JP2007188676A - 燃料電池における電解質層の損傷の抑制 - Google Patents
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Abstract
【課題】電極近傍にてラジカルが生成される燃料電池において、燃料電池の性能低下を抑制する。
【解決手段】燃料電池は、水素ガスを含む燃料ガスと、酸化ガスを用いて運転される。燃料電池は、電解質層を含む膜電極接合体と、膜電極接合体と対向する領域を有するセパレータであって、対向する領域は平面である、セパレータと、膜電極接合体とセパレータとの間に配置され、燃料ガスまたは酸化ガスが流動するガス流路として用いられる多孔体であって、内部の少なくとも一部に酸化防止剤が配置されている、多孔体と、を備える
【選択図】図6
【解決手段】燃料電池は、水素ガスを含む燃料ガスと、酸化ガスを用いて運転される。燃料電池は、電解質層を含む膜電極接合体と、膜電極接合体と対向する領域を有するセパレータであって、対向する領域は平面である、セパレータと、膜電極接合体とセパレータとの間に配置され、燃料ガスまたは酸化ガスが流動するガス流路として用いられる多孔体であって、内部の少なくとも一部に酸化防止剤が配置されている、多孔体と、を備える
【選択図】図6
Description
本発明は、燃料電池において、電解質層の損傷を抑制する技術に関する。
固体高分子型燃料電池は、固体高分子膜を挟んで対峙する2つの電極(燃料極と酸素極)にそれぞれ反応ガス(水素を含有する燃料ガスと酸素を含有する酸化ガス)を供給して電気化学反応を行うことにより、物質の持つ化学エネルギを直接電気エネルギに変換する。かかる固体高分子型燃料電池の主要な構造として、略平板状の膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly )およびセパレータを積層して、積層方向に締結する、いわゆるスタック構造のものが開発されている。
ところで、上述した固体高分子型燃料電池の電気化学反応の際、副反応によって過酸化水素(H2O2)が発生する。過酸化水素は、種々の反応により、活性の高いラジカルを生成する。生成されたラジカルは、固体高分子膜を連鎖的に分解する反応を引き起こし、固体高分子膜に損傷を与える。このような固体高分子膜の損傷は、固体高分子型燃料電池の性能劣化、寿命の短期化を引き起こす。
かかる問題に対して、固体高分子膜を挟む触媒層(電極)に、酸化防止剤を含有させる技術が知られている(例えば、特許文献1)。酸化防止剤は溶出して、ラジカルを固定し、不活性な物質となるため、固体高分子膜の損傷を防止することができる。
しかしながら、上記従来技術では、触媒層に酸化防止剤を含有させたことに起因して、高負荷域において燃料電池の性能低下を引き起こすおそれがあった。具体的には、酸化防止剤を含有している分、触媒層の空隙率が低下するため、触媒層のガス拡散性が悪化するおそれがあった。また、酸化防止剤が溶出した後に、触媒層に空孔が発生し、この空孔に生成水が滞留することにより、触媒層のガス拡散性が悪化するおそれがあった。
なお、上記課題は、固体高分子型燃料電池に限らず、電極近傍にてラジカルが生成される燃料電池に共通する課題であった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電極近傍にてラジカルが生成される燃料電池において、燃料電池の性能低下を抑制することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明の第1の態様は、水素ガスを含む燃料ガスと、酸化ガスを用いて運転される燃料電池を提供する。本発明の第1の態様に係る燃料電池は、電解質層を含む膜電極接合体と、前記膜電極接合体と対向する領域を有するセパレータであって、前記対向する領域は平面である、前記セパレータと、前記膜電極接合体と前記セパレータとの間に配置され、前記燃料ガスまたは前記酸化ガスが流動するガス流路として用いられる多孔体であって、内部の少なくとも一部に酸化防止剤が配置されている、前記多孔体と、を備える。
本発明の第1の態様に係る燃料電池によれば、ガス流路として用いられる多孔体に酸化防止剤を配置するため、触媒層や拡散層に酸化防止剤を配置した場合に発生する不都合を抑制しつつ、電解質層の劣化を抑制し、燃料電池の電池性能の低下を抑制することができる。すなわち、触媒層や拡散層に酸化防止剤を配置する場合には、上述したように、触媒層、拡散層の空隙率の低下、および、酸化防止剤が溶出した後に発生する空孔における生成水の滞留により、ガス拡散性が悪化するおそれがあったが、本発明の第1の態様に係る燃料電池では、そのような問題は発生しない。
本発明の第1の態様に係る燃料電池において、前記燃料電池は、所定の作動条件において、液体の水が電極近傍に存在し得る状態を有しても良い。
本発明の第1の態様に係る燃料電池において、前記多孔体は、金属により形成されている骨格部を有し、前記酸化防止剤は、前記骨格部の内部に配置されていても良い。こうすれば、骨格部の腐食の進行に連れて、酸化防止剤が適宜、生成水中に供給されるので、酸化防止剤を効率良く用いて燃料電池の性能劣化を低減することができる。
本発明の第1の態様に係る燃料電池において、前記多孔体は、前記膜電極接合体のアノード側およびカソード側のうち、電池反応によって水が生成される側に配置されていても良い。こうすれば、膜電極接合体のうち酸性環境になり電解質層の劣化が発生しやすい側において、電解質層の劣化を抑制するので、より効率的に燃料電池の電池性能の低下を抑制することができる。
本発明の第1の態様に係る燃料電池において、前記膜電極接合体に含まれる前記電解質層は、水素イオンの透過を許容するイオン交換膜であり、前記多孔体は、前記膜電極接合体のカソード側の面と、前記セパレータとの間に配置され、前記酸化ガスが流動する流路として用いられても良い。電解質層が、水素イオンの透過を許容するイオン交換膜である場合は、生成水は、カソード側で生成される。したがって、酸性環境になり電解質層の劣化が発生しやすいカソード側において、水素イオンの透過を許容するイオン交換膜の劣化を抑制するので、より効率的に燃料電池の電池性能の低下を抑制することができる。
本発明の第2の態様は、水素ガスを含む燃料ガスと、酸化ガスを用いて運転される燃料電池において、前記膜電極接合体と前記セパレータとの間に配置され、前記燃料ガスまたは前記酸化ガスが流動するガス流路として用いられる多孔体の製造方法を提供する。本発明の第2の態様に係る製造方法は、酸化防止剤と樹脂材料との混合物により形成された発泡体を準備する工程と、前記発泡樹脂の表面に導電性の被膜を形成する工程と、前記導電性の被膜の表面に、前記多孔体の骨格部となる金属を電析させる工程と、前記発泡体に含まれる前記樹脂材料を、熱分解により除去する工程と、を備える。
本発明の第2の態様に係る製造方法によれば、酸化防止剤が内部に充填された骨格部を有する多孔体を容易に製造することができる。かかる製造方法により製造された多孔体を、燃料電池において、燃料ガスまたは酸化ガスが流動するガス流路として用いれば、上述した第1の態様に係る燃料電池と同様の作用・効果を得ることができる。
以下、本発明に係るセパレータについて、図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。
A.実施例:
図1〜図3を参照して、本発明の実施例に係る燃料電池の構成について説明する。図1は、実施例に係る燃料電池の構成を示す説明図である。図2は、実施例に係るセパレータの正面図である。図3は実施例に係る燃料電池の断面図である。図3(a)の右半分は、図2におけるe−e断面を示している。図3(a)の左半分は、図2におけるf−f断面を示している。図3(b)は、図2におけるg−g断面を示している。図3(a)および図3(b)においては図を見やすくするため各構成部材の積層方向の厚さを図1の約2倍にして図示している。
図1〜図3を参照して、本発明の実施例に係る燃料電池の構成について説明する。図1は、実施例に係る燃料電池の構成を示す説明図である。図2は、実施例に係るセパレータの正面図である。図3は実施例に係る燃料電池の断面図である。図3(a)の右半分は、図2におけるe−e断面を示している。図3(a)の左半分は、図2におけるf−f断面を示している。図3(b)は、図2におけるg−g断面を示している。図3(a)および図3(b)においては図を見やすくするため各構成部材の積層方向の厚さを図1の約2倍にして図示している。
燃料電池1000は、シール一体型セルモジュール200と、セパレータ100とを交互に積層することにより構成されている。
シール一体型セルモジュール200は、膜電極接合体4と、アノード側多孔体5と、カソード側多孔体6と、シール部材50とを備えている。シール部材50は、シリコーンゴムなどのガス不透性と弾力性と耐熱性とを有する材料で形成されている。シール部材50の中心部には、図1において破線で示すように、膜電極接合体4、アノード側多孔体5、カソード側多孔体6を配置するための孔55が設けられている。図1から解るように、シール一体型セルモジュール200が積層されて燃料電池1000が構成されると、アノード側多孔体5およびカソード側多孔体6は、膜電極接合体4とセパレータ100との間に配置される。
膜電極接合体4は、図示は省略するが、電解質膜と、アノードと、カソードとを備えている。電解質膜は、例えば、フッ素系樹脂材料(例えば、ナフィオン(デュポン社の登録商標))で形成され、湿潤状態において良好なイオン導電性を有するイオン交換膜である。アノードおよびカソードは、ガス拡散電極であり、アノードは、電解質膜におけるアノード側多孔体5と対向する面に配置され、カソードは、電解質膜におけるカソード側多孔体6と対向する面に配置されている。ガス拡散電極は、電気化学反応の反応場である触媒層と、反応ガス(酸化ガスまたは燃料ガス)を触媒層全体に拡散させるためのガス拡散層とから構成される。触媒層は、例えば、白金などの貴金属が担持されたカーボンにより形成され、ガス拡散層は、例えば、カーボン繊維を織成したカーボンクロスやカーボンペーパーにより形成される。
アノード側多孔体5、および、カソード側多孔体6は、比較的内部の空孔率が高く、反応ガス(酸化ガスや燃料ガス)が内部を流動する際の圧力損失が小さいものが用いられる。アノード側多孔体5は、金属(例えば、チタン、ニッケル、ステンレス)またはカーボンを用いて形成されている。カソード側多孔体6は、金属を用いて形成されていると共に、多孔体の骨格内部に、酸化防止剤が充填されている。カソード側多孔体6については、製造方法を含めて、後述する。
セパレータ100は、中間プレート1と、カソードプレート2と、アノードプレート3とを備えている。これらの3つのプレートには、ステンレス鋼が用いられている。ステンレス鋼に代えて、ガス不透性と導電性とを有する種々の材料、例えば、他の金属材料、具体的には、チタン、チタン合金等を用いても良い。アノードプレート3は、中間プレート1の一方の面と当接しており、カソードプレート2は、中間プレート1の他方の面と当接している。アノードプレート3と中間プレート1、および、カソードプレート2と中間プレート1は、当接面において、所定の接合方法、例えば、熱圧着、ろう付け、溶接を用いて接合されている。アノードプレート3において、中間プレート1と当接する面の反対側の面、言い換えれば、膜電極接合体4のアノード側と対向する面は平面である。同様にして、カソードプレート2において、中間プレート1と当接する面の反対側の面、言い換えれば、膜電極接合体4のカソード側と対向する面は平面である。
セパレータ100には、中間プレート1およびカソードプレート2およびアノードプレート3にそれぞれ設けられた貫通孔によって、各種流体の流路が形成されている。すなわち、図2に示すように、燃料ガスを膜電極接合体4のアノードに供給するための流路として、3つのプレートをそれぞれ貫通する燃料ガス供給マニホールド130、中間プレート1を貫通する貫通孔として形成される燃料ガス供給流路13、アノードプレート3を貫通する貫通孔として形成される燃料ガス供給孔33が形成されている。同様にして、燃料ガスを排出するための燃料ガス排出マニホールド140、燃料ガス排出流路14、燃料ガス排出孔34、が形成されている。
さらに、セパレータ100には、酸化ガスを膜電極接合体4のカソードに供給するための流路として、酸化ガス供給マニホールド110、中間プレート1を貫通する酸化ガス供給流路11、カソードプレート2を貫通する酸化ガス供給孔21が形成されている。同様にして、酸化ガスを排出するための酸化ガス排出マニホールド120、酸化ガス排出流路12、酸化ガス排出孔22とが形成されている。さらに、燃料電池1000を冷却するための冷却媒体流路を供給/排出するための流路として、冷却媒体供給マニホールド150、冷却媒体流路15、冷却媒体排出マニホールド160とが形成されている。なお、図2において、ハッチングされている部分は、上述した各種マニホールド部分を表している。
図3(a)を参照して燃料ガスの流れについて説明する。燃料ガスは、水素ガス(水素分子)が用いられる。燃料ガスは、図3(a)の左側に矢印で示すように、燃料ガス供給マニホールド130から燃料ガス供給流路13および燃料ガス供給孔33を通ってアノード側多孔体5に供給される。アノード側多孔体5に供給された燃料ガスは、燃料ガスの流路として用いられるアノード側多孔体5の中を流動する間にアノード反応に使用される。そして、使用済みの燃料ガスは、図3(a)の右側に矢印で示すように、アノード側多孔体5から燃料ガス排出孔34および燃料ガス排出流路14を通って燃料ガス排出マニホールド140に排出される。
図3(b)を参照して酸化ガスの流れについて説明する。酸化ガスには、例えば、空気が用いられる。酸化ガスの流動経路における断面(図2におけるg−g断面)は、図3(b)に示す構造を有している。酸化ガスは、酸化ガス供給マニホールド110から酸化ガス供給流路11および酸化ガス供給孔21を通って、カソード側多孔体6に供給される。カソード側多孔体6に供給された酸化ガスは、酸化ガスの流路として用いられるカソード側多孔体6の中を流動する間にカソード反応に使用される。そして、使用済みの酸化ガスは、酸化ガス排出孔22および酸化ガス排出流路12を通って酸化ガス排出マニホールド120に排出される。
冷却媒体は、冷却媒体供給マニホールド150から冷却媒体流路15に流入し、冷却媒体流路15から冷却媒体排出マニホールド160へ排出される。冷却媒体は、主として、冷却媒体流路15を流動中に燃料電池1000を冷却する。
・カソード側多孔体の構成
図4〜図6を参照して、カソード側多孔体6の構成について、説明する。図4は、カソード側多孔体の拡大模式図である。図5は、カソード側多孔体の拡大断面図である。図6は、カソード側多孔体の骨格部を模式的に示した説明図である。
図4〜図6を参照して、カソード側多孔体6の構成について、説明する。図4は、カソード側多孔体の拡大模式図である。図5は、カソード側多孔体の拡大断面図である。図6は、カソード側多孔体の骨格部を模式的に示した説明図である。
図4に示すようにカソード側多孔体6は、骨格部63を有している。骨格部63によりカソード側多孔体6の内部に空孔部65が区画形成される。骨格部63は、本実施例では、ニッケルを用いて形成されている。空孔部65は、燃料電池内において、上述したように、酸化ガスが流動するための空間である。空孔部65のカソード側多孔体6全体に占める体積の割合、すなわち、空孔率は、70ないし90パーセント程度である。
図5に示すように、骨格部63の内部には、酸化防止剤62が充填されている。酸化防止剤62としては、様々な物質を用いることができる。本実施例では、酸化防止剤62として、セリウム酸化物などの希土類酸化物、ジルコニウム酸化物を用いている。
図6(a)には、骨格部63の図4におけるA−A断面が模式的に示されている。骨格部63のA−A断面の平均外径Bは、約300〜500μm(マイクロメートル)である。骨格部63の平均厚さCは、約30〜50μmである。
次に、酸化防止剤62が、燃料電池の運転時に消費される態様について説明する。上述したように、燃料電池の運転時には、カソード側多孔体6の内部を酸化ガスが流動し、カソードにおいて、カソード反応が進行する。固体高分子型燃料電池のカソード反応は、以下の式により表される。
2H++2e-+(1/2)O2→H2O …(1)
2H++2e-+(1/2)O2→H2O …(1)
カソード反応により生成されたH2O(生成水)は、酸化ガスに混入し、カソード側多孔体6内部を流動する。固体高分子型燃料電池は、比較的低温(常温〜約100℃程度)で運転されるため、生成水は、液相状態(液体)である。ここで、生成水には、電解質層に含まれるスルホン酸(強酸性を有する)が溶出するため、生成水は酸性となる。
一方、電極反応の副反応によって生成水内には過酸化水素(H2O2)が発生する。過酸化水素が、以下の式(2)〜(5)に示す反応に供せられることにより、ラジカル(例えば、・OH(ヒドロキシラジカル)、・OOH(ハイドロパーオキシラジカル)、・H(水素ラジカル))が生成される。
2H2O2→・OH+・OOH+H2O …(2)
H2O2+H++e-→・OH+H2O …(3)
・OH+H2→H2O+・H …(4)
H2O2+e-→・OH+OH- …(5)
これらのラジカルは、活性が高く、反応性に富むので、電解質層と反応する。ラジカルとの反応によって、電解質層は、分解され、損傷を受ける。
2H2O2→・OH+・OOH+H2O …(2)
H2O2+H++e-→・OH+H2O …(3)
・OH+H2→H2O+・H …(4)
H2O2+e-→・OH+OH- …(5)
これらのラジカルは、活性が高く、反応性に富むので、電解質層と反応する。ラジカルとの反応によって、電解質層は、分解され、損傷を受ける。
ここで、生成水が酸性となると、水素イオン濃度[H+]が大きくなるので、式(3)に示す反応が右に移動し、ラジカルの濃度が大きくなる。また、式(2)に示す反応は、金属イオンが関与する反応である(H2O2+M2+→・OH+OH-+M3+、H2O2+M3+→・OOH+H++M2+)。生成水が酸性になると、燃料電池内部や配管の金属部品、例えば、セパレータが腐食し、生成水に金属イオン(例えば、Feイオン)が溶出する。その結果、式(2)に示す反応が右に移動し、ラジカルの濃度が大きくなる。すなわち、生成水が酸性になると、生成水内のラジカル濃度が増加し、電解質層が損傷を受ける。
また、生成水が酸性となると、カソード側多孔体6の金属の骨格部63が腐食する。図6(b)に示すように、腐食により骨格部63に孔Hが形成されると、孔Hから、酸化防止剤62が生成水に溶出する。
生成水に溶出した酸化防止剤62は、ラジカルと選択的に反応して、安定な物質になる。すなわち、酸化防止剤62は、活性なラジカルを固定して、安定化させる。この結果、生成水中のラジカル濃度が減少し、電解質層の損傷が抑制される。また、生成水中のラジカル濃度が減少すると、式(3)に示す反応が右に移動するため、生成水中の水素イオン濃度[H+]が減少し、生成水の酸性度は、中性方向に変化する。この結果、燃料電池内部や配管の金属の腐食は抑制され、生成水中の金属イオン濃度が抑制される。そうすると、式(2)に示す反応によるラジカルの生成が抑制される。また、カソード側多孔体6の金属の骨格部63の腐食が、同様に抑制されるため、酸化防止剤62の骨格部63からの溶出が抑制される。
さらに、電池反応が進行すると、再び、生成水が酸性となり、その結果、上述したように、生成水中のラジカル濃度が増加し、電解質層が損傷を受ける環境になる。すると、再び骨格部63の腐食が進み、上述したように酸化防止剤62が骨格部63から生成水に溶出する。この結果、再び、上述したように、ラジカル濃度、酸性度が抑制され、電解質層の損傷が抑制される。
以上説明した本実施例に係るカソード側多孔体6を用いた燃料電池によれば、上述した反応のサイクルを繰り返すことにより、必要な量の酸化防止剤62が、骨格部63の腐食の進行と共に、生成水中に供給される。この結果、酸化防止剤62により、ラジカルによる電解質層の損傷が抑制され、燃料電池の性能劣化が低減される。したがって、燃料電池は、長時間に渡って、高い発電性能を発揮することができる。
また、カソード側多孔体6の骨格部63の内部に酸化防止剤62が充填され、骨格部63の腐食の進行と共に、酸化防止剤62が適宜、生成水中に供給されるので、必要以上の酸化防止剤62が生成水に溶出し、未反応のまま生成水と共に、燃料電池から排出されてしまうことを抑制することができる。この結果、酸化防止剤62を効率良く用いて燃料電池の性能劣化を低減することができる。
また、カソード側多孔体6に酸化防止剤62を配置することによって、酸化防止剤62の溶出による燃料電池の性能劣化を抑制することができる。具体的には、酸化防止剤62を触媒層や、拡散層に配置した場合には、触媒層、拡散層の空隙率の低下、および、酸化防止剤62が溶出した後に発生する空孔における生成水の滞留により、ガス拡散性が悪化するおそれがあったが、本実施例では、そのような問題は発生しない。
また、カソード側多孔体6は、触媒層や拡散層と比較して、空孔率が大きい(数十倍)ため、酸化防止剤62が溶出することにより空孔の量が増加しても、空孔率の変動率は、比較的小さい。また、カソード側多孔体6は、触媒層や拡散層と比較して、体積(厚さ)が大きい。したがって、カソード側多孔体6には、触媒層や拡散層よりも、大量の酸化防止剤62を配置することができる。具体的には、触媒層や拡散層では、酸化防止剤62を層全体の3重量パーセント程度までしか、充填することができなかったが、カソード側多孔体6では、多孔体全体の10重量パーセント以上の充填が可能である。したがって、より長時間に亘って、燃料電池の性能劣化を抑制することができる。
また、触媒層に酸化防止剤を添加する場合、触媒層に酸化防止剤を均一に分散させることが困難であり、触媒層に酸化防止剤が偏在するおそれがある。したがって、触媒層に酸化防止剤を添加すると、膜電極接合体ごとに、耐久性のばらつきが大きくなってしまう。本実施例によれば、空孔率が高く拡散性が高い多孔体に酸化防止剤62を添加することにより、酸化防止剤62が膜電極接合体4の全面に亘って拡散しやすいので、膜電極接合体4ごとの耐久性のバラツキを抑制することができる。
・カソード側多孔体の製造方法
図7を参照して、カソード側多孔体6の製造方法について説明する。図7は、カソード側多孔体の製造工程を示すフローチャートである。
図7を参照して、カソード側多孔体6の製造方法について説明する。図7は、カソード側多孔体の製造工程を示すフローチャートである。
まず、酸化防止剤62と樹脂材料との混合物により形成された発泡体を準備する(ステップS102)。樹脂材料は、酸化防止剤62の融点より低い温度で分解除去可能な材料が用いられる。樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂が用いられる。具体的には、酸化防止剤62の粉末を混合したポリウレタン樹脂を発泡成形することによって、発泡体を形成する。
次に、準備された発泡体の表面(発泡体の骨格の表面)に、導電性の被膜を形成する(ステップS104)。具体的には、カーボン粉末あるいは金属粉末を含有した導電性塗料を発泡体骨格の表面に塗布する。あるいは、無電解メッキにより金属を発泡体骨格の表面にコーティングする。
次に、導電性被膜の表面にカソード側多孔体6の骨格となる金属(例えば、ニッケル)を電析(電気メッキ)する。(ステップS106)。メッキ厚さは、カソード側多孔体6の骨格の厚さとなる。
骨格となる金属を電析させた後、加熱処理により、樹脂材料を分解して除去する(ステップS108)。加熱温度は、樹脂材料が分解する温度以上であって、酸化防止剤62の融点より低い温度とされる。例えば、加熱温度は、600℃とされる。この結果、電析させた金属を骨格部63とし、骨格部63の内部に酸化防止剤62が充填された多孔体が形成される。
加熱処理が終了すると、形成された多孔体に対して圧延・切削加工を行うことにより、最終的に、カソード側多孔体6が製造される(ステップS110)。
以上説明した製造方法によれば、酸化防止剤62が内部に充填された骨格部63を有するカソード側多孔体6を容易に製造することができる。
B.変形例:
上記実施例では、カソード側多孔体6の骨格部63の材料として、ニッケルを用いているが、他の材料を用いても良い。例えば、酸性の生成水によって腐食される材料であれば良く、具体的には、チタン、チタン合金、ステンレスなどの金属材料が用いられ得る。
上記実施例では、カソード側多孔体6の骨格部63の材料として、ニッケルを用いているが、他の材料を用いても良い。例えば、酸性の生成水によって腐食される材料であれば良く、具体的には、チタン、チタン合金、ステンレスなどの金属材料が用いられ得る。
上記実施例では、酸化防止剤62として、セリウム酸化物などの希土類酸化物を用いているが、他の物質を酸化防止剤62として用いても良い。基本的には、電解質層によりもラジカルと反応しやすく、ラジカルを固定・安定化できる物質であれば良い。上記製造方法により製造するため、酸化防止剤62は、製造時に用いる発泡体を形成する材料の熱分解温度において、安定であることが好ましい。
上記実施例では、生成水が発生する側であり、酸性の環境に曝されやすいカソード側多孔体6にのみ、酸化防止剤62を充填しているが、アノード側多孔体5にも同様に、酸化防止剤62が充填された金属多孔体を用いても良い。生成水は、アノード側多孔体5側にもリークしてくるので、カソード側より程度は少ないが、アノード側においても電解質層の損傷は生じ得るので、アノード側多孔体5にも酸化防止剤62を充填する効果はあるからである。かかる場合には、カソード側多孔体6よりも少ない量の酸化防止剤62が添加された多孔体をアノード側多孔体5に用いるなどにより、酸化防止剤62を必要量だけ充填することとしても良い。
上記実施例では、フッ素系樹脂材料を電解質層として用いる固体高分子型の燃料電池を用いているが、他の燃料電池に対して、酸化防止剤62が充填されたカソード側多孔体6を採用しても良い。具体的には、燃料ガスとして水素ガス(水素分子)を用いるタイプの燃料電池であり、所定の作動条件において、比較的低温(例えば、約120℃以下)で運転されることにより生成水が液体として電解質層や電極近傍に存在し得る燃料電池に採用され得る。かかる場合には、電解質膜が酸性環境に曝されることによる電解質膜の損傷が発生し得るからである。例えば、炭化水素系樹脂材料を電解質層として用いる固体高分子型の燃料電池、水酸化カリウムを電解質層として用いるアルカリ水溶液型の燃料電池、リン酸を電解質層として用いるリン酸型の燃料電池に、本実施例に係るカソード側多孔体6を採用しても良い。
以上、本発明の実施例および変形例について説明したが、本発明はこれらの実施例および変形例になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様での実施が可能である。
1…中間プレート
2…カソードプレート
3…アノードプレート
4…膜電極接合体
5…アノード側多孔体
6…カソード側多孔体
62…酸化防止剤
63…骨格部
65…空孔部
11…酸化ガス供給流路
12…酸化ガス排出流路
13…燃料ガス供給流路
14…燃料ガス排出流路
15…冷却媒体流路
21…酸化ガス供給孔
22…酸化ガス排出孔
33…燃料ガス供給孔
34…燃料ガス排出孔
50…シール部材
55…孔
100…セパレータ
110…酸化ガス供給マニホールド
120…酸化ガス排出マニホールド
130…燃料ガス供給マニホールド
140…燃料ガス排出マニホールド
150…冷却媒体供給マニホールド
160…冷却媒体排出マニホールド
200…シール一体型セルモジュール
1000…燃料電池
2…カソードプレート
3…アノードプレート
4…膜電極接合体
5…アノード側多孔体
6…カソード側多孔体
62…酸化防止剤
63…骨格部
65…空孔部
11…酸化ガス供給流路
12…酸化ガス排出流路
13…燃料ガス供給流路
14…燃料ガス排出流路
15…冷却媒体流路
21…酸化ガス供給孔
22…酸化ガス排出孔
33…燃料ガス供給孔
34…燃料ガス排出孔
50…シール部材
55…孔
100…セパレータ
110…酸化ガス供給マニホールド
120…酸化ガス排出マニホールド
130…燃料ガス供給マニホールド
140…燃料ガス排出マニホールド
150…冷却媒体供給マニホールド
160…冷却媒体排出マニホールド
200…シール一体型セルモジュール
1000…燃料電池
Claims (7)
- 水素ガスを含む燃料ガスと、酸化ガスを用いて運転される燃料電池であって、
電解質層を含む膜電極接合体と、
前記膜電極接合体と対向する領域を有するセパレータであって、前記対向する領域は平面である、前記セパレータと、
前記膜電極接合体と前記セパレータとの間に配置され、前記燃料ガスまたは前記酸化ガスが流動するガス流路として用いられる多孔体であって、内部の少なくとも一部に酸化防止剤が配置されている、前記多孔体と、
を備える燃料電池。 - 請求項1に記載の燃料電池において、
前記燃料電池は、所定の作動条件において、液体の水が電極近傍に存在し得る状態を有する、燃料電池。 - 請求項1または請求項2に記載の燃料電池において、
前記多孔体は、金属により形成されている骨格部を有し、
前記酸化防止剤は、前記骨格部の内部に配置されている、燃料電池。 - 請求項3に記載の燃料電池において、
前記多孔体は、前記膜電極接合体のアノード側およびカソード側のうち、電池反応によって水が生成される側に配置されている、燃料電池。 - 請求項4に記載の燃料電池において、
前記膜電極接合体に含まれる前記電解質層は、水素イオンの透過を許容するイオン交換膜であり、
前記多孔体は、前記膜電極接合体のカソード側の面と、前記セパレータとの間に配置され、前記酸化ガスが流動する流路として用いられる、燃料電池。 - 水素ガスを含む燃料ガスと、酸化ガスを用いて運転される燃料電池において、前記膜電極接合体と前記セパレータとの間に配置され、前記燃料ガスまたは前記酸化ガスが流動するガス流路として用いられる多孔体の製造方法であって、
酸化防止剤と樹脂材料との混合物により形成された発泡体を準備する工程と、
前記発泡樹脂の表面に導電性の被膜を形成する工程と、
前記導電性の被膜の表面に、前記多孔体の骨格部となる金属を電析させる工程と、
前記発泡体に含まれる前記樹脂材料を、熱分解により除去する工程と、
を備える、前記多孔体の製造方法。 - 請求項6に記載の多孔体の製造方法において、
前記燃料電池は、所定の作動条件において、液水の水が電極近傍に存在し得る状態を有する、多孔体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006003898A JP2007188676A (ja) | 2006-01-11 | 2006-01-11 | 燃料電池における電解質層の損傷の抑制 |
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JP2006003898A JP2007188676A (ja) | 2006-01-11 | 2006-01-11 | 燃料電池における電解質層の損傷の抑制 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009037860A (ja) * | 2007-08-01 | 2009-02-19 | Hitachi Ltd | 燃料電池およびそれに用いるセパレータ |
-
2006
- 2006-01-11 JP JP2006003898A patent/JP2007188676A/ja not_active Withdrawn
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JP2009037860A (ja) * | 2007-08-01 | 2009-02-19 | Hitachi Ltd | 燃料電池およびそれに用いるセパレータ |
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