以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態)
本発明の実施形態を用いる電力線搬送通信システムは工場、店舗、事務所、美術館等の屋内に用いられるもので、その構成を図2に示す。
まず、単相3線式の商用電源ACからの2本の活線と1本の中性線は分電盤1内に導入され、分電盤1内に設けた主幹ブレーカ(図示なし)、分岐ブレーカ(図示なし)等を介して1本の活線と中性線とが一対の電力線3,3として分電盤1から導出されて、電源(100V、50/60Hz)を供給する。この一対の電力線3,3は、屋内の天井面、壁面、床面等に設置されて、天井面においては配線ダクトシステムが用いられており、天井面に取り付けられた配線ダクト2内に配設した長尺の一対の導体3a,3aで電力線3,3が構成される。
なお、分電盤1内には、商用電源ACの異相配線間に、電力線搬送通信に用いる所定の周波数帯域に対して低いインピーダンス、商用電源周波数に対しては高いインピーダンスを有するハイパスフィルタからなる結合器(図示なし)を設けてもよい。なお、前述の所定の周波数帯域は、例えば10kHz〜450kHz、2MHz〜30MHzである。
配線ダクト2は図3(a),(b)に示すように長尺中空のもので、その長手方向には開口部2aが形成してある。開口部2aより配線ダクト2の内部にプラグ4を所定の向きで挿入し、プラグ4の一対の栓刃4a,4aを配線ダクト2内の導体3a,3aに接触させてプラグ4を通電させる。なお、図3(a)は、図3(b)のB−B’断面図である。
プラグ4を配線ダクト2に挿入,装着するには、まずプラグ4を所定の向きで開口部2aより配線ダクト2の内部に挿入し、そしてプラグ4を90°回転させて栓刃4aを配線ダクト2の導体3aに接触させ、係止部4bを開口部2aの周縁の内壁面に係止させる。
図2に示すように配線ダクト2には複数のプラグ4が取り付けられ、各プラグ4には、PLCモデム5、フィルタ装置6からなる配線装置が各々接続されている。
図4は,プラグ4の回路構成の一例を示しており、プラグ4は、導体3a,3aに接続する電路接続部4dと、PLCモデム5またはフィルタ装置6を接続して電路接続部4dからの電力を供給する給電部4eとを筐体40内に備えて、電力線3,3に接続して電力を分配する配電部を構成する。本実施形態において、電路接続部4dは図3の一対の栓刃4a,4aに相当する。
なお、プラグ4は、栓刃4a,4aの代わりに、導体3a,3aに接触する一対の集電子(図示なし)を備えて配線ダクト2に沿って移動自在に構成してもよい。
さて、全てのプラグ4にフィルタ装置6が接続されており、全てのPLCモデム5、電気機器8は、フィルタ装置6を介して電力線3に接続される。
フィルタ装置6は、図1(a)に示すように、プラグ4の給電部4eに直接接続するノイズフィルタ6d及び一対の刃受部6e,6eと、ノイズフィルタ6dを介してプラグ4の給電部4eに接続する一対の刃受部6f,6f’と、表示部6gとを筐体60内に備える。
刃受部6eは、PLCモデム5,電気機器8の電源プラグ9の栓刃9aを挟持するもので、1枚の金属の板材によって形成され、栓刃9aを挟持する刃受ばね61,62を一体に備える。この刃受部6eは、プラグ4を介して電力線3に接続する。
刃受部6fも刃受部6eと同様に、1枚の金属の板材によって形成され、栓刃9aを挟持する刃受ばね61,62を一体に備える。対して刃受部6f’は、2枚の金属の板材によって形成されており、栓刃9aを挟持する刃受ばね63,64を別々に備える。この刃受部6f,6f’は、ノイズフィルタ6d,プラグ4を介して電力線3に接続する。
一対の刃受部6e,6eは互いに対向するように配置され、一対の刃受部6f,6f’は、刃受部6e,6eを90°回転させた方向に互いに対向して配置される。
さらに、筐体60には、一方の刃受部6eと刃受部6fとに対向した弧状の栓刃挿通口6hと、他方の刃受部6eと刃受部6f’とに対向した弧状の栓刃挿通口6h’とが形成されており、電源プラグ9の一対の栓刃9a,9aは、栓刃挿通口6h,6h’に挿入した状態で、略90°の回転角で回転自在に構成される。
そして、電源プラグ9を一方方向(図1(a)中の右回転方向)に回転させると、電源プラグ9の栓刃9a,9aは刃受部6e,6eに接触導通し、電源プラグ9を他方方向(図1(a)中の左回転方向)に回転させると、電源プラグ9の栓刃9a,9aは刃受部6f,6f’に接触導通する。
したがって、PLCモデム5は、電源プラグ9の栓刃9a,9aを、栓刃挿通口6h,6h’に挿入した状態で、一方方向(図1(a)中の右回転方向)に回転させることで、栓刃9a,9aは刃受部6e,6eに接触導通し、電力線3からノイズフィルタ6dを介さずに電力を供給される。ここでPLCモデム5は電力線3からプラグ4、フィルタ装置6を介して電力を供給されるとともにフィルタ装置6、プラグ4、電力線3,プラグ4を介して電力線搬送通信を行い、受信した信号からデータを取得し、そのデータに応じてPLCモデム5に接続した電気機器7へ制御信号を出力してその動作を制御したり、電気機器7から所定のデータを受信してそのデータをフィルタ装置6、プラグ4,電力線3を介して送信したりする。なお、電気機器7の動作電源は、図示しない別の電源から供給される。
また、電気機器8は、電源プラグ9の栓刃9a,9aを、栓刃挿通口6h,6h’に挿入した状態で、他方方向(図1(a)中の左回転方向)に回転させることで、栓刃9a,9aは刃受部6f,6f’に接触導通し、電力線3からノイズフィルタ6dを介して電力を供給される。そして、ノイズフィルタ6dは、電気機器8が放出するノイズの周波数帯域を減衰させるローパスフィルタあるいはバンドパスフィルタであり、電気機器8から電力線3へ放出されるノイズを低減させている。
ここで電気機器8は、例えばインバータ機器や電気ドリル等であり、動作時には電気機器8からノイズが放出される。このノイズの周波数が電力線搬送通信に用いる周波数帯域内(例えば10kHz〜450kHz、または2MHz〜30MHz)にあり、且つノイズレベルが大きい場合、このノイズによって電力線搬送通信が困難になる。しかし、フィルタ装置6のノイズフィルタ6aを介して電力線3に電気機器8が接続されることで、電気機器8から電力線3へ放出されるノイズが低減される。
すなわち、電気機器8から電力線3に放出されるノイズをフィルタ装置6のノイズフィルタ6aによって低減することで、PLCモデム5では電気機器8から放出されるノイズの影響が低減する。したがって、PLCモデム5は、電力線搬送通信に用いる周波数帯域を確保しつつノイズの影響を低減することができ、端末装置10や他のPLCモデム5との間で良好な電力線搬送通信を行うことができる。
端末装置10は、PLCモデム5との間で電力線3を介した電力線搬送通信を行うことで、各電気機器7の監視制御を行うものである。
さらに、予め全てのプラグ4にフィルタ装置6を接続しておき、電気機器8を接続するときのみノイズフィルタ6dによるフィルタ処理をオンすることで、接続する機器に合わせたフィルタ装置6の取り付け、取り外しの手間が省ける。
また、刃受部6f’の刃受ばね63はノイズフィルタ6dを介してプラグ4に接続し、刃受ばね64は表示部6gを介して刃受部6fに接続している。したがって、栓刃9aが刃受ばね63,64間に挟持されることで、刃受部6f,6f’間は栓刃9aを介して導通し、表示部6gが通電する。
表示部6gは、図1(b)に示すように、抵抗R2と、ダイオードD1と、発光素子LED1との直列回路で構成されており、栓刃9a,9aが刃受部6f,6f’に接触導通し、電力線3からノイズフィルタ6dを介して電力を供給可能な状態になると、発光素子LED1が点灯して、フィルタ処理のオン状態を周囲に提示する。したがって、フィルタ処理オン側に切り換えたのか、あるいはフィルタ処理オフ側に切り換えたのかをユーザに提示することができ、ユーザは切換状態を視覚で把握することができる。
而して、本実施形態のフィルタ装置6は、電源プラグ9を回転させることでノイズフィルタ6dによるフィルタ処理をオン・オフするフィルタ処理切換手段を備えており、電気機器8を接続するときはノイズフィルタ6dによるフィルタ処理をオンすることで、電気機器8から電力線3に放出されるノイズをノイズフィルタ6dによって低減することができ、PLCモデム5を接続するときはノイズフィルタ6dによるフィルタ処理をオフすることで、PLCモデム5は、電力線搬送通信に用いる周波数帯域(例えば10kHz〜450kHz、または2MHz〜30MHz)を確保できる。
なお、図2において、一対の電力線3,3の終端間には、コンデンサC1と抵抗R1の直列回路で構成される終端器11が接続されている。この終端器11のインピーダンスは、電力線3,3で構成される電力線路の特性インピーダンスに整合しており、電力線搬送通信に用いる周波数帯域(例えば10kHz〜450kHz、または2MHz〜30MHz)が、前記電力線路の長さの4分の1波長であっても、伝送特性が劣化することなく、信号のレベルが大幅に減少することはない。
したがって、PLCモデム5は、信号の周波数や前記電力線路の長さに依らず、端末装置10や他のPLCモデム5との間で良好な電力線搬送通信を行うことができる。
さらに、図2中の破線に示すように、分電盤1に導入される電力引込線Pを、電柱等に設置したPLCモデム110を介してインターネット網NTに接続し、外部端末装置120や携帯端末121からインターネット網NT、PLCモデム110経由で、電力線3上での電力線搬送通信を行い、各電気機器7の監視制御を行ってもよい。
さらに、複数の工場、店舗、事務所、美術館等に本実施形態の電力線搬送通信システムを設けて、管理会社等で一括管理する場合、図2中の破線に示すように、管理会社等に設置したサーバ100をインターネット網NTに接続すれば、サーバ100からPLCモデム110,111,112,…を介して複数の電力線搬送通信システムを一括管理できる。なお、端末装置10、外部端末装置120、携帯端末121を省略して、サーバ100が端末装置の機能を有してもよい。
また、電力線搬送通信の方式には、10kHz〜450kHzの周波数帯域を通信に用いる低速の方式と、2MHz〜30MHzの周波数帯域を通信に用いる高速の方式とがある。
そして、低速の電力線搬送通信の方式としては、シングルキャリア方式、選択型シングルキャリア方式、直接スペクトラム拡散方式等がある。さらに、高速,大容量の電力線搬送通信の方式としては、マルチキャリア変調方式、OFDM変調方式、スペクトラム拡散変調方式、GMSK変調方式等があり、本電力線搬送通信システムにおいては、いずれの方式を用いてもよく、さらには上述以外の方式であってもよい。
(参照例1)
本参照例の電力線搬送システムの構成を図5に示す。上述の実施形態では、フィルタ装置6にPLCモデム5も電気機器8も電源プラグ9により接続するようになっているが、本参照例では、PLCモデム5はプラグ4に接続し、電気機器8はプラグ4に接続しているフィルタ装置6に電源プラグ9で接続するようになっている。
なお、図5中の図1と同じ構成要素には同じ符号を付す。またPLCモデム5と電気機器7とは別体でもよく、あるいはPLCモデム5を予め内蔵した電気機器7を用いてもよい。
また、プラグ4に接続されたフィルタ装置6には、電気機器8が接続されており、電気機器8は、電力線3からプラグ4,フィルタ装置6を介して電力を供給されて動作している。なお、図6(a)に示すように、プラグ4とフィルタ装置6とを一体に形成してもよく、あるいは図6(b)に示すように、プラグ4からケーブルWを介してフィルタ装置6に接続する形態でもよい。
図7(a)は、フィルタ装置6の回路構成の一例を示しており、プラグ4の給電部4eに接続するノイズフィルタ6aと、ノイズフィルタ6aを介してプラグ4の給電部4eに接続する一対の刃受部6b,6bとを筐体60内に備える。
刃受部6b,6bは、筐体60に設けた矩形の一対の栓刃挿通口6c,6c(図6,図7参照)を介して導入される電気機器8の電源プラグ9の一対の栓刃9a,9aを挟持する。そして、刃受部6bは、1枚の金属の板材によって形成され、栓刃9aを挟持する刃受ばね61,62を一体に備える。電気機器8は、電源プラグ9の栓刃9a,9aを刃受部6b,6bに接触導通させることで、電力線3からプラグ4、フィルタ装置6を介して電力を供給される。
ノイズフィルタ6aは、一例として図7(b)に示すように、一対の電力供給路に各々直列接続したチョークコイルL1,L2と、電力供給路間に接続したコンデンサC2とを備え、商用電源周波数を通過させ、高周波帯域信号を減衰させるローパスフィルタで構成される。図7(b)ではLCの1段構成としているが、LCの多段構成としてもよい。また、チョークコイルL1,L2はコモンモードチョークコイルを用いることもできる。あるいは、ノイズフィルタ6aを、商用電源周波数を通過させ、高周波帯域信号及び低周波帯域信号を減衰させるバンドパスフィルタで構成してもよい。
ここで、図6(a)に示すようにプラグ4とフィルタ装置6とを一体に形成した場合は、フィルタ装置6のノイズフィルタ6aがプラグ4の給電部4eに直接接続され、図6(b)に示すようにプラグ4からケーブルWを介してフィルタ装置6に接続する場合は、フィルタ装置6のノイズフィルタ6aはケーブルWを介してプラグ4の給電部4eに接続される。
さらに、電力線3には、PLCモデム5を介して電気機器7を監視、制御するための端末装置10が接続されており、端末装置10は、PLCモデム5との間で電力線3を介した電力線搬送通信を行うことで、各電気機器7の監視制御を行う。
さらに、上述の実施形態の場合と、同様に一対の電力線3,3の終端間には、コンデンサC1と抵抗R1の直列回路で構成される終端器11が接続されている。この終端器11のインピーダンスは、電力線3,3で構成される電力線路の特性インピーダンスに整合しており、電力線搬送通信に用いる周波数帯域(例えば10kHz〜450kHz、または2MHz〜30MHz)が、前記電力線路の長さの4分の1波長であっても、伝送特性が劣化することなく、信号のレベルが大幅に減少することはない。
したがって、PLCモデム5は、信号の周波数や前記電力線路の長さに依らず、端末装置10や他のPLCモデム5との間で良好な電力線搬送通信を行うことができる。
さらに、上述の実施形態と同様に、図5中の破線に示す如く、分電盤1に導入される電力引込線Pを、電柱等に設置したPLCモデム110を介してインターネット網NTに接続し、外部端末装置120や携帯端末121からインターネット網NT、PLCモデム110経由で、電力線3上での電力線搬送通信を行い、各電気機器7の監視制御を行ってもよい。
さらに、複数の工場、店舗、事務所、美術館等に本参照例の電力線搬送通信システムを設けて、管理会社等で一括管理する場合、図1中の破線に示すように、管理会社等に設置したサーバ100をインターネット網NTに接続すれば、サーバ100からPLCモデム110,111,112,…を介して複数の電力線搬送通信システムを一括管理できる。なお、上記端末装置10、外部端末装置120、携帯端末121を省略して、サーバ100が端末装置の機能を有してもよい。
(参照例2)
本参照例の電力線搬送通信システムの構成は図8に示され、参照例1と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
本参照例では、全てのプラグ4にフィルタ装置6が接続されており、全てのPLCモデム5、電気機器8は、フィルタ装置6を介して電力線3に接続される。
フィルタ装置6は、図9に示すように、切換スイッチ6i,6jと、ノイズフィルタ6kと、一対の刃受部6b,6bと、通信制御信号検出部6mとを筐体60内に備える。切換スイッチ6iはプラグ4の給電部4eに接続し、切換スイッチ6jは刃受部6b,6bに接続し、スイッチ6i,6j間には、ノイズフィルタ6kを通過する経路と、ノイズフィルタ6kを通過せずに直接接続する経路とがある。そして、スイッチ6i,6jの各接点を切り換えることで、プラグ4の給電部4e−刃受部6b,6b間の接続形態は上記いずれかの経路に切り換わる。
PLCモデム5,電気機器8は、電源プラグ9の栓刃9a,9aを刃受部6b,6bに接触導通させることで、電力線3からフィルタ装置6を介して電力を供給される。
本参照例において、PLCモデム5は電源プラグ9の栓刃9a,9aから通信制御信号(電流信号)を出力しており、フィルタ装置6の通信制御信号検出部6mは、刃受部6b,6bを流れる電流を検知する電流検知手段(図示なし)を備える。そして、通信制御信号検出部6mは、栓刃9a,9aを挟持した刃受部6b,6bを介して通信制御信号を受信すると(すなわち、通信制御信号検出部6mの電流検知手段が通信制御信号(電流信号)を検知した場合)、PLCモデム5が接続されたと判定して切換制御信号を出力し、切換スイッチ6i,6jを一方に切り換えて、ノイズフィルタ6kを介さずに切換スイッチ6i,6j間を直接接続する。すなわち、PLCモデム5は、電力線3からノイズフィルタ6kを介さずに電力を供給される。
そして、ノイズフィルタ6kを介さずに切換スイッチ6i,6j間を直接接続した後は、PLCモデム5がフィルタ装置6から取り外されるまで、この状態を保持する。
また、通信制御信号検出部6mが通信制御信号を受信しない場合は(すなわち、通信制御信号検出部6mの電流検知手段が通信制御信号(電流信号)を検知しない場合)、PLCモデム5が接続されていないと判定して切換制御信号を出力し、切換スイッチ6i,6jを他方に切り換えて、ノイズフィルタ6kを介して切換スイッチ6i,6j間を接続する。すなわち、PLCモデム5が取り外された場合、ノイズフィルタ6kを介して切換スイッチ6i,6j間が接続しており、電気機器8がフィルタ装置6に接続されると、電気機器8は、電力線3からノイズフィルタ6kを介して電力を供給される。そして、ノイズフィルタ6kは、電気機器8が放出するノイズの周波数帯域を減衰させるローパスフィルタあるいはバンドパスフィルタであり、電気機器8から電力線3へ放出されるノイズを低減させている。
このように、本参照例のフィルタ装置6は、PLCモデム5からの通信制御信号の有無によってノイズフィルタ6kによるフィルタ処理をオン・オフするフィルタ処理切換手段を備えており、電気機器8を接続するときはノイズフィルタ6kを介して電力供給することで、電気機器8から電力線3に放出されるノイズをノイズフィルタ6kによって低減することができ、PLCモデム5を接続するときはノイズフィルタ6kを介さずに電力供給することで、PLCモデム5は、電力線搬送通信に用いる周波数帯域(例えば10kHz〜450kHz、または2MHz〜30MHz)を確保できる。
したがって、PLCモデム5は、電力線搬送通信に用いる周波数帯域を確保しつつノイズの影響を低減することができ、端末装置10や他のPLCモデム5との間で良好な電力線搬送通信を行うことができる。
さらに、予め全てのプラグ4にフィルタ装置6を接続しておき、PLCモデム5を接続したときのみノイズフィルタ6kによるフィルタ処理を自動的にオフすることで、接続する機器に合わせたフィルタ装置6の取り付け、取り外しの手間が省ける。
なお、上記切換スイッチ6i,6jは、ユーザの操作によって発生した切換制御信号によってノイズフィルタ6kの接続を切り換える構成であってもよい。あるいは上記切換スイッチ6i,6jをスライドスイッチで構成して、ノイズフィルタ6kの接続を手動で切り換える構成であってもよい。
(参照例3)
本参照例の電力線搬送通信システムの構成は参照例2と同様に図8に示され、参照例2と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
本参照例では、全てのプラグ4にフィルタ装置6が接続されており、全てのPLCモデム5、電気機器8は、フィルタ装置6を介して電力線3に接続される。
フィルタ装置6は、図10(a)に示すように、切換スイッチ6i,6jと、ノイズフィルタ6kと、一対の刃受部6b,6bと、ノイズ検出部6nとを筐体60内に備える。切換スイッチ6iはプラグ4の給電部4eに接続し、切換スイッチ6jは刃受部6b,6bに接続し、スイッチ6i,6j間には、ノイズフィルタ6kを通過する経路と、ノイズフィルタ6kを通過せずに直接接続する経路とがある。そして、スイッチ6i,6jの各接点を切り換えることで、プラグ4の給電部4e−刃受部6b,6b間の接続形態は上記いずれかの経路に切り換わる。
PLCモデム5,電気機器8は、電源プラグ9の栓刃9a,9aを刃受部6b,6bに接触導通させることで、電力線3から電力を供給される。
本参照例において、フィルタ装置6のノイズ検出部6nは刃受部6b,6bに接続しており、栓刃9a,9aを挟持した刃受部6b,6bを介して電力線3へ放出されるノイズを検出する。
ノイズ検出部6nは、ノイズを検出しない場合、電気機器8が接続されていないと判定して切換制御信号を出力し、切換スイッチ6i,6jを一方に切り換えて、ノイズフィルタ6kを介さずに切換スイッチ6i,6j間を直接接続する。すなわち、PLCモデム5が接続された場合、ノイズフィルタ6kを介さずに切換スイッチ6i,6j間が接続しており、PLCモデム5は、電力線3からノイズフィルタ6kを介さずに電力を供給される。
また、ノイズ検出部6nは、ノイズを検出した場合、電気機器8が接続されたと判定して切換制御信号を出力し、切換スイッチ6i,6jを他方に切り換えて、ノイズフィルタ6kを介して切換スイッチ6i,6j間を接続する。すなわち、ノイズを放出する電気機器8は、電力線3からノイズフィルタ6kを介して電力を供給される。そして、ノイズフィルタ6kは、電気機器8が放出するノイズの周波数帯域を減衰させるローパスフィルタあるいはバンドパスフィルタであり、電気機器8から電力線3へ放出されるノイズを低減させている。
図10(b)は、ノイズ検出部6nの構成を示し、入力端子X1,X2は刃受部6b,6bを介して栓刃9a,9aに接続して、出力端子Y1から切換スイッチ6i,6jに切換制御信号が出力される。
入力端子X1,X2は、レベル検出回路600,商用電源周波数検出回路610に接続されており、レベル検出回路600では、入力端子X1,X2を介して入力される栓刃9a,9a間の電圧波形から、トランス601、バンドパスフィルタ602によって、電力線搬送通信に用いる周波数帯域(例えば10kHz〜450kHz、または2MHz〜30MHz)のノイズを抽出し、スイッチ素子603,ダイオード604を介してレベル判定部605に入力する。レベル判定部605は、入力されたノイズ信号のレベルが所定レベル以上であれば、ノイズを放出する電気機器8が接続されたと判定して、切換スイッチ6i,6jを他方に切り換える切換制御信号を出力端子Y1から出力し、ノイズフィルタ6kを介して切換スイッチ6i,6j間を接続する。
ここで、商用電源周波数検出回路610は、栓刃9a,9a間の電圧波形を一次側に入力したフォトカプラ611の二次側出力から、ローパスフィルタ612、リミッタ613を介して商用電源周波数に同期したパルス信号を出力する。ここで、フォトカプラ611は商用電源ACと商用電源周波数検出回路610のパルス信号出力との間を絶縁している。
一般的に、電気機器8のノイズは、商用電源の周波数に同期して発生するので、商用電源周波数に同期して栓刃9a,9a間の電圧波形をモニタすれば、電気機器8が放出したノイズであるか否かが判定できる。そこで、レベル検出回路600は、商用電源周波数検出回路610が出力するパルス信号により、商用電源周波数の立ち上がり、立ち下がりのタイミングを抽出することで、栓刃9a,9aに存在するノイズの変動周期と商用電源周波数とが同期しているか否かを把握するのである。
具体的には、商用電源周波数検出回路610が出力するパルス信号に同期して、レベル検出回路600のスイッチ素子603をオンさせており、レベル判定部605には、商用電源周波数に同期してノイズ信号が入力される。そして、レベル判定部605は、商用電源周波数に同期して入力されたノイズ信号のレベル判定を行うことで、ノイズのレベルとノイズの変動周期との両方に基づいてノイズフィルタ6kによるフィルタ処理をオン・オフする。
なお、上記商用電源周波数検出回路610を省略して、レベル検出回路600のみでもノイズ検出を行うことはできるが、商用電源周波数検出回路610を用いることで電気機器8が放出するノイズをより確実に検出することができる。
このように、本参照例のフィルタ装置6は、栓刃9a,9a間の電圧波形に存在するノイズの有無によってノイズフィルタ6kによるフィルタ処理をオン・オフするフィルタ処理切換手段を備えており、電気機器8を接続するときはノイズフィルタ6kを介して電力供給することで、電気機器8から電力線3に放出されるノイズをノイズフィルタ6kによって低減することができ、PLCモデム5を接続するときはノイズフィルタ6kを介さずに電力供給することで、PLCモデム5は、電力線搬送通信に用いる周波数帯域(例えば10kHz〜450kHz、または2MHz〜30MHz)を確保できる。
したがって、PLCモデム5は、電力線搬送通信に用いる周波数帯域を確保しつつノイズの影響を低減することができ、端末装置10や他のPLCモデム5との間で良好な電力線搬送通信を行うことができる。
さらに、予め全てのプラグ4にフィルタ装置6を接続しておき、ノイズを放出する電気機器8を接続したときのみノイズフィルタ6kによるフィルタ処理を自動的にオンすることで、接続する機器に合わせたフィルタ装置6の取り付け、取り外しの手間が省ける。
(参照例4)
本参照例の電力線搬送通信システムの構成は図11に示され、参照例1と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
本参照例では、プラグ4の代わりに、屋内の天井面、壁面、床面等に設置されたコンセント12が電力線3,3に接続して電力を分配する配電部を構成しており、工場、店舗、事務所、美術館等の屋内だけでなく、一般家庭の屋内にも用いられる。
そして、PLCモデム5、フィルタ装置6は、一対の栓刃13a,13aを具備する電源プラグ13を備え、コンセント12の矩形の一対の栓刃挿通口12a,12a内に栓刃13a,13aを導入することで、電力線3,3からコンセント12を介して電力を供給される。
他の構成は、参照例1と同様であり、電気機器8から電力線3に放出されるノイズをフィルタ装置6のノイズフィルタ6aによって低減することで、PLCモデム5では電気機器8から放出されるノイズの影響が低減する。
したがって、PLCモデム5は、コンセント12からの電力供給路に対するノイズフィルタ機能を省略することができ、電力線搬送通信に用いる周波数帯域(例えば10kHz〜450kHz、または2MHz〜30MHz)を確保しつつ、ノイズの影響を低減して、端末装置10や他のPLCモデム5との間で良好な電力線搬送通信を行うことができる。
さらに、一対の電力線3,3の終端間には、コンデンサC1と抵抗R1の直列回路で構成される終端器11が接続されている。この終端器11のインピーダンスは、電力線3,3で構成される電力線路の特性インピーダンスに整合しており、電力線搬送通信に用いる周波数帯域(例えば10kHz〜450kHz、または2MHz〜30MHz)が、前記電力線路の長さの4分の1波長であっても、伝送特性が劣化することなく、信号のレベルが大幅に減少することはない。
したがって、PLCモデム5は、信号の周波数や前記電力線路の長さに依らず、端末装置10や他のPLCモデム5との間で良好な電力線搬送通信を行うことができる。
なお、実施形態に加え参照例2〜4においても、プラグ4の代わりにコンセント12を用いて同様の効果を得ることができる。
ところで、エミット(EMIT(Embedded Micro Internetworking Technology))と称する機器組み込み型ネットワーク技術(機器に簡単にミドルウェアを組み込んでネットワークに接続できる機能を備えるネットワーク技術、以降、EMIT技術と称する。)を用いることで、携帯電話、PC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistant)、PHS(Personal Handy phone System)等の外部端末(図示せず)から様々な設備機器(照明装置、空調装置、動力装置、センサ、電気錠、Webカメラ等、以降、EMIT端末と称する。)<図示せず>にアクセスして、EMIT端末を遠隔監視・制御することができるシステムがある。
尚、EMIT端末は、マイコン搭載の組み込み機器であり、機器組み込み型のネット接続用ミドルウェアでありEMIT技術を実現するEMITソフトウェアが搭載されている。
上述のEMIT技術を応用したシステム(以降、EMITシステムと称する。)としては、外部端末がインターネット上に設けられたセンタサーバ(図示せず)経由でEMIT端末を遠隔監視・制御する構成のものや、センタサーバを介することなく、例えばEMITソフトウェアが搭載された外部端末から、直接各EMIT端末にアクセスしてEMIT端末を遠隔監視・制御する構成のものを挙げることができる。
そしてEMITシステムによって、例えば、建物(戸建住宅、マンション、ビル、工場用等)<図示せず>内に上述のEMIT端末を分散配置させて、外部端末からEMIT端末の状態を遠隔から監視することで、建物全体のエネルギ管理や、建物内のガス、水道、電気の遠隔検針を行うことも可能となる。
そこで上述の本発明の実施形態、参照例1〜4に係る電力線搬送通信システムにおいて、電力線搬送通信による監視制御処理は、特定の通信プロトコルに依らないものであるが、例えば、上述のEMITシステムを用いて電力線3に信号を重畳してデータ通信を行う形態でもよい。