JP2007190001A - ジオトリカム属菌を用いた発酵おから等の製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来、食品廃棄物として大量に廃棄されていたおから等を食品として再利用する方法を提供すること、及び、材料となるおから等の腐敗を防止しつつ良好な食感と風味を付加し、栄養価も高い発酵おから等の発酵食品の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の発酵食品の製造法は、ジオトリカム属菌を発酵スタータとして使用することを特徴とする。ジオトリカム属菌が有する抗菌性を利用することによって、食材となるおから等の腐敗を防止することができる。また、ジオトリカム属菌由来のキチン・キトサン含有多糖体を食材に付加させると共に、果実様フレーバーを付加させることができ、おから等の食材の食感と風味を向上させることができる。さらに麹菌類等との共生発酵により、より良い食感と栄養価の高い機能性食品を提供できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ジオトリカム(Geotrichum)属菌が有する抗菌性を利用して、おからを始めとする糠やふすまなど、種々の食品廃棄物の腐敗防止を図ると共に、ジオトリカム属菌の菌糸体の細胞壁に含まれるキチン・キトサン含有多糖体を付加することにより、食品廃棄物並びに各種食品を機能性食品として生産する発酵製造技術に関するものである。
例えば、豆腐や豆乳を作るときの副産物として発生するおからには、腐敗を進め、食品としての価値を損なう原因となるバチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)や食中毒菌のバチルス・セリウス(Bacillus cereus)などの細菌が芽胞の状態で生存しているが、本発明によれば、これらの細菌類の増殖を蒸煮滅菌のように熱エネルギーを多量に用いることなく防止することが可能であり、同時にキチン・キトサン含有多糖体を付加し、機能性を高めることができる。さらに麹菌類などとの共生発酵により、おからを始めとする糠やふすまなどの食品廃棄物を美味しくて香りの良い栄養価が豊富な機能性食品へと安全且つ容易に、多量に効率よく加工生産することができる。しかも貴重な食資源のリサイクルと環境負荷軽減に役立てることができる。本発明は、種々の食品および飲料の加工にも利用可能であり、食品工業の発展に大きく寄与するものである。
現在、おからを始めとする糠やふすまなどが食品廃棄物として大量に廃棄処分されている。例えば、おからは年間約70万トン以上が副産物として生産され、一部が乾燥され飼料用として利用されているものの、そのほとんどが大切な食資源であるにもかかわらず産業廃棄物として焼却処分されている。かつては栄養価が高く、安くて貴重な蛋白源として親しまれてきたこの食材に、消費者は食指を動かそうとしない。その主たる原因としては、パサパサ・モゴモゴとした食感や独特の豆臭さ、調理・味付けの難しさ、腐敗しやすいことなどが挙げられる。食品として再利用するには、これら諸問題の解決が必須であり、その為これまで様々な研究が為され、有価物として製造する方法が考え出されてきた。それら従来法のうち代表的なものが、下記の特許文献1〜6などに記載されているが、これらの従来法ではおから等を食品として効率よく多量に再利用することは困難であった。
例えば、生おからを蒸煮して細菌類(雑菌)を滅菌する従来法では、121℃で15分間蒸煮処理しなければ芽胞までも滅菌することができないため、熱エネルギーコストが高くついていた。しかも蒸煮処理設備も必要であり極めて非効率であった。
この欠点を解決するために考え出されたのが、生おからに有機酸や無機酸を添加しpH値を低下させ、酸細胞毒性によりバチルス属細菌類を抑える方法であるが、これは栄養細胞には効果があるものの芽胞菌には効果が無く、また発酵スタータとして用いられる麹菌の種類によっては、発酵途中でpH値が高くなることで、バチルス属細菌類が増殖でき得る環境となり、発酵がうまく進行しないなどの問題点があった。
このほか、乳酸を多く産する乳酸菌を用いる静菌方法では、細菌類の増殖は抑えられるものの、酸味が強くなり、発酵後の中和処理などで問題が生じた。さらに一部の乳酸菌が産するバクテリオシンを用いる静菌方法では、グラム陽性菌の増殖を抑えることはできるものの、グラム陰性菌に対してはほとんど効果を発揮できないなどの問題があった。このような背景からおから等の食品残渣を食品として再利用しようとする試みは、これまで味噌作りにおいて一部利用は見られるものの、本格的な普及には至らなかった。
特開平6−303940号公報 特開平7−79680号公報 特開2000−316512号公報 特開2003−062550号公報 特許第3027352号公報 特開平6−14735号公報
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その課題・目的は、(1)従来、食品廃棄物として大量に廃棄されていたおから等を食品として再利用する方法を提供すること、及び(2)材料となるおから等の腐敗を防止しつつ良好な食感と風味を付加し、栄養価も高い発酵おから等の発酵食品の製造方法を提供すること、などである。
本発明者は、上記目的を達成するため研究を積み重ねた結果、(1)ジオトリカム属菌が、食品廃棄物中に残存するバチルス属菌、大腸菌などの細菌類の増殖を抑える抗菌性を有し、この作用によっておから等の食材の腐敗を防止すること、(2)ジオトリカム属菌の菌糸体細胞壁にはキチン・キトサン等の多糖体が多量に含まれ、ジオトリカム属菌を発酵スタータとして使用することにより、おから等の食材にキチン・キトサン含有多糖体を付加させると共に、良好な食感と風味を食材に付加させることができ、さらに麹菌類等との共生発酵により、より良い食感と栄養価の高い機能性食品を提供できることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、上記知見に基づくものであり、以下のA)〜O)の発明を包含する。
A) ジオトリカム属菌を発酵スタータとして使用することを特徴とする発酵食品(発酵飲料を含む意味。以下同じ。)の製造法。
B) ジオトリカム属菌を発酵スタータとして使用することを特徴とする発酵おからの製造法。
C) おから、糠、ふすま、その他穀類の処理過程で産生する副産物を原材料に使用した発酵食品の製造法において、腐敗防止のためジオトリカム属菌を原材料に加えて発酵させる工程を含むことを特徴とする発酵食品の製造法。
D) 豆乳等の清涼飲料水、又は牛乳その他動物の乳、もしくはこれらを加工して作られる乳製品を原材料に使用した発酵食品の製造法において、ジオトリカム属菌を原材料に加えて発酵させる工程を含むことを特徴とする発酵食品の製造法。
E) テンペ菌、及び/又は麹菌を、ジオトリカム属菌と共に使用して共生発酵させる工程を含むことを特徴とする、上記A)〜D)のいずれかに記載の製造法。
F) リゾプス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、及び/又はアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)を、ジオトリカム属菌と共に使用して共生発酵させる工程を含むことを特徴とする、上記E)記載の製造法。
G) リゾプス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)及びアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)を、ジオトリカム属菌と共に使用して共生発酵させる工程を含むことを特徴とする、上記E)記載の製造法。
H) ジオトリカム属菌が有する抗菌性を利用して、食材の腐敗を防止することを特徴とする食材の腐敗防止法。
I) ジオトリカム属菌が有する抗菌性を利用して、おからの腐敗を防止することを特徴とするおからの腐敗防止法。
J) おから等の食材の腐敗防止剤であって、ジオトリカム属菌を含有する腐敗防止剤。
K) ジオトリカム属菌により、バチルス属細菌類および大腸菌などの細菌の生育を阻害することを特徴とする、細菌の生育阻害剤。
L) ジオトリカム属菌を使用して製造される発酵おから。
M) 上記L)記載の発酵おからを原材料として使用することを特徴とするおから利用食品の製造法。
N) ジオトリカム属菌として、ジオトリカム・フラグランス(Geotrichum fragrans)、ジオトリカム・カンディダム(Geotrichum candidum)、ジオトリカム・アミラリエ(Geotrichum armillariae)、ジオトリカム・キャピタタム(Geotrichum capitatum)、ジオトリカム・リンキ(Geotrichum linkii)、 ジオトリカム・セリシュウム(Geotrichum sericeum)、ジオトリカム・シトリ‐アウランティ(Geotrichum citri-aurantii)、ジオトリカム・プルモニュウム(Geotrichum pulmoneum)、ジオトリカム・クレバタム(Geotrichum clavatum)、ジオトリカム・エリエンス(Geotrichum eriense)、ジオトリカム・ファメンタンス(Geotrichum fermentans)及びジオトリカム・クレバニィ(Geotrichum klebahnii)種から選ばれる1又は複数のジオトリカム属菌を使用することを特徴とする、上記A)〜I)のいずれかに記載の方法。
O) ジオトリカム属菌として、ジオトリカム・フラグランス(Geotrichum fragrans)、及び/又はジオトリカム・カンディダム(Geotrichum candidum)を使用することを特徴とする上記N)記載の方法。
本発明によれば、発酵おから等の製造において、抗菌性を有するジオトリカム属菌を使用することによって、おから等の食材の腐敗を防止することができる。しかも、ジオトリカム属菌の菌糸体細胞壁に含まれるキチン・キトサン等の多糖体を食材に付加させると共に、果実様フレーバーを付加させることができ、おから等の食材の食感と風味を向上させることができる。さらに麹菌類等との共生発酵により、より良い食感と栄養価の高い機能性食品を提供できる。
以下、本発明の実施の一形態について図1を参照しつつ説明する。
[1]発酵おから及びおから利用食品の製造法
本実施形態では、ジオトリカム属菌を発酵スタータとして使用して、発酵おからを製造する方法、更にその発酵おからを利用したおから利用食品の製造法の概要について説明する。
本製造方法においては、原材料となるおからの腐敗防止のため、及び発酵おからにキチン・キトサン含有多糖体を付与し、良好な食感と風味(香り)を付与するため、ジオトリカム属菌を発酵スタータとして使用することを特徴とする。そのため、まずジオトリカム属菌を調製する。調製方法としては、固形培地によるものと液体培地による培養法が考えられるが、ここでは生産効率が遥かに優れる液体培地による培養法を使用する。例えば、ジオトリカム属菌をグルコース、マルトエキス、廃糖蜜などの炭素源、及びポリペプトン、イーストエキストラクト、乾燥ビール酵母などの窒素・燐酸源、ミネラル成分などを含む液体培地(S1)にて、好気的条件下で振盪もしくは攪拌培養、あるいは静置培養する。ここでは通気攪拌液体培養を用いて、ジオトリカム属菌を培養した(S2)。具体的な培養条件等については特に限定されないが、例えば後述の実施例記載の方法、あるいは特願2005−329742号明細書記載の方法を用いることができる。
上記液体培養後、ジオトリカム属菌を培養液から分離・収集する(S3)。例えば、遠心分離機などにより培養液と概ね分離しゾル様で収集する方法もしくは筒型の大型フィルター(ポア径1〜3μm)へ圧力ポンプにより圧送することで、ジオトリカム属菌をゲル様で短時間に効率よく大量に得ることができる。
次に、上記方法で培養及び回収したジオトリカム属菌を、テンペ菌、及び/又は麹菌と共に発酵用菌体として使用して、原材料の生おからにこれらの菌体を加え、共生発酵させる。例えば、リゾプス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、及び/又はアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)を、ジオトリカム属菌と共に使用して共生発酵させる。ここでは、生おからに対し、リゾプス・オリゴスポラス及びアスペルギルス・ニガーを、ジオトリカム属菌と共に植菌し、3菌体により共生発酵させた(S4)。
上記3菌体による共生培養を30〜72時間程度、好ましくは40〜60時間程度行うことによって、発酵大豆ファイバー(発酵おから)を製造する(S5)。この共生培養によって、製造された発酵大豆ファイバーにおいては、生おからの食感(パサパサ、モサモサ感)の改善に関与すると考えられる糖質関連酵素やプロテアーゼなどの加水分解酵素の極めて高い活性が見出された(図12参照)。官能試験の結果、製造された発酵大豆ファイバーの香り、うまみ、食感は良好なものであった(図13参照)。また、この発酵大豆ファイバーには、上記各酵素の働きにより、低分子化され可溶化された食物繊維と、タンパク質分解による遊離アミノ酸類とが豊富に含まれていると考えられる。即ち、本実施形態の製造法により、おからの食感を良好なものとし、かつ栄養価の高い機能性食品として再生することが可能となる。
上記発酵大豆ファイバーは、味噌・醤油用大豆代替原料として利用可能である(S6)。また、パン、クッキー等の菓子類、スナック類、シリアル食品、魚練り製品、コロッケ、その他の惣菜用原料などに利用可能である(S9)。このようなおから利用食品の製造法としては、例えば、上記発酵大豆ファイバーを低温域で熟成発酵させ、酵素反応による加水分解、および不溶性食物繊維の低分子化を進行させる工程(S7)、その後、エクストルーダーなどによりペースト状に加工処理する工程(S8)を経て、これを原材料に用いて各種おから利用食品を製造する。
実際に、本発明の発酵大豆ファイバー(発酵おから)を原料に使用し、おから利用食品として味噌およびパンを製造し、いずれも風味豊かな良好な食品が得られた(実施例6・7)。
本発明に使用するジオトリカム属菌としては、ジオトリカム・フラグランス及びジオトリカム・カンディダムの使用が好ましいが、これに限定されるものではなく、他のジオトリカム属菌種であるジオトリカム・アミラリエ(Geotrichum armillariae)、ジオトリカム・キャピタタム(Geotrichum capitatum)、ジオトリカム・リンキ(Geotrichum linkii)、 ジオトリカム・セリシュウム(Geotrichum sericeum)、ジオトリカム・シトリ‐アウランティ(Geotrichum citri-aurantii)、ジオトリカム・プルモニュウム(Geotrichum pulmoneum)、ジオトリカム・クレバタム(Geotrichum clavatum)、ジオトリカム・エリエンス(Geotrichum eriense)、ジオトリカム・ファメンタンス(Geotrichum fermentans)及びジオトリカム・クレバニィ(Geotrichum klebahnii)種を使用するものであってもよい。
また、本発明のおから利用食品としては、上述のように味噌、パンのほか、醤油、クッキー等の菓子類、スナック類、シリアル食品、魚練り製品、コロッケ、その他の惣菜用原料が例示される。
以上のように、本発明は、ジオトリカム属菌を発酵スタータとして使用することによって、発酵おから等の発酵食品を製造することを特徴とする。この「ジオトリカム属菌を発酵スタータとして使用」は、おから、糠、ふすま等の食品廃棄物を再利用する場合と、食品廃棄物以外の食品、例えば豆乳、牛乳等を原料に使用する場合とでは使用目的が若干異なる。即ち、おから、糠、ふすま等の食品廃棄物を再利用する場合は、ジオトリカム属菌の抗菌性の性質を利用した食材の腐敗防止を主目的とし、同時にジオトリカム属菌由来のキチン・キトサン含有多糖体を食材に付与すると共に、良好な食感と風味(香り)を付与する目的で、ジオトリカム属菌を発酵スタータとして使用する。一方、豆乳、牛乳等を原料に使用し、発酵食品を製造する場合は、ジオトリカム属菌由来のキチン・キトサン含有多糖体を食材に付与すると共に、良好な食感と風味(果実様フレーバー)の付与を主目的として、ジオトリカム属菌を発酵スタータとして使用する(実施例8・9参照)。
以下では、このジオトリカム属菌の抗菌性、果実様フレーバー付与能、およびキチン・キトサン含有多糖体付与能について、それぞれ説明する。
[2]ジオトリカム属菌の抗菌性(雑菌生育阻止)確認試験
ジオトリカム属菌の抗菌性を次の方法により検証した。使用したジオトリカム属菌は、ジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株、ジオトリカム・フラグランスCBS164.32菌株、およびジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株の3種類である。一方、検定菌としては、グラム陽性菌のバチルス・サブチルスとバチルス・セリウス、およびグラム陰性菌である大腸菌の3種類を用いた。
上記CBS127.76菌株およびCBS164.32菌株は、いずれもオランダの微生物保存機関(Centraalbureau voor Schimmelcultures,Baarn,Netherlands)に登録された固有の菌株であり、研究者などからの要請があれば当該機関より菌体が分譲される。また、上記ジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株は、フランスの菌体販売会社(ETS Andre COQUARD)より取り寄せた市販品(商品名SIGMA-54)である。
まず、各ジオトリカム属菌の菌体を得るために液体培地での本培養を行った。培地の組成としては、重量比で脱塩水1に対して、D-グルコース2%、ポリペプトン0.5%、イーストエキストラクト0.3%、マルトエキス0.0167%からなる溶液をpH5.6に調整するのが好ましい。これを試験管9本に各々7ml分注して121℃で15分間オートクレーブ処理後に28℃まで冷却した。この試験管にクリーンベンチにてジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株、ジオトリカム・フラグランスCBS164.32菌株、ジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株をそれぞれ単独で1白金耳植菌し、各菌体ごとに3本ずつ計9本を作り、振盪培養機で温度30℃、振盪速度140rpm、好気的条件で24時間振とう培養した。
これと並行して検定菌のバチルス・サブチルスとバチルス・セリウス、並びに大腸菌それぞれの活性の高い菌体を得るための本培養を行う。培養液は、脱塩水1に対して、塩化ナトリウム0.05%、肉汁0.5%、D-グルコース1%、ポリペプトン0.5%、イーストエキストラクト0.3%、マルトエキス0.0167%からなる溶液でpH7.0に調整し、試験管9本に各々7ml分注して121℃で15分間オートクレーブ処理後に28℃まで冷却した。この試験管にクリーンベンチにてバチルス・サブチルス、バチルス・セリウス、大腸菌をそれぞれ単独で1白金耳植菌し、各菌体ごとに3本ずつ計9本を作り、振盪培養機で温度30℃、振盪速度140rpm、好気的条件で24時間振とう培養した。これを前培養として同様の操作を1回繰り返し本培養菌液とし、検定菌として用いた。
次に重量比で脱塩水1に対して、塩化ナトリウム0.05%、肉汁0.5%、D-グルコース1%、ポリペプトン0.5%、イーストエキストラクト0.3%、マルトエキス0.0167%、Agar1.5%からなる寒天培地をpH7.0に調整し、121℃で15分間オートクレーブ処理後に、クリーンベンチにて滅菌済みペトリ皿1枚につき15ml分注して冷却、固化させた。30℃で24時間インキュベートすることにより同平板培地表面を完全に乾燥させた後、この培地上にバチルス・サブチルスの本培養菌液を80μl〜100μl 植菌し、スプレッダーで均一に塗布した。塗抹した培養液が培地に浸透し表面をやや乾燥させた後、その上面4箇所に厚さ2mm・径8mmの滅菌済みペーパーディスクを配した。次にこのペーパーディスク上に本培養したジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株の菌液をろ過し、菌体を取り除いたろ過液を35μl、70μl、140μlそれぞれ滴下した。残る一枚のペーパーディスクには生菌液(培養液)を100μl植菌した。これを恒温機にて30℃で培養を開始した。
その結果、20時間経過後に確認したところ、ろ過液を滴下したペーパーディスクの周りはバチルス・サブチルスの増殖が見られたが、生菌液を100μl植菌したペーパーディスクの周りにはハローが形成され、バチルス・サブチルスの増殖が抑えられていることが明瞭に確認できた。更に培養開始から90時間を経た時点では形成されたハローはより拡大していた(図2の右下に示すペーパーディスクが生菌液を植菌したものである)。この結果からジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株は生菌のみバチルス・サブチルスに対して抗菌性を示すことが分かった。
同様の方法で、ジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株のバチルス・セリウスおよび大腸菌に対する抗菌性試験を行ったところ、図3に示すように、CBS127.76菌株はバチルス・セリウスおよび大腸菌に対しても抗菌性を有することが確認できた。
さらに、ジオトリカム・フラグランスCBS164.32菌株およびジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株にも抗菌性があるかどうかを調べるため、検定菌であるバチルス・サブチルス、バチルス・セリウス、並びに大腸菌に対してそれぞれ抗菌性の確認を行った。前記と同様の培地成分で検定用培地を調製してバチルス・サブチルス、バチルス・セリウス、大腸菌の3試験区ごとに分けてそれぞれ単独で植菌し、前面に均一に塗布した。その培地表面にペーパーディスクを載せ、ジオトリカム・フラグランスCBS164.32菌株、ジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株の生菌液をそれぞれ、試験区ごとに分け、ペーパーディスク上におのおの100μl滴下・植菌し、20時間、40時間培養後の抗菌性を確認した。その結果、ジオトリカム・フラグランスCBS164.32菌株およびジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株は、図3に示すようにいずれも抗菌性が確認された。
このように、ジオトリカム属菌が抗菌性を有すること、即ちジオトリカム属菌によって、雑菌であるバチルス・サブチルス、バチルス・セリウスおよび大腸菌の増殖を抑え、食材等の腐敗防止に利用できることが示された。一般に、食品等の腐敗を防止する方法のひとつとして考え出されたバイオプリザベーションの手法には、乳酸菌が産するバクテリオシンであるナイシンおよびガゼリシンなどの低分子タンパク質(ペプチド)の抗菌性を用いる例がある。ジオトリカム属菌においても、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両者に対して幅広い抗菌性を示す物質が産生されていると考えられ、ジオトリカム属菌をおから等の食材に対する腐敗防止剤として、あるいは、バチルス属細菌類、大腸菌等の細菌に対する生育阻害剤として利用することが可能である。
本発明の上記腐敗防止剤および生育阻害剤としては、ジオトリカム属菌を含有するものであればよく、例えば、ジオトリカム属菌を含有する菌液などであってもよい。
なお、上記ジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株について、抗変異原性試験をAMES法により行ったところ、細胞毒性並びに変異原性は認められなかった。試験用の試料には、抗菌性試験で用いた本培養液の菌体をろ過し、取り除いた培養液の上澄み液を使用した。
[3]ジオトリカム属菌による果実様フレーバーの付与
次に、食品の風味を改善する果実様フレーバー産生能をジオトリカム属菌が有するかどうかについて、ジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株を用いて次のように検討した。まず、液体培地を調製した。重量比で脱塩水300ml、D-グルコース2%、ポリペプトン0.5%、イーストエキストラクト0.3%、マルトエキス0.016%からなる培地をpH5.6に調整し、3000ml容量のコルベンに入れ、121℃で15分間オートクレーブ処理した。クリーンベンチにて28℃に放冷後、前培養したジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株の菌液1mlを植菌した。そして振盪培養機で温度28℃、振盪速度140rpm、好気的条件で30時間振とう培養した。その後、培養菌液をザルトリウスろ過装置およびメンブレンフィルター(ミリポア、0.2μm)にて菌体と通過液とにろ過分離し、この通過液を検体としてガスクロマトグラフィー(PERKIN ELMER社製AUTO SYSTEM XL型)にて分析を行った。
その結果、検体に含まれる香気成分は培地の基質由来のもので、洋ナシあるいはバナナ様の果実臭となるエステルがジオトリカム属菌によって生産されることが分かった(図4参照)。このことから、ジオトリカム属菌を用いることで食品残渣の香り改善、すなわち果実様エステルを付加することができると判断された。この果実様エステルを付加する技術は、おから以外の食品ならびに豆乳などの清涼飲料水、乳製品への利用も可能である。
[4]ジオトリカム属菌によるキチン・キトサン含有多糖体の付与
本発明者は、ジオトリカム属菌の菌糸体細胞壁にキチン・キトサンを含む多糖体が存在し、このキチン・キトサンは海老・蟹由来のキチン・キトサンに比べて優れた特長を有すること、また、ジオトリカム属菌からこのキチン・キトサンを含む多糖体含有物を多量に効率よく製造することができることを明らかにしている(特願2005−329742号明細書、および後述の実施例参照)。
即ち、ジオトリカム属菌由来のキチン・キトサンの食味は、海老・蟹由来のキチン・キトサンのように独特のえぐみなども無く、ほとんど無味であるため食品に添加するに相応しい特長となる。既に、海老・蟹由来のキチン・キトサンは、乾燥粉末状に加工されて市場に流通している。その用途として、菓子や麺類、アイスクリーム、チーズなどに適量を添加することによる増粘作用、保水・保湿作用、乳化作用などの向上が挙げられる。しかしながら、海老・蟹由来のキチン・キトサンは、その独特のえぐみが食品への味、香りの変質をもたらすため微量でしか用いることができないなどの制約がある。また、水溶性が低くリンゴ酸や酢酸などの有機酸、あるいは無機酸などの酸性溶媒に溶解させなければならない。よってこれらの溶媒に溶かした海老・蟹由来のキトサンは、食品に用いることが極めて難しい。
一方、ジオトリカム属菌の菌糸体細胞壁から得られるキチン・キトサン含有多糖体は、食品に添加することで、増粘作用、保水・保湿作用、乳化作用などの諸効果を発揮する上、水に容易に分散させることができるので、食品中にムラなく混練させることができる。しかも配合率の自由度が高く、その設定が任意に行える利点がある。よって、食品に含有するに相応しい優れた機能性を具備している多糖体といえる。
本発明の製造法は、ジオトリカム属菌の上述した種々の性質・利点を利用するものであり、食材の腐敗防止、食品の風味、食感の改善、さらに機能性の向上を実現することができる。また、麹菌類などとの共生発酵によって発酵食品の食感と栄養価を更に高めることができる。
なお、本実施形態の方法で製造された発酵おからには、前述のように、生おからの食感の改善に寄与する各種酵素の極めて高い活性が見出されたので、本発明の発酵おからの利用の一態様として、発酵おからより、これらの酵素を混合状態(粗酵素液)として抽出し、得られた抽出液を生おからにかけてやることで、生おからの食感の改善を図ってもよい。
以下、実施例により食品廃棄物の代表としておからを、飲料の代表として豆乳と牛乳をそれぞれ用い、発酵操作によって得られる発酵大豆ファイバー(発酵おから)、発酵豆乳、発酵牛乳の製造方法を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例として、おからの発酵操作によって得られる発酵大豆ファイバー(発酵おから)の製造方法を説明する。実施にあたり、ジオトリカム属菌の菌体を多量に効率よく得ることが必要である。その方法としては、固形培地によるものと液体培地による培養法が考えられるが、ここでは生産効率が遥かに優れる液体培地による培養法を採用した。培地の組成としては、重量比で脱塩水1、D-グルコース2%、ポリペプトン0.5%、イーストエキストラクト0.3%、マルトエキス0.0167%からなる溶液をpH5.6に調整した後、コルベンなどの培養容器に入れ、121℃で15分間オートクレーブ処理後に28℃まで冷却し、これを本培養液(培地)として用いる。なお、各栄養成分の配合比率は適宜変更して用いても良い。
上記同様の成分組成の滅菌済み培地を試験管5本に各々7ml分注し、冷却後ジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株をクリーンベンチにて1白金耳植菌し、振盪培養機で温度30℃、振盪速度140rpm、好気的条件で24時間振とう培養した。この前培養菌液の中から最も生育の良い菌体液100μlを3000ml容量のコルベンの本培養液(培地)300mlに植菌して培養を開始した。なお、前培養菌液の植菌量は、概ね100μl以上であればよい。培養条件は次のとおりで各設定値を任意に組み合わせ、計20回実施した。培養液温度は24℃から32℃、振盪速度100rpm〜150rpmの範囲で培養した。
培養時間は24時間から96時間、好ましくは70時間前後で収量は最大であった。なお、培養時間を短縮したい場合は、植菌量を適宜増量すればよい。培養終了後の菌体液のpHは平均値で7.0から7.3の範囲であった。
この菌体培養液を公知の方法により遠心分離機で培養液(培養上清)と菌体とに概ね分離した。また、遠心分離を行わずに、筒型の大型フィルター(ポア径1〜3μm)およびアスピレーターにて吸引ろ過することで、菌体を短時間で効率よく得ることができる。この菌体はそのまま加工せずにおからに添加するために冷蔵保存する。但し保存すると活性が損なわれるので、保存はできるだけ短時間に抑え、発酵操作に供することが望ましい。以下の操作は菌糸体の細胞壁成分を同定するためのものである。分離された菌糸体はさらに濾紙を用いてアスピレーターで吸引濾過し、次いで恒温乾燥機にて100℃で3時間乾燥する。
次に、未加工の菌体を100℃の脱塩水中で6時間熱を加え、水溶性の物質と不溶性の物質とに分画した。このうち水溶性の物質を70℃にて乾燥させた後、99%濃度エタノールにて沈殿後、再び90℃にて乾燥した。これをSoluble part(水溶性物質:キチン・キトサン含まず)とした。不溶性の物質はInsoluble part(不溶性の物質:キチン・キトサン含有)とした。また、未加工の菌体を熱水処理を加えずにそのまま90℃にて乾燥させた。これをOriginal sample(キチン・キトサン含有)とした。これらを赤外吸収スペクトル法(FT−IR)で分析したところ、Insoluble partの大部分はアセチル化度が約63%のキチン・キトサン、Original sampleはアセチル化度が約61%のキチン・キトサンであると判断された。また、水溶性の物質Soluble partは、カルボキシル基を持つ多糖体が含まれていると判断された(図5参照)。
[実施例2]
実施例1と同様に培地を調製し、滅菌済み液体培地を試験管5本に各々7ml分注し、冷却後ジオトリカム・フラグランスCBS164.32菌株をクリーンベンチにて1白金耳植菌し、振盪培養機で温度30℃、振盪速度140rpm、好気的条件で24時間振盪培養した。この前培養菌液の中から最も生育の良い菌体液100μlをコルベンの本培養液(培地)300mlに植菌して培養を開始した。なお、前培養菌液の植菌量は、概ね100μl以上であればよい。培養条件は次のとおりで各設定値を任意に組み合わせ、計10回実施した。培養液温度は24℃から32℃、振盪速度は100rpm〜150rpmの範囲で培養した。
培養時間は24時間から96時間、好ましくは70時間前後で収量は最大であった。なお、培養時間を短縮したい場合は、植菌量を適宜増量すればよい。培養終了後の菌体液のpHは平均値で7.0から7.3の範囲であった。
この菌体培養液を遠心分離機で培養液(培養上清)と菌体とに概ね分離した。この菌体はそのまま加工せずにおからに添加するために冷蔵保存する。但し保存すると活性が損なわれるので、保存はできるだけ短時間に抑え、素早く発酵操作に供することが望ましい。ここで成分を同定するため、別途サンプル処理をしたのでその要領を記述する。分離収集したゲル様の菌体は、さらに濾紙を用いてアスピレーターで吸引濾過し、次いで恒温乾燥機にて100℃で3時間乾燥した。この乾燥品を1〜3Mの水酸化ナトリウムもしくは炭酸ナトリウム水溶液中に1〜10%(w/v)となるように加え、100〜121℃で60〜300分間加熱し、冷却後、脱塩水で十分に洗浄し中和した。その不溶性物質を乾燥させ、赤外吸収スペクトル法(FT−IR法)により分析した結果、キチン・キトサンが含まれていることが確認できた(図6参照)。
[実施例3]
クリーンベンチにて、ジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株を、実施例1と同様に調製した滅菌冷却済み液体培地7mlがそれぞれ入った試験管5本に1白金耳ずつ植菌し、振盪培養機で温度30℃、振盪速度140rpm、好気的条件で24時間振盪培養した。この前培養菌液の中から最も生育の良い菌体液100μlをコルベンの本培養液(培地)300mlに植菌して培養を開始した。なお、前培養菌液の植菌量は、概ね100μl以上であればよい。培養条件は次のとおりで各設定値を任意に組み合わせ、計10回実施した。培養液温度は24℃から32℃、振盪速度100rpm〜150rpmの範囲で培養した。
培養時間は24時間から96時間、好ましくは70時間前後で収量は最大であった。なお、培養時間を短縮したい場合は、前培養菌液の植菌量を適宜増量すればよい。培養終了後の菌体液のpHは平均値で6.9から7.3の範囲であった。
この菌体培養液を遠心分離機で培養液と菌体とに概ね分離した。この菌体はそのまま加工せずにおからに添加するために冷蔵保存する。ここで成分を同定するため、実施例2の要領で分析用サンプルを作成した。これを赤外吸収スペクトル法(FT−IR法)により分析した結果、キチン・キトサンが含まれていることが確認できた(図7参照)。
[実施例4]
本培養に供するジオトリカム属菌の集菌を以って発酵操作に入る。発酵に用いる生おからは、神戸市内の豆腐製造工場で作られた有機おからを求めた。成分は概ね次のとおりである。参考として記述するが、この内容は大豆の種類および豆腐製造法によって変化する。
生おからの内水分は約80%であり、水分を乾燥させたもののうち脂質と思われるエタノール−アセトン可溶の物質が約15%、エタノール可溶性の糖、アミノ酸、ペプチドと思われる物質が約7.3%、熱水溶性多糖、タンパク質と思われる物質が約16.1%、シュウ酸アンモニウム抽出のペクチンが2.1%、塩酸抽出のペクチンが約20.5%、リグニンは約13.2%、ヘミセルロースは約1.8%、セルロースは約15.8%である。
発酵操作の説明に入る。まず、25℃まで自然冷却した生おから2キログラムをクリーンベンチにて20L容量程度のステンレス製容器の中でよくほぐし、重量比でグルコースを0.3%、そしてジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株のスラリー様培養菌体液を重量比で0.3%〜0.8%を植菌し、まんべんなく攪拌し、次に通称テンペ菌と呼ばれているリゾプス・オリゴスポラス(秋田今野商店製)の種麹を重量比で0.3%〜0.5%植菌し、よく攪拌して全体にムラなく混練した。なお、リゾプス・オリゴスポラスの代わりにアスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・オリゼー、又はアスペルギルス・ソーヤの種麹を同じ分量で用いても良い。これを発酵用ステンレス製金網式棚(300mm×450mm)4枚に各々500gずつ分け、拡げた。そしてステンレス製発酵チャンバーに入れ、発酵を開始した(図8参照)。
発酵条件・環境設定は次のとおりである。発酵チャンバー内設定温度(品温)は28℃〜30℃で、温度コントローラで設定を行い、サーミスタで感知させる。設定以下の温度になると自動的に発酵チャンバー内の発熱ランプが点灯して温度を上昇させ、設定温度を維持する仕組みとなっている。但し、上昇した温度を冷却する装置は無く、送風ファンによる自然冷却である。発酵チャンバー上部の開口部は透明のポリエチレン製シートで全面を覆い、発酵チャンバー外部からの汚染された空気と共に雑菌が入り込まないような構造とした。また、発酵チャンバー内で発酵により蒸散した水分を外部へ導く排気塔とファンを装備した。更に好気的条件で発酵を促す為、発酵チャンバーには新鮮な滅菌空気を送り込む空気滅菌供給装置を連結した(図9参照)。発酵に用いた容器は全て事前にオートクレーブにて121℃で15分間蒸煮滅菌をした。また、発酵チャンバー内部は前もって滅菌済みタオルにエタノールを十分に浸して拭い、更に紫外線ランプによる照射を15時間続け、滅菌をした。
発酵中は、チャンバー内温度、品温、菌糸の発育状況(目視チェック)、発酵臭(官能評価)について経時的に変化を観察し、発酵終了後に水分含有量、pH値、各種酵素活性値について確認した。官能評価、並びに酵素活性値の解析結果により、発酵時間は30時間から72時間の間が好ましく、最も良いと思われるのは40時間から60時間であった。
上記の方法によって製造された発酵おから中の各酵素活性を図10に示す。酵素の単位は全てU/g(おから乾燥重)である。
[実施例5]
次いで、ジオトリカム・フラグランス(G. fragrans)、リゾプス・オリゴスポラス(R. oligosporus)、およびアスペルギルス・ニガー(A. niger)の3菌体を用いて共生発酵を試み、計4回行った。発酵に使用した生おからは、神戸市内の豆腐製造工場で作られた有機おからを用いた。クリーンベンチ内で30℃まで自然冷却したおからに、ジオトリカム・フラグランスのスラリー様培養菌体液、テンペ菌であるリゾプス・オリゴスポラス、および焼酎醸造用の麹菌であるアスペルギルス・ニガーを図11に示すとおりに添加してよく混ぜ合わせ、ステンレス製金網式棚4枚にそれぞれ試験区毎に盛り込んだ。発酵条件・環境設定は、実施例4と同じである。これを予め28℃にサーミスタを設定した発酵チャンバーに入れ、発酵を開始した。なお菌体の植菌量の加減は各々増減しても共生発酵が可能である。リゾプス・オリゴスポラスとアスペルギルス・ニガーは、秋田今野商店より入手した種麹菌を用いた。ジオトリカム・フラグランスにはCBS127.76株を用い、前述の培地で30時間液体培養した培養菌液10mlを植菌した。発酵おから(発酵生産物)は、使用する菌と発酵時間を変えて発酵を行い、図11に示すようにA,B,C,Dの4種類製造した。各発酵おからについて、おからと各種菌の使用量、発酵時間は図11に示すとおりである。また、これら4種類の発酵おからについて、各種酵素活性を測定した。その結果は図12に示す。なお、今回の実験では、セルラーゼの活性は確認しなかった。
上記4種類の発酵おから(発酵生産物)の香り、うまみ、食感の3項目についてそれぞれ官能検査を行い、また総合的に評価した。結果を図13に示す。ジオトリカム・フラグランスの発酵によって生じる香りは、発酵時間が長くなるほど弱まり、72時間では全く感じられなかった。食感は40時間発酵させたBが最もよく、Aは繊維質な食感が、C,Dは乾燥していたことによる飲み込み辛さがあった。検査した項目以外では、発酵が進むにつれて発酵生産物にエグみが生じていた。以上を総合的に評価した場合、Bは香り、うまみ、食感のバランスが取れており、エグみも少なく最も好ましかった。Cは、香りは弱いもののうまみが強く、エグみもDに比べて弱くて食べやすかった。Aは香りが最も強かった。Dは香りが全く感じられず、うまみは強いがエグみもまた強いので、食感の悪さとあいまって食べ辛かった。
以上の結果より、得られた発酵おからの酵素活性の観点から、共生発酵はジオトリカム・フラグランスとリゾプス・オリゴスポラスの2菌体で行うことより、アスペルギルス・ニガーを加えて3菌体にて発酵させた方がはるかに酵素活性が高くなることが検証できた。
なお、酵素解析において、pH値は、発酵おから2gを乳鉢で磨砕し、脱塩水35mlを加えて懸濁し、pHメーターで測定した。各酵素活性の測定方法については、実施例の最後にまとめて説明したとおりである。
酵素活性の解析結果より、発酵おからは、ジオトリカム属菌とリゾプス属菌の2種類のスタータ菌を用いても、また、ジオトリカム属菌とリゾプス属菌およびアスペルギルス属菌の3種類のスタータ菌を用いた場合でもそれぞれの菌が拮抗することなく共生し、相まって極めて高い酵素活性を保持していることが判断できた。このことからも、おからの主要成分であるセルロース、ヘミセルロース、ペクチンなどの不溶性食物繊維が低分子化され可溶化することが可能であり、また、プロテアーゼの活性も極めて高く、よってタンパク質が分解され遊離アミノ酸類も豊富になることが推察できる。すなわちおからを機能性の高い食品として再生することが可能となる。これを検証するため、最も簡単な方法としてこの発酵大豆ファイバー(発酵おから)を、味噌原料の大豆の代替として用いた味噌の試醸と、パン用の小麦粉に一部代替したパンを試作した。順次説明する。
[実施例6]
発酵大豆ファイバー(発酵おから)を、味噌原料の大豆の代替として用いた味噌の試醸を説明する。まず仕込みに入る。発酵おから6割(6kg)と米麹4割(4kg)の割合で塩分濃度12%に調整した仕込み水1Lに酵母菌(Z. rouxii)と乳酸菌を含んだ味噌だね(300g)を溶かし、これを添加してよく攪拌する。これをポリエチレン袋に入れ、しっかり空気を押し出して密閉し、発酵容器に入れて中ふたを載せ、その上に重量約5kgの重石を置き、常温の25℃〜30℃の範囲で発酵を開始した。2ヵ月後に封を開け天地返しを行った。香りはすこぶるよく、褐変反応が進み、味はやや甘みがあり旨味成分が非常に強く感じられた。おからの繊維質もなめらかになり、一般の味噌と遜色ない出来上がりになっていた。また、上層部より滲み出した、たまり様の液体を試飲すると一般の醤油に比べて濃厚な旨味とよい香りであった。醤油に勝るとも劣らない調味液が得られた。この後6ヶ月の熟成期間を終え試食したところ非常に風味の濃い、どちらかと言うと豆味噌に近い味であった。発酵大豆ファイバー(発酵おから)は、十分に味噌用大豆の代替原料として適うものである。
[実施例7]
次に、発酵大豆ファイバー(発酵おから)を、パンの小麦粉の一部代替として用いたパンの試醸を説明する。まず仕込みに入る。発酵おから3割(150g)と小麦強力粉7割(350g)の割合に配合し、塩と砂糖を少々添加し、イースト菌を5g加え、適当な硬さになるように水を入れよく練った。発酵容器に入れて温度35℃〜40℃で3時間から5時間発酵熟成させた。この後オーブンで焼き上げ試食したところ、非常にふんわりとして、特有のモゴモゴ・パサパサした食感は無かった。おから独特の豆臭さも無く香りも良い。なんら一般のパンと変わりなく食することができた。発酵大豆ファイバー(発酵おから)はパン用小麦粉の一部代替が十分に可能である。
[実施例8]
次に豆乳にジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株、ジオトリカム・フラグランスCBS164.32菌株、及びジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株をそれぞれ単独で発酵スタータ菌に用い、発酵豆乳を製造する工程を説明する。市販の無調製豆乳900mlにグルコースを重量比で0.5%添加し、3000ml容量のコルベンに3等分して分注し121℃で15分間オートクレーブ処理した。30℃に冷却後、クリーンベンチにて各々の菌体の本培養菌液を各コルベンに単独で1mlを植菌し、振盪培養機で温度30℃、振盪速度140rpm、好気的条件で24時間振とう発酵した。
発酵を終え官能試験を行ったところ、それぞれ豆乳独特の豆臭さが消え、ややフルーティーな果実様フレーバーが付加されていた。最も果実臭が強いのがジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株、次いでジオトリカム・フラグランスCBS164.32菌株、最も香りが薄いのはジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株であった。飲んだときの食感は、それぞれ粘度が高く、とろっとしたものに仕上がっており好ましく感じた。これは菌体の細胞壁を構成するキチン・キトサン含有多糖体が豆乳全体にいきわたっていることから得られるものと思われる。この発酵豆乳を温度70℃で30分間加熱すると、菌体は死滅した。なお、この滅菌操作を行っても果実様の香りは保持できた。
[実施例9]
次に牛乳にジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株、ジオトリカム・フラグランスCBS164.32菌株、及びジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株をそれぞれ単独で発酵スタータ菌に用い、発酵牛乳を製造する工程を説明する。市販の無調製牛乳900mlにグルコースを重量比で0.5%添加し、3000ml容量のコルベンに3等分して分注し121℃で15分間オートクレーブ処理した。30℃に冷却後、クリーンベンチにて各々の菌体の本培養菌液を各コルベンに単独で1mlを植菌し、振盪培養機で温度30℃、振盪速度140rpm、好気的条件で24時間振とう発酵した。
発酵を終え官能試験を行ったところ、それぞれ果実に蜂蜜様のフレーバーが付加されていた。最も強い香りがジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株、次いでジオトリカム・フラグランスCBS164.32菌株、最も香りが薄いのはジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株であった。飲んだときの食感は、それぞれ粘度がやや高くなっていて、好ましく感じた。これは菌体の細胞壁を構成するキチン・キトサン含有多糖体が生産されたことから得られるものである。この発酵牛乳を温度70℃で30分間加熱すると、菌体は死滅した。なお、この滅菌操作を行っても香りは保持できた。
[実施例10]
本実施例では、ジオトリカム・フラグランスCBS 164.32菌株を用いたおからの発酵操作について説明する。まず、25℃まで自然冷却した生おから2キログラムをクリーンベンチにて20L容量程度のステンレス製容器の中でよくほぐし、重量比でグルコースを0.3%、そしてジオトリカム・フラグランスCBS164.32菌株のスラリー様培養菌体液を重量比で0.3%〜0.8%を植菌し、まんべんなく攪拌し、次にリゾプス・オリゴスポラス(秋田今野商店製)の種麹を重量比で0.3%〜0.5%植菌し、よく攪拌して全体にムラなく混練した。なお、リゾプス・オリゴスポラスの代わりにアスペルギルス属の種麹を同じ分量で用いても良い。これを発酵用ステンレス製金網式棚(300mm×450mm)4枚に各々500gずつ分け、拡げた。そしてステンレス製発酵チャンバーに設置し、発酵を開始した。
発酵条件・環境設定は実施例4のとおりである。発酵を開始し、チャンバー内温度、品温、菌糸の発育状況(目視チェック)、発酵臭(官能評価)について経時的に変化を観察した。発酵終了後に食感と香りの官能評価により、発酵時間は30時間から72時間の間が好ましく、最も良いと思われるのは40時間から50時間であった。
[実施例11]
本実施例では、ジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株を用いたおからの発酵操作について説明する。まず、25℃まで自然冷却した生おから2キログラムをクリーンベンチにて20L容量程度のステンレス製容器の中でよくほぐし、重量比でグルコースを0.3%、そしてジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株のスラリー様培養菌体液を重量比で0.3%〜0.8%を植菌し、まんべんなく攪拌し、次に、リゾプス・オリゴスポラスの種麹を重量比で0.3%〜0.5%植菌し、よく攪拌して全体にムラなく混練した。なお、リゾプス・オリゴスポラスの代わりにアスペルギルス属の種麹を同じ分量で用いても良い。これを発酵用ステンレス製金網式棚(300mm×450mm)4枚に各々500gずつ分け、拡げた。そしてステンレス製発酵チャンバーに設置し、発酵を開始した。
発酵条件・環境設定は実施例4のとおりである。発酵を開始し、チャンバー内温度、品温、菌糸の発育状況(目視チェック)、発酵臭(官能評価)について経時的に変化を観察した。発酵終了後に食感と香りの官能評価により、発酵時間は30時間から72時間の間が好ましく、最も良いと思われるのは40時間から50時間であった。
以上の結果より、ジオトリカム属菌とリゾプス属菌、もしくはジオトリカム属菌とリゾプス属菌+アスペルギルス属菌が拮抗することなく共生し、相まって産生した生理活性物質により改善した発酵おからは、機能性に優れた食品として再生できることが分かった。また、この発酵技術は他の食品廃棄物や食品の腐敗防止、食感、風味の改善に利用することが可能であり、食品工業の発展に寄与することができるものである。
[酵素活性測定法]
発酵おからにおける各酵素活性は、粗酵素液を用いて以下の方法で測定した。
発酵おからを乳鉢で磨砕し、20mMリン酸ナトリウムカリウム緩衝液(pH6.8)に懸濁し、遠心分離した。この上清を粗酵素液として活性測定に用いた。
[1]α-アミラーゼ活性測定法
(1)基質の調製
可溶性でんぷん(ナカライテスク社製)0.5gに1N NaOH 25mlを加え冷蔵庫に一夜放置して溶解し、脱塩水100mlを加えてから10%酢酸でpHを5.5に調整し、脱塩水を加えて全量を240mlにした。
(2)活性測定法
基質2.0mlを40℃で5分間予熱した後、酵素液0.1mlを添加し、反応液中から1分間隔で反応液0.1mlを採り、順次10mlの0.5mMヨード液中に加えた。この操作をヨード反応の色が青から赤に変わるまで続けた。反応後、600nmにおける吸光度を測定した。
(3)活性の計算
透過率が66%になる時間を吸光度のグラフから求め、これをt分とした。活性は以下の計算式により計算した。
酵素活性=2(デンプン液量)×1/0.1(酵素量)×30/t(U/ml)
[2]グルコアミラーゼ活性測定法
(1)基質の調製
可溶性デンプン(ナカライテスク社製)2gに適当量の熱水を入れてよく混ぜ、1〜2分沸騰させた後冷却し、脱塩水を加えて100mlとした。
(2)活性測定法
40℃に予熱した基質1.0mlに0.2M酢酸緩衝液(pH5.0)0.2mlを添加し、40℃で5分間予熱した。これに酵素液0.1mlを添加し、40℃で20分間反応させた。反応終了後、直ちに1N水酸化ナトリウム0.1mlを添加し反応を停止させた。その後30分間放置し、1N塩酸0.1mlを添加することにより中和した。反応液中の還元糖量をSomogyi-Nelson法を用いて下記のように測定した。
(3)還元糖の定量
(3-1)試薬の調製
・Somogyi試薬の調製
酒石酸カリウムナトリウム12gと炭酸ナトリウム24gを約250mlの脱塩水に溶解した。これに4.0g硫酸銅・5水和物を約40mlの脱塩水に溶かしたものを撹拌しながら加えた。次に16gの炭酸水素ナトリウムを加えて溶解した。180gの硫酸ナトリウムを約500mlの脱塩水に溶かした後、煮沸して溶存酵素を除き、放冷した。次に両液を合わせ、脱塩水を用いて1.0Lとした。37℃で2〜3日放置した後、沈殿を吸引濾過し、濾液を褐色共栓瓶に入れ、暗所にて保管した。
・Nelson試薬
7モリブデン酸6アンモニウム4和物25gを450mlの脱塩水に溶解し、濃硫酸21mlを徐々に加えた。次に、ひ酸2ナトリウム7水和物3.0gを25mlの脱塩水に溶解したものを加えて、37℃で24〜38時間放置した後、褐色共栓瓶に入れ、暗所にて保存した。
(3-2)還元糖の定量方法
Somogyi-Nelson法を用いた。反応液0.20mlにSomogyi試薬0.2mlを加えて懸濁し、100℃で10分間加熱した後、氷中にて3分間冷却した。冷却後、Nelson試薬0.2mlを加え、さらに脱塩水2.0mlを加えて懸濁した。30分間放置後した後、分光光度計により500nmにおける吸光度を測定した。標準曲線はD-グルコースを用いて作成した。
(4)活性の計算
本酵素1unitは、1分間に1μmolのD-グルコースに相当する還元糖を生ずる酵素量と定義した。
[3]セルラーゼ活性測定法
(1)活性測定法
40℃に予熱した0.5%CMC(カルボキシメチルセルロース、和光社製)を含む50mM酢酸緩衝液(pH5.5)1mlに酵素液1mlを添加し、40℃において60分間反応させた。反応終了後、直ちに沸騰水中で5分間加熱して酵素反応を停止させた。冷却後、酵素反応液0.2mlに、上記のSomogyi試薬0.2mlを添加して、沸騰水中で10分間加熱した。加熱後、氷水中で3分間冷却し、Nelson試薬0.20mlを添加して十分に撹拌した。次に、脱塩水2.0mlを加えて撹拌し、30分間放置した後、500nmにおける吸光度を測定した。
(2)活性の計算
本酵素1unitは、1分間に1μmolのD-グルコースに相当する還元糖を生成する酵素量と定義した。
[4]ペクチナーゼ活性測定法
(1)基質の調製
ペクチン(ナカライテスク社製)20mgに、エタノール0.2ml、0.74M塩化ナトリウム水溶液3.8ml、20mMリン酸ナトリウムカリウム緩衝液(pH6.8)3.6mlを添加し、十分に撹拌したものを基質として用いた。
(2)活性測定法
40℃に予熱した基質1.9mlに酵素液0.1mlを添加し、40℃において30分間反応させた。反応終了後、直ちに沸騰水中で5分間加熱して酵素反応を停止させた。冷却後、酵素反応液0.2mlにSomogyi試薬を0.2ml添加して、沸騰水中で10分間加熱した。加熱後、氷水中で3分間冷却し、Nelson試薬を0.2ml添加して十分に撹拌した。次に、脱塩水2.0mlを加えて撹拌し、30分間放置した後、500nmにおける吸光度を測定した。
(3)活性の計算
本酵素1unitは、1分間に1μmolのD-グルコースに相当する還元糖を生成する酵素量と定義した。
[5]プロテアーゼ活性測定法
(1)基質、試薬の調製
・マッキルベイン緩衝液(pH3.0)
0.2Mリン酸2ナトリウム溶液4mlと0.1Mクエン酸溶液16mlを混合した。pHが正しく3にならない場合は各溶液を用いて調整した。
・基質(カゼイン溶液)
カゼイン(和光社製)2gをとり、10倍に薄めた乳酸5mlを加え、更に脱塩水を約50ml加えて完全に白濁状に溶解するまで加熱しながらかき混ぜ、これを基質として用いた。
(2)活性測定法
基質1.5mlにpH3.0のマッキルベイン緩衝液1.0mlを加え、40℃に予熱した。これに酵素液0.5mlを添加し、40℃で60分間反応させた。反応終了後0.4M TCA溶液3mlを添加して、反応を停止させ沈殿をろ別した。そのろ液1mlに0.4M炭酸ナトリウム溶液5mlとフェノール溶液(市販品を5倍に希釈して使用)1mlを加えて、40℃で30分間発色を行い、660nmの吸光度を測定した。
(3)活性の計算
本酵素1unitは、60分間に1μgのチロシン相当量の呈色を示す酵素量と定義した。
[6]アラビノフラノシダーゼ活性測定法
(1)活性測定法
37℃に予熱した0.1M p-ニトロフェニル-α-L-アラビノフラノシドを含む50mMリン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液0.2mlに、酵素液0.1mlを添加し、37℃で30分間反応させた。反応終了後直ちに1M炭酸ナトリウム2mlを加え、酵素反応を停止させた。その後、420nmにおける吸光度を測定した。
(2)活性の計算
本酵素1unitは、1分間に1μmolのp-ニトロフェノール相当量の呈色を示す酵素量と定義した。
以上のように、本発明は、ジオトリカム属菌を発酵スタータとして使用することを特徴とする発酵食品の製造法等に関するものであり、前述したとおり、ジオトリカム属菌が有する抗菌性を利用することによって、食材となるおから等の腐敗を防止することができる。また、ジオトリカム属菌由来のキチン・キトサン含有多糖体を食材に付加させると共に、果実様フレーバーを付加させることができ、おから等の食材の食感と風味を向上させることができる。さらに麹菌類等との共生発酵により、より良い食感と栄養価の高い機能性食品を提供できる。
本発明の実施の一形態に係る、発酵おから及びおから利用食品の製造法を示すフローチャートである。 ジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株によるバチルス・サブチルス菌の生育阻害(右下のハロー形成)を示す写真である。 ジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株、ジオトリカム・フラグランスCBS164.32菌株、およびジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株それぞれの菌体による雑菌の生育阻害試験の結果を示す表である。 ジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株の培養上澄液を用いた香気成分の分析結果を示す表である。 ジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株の菌糸体の赤外吸収スペクトル法(FT−IR)での解析図である。 ジオトリカム・フラグランスCBS164.32菌株の菌糸体の赤外吸収スペクトル法(FT−IR)での解析図である。 ジオトリカム・カンディダムSIGMA-54菌株の菌糸体の赤外吸収スペクトル法(FT−IR)での解析図である。 発酵チャンバー内部を示す概念図である。 発酵チャンバーに連結した空気滅菌供給装置の内部を示す概念図である。 ジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株とリゾプス・オリゴスポラス菌株の共生発酵により得られた発酵おからの各酵素活性の測定結果を示す表である。 ジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株とリゾプス・オリゴスポラス、アスペルギルス・ニガーそれぞれの菌添加量とおから使用量を示す表である。 ジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株とリゾプス・オリゴスポラス、アスペルギルス・ニガーの共生発酵により得られた発酵おからの各酵素活性の測定結果を示す表である。 ジオトリカム・フラグランスCBS127.76菌株とリゾプス・オリゴスポラス、アスペルギルス・ニガーの共生発酵により得られた発酵おからの官能評価の結果を示す表である。

Claims (15)

  1. ジオトリカム属菌を発酵スタータとして使用することを特徴とする発酵食品の製造法。
  2. ジオトリカム属菌を発酵スタータとして使用することを特徴とする発酵おからの製造法。
  3. おから、糠、ふすま、その他穀類の処理過程で産生する副産物を原材料に使用した発酵食品の製造法において、腐敗防止のためジオトリカム属菌を原材料に加えて発酵させる工程を含むことを特徴とする発酵食品の製造法。
  4. 豆乳等の清涼飲料水、又は牛乳その他動物の乳、もしくはこれらを加工して作られる乳製品を原材料に使用した発酵食品の製造法において、ジオトリカム属菌を原材料に加えて発酵させる工程を含むことを特徴とする発酵食品の製造法。
  5. テンペ菌、及び/又は麹菌を、ジオトリカム属菌と共に使用して共生発酵させる工程を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造法。
  6. リゾプス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、及び/又はアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)を、ジオトリカム属菌と共に使用して共生発酵させる工程を含むことを特徴とする、請求項5記載の製造法。
  7. リゾプス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)及びアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)を、ジオトリカム属菌と共に使用して共生発酵させる工程を含むことを特徴とする、請求項5記載の製造法。
  8. ジオトリカム属菌が有する抗菌性を利用して、食材の腐敗を防止することを特徴とする食材の腐敗防止法。
  9. ジオトリカム属菌が有する抗菌性を利用して、おからの腐敗を防止することを特徴とするおからの腐敗防止法。
  10. おから等の食材の腐敗防止剤であって、ジオトリカム属菌を含有する腐敗防止剤。
  11. ジオトリカム属菌により、バチルス属細菌類および大腸菌などの細菌の生育を阻害することを特徴とする、細菌の生育阻害剤。
  12. ジオトリカム属菌を使用して製造される発酵おから。
  13. 請求項12記載の発酵おからを原材料として使用することを特徴とするおから利用食品の製造法。
  14. ジオトリカム属菌として、ジオトリカム・フラグランス(Geotrichum fragrans)、ジオトリカム・カンディダム(Geotrichum candidum)、ジオトリカム・アミラリエ(Geotrichum armillariae)、ジオトリカム・キャピタタム(Geotrichum capitatum)、ジオトリカム・リンキ(Geotrichum linkii)、 ジオトリカム・セリシュウム(Geotrichum sericeum)、ジオトリカム・シトリ‐アウランティ(Geotrichum citri-aurantii)、ジオトリカム・プルモニュウム(Geotrichum pulmoneum)、ジオトリカム・クレバタム(Geotrichum clavatum)、ジオトリカム・エリエンス(Geotrichum eriense)、ジオトリカム・ファメンタンス(Geotrichum fermentans)及びジオトリカム・クレバニィ(Geotrichum klebahnii)種から選ばれる1又は複数のジオトリカム属菌を使用することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  15. ジオトリカム属菌として、ジオトリカム・フラグランス(Geotrichum fragrans)、及び/又はジオトリカム・カンディダム(Geotrichum candidum)を使用することを特徴とする請求項14記載の方法。


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