JP2007186780A - 高疲労強度を有するマルエージング鋼ならびにそれを用いたマルエージング鋼帯 - Google Patents

高疲労強度を有するマルエージング鋼ならびにそれを用いたマルエージング鋼帯 Download PDF

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Abstract

【課題】 高サイクル域での疲労破壊の起点となるTiNを低減すると共に、窒化処理を容易にして表面硬度を高め、かつ表面窒化層の圧縮残留応力を大きくして曲げ疲労強度を向上させ、さらに高い強度、延性を確保するために旧オーステナイト結晶粒を微細化した、窒化性、溶接性の良好な高疲労強度を有するマルエージング鋼を提供する。
【解決手段】 質量%でC:0.01%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.1%以下、P:0.01%以下、S:0.005%以下、Ni:17.0〜22.0%、Cr:0.1〜4.0%、Mo:3.0〜7.0%、Co:10.0%を超え20.0%以下、Ti:0.05%以下、Al:0.1%未満、Al+Ti:0.1%未満、N:0.03%以下、O:0.005%以下、B:0.01%以下(0は含まない)、Co/3+Mo:8.0〜15.0%、残部はFe及び不可避的不純物からなる高疲労強度を有するマルエージング鋼。
【選択図】 なし

Description

本発明は、自動車用無段変速機等に使用される動力伝達用ベルトのリング製品のような高疲労強度が要求される部材に使用されるのに適した高疲労強度を有するマルエージング鋼及びそれを用いたマルエージング鋼帯に関するものである。
マルエージング鋼は、2000MPa前後の非常に高い引張強さをもつため、高強度が要求される部材、例えば、ロケット用部品、遠心分離機部品、航空機部品、自動車エンジンの無段変速機用部品、金型等種々の用途に使用されている。その代表的な組成には、18%Ni−8%Co−5%Mo−0.4%Ti−0.1%Al−bal.Feが挙げられる。
そして、マルエージング鋼は、強化元素として、Co、Mo、Tiを適量含んでおり、時効処理を行うことによって、NiMo、NiTi、FeMo等の金属間化合物を析出させて高強度を得ることのできる鋼である。また、特に自動車エンジンの無段変速機用部品に使用される鋼帯においては、特に高サイクル域での疲労強度が重要な要求特性であるため、高強度を有するマルエージング鋼の内部に存在するTiN等の非金属介在物をできるだけ微細化することが必要とされ、また、表面に窒化処理を施して窒化層を形成させて疲労強度を向上させて使用されている。
自動車エンジンの無段変速機用部品の分野では、非金属介在物を起点とする疲労強度低下を解決することを目的とした改良合金が提案されている。(例えば、特許文献1、2、3参照。)。
特表2004−514056号公報 特開2001−240943号公報 特開2002−167652号公報
上述した特表2004−514056号公報に開示される合金は、非金属介在物を形成するTiを0.1%以下に低減しているため、疲労破壊の起点となるTiNの微細化の点では有利であるものの、単純に非金属介在物を形成する元素の添加を抑制している合金のため窒化処理がし難いという問題があった。
また、特開2001−240943号公報に開示される合金もTiを低減しているため、疲労破壊の起点となるTiNの微細化の点では有利であるが、強化元素の一つであるCoを低く抑えているため、高い引張強度を確保し難く、引張強度を確保するためにSi、Mnを添加しているが、このために靭性が低下する可能性があった。
また、特開2002−167652号公報に開示される合金もTiを低減しているため、疲労破壊の起点となるTiNの微細化の点では有利であるが、Cを積極添加して高強度化を図っているため、Cr、Mo等の炭化物が析出し、これが疲労破壊の起点となって疲労強度が低下したり、また積極添加したCによって無断変速機部品に必要とされる溶接性が低下する可能性がある。
本発明の目的は、高サイクル域での疲労破壊の起点となるTiNを低減すると共に、窒化処理を容易にして表面硬度を高め、かつ表面窒化層の圧縮残留応力を大きくして曲げ疲労強度を向上させ、さらに高い強度、延性を確保するために旧オーステナイト結晶粒を微細化した、窒化性、溶接性の良好な高疲労強度を有するマルエージング鋼を提供することである。
本発明者は、疲労強度向上に有害な介在物TiN低減のためにTi、Nを共に低く抑え、Ti低下による強度低下をCo、Mo量のみの増加とCo/3+Mo+4Alの値を適正範囲に限定することによって補うことができることを見出した。また、引張強度、延性、疲労強度を向上させるため、結晶粒微細化が有効であるが、これをBの微量添加することによって解決できることを見出した。
また、更に本発明者は、Ti低下による窒化処理のし難さを解決するためにCrを適量添加することによって窒化による表面圧縮残留応力の絶対値を増加させることができることを見出し、またCを不純物レベルに抑えることで溶接性を確保して、本発明に到ったものである。
即ち本発明は、質量%でC:0.01%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.1%以下、P:0.01%以下、S:0.005%以下、Ni:17.0〜22.0%、Cr:0.1〜4.0%、Mo:3.0〜7.0%、Co:10.0%を超え20.0%以下、Ti:0.05%以下、Al:0.1%未満、Al+Ti:0.1%未満、N:0.03%以下、O:0.005%以下、B:0.01%以下(0は含まない)、Co/3+Mo:8.0〜15.0%、残部はFe及び不可避的不純物からなる高疲労強度を有するマルエージング鋼である。
本発明においては、上記の組成に加えて、更に、質量%でCa:0.01%以下、Mg:0.005%以下の1種以上を含有することができる。
好ましくは結晶粒度がASTM No.で10以上の細粒であるマルエージング鋼である。また、これらのマルエージング鋼の表面に窒化層が形成され、且つ表面に圧縮残留応力を付与したことを特徴とするマルエージング鋼帯である。
本発明のマルエージング鋼は、疲労破壊の起点となるTiNを低減でき、高強度と窒化処理後の表面の高硬度及び大きな圧縮残留応力を得ることができることから、自動車用無段変速機等に使用される動力伝達用ベルトのリング製品のような高疲労強度が要求される部材に使用されると、長い疲労寿命を有することができる等、工業上顕著な効果をもつことが期待される。
本発明は、上述の新規な知見に基づいてなされたものであり、以下に本発明における各元素の作用について述べる。
本発明のマルエージング鋼において、以下の範囲で各化学組成を規定した理由は以下の通りである。なお、特に記載のない限り質量%として記す。
Cは、Moと炭化物を形成して、析出すべき金属間化合物を減少させて強度を低下させるため、低く抑える必要がある。また、Cを積極添加すると、例えば無断変速機部品に必要とされる溶接性が低下する危険性が高くなる。このような理由からCは0.01%以下とした。好ましくは、0.008%以下である。
Siは、時効処理時に析出する金属間化合物を微細化したり、Niとともに金属間化合物を形成したりすることでTi低下による強度低下分を補うことができる元素であるが、靭性を低下させる惧れがあることから、靭性、延性を確保するために、本発明においては低く抑える必要がある。0.1%を超えて添加すると靭性、延性が低下することから、Siは0.1%以下とした。靭性、延性の確保をより確実に行うための好ましい範囲は0.05%以下である。
Mnは、時効処理時にNiと共に金属間化合物を形成し、時効硬化に寄与する元素であることから、Ti低下による強度低下分を補うためことができる元素であるが、靭性を低下させる惧れがあることから、靭性、延性を確保するために、本発明においては低く抑える必要がある。0.1%を超えて添加すると靭性、延性が低下することから、Mnは0.1%以下とした。靭性、延性の確保をより確実に行うための好ましい範囲は0.05%以下である。
P、Sは、旧オーステナイト粒界に偏析したり、介在物を形成したりすることで、マルエージング鋼を脆化させ、疲労強度を低下させる有害な元素であるため、Pは0.01%以下、Sは0.005%以下とした。好ましくは、Pについては0.005%以下、Sについては0.004%以下の範囲である。
Crは窒化を行う場合にNとの親和力が強く、窒化深さを浅くし、窒化硬さを高めたり、窒化表面の圧縮残留応力を増加させたりする元素であるため、必須で添加する。しかし、0.1%より少ないと効果がなく、一方、4.0%を越えて添加してもより一層の向上効果がみられず、また、時効後の強度が大きく低下することから、Crは0.1〜4.0%とした。Crの好ましい下限は0.2%である。
Niは、マルエージング鋼の基地組織である低Cマルテンサイト組織を安定して形成させるため、少なくとも17.0%は必要であるが、22.0%を超えるとオーステナイト組織が安定化し、マルテンサイト変態を起こし難くなることから、Niは17.0〜22.0%とした。Niの好ましい範囲は18.0%を超え22.0%以下である。
Moは、時効処理時にNiMo、FeMo等の微細な金属間化合物を形成し、析出強化に寄与する重要な元素である。また、Moは窒化による表面の硬さ及び圧縮残留応力を大きくするために有効な元素である。このためのMoは、3.0%より少ないと引張強度が不十分であり、一方、7.0%より多いとFe、Moを主要元素とする粗大な金属間化合物を形成しやすくなるため、Moは3.0〜7.0%とした。Moの好ましい範囲は、5.0%を超え7.0%以下である。
Coは、マトリックスのマルテンサイト組織の安定性に大きく影響することなく、固溶化処理温度でMo、Al等の時効析出物形成元素の固溶度を増加させ、時効析出温度域でのMo、Alの固溶度を低下させることによってMo、Alを含む微細な金属間化合物の析出を促進し、時効析出強化に寄与する重要な元素であり、強度面、靭性面から多く添加することが必要である。Coは、10.0%以下ではSi、Mn、Ti、Alを低減したマルエージング鋼では十分な強度が得られ難く、一方20.0%を超えて添加するとオーステナイトが安定化するため、マルテンサイト組織が得られ難くなることから、10.0%を超え20.0%以下とした。好ましいCoの範囲は12.0%を超え20.0%以下である。
Tiは、本来、マルエージング鋼における重要な強化元素の一つであるが、同時に介在物であるTiNまたはTi(C、N)を形成して、特に超高サイクル域での疲労強度を低下させる有害元素でもあるので、疲労強度を重視する場合には、不純物として低く抑える必要がある。
また、Tiは表面に薄くて安定な酸化膜を形成し易く、この酸化膜が形成されると窒化反応を阻害するため、十分な窒化表面の圧縮残留応力が得られ難くなる。窒化を容易に行うために、また窒化後の表面の圧縮残留応力を大きくするために、Tiは有害な不純物元素であり、低く抑える必要がある。
Tiは、0.05%より多いとTiNまたはTi(C、N)の低減に十分な効果が得られず、また安定な酸化膜を表面に形成し易くなることから、Tiは0.05%以下とした。望ましくは0.01%以下が良い。
Alは、通常、脱酸のために少量添加されるが、本来、時効処理時にNiと共に金属間化合物を形成して強化に寄与する元素であるので、添加すると強度を向上させることができる。しかし、一方で酸素、窒素と結びついて非金属介在物を形成し、疲労強度を低下させる惧れがあり、疲労強度を重視する場合は低く抑える必要がある。Alは0.1%以上添加するとAlN、Al介在物を形成して疲労強度を低下させることから、Alは0.1%未満とした。Alの好ましい範囲は0.05%以下である。
また、Al、Tiは共に非金属介在物を形成する元素であることから、Al+Tiの総量を低く抑えることが疲労強度向上に有効であるので、Al+Tiを0.1%以下とする。Al+Tiの好ましい範囲は0.07%以下である。
Co、Mo及びTiは、共にマルエージング鋼における主要な強化元素でありマルエージング鋼の時効強化に寄与する元素である。Tiを低く抑えると、Tiによる強度の低下分をCo、Moの添加量を増すことによって補う必要がある。しかし、その各元素の強化への寄与は同じではなく、Coによる強化分はMoによる強化分のそれぞれ1/3及び4倍である。
したがって、Co、Moによる強化はCo/3+Moで整理できる。質量%でCo/3+Moの値が8.0%より少ないと強度が十分でなく、一方、15.0%を超えると強度が高くなりすぎ、靭性低下の惧れがあることから、Co/3+Moは、8.0〜15.0%とした。好ましいCo/3+Moの範囲は、10.0〜15.0%である。
Nは、Tiと結合してTiNまたはTi(C、N)の介在物を形成して、特に超高サイクル域での疲労強度を低下させる不純物元素である。Tiを含むマルエージング鋼では、粗大なTiNまたはTi(C、N)の形成を防ぐため、Nを大幅に低く抑える必要がある。しかし、Tiを殆ど含まないマルエージング鋼ではNは通常の真空溶解で混入する量でも悪影響が少ないことから、0.03%以下とした。望ましくは、0.01%以下が良い。更に望ましくは、0.005%以下が良い。
Oは、酸化物系介在物を形成して靭性、疲労強度を低下させる不純物元素であるので、0.005%以下に制限した。望ましくは、0.003%以下が良い。
Bは、冷間加工後に固溶化処理を行ったときの旧オーステナイト結晶粒を微細化して強化に寄与すると共に表面肌荒れを抑制する効果をもつ元素であり、必須添加する。Bが0.01%より多いと靭性が低下することから、Bは0.01%以下(0%は含まず)とした。望ましくは、0.005%以下(0%は含まず)が良い。旧オーステナイト結晶粒をより確実に微細化できる好ましいBの下限は0.0002%であり、更に好ましい下限は0.0003%である。
本発明においては、Ca:0.01%以下、Mg:0.005%以下の1種以上を含有することができる。本発明の用途の中には、表面欠陥を起点として疲労破壊と原因となる自動車エンジンの無段変速機用部品がある。
本発明のマルエージング鋼は、真空誘導溶解または、真空誘導溶解の後、さらに真空アーク再溶解あるいはエレクトロスラグ再溶解を行なう等の真空雰囲気中での溶解によってインゴットを製造することができる。本発明の組成の合金は極力非金属介在物が形成されないような元素の範囲としているが、これら真空雰囲気中での溶解を行なっても、完全に非金属介在物を無くすことは技術的に困難である。
中でも、例えば25μmを超えるような粗大で硬質なAl介在物が形成する可能性や、Alがクラスター化したりする可能性がある。Al介在物は硬質・高融点であり、例えば熱間塑性加工中でも殆ど変形することがない。そのため、例えば冷間圧延時のロールに疵を発生させてマルエージング鋼の表面欠陥を生じる可能性が有る。そのため、Al介在物を複合介在物として、硬さを低下させたり、融点を下げたりするのが良い。また、それと同時にクラスター化を防止できる元素を添加して、介在物欠陥を防止するのが好ましい。
Al介在物を複合介在物とするのに有効な元素としては、Si、Mn、Ca、Mgが挙げられるが、本発明ではSi,Mnは靭性と延性を低下させる元素として、添加量を規制する。そのためSi,Mn以外のCa、Mgの1種以上を添加することで、Al介在物を複合介在物とするのが良い。また、Ca、MgにはAl介在物のクラスター化を防止する効果もある。そのため、本発明においては、Ca:0.01%以下、Mg:0.005%以下の1種以上を含有するとした。
なお、このCaとMgの効果を確実に得るには、Caは0.001%、Mgは0.0001%を下限とすると良い。
以上、説明する元素以外は、Fe及び不可避的不純物とする。
なお、以下の元素は、下記の範囲であれば、脱酸、脱硫等の目的で添加しても良い。
Zr≦0.01%
本発明のマルエージング鋼は、10%以上の冷間加工後、組成に応じた適当な温度、例えば780〜1000℃程度の温度で固溶化処理することによって旧オーステナイト結晶粒(ここで、マルエージング鋼の場合、結晶粒とは旧オーステナイト結晶粒を指す)をASTM No.10以上に細粒化することができる。本発明のマルエージング鋼では、結晶粒を細粒化することにより、硬さ、引張強度、疲労強度、衝撃靭性等を安定して高めにすることができたり、鋼帯においては表面肌荒れを軽微にすることができるなどの効果が期待できる。
また、本発明のマルエージング鋼は、窒化を阻害する可能性のある安定な酸化膜を表面に形成するTiをほとんど含まないため、通常のガス窒化、ガス軟窒化、浸硫窒化、イオン窒化、塩浴窒化、等の種々の窒化処理が容易にできる。また、窒化硬さや窒化層の圧縮残留応力の絶対値を高める効果のあるCrを含むため、Tiを含まないマルエージング鋼では低下し易い窒化層の圧縮残留応力の絶対値を高めることができる。
また、上述の本発明で規定する化学組成範囲内に調整されたマルエージング鋼を、例えば自動車エンジンの無段変速機用部品に適用できるように、帯状に形成し、本マルエージング鋼帯に適当な条件で窒化処理を行うと、窒化物をほとんど形成することなく表面に20〜40μm程度の薄い窒化層を形成でき、表面に大きな圧縮残留応力を付与でき、十分な疲労強度を得ることができる。十分高い疲労強度を得るためには、窒化処理後の表面圧縮残留応力が1050MPa以上であることが好ましく、より好ましくは1100MPa以上が良い。
なお、表面の圧縮残留応力は高い方が好ましいが、そのコントロールは窒化層の厚みを適宜調整することで可能である。
本発明のマルエージング鋼は、高引張強度、高疲労強度を有し、窒化も容易であることから自動車エンジンの無段変速機用部品のリング製品に好適である。
以下の実施例で本発明を更に詳しく説明する。
本発明鋼及び比較鋼を真空誘導溶解炉で溶解し、10kgのインゴットを作製し、均質化焼鈍を実施後、熱間鍛造した。さらに熱間圧延、冷間圧延によって約0.3mm厚さの鋼帯を作製した。その後、820℃で固溶化処理を行ない、更に490℃で時効処理を行なった後に、450〜470℃において窒化深さが20〜40μmとなるような条件でガス軟窒化を行った。
表1に本発明鋼No.1〜6、従来鋼及び比較鋼No.21〜22の化学組成を示す。ここで、比較鋼No.21はTiを含む従来鋼、比較鋼No.22はTiを含まず、かつCr、Alを無添加としたマルエージング鋼である。何れのマルエージング鋼もCを0.01%以下の範囲に調整して、溶接性の低下を防止しした。また、本発明鋼No.5,No.6はMgを添加した。Mg含有量はNo.5が7ppm、No.6が12ppmであった。
また、表2に各試料を時効した後の旧オーステナイト結晶粒度、引張強さ、窒化処理後の内部硬さ、表面硬さ、及び窒化処理後の表面の残留応力を示す。ここで、表2中の残留応力の符号は、+が引張、−が圧縮を表しており、全て圧縮残留応力である。
なお、表には示さないが、上記の本発明鋼及び比較鋼の断面にて、電子顕微鏡とエックス線分析装置を用いて、微細介在物の観察、分析を行い、比較鋼No.21を除いた全ての試験片でTiNやTi(C、N)の介在物の量が極めて少ない量であったことを確認した。
また、本発明鋼No.5,No.6については、1000倍で10視野の電子顕微鏡による断面観察を行ったが、Al介在物は観察できなかった。
Figure 2007186780
Figure 2007186780
表2より、本発明鋼No.1〜6は何れも時効後の引張強さが1700MPa以上であり、マルエージング鋼として十分な強度をもっている。また、窒化後においても高い内部硬さ、表面硬さと大きな表面圧縮残留応力を有することが分り、Tiを含むマルエージング鋼である従来鋼No.21と比較しても同等以上の特性を有していることが分かる。
また、本発明鋼No.1〜6はBを添加した効果により旧オーステナイト結晶粒度がASTM No.10以上の細粒を維持している。
一方、Tiを無添加とし、かつCrを添加しない比較鋼No.22は、時効後の引張強さ、窒化後の内部硬さ、表面硬さ、表面圧縮残留応力が本発明鋼に比べて低い。また、Bを含まないため、結晶粒がやや粗い結果となった。
このように、本発明鋼は、従来のマルエージング鋼よりTiN介在物が極めて少なく、高引張強度でかつ窒化特性が良好であるため、高疲労強度が期待できる。
本発明のマルエージング鋼は、高強度と窒化処理後の表面の高硬度及び大きな圧縮残留応力を得ることができることから、自動車用無段変速機等に使用される動力伝達ベルトのリング製品のような高引張強度、高疲労強度が要求される部材に適用できる。

Claims (4)

  1. 質量%でC:0.01%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.1%以下、P:0.01%以下、S:0.005%以下、Ni:17.0〜22.0%、Cr:0.1〜4.0%、Mo:3.0〜7.0%、Co:10.0%を超え20.0%以下、Ti:0.05%以下、Al:0.1%未満、Al+Ti:0.1%未満、N:0.03%以下、O:0.005%以下、B:0.01%以下(0は含まない)、Co/3+Mo+4Al:8.0〜15.0%、残部はFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする高疲労強度を有するマルエージング鋼。
  2. 質量%でCa:0.01%以下、Mg:0.005%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高疲労強度を有するマルエージング鋼。
  3. 結晶粒度がASTM No.で10以上の細粒であることを特徴とする請求項1または2に記載の高疲労強度を有するマルエージング鋼。
  4. 請求項1乃至3の何れかに記載のマルエージング鋼の表面に窒化層が形成され、且つ表面に圧縮残留応力を付与したことを特徴とするマルエージング鋼帯。
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