JP2005264417A - 炭化型ポリエステル系繊維構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
ポリエステル系繊維構造物に関して、自己消火性およびノンドリップ性が大幅に改善された炭化型ポリエステル系繊維構造物を提供する。
【解決手段】
ポリエステル系繊維を主体としてなる繊維構造物において、その繊維構造物を構成する単繊維の表層部に難燃剤と炭化性樹脂とを有する炭化型ポリエステル系繊維構造物であって、その繊維構造物を構成する単繊維の内部に、さらに、分散径が0.1nm〜1000nmの範囲であるシリコーン系化合物が含有されている炭化型ポリエステル系繊維構造物である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、炭化型ポリエステル系繊維構造物に関するものである。さらに詳細には、本発明は、非溶融落下性(ノンドリップ性)および自己消火性に優れた炭化型ポリエステル系繊維構造物に関するものである。
従来から衣料、寝具、壁紙、ならびに自動車、航空機、鉄道、および船舶などの内装材等に、繊維製品が数多く用いられている。これらの繊維製品においては、マッチや煙草などを出火源とする火災の被害を最小限に抑えるため、ホテル、病院および画館などで使用されるインテリア材料は、消防法により規制がなされている。このような状況の中で、安全性が高く、かつ快適な生活環境をつくるうえで、高い難燃性を備えた繊維製品の開発が望まれている。
従来、ポリエステル系繊維を主体としてなる繊維構造物において、その繊維構造物の難燃性を高める方法として、ハロゲン系難燃剤を浴中法またはパッド法により繊維に吸尽もしくは付着させる方法(特許文献1参照)や、地球環境保全に対する意識の高まりから、より環境負荷の少ない難燃加工技術として、リン系難燃剤を浴中法またはパッド法により繊維に吸尽もしくは付着させる方法(特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、これらの方法は、接炎による溶融を促進して、熱源から速やかに離れるドリップ型と呼ばれる難燃挙動を生じる加工方法であり、溶融を阻害する混紡繊維製品への利用や他の機能との複合化が難しいことや、皮膚に付着すると火傷の可能性があることから、特に衣類への用途展開には限界があり、しかもドリップによる二次火災の危険性があるという問題があった。
これらの問題を解決するため、繊維をメラミン樹脂などで被覆し防融する方法も提案されているが(特許文献3参照)、この方法の場合には、火の付いたタバコの接触では穴は開かず、またJISL−1091 D法(1999年度版)の燃焼試験においては合格するが、JISL−1091 A−1法(垂直法)(1999年度版)の燃焼試験では、接炎時にドリップが観察されるというような問題があった。
そこで、さらに、接炎時にドリップがなく、また自己消火性も兼ね揃えた難燃加工法が求められていた。
特開昭62−57985号公報 特開昭50−56488号公報 特開昭54−106692号公報
そこで、本発明は、前記した現状を鑑み、接炎時のドリップを抑制することができ、しかも難燃性の高い炭化型ポリエステル系繊維構造物を提供することを目的とするものである。
上記課題の達成のため、本発明のポリエステル系繊維は、以下の構成を有するものである。すなわち、本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物は、ポリエステル系繊維を主体としてなる繊維構造物において、該繊維構造物を構成する単繊維の表層部に炭化性樹脂と難燃剤を含むことを特徴とする炭化型ポリエステル系繊維構造物である。
本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物の好ましい態様において、TG−DTA分析において、昇温速度10℃/minで、空気雰囲気下の550℃の温度における前記の炭化性樹脂の加熱残分量は20重量%以上100重量%以下である。
本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物の好ましい態様において、前記のポリエステル系繊維を構成するポリエステル系ポリマーが、TG−DTA分析において、昇温速度10℃/minで、空気雰囲気下で加熱残分量が0重量%になる温度において、前記の炭化性樹脂の加熱残分量は20重量%以上100重量%以下である。
本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物の好ましい態様において、前記の繊維構造物を構成する単繊維の内部にシリコーン系化合物が含有されてなり、該シリコーン系化合物の分散径は0.1nm〜1000nmの範囲である。
本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物の好ましい態様において、前記のシリコーン系化合物はフェニル基を含有しており、好適なシリコーン系化合物はシリコーンレジンである。
本発明によれば、ポリエステル系繊維を主体としてなる繊維構造物において、燃焼時にドリップを抑制する難燃性の高い炭化型ポリエステル系繊維構造物を得ることができる。
本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物は、従来のポリエステル系繊維の難燃機構の着炎部分が溶融して落下する「ドリップ型」から、防炎加工を施した木綿や羊毛などの天然繊維のように着炎部分がドリップしない「炭化型」にすることで、着炎物や溶融物による延焼や火傷の危険性がないことから、衣料用途、産業用途、インテリア、カーテンおよび椅子張りなどに好適に用いることができる。
以下、本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物の最良の形態について詳細に説明する。
本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物は、ポリエステル系繊維を主体としてなる繊維構造物を構成する単繊維の表層部に炭化性樹脂と難燃剤を含むことを特徴とするものである。
本発明で用いられるポリエステル系繊維を構成するポリエステル系ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリテトレメチレンテレフタレートなどに代表されるジカルボン酸とジオールの縮合物である。
前記のジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルカルボン酸、ビス−(4−カルボキシフェニル)スルフォン、1,2−ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、1,2−ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、1,2−ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ジフェニルオキシド−p,p´−ジカルボン酸、p−フェニレンジ酢酸、ジフェニルオキシド−p,p´−ジカルボン酸、trans−ヘキサヒドロテレフタル酸およびそれらのアルキルエステル、アリールエステル、およびエチレングレコールエステルなどのエステル形成性誘導体が挙げられる。
また、前記のジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールや、ビスフェノールA、ビスフェノールSおよびそのエチレングリコール、ポリエチレングリコール付加体、ジエチレングリコール、およびポリエチレングリコールなどが挙げられる。
ポリエステル系ポリマーとしては、さらには非石油系ポリエステル系化合物であるポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸でもよい。
また、ポリエステル系ポリマーとしては、上記のジカルボン酸とジオールに、第三成分を共重合またはブレンドしても良い。第三成分としては、具体的にはイソフタル酸、イソフタル酸スルホネートおよびアジピン酸等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
本発明で用いられる繊維構造物は、前述のポリエステル系ポリマーからなるポリエステル系繊維を主体として構成されるが、ポリエステル系繊維以外の繊維として、綿、羊毛、麻およびシルクなどの天然繊維、アセテートやニトロセルロースなどの半合成繊維、レーヨンなどの再生繊維、ナイロン、ビニロン、アクリルおよびアラミドなどの合成繊維のうち少なくとも一つとポリエステル繊維を混紡または交撚、交織、交編などで含んでいても良い。本発明のポリエステル系繊維とポリエステル系繊維以外の繊維との混合割合は、好ましくは100:0〜5:95であるが、本発明の効果を阻害しなければ、特に限定されない。
また、本発明で用いられる繊維構造物の形態としては、織編物、不織布およびロープなどをいうが、これらの形態に限られるものではなく、衣料、寝具、壁紙、ならびに自動車、航空機、鉄道、および船舶などの内装材等や、ホテル、病院および画館などで使用されるインテリア材料に好適に用いられる。
本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物では、繊維構造物を構成する単繊維の表層部に難燃剤と炭化性樹脂とを有することを特徴とするものである。
本発明では、繊維構造物を構成する単繊維の表層部に難燃剤と炭化性樹脂とを有する。
単繊維の表層部とは、単繊維表面と単繊維の重心を結んだ長さの2分の1までの単繊維内部から外側の部分のことをいう。
表層部に難燃剤と炭化性樹脂が含有されているとは、単繊維表面と単繊維の重心を結んだ長さの2分の1までの単繊維内部から内側の部分よりも外側の部分、すなわち前述の表層部により多くの難燃剤と炭化性樹脂が含有されることをいう。
難燃剤や炭化性樹脂の含有量の測定は、繊維構造物を構成している単繊維断面をX線マイクロアナライザー(XMA)を用い、難燃剤中に含まれる難燃効果を発現させる元素である周期律表におけるハロゲン元素、Na、Kなどのアルカリ金属元素、Mg、Caなどのアルカリ土類金属元素、12族のZn、13族のB、Al、15族のN、P、Sbなどのシグナル面積、炭化性樹脂に含まれるN、Sなどのシグナル面積から測定でき、シグナル面積の割合から含有比率を求めればよい。
本発明で用いられる難燃剤とは、繊維構造物の難燃性を向上させるものをいう。難燃剤の作用機構としては、不燃性ガス発生、表面温度の低下、炭化層形成による熱の遮断および酸素の遮断などが挙げられるが、本発明ではこのような作用機構のうち、少なくともいずれかひとつを有する難燃剤を用いることができる。このような難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤および無機系難燃剤などが挙げられる。
具体的に、本発明において用いられる難燃剤としては、例えば、トリフェニルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルフォスフェート)、およびビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェート)などのようなリン酸エステル系、あるいはエチレンジメチルホスホン酸やベンゼンホスホン酸誘導体などのようなホスホン酸類のようなリン系化合物、臭素化ビスフェノール類、臭素化芳香族ジカルボン酸などのハロゲン系化合物、多臭素化ベンゼンおよびその誘導体、臭素化ビフェニル誘導体、リン酸あるいは亜リン酸エステル、ホスフィン誘導体など、また炭酸カルシウムや水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化第二錫、メタ錫酸、水酸化第一錫などの無機化合物、ヘキサブロモシクロドデカン、ハロゲン化フェニルグリシジルエーテル誘導体などのようなハロゲン系化合物、トリアリルフォスフェート、ビニルホスホン酸、リン酸エステル系、およびフォスファゼン系化合物などのリン系化合物などを使用することができるが、いずれの付与方法においても、これらの難燃剤に限定されるものではない。
本発明においては、環境への負荷を考慮するとハロゲン原子を含有しない難燃剤、いわゆる非ハロゲン系難燃剤を用いることが好ましい。かかる非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン酸エステル系やフォスファゼン系などのリン系難燃剤や、水酸化アルミニウム、および水酸化マグネシウムなどの無機系難燃剤が挙げられる。
本発明で用いられる炭化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。また、これらの炭化性樹脂は単独もしくは複数でも用いることが出来る。
また、本発明で用いられる炭化性樹脂は、難溶融性の点から、複素環を含有していることが好ましい。ここでいう複素環とは、環内に少なくとも2種類の異なる原子を含むものをいう。具体的な例としては、グアナミン樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられるが、これらに限るものではない。複素環を有することで燃焼時に炭化し易くなり、難溶融性が向上する。さらに、炭化性樹脂は、難燃性の点から、窒素を含有していることが好ましく、具体的にはグアナミン樹脂やメラミン樹脂等が挙げられるが、これらに限るものではない。
本発明で用いられる炭化性樹脂において、TG−DTA(示差熱熱重量同時測定器)分析において、昇温速度10℃/minで、空気雰囲気下の550℃の温度における炭化性樹脂の加熱残分量が20重量%以上100重量%以下であることが好ましい。
上記の条件は、TG−DTA分析において、空気雰囲気下、昇温速度10℃/minで、サンプル重量10mgで分析を行った場合のポリエステル系ポリマーの加熱残分量、すなわち、熱分解によりポリエステル系繊維の重量が0重量%になる温度条件のことである。
すなわち、本発明で用いられる炭化性樹脂は、ポリエステル系繊維を構成するポリエステル系ポリマーが、TG−DTA分析において、昇温速度10℃/minで、空気雰囲気下で加熱残分量が0重量%になる温度において、その炭化性樹脂の加熱残分量が20重量%以上100重量%以下であることが好ましい。
本発明で用いられる炭化性樹脂の繊維構造物への付着量は、難溶融効果を満たす付着量であればよく、炭化性樹脂の種類や付着状態によるが、風合いの点から、2重量%〜50重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは10重量%〜40重量%の範囲である。
また、本発明で用いられる前述の難燃剤の繊維構造物への付着量は、難燃効果を満たす付着量であればよく、難燃剤の種類や付着状態によるが、風合いの点から2重量%〜50重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくはは10重量%〜40重量%の範囲である。
また、該繊維構造物に含まれる難燃剤と炭化性樹脂の重量比は、10:90〜80:20の範囲が好ましく、さらに好ましくは20:80〜70:30の範囲である。重量比が10:90以下より小さくなると難燃性が低くなり、80:20以上より大きくなると難溶融性が低下する傾向を示す。
本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物においては、難溶融性と難燃性の観点から、さらに、繊維構造物を構成する単繊維の内部にシリコーン系化合物が含有されていることが好ましい。単繊維の内部にシリコーン系化合物が含有されるとは、シリコーン系化合物が単繊維の内部に存在することをいう。
本発明で用いられるシコーン系化合物とは有機ケイ素化合物のことであり、シロキサン結合とケイ素原子に結合する有機基を同一分子内に有している化合物のことである。シコーン系化合物としては、具体的には、シリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーンゴム、シランカップリング剤、およびシリコーンパウダー等が挙げられるが、シロキサン結合とケイ素原子に結合する有機基を同一分子内に有していればこの限りではない。これらのシリコーン系化合物は単独もしくは複数でも用いることができる。
シリコーン系化合物は、ポリエステル系繊維の燃焼時に発生する分解ガスの発生を抑制し、有毒ガスを発生することなく難燃性を向上させることができる。
また、本発明では、シリコーン系化合物の分散径が0.1nm〜1000nmの範囲であることが好ましく、シリコーン系化合物の分散径が1000nmを超えると難燃性、製糸性および力学特性の観点から不十分となる傾向がある。シリコーン系化合物の分散径は、難燃性、製糸性および力学特性の観点から、より好ましくは0.1nm〜800nmの範囲であり、さらに好ましくは0.1nm〜500nmの範囲である。
シリコーン系化合物の分散径は、TEM(透過型電子顕微鏡)により無作為に抽出した単繊維の断面写真を画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、シリコーン系化合物の円換算による直径を求め、それの単純な平均値により算出した。このとき、平均に用いるシリコーン系化合物の数は、同一断面内で無作為に抽出した10個を測定し、これを5カ所で行った。また単繊維は無作為抽出した10本で行っており、合計500個のシリコーン系化合物の分散径を分散径としている。
また、本発明においてシリコーン系化合物の添加量は、ポリエステル繊維とシリコーン系化合物の重量比が99.9:0.1〜70:30の範囲であることが好ましく、より好ましくは99.5:0.5〜80:20の範囲である。ポリエステル繊維とシリコーン系化合物の重量比が99.9:0.1未満であれば難溶融効果が低くなり、70:30を超えると力学特性の低下をまねく場合がある。
シリコーン系化合物の重量平均分子量は、分散性の観点から、好ましくは500〜500000の範囲であり、更に好ましくは1000〜100000の範囲である。
本発明では、シリコーン系化合物はフェニル基を含有しているシリコーン系化合物であることが好ましい。シリコーン系化合物にフェニル基が含有されることで難燃性を向上させることができ、また、フェニル基が含有されることでシリコーン系化合物の有機性が向上するため、ポリエステルとの分散性も向上させることができる。
フェニル基を含有するシリコーン系化合物の具体的な例としては、シリコーン系化合物の側鎖にフェニル基が導入されたアルキルフェニル系のシリコーン系化合物が挙げられる。
フェニル基の含有量としては難燃性や分散性の観点からシリコーン系化合物の末端有機基を除く側鎖有機基中のフェニル基の含有量が10mol%以上であることが好ましく、更に好ましくは30mol%以上であり、フェニル含有量が多い方が難溶融性の点で好ましく、最も好ましくは100mol%である。
また、本発明では、シリコーン系化合物がシリコーンレジンであることが好ましい。シリコーン系化合物は、RSiO0.5(M単位)、RSiO1.0(D単位)、RSiO1.5(T単位)、およびSiO2.0(Q単位)の4つの分岐単位の少なくともいずれかひとつから構成され、ここでいうシリコーンレジンは、T単位を含むシリコーン系化合物のことである。ただし、前記したRとは有機基のことである。シリコーン系化合物がT単位を含むことで、シリコーン系化合物の耐熱性が向上するため、難燃性の観点から好ましい態様である。
また、T単位の含有量としては、シリコーン系化合物の耐熱性の点から全体のシリコーン系化合物に対して10mol%以上であることが好ましく、更に好ましくは30mol%以上であり、T単位の含有量が多いほど好ましく、最も好ましくは100mol%である。
また、本発明で用いられるシリコーン系化合物は、末端基としてアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基およびアミノ基より選ばれた1種もしくは2種以上を含有していることが好ましい。ここでいう末端基とは、シロキサン鎖の末端官能基のことであり、なかでも分散性の観点から、アルキル基、アルコキシ基および水酸基が好ましく用いられる。
アルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基およびイソブチル基などが挙げられるが、この限りではない。また、アルコキシ基としては、メトキシ基やエトキシ基が挙げられるが、この限りではない。
次に、本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物の製造方法について詳細に説明する。
難燃剤を繊維構造物に付与する方法には、難燃剤をポリエステルの重合時に共重合させる方法、重合時あるいは紡糸前にブレンドする方法、ポリエステル繊維を形成した後に、難燃剤を後加工で付与したりする方法などが用いられるが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
また、炭化性樹脂を繊維構造物に付与する方法としては、ポリエステル繊維を形成した後に、炭化性樹脂を後加工で付与したりする方法が好適である。炭化性樹脂をポリエステル系繊維の単繊維の表層部に後加工により付与する方法としては、コーティング加工、パッド−ドライ加工およびパッド−スチーム加工などが挙げられるが、乾熱乾燥であるパッド−ドライ加工は単繊維表層の全体に存在させることが難しいので、単繊維の表層部の全体に存在させることができるという観点から、湿熱乾燥であるパッド−スチーム加工がより好ましい。
また、シリコーン系化合物をポリエステル系繊維の単繊維の内部に付与する方法としては、例えば、シリコーン系化合物をポリエステルの重合時に添加する方法、ポリエステルのチップとシリコーン系化合物を混練機で混練する方法、またはポリエステルの紡糸時にシリコーン系化合物を添加する方法などが挙げられるが、シリコーン系化合物をポリエステル系繊維内に付与することができればこれらに限定されない。
シリコーン系化合物を繊維内部に含有するポリエステル系繊維構造物の製造方法としては、通常の重合行程、製糸行程および延伸行程を採用することができる。また、特殊な行程でも良く、例えば、重合行程では固相重合や連続重合など、製糸行程では高速紡糸や複合紡糸など、延伸行程では製糸行程と延伸行程を連続で行う方法などでも採用することができる。
また、繊維構造物を構成する単繊維の繊維断面は、丸断面ばかりでなく、三角、四角、多角、扁平および中空断面などの異形断面も可能である。
また、本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物には、ヒンダートフェノール系、アミン系、ホスファイト系およびチオエステル系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系およびシアノアクリレート系などの紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、シアニン系、スチルベン系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリノン系およびキナクリドン系などの有機顔料、無機顔料、蛍光増白剤、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン等の粒子、抗菌剤および静電剤などの添加剤が含有されても良い。
また、本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物は、後加工による影響も受けないため様々な後加工もすることができる。例えば、浴中加工、吸尽加工、コーティング加工、パッド−ドライ加工およびパッド−スチーム加工などにより撥水性、親水性、制電性、消臭性、抗菌性および深色性などの機能を付与することができる。
本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物は、従来のポリエステル系繊維の難燃機構の着炎部分が溶融して落下する「ドリップ型」から、防炎加工を施した木綿や羊毛などの天然繊維のように着炎部分がドリップしない「炭化型」にすることで、着炎物や溶融物による延焼や火傷の危険性がないことから、衣料用途、産業用途、インテリア、カーテンおよび椅子張りなどに好適に用いることができる。
以下、実施例を用いて、本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物を更に具体的に説明する。実施例における各測定および評価は、次のとおり行った。
<XMAによる難燃剤の含有割合(シグナル面積比)の測定>
処理後の単繊維断面をXMAで観察し、単繊維断面の50%に相当する表層部、および、表層部より内部の難燃剤における難燃元素(リン系難燃剤の場合はリン原子)のシグナル面積から含有割合を算出した。
<炭化性樹脂の残分量測定>
・装置:示差熱熱重量同時測定器(セイコーインスツルメント製TG−DTA6200型)
・試料重量:10mg
・昇温速度:10℃/min
・温度範囲:室温〜1000℃
・雰囲気:空気。
<シリコーン系化合物の分散径の算出方法>
任意に単繊維を5箇所選択し、その単繊維の繊維軸と直角方向の断面積をTEMにより倍率1000倍〜500000倍の範囲でシリコーン系化合物の分散径が観察できる倍率で観察し、観察されたシリコーン系化合物の縦方向の最大径Yと横方向の最大径の平均値を分散径として算出した。使用装置や条件等は次のとおりである。
・装置:透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)
・測定条件:加速電圧100kV
・試料調製:超薄切片法
・切断方向:横断(繊維断面方向)
・測定倍率:1000倍〜500000倍。
<燃焼試験>
JIS L−1091D法(コイル法)(1999年度版)に基づき、接炎回数(回)とドリップの個数(個)を評価すると共に、JIS L−1091A−4法(垂直法)(1999年度版)に基づき、残炎時間(s)、残じん時間(s)および炭化面積(cm)を評価した。
実施例と比較例で用いたポリエステル系チップを表1に示す。
Figure 2005264417
実施例で用いたシリコーン系化合物を表2に示す。
Figure 2005264417
実施例と比較例で用いた難燃剤を表3に示す。
Figure 2005264417
実施例と比較例で用いた炭化性樹脂を表4に示す。
Figure 2005264417
(実施例1)
2軸押し出し機で表1のポリエステル系チップAに表2のシリコーン系化合物fを5重量%の添加量で配合し、マスターチップを作製した。次に、このマスターチップを用いて、紡糸温度290℃、紡糸速度1250m/min、口金口径0.23μm−6H(ホール)の条件で紡糸を行い、次いで延伸倍率3.3倍の条件で延伸を行い延伸糸を得た。次いで得られた延伸糸を合糸して96Dtex−24フィラメントにした後、筒編み組織の編物を編成した。このとき、シリコーン系化合物fの分散径は18nmであり、優れた分散特性を有していた。
次いで、固形分換算で、表4の炭化性樹脂a:20重量%と、表4の難燃剤A:10重量%と、触媒として過硫酸アンモニウムと浸透剤としてポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを各々0.3重量%を含有する30.6重量%水溶液を調製し、次いでこの水溶液に前記の編物を含浸した後、マングルを用いて水溶液の付着量を調整し、水溶液の編物に対するピックアップ率を100重量%とした。引き続き、水溶液処理した編物を、乾燥させることなく110℃の温度の加熱水蒸気を用いて3分間の湿熱処理を行った。湿熱処理後、織物を50℃の温度で1時間乾燥した。燃焼試験により編物の難燃性を評価した。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数:5以上(回)、ドリップ個数:0(個)、JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間:1(s)、残じん時間:1(s)、炭化面積:18(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例2〜8)
炭化性樹脂aを表4の炭化性樹脂b〜hにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数は全て5以上(回)であり、ドリップ個数は全て0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間は全て1(s)であり、残じん時間は1〜2(s)、炭化面積は17〜25(cm)であり、全ての実施例において優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例9)
表2のシリコーン系化合物fの添加量を2.5重量%にしたこと以外は、実施例1と同様に行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数:5以上(回)、ドリップ個数:0(個)、JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間:1(s)、残じん時間:1(s)、炭化面積:16(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。このとき、シリコーン系化合物fの添加量が少ないため、難燃性能を満たすために炭化性樹脂aの付着量が若干多くなった。結果を表5〜10に示す。
(実施例10)
表2のシリコーン系化合物fの添加量を5重量%にしたこと以外は、実施例1と同様に行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数:5以上(回)、ドリップ個数:0(個)、JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間:1(s)、残じん時間:2(s)、炭化面積:24(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有しており、シリコーン系化合物fの添加量が多いため、炭化性樹脂aの付着量が少なくても高い難燃性能を示した。結果を表5〜10に示す。
(実施例11〜14)
表3の難燃剤Aを表3の難燃剤Bに変更すると共に、表4の炭化性樹脂a、e、f、hを各々用いて30.6重量%水分散液にしたこと以外は、実施例1と同様に行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数は全て5以上(回)であり、ドリップ個数は全て0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間は全て1(s)であり、残じん時間は1(s)、炭化面積は18〜38(cm)であり、全ての実施例において優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例15〜17)
表3の難燃剤Aを表3の難燃剤Cに変更すると共に、表4の炭化性樹脂e、f、hを各々用いて30.6重量%水分散液にしたこと以外は、実施例1と同様に行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数は全て5以上(回)であり、ドリップ個数は全て0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間は全て1(s)であり、残じん時間は1〜2(s)、炭化面積は21〜29(cm)であり、全ての実施例において優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例18〜20)
表3の難燃剤Aを表3の難燃剤Dに変更すると共に、表4の炭化性樹脂c、d、gを各々用いて30.6重量%水分散液にしたこと以外は、実施例1と同様に行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数は4〜5以上(回)であり、ドリップ個数は全て0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間は1〜2(s)であり、残じん時間は1〜2(s)、炭化面積は21〜29(cm)であり、全ての実施例において優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例21)
表3の難燃剤Aの代わりに表3の難燃剤Eを用いると共に、難燃剤添加量を30重量%に変更して50.6重量%水分散液にしたこと以外は実施例1と同様に行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数は各々4,5以上(回)であり、ドリップ個数は両水準ともに0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間は2(s)であり、残じん時間は2(s)、炭化面積は各々14(cm)であり、全ての実施例において優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例22)
表3の難燃剤Aの代わりに表3の難燃剤Fを各々用いると共に、難燃剤添加量を30重量%に変更して50.6重量%水分散液にしたこと以外は実施例1と同様に行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数は各々4,5以上(回)であり、ドリップ個数は両水準ともに0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間は各々1(s)であり、残じん時間は各々1(s)、炭化面積は各々39(cm)であり、全ての実施例において優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例23)
実施例1で編成した筒編み組織の編物を、表4の炭化性樹脂a:20重量%と、表3の難燃剤A:20重量%と、触媒として過硫酸アンモニウムと浸透剤としてポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを各々0.3重量%を含有する40.6重量%水溶液を調製し、次いでこの水溶液に前記の編物を含浸した後、マングルを用いて水溶液の付着量を調整し、水溶液の編物に対するピックアップ率を100重量%とした。引き続き、水溶液処理した編物を、110℃の温度に加熱しているテンターにて3分間乾燥させた。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数5以上(回)、ドリップ個数0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間1(s)、残じん時間2(s)、炭化面積28(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例24)
表1のポリエステル系チップBを用い、混練温度と紡糸温度を265℃とし、紡糸速度1500m/min、口金口径を0.23mm−24H、延伸温度80℃、延伸倍率を2.1倍に変更したこと以外は、実施例1と同様に行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数は5以上(回)であり、ドリップ個数も0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間は1(s)であり、残じん時間は1(s)、炭化面積は25(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例25)
表1のポリエステル系チップCを用い、混練温度と紡糸温度を265℃とし、紡糸速度2000m/min、口金口径0.30mm−24H、延伸温度80℃、延伸倍率2.1倍に変更したこと以外は、実施例1と同様に行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数は全て5以上(回)であり、ドリップ個数も0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間は1(s)であり、残じん時間は1(s)、炭化面積は27(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例26)
L−ラクチドに対しオクチル酸錫を150ppm混合し、撹拌装置付きの反応容器中で窒素雰囲気中で192℃の温度で10分間重合し、更に二軸押し出し機にてチップ化した後、140℃の温度の窒素雰囲気中で固相重合して、重量平均分子量15.1万のポリ−L−乳酸ポリマーであるチップDを得た後、混練温度を210℃、乾燥温度を100℃で12時間、紡糸温度を210℃、紡糸速度3000m/min、口金口径0.30mm−18H、延伸温度90℃、延伸倍率1.6倍に変更したこと以外は、実施例1と同様に行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数5(回)であり、ドリップ個数も0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間1(s)であり、残じん時間1(s)、炭化面積17(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例27〜30)
表2のシリコーン系化合物fを表2のシリコーン系化合物gに変更すると共に、表4の炭化性樹脂a、e、f、hを各々用いたこと以外は実施例1と同様に行った。このときのシリコーン系化合物gの分散径は32nmであり、優れた分散性を有していた。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数は全て5以上(回)であり、ドリップ個数も全て0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間は全て1(s)であり、残じん時間は1〜2(s)、炭化面積は18〜33(cm)であり、全ての実施例において優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例31)
表2のシリコーン系化合物fを表2のシリコーン系化合物gに変更すると共に、表3の難燃剤Dを用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数は4(回)であり、ドリップ個数も0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間は2(s)であり、残じん時間は1(s)、炭化面積は24(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例32)
シリコーン系化合物を使用せず、表3の難燃剤Aの添加量を25重量%にしたこと以外は、実施例1と同様に行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数:4(回)、ドリップ個数:0(個)と合格するものの、実施例1と比較すると接炎回数が少なくなった。であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間は2(s)であり、残じん時間は8(s)、炭化面積は41(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有するものの、実施例1と比較すると劣るものであった。結果を表5〜10に示す。
(実施例33〜40)
表2のシリコーン系化合物fを表2のシリコーン系化合物aに変更すると共に、表4の炭化性樹脂a〜hを各々20重量%用いて、表3の難燃剤Aを20重量%にしたこと以外は、実施例1と同様に行った。このときのシリコーン系化合物aの分散径は100nmであり、優れた分散性を有していた。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数は全て5以上(回)であり、ドリップ個数も全て0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間は全て1(s)であり、残じん時間は1〜2(s)、炭化面積は17〜29(cm)であり、全ての実施例において優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例41〜43)
表2のシリコーン系化合物fを表2のシリコーン系化合物aに変更すると共に、表3の難燃剤B〜Dを各々用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。このときのシリコーン系化合物aの分散径は100nmであり、優れた分散性を有していた。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数は全て5以上(回)であり、ドリップ個数も全て0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間は全て1(s)であり、残じん時間は1〜2(s)、炭化面積は16〜24(cm)であり、全ての実施例において優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例44)
表3の難燃剤Bの代わりに表3の難燃剤Eを用い、難燃剤添加量を30重量%にしたこと以外は、実施例41と同様に行った。このときのシリコーン系化合物aの分散径は100nmであり、優れた分散性を有していた。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数は5以上(回)であり、ドリップ個数も全て0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間は1(s)であり、残じん時間は2(s)、炭化面積は24(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例45)
実施例32において、表2のシリコーン系化合物aを2.5重量%添加すると共に、表3の難燃剤Aの添加量を30重量%にしたこと以外は、実施例32と同様に行った。このときのシリコーン系化合物aの分散径は82nmであり、優れた分散性を有していた。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数:5以上(回)、ドリップ個数:0(個)、JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間:1(s)、残じん時間:2(s)、炭化面積:22(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。ただ、シリコーン系化合物の添加量が少ないため、難燃性能を満たすために炭化性樹脂の付着量が若干多くなった。結果を表5〜10に示す。
(実施例46)
実施例32において、表2のシリコーン系化合物aを5重量%添加すると共に、表3の難燃剤Aの添加量を20重量%にしたこと以外は、実施例32と同様に行った。このときのシリコーン系化合物aの分散径は91nmであり、優れた分散性を有していた。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数:5以上(回)、ドリップ個数:0(個)、JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間:1(s)、残じん時間:1(s)、炭化面積:29(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。ただ、シリコーン系化合物aの添加量が少ないため、難燃性能を満たすために炭化性樹脂aの付着量が若干多くなった。結果を表5〜10に示す。
(実施例47〜51)
実施例32において、表2のシリコーン系化合物 b〜eおよびhを各々10重量%用いたこと以外は、実施例32と同様に行った。このときのシリコーン系化合物b〜eおよびhの分散径は、各々200、500、800、100、900nmであり、優れた分散性を有していた。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数:4〜5以上(回)、ドリップ個数:0(個)、JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間:1〜2(s)、残じん時間:1〜3(s)、炭化面積:12〜29(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例52)
精練された45番手の木綿/ポリエステル混紡糸(55/45重量%)からなる平織物(経密度70本/inch、緯密度70本/inch、目付110g/m)を表4の炭化性樹脂a:5重量%と、表3の難燃剤A:20重量%と、触媒として過硫酸アンモニウムと浸透剤としてポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを各々0.3重量%を含有する25.6重量%水溶液を調製し、次いでこの水溶液に前記の編物を含浸した後、マングルを用いて水溶液の付着量を調整し、水溶液の編物に対するピックアップ率を100重量%とした。引き続き、水溶液処理した編物を、110℃の温度に加熱しているテンターにて3分間乾燥させた。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数5以上(回)、ドリップ個数0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間0(s)、残じん時間2(s)、炭化面積24(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(実施例53)
実施例22において、表4の炭化性樹脂a:5重量%と、表3の難燃剤F:50重量%にしたこと以外は、実施例22と同様に行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数5以上(回)、ドリップ個数0(個)であった。JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間0(s)、残じん時間2(s)、炭化面積29(cm)であり、優れた自己消火性とノンドリップ性を有していた。結果を表5〜10に示す。
(比較例1〜4)
表1のポリエステル系チップA〜Dを用い、シリコーン系化合物を使用せずに、各々製糸し編成した筒編み組織の編物を、難燃剤と炭化性樹脂で処理することなく、燃焼試験により難燃性を評価した。JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数:2〜4(回)、ドリップ個数:8〜10(個)、JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間:4〜8(s)、残じん時間:2〜5(s)、炭化面積:6〜10(cm)であり、難燃特性は低かった。結果を表5〜10に示す。
(比較例5)
表1のポリエステル系チップAを用い、シリコーン系化合物を使用せずに、製糸し編成して筒編み組織の編物を得た。次いで、表3の難燃剤Aの35重量%水溶液に前記編物を含浸し、140℃の温度で乾熱処理を行った。燃焼試験により難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数:2(回)、ドリップ個数:18(個)、JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間:2(s)、残じん時間:1(s)、炭化面積:11(cm)であり、ドリップによる自己消火性が観察され、難溶融性は低かった。結果を表5〜10に示す。
(比較例6)
表1のポリエステル系チップAを用い、シリコーン系化合物を使用せずに、製糸し編成して筒編み組織の編物を得た。次いで、表4の炭化性樹脂aの30重量%水溶液に前記編物を含浸し、110℃の温度で湿熱処理を行った。燃焼試験により得られた編物の難燃性を評価した結果、JIS L−1091D法(コイル法)では、接炎回数:2(回)、ドリップ個数:3(個)、JIS L−1091A−4法(垂直法)では、残炎時間:9(s)、残じん時間:4(s)、炭化面積:48(cm)であり、難燃性は低かった。結果を表5〜10に示す。
Figure 2005264417
Figure 2005264417
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Figure 2005264417
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本発明の炭化型ポリエステル系繊維構造物は、自己消火性およびノンドリップ性が大幅に改善されているため、難燃素材として衣料用途、産業用途、インテリア、カーテンおよび椅子張りなどに好適に用いることができ有用である。

Claims (6)

  1. ポリエステル系繊維を主体としてなる繊維構造物において、該繊維構造物を構成する単繊維の表層部に難燃剤と炭化性樹脂とを有することを特徴とする炭化型ポリエステル系繊維構造物。
  2. TG−DTA分析において、昇温速度10℃/minで、空気雰囲気下の550℃の温度における炭化性樹脂の加熱残分量が20重量%以上100重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の炭化型ポリエステル系繊維構造物。
  3. ポリエステル系繊維を構成するポリエステル系ポリマーが、TG−DTA分析において、昇温速度10℃/minで、空気雰囲気下で加熱残分量が0重量%になる温度において、炭化性樹脂の加熱残分量が20重量%以上100重量%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の炭化型ポリエステル系繊維構造物。
  4. 繊維構造物を構成する単繊維の内部にシリコーン系化合物が含有されてなり、該シリコーン系化合物の分散径が0.1nm〜1000nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の炭化型ポリエステル系繊維構造物。
  5. シリコーン系化合物が、フェニル基を含有していることを特徴とする請求項4記載の炭化型ポリエステル系繊維構造物。
  6. シリコーン系化合物が、シリコーンレジンであることを特徴とする請求項4または5記載の炭化型ポリエステル系繊維構造物。
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