエステルまたは二酸とを同時生成させる方法であって、
a)少なくとも1種の非水性イオン液および少なくとも1種の触媒の存在下での不飽和エステルまたは脂肪酸に富む少なくとも1種の不飽和脂肪のエチレンとのメタセシス工程と、
b)工程a)において用いられた触媒を含有するイオン液を分離してこれをリサイクルするための工程と、
c)工程a)において生成させられた、オレフィンと、不飽和エステルまたは酸とを分離するための工程と、
d)少なくとも1種の触媒の存在下に液相において行われる、工程a)において生成させられ、工程c)において分離された一価不飽和エステルまたは酸のホモメタセシス工程と、
e)場合による、工程d)において用いられた時の触媒を含有するイオン液を分離し、これをリサイクルするための工程と
を包含する方法を提案する。
この一連の工程は、主として二重結合が末端位置にあるオレフィン(アルファオレフィン)と、主として不飽和長鎖ジエステルまたは二酸とを同時に生成させることができる。本方法の利点の一つは、本方法の工程d)において同時生成させられたエチレンが、これを第1のメタセシス工程への入口にリサイクルすることによって再使用され得ることである。
本発明はまた、本発明の方法を行うために用いられる設備に関する。
本発明の方法は、不飽和脂肪からオレフィンフラクションと、ジエステルまたは二酸の組成物との両方を生成させる方法であって、
a)メタセシス条件下に、12〜22個の炭素原子を含有し、かつ、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含む少なくとも1種の一塩基カルボン酸または該一塩基酸のモノエステルを含む少なくとも1種の不飽和脂肪を、触媒存在下および少なくとも1種の非水性イオン液の存在下に、過剰のエチレンと接触させて、オレフィンフラクションと、不飽和脂肪のモノエステルまたは一酸のフラクションとを一緒に生成させる工程と、
b)工程a)において用いられた触媒を含有するイオン液を分離し、これをリサイクルする工程と、
c)工程a)において生成させられたオレフィンフラクション(フラクションA)および不飽和脂肪モノエステルまたは一酸フラクション(フラクションB)を分離する工程と、
d)工程c)において分離された不飽和脂肪モノエステルまたは一酸のフラクションBのホモメタセシスの工程であって、該ホモメタセシスは、少なくとも1種の触媒の存在下に液相中で行われる、工程と
の一連の工程を包含するものである。
工程a)において、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含み、かつ、12〜22個の炭素原子を含有する少なくとも1種の一塩基カルボン酸と、1〜8個の炭素原子を含有する少なくとも1種の一価水酸化脂肪族化合物(モノアルコール)との間で形成された少なくとも1種のエステルを含む不飽和脂肪によって構成された供給材料を用いることが好ましい。
工程a)において、オレフィンフラクションAと、鎖の少なくとも一部が不飽和C10鎖によって構成されるモノアルコールエステルの組成物(フラクションB)との両方を生成させるために、オレインヒマワリ種子油およびオレインナタネ油のモノアルコールエステルの混合物から選択される不飽和脂肪を用いることが好ましい。
工程a)において導入される供給材料は、
・オレイン酸メチル: 約83重量%;
・リノール酸メチル 約10重量%;
・パルミチン酸メチル 約3重量%;
・ステアリン酸メチル 約4重量%
の組成を有するオレインヒマワリ種子油のメチルエステルであることが好ましい。
好ましくは、得られるフラクションAは、主として1−デセンであり、フラクションBは主として9−デセン酸メチルである。
非水性イオン液は、一般式Q(式中、Qは、第四ホスホニウム、第四アンモニウム、第四グアニジニウムまたは第四スルホニウムを示し、Aは、90℃以下で液体塩を形成することが可能なあらゆるアニオンを示す)の液体塩によって形成される群から選択されることが好ましい。
工程a)およびd)の触媒として少なくとも1種のルテニウム化合物が用いられることが好ましい。
工程b)は、蒸留またはデカンテーションのいずれかによって工程a)からの触媒および反応生成物を含有するイオン液相を分離する工程であることが好ましい。
工程c)間に蒸留によってフラクションAおよびBを分離する工程を包含することが好ましい。
フラクションAのモノオレフィンおよびジオレフィンを蒸留により分離する工程をさらに包含することが好ましい。
工程d)において導入される供給材料は、モノアルコールエステルの形態にある9−デセン酸のエステルであることが好ましい。
工程a)においてエチレンを再使用するために工程d)の間に同時生成させられたエチレンを抽出する工程を包含することが好ましい。
工程d)のホモメタセシスは、触媒を含有する非水性イオン液の存在下に行われることが好ましい。
工程d)において用いられた、触媒を含有するイオン液を分離し、これをリサイクルする工程をさらに包含することが好ましい。
本発明は、上記のいずれか1つに記載の方法を行うための設備であって、
・メタセシス帯域I;該帯域は、不飽和脂肪を導入するための少なくとも1つの手段(1)と、エチレンを導入するための少なくとも1つの手段(2)と、触媒を導入するための少なくとも1つの手段(3)とを含み、流出物は、少なくとも1つの手段(4)を経て帯域Iから取り除かれる;
・帯域Iからの流出物から、触媒を含有するイオン液が分離され、リサイクルされる帯域II;該帯域は、帯域Iからの流出物を導入するための少なくとも1つの手段(4)と、触媒を含有するイオン液を帯域Iへの入口にリサイクルするための少なくとも1つの手段(5)と、オレフィンフラクションと、不飽和エステルまたは脂肪酸フラクションとを含有する有機相を取り除くための少なくとも1つの手段(6)とを含む;
・分離帯域III;該帯域は、帯域IIからの流出物を導入するための少なくとも1つの手段(6)と、オレフィンフラクションAを取り除くための少なくとも1つの手段(7)と、不飽和エステルまたは脂肪酸によって構成されるフラクションBを取り除くための少なくとも1つの手段(8)とを含む;
・ホモメタセシス帯域IV;該帯域は、帯域III由来の転化させられるべき流出物を導入するための少なくとも1つの手段(8)と、形成された不飽和長鎖ジエステルまたは二酸を主として含有する流出物を取り除くための少なくとも1つの手段(9)と、ホモメタセシス反応によって同時生成させられたエチレンを分離するための少なくとも1つの手段(10)と、触媒を導入するための少なくとも1つの手段(11)とを含み、該帯域IVにおけるエチレンを分離するための手段(10)は、帯域Iにエチレンを導入するための手段(2)に接続されている;
の帯域I〜IVによって構成される設備である。
触媒を含有するイオン液を、形成された流出物から分離するための帯域Vをさらに含み、該帯域Vは、イオン液を分離し、これを帯域IVへの入口にリサイクルするための少なくとも1つの手段(12)と、前記帯域において形成された流出物を分離するための少なくとも1つの手段(13)とを含むことが好ましい。
本発明の方法は、オレフィンフラクションと、脂肪の二酸またはジエステルの組成物との両方を生成させるために、
a)少なくとも1種の非水性イオン液の存在下での不飽和脂肪のエチレンとのメタセシス工程と
b)第1工程において用いられたイオン液を分離し、これをリサイクルする工程と、
c)蒸留によって、工程a)において形成された、オレフィンフラクション(フラクションA)を、不飽和脂肪モノエステルまたは一塩基酸フラクション(フラクションB)から分離する工程と、
d)不飽和脂肪ジエステルまたは二酸(フラクションC)と、本方法の第1のメタセシス工程にリサイクルされるエチレンとの同時生成を可能にする、一価不飽和脂肪エステルまたは酸留分(フラクションB)のホモメタセシス工程と、
e)場合による、工程d)において用いられた触媒を含有するイオン液をリサイクルする工程との一連の工程を包含する。
本発明によって、不飽和脂肪を出発原料として、工程a)によりアルファオレフィンが得られ、工程d)により長鎖ジエステルまたは二酸が得られる。
オレインヒマワリ油、オレインナタネ油またはこれらの油のモノアルコールエステルの混合物に対する適用の中で、本方法は、オレフィンフラクション(主として1−デセンからなる)と、一般的には鎖の過半数が不飽和C18鎖によって構成されるジエステルまたは二酸の組成物(主として、9−オクタデセン−1,18−二酸またはジエステルからなる)との両方を生成させ、かつ、用いられたエチレンをリサイクルすることができる。
本発明の方法において処理される供給材料は、12〜22個の炭素原子を含有し、かつ、少なくとも1つのエチレン性の不飽和結合を含む少なくとも1種の一塩基カルボン酸および/または前記の一塩基酸と少なくとも1種の一価の水酸化飽和脂肪族化合物(例えば1〜8個の炭素原子を含有するモノアルコール)との間で形成されるモノエステルを含む不飽和脂肪である。
より詳細には、本発明の方法は、オレイン酸、鎖が単一の不飽和結合を有する脂肪酸、またはその誘導エステルに特に適用されるものである。この場合に、本方法は、1−デセンと、9−オクタデセンの1,18−二酸または対応するジエステルとの2種の生成物のみを生成させる。
しかしながら、脂肪鎖がもっぱらオレイン鎖によって構成される植物または動物起源の脂肪は、天然には存在しない。このため、純粋なオレイン酸エステルを得るには、通常は、困難な条件下での蒸留を用いる分離および精製操作を使用することが必要であり、それを高価なものにしている。
得られた生成物の性質およびそれらの量は、それ故に、用いられる出発脂肪の脂肪酸の組成物(性質および豊富さ)に依存する。
1−デセンに富む生成物を生成させるには、オレイン酸エステルに富む出発材料を使用することを必要とする。
前記油は、好ましくは、モノアルコールのエステルの混合物の形態で用いられる。モノアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、またはより一般的には、1〜8個の炭素原子を含有するあらゆるモノアルコール等である。
オレインヒマワリ種子油またはオレインナタネ油中または前記油のモノアルコールエステル中に存在する飽和脂肪酸エステルは、メタセシス反応に反応性ではなく、操作の終了時に回収される。
考慮中である植物油(または当該油のモノアルコールエステル)は、好ましくは、オレインヒマワリ種子油またはオレインナタネ油(または当該油のモノアルコールエステル)から選択される。これらの特定の油およびこれらの油から誘導されるモノアルコールエステルは、それらの脂肪酸組成、特に、それらの不飽和脂肪酸の性質および比率によって特徴付けられる。これらの油またはこれらの油のモノアルコールエステルにおいて、一般的には、少なくとも80%の脂肪酸鎖は、オレイン鎖(C18)によって構成され、リノール脂肪鎖含有量は12%を超えず、リノレン酸脂肪鎖の含有量は0.3%を超えない。他のオレフィン性の鎖は、前記油中またはモノアルコールエステル中に0.3%を超える量で存在せず、その一方で、飽和鎖、例えば、パルミチン酸またはステアリン酸の量は、5〜15%である。
例えば、下記組成を有するオレインヒマワリ種子油のメチルエステルが考慮される:
・オレイン酸メチル 約83重量%;
・リノール酸メチル 約10重量%;
・パルミチン酸メチル 約3重量%;
・ステアリン酸メチル 約4重量%。
本発明の方法の種々の工程の特定の条件がここで考慮され、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含有する脂肪を用いて行われ、主としてアルファオレフィンからなるオレフィンフラクションと、不飽和長鎖ジエステルまたは二酸とを同時に生成させることが目的とされる。
第1工程a)の主目的は、植物油から誘導された不飽和エステルまたは脂肪酸、特に、組成が上記に説明されたオレインヒマワリ種子油のメチルエステルを次のフラクションに変換することである:
・最初に、主として1−デセンのオレフィンフラクション(フラクションA);
・次いで、鎖の過半数が不飽和C10鎖によって構成されるエステルの混合物(フラクションB);前記組成物は、あらゆる既知の脂肪に対応しない;このようなエステル混合物は、不飽和C10鎖の濃度が非常に高いことを特徴とする;それは、炭素鎖上の9位の炭素原子と10位の炭素原子との間に位置する不飽和結合の位置によっても特徴付けられる;不飽和結合のこの位置は、天然物においてみられる位置とは異なっている。
この第1工程は、上記タイプの不飽和脂肪の過剰エチレンとのメタセシスを含む。それは、上記に引用された本出願人の仏国特許出願公開第2 878 246号に開示されたような少なくとも1種の触媒の存在下および少なくとも1種の非水イオン液の存在下に行われる。
この工程において、触媒(例えば、ルテニウム錯体をベースとするもの)は、有利には、形成された生成物がごくわずかに混和することができる非水性イオン液中で用いられる。触媒は、イオン液中に固定され、かつ、安定化される。触媒を含有するこの液体は、リサイクルおよび再使用されてよい。
不飽和脂肪の過剰エチレンとのメタセシスを含む本方法のこの第1工程において用いられる触媒は、あらゆる既知のメタセシス触媒からなっていてよいが、特に、少なくとも1種のルテニウム化合物を含む触媒が挙げられる。
非水性イオン溶媒は、一般式Q(式中、Qは、第四アンモニウム、第四ホスホニウム、第四グアニジニウムまたは第四スルホニウムを示し、Aは、低温、すなわち、90℃以下、有利には高くとも85℃、好ましくは50℃以下で液体塩を形成し得るあらゆるアニオンを示す)を有する液体塩によって形成される群から選択される。
本発明の方法によると、本方法の工程a)のメタセシス反応は、エチレンを過剰に用いて行われる。反応は、有機共溶媒の存在下または不存在下に行われてよい。溶媒または溶媒混合物が用いられた場合、その役割は、イオン液中への試薬および触媒の溶解を向上させることであり得る。それはまた、生成物の第二相への抽出を最適化するように作動してもよい。構想されてよい溶媒の例は、クロロアルカン(ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロまたはトリクロロエタン等)、芳香族性の溶媒(トルエン、キシレン、クロロベンゼン等)または脂肪族溶媒(ヘプタン、シクロヘキサン等)である。
不飽和脂肪(一酸またはモノエステル)、例えば、オレインヒマワリ種子油またはオレインナタネ油から誘導されたもののエチレン(過剰に用いられる)とのメタセシスは、閉鎖(バッチ)系、半開放または1以上の反応段階を有する連続系で行われてよい。
激しい攪拌により、試薬(気体状または液状)と触媒混合物との間の良好な接触が確実に行われなければならない。反応温度は、0〜150℃であり得るが、好ましくは20〜120℃である。
操作は、媒体の溶融点より上またはそれより下で行われてよいが、分散させられた固体の段階は、適正な反応過程への制限ではない。
圧力は、例えば、大気圧〜50MPaであってよい。
エチレンは、純粋に、あるいは、パラフィン(不活性)で混合または希釈されて用いられ得る。
本発明の方法の第2工程b)は、触媒を含有するイオン液相を、第1工程において行われたメタセシス反応の生成物を含有する相から分離することからなる。この第2工程では、第1のメタセシス工程からの反応生成物は、蒸留(イオン液が不揮発性である場合)またはデカンテーション(形成されたオレフィンのイオン液への溶解性が低い場合)のいずれかによって触媒を含有するイオン液から分離され得る。
本発明の方法の第3工程c)は、本発明の方法の第1のメタセシス工程の間に形成された生成物を分離することからなる。純粋なオレフィンフラクション(主として1−デセンからなるモノ−またはジ−オレフィンによって構成されたフラクションA)は、蒸発工程によって、2つのフラクションの沸点の差異に応じて、存在するエステル(または酸)の混合物(主としてデセン酸メチル)によって構成されたフラクションBから容易に分離され得る。
本発明の方法において、上記の単離されたオレフィンの混合物(フラクションA)は、ジオレフィンおよびモノオレフィン並びにあらゆる過剰なエチレンを分離するための蒸留を経てもよい。過剰なエチレンは、同一方法の工程a)にリサイクルされてよく、あるいは、それは、新しいメタセシス反応の間に用いられてよく、その一方で、他方のモノ(またはジ)オレフィンのそれぞれは、品質向上させられかつ別々に用いられてよい。
純粋なオレフィンフラクションAを留去させた後、残留する反応媒体(フラクションB)は、結果として、モノアルコールエステルの形態または酸の形態のエステル、すなわち9−デカン酸のエステルの混合物を含有し、場合によっては、用いられた出発材料に応じて、出発材料中に存在する飽和酸、すなわち、パルミチン酸およびステアリン酸の酸またはエステルも、モノアルコールエステルの形態または酸の形態で含有する。前記飽和された構造は、メタセシス反応に必要とされない。
本発明の方法の第4工程d)は、不飽和エステルまたは酸によって構成されるフラクションBがホモメタセシス反応を経ることからなる。
不飽和エステルまたは酸のホモメタセシスを行うために本方法のこの第4工程において用いられる触媒は、あらゆる既知のメタセシス触媒からなってよいが、特定的には、少なくとも1種のルテニウム化合物を含む触媒である。
前記ホモメタセシス反応は液相中で行われる。触媒は、本方法の工程a)において記載されたような非水イオン液中で用いられ得る。
溶媒の不存在下または有機溶媒の存在下に反応を行うことを構想することも可能である。挙げられてよい本発明のために構想されてよい溶媒の例は、クロロアルカン(ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロ−またはトリクロロ−エタン等)、芳香族性溶媒(トルエン、キシレン、クロロベンゼン等)または脂肪族(ヘプタン、シクロヘキサン等)である。
反応温度は、0〜150℃であってよいが、好ましくは20〜120℃である。
本方法のこの第4工程におけるメタセシス反応は、半開放バッチ系または1以上の反応段階を有する連続系において行われてよい。
この工程において同時生成させられる気体状のエチレンは分離され、そして、本発明の方法の工程a)に移される。
工程d)において行われたホモメタセシス反応において、触媒のための溶媒としてイオン液が用いられた場合、本発明の方法は、工程b)の後にしたのと同一の仕方で、触媒を含有するイオン液を、反応生成物から分離することおよびイオン液をメタセシス工程d)への入口にリサイクルすることからなる第5工程e)を含んでよい(図2に示される)。
本発明はまた、上記の方法を行うために用いられる(図1および2に示される)設備に関する。
それは、本発明の方法の種々の工程が連続して行われる異なる下記帯域によって構成される:
・不飽和脂肪の過剰のエチレンとのメタセシスのための帯域I;該帯域Iは、不飽和脂肪を導入するための少なくとも1つの手段(1)と、エチレンを導入するための少なくとも1つの手段(2)と、触媒を導入するための少なくとも1つの手段(3)とを含む;該帯域Iからの流出物は、少なくとも1つの手段(4)を経て取り除かれる;
・イオン液をリサイクルするための帯域II;この帯域では、触媒を含有するイオン液は、帯域Iからの流出物から分離され、前記帯域IIは、帯域Iからの流出物を導入するための少なくとも1つの手段(4)と、触媒を含有するイオン液を帯域Iへの入口にリサイクルするための少なくとも1つの手段(5)と、オレフィンフラクションと、不飽和エステルまたは脂肪酸フラクションとを含有する有機相を取り除くための少なくとも1つの手段(6)とを含む;
・帯域IIからの有機流出物を分離するための帯域III;該帯域は、帯域IIからの流出物を導入するための少なくとも1つの手段(6)と、オレフィンフラクションAを取り除くための少なくとも1つの手段(7)と、不飽和エステルまたは脂肪酸によって構成されるフラクションBを取り除くための少なくとも1つの手段(8)とを含む;
・ホモメタセシス反応が行われる帯域IV;この帯域は、帯域III由来の転化されるべき流出物を導入するための少なくとも1つの手段(8)と、形成された不飽和長鎖ジエステルまたは二酸を主として含有する流出物を取り除くための少なくとも1つの手段(9)と、ホモメタセシス反応によって同時生成させられた気体状エチレンを分離するための少なくとも1つの手段(10)と、触媒を導入するための少なくとも1つの手段(11)とを含み、前記帯域IV中のエチレンを分離するための手段(10)は、エチレンを帯域Iに導入するための手段(2)に接続される。
帯域IVのメタセシス反応がイオン液の存在下に行われる場合、本発明の方法は、場合によっては、下記帯域(図2に示される)を含んでよい;
・形成された流出物から、触媒を含有するイオン液を分離するための帯域V;この帯域は、イオン液を分離し、これを帯域IVへの入口にリサイクルするための少なくとも1つの手段(12)と、前記帯域において形成された流出物を分離するための少なくとも1つの手段(13)を含む。
次の実施例は、本発明の範囲を制限することなく本発明を例示する。
(実施例1:イオン液中でのオレイン酸メチルのエテノリシスによるメタセシス)
80℃で終夜予備的に乾燥させられた1mLの式[BMMI][N(CFSOを有する3−ブチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム ビス−トリフリルアミド、148mgのオレイン酸メチル(供給源:Fluka,98%より高い純度を有する)および15mgの式ClRu(=CH−o−O−iPrC)PCyを有する錯体(式ClRu(=CHC)(PCyを有する第一世代のGrubbs錯体を、CuClの存在下に、1−イソプロポキシ−2−ビニルベンゼンと反応させることにより合成されたもの)(これは、オレイン酸メチルに対して触媒5モル%に相当する)が、アルゴンの不活性雰囲気下に、攪拌システムおよび圧力センサを備えたオートクレーブ反応器に導入された。オートクレーブは、次いで、減圧下に置かれ、そして、エチレン(起源:Alphagas,品質N25)の10バール(1MPa)の圧力を得るように加圧された。温度は、20℃に一定に維持された。
媒体は、室温で2時間にわたり攪拌され、次いで、過剰のエチレンは、20℃を超えない温度で大気圧に戻すことによってゆっくりとパージされ、オートクレーブは、再度、大気圧のアルゴン下に置かれた。生成物は、CaHにより蒸留され脱気された2〜3mLのヘプタンを加えることによってイオン液から分離された。少量(100μL)の抽出された溶液は、ショートシリカカラム(2cm)に通され、ジエチルエーテルにより溶離された。それは、質量分析計に連結された気相クロマトグラフィー(ZB−1カラム,100%ジメチルポリシロキサン,30メートル、ヘリウムベクトルガス2mL/分、温度プログラミング:60℃、次いで、5℃/分で220℃まで)によって分析された。
オレイン酸メチルの転化率は95%であった。それは、デカンを内部標準として用いて計算された。反応生成物は、1−デセン(フラクションA)およびデセン酸メチル(フラクションB)からなっていた。
1−デセン異性体の存在は検出されなかった。ホモメタセシスの生成物は、痕跡量で存在しており、定量化され得なかった。
(実施例2:触媒を含有するイオン液のリサイクル)
実施例1にしたがって行われた1回目のサイクルの後、イオン液および触媒を含むオートクレーブは、減圧下に置かれ、痕跡量のヘプタンが除去された。アルゴン雰囲気下、148mgのオレイン酸メチルが加えられ、次いで、反応器は、エチレンの10バール(1MPa)の圧力を得るように加圧された。温度は、20℃に維持された。
実施例1と同一の手順が行われ、形成された生成物が分析された。
触媒またはイオン液を加えることなく3つの連続するサイクルが行われた。
オレイン酸メチルの転化率および形成された生成物の組成は、各サイクル毎に測定された(下記表1)。
Figure 2007197444
(実施例3:イオン液中のデセン酸メチルの二相ホモメタセシス)
ガラス製の反応フラスコに、(1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン) ジクロロ(ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(50mg,0.062mmol,0.01当量)、1.5mL(6.62mmol,1当量)のデセン酸メチル(実施例1で生成させられた2つのフラクションの分離後に得られたもの)、1mLの1−ブチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(BMPyrr)(NTf)、2mLのヘプタンおよび0.1mLのドデカン(内部標準)が加えられた。混合物は二相性であった。混合物は、攪拌され、室温に昇温させられた。2時間の反応時間の後、少量の液状上部相がGC分析のために取り出された。GC分析は、メタセシス反応がきれいに進行し、ジメチルオクタデセン−1,18二酸塩生成物を産出したことを示した。9−デセン酸メチルのこれらの生成物への転化率は70重量%であった。
図1は、本発明の方法を行うための設備のフローシートを示す。 図2は、ホモメタセシス反応において用いられたイオン液をリサイクルする工程を包含する本発明の方法を行うための設備のフローシートを示す。
符号の説明
1 不飽和脂肪を導入するための手段
2 エチレンを導入するための手段
3 触媒を導入するための手段
4 帯域Iからの流出物を導入するための手段
5 触媒を含有するイオン液を帯域Iへの入口にリサイクルするための手段
6 オレフィンフラクションと、不飽和エステルまたは脂肪酸フラクションとを含有する有機相を取り除くための手段
7 オレフィンフラクションAを取り除くための手段
8 不飽和エステルまたは脂肪酸によって構成されるフラクションBを取り除くための手段
9 形成された不飽和長鎖ジエステルまたは二酸を主として含有する流出物を取り除くための手段
10 ホモメタセシス反応によって同時生成させられたエチレンを分離するための手段
11 触媒を導入するための手段

Claims (16)

  1. 不飽和脂肪からオレフィンフラクションと、ジエステルまたは二酸の組成物との両方を生成させる方法であって、
    a)メタセシス条件下に、12〜22個の炭素原子を含有し、かつ、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含む少なくとも1種の一塩基カルボン酸または該一塩基酸のモノエステルを含む少なくとも1種の不飽和脂肪を、触媒存在下および少なくとも1種の非水性イオン液の存在下に、過剰のエチレンと接触させて、オレフィンフラクションと、不飽和脂肪のモノエステルまたは一酸のフラクションとを一緒に生成させる工程と、
    b)工程a)において用いられた触媒を含有するイオン液を分離し、これをリサイクルする工程と、
    c)工程a)において生成させられたオレフィンフラクション(フラクションA)および不飽和脂肪モノエステルまたは一酸フラクション(フラクションB)を分離する工程と、
    d)工程c)において分離された不飽和脂肪モノエステルまたは一酸のフラクションBのホモメタセシスの工程であって、該ホモメタセシスは、少なくとも1種の触媒の存在下に液相中で行われる、工程と
    の一連の工程を包含することを特徴とする方法。
  2. 工程a)において、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含み、かつ、12〜22個の炭素原子を含有する少なくとも1種の一塩基カルボン酸と、1〜8個の炭素原子を含有する少なくとも1種の一価水酸化脂肪族化合物(モノアルコール)との間で形成された少なくとも1種のエステルを含む不飽和脂肪によって構成された供給材料を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 工程a)において、オレフィンフラクションAと、鎖の少なくとも一部が不飽和C10鎖によって構成されるモノアルコールエステルの組成物(フラクションB)との両方を生成させるために、オレインヒマワリ種子油およびオレインナタネ油のモノアルコールエステルの混合物から選択される不飽和脂肪を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 工程a)において導入される供給材料は、
    ・オレイン酸メチル: 約83重量%;
    ・リノール酸メチル 約10重量%;
    ・パルミチン酸メチル 約3重量%;
    ・ステアリン酸メチル 約4重量%
    の組成を有するオレインヒマワリ種子油のメチルエステルであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 得られたフラクションAは、主として1−デセンであり、フラクションBは主として9−デセン酸メチルであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 非水性イオン液は、一般式Q(式中、Qは、第四ホスホニウム、第四アンモニウム、第四グアニジニウムまたは第四スルホニウムを示し、Aは、90℃以下で液体塩を形成することが可能なあらゆるアニオンを示す)の液体塩によって形成される群から選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
  7. 工程a)およびd)の触媒として少なくとも1種のルテニウム化合物が用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
  8. 工程b)は、蒸留またはデカンテーションのいずれかによって工程a)からの触媒および反応生成物を含有するイオン液相を分離する工程であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
  9. 工程c)間に蒸留によってフラクションAおよびBを分離する工程を包含することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
  10. フラクションAのモノオレフィンおよびジオレフィンを蒸留により分離する工程をさらに包含することを特徴とする請求項9に記載の方法。
  11. 工程d)において導入される供給材料は、モノアルコールエステルの形態にある9−デセン酸のエステルであることを特徴とする請求項3〜10のいずれか1つに記載の方法。
  12. 工程a)においてエチレンを再使用するために工程d)の間に同時生成させられたエチレンを抽出する工程を包含することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
  13. 工程d)のホモメタセシスは、触媒を含有する非水性イオン液の存在下に行われることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
  14. 工程d)において用いられた、触媒を含有するイオン液を分離し、これをリサイクルする工程をさらに包含することを特徴とする請求項13に記載の方法。
  15. 請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法を行うための設備であって、
    ・メタセシス帯域I;該帯域は、不飽和脂肪を導入するための少なくとも1つの手段(1)と、エチレンを導入するための少なくとも1つの手段(2)と、触媒を導入するための少なくとも1つの手段(3)とを含み、流出物は、少なくとも1つの手段(4)を経て帯域Iから取り除かれる;
    ・帯域Iからの流出物から、触媒を含有するイオン液が分離され、リサイクルされる帯域II;該帯域は、帯域Iからの流出物を導入するための少なくとも1つの手段(4)と、触媒を含有するイオン液を帯域Iへの入口にリサイクルするための少なくとも1つの手段(5)と、オレフィンフラクションと、不飽和エステルまたは脂肪酸フラクションとを含有する有機相を取り除くための少なくとも1つの手段(6)とを含む;
    ・分離帯域III;該帯域は、帯域IIからの流出物を導入するための少なくとも1つの手段(6)と、オレフィンフラクションAを取り除くための少なくとも1つの手段(7)と、不飽和エステルまたは脂肪酸によって構成されるフラクションBを取り除くための少なくとも1つの手段(8)とを含む;
    ・ホモメタセシス帯域IV;該帯域は、帯域III由来の転化させられるべき流出物を導入するための少なくとも1つの手段(8)と、形成された不飽和長鎖ジエステルまたは二酸を主として含有する流出物を取り除くための少なくとも1つの手段(9)と、ホモメタセシス反応によって同時生成させられたエチレンを分離するための少なくとも1つの手段(10)と、触媒を導入するための少なくとも1つの手段(11)とを含み、該帯域IVにおけるエチレンを分離するための手段(10)は、帯域Iにエチレンを導入するための手段(2)に接続されている;
    の帯域I〜IVによって構成される設備。
  16. 触媒を含有するイオン液を、形成された流出物から分離するための帯域Vをさらに含み、該帯域Vは、イオン液を分離し、これを帯域IVへの入口にリサイクルするための少なくとも1つの手段(12)と、前記帯域において形成された流出物を分離するための少なくとも1つの手段(13)とを含むことを特徴とする請求項15に記載の設備。
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