JP2007186841A - 難燃性繊維複合体 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリエステル系繊維とセルロース系繊維からなり、優れた難燃性能を有する繊維複合体を提供する。
【解決手段】シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維から構成される難燃性繊維複合体。
【選択図】なし
【解決手段】シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維から構成される難燃性繊維複合体。
【選択図】なし
Description
本発明は、ポリエステル系繊維にシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を含有させることで、極めて高い難燃性を示すポリエステル系繊維とセルロース系繊維からなる繊維複合体に関するものである。
ポリエステル系繊維とセルロース系繊維からなる繊維複合体としては、通常ポリエステルと綿、ポリエステルとレーヨンからなる布帛などがあり、衣料、寝装、インテリア材料に広く用いられている。しかしながら、防炎性能が求められる用途においては、難燃化されたポリエステル系繊維あるいはセルロース系繊維の単独素材の布帛が専ら用いられてきた。これは従来技術におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維の複合体は、ポリエステル系繊維またはセルロース系繊維の単独の燃焼性から予想されるよりはるかに燃焼しやすく、この傾向は各々の素材に対して難燃性を付与した場合において、より顕著であることによる。すなわち、従来のポリエステル系繊維の難燃化技術は、燃焼時の溶融落下(ドリップ)を促進させることによるものであり、一方、セルロース系繊維では燃焼時の炭化により難燃性を付与するものであることから、これらの素材を組み合わせると、互いの難燃性能が打ち消されて、それぞれ単独の素材の場合よりも燃焼しやすくなる、いわゆるSCAFOLDING効果が生じるためである。
従来、ポリエステル系繊維の難燃性を高める方法として、ハロゲン系難燃剤を浴中法またはパッド法により繊維に吸尽もしくは付着させる方法や、地球環境保全に対する意識の高まりから、より環境負荷の少ない難燃加工技術として、リン系難燃剤を浴中法またはパッド法により繊維に吸尽もしくは付着させる方法が提案されている。しかしながら、これらの方法は、接炎による溶融を促進して、熱源から速やかに離れるドリップ型と呼ばれる難燃挙動を生じる加工方法であり、溶融を阻害する混紡繊維製品への利用や他の機能との複合化が難しい問題があった。
一方、セルロース系繊維の難燃化技術としては、種々の方法が提案されているが、中でも効果の大きい方法としてテトラキス(ハイドロキシメチル)ホスホニウム塩やN−メチロール(ジメチル)ホスホノプロピオンアミドを付着させる方法(非特許文献1)が知られている。
しかしながら、例えば、前述のテトラキス(ハイドロキシメチル)ホスホニウム塩をポリエステル系繊維とセルロース系繊維の繊維複合体に処理したもの(特許文献1)では、十分な難燃性能を付与するためには、多量の難燃剤を付与しなければならず、風合い、耐光性等の布帛の特性が悪化するといった問題があった。
また、近年、ハロゲン系化合物やリン系化合物を使用せず、シリコーン系化合物を難燃助剤的に利用して、シリコーンオイルをポリエステル繊維に添加し、難溶融性を高める技術が見出されている(特許文献2)。しかし、このポリエステル繊維にセルロース系繊維と複合体にしても、燃焼時にコイルで保護された状態の試験であるJIS L 1091繊維製品の難燃試験法D法(接炎試験)ではドリップの抑制が観察されるものの、自己消火性が低くなる問題があった。
一方、ポリエーテルイミド樹脂を用いた難燃化技術としては、ポリエステル系樹脂にポリエーテルイミド樹脂と有機リン系化合物を添加することで、UL94V−0を達成している技術があるが、難燃性が低いものであり、セルロース系繊維との複合体でも大きな効果が期待できないのが現状である(特許文献3)。
以上のように、ポリエステル系繊維とセルロース系繊維の複合体に高度な難燃性を付与できる技術が強く望まれている。
特開平6―101176号公報
特開2005−097819号公報
特開2003−213109号公報
「染色工業」22号(No.10)559〜568
本発明は前記した現状に鑑み、ポリエステル系繊維とセルロース系繊維の繊維複合体において、ポリエステル系繊維にシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を含有させることで、高い難燃性を有する繊維複合体を提供することを目的とするものである。
本発明はかかる目的を達成するために以下の構成を有する。
シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物とを含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維から構成される難燃性繊維複合体。
本発明ではポリエステル系繊維にシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を含有させることで、ポリエステル系繊維とセルロース系繊維からなる極めて高い難燃性を示す繊維複合体を得ることができる。
以下、本発明の難燃性繊維複合体の最良の形態について詳細に説明する。
本発明で用いられるポリエステル系繊維を構成するポリエステル系ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリテトレメチレンテレフタレートなどに代表されるジカルボン酸とジオールの縮合物である。
前記のジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルカルボン酸、ビス−(4−カルボキシフェニル)スルフォン、1,2−ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、1,2−ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、1,2−ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ジフェニルオキシド−p,p´−ジカルボン酸、p−フェニレンジ酢酸、ジフェニルオキシド−p,p´−ジカルボン酸、trans−ヘキサヒドロテレフタル酸およびそれらのアルキルエステル、アリールエステル、およびエチレングリコールエステルなどのエステル形成性誘導体が挙げられる。
また、前記のジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールや、ビスフェノールA、ビスフェノールSおよびそのエチレングリコール、ポリエチレングリコール付加体、ジエチレングリコール、およびポリエチレングリコールなどが挙げられる。
このようなポリエステル系ポリマーは、主成分のジカルボン酸とジオールに、他のジカルボン酸やジオールを第三成分として共重合しても良い。第三成分としては、具体的にはイソフタル酸、イソフタル酸スルホネートおよびアジピン酸等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
ポリエステル系ポリマーとしては、さらには非石油系ポリエステル化合物であるポリ乳酸でもよい。
本発明のセルロース系繊維とは、綿、麻のような天然繊維、ビスコースレーヨン、アセテートレーヨンのような再生セルロース繊維、アセテート(ジアセテート)またはトリアセテートなどの半合成繊維などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の難燃性繊維複合体は、シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維から構成されていることを特徴としている。
本発明で用いられるシリコーン系化合物とは有機ケイ素化合物のことであり、シロキサン結合とケイ素原子に結合する有機基を同一分子内に有している化合物のことである。このようなシリコーン系化合物は、Rが水素または有機基である1官能性のR3SiO0.5(M単位)、2官能性のR2SiO1.0(D単位)、3官能性のRSiO1.5(T単位)、4官能性のSiO2.0(Q単位)で示される単位のいずれか、またはいくつかの組み合わせから構成される。具体的な形態としては、シリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーンゴム、シランカップリング剤、およびシリコーンパウダー等が挙げられる。これらのシリコーン系化合物は単独もしくは複数で用いることができる。
また、M単位、D単位、T単位、Q単位の中で、少なくともT単位であるRSiO1.5(R:水素または有機基)を含むシリコーンレジンであると難燃性が向上するため好ましい。
また、
本発明では、シリコーン系化合物を構成する単位において、RSiO1.5が全構成単位に対して50mol%以上であることが好ましい。RSiO1.5がシリコーン系化合物中50mol%以上含まれることにより、繊維複合体としたときの耐熱性・炭化性が向上する。RSiO1.5の含有量は、好ましくは85mol%以上、さらに好ましくは99mol%以上である。
本発明では、シリコーン系化合物を構成する単位において、RSiO1.5が全構成単位に対して50mol%以上であることが好ましい。RSiO1.5がシリコーン系化合物中50mol%以上含まれることにより、繊維複合体としたときの耐熱性・炭化性が向上する。RSiO1.5の含有量は、好ましくは85mol%以上、さらに好ましくは99mol%以上である。
また、RSiO1.5の含有率は29Si−NMRによって測定可能であり、RSiO1.5に帰属するピーク面積比から含有率を測定することが可能である。
また、Rがメチル基あるいはフェニル基であるとポリエステルに対する分散性が向上し、かつ繊維複合体としたときの難燃性も向上するため好ましく、特にフェニル基が好ましい。フェニル基の含有量としては分散性と難燃性の観点からシリコーン系化合物の末端基を除く側鎖有機基中50mol%以上、好ましくは85mol%以上、さらに好ましくは99mol%以上であることが好ましい。フェニル基以外の有機基としては、シリコーン系化合物の諸特性を低下させない範囲で種々の有機基が選定できる。
また、Rがメチル基あるいはフェニル基であるとポリエステルに対する分散性が向上し、かつ繊維複合体としたときの難燃性も向上するため好ましく、特にフェニル基が好ましい。フェニル基の含有量としては分散性と難燃性の観点からシリコーン系化合物の末端基を除く側鎖有機基中50mol%以上、好ましくは85mol%以上、さらに好ましくは99mol%以上であることが好ましい。フェニル基以外の有機基としては、シリコーン系化合物の諸特性を低下させない範囲で種々の有機基が選定できる。
また、フェニル基の含有率は29Si−NMRによって測定可能であり、C6H5SiO1.5に帰属するピーク面積比から含有率を測定することが可能である。
また、本発明のシリコーン系化合物のシラノール基量は重量比で2%以上10%以下であり、更に好ましくは3%以上7%以下であることが好ましい。
シラノール基量を本範囲内とすることで、燃焼時にポリエステル系繊維とシリコーン系化合物が架橋構造を形成し、ポリエステル系樹脂の炭化を促進するためドリップを抑制することができる。
シラノール基量が本範囲を下回るとドリップ抑制の効果が低くなるため好ましくなく、本範囲を上回るとドリップ抑制の効果は平衡に達し、ポリエステル系樹脂と溶融混練する際にゲル化し、物性の低下や加工特性の低下を招くため好ましくない。
このシラノール基量の測定には29Si−NMRにおいてシラノール基を含有しない構造由来のSiO2.0、RSiO1.5、R2SiO1.0、R3SiO0.5のピークの面積(積分値)とシラノール基を含有する構造由来のSi(OH)4、SiO0.5(OH)3、SiO1.0(OH)2、SiO1.5(OH)、RSi(OH)3、RSiO0.5(OH)2、RSiO1.0(OH)、R2Si(OH)2、R2SiO0.5(OH)、R3Si(OH)のピークの面積(積分値)の比からシラノール基量を算出することが可能である。
例えば、RSiO1.5とRSiO1.0(OH)の積分値の比が1.5(RSiO1.5):1.0(RSiO1.0(OH))であれば下記式1の通り求めることができる。
また、ポリエステル系繊維に含まれるシリコーン系化合物の含有量は、繊維あるいは複合体としたときの力学的特性の観点から0.5重量%以上30重量%以下が好ましく、より好ましくは2重量%以上15重量%以下、さらに好ましくは2.5重量%以上10重量%以下である。
本発明のイミド構造を有する化合物とは、分子構造中に−CO−NR−CO−構造を有する化合物(R:C1〜C12のアルキル基、アルケン基、芳香環(ベンゼン環、縮合ベンゼン環、非ベンゼン系芳香環))のことをいう。
ここで、イミド構造を有する化合物は熱可塑性を有するものが加工性の点から好ましい。とくに、ガラス転移温度が130℃以上300℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは、130℃以上250℃以下である。
このイミド構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式で示されるような構造単位を含有するものが好ましい。
このイミド構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式で示されるような構造単位を含有するものが好ましい。
上記式中のArは6〜42個の炭素原子を有する芳香族基であり、R’は6〜30個の炭素原子を有する芳香族基、2〜30個の炭素原子を有する脂肪族基、および4〜30個の炭素原子を有する脂環族基からなる群より選択された2価の有機基である。
上記一般式において、Arとしては、例えば、
を挙げることができる。R’としては、例えば、
(式中、nは2〜30である)
を挙げることができる。
を挙げることができる。
これらは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、1種あるいは2種以上一緒にポリマー鎖中に存在してもよい。
イミド構造を有する化合物は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂との溶融成形性や取り扱い性などの点から、好ましい例として、下記一般式で示されるように、ポリイミド構成成分にエーテル結合を含有するポリエーテルイミドを挙げることができる。
ただし、上記式中R1は、2〜30個の炭素原子を有する芳香族基、脂肪族基、および脂環族基からなる群より選択された2価の有機基であり、R2は、前記R’と同様の2価の有機基である。
上記R1、R2の好ましい例としては、下記式群に示される芳香族基
を挙げることができる。
熱可塑性樹脂(A)との相溶性、溶融成形性等の観点から、下記式で示される構造単位を有する、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物が好ましい。
この構造単位を有するポリエーテルイミドは、“ウルテム”(登録商標)の商標名で、ジーイープラスチックス社より入手可能である。例えば、m−フェニレンジアミン由来の単位を含む構造単位(前者の式)を有するポリエーテルイミドとして、“ウルテム(登録商標)1010”および“ウルテム(登録商標)1040”が挙げられる。また、p−フェニレンジアミン由来の単位を含む構造単位(後者の式)を有するポリエーテルイミドとして、“ウルテム(登録商標)CRS5000”が挙げられる。
また、イミド構造を有する化合物の他の好ましい例として、熱可塑性樹脂との溶融成形性や取り扱い性などの点から、前記一般式中のArが、
から選ばれたものであり、R’が、
から選ばれたものであるポリマーを挙げることができる。
このポリイミドは、公知の方法によって製造することができる。例えば、上記Arを誘導することができる原料であるテトラカルボン酸および/またはその酸無水物と、上記R’を誘導することができる原料である脂肪族一級ジアミンおよび/または芳香族一級ジアミンよりなる群から選ばれる一種もしくは二種以上の化合物とを脱水縮合することにより得られる。具体的には、ポリアミド酸を得て、次いで、加熱閉環する方法を例示することができる。または、酸無水物とピリジン、カルボジイミドなどの化学閉環剤を用いて化学閉環する方法、上記テトラカルボン酸無水物と上記R’を誘導することのできるジイソシアネートとを加熱して脱炭酸を行って重合する方法なども例示することができる。
イミド構造を有する化合物とシリコーン系化合物とを樹脂組成物中に含有することで、燃焼時にシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物と母材である熱可塑性樹脂とが効率よく炭化層を形成することが可能であり、シリコーン系化合物またはイミド構造を有する化合物をそれぞれ単独で含有した場合よりもドリップ抑制の効果や難燃性を著しく向上することができる。上記のようなイミド構造を有する化合物として具体的には、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドが挙げられ、中でも加工性の観点から、ポリエーテルイミドが好ましいが、分子構造中にイミド構造を有していれば、この限りではない。
また、ポリエステル系繊維に含まれるイミド構造を有する化合物の含有量は繊維あるいは複合体としたときの力学的特性の観点から、0.5重量%以上50重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以上30重量%以下、さらに好ましくは7.5重量%以上20重量%以下である。
本発明のポリエステル系繊維は、シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を含むが、これは繊維を構成するポリマー中にシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物が分散および/または相溶されていることを言う。繊維あるいは複合体としたときの力学的特性および難燃性能がともに具備される範囲であれば特に限定されないが、とくに単繊維中に均一にしかも微細に分散または相溶されることが難燃性の観点から好ましい。
本発明では、シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物をポリエステル系繊維に含有させることで、燃焼時にポリエステル系繊維部分の炭化が著しく促進され、一方、セルロース系繊維も燃焼時に炭化することから、本発明の繊維複合体は両繊維が炭化型、つまりノンドリップ型となり、高度な難燃性を達成することができる。
本発明のシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維の難燃性繊維複合体の混合重量比率は特に限定されないが、95/5〜20/80が好ましい。
本発明では難燃成分をポリエステル系繊維のみに含んでいても良く、またセルロース系繊維のみに含まれていても良い。最も好ましくは、ポリエステル系繊維とセルロース系繊維の両繊維に含まれていることが難燃性能から好ましい。
本発明で用いられる難燃成分とは、ハロゲン元素、アルカリ金属元素、Mg、アルカリ土類金属元素、Zn、B、Al、N、P、Sbを含んだものである。
本発明では、繊維複合体が難燃成分を含んでいることが難燃効果を十分発現できるので望ましい。難燃成分は布帛の風合いを良好に維持し、かつ十分な難燃効果を得るためには難燃元素換算量が繊維複合体に対して、1000ppm以上20000ppm以下であることが好ましく、さらに好ましくは2000ppm以上10000ppm以下である。
具体的な難燃成分としては、不燃性ガスの発生等の難燃作用を有するハロゲン系化合物が挙げられる。具体的には、臭素化ビスフェノール類、臭素化芳香族ジカルボン酸、多臭素化ベンゼンおよびその誘導体、臭素化ビフェニル誘導体などが挙げられる。
また、表面温度を低下させる等の難燃作用を有する無機系化合物が挙げられる。具体的には、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化第二錫、メタ錫酸、水酸化第一錫が挙げられる。
さらに、炭化層形成による
熱の遮断および酸素の遮断などの難燃作用を有するリン系化合物が挙げられる。具体的には、トリフェニルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルフォスフェート)、およびビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェート)のリン酸エステル系、あるいはN−メチロール・ジメチルホスホノプロピオンアミド、エチレンジメチルホスホン酸、ベンゼンホスホン酸誘導体のホスホン酸類、リン酸あるいは亜リン酸エステル、ホスフィン誘導体などが挙げられる。
熱の遮断および酸素の遮断などの難燃作用を有するリン系化合物が挙げられる。具体的には、トリフェニルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルフォスフェート)、およびビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェート)のリン酸エステル系、あるいはN−メチロール・ジメチルホスホノプロピオンアミド、エチレンジメチルホスホン酸、ベンゼンホスホン酸誘導体のホスホン酸類、リン酸あるいは亜リン酸エステル、ホスフィン誘導体などが挙げられる。
本発明においては、環境への負荷を考慮するとハロゲン系元素を含有しない化合物、いわゆる非ハロゲン系化合物を用いることが好ましい。かかる非ハロゲン系化合物としては、リン系化合物が好適に用いられる。具体的には、環式ホスホン酸エステルが難燃性能の観点から好ましく、このときのリン元素換算量は繊維複合体に対して、2500ppm以上5000ppm以下である。
本発明の難燃性繊維複合体を用いると、JIS L―1091 D法(コイル法)で規定する難燃性試験において溶融滴下せず、自己消火する状態を達成できる。JIS L―1091 D法(コイル法)は燃焼時に溶融滴下(ドリップ)する繊維製品における燃焼試験法である。ここで、溶融滴下しないとは試料片に接炎中あるいは接炎後に溶融による試験片落下が見られないことを言い、自己消火するとは、接炎後に炎が自然に消えることをいう。
さらに、本発明では、難燃成分を付与することで、JIS L―1091 A−4法(垂直法)で規定する難燃性試験において溶融滴下せず、自己消火することが好ましい。JIS L 1091とは繊維製品の燃焼試験法でありA法(A−1法からA−4法)からD法まで適用品種ごとに存在する試験法の中で、垂直法と呼ばれているものであり、ドリップの有無を確認するのに最も適した方法である。ここで、溶融滴下しないとは試料片に接炎中あるいは接炎後に溶融による試験片落下が見られないことを言い、自己消火するとは、接炎後に炎が自然に消えることをいう。
次に本発明の繊維複合体の製造方法に関して詳細に説明する。
まず、ポリエステル系繊維に関しては、シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物をポリエステル系繊維に付与する方法として、例えばシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物をポリエステルの重合時に添加する方法、ポリエステルのチップとシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を2軸押し出し機等の混練機で混練する方法、またはポリエステルの紡糸時にシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を添加する方法などが挙げられるが、シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物をポリエステルに付与することができればこれらに限るものではない。
次に、シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を含有するポリエステル繊維の製造方法としては、通常の製糸工程、延伸工程が採用できる。また、製糸工程では高速紡糸、複合紡糸など、延伸工程では製糸工程と延伸工程を連続で行う方法なども利用できる。
また、不織布とする場合には製糸工程と直結で、また、織編物などの場合では、製糸後、既知の方法により必要とされる繊維形態とすれば良い。
本発明のポリエステル系繊維とセルロース系繊維は、糸形状物や帯形状物、または、織物、編物、不織布などの布帛形状物、綿状形状物などが挙げられるがこれらに限るものではない。繊維断面形状は丸型、異型(三角、四角、多角、扁平、中空断面など)を問わない。
ポリエステル系繊維とセルロース系繊維の繊維複合体は両者を、交織、交編、または交撚糸、混繊糸などとして得られる繊維複合体である。例えば、綿紡績糸や麻紡績糸などのセルロース系繊維をタテ糸またはヨコ糸のいずれかに用いて、ポリエステル系繊維のフィラメントと織物にしたり、交撚や混繊等でポリエステル系繊維とセルロース系繊維を複合した糸を、タテ、ヨコ両方に用い織物としても良い。
難燃成分を繊維複合体に付与する方法としては、ポリエステル系繊維へ共重合、ブレンドする方法、製糸後、高次加工などにより付与する方法、セルロース系繊維に高次加工する方法、シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維の複合体に高次加工する方法などが利用できるが、いずれの方法で付与してもよい。
また、本発明の難燃性繊維複合体にはヒンダードフェノール系、アミン系、ホスファイト系、チオエステル系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系などの紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、シアニン系、スチルベン系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリノン系、キナクリドン系などの有機顔料、無機顔料、蛍光増白剤、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン等の粒子、抗菌剤、静電剤などの添加剤が含有されても良い。
また、本発明の難燃性繊維複合体は様々な後加工をすることができる。例えば、浴中加工、吸尽加工、コーティング加工、Pad−dry加工、Pad−steam加工などにより撥水性、親水性、制電性、消臭性、抗菌性、深色性などの機能を付与することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
実施例における繊維、繊維複合体の調製およびその評価は、次の通り行った。
1.シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物含有ポリエステル系繊維の調製
混練温度280℃、スクリュー回転数300rpm、L/D:30の2軸押し出し機で、シリコーン系化合物およびイミド構造を有する化合物とポリエステル系ポリマーとを所望の重量比で混練してチップを作製した。次にこのチップを真空乾燥機で150℃、12時間真空乾燥した後、紡糸温度285℃、紡糸速度1250m/min、口金口径0.23mm-6H(ホール)の条件で紡糸し未延伸糸を得た。次いで得られた未延伸糸を合糸して24フィラメントにした後、延伸温度85℃、延伸倍率3.3倍の条件で延伸し延伸糸を得た。なお、ここで用いた化合物は次の通りである。
実施例における繊維、繊維複合体の調製およびその評価は、次の通り行った。
1.シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物含有ポリエステル系繊維の調製
混練温度280℃、スクリュー回転数300rpm、L/D:30の2軸押し出し機で、シリコーン系化合物およびイミド構造を有する化合物とポリエステル系ポリマーとを所望の重量比で混練してチップを作製した。次にこのチップを真空乾燥機で150℃、12時間真空乾燥した後、紡糸温度285℃、紡糸速度1250m/min、口金口径0.23mm-6H(ホール)の条件で紡糸し未延伸糸を得た。次いで得られた未延伸糸を合糸して24フィラメントにした後、延伸温度85℃、延伸倍率3.3倍の条件で延伸し延伸糸を得た。なお、ここで用いた化合物は次の通りである。
A.シリコーン系化合物
表1記載のシリコーン系化合物をそれぞれ所望量となるよう用いた。
表1記載のシリコーン系化合物をそれぞれ所望量となるよう用いた。
B.イミド構造を有する化合物
表2記載のイミド構造を有する化合物をそれぞれ所望量となるように用いた。
2.ポリエステル系繊維とセルロース系繊維の繊維複合体の調製
所定量のシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を含むポリエステル系延伸糸を40番双糸の綿糸との混合重量比率が下記の撚糸を得て、これを用いて筒編み地を作製した。
表2記載のイミド構造を有する化合物をそれぞれ所望量となるように用いた。
2.ポリエステル系繊維とセルロース系繊維の繊維複合体の調製
所定量のシリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物を含むポリエステル系延伸糸を40番双糸の綿糸との混合重量比率が下記の撚糸を得て、これを用いて筒編み地を作製した。
繊維複合体A:ポリエステル65重量%/綿35重量%(目付170g/m2 )
また、表2記載の難燃成分をそれぞれ所望量となるよう、サーモゾル法あるいは浴中吸尽法で付与した。
3.繊維強度の評価方法
糸強度の測定方法として、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度100mm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重を示した点の応力を繊維の強度(cN/dtex)とした。
4.燃焼試験
A.JIS L 1091(1992) D法に準じ接炎時・接炎後のドリップの有無、接炎回数を評価した。
また、表2記載の難燃成分をそれぞれ所望量となるよう、サーモゾル法あるいは浴中吸尽法で付与した。
3.繊維強度の評価方法
糸強度の測定方法として、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度100mm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重を示した点の応力を繊維の強度(cN/dtex)とした。
4.燃焼試験
A.JIS L 1091(1992) D法に準じ接炎時・接炎後のドリップの有無、接炎回数を評価した。
・ノンドリップ性:接炎後のドリップ回数を評価した。
・自己消火性:接炎回数を評価した。
なお、合格基準としてはドリップ回数が0回、接炎回数が3回以上とする。
B.JIS L 1091(1992) A−4法に準じて、接炎時・接炎後のドリップの有無、接炎後の自己消火性の有無を評価した。
・ノンドリップ性:接炎後のドリップ回数を評価した。
・自己消火性:接炎後の残炎時間(自己消火するまでの時間)を評価した。
なお、合格基準としては、ドリップ回数が0もしくは1回、残炎時間が10秒以下とした。
実施例1
有機基Rの100mol%がフェニル基であるとともに、構成単位の100mol%がRSiO1.5からなる、重量平均分子量が3000、シラノール末端を6.0重量%含むシリコーン系化合物(製品名:217Flake、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製)を2Torr、180℃で6時間脱水縮合し、シリコーンAを作製した。
有機基Rの100mol%がフェニル基であるとともに、構成単位の100mol%がRSiO1.5からなる、重量平均分子量が3000、シラノール末端を6.0重量%含むシリコーン系化合物(製品名:217Flake、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製)を2Torr、180℃で6時間脱水縮合し、シリコーンAを作製した。
ポリエステル系ポリマーとしてポリエチレンテレフタレートチップ(極限粘度:0.64)を使用し、シリコーンAを2.5重量%とイミドAを15重量%を繊維内部に含有した延伸糸を作製した後、セルロース系繊維である綿糸との撚糸を得て、繊維複合体Aを得た。
次いで、上記の繊維複合体Aを難燃成分Aにて、リン元素を繊維複合体に対して1500ppm付与するように、190℃・2min、サーモゾル法で繊維内部に吸尽させ、難燃性繊維複合体を得た。
次いで、上記の繊維複合体Aを難燃成分Aにて、リン元素を繊維複合体に対して1500ppm付与するように、190℃・2min、サーモゾル法で繊維内部に吸尽させ、難燃性繊維複合体を得た。
表4および表5記載のように、ポリエステル系繊維の糸強度は良好であり、かつ得られた繊維複合体の難燃評価では、D法をクリアし、しかもA−4法でドリップがなく、かつ、自己消火性に優れたものであった。
実施例2〜8
表4に示すように、シリコーン系化合物、イミド構造を有する化合物及び難燃成分の種類や含有量を変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステル系繊維および繊維複合体を得た。
表4に示すように、シリコーン系化合物、イミド構造を有する化合物及び難燃成分の種類や含有量を変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステル系繊維および繊維複合体を得た。
表5記載のように、ポリエステル系繊維の糸強度は良好であり、得られた繊維複合体の難燃評価ではD法をクリアし、しかもA−4法でドリップがなく、かつ、自己消火性に優れたものであった。
実施例9、10
シリコーンEまたはFを用いて、難燃成分を付与しなかった以外は実施例1と同様にポリエステル系繊維および繊維複合体を得た。
シリコーンEまたはFを用いて、難燃成分を付与しなかった以外は実施例1と同様にポリエステル系繊維および繊維複合体を得た。
表5記載のように、得られたポリエステル系繊維の糸強度は良好であり、得られた繊維複合体の難燃評価ではA−4法でのドリップ回数は1回あるものの、ノンドリップ性と自己消火性に優れたものであった。
実施例11、12
ポリエチレンテレフタレートチップをポリプロピレンテレフタレートまたは、ポリブチレンテレフタレートとする以外は実施例1と同様にポリエステル系繊維及び難燃性繊維複合体を得た。
ポリエチレンテレフタレートチップをポリプロピレンテレフタレートまたは、ポリブチレンテレフタレートとする以外は実施例1と同様にポリエステル系繊維及び難燃性繊維複合体を得た。
表5記載のように、得られたポリエステル系繊維の糸強度は良好であり、得られた繊維複合体の難燃評価では、D法をクリアし、しかもA−4法でドリップがなく、かつ、自己消火性に優れたものであった。
実施例13
L−ラクチドに対しオクチル酸錫を150ppm混合し、撹拌装置付きの反応容器中で窒素雰囲気中192℃の温度で10分間重合し、更に二軸押し出し機にてチップ化した後、140℃の温度の窒素雰囲気中で固相重合して、重量平均分子量15.1万のポリ−L−乳酸ポリマーを得た。このポリ乳酸を用いる以外は実施例1と同様にポリエステル系繊維及び難燃性繊維複合体を得た。
L−ラクチドに対しオクチル酸錫を150ppm混合し、撹拌装置付きの反応容器中で窒素雰囲気中192℃の温度で10分間重合し、更に二軸押し出し機にてチップ化した後、140℃の温度の窒素雰囲気中で固相重合して、重量平均分子量15.1万のポリ−L−乳酸ポリマーを得た。このポリ乳酸を用いる以外は実施例1と同様にポリエステル系繊維及び難燃性繊維複合体を得た。
表4記載のように、得られたポリエステル系繊維の糸強度は良好であり、難燃評価では、D法をクリアし、しかもA−4法でドリップがなく、かつ、自己消火性に優れたものであった。
比較例1
ポリエチレンテレフタレートチップとシリコーンEのみを繊維内部に10重量%含有した延伸糸を作製した後、セルロース系繊維である綿糸との撚糸を得て、繊維複合体Aを得た。
ポリエチレンテレフタレートチップとシリコーンEのみを繊維内部に10重量%含有した延伸糸を作製した後、セルロース系繊維である綿糸との撚糸を得て、繊維複合体Aを得た。
表5記載のようにD法でドリップが観察され、A−4法でもドリップし、自己消火性も低いものであった。
比較例2
ポリエチレンテレフタレートチップのみの延伸糸を作製した後、セルロース系繊維である綿糸との撚糸を得て、繊維複合体Aを得た。次いで、上記の繊維複合体Aを難燃成分Aにて、リン元素を繊維複合体に対して15000ppm付与するように、190℃・2min、サーモゾル法で繊維内部に吸尽させ、本発明の難燃性繊維複合体を得た。
ポリエチレンテレフタレートチップのみの延伸糸を作製した後、セルロース系繊維である綿糸との撚糸を得て、繊維複合体Aを得た。次いで、上記の繊維複合体Aを難燃成分Aにて、リン元素を繊維複合体に対して15000ppm付与するように、190℃・2min、サーモゾル法で繊維内部に吸尽させ、本発明の難燃性繊維複合体を得た。
表5記載のようにD法でドリップが8回も起こるという、ノンドリップ性が低いものであった。
比較例3
ポリエチレンテレフタレートチップとイミドAのみを繊維内部に20重量%含有した延伸糸を作製した後、セルロース系繊維である綿糸との撚糸を得て、繊維複合体Aを得た。
ポリエチレンテレフタレートチップとイミドAのみを繊維内部に20重量%含有した延伸糸を作製した後、セルロース系繊維である綿糸との撚糸を得て、繊維複合体Aを得た。
表5記載のようにノンドリップ性の向上は見られたが、自己消火性が低いものであった。
Claims (8)
- シリコーン系化合物とイミド構造を有する化合物とを含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維から構成される難燃性繊維複合体。
- シリコーン系化合物が、RSiO1.5(R:水素または有機基)で示される単位を含有するシリコーンレジンであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性繊維複合体。
- シリコーン系化合物が、有機基にフェニル基を含む有機化シリコーンレジンであることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性繊維複合体。
- シリコーン系化合物を構成する構成単位のうち、RSiO1.5(R:水素または有機基)単位が50mol%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の難燃性繊維複合体。
- イミド構造を有する化合物のガラス転移温度が、130℃以上300℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性繊維複合体。
- イミド構造を有する化合物が、ポリエーテルイミドであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性繊維複合体。
- 難燃性繊維複合体において、難燃成分を難燃成分中の難燃元素量換算で1000ppm以上20000ppm以下を含有してなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性繊維複合体。
- 難燃元素が非ハロゲン系元素であることを特徴とする請求項7に記載の難燃性繊維複合体。
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JP2006329770A JP2007186841A (ja) | 2005-12-12 | 2006-12-06 | 難燃性繊維複合体 |
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- 2006-12-06 JP JP2006329770A patent/JP2007186841A/ja active Pending
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