JP2007189128A - n型半導体、半導体接合素子、pn接合素子および光電変換装置 - Google Patents

n型半導体、半導体接合素子、pn接合素子および光電変換装置 Download PDF

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Abstract

【課題】導電型制御を正確に行うことができて、実用に足る、n型半導体、半導体接合素子および光電変換装置を提供すること。
【解決手段】硫化鉄にIIIb族元素を混ぜることにより、n型半導体を作製する。また、このn型半導体を用いて、半導体結合素子または光電変換装置を作成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、n型半導体、半導体接合素子、pn接合素子および光電変換装置に関する。
硫化鉄は、高い光吸収係数をもつことから、受発光素子への応用が期待されている。ここで、応用を考えた場合、少なくとも導電型制御(pn制御)技術が不可欠であり、そのために精力的な研究開発が行われている。
硫化鉄としてはFeS、FeS、Feの組成が知られている。FeSおよびFeSは鉄の価数が二価であるのに対し、Feは鉄の価数が三価である。ここで、Feは、不安定であり、強熱するとFeSとFeSに分解すること、また、湿った空気中で容易に酸化鉄水和物と硫黄に分解してしまうことから、応用には適さない。
硫化鉄は、不純物ドーピングを行わない場合には、化学量論比とくらべて硫黄が過剰であればp型の導電性を示す一方、硫黄が不足であればn型の導電性を示すことが知られている。しかしながら、人工的に作られた硫化鉄のほとんどはp型の導電性を示すことが報告されており、n型硫化鉄を再現性良く作ることが応用のための大きな課題となっている。このため、不純物ドーピングによるn導電型の制御について精力的に研究されている。
例えば、特開昭61−106499号公報(特許文献1)には、パイライト材料の化学量論的偏奇が、式:FeS2±X〔0<x≦0.05〕に従い、かつ、不純物の濃度が1cm当り<1020であり、かつ、ドーピング材料として、マンガン(Mn)、砒素(As)、コバルト(Co)、または、塩素(Cl)を使用し、かつ、ドーピング材料のドーピング濃度が1cm当り約1016〜1019である光活性パイライト層を、太陽電池に応用すると、その太陽電池が良好な特性を示すということが開示されている。また、パイライトFeSに、NiまたはCoをドーピングすることによって、n型の導電性が得られる一方、パイライトFeSに、CuまたはAsをドーピングすることによって、p型の導電性が得られるということが開示されている。
また、特表2002−516651A号公報(特許文献2)には、少なくとも部分的に化学組成FeSを有する黄鉄鉱からなる半導体基材を、ホウ素(B)およびリン(P)のうちの少なくとも一方と結合してなる半導体構成部品や、あるいは、これらがドーピングされた半導体構成部品が、特に、太陽電池向けの用途に最適かつ極めて効率的であることが開示されている。
しかしながら、特許文献1および2に開示されている技術は、導電型制御(pn制御)が不十分であるという問題がある。例えば、特許文献2を例にとると、そこに記載されている技術は、ホウ素(B)とリン(P)が、どちらの導電型のドーパントとなるのか等、実用化に必要な事項が何も述べられておらず、実用化にほど遠いという問題がある。
上記従来技術が不十分である結果として、例えばパイライトFeSを光活性層に用いた全固体型太陽電池を例に挙げると、P.P.Altermatt,et.Al.;Solar Enagy MateriAls & Solar Cells 71 (2002)p.181(非特許文献1)に記載されているように、ショットキー型ダイオード構造等、全固体型太陽電池においては、光電変換効率が1%以下の低い値であるという問題がある。
特開昭61−106499号公報 特表2002−516651A号公報 P.P.Altermatt,et.Al.;Solar Enagy MateriAls & Solar Cells 71 (2002)p.181
そこで、本発明の課題は、導電型制御(pn制御)を問題なく行うことができて、実用品として使用できる硫化鉄を含むn型半導体、半導体接合素子および光電変換装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明のn型半導体は、硫化鉄と、IIIb族元素を含むことを特徴としている。
尚、上記硫化鉄は、結晶構造を有していても良く、化学量論比から若干のズレを生じた構造を有していても良い。また、上記硫化鉄が、結晶構造を有している場合、硫化鉄は、特に、鉄の価数が二価であることが好ましく、FeSかFeSであることが好ましい。
硫化鉄にドーパントを混ぜてn型半導体を作成する場合、これまでに検討されているドーパントとしては、上記特許文献1に記載されているような特性、すなわち、鉄と同じ遷移金属に属し、天然産出パイライト(FeS)に不純物として含まれることが多いMn、Ni、Co等であった。しかしながら、その何れを用いた場合でも、半導体接合素子として実用に耐え得る特性は得られなかった。これは、二価の鉄を三価の元素で置き換えるとn導電型になるが、これまで用いられていた遷移金属元素は、三価にもなり得るが基本的に二価になりやすく、さらに、それ以外の複数の価数を取り得るため、ドーパントの活性化率が作製方法などに大きく左右され、意図した導電率のものが得にくかったためであると推察される。本発明者は、ドーパントとして、今まで想定されることがなかったIIIb族元素を用いて、n導電型を有する硫化鉄の作製を試みた結果、再現性良いn導電型を有する硫化鉄を作製できることを発見した。
本発明のn型半導体は、硫化鉄と、IIIb族元素を含むので、導電型をn型に良好に制御できると共に、再現性を格段に向上させることができて、実用品として使用することができる。
また、一実施形態のn型半導体は、上記IIIb族元素は、Al、Ga、および、Inのうちの少なくとも一つである。
本発明者は、上記IIIb族元素として、Al、Ga、および、Inのうちの少なくとも一つを採用すると、不純物相の生成を抑制することができることを発見した。更に、上記IIIb族元素が、Alを含む場合において、バンドギャップを大きくできることを発見した。これは、Al、Ga、Inは、IIIb族元素の中でもFe2+とのイオン半径の差が比較的小さいため、これらの元素を含むと不純物相の生成を抑制することができるためであると推察される。また、Alは、Fe2+よりもイオン半径および電気陰性度が共に小さいためであると推測される。
また、一実施形態のn型半導体は、上記IIIb族元素が、5×1015cm−3〜5×1021cm−3含まれている。
上記実施形態によれば、良好なn型の導電性を有する良質な硫化鉄半導体を実現することができる。
また、一実施形態のn型半導体は、上記硫化鉄が、パイライト型の結晶構造を有するFeSを含む。
上記実施形態によれば、応用に適した半導体特性を獲得することができる。
また、本発明の半導体接合素子は、本発明のn型半導体を含む。
本発明によれば、本発明のn型半導体を含むので、電子伝導性等のn型半導体の特性を向上させることができて、素子特性を向上させることができる。
また、本発明のpn接合素子は、本発明のn型半導体と、硫化鉄を含むp型半導体とからなるpn接合を有している。
本発明によれば、本発明のn型半導体と、硫化鉄を含むp型半導体とからなるpn接合を有しているので、pn接合の整流特性を向上させることができる。
また、本発明の光電変換装置は、本発明のn型半導体と、硫化鉄を含むp型半導体とからなるpn接合を有している。
本発明によれば、本発明のn型半導体と、硫化鉄を含むp型半導体とからなるpn接合を有しているので、光電変換効率を格段に向上させることができる。
本発明のn型半導体によれば、硫化鉄と、IIIb族元素を含むので、導電型をn型に良好に制御できると共に、再現性を格段に向上させることができて、実用品として使用することができる。
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の光電変換装置の断面図である。
この光電変換装置は、基板1と、基板1の少なくとも一部の表面領域上に形成された第1電極層2と、第1電極層2上に形成された光電変換層3と、光電変換層3上に形成された第2電極層4とを備える。
基板1が光入射と反対側に位置する場合においては、基板1の透光性の有無は問われないが、基板1が光入射側に位置する場合においては、基板1は、少なくとも一部が透光性を有することが好ましい。透光性基板の材料としては、ガラスや、ポリイミド系、ポリビニル系、または、ポリサルファイド系の耐熱性を有する透光性樹脂や、それらを積層したもの等を使用できる。非透光性基板の材料としては、ステンレスや、非透光性樹脂等を使用できる。上記基板1の表面に、凹凸が形成されていても良く、この場合、凹凸面での光の屈折または散乱等により、光の閉じ込めや、反射防止等の種々の効果を獲得できる。また、基板1の表面に、金属膜、半導体膜、絶縁膜、または、それらの複合膜等を被覆しても良い。基板1の厚さとしては、特に限定されるものではないが、構造を支持できる適当な強度や重量を有する必要があり、例えば、基板1の厚さとして、0.1mm〜40mmを採用できる。
上記第1電極層2の形態としては、光電変換層3と実質的にオーミック接触するように形成されていれば特に限定されないが、基板1上に膜状に形成されていることが好ましい。上記第1電極層2に用いられる材料は、導電性を有していれば特に限定されないが、好適には、Mo、Al、Pt、C、Ti、Fe、Pd等の不透明材料を用いたり、その合金を用いたり、また、フッ素ドープ酸化錫(SnO:F)、アンチモンドープ酸化錫(SnO:Sb)、錫ドープ酸化インジウム(In:Sn)、Alドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)、Gaドープ酸化亜鉛(ZnO:Ga)、または、Bドープ酸化亜鉛(ZnO:B)等に代表される透明導電性酸化物電極材料を用いたりすることができる。また、上記第1電極層2は、上述の材料等の単層膜であっても良く、上述の材料等を複数積層した積層膜のいずれであっても良い。
上記第1電極層2が、光の入射側に位置する場合には、第1電極層2は、光電変換に寄与する光の波長域において高い透光性を有していることが好ましい。上記第1電極層2は、材料となる成分の真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、PVD法等の気相法、ゾルゲル法、CBD(ケミカル・バス・デポジション)法、スプレー法、スクリーン印刷法等によって、基板1上に形成される。
上述のように、上記基板1が光入射側に位置する場合においては、第1電極層2には光透過率が高いことが求められる。したがって、その場合は、第1電極層2は、櫛形など表面を一様に覆わないグリッド形状の金属電極であるか、光透過率の高い透明導電層であるか、または、それらの要件を組み合わせて形成されることが好ましい。
上記第1電極層2は、その表面上に凹凸を有していることが好ましい。上記第1電極層2の表面に存在する凹凸は、第1電極層2と、その上に形成される光電変換層3との界面において、光電変換装置内に入射してきた光を屈折・散乱させる。その結果、入射光の光路長が長くなって光閉じ込め効果が向上し、光電変換層3で利用できる光量が増大することになる。凹凸の形成方法としては、第1電極層2の表面に対するドライエッチング法、ウェットエッチング法、または、サンドブラストのような機械加工等を用いることができる。
ドライエッチング法としては、Arなどの不活性ガスを用いた物理的エッチングの他に、CF、SFなどのフッ素系ガス、CCl、SiClなどの塩素系ガス、または、メタンガス等を用いた化学的エッチングを用いることができる。上記ウェットエッチング法としては、第1電極層2を酸またはアルカリ溶液中に浸す方法等が使用できる。ここで、使用できる酸溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、酢酸、蟻酸、過塩素酸等の1種または2種以上の混合物が挙げられ、アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の1種または2種以上の混合物が挙げられる。上述のエッチング法以外の方法として、CVD法等による第1電極層2の材料自体の結晶成長により自己形成される表面凹凸を利用する方法や、ゾルゲル法やスプレー法による結晶粒形状に依存した表面凹凸を利用する方法がある。
上記光電変換層3は、第1電極層2上に実質的にオーミック接触するように形成される。上記光電変換層3は、硫化鉄にIIIb族元素を追加してなる。上記光電変換層3は、導電型がn型に制御された半導体層を含む構造を有している。上記光電変換層3の構造としては、p型半導体層およびn型半導体層を有するpn接合を有する構造や、p型半導体層、真性(i型)半導体層、および、n型半導体層を有するpin接合を有する構造や、n型半導体層のみを有するショットキー接合や、MIS構造等の半導体接合を有する構造等がある。尚、上記i型半導体層は、光電変換機能を損なわない限り、弱いp型または弱いn型の導電型を示すものであっても良い。また、光電変換装置は、光電変換層が2つ以上積層された構造を有していても良く、光電変換装置は、所謂積層型光電変換装置であっても良い。
硫化鉄にIIIb族元素を追加すると、再現性に優れる良質なn型導電型半導体層を獲得できる。この理由は、X線回折測定の結果より硫化鉄の回折パターン以外の不純物結晶相が観測されなかったことと、硫化鉄の回折パターンにおいてピークシフトが観測されたことから、IIIb族元素が硫化鉄の結晶格子中に存在しているためであると推察される。
例えば、三価のIIIb族元素が二価の鉄サイトに置換していた場合、IIIb族元素がドナー化し、n型導電型半導体層が形成される。ここで、上記硫化鉄中に、IIIb族元素が5×1015cm−3〜5×1021cm−3の範囲で含まれることが好ましい。n型化できるかどうかは、ドーピング前の硫化鉄のキャリア濃度に依存している。ドーピング前の硫化鉄のほとんどはp型であり、ホールキャリア濃度は、3×1015cm−3〜3×1021cm−3であった。ここで、n型化するためには、ドーピング前の硫化鉄のホールキャリア濃度以上の有効なドナーを含ませることが必要不可欠である。実際は、ドーピングしたIIIb族原子のすべてがドナー化するわけではないので、やや過剰にドーピングする必要があり、実験によると、IIIb族元素が5×1015cm−3以上である場合に、特に良好なn型の導電性を有する良質な硫化鉄半導体を得ることができた。
一方、後述するように、硫化鉄中のIIIb族元素濃度を増加させてゆくと、電子キャリア濃度は次第に増加した後、飽和傾向を示した。そして、IIIb族元素濃度が一定値を越えるとそれ以上増加させても電気的特性は大きくは変化しなくなった。結果として、鉄原子とIIIb族原子が5×1021cm−3以下である場合に、n型の導電性を有する特に良質な硫化鉄半導体を得ることができた。尚、硫化鉄中のIIIb族元素の種類および濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS)、オージェ電子分光法等の元素分析法で評価できる。
また、以下に示すように、IIIb族元素の中でもFe2+とのイオン半径の差が比較的小さいAl、Ga、Inから選ばれる元素を含む場合には不純物結晶相の生成を抑制することができるため好ましい。特に、IIIb族元素としてAlを含む場合には、Fe2+よりもイオン半径および電気陰性度が共に小さいため、バンドギャップを大きくすることができる。
また、硫化鉄がパイライト型の結晶構造を有するFeSを含む場合には、応用に適した半導体特性が得られることをつきとめた。パイライト型FeSは、可視光に対して高い光吸収係数(〜10cm−1)を持つことから太陽電池用材料として、光ファイバーで最も低損失な〜1.55μmの波長(〜0.85eVのフォトンエネルギー)に近いバンドギャップを有することから光通信用受発光素子用材料用途で、それぞれ有用である。したがって、パイライト型の結晶構造を有するFeSを含むと硫化鉄の特性を上記用途に有用な特性に近づけることができるため好ましい。
また、硫化鉄がパイライト型の結晶構造を有するFeSを多く含む場合には、多結晶体であっても比較的高いキャリア移動度(〜100cm/Vs)が実現できるため、安価なトランジスタ用材料として使用した場合、半導体特性を大きく向上させることができる。
光電変換層3の製造方法としては、MBE法、CVD法、蒸着法、近接昇華法、スパッタ法、ゾルゲル法、スプレー法、CBD(ケミカル・バス・デポジション)法、スクリーン印刷法等の作製方法を用いることができる。上記CVD法としては、例えば、常圧CVD、減圧CVD、プラズマCVD、熱CVD、ホットワイヤーCVD、MOCVD法等が挙げられる。尚、光電変換層3の形成において、硫黄蒸気中または硫化水素雰囲気中での硫化処理を、必要に応じて行うことができる。硫化処理温度としては、200〜600℃が好ましい。硫化処理を行うと、非晶質成分の結晶化を促進させたり、硫化鉄中の硫黄含有率を増加させたり、パイライト型の結晶構造を有するFeSの割合を増加させたりすることができる。ここで、非晶質成分の割合についてはXRD測定を行い、そのピーク強度を膜厚が同じで十分に結晶化させた場合のピーク強度とを比較することにより見積もることができる。また、パイライト型の結晶構造を有するFeSの割合は、パイライト構造のXRDピーク強度とそれ以外の構造のXRDピーク強度とを比較することにより見積もることができる。
第2電極層4は、光電変換層3上に実質的にオーミック接触するように形成される。第2電極層4に用いられる材料および作製方法は、第1電極層2を作成した時と同様である。このようにして、光電変換効率の高い光電変換装置を形成する。
図2は、本発明の実施例1〜7および比較例1の硫化物半導体の概略断面図であり、図3は、本発明の実施例1〜7および比較例1の化合物の種類および濃度を表す図である。以下、図2および図3に基づいて、実施例1〜7のn型半導体層について説明する。実施例1〜7の硫化鉄半導体は、1.1mmの厚さを有するガラス基板21上に、スプレー熱分解法および硫化法を併用して硫化鉄層22を形成することによって、作製されている。
詳細には、例えば、純水500mlに、塩化鉄(FeCl)とチオ尿素(NH2CSNH2)とを混入して、塩化鉄(FeCl)が、0.05mol/lで、かつ、チオ尿素(NH2CSNH2)が、0.1mol/lである溶液を作成する。
次に、作成した溶液に、図3に化合物の種類および濃度を表すドーピング元素を含む化合物をさらに溶解させ、スプレー用の溶液を作製する。ここで、溶質が溶けにくい場合には、塩酸を加える。このようすると、溶質を溶け易くすることができる。実施例1〜5,7および比較例1においては、塩酸を加えていない一方、実施例6の場合においては、35%の塩酸3mlを加えることにより水酸化ガリウム(Ga・nHO)を溶解させた。
次に、ガラス基板21を、ホットプレート上かつ大気下で約300℃に加熱した後、ホットプレート上に図3に詳細が述べられている上記溶液をスプレー塗布して、薄膜を形成する。尚、スプレー塗布して形成した薄膜を、XRD測定した結果、鉄の酸化物や水酸化物のピークが観測されなかった。このことから、薄膜の主成分がFeSであることを確認した。
次に、硫黄蒸気雰囲気において、500℃で1時間焼成する。このとき、サンプルを加熱するヒーターとは別のヒーターを用いて硫黄を温度200℃未満で加熱することによって硫黄蒸気を発生させて、キャリアガスとして窒素ガスを5l/minの流量で流す。上記硫化処理後にXRD測定を行ったところ、FeSパイライトの単相が形成されていることを確認した。また、硫化鉄層22の厚さを、段差膜厚計を用いて測定したところ、700nmであった。このようにして、図2に示す硫化鉄半導体を作製した。
図3において、導電型およびキャリア濃度は、ホール測定の結果である。また、図3において、IIIb族元素濃度は、実施例1および2ではSIMS測定の結果であり、実施例3〜7ではオージェ電子分光測定の結果である。また、図3において、Eg(eV)は、光学バンドギャップ(Eg)測定の結果である。ここで、Egは、光吸収係数の2乗を入射光のエネルギーに対してプロットし、そのX切片から直接遷移バンドギャップを求めている。
図3に示すように、ドーピングを行っていない比較例1では、導電型がp型である一方、ドーピングを行った実施例1〜7では、導電型がn型であった。このことから、硫化鉄にIIIb族元素濃度を含有させると、n型の硫化鉄半導体を形成できる。
また、実施例3、6、7は、IIIb族元素の濃度が等しい一方、IIIb族元素の種類が異なっている。実施例3、6、7を比較すると、電子キャリア濃度としては、略同等の値が得られている一方、Egは、比較例1に対して実施例3のみ大きくなっている。このことから、ドーパントがAl元素を含む場合においては、n型化と同時に、ワイドバンドギャップ化を行うことができる。
また、実施例1〜5は、IIIb族元素の種類が等しい一方、IIIb族元素の濃度が異なっている。実施例1〜5を比較すると、Al濃度が2×1021cm−3までは、Al濃度が増加するにつれて、電子キャリア濃度は増加する一方、Al濃度が2×1021cm−3を越えると、Al濃度が増加しても電子キャリア濃度が増加せずに一定値を示し、電子キャリア濃度が飽和している。
一方、上述のとおり、n型化できるかどうかの最低ドーピング量は、ドーピング前の硫化鉄のホールキャリア濃度以上であることが必要不可欠である。したがって、硫化鉄中に含まれるIIIb族元素の濃度を、5×1015cm−3〜5×1021cm−3の範囲に設定すると、硫化鉄半導体の導電型をn型にすることができると同時に、IIIb族元素のドーピングによって効率的に過剰電子を生成することができて、IIIb族元素のドーピング量に応じたキャリア濃度を実現できる。尚、本発明のn型半導体を使用して、ダイオードやトランジスタや半導体レーザ素子等の半導体接合素子を形成すると、その半導体接合素子のn型半導体の電子伝導性等の特性を向上させることができるので、その半導体接合素子の素子特性を格段に向上させることができる。
図4は、本発明の実施例8〜14の光電変換装置の断面図である。
実施例8〜14の光電変換装置を以下のように形成する。先ず、例えば、1.1mmの膜厚を有するガラス基板41上に、500nmのPt膜を真空蒸着法によって形成することによって、電極層42を形成する。次に、電極層42上にスプレー熱分解法および硫化法を併用することによって、FeSパイライトのpn接合を有する光電変換層43を形成する。その後、光電変換層43上に透明導電膜44を形成した後、透明導電膜44上にグリッド電極45を形成して、光電変換装置を形成する。
詳細には、p型のFeSパイライトを作製するに際し、p型用スプレー溶液として、図3の比較例1と同じものを用い、第1電極層42が積層されたガラス基板41をホットプレート上かつ大気下で約300℃に加熱して、その上に上記溶液をスプレー塗布して薄膜を形成する。スプレー塗布した薄膜を、XRD測定した結果、鉄の酸化物や水酸化物のピークは観測されず、FeSであることを確認した。
次に、硫黄蒸気雰囲気において500℃で1時間焼成する。このとき、サンプルを加熱するヒーターとは別のヒーターを用いて硫黄を温度200℃未満で加熱することによって硫黄蒸気を発生させ、キャリアガスとして窒素ガスを5l/minの流量で流す。上記硫化処理後にXRD測定を行ったところ、FeSパイライトの単相が形成されていることを確認した。また、膜厚は2μmであった。
続いて、p型のFeSパイライト上にn型のFeSパイライトを作製するため、再びスプレー塗布を行う。図5は、p型用スプレー溶液と、p型のFeSパイライト上にn型のFeSパイライトを作製する際に使用したn型用スプレー溶液を表す図である。実施例8〜14では、図5に示すスプレー溶液を、純水で20倍に希釈して使用した。
p型のFeSパイライトまで形成した基板をホットプレート上、大気中で約80℃に加熱して、その上に上記溶液をスプレー塗布して薄膜を形成する。このとき、膜厚が50nmになるようにスプレー回数を調節した後、p型の場合と同様に硫黄蒸気雰囲気において500℃で焼成を行う。ここで、焼成時間を10分間とした。このようにして、電極層42上に形成されたp型半導体層47と、p型半導体層47上に形成されたn型半導体層48とからなる光電変換層43を形成する。
その後、上記光電変換層43上に、マグネトロンスパッタ法によりn型のガリウムドープ酸化亜鉛(ZnO:Ga)を700nm堆積させて透明導電膜44を形成した後、透明導電膜44上に、櫛形の銀(Ag)をマグネトロンスパッタ法により形成してグリッド電極45を形成する。このようにして、図4に示す光電変換装置を形成する。
本発明者は、このようにして作製した光電変換装置の光電変換効率を調査した。具体的には、このようにして作製した光電変換装置に、AM1.5(100mW/cm)の光を照射し、セル温度25℃、セル面積1cmの条件下で光電変換効率を測定した。図5における光電変換効率は、この測定結果である。
図5に示すように、実施例8〜14のすべての光電変換装置が整流性を示し、各光電変換装置の変換効率が、2%を越える高い値になった。このことから、n型半導体として、本発明の硫化鉄半導体を使用すると、良好なpn接合を、構成することができる。また、n型半導体のドーパントとしてAl元素を含んでいない13,14の光電変換効率が、n型半導体のドーパントとしてAl元素を含んでいる実施例10の光電変換効率よりも小さくなっていることから、n型半導体のドーパントとしてAl元素を含む物質を採用すると、光電変換効率を向上させることができる。
Alを含む場合に最も高い変換効率を獲得できる理由は、次のようなものであると推察される。すなわち、本実施例では光入射側にn型層が存在しているため、n型層での光の損失が生じる。ここで、n型層のバンドギャップが大きいと、バンドギャップ以下のエネルギーを持つ光は透過するため、n型層内で光損失低減効果を向上させることができる。このことにより短絡電流密度が増加したことが、Alを含む場合に、変換効率が高い理由であると考えられる。
尚、上記実施例8〜14では、本発明のn型半導体と、硫化鉄を含むp型半導体とからなるpn接合を用いて光電変換素子を作製したが、本発明のn型半導体と、硫化鉄を含むp型半導体とからなるpn接合を用いてダイオードや、トランジスタ(pnpトランジスタ、npnトランジスタ、pnipトランジスタ)や、pn接合を有するスイッチ(pnpmスイッチ、pnpnスイッチ)等のpn接合素子を作製しても良いことは勿論である。本発明のn型半導体と、硫化鉄を含むp型半導体とからなるpn接合を用いてpn接合素子を作製すると、そのpn接合素子の整流特性を格段に向上させることができて、pn接合素子の素子特定を格段に向上させることができる。
本発明の一実施形態の光電変換装置の断面図である。 本発明の実施例1〜7および比較例1の硫化物半導体の概略断面図である。 本発明の実施例1〜7および比較例1の化合物の種類および濃度を表す図である。 本発明の実施例8〜14の光電変換装置の断面図である。 図4に示す光電変換装置を形成する際に使用したp型用スプレー溶液およびn型用スプレー溶液を表す図である。
符号の説明
1 基板
2 第1電極層
3 光電変換層
4 第2電極層
21,41 ガラス基板
22 硫化鉄層
42 電極層
43 光電変換層
44 透明導電膜
45 グリッド電極

Claims (8)

  1. 硫化鉄と、IIIb族元素を含むことを特徴とするn型半導体。
  2. 請求項1に記載のn型半導体において、
    上記IIIb族元素は、Al、Ga、および、Inのうちの少なくとも一つであることを特徴とするn型半導体。
  3. 請求項2に記載のn型半導体において、
    上記IIIb族元素は、Alであることを特徴とするn型半導体。
  4. 請求項1に記載のn型半導体において、
    上記IIIb族元素は、5×1015cm−3〜5×1021cm−3含まれていることを特徴とするn型半導体。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1つに記載のn型半導体において、
    上記硫化鉄は、パイライト型の結晶構造を有するFeSを含むことを特徴とするn型半導体。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1つに記載のn型半導体を含むことを特徴とする半導体接合素子。
  7. 請求項1乃至5のいずれか1つに記載のn型半導体と、硫化鉄を含むp型半導体とからなるpn接合を有していることを特徴とするpn接合素子。
  8. 請求項1乃至5のいずれか1つに記載のn型半導体と、硫化鉄を含むp型半導体とからなるpn接合を有していることを特徴とする光電変換装置。
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