JP2007192241A - 潤滑剤劣化検出機能付き軸受 - Google Patents

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明生 中島
Toru Takahashi
亨 高橋
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Abstract

【課題】 軸受内部の潤滑剤の劣化状態をリアルタイムに検出でき、かつ小型化が可能で、安価に生産できる潤滑剤劣化検出機能付き軸受を提供する。
【解決手段】 この潤滑剤劣化検出機能付き軸受は、軸受内部に封入された潤滑剤の劣化を検出する潤滑剤劣化検出装置11を組み込んだものである。潤滑剤劣化検出装置11は、一部にギャップ14aを有しこのギャップ14aに軸受内の潤滑剤が進入可能なコア14と、このコア14に磁界を与える磁石15と、ギャップ14a内に入った潤滑剤の透磁率を測定する磁気センサ16とを有する。
【選択図】 図2

Description

この発明は、軸受内部の摩耗粉による潤滑剤の劣化状態を検出する機能を備えた潤滑剤劣化検出機能付き軸受に関し、特に、鉄道車両、自動車、産業機械等に適用される潤滑剤劣化検出機能付き軸受に関する。
潤滑剤を封入した軸受では、軸受内部の潤滑剤(グリース、油など)が劣化すると転動体の潤滑不良が発生し、軸受寿命が短くなる。転動体の潤滑不良を、軸受の振動状態などから判断するのでは、寿命に達して動作異常が発生してから対処することになるため、潤滑状態の異常をより早く検出できない。そこで、軸受内の潤滑剤の状態を定期的あるいはリアルタイムに観測し、異常やメンテナンス期間の予測を可能にすることが望まれる。
潤滑剤の劣化の主要な原因は、軸受の使用に伴って発生する摩耗粉が潤滑剤に混入することにある。
軸受の摩耗状態を検出するものとしては、軸受のシールの内側にコイルを配置し、グリース等の潤滑剤に含まれる摩耗粉がシールの内側に付着することで前記コイルのインピーダンスが変化するのを、発振法、同調法、ブリッジ法、正帰還法などにより検出するようにしたセンサ付き軸受が提案されている(例えば特許文献1)。
特開2004−293776号公報
しかし、上記構成のセンサ付き軸受では、コイルを利用した方式であるため、構造や回路構成が複雑でコストの低減が困難である。
この発明の目的は、軸受内部の潤滑剤の劣化状態をリアルタイムに検出でき、かつ小型化が可能で、安価に生産できる潤滑剤劣化検出機能付き軸受を提供することである。
この発明の潤滑剤劣化検出機能付き軸受は、軸受内部に封入された潤滑剤の劣化を検出する潤滑剤劣化検出装置を組み込んだ軸受であって、前記潤滑剤劣化検出装置は、一部にギャップを有しこのギャップに軸受内の潤滑剤が進入可能なコアと、このコアに磁界を与える磁石と、前記コア内を通る磁束の経路内に配置されて前記ギャップ内に入った潤滑剤の透磁率を測定する磁気センサとを有するものであることを特徴とする。前記磁気センサは例えば前記コアの前記ギャップ内に配置される。
軸受の使用に伴い、潤滑剤の鉄粉からなる摩耗粉の混入量が増加してくると、潤滑剤の透磁率が増加して来る。前記コアのギャップ内に進入した潤滑剤から、この潤滑剤の透磁率が、上記磁気センサで測定され、潤滑剤に含まれる摩耗粉の量、つまり摩耗粉の濃度が検出される。潤滑剤の摩耗粉の濃度が分かると、潤滑剤の寿命や不良が検出でき、軸受の交換等のメンテナンス時期を予測することができる。
また、この構成によると、潤滑剤劣化検出装置が、コア、磁石、および磁気センサのみと単純な構造となるため、小型化が可能で、安価に生産することができる。
この発明において、軸受に温度センサを設け、前記磁気センサの測定値を前記温度センサの検出値によって補正する温度補正手段を設けても良い。温度補正手段を設けると、潤滑剤劣化検出装置やその近傍の温度変化による検出誤差を補正でき、検出精度を向上させることができる。
この発明の潤滑剤劣化検出機能付き軸受は、軸受内部に封入された潤滑剤の劣化を検出する潤滑剤劣化検出装置を組み込んだ軸受であって、前記潤滑剤劣化検出装置は、一部にギャップを有しこのギャップに軸受内の潤滑剤が進入可能なコアと、このコアに磁界を与える磁石と、前記コア内を通る磁束の経路内に配置されて前記ギャップ内に入った潤滑剤の透磁率を測定する磁気センサとを有するものとしたため、軸受内部の潤滑剤の劣化状態をリアルタイムに検出でき、また小型化が可能で、安価に生産することができる。
この発明の第1の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図1はこの潤滑剤劣化検出機能付き軸受を備えた鉄道車両用軸受ユニットの断面図である。この鉄道車両用軸受ユニットは、潤滑剤劣化検出機能付き軸受1と、その内輪4の両側に各々接して設けられた付属部品である油切り2および後ろ蓋3とで構成される。軸受1は、ころ軸受、詳しくは複列の円すいころ軸受からなり、各列のころ6,6に対して設けた分割型の内輪4,4と、一体型の外輪5と、前記ころ6,6と、保持器7とを備える。内輪4、外輪5、およびころ6は、軸受鋼等の鋼製のものである。
後ろ蓋3は、車軸10に軸受1よりも中央側で取付けられて外周のオイルシール8を摺接させたものである。油切り2は、車軸10に取付けられて外周にオイルシール9を摺接させたものである。これら軸受1の両端部に配置されるオイルシール8,9により、軸受1の内部にグリース等の潤滑剤が封止され、かつ防塵・耐水性が確保される。
軸受1の外輪5には、軸受内部に封入された潤滑剤の劣化を検出する潤滑剤劣化検出装置11が組み込まれている。潤滑剤劣化検出装置11は、合成樹脂製等の検出装置ハウジング内に構成部品を組み込んだものである。この潤滑剤劣化検出装置11は、外輪5に両列の軌道面間で設けられた検出装置挿入孔5aに挿入されて、軸受空間内に先端が進入し、ボルト等により外輪5に固定されている。潤滑剤劣化検出装置11およびそのケーブルには、防水・防油処理が施される。潤滑剤劣化検出装置11の取付部も耐油材料でシールされる。例えば、前記潤滑剤劣化検出装置11は、密封シール12を介して外輪5の検出装置挿入孔5aに挿入され、密封シール12として、例えばOリングが用いられる。このように、密封シール12を介して潤滑剤劣化検出装置11が外輪5に固定されることにより、潤滑剤劣化検出装置11の取付部から軸受内部へ水分やゴミ等が侵入するのを防止できる。
図2は、上記潤滑剤劣化検出装置11の原理構成図である。この潤滑剤劣化検出装置11は、一部にギャップ14aを有する環状のコア14と永久磁石15とで構成される磁気回路13と、この磁気回路13内に配置される磁気センサ16とを備える。コア14は、前記ギャップ14aを一部に形成した矩形の環状コア基材を、その途中部分で分断して2つのコア分割体14A,14Bとしたものであり、これら2つのコア分割体14A,14Bの分断側端部で前記永久磁石15を挟むことにより、前記磁気回路13が構成される。コア14のギャップ14aは、検出対象となる試料17が進入可能な隙間とされる。この場合の試料17は、図1の軸受1の内部に封入されたグリース等の潤滑剤である。永久磁石15は、2つのコア分割体14A,14Bで挟まれることにより、コア14に磁界を与える。磁気センサ16は、前記ギャップ14a内に入った試料(潤滑剤)17の透磁率を測定するものであり、例えばホール素子が用いられる。磁気センサ16としては、このほかMRセンサ、GMRセンサ、MIセンサなどを用いても良い。磁気センサ16の検出信号はケーブル18を経て外部に出力される。この磁気センサ16は、図2の磁気回路13ではギャップ14aに配置されている。
図3は、図2における磁気回路13と等価な磁気回路を示す。この場合の磁気回路13Aは、一部にギャップ14aを有するトロイダルコア14と、このトロイダルコア14にコイル25を巻回して構成される。この磁気回路13Aでは、コイル25に直流電流が流されることで、トロイダルコア14に磁界が与えられる。すなわち、コイル25は図2における磁気回路13での永久磁石15と等価な電磁石を構成している。この磁気回路13Aにおいても、図2の場合のように磁気センサ16と試料17を配置することで、試料17の透磁率を磁気センサ16によって測定することができる。
次に、図2の潤滑剤劣化検出装置11による潤滑剤の劣化検出の動作原理を、図3の磁気回路13Aを参照して説明する。
図3の磁気回路13Aにおいて、ギャップ14aの長さをd、ギャップ14a内の空気の比透磁率をμe 、トロイダルコア14の磁路の平均長さをL、比透磁率をμとすると、ギャップ14aの磁束密度Bとコイル25の起磁力NIとの間には、
NI=(B/μe )d+(B/μ)L ……(1)
の関係が成り立つ。ただし、磁束の漏れはなく、均一とする。
次に、上記ギャップ14aに比透磁率μu の試料17を均一に詰めて配置した場合、このときの磁束密度Bu とコイル25の起磁力N1との間には、
NI=(Bu /μu )d+(Bu /μ)L ……(2)
の関係が成り立つ。
ここで、μは1000以上の値であり、μe ,μu は1に近い値であるため、
μe ≪μ ……(3)
μu ≪μ ……(4)
の関係が成り立つ。
したがって、上記式(1),(2)は、それぞれ次の式(5),(6)のように簡略化できる。
NI=(B/μe )d ……(5)
NI=(Bu /μu )d ……(6)
これら式(5),(6)から、
μu =(Bu /B)μe ……(7)
の関係が導かれる。さらに、μe は略1に近い値であるから、式(7)は、
μu =(Bu /B) ……(8)
と、近似される。
したがって、ギャップ14aに試料17を入れない場合の磁束密度Bを磁気センサ16で予め測定しておき、試料17を入れたときの磁束密度Bu を測定すれば、式(8)の関係から試料17の透磁率を推定できる。また、より正確な透磁率μu を求めたい場合は、式(5)〜(8)のように簡略化せずに、式(1),(2)の関係から直接に透磁率μu を求めれば良い。
以上の透磁率検出動作原理は、図3の磁気回路13Aに基づくものであるが、その磁気回路13Aは図2の潤滑剤劣化検出装置11における磁気回路13と等価なものであるため、図2の潤滑剤劣化検出装置11にそのまま適用できる。すなわち、図2の潤滑剤劣化検出装置11においても、磁気回路13のギャップ13aに試料17である潤滑剤が進入しない場合(例えば軸受1に組み込む前)での磁束密度Bを磁気センサ16で予め測定しておき、潤滑剤劣化検出装置11を軸受1に組み込む場合には、ギャップ13aに軸受内部の潤滑剤が進入するように設置する。これにより、予め測定された磁束密度Bと、軸受1に組み込んだ状態で磁気センサ16が測定する磁束密度Bu とを前記式(8)に当て嵌めることにより、試料17である潤滑剤の透磁率μu を推定することができる。また、潤滑剤の透磁率μu は、潤滑剤に含まれる鉄粉の含有率と所定の相関関係があるので、潤滑剤の透磁率μu から潤滑剤の鉄粉の含有率を推定することができ、これから潤滑剤の劣化を推定することができる。その推定処理は、磁気センサ16の出力を図示しない判定回路に送信することにより行われる。
なお、図2の潤滑剤劣化検出装置11では、矩形の環状コア基材を分断した2つのコア分割体14A,14Bで永久磁石15を挟むことにより磁気回路13を構成したが、図3のようにトロイダルコア14に永久磁石15と等価な電磁石となるコイル25を巻回して構成した磁気回路13Aを用いても良い。
また、図4のようにトロイダルコア14を2つのコア分割体14A,14Bに分断し、これら両コア分割体14A,14Bで永久磁石15を挟むことにより磁気回路13を構成しても良い。また、この場合、磁気センサ16を、一方のコア分割体14Aの分断端部と永久磁石15との間に介在させても良い。このように磁気センサ16を配置すれば、ギャップ14aに磁気センサ16が介在しないので、潤滑剤をギャップ14aに容易に進入させることができる。
さらに、図5のようにコア14を分割体で構成せず、そのギャップ14a側に永久磁石15と磁気センサ16を配置しても良い。また、コア14の環形状も、図2のような矩形や、図3および図4のような円形に限らず、図5のように目的に合わせて変更することができる。
このように、この潤滑剤劣化検出機能付き軸受1では、軸受内部に封入された潤滑剤の劣化を検出する潤滑剤劣化検出装置11を、一部にギャップ14aを有しこのギャップ14aに軸受内の潤滑剤が進入可能なコア14と、このコア14に磁界を与える永久磁石15(またはコア14に巻回して電磁石を構成するコイル25)と、前記コア14により構成される磁気回路13(13A)内に配置されて前記ギャップ14a内に入った潤滑剤の透磁率を測定する磁気センサ16とを有するものとしているので、単純な構造となり、小型化が可能で安価な構成により、軸受内部の潤滑剤の劣化状態をリアルタイムに検出できる。
なお、前記潤滑剤劣化検出装置11の構成部品である永久磁石15や磁気センサ16は、温度の変化によって特性に変化が生じることが知られている。すなわち、温度の変化によって永久磁石15の磁力が変化し、磁気センサ16の感度が変化する。そこで、このような温度変化分を補正するために、図2のように軸受1に温度センサ20を設け、前記磁気センサ16の測定値を温度センサ20の検出値によって補正する温度補正手段21を設けても良い。温度センサ20は、コア13、永久磁石15、および磁気センサ16を組み込んだ検出装置ハウジングに設けても良く、またこの検出装置ハウジングとは離れて軸受1の外輪5等に設けても良い。このように温度補正手段21を設けた場合、潤滑剤劣化検出装置11やその近傍の温度変化による検出誤差を補正でき、検出精度を向上させることができる。
図6は、この発明の他の実施形態を示す。この潤滑剤劣化検出機能付き軸受1Aは、図1〜図5に示した第1の実施形態において、潤滑剤劣化検出装置11を、シール9の近傍に取付けたものである。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
上記各実施形態は、鉄道車両用軸受に適用した場合につき説明したが、この発明は、自動車、産業機械等に用いられる軸受に適用しても良い。
この発明の第1の実施形態にかかる潤滑剤劣化検出機能付き軸受の断面図である。 同軸受における潤滑剤劣化検出装置の原理構成図である。 同潤滑剤劣化検出装置における磁気回路と等価な別の磁気回路の構成図である。 潤滑剤劣化検出装置の他の構成図である。 潤滑剤劣化検出装置のさらに他の構成図である。 この発明の他の実施形態にかかる潤滑剤劣化検出機能付き軸受の断面図である。
符号の説明
1,1A…潤滑剤劣化検出機能付き軸受
11…潤滑剤劣化検出装置
13,13A…磁気回路
14…コア
14a…ギャップ
15…永久磁石
16…磁気センサ
17…試料(潤滑剤)
20…温度センサ
21…温度補正手段
25…コイル

Claims (3)

  1. 軸受内部に封入された潤滑剤の劣化を検出する潤滑剤劣化検出装置を組み込んだ軸受であって、前記潤滑剤劣化検出装置は、一部にギャップを有しこのギャップに軸受内の潤滑剤が進入可能なコアと、このコアに磁界を与える磁石と、前記コア内を通る磁束の経路内に配置されて前記ギャップ内に入った潤滑剤の透磁率を測定する磁気センサとを有するものであることを特徴とする潤滑剤劣化検出機能付き軸受。
  2. 請求項1において、軸受に温度センサを設け、前記磁気センサの測定値を前記温度センサの検出値によって補正する温度補正手段を設けた潤滑剤劣化検出機能付き軸受。
  3. 請求項1または請求項2において、前記磁気センサを前記コアの前記ギャップ内に配置した潤滑剤劣化検出機能付き軸受。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011252809A (ja) * 2010-06-02 2011-12-15 Jfe Steel Corp 軸受け状態管理方法および軸受け状態管理装置
JP2019123006A (ja) * 2018-01-19 2019-07-25 住友重機械工業株式会社 プレス装置及びプレス装置の診断方法
DE102018101444A1 (de) * 2018-01-23 2019-07-25 Technische Universität Darmstadt Lagervorrichtung und ein Verfahren zu deren Herstellung

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