JP2007190544A - 硫酸ピッチの処理方法およびその装置ならびに中和処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】硫酸ピッチを中和処理する際に発生する二酸化硫黄を含む有害ガスの外部への放出を実質的に解消することのできる硫酸ピッチの処理方法およびその装置ならびに中和処理装置を提供する。
【解決手段】硫酸ピッチの処理装置は、破砕部、中和部、吸収部、プラズマ分解部および吸着部を有する。破砕部および中和部を含む中和処理装置28は、硫酸ピッチを収容したドラム缶状の容器を収容して保持する円筒容器状の収容容器保持具30と、収容容器保持具30を上昇させ傾動させる付勢装置32と、カッター装置34と、中和槽36を備える。固化した硫酸ピッチを破砕して細粒化した後、中和処理する。処理後の中和物は系外に排出され、処理時に発生する二酸化硫黄を含むガスは、吸収処理され、ついで、プラズマ分解処理され、さらに、吸着処理されて無害化された後、系外に排出される。
【選択図】図2

Description

本発明は、石油製品製造工程等において廃棄物として発生する硫酸ピッチの無害化処理方法に関する。
石油製品製造工程において、A重油を分留して軽油を製造する際に、軽油を濃硫酸で洗浄して不純物を取り除くことが行われる。また、不正軽油を製造する際に、同様に、軽油を濃硫酸で洗浄して、識別剤として添加されているクマリンを除去することも行われている。
これら石油製品製造工程等において軽油を濃硫酸で洗浄する際に、硫酸ピッチが発生する。
硫酸ピッチは、タール状で濃硫酸を含み、水等に触れると二酸化硫黄(亜硫酸ガス)を含む有害なガスを発生する。二酸化硫黄を含むガスは、人の健康を害するおそれがある。
なお、硫酸ピッチ自体も、強酸性であるため、不法投棄等されると、土壌や地下水を汚染する原因となる。
このため、硫酸ピッチは、適宜な方法により無害化処理が施されている。
硫酸ピッチの無害化処理方法は、代表的なものとして、そのまま焼却する方法(以下、焼却法という。)、消石灰で予め中和した後に焼却する方法(以下、中和焼却法という。)および予め油分を除去した後に石灰やセメントと混ぜて地中に埋める方法(以下、埋設法という。)の3つの方法を挙げることができる。
これらの無害化処理方法は、焼却法については焼却炉を傷める問題があり、中和焼却法および埋設法については上記した二酸化硫黄を含むガスが発生する問題がある。
このため、硫酸ピッチを中和処理する際に、二酸化硫黄を含むガスの発生を抑制する方法が提案されている。
例えば、硫酸ピッチを極性を有する有機系の液体に溶解等する方法が提案されている(特許文献1参照。)。また、硫酸ピッチ等の産業廃棄物に粘度鉱物を添加混合して粒状化した後さらに第1のカルシウム塩を添加混合してpH調整を行う方法も提案されている(特許文献2参照。)。
特開2005−28303号公報 特開2005−193108号公報
しかしながら、上記の二酸化硫黄を含むガスの発生を抑制する方法は、いずれも、対策としては必ずしも十分ではない。前者(特許文献1)の場合、安全上、有機系の液体の取り扱いに高度の注意が必要であり、かつ、最終的に硫酸ピッチを焼却処分等する際には二酸化硫黄を含むガスを発生するおそれもある。一方、後者(特許文献2)の場合、粘度鉱物を添加混合した分だけ産業廃棄物が増えることになり、また、前者の場合と同様に、最終的に硫酸ピッチを焼却処分等する際には二酸化硫黄を含むガスを発生するおそれもある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、硫酸ピッチを中和処理する際に発生する二酸化硫黄を含む有害ガスの外部への放出を実質的に解消することのできる硫酸ピッチの処理方法およびその装置ならびに処理方法に好適に用いることができる中和処理装置を提供することを目的とする。
本発明に係る硫酸ピッチの処理方法は、
硫酸ピッチを中和する中和工程と、
中和する際に発生する、二酸化硫黄を含むガスを液体に接触させて少なくとも二酸化硫黄を吸収する吸収工程と、
吸収後のガス中の成分を吸着する吸着工程と、
を有することを特徴とする。
また、本発明に係る硫酸ピッチの処理方法は、吸着後のガスの一部を前記吸収工程に戻す循環工程をさらに有することを特徴とする。
また、本発明に係る硫酸ピッチの処理方法は、前記中和工程に先立ち、固化状態の硫酸ピッチを破砕する破砕工程を有することを特徴とする。
また、本発明に係る硫酸ピッチの処理方法は、前記吸着工程に先立ち、吸収後のガスをプラズマ分解するプラズマ分解工程をさらに有することを特徴とする。
また、本発明に係る硫酸ピッチの処理装置は、
硫酸ピッチを中和する中和部と、
中和する際に発生する、二酸化硫黄を含むガスを液体に接触させて少なくとも二酸化硫黄を吸収する吸収部と、
吸収後のガス中の成分を吸着する吸着部と、
を有することを特徴とする。
また、本発明に係る硫酸ピッチの処理装置は、吸着後のガスの一部を前記吸収部に戻す循環部をさらに有することを特徴とする。
また、本発明に係る硫酸ピッチの処理装置は、中和に先立ち、固化状態の硫酸ピッチを破砕する破砕部を有することを特徴とする。
また、本発明に係る硫酸ピッチの処理装置は、吸着に先立ち、吸収後のガスをプラズマ分解するプラズマ分解部をさらに有することを特徴とする。
また、本発明に係る中和処理装置は、容器に収容された固化状態の硫酸ピッチを所定位置に自動搬送して破砕する、該容器内に進入および後退可能な自動カッターを有する破砕部と、破砕した硫酸ピッチを自動搬送して投入し中和する、攪拌機を有する中和部とを備え、該破砕部および該中和部が気密室に設けられてなることを特徴とする。
また、本発明に係る中和処理装置は、固形物を含む強酸性廃棄物を収容した収容容器を保持する収容容器保持具と、該収容容器保持具を昇降動可能に付勢する昇降機構と、該収容容器保持具を傾動可能に付勢する傾動機構を備えた付勢装置と、前進および後退可能な回転カッターを備えたカッター装置と、攪拌機構を備えた中和槽を備えてなることを特徴とする。
また、本発明に係る中和処理装置は、前記収容容器保持具が、前記収容容器を収容して保持可能な寸法を有する円筒状容器であって、収容した該収容容器を該円筒状容器に固定する固定具を有することを特徴とする。
また、本発明に係る中和処理装置は、前記固定具が、前記収容容器および前記円筒状容器の上端部を冠着することができる実質的に溝型の環状レール部材を有するとともに、該環状レール部材を該円筒状容器に固定するパッチン錠を有することを特徴とする。
また、本発明に係る中和処理装置は、前記カッター装置が、前記カッターを水平方向に延出して配置され、水平方向に傾動された前記収容容器の内部に前記回転カッターを前進および後退可能に構成されてなることを特徴とする。
また、本発明に係る中和処理装置は、前記攪拌機構が、軸に1または複数の羽を備えた攪拌機を前記中和槽内に水平方向に延出して1または複数設けたものであることを特徴とする。
また、本発明に係る中和処理装置は、前記強酸性廃棄物が硫酸ピッチであり、前記収容容器がドラム缶状の容器であることを特徴とする。
本発明に係る硫酸ピッチの処理方法およびその装置は、硫酸ピッチを中和し、中和する際に発生する、二酸化硫黄を含むガスを液体に接触させて少なくとも二酸化硫黄を吸収し、吸収後のガス中の成分を吸着するため、硫酸ピッチを中和処理する際に発生する二酸化硫黄を含む有害ガスの外部への放出を実質的に解消することができる。
また、本発明に係る硫酸ピッチの処理方法およびその装置は、吸着に先立ち、吸収後のガスをプラズマ分解するため、吸着処理を効率的に行うことができる。
また、本発明に係る中和処理装置は、容器に収容された固化状態の硫酸ピッチあるいは強酸性廃棄物を破砕する、容器内に進入および後退可能なカッターを有する破砕部と、破砕した硫酸ピッチを中和する、攪拌機を有する中和部とを備え、破砕部および中和部が、好ましくは、気密室に設けられるので、能率的かつ安全に硫酸ピッチあるいは強酸性廃棄物を中和処理することができる。
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
まず、本発明に係る硫酸ピッチの処理方法について説明する。
本発明に係る硫酸ピッチの処理方法は、硫酸ピッチを中和する中和工程と、中和する際に発生する、二酸化硫黄を含むガスを液体に接触させて少なくとも二酸化硫黄を吸収する吸収工程と、吸収後のガス中の成分を吸着する吸着工程と、を有する。また、好ましくは、吸着後のガスの一部を前記吸収工程に戻す循環工程をさらに有する。
硫酸ピッチは、軽油を濃硫酸で洗浄して発生した直後は溶融状態あるいは液体状態であるため、発生後直ちにオンサイトで処理する場合は、そのままの状態で中和することができる。また、通常は、いったんドラム缶等の容器に保管した後に処理するが、この場合は、硫酸ピッチが固化しているため、好ましくは、破砕処理した後、中和処理する。
中和工程に先立ち、固化状態の硫酸ピッチを破砕する場合(破砕工程)、硫酸ピッチの平均粒径が200mm以下になるように破砕する。破砕後の硫酸ピッチの平均粒径は、より好ましくは50mm以下であり、さらに好ましくは20mm以下である。これにより、中和工程における中和時間を短縮することができる。なお、硫酸ピッチは、溶融状態の場合は勿論、固化状態においても二酸化硫黄を含むガスを発生するおそれがあるので、容器からの取り出し作業あるいは破砕作業において取り扱いを慎重に行うことが必要である。
中和工程では、硫酸ピッチを中和剤と混合して、攪拌しながら中和処理を行う。特に、硫酸ピッチが破砕品の場合は、十分に攪拌することが、効率的に中和処理するうえでより望ましい。
中和剤は、特に限定するものではなく、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩等を用いることができる。中和剤の投入量は、中和剤の種類、処理する硫酸ピッチの量や性状、pH等の条件に応じて適宜調整する。また、できるだけ水を添加せずあるいは混入させさせないことが、中和反応の暴走による温度の異常上昇や二酸化硫黄を含むガスの発生を抑えるうえで好ましい。なお、上記破砕工程と同様に、中和作業は慎重に行うことが必要である。中和処理時の温度は、例えば60〜120℃の範囲内に制御し、また、中和処理時間は、例えば、15〜60分間程度とする。
中和処理した中和物は、無害化されているので、焼却や地中埋設等の方法で容易に処理することができる。また、建築資材等の原料として活用することもできる。
中和工程で発生する二酸化硫黄を含むガスは、吸収工程に導入して液体に接触させて、少なくとも二酸化硫黄を液体に吸収させる。なお、このとき、破砕工程で生じうるガスも合わせて吸収工程で処理することがより好ましい。
吸収のために使用する液体は、少なくとも二酸化硫黄を吸収できるものである限り特に制限はないが、好ましくは、pHが5以上のものを、より好ましくは、pHが7以上のものを、さらに好ましくは、pHが9以上のものを用いる。
このような液体は、例えば、水に適宜のpH調整剤を添加することで得ることができる。pH調整剤の種類は特に限定するものではなく、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム等を用いることができる。
吸収処理の条件は、使用する装置のタイプによって異なるが、例えば気泡塔(バブリング塔)を用いる場合は、平均滞留時間として15〜60分程度とする。また、吸収温度は、例えば10〜80℃の範囲内とする。吸収処理により、二酸化硫黄を含むガス中の二酸化硫黄および温度条件に応じて水分を含むガス自体も液体に取り込まれ、吸収処理後のガス中の二酸化硫黄は吸収処理前に比べて大幅に減少し、また、ガスの量も減少する。
吸収処理後のガスは、吸着工程に導入され、吸収後のガス中に残存する有害成分がさらに吸着により除去される。
吸着のために使用する吸着剤は特に限定するものではなく、例えば、無機性吸着剤や有機性吸着剤等を用いることができる。
吸着処理の条件は、使用する吸着剤の種類や装置のタイプ等によって異なるが、例えば、充填層タイプの吸着装置を用いる場合は、10〜50℃の温度条件下で、平均滞留時間15〜60分間程度の条件で行う。吸着処理により、吸収後のガス中に残存する有害成分がさらに除去され、吸着後に排出されるガスは、二酸化硫黄の大気環境基準である、1時間値の1日平均値が0.04ppm以下という条件を十分に満たす。
なお、二酸化硫黄の発生源である硫酸ピッチの性状の変動や処理量の変動あるいは、処理条件の変動等により、吸着後に排出されるガス中の二酸化硫黄が上記大気環境基準を満たさないおそれや大幅に変動するおそれがある場合等においては、適宜、吸着後のガスの一部を吸収工程に戻すことにより(循環工程)、この不具合を解消することができる。
なお、以上説明した本発明に係る硫酸ピッチの処理方法において、破砕工程および中和工程を気密室内で行い、また、これらの工程を含めた全工程を気密室内で行うと、安全上より好ましく、このとき、全工程を自動制御して行うと、さらに好ましい。
また、本発明に係る硫酸ピッチの処理方法において、吸収工程でおいて使用して吸収能力の失われた液体や吸着工程で使用して吸着能力の失われた吸着剤は、いずれも、通常の産業廃棄物として安全に処理することができ、また、適宜の方法で再生して繰り返して使用してもよい。
また、本発明に係る硫酸ピッチの処理方法は、好ましくは、前記吸着工程に先立ち、吸収後のガス中をプラズマ分解するプラズマ分解工程をさらに有する。
プラズマ分解処理は、吸収処理後のガスにプラズマを照射し、あるいは吸収処理後のガスをプラズマ化することにより行う。
プラズマで処理したガスはその分解作用により、吸着効率を大きく向上させることができる。また、プラズマ分解処理に先立ち、ガス中の二酸化硫黄等の有害成分の大半を簡易な吸収処理より除去し、プラズマ分解に供される有害成分の負荷量が小さいため、効率的かつ安価にプラズマ分解処理し、および、吸着処理することができる。
つぎに、上記本発明に係る硫酸ピッチの処理方法を好適に実現することができる、本発明に係る硫酸ピッチの処理装置について、図を参照して説明する。
本発明に係る硫酸ピッチの処理装置10は、図1のブロック図に示すように、固化状態の硫酸ピッチを破砕する破砕部12と、硫酸ピッチを中和する中和部14と、中和する際に発生する、二酸化硫黄を含むガスを液体に接触させて少なくとも二酸化硫黄を吸収する吸収部16と、吸収後のガスをプラズマ分解するプラズマ分解部18と、吸収後あるいはプラズマ分解後のガス中の成分を吸着する吸着部20と、を有する。ここで、破砕部12およびプラズマ分解部18は、先の処理方法で説明したように、適宜省略することができる。好ましくは、破砕部12および中和部14は、例えば1つの気密室22内に配置し、発生する有害ガスの外部への漏れを防ぐ。また、好ましくは、気密室22を覆うように、あるいは気密室22を省略して、吸着部20まで含む処理装置10全体を例えば1つの気密室24内に配置する。
中和部14から発生する二酸化硫黄を含むガスは、配管を介して、吸収部16以降の各装置に順次導入される。二酸化硫黄を含むガスは、例えば、配管内および各装置を、排出ガスラインに設けられる図示しない排出ブロアによって吸引、移送され、あるいは、中和部14と吸収部16との間の配管に接続される図示しない圧送ブロアによって、圧入、移送される。
必要に応じて、吸着後のガスの一部は、図示しないブースタを備えた循環部26によって吸収部16に戻される。
気密室22内に配置される破砕部12および中和部14からなる中和処理装置は、好ましくは、気密室22内で作業する人手を要しないように自動化する。
すなわち、例えば、ドラム缶等の容器に収容された固化状態の硫酸ピッチを自動搬送して中和部の上方に設けられた破砕部12に移送し、容器内に進入および後退可能な自動カッターで硫酸ピッチを破砕する。そして、硫酸ピッチの破砕が完了した容器の開口を中和部の導入口に向けて自動的に位置決めし、硫酸ピッチの破砕品を中和部14に投入する。硫酸ピッチの投入に前後して、中和部14に中和剤を自動投入する。
中和部14は、好ましくは、例えば図示しない攪拌機を備えた中和槽であり、中和槽の内容物のpHが所定の値になるようにpHセンサでpHを検知して中和剤の投入量を自動調整した後、所定時間、自動攪拌し、中和処理を行う。
中和部14から発生する二酸化硫黄を含むガスは配管を介して吸収部16に導入される。また、好ましくは破砕部12の空間部も配管を介して吸収部16に接続される。これにより、二酸化硫黄を含むガスは破砕部12および中和部14から気密室22の内部に漏れ出すおそれが少ないため、気密室22から外部への二酸化硫黄を含むガスの漏れをより確実に防止できる。
中和後の中和物は、適宜の手段で自動排出され、容器等に貯蔵した後、後処理が行われる。
吸収部16は、吸収用の液体と二酸化硫黄を含むガスとの接触が効率的に行われるものである限り装置タイプを限定するものではなく、例えば、気泡塔やスプレイ塔を用いることができる。スプレイ塔を用いる場合は、一般的に行われるようにラシヒリング等の充填物を充填した構造を採用するとより好適である。気泡塔等は、必要に応じて複数基を直列にあるいは並列に配置して用いることができる。
気泡塔を用いる例で説明すると、例えば、吸収液をバッチで張り込んだ吸収塔の上方から二酸化硫黄を含むガスを吸収液の奥深くまで挿入し、吸収液中でバブリングして、吸収後のガスを同じく吸収塔の上方から抜き出して、プラズマ放電部18あるいは吸着部20に導入する。このとき、二酸化硫黄を含むガスを吸収塔の下部から吸収塔内に導入してもよい。また、このとき、ポンプで吸収液を吸収塔内を循環させるとともに、一定量の新しい吸収液を連続的あるいは間歇的に補給するとともに、吸収能力の落ちた液を連続的あるいは間歇的にブローするようにしてもよい。
プラズマ分解部18は、例えば、昇圧装置(トランス)とガス流路内に設置される電極装置で構成される。昇圧装置により昇圧(最大15kV,20mA)した電流を10〜50mm離れた電極間で放電させて吸収処理後のガスを分解する。
吸着部20は、適当な吸着効率を有するものである限り装置タイプを限定するものではなく、例えば、吸着剤を充填した充填塔やハニカムロータタイプの吸着装置等を用いることができる。充填塔等は、必要に応じて複数基を直列にあるいは並列に配置して用いることができる。また、複数基の充填塔等を交互に切り換えて使用してもよく、あるいは、バッファタンクを介在させて、稼動、休止を繰り返すインターバル使用を行ってもよい。
吸着能力の低下した吸着剤はそのまま取り出して廃棄してもよく、また、洗浄、脱離処理を行って再生して繰り返し使用してもよい。
上記した処理装置10を構成する各装置は、酸による腐食を避けるために、高級SUSあるいはチタン等の耐食性材料や防食ライニング加工を施した材料を用いて形成する。
つぎに、上記本発明に係る硫酸ピッチの処理方法をより好適に実現することができる、本発明に係る中和処理装置について、装置の全体構成を模式的に示す図2、装置の各構成要素を示す図3〜図5図を参照して説明する。
図2の装置の全体図に示すように、本発明に係る中和処理装置28は、収容容器保持具30と、付勢装置32と、カッター装置34と、中和槽36を備える。
収容容器保持具30は、図3の収容容器保持具30の分解組立図に示すように、前記した硫酸ピッチ等の固形物を含む強酸性廃棄物を収容した収容容器(図3中、矢印Aで示す。)を収容して保持可能な寸法を有する円筒状容器(以下、円筒状容器に参照符合30を付すことがある。)である。いわば、強酸性廃棄物は、収容容器Aおよび収容容器保持具30のダブルドラムに収容される。
ここで、固形物を含む強酸性廃棄物として、硫酸ピッチのほかに、例えば、実験系廃棄物などを挙げることができる。収容容器Aは、特に限定するものではないが、費用その他の利点からドラム缶状の容器、すなわち、大型で太鼓形の鉄製円筒状容器を用いる。以下、このドラム缶状の容器を単に容器と呼ぶとともに、参照符合Aを付す。)この場合、容器Aは繰り返しの使用によって腐食し、内容物である強酸性廃棄物が中和処理装置28での取り扱い中に漏洩するおそれがあり、また、腐食による漏洩がなくても、容器Aは開缶して取り扱うため、容器Aの開口から強酸性廃棄物がこぼれるおそれもある。
収容容器保持具30は、容器Aと二重に設けられる円筒状容器であるため、容器Aから強酸性廃棄物が漏洩等しても円筒状容器の外には漏れることが無い。このため、強酸性廃棄物を安全に取り扱うことができ、また、強酸性廃棄物による中和処理装置28全体の汚損を防止することができる。
収容容器保持具(円筒状容器)30は、収容した収容容器Aを固定する固定具38を備える。固定具38は、周知のものから適宜選択して用いることができるが、例えば、図3に示すように、溝型の環状レール部材40と、パッチン錠42で構成すると、好適である。
環状レール部材40の容器Aに接する側の溝壁は、ここでは、環状レール部材40を軽量化するために、数個の凸部状に形成されている。パッチン錠42は、環状レール部材40および円筒状容器30に相補的に用いられる2つの部材42a、42bで構成される。
容器Aを円筒状容器30に収容した状態で、容器Aおよび円筒状容器30の上端部を環状レール部材40の溝に冠着し、さらに、パッチン錠42で環状レール部材40を円筒状容器30に固定することにより、容器Aが円筒状容器30に確実に固定され、後述する円筒状容器30の傾動操作を行っても、円筒状容器30から容器Aが脱落するおそれがない。
なお、例えば、収容容器保持具30を含む中和処理装置28を完全自動運転して人力による作業を不要とすれば、収容容器保持具30として、円筒状容器でなく、収容容器Aを把持する適宜の把持具を用い、詳細を後述する付勢装置32に把持具を連接する構成としてもよい。
付勢装置32は、昇降機構と傾動機構を有する。昇降機構と傾動機構は、適宜の構造のものを採用することができる。
昇降機構は、例えば、収容容器保持具30に取り付けられた支持部材44と、支持部材44を係止する1対の縦ガイド部材46a、46bと、縦ガイド部材46a、46bに係止する、1対の鎖状チェーンを使って支持部材44を昇降動可能に付勢する駆動源とで構成される(鎖状チェーンおよび駆動源は図示を省略。)。傾動機構は、収容容器保持具30に取り付けられた歯車48と、モータ50と、歯車48とモータ50に掛け渡されたチェーンベルト52で構成され、モータ50に付勢されて、収容容器保持具30を、例えば図1中、時計回り方向に90度傾動することができる。
カッター装置34は、モータ54と、モータ54に取り付けられた回転カッター56を備える。回転カッター56は、モータ54から水平方向に延出して配置された軸56aと、軸56aの先端に環状部とその環状部に無数に立設された刃を有するカッター部56bを有する。軸56aに垂直な面に対してなすカッター部56bの刃の角度(刃先角度)は、好ましくは30〜60度とする。これにより、強酸性廃棄物を容易に削ることができ、また、削り取った強酸性廃棄物を刃の後方に容易に排出することができる。
なお、カッター装置34は、1対の横ガイド部材58a、58b間に係止され、図示しない駆動源により水平方向に移動可能に構成される。
上記のように構成される付勢装置32およびカッター装置34を用い、付勢装置32の昇降機構によって、カッター装置34が配置された高さまで収容容器保持具30を上昇させた後、傾動機構によって、収容容器保持具30をカッター装置34に向けて90度傾動させる。
そして、この状態で、図4に示すように、上記駆動源に付勢されたカッター装置34を収容容器保持具30に向けて移動させることで、カッター部56bを容器Aの内部に前進、進入させ、カッター部56bによって固形化した硫酸ピッチ等をその表面から順次削ることで、硫酸ピッチ等を破砕する。
破砕された硫酸ピッチ等は、順次、詳細を後述する中和槽36に落下する。容器Aが空になると、カッター装置34を後退させ、収容容器保持具30をさらに図4中右回り方向に傾動させて、破砕されて容器Aに残っている硫酸ピッチを中和槽36に投入する。その後、図4中左回り方向に収容容器保持具30を起こして容器Aの開口部が上を向く縦姿勢に戻し、さらに、収容容器保持具30を降下させて床上に置くことにより、硫酸ピッチ等が収容された次のドラム缶状の容器を処理する体勢に戻る。
中和槽36は、中和剤および破砕された硫酸ピッチ等を入れて中和操作を行うためのものであり、攪拌機構を備える。攪拌機構は、適宜のものを用いることができるが、例えば、図5に示すように、軸60に複数の羽62を備えた攪拌機64を中和槽36内に水平方向に延出して複数設けたものであると、好適である。この場合、隣り合う攪拌機64の回転方向を逆にして、破砕された硫酸ピッチ等に練り込むようにすると好適である。攪拌機64は必要に応じて1つのみ設けてもよい。なお、図5中、参照符合65は、図示しない駆動源に付勢されて回転することにより軸60を回転させる歯車を示す。
中和槽36は、ウインチにより手動で付勢されて、図5中、左右方向、すなわち、上記した硫酸ピッチを投入する位置と、後述する中和反応を進行させるために撹拌機を作動させる位置(蓋68を配置した位置)との間を移動可能に構成されている。
また、図1中、参照符合66は、収容容器保持具30から落下する破砕された硫酸ピッチ等を中和槽36にガイドするシュートを示し、図3および図5中、参照符合68は中和槽36の蓋を示す。
蓋68は、1対の右部縦ガイド部材71a、71bに係止され、図示しない駆動源に付勢されて昇降可能に構成される。
また、図1および図5中、参照符合72は中和槽36を吸収部16(図1参照)に連通する配管である。
前記容器Aで破砕された硫酸ピッチ等は、逐次、シュート66を介して、例えば炭素粉末剤のような反応速度の遅い中和剤が予め投入された中和槽36の中に落下する。このとき、攪拌機64は停止状態にしておく。そして、落下した硫酸ピッチ等と中和剤が逐次、徐々に反応して中和反応が一部進行する。この中和反応により二酸化硫黄を含む反応生成ガスが生成するが、反応生成ガス生成量が少ないため、装置環境を損なうおそれは少ない。
この場合、容器Aの開口を上向きとし、容器Aの開口に向けてカッター部56bを下降させて硫酸ピッチ等の破砕を行うと、硫酸ピッチ等の全量の破砕を完了した時点で容器Aを傾動させて中和槽36の中に一度に硫酸ピッチ等を落下させる必要があり、中和反応が一時に進行するため、また、この方法であると破砕された硫酸ピッチの中をカッターやその軸が回転するためカッター駆動源に余分な負荷を掛けてしまい、不都合である。一方、容器Aの開口を下向きとし、容器Aの開口に向けてカッター部56bを上昇させて硫酸ピッチ等の破砕を行うと、破砕され、落下する硫酸ピッチ等によってカッター装置34が汚損、損傷し、また、状況によってはまとまった量の硫酸ピッチ等が中和槽36に落下するおそれもあるため、不都合である。
破砕作業が終了し、破砕された硫酸ピッチ等の全量が中和槽36の中に落下した時点で、中和槽36を蓋68の位置まで移動させ、ナトリウム塩等の反応速度の速い中和剤を中和槽36に投入した後、蓋68を中和槽36に被せる。そして、配管72を吸収部16に連結した状態で、攪拌機64を作動させて、中和反応を進行させ、完了させる。このとき、二酸化硫黄を含む大量の反応生成ガスは、蓋68によって中和槽36内に密閉されるとともに、図示しない吸引源によって吸収部16(図1参照)に吸引され、前記した処理(除害処理)が施される。
以上説明した本発明に係る中和処理装置28は、硫酸ピッチ等の強酸性廃棄物を安全にかつ高効率で処理することができる。
また、例えば、吸収部16、プラズマ分解部18、および吸着部20を函体状に形成して、連結管で接続する構造とし、これらを上記の中和処理装置28と組み合わせることにより、装置全体の外形寸法がおよそ縦、横、高さともに4m程度の装置で、例えば、ドラム缶状の容器A1缶分の約200kgの硫酸ピッチを1時間程度で処理することができる。このとき、破砕処理ならびに中和および除害処理は、それぞれ30分程度かけて行われる。
上記の装置は、装置全体がコンパクトで重過ぎず車載可能であるため、例えば、ノックダウン方式により、強酸性廃棄物を保管する場所等の所望の場所に装置を容易に設置することができる。
(実施例1)
循環部およびプラズマ分解部を備えた処理装置を用い、硫酸ピッチを時間当たり約200kg処理した。排出されるガスは、30〜50Nm/minであり、排出されるガス中の二酸化硫黄濃度は350ppmであった。
(実施例2)
プラズマ分解部がないほかは実施例1と同じ装置を用い、実施例1と同様の条件で硫酸ピッチを処理した。排出されるガス中の二酸化硫黄濃度は、環境基準を十分下回る値であった。
本発明に係る硫酸ピッチの処理装置の概略構成を示すブロック図である。 本発明に係る中和処理装置の全体構成を模式的に示す斜視図である。 中和処理装置の固定具を説明するための、収容容器保持具および固定具の組立分解図である。 中和処理装置のカッター装置の作用を説明するための図である。 中和処理装置の中和槽の作用を説明するための図である。
符号の説明
10 硫酸ピッチの処理装置
12 破砕部
14 中和部
16 吸収部
18 プラズマ分解部
20 吸着部
22、24 気密室
26 循環部
28 中和処理装置
30 収容容器保持具
32 付勢装置
34 カッター装置
36 中和槽
36を備える。
38 固定具
40 環状レール部材
42 パッチン錠
44 支持部材
46a、46b 縦ガイド部材
48 歯車
50、54 モータ
52 チェーンベルト
56 回転カッター
56a、60 軸
56b カッター部
58a、58b 横ガイド部材
62 羽
64 攪拌機
67a、67b 下部横ガイド部材
66 シュート
68 蓋
71a、71b 右部縦ガイド部材
A 収容容器

Claims (15)

  1. 硫酸ピッチを中和する中和工程と、
    中和する際に発生する、二酸化硫黄を含むガスを液体に接触させて少なくとも二酸化硫黄を吸収する吸収工程と、
    吸収後のガス中の成分を吸着する吸着工程と、
    を有することを特徴とする硫酸ピッチの処理方法。
  2. 吸着後のガスの一部を前記吸収工程に戻す循環工程をさらに有することを特徴とする請求項1記載の硫酸ピッチの処理方法。
  3. 前記中和工程に先立ち、固化状態の硫酸ピッチを破砕する破砕工程を有することを特徴とする請求項1または2記載の硫酸ピッチの処理方法。
  4. 前記吸着工程に先立ち、吸収後のガスをプラズマ分解するプラズマ分解工程をさらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の硫酸ピッチの処理方法。
  5. 硫酸ピッチを中和する中和部と、
    中和する際に発生する、二酸化硫黄を含むガスを液体に接触させて少なくとも二酸化硫黄を吸収する吸収部と、
    吸収後のガス中の成分を吸着する吸着部と、
    を有することを特徴とする硫酸ピッチの処理装置。
  6. 吸着後のガスの一部を前記吸収部に戻す循環部をさらに有することを特徴とする請求項5記載の硫酸ピッチの処理装置。
  7. 中和に先立ち、固化状態の硫酸ピッチを破砕する破砕部を有することを特徴とする請求項5または6記載の硫酸ピッチの処理装置。
  8. 吸着に先立ち、吸収後のガスをプラズマ分解するプラズマ分解部をさらに有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の硫酸ピッチの処理装置。
  9. 容器に収容された固化状態の硫酸ピッチを所定位置に自動搬送して破砕する、該容器内に進入および後退可能な自動カッターを有する破砕部と、破砕した硫酸ピッチを自動搬送して投入し中和する、攪拌機を有する中和部とを備え、該破砕部および該中和部が気密室に設けられてなることを特徴とする中和処理装置。
  10. 固形物を含む強酸性廃棄物を収容した収容容器を保持する収容容器保持具と、
    該収容容器保持具を昇降動可能に付勢する昇降機構と、該収容容器保持具を傾動可能に付勢する傾動機構を備えた付勢装置と、
    前進および後退可能な回転カッターを備えたカッター装置と、
    攪拌機構を備えた中和槽を備えてなることを特徴とする中和処理装置。
  11. 前記収容容器保持具が、前記収容容器を収容して保持可能な寸法を有する円筒状容器であって、収容した該収容容器を該円筒状容器に固定する固定具を有することを特徴とする請求項10記載の中和処理装置。
  12. 前記固定具が、前記収容容器および前記円筒状容器の上端部を冠着することができる実質的に溝型の環状レール部材を有するとともに、該環状レール部材を該円筒状容器に固定するパッチン錠を有することを特徴とする請求項11記載の中和処理装置。
  13. 前記カッター装置が、前記カッターを水平方向に延出して配置され、水平方向に傾動された前記収容容器の内部に前記回転カッターを前進および後退可能に構成されてなることを特徴とする請求項10記載の中和処理装置。
  14. 前記攪拌機構が、軸に1または複数の羽を備えた攪拌機を前記中和槽内に水平方向に延出して1または複数設けたものであることを特徴とする請求項11記載の中和処理装置。
  15. 前記強酸性廃棄物が硫酸ピッチであり、前記収容容器がドラム缶状の容器であることを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の中和処理装置。
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