JP2005320612A - 無段変速機ベルトの金属帯リング用薄鋼帯板及びその製造方法 - Google Patents

無段変速機ベルトの金属帯リング用薄鋼帯板及びその製造方法 Download PDF

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Hiroyuki Takabayashi
宏之 高林
Shigenori Ueda
茂紀 植田
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Abstract

【課題】18Niマルエージング鋼よりも一層高い疲労特性を有するとともに優れた機械的特性を有し、しかも耐食性が良好でコストも安価であり、窒化特性も良好な無段変速機ベルトの金属帯リング用の高強度薄鋼帯板を提供する。
【解決手段】無段変速機ベルトの金属帯リング用薄鋼帯板を、重量%でC:0.05〜0.15%,Si:<1.0%,Mn:0.2〜1.5%,Ni:4.0〜5.0%,Cr:15.0〜17.0%,Mo+1/2W:2.5〜3.5%,Cu:≦0.5%,N:0.05〜0.15%,O:≦0.0100%,Al:≦0.01%,Ti:≦0.05%,P:≦0.025%,S:≦0.010%,残部実質的にFeから成る組成を有するものとなす。
【選択図】 なし

Description

この発明は無段変速機ベルトにおける金属帯リング用の薄鋼帯板、特に高耐食性,高強度,高疲労特性を有する薄鋼帯板及びその製造方法に関する。
自動車のベルト式無段変速機(CVT)では、図4に示すように無端環状(一部のみ図示)をなす金属帯リング200に多数の鋼製且つ板状のエレメント(駒)202を並べて取り付けて成るスチールベルト(無段変速機ベルト)204を、図5に示す溝幅が可変の一対のプーリ(プライマリプーリ206及びセカンダリプーリ208)間に無端環状に巻き掛け、かかるスチールベルト204を介してプライマリプーリ206からセカンダリプーリ208へと動力伝達を行う。
具体的には、エンジンからの入力は一方のプーリ(プライマリプーリ206)へと入り、他方のプーリ(セカンダリプーリ208)へと伝達された上で出力される。
その際、各プーリの溝幅を変化させることで各プーリの有効径を変化させ、変速を無段階で連続的に行う。
従来、かかる無段変速機ベルトにおける金属帯リングとして、高強度鋼として知られる18Niマルエージング鋼が多く使われて来た。
このマルエージング鋼は、焼入れ状態でほぼマルテンサイト単相であり、時効処理によって析出硬化させ硬度を高めて使用する。
そしてこの18Niマルエージング鋼を無段変速機ベルトにおける金属帯リングとして用いる場合には、更に窒化処理を施して表面の硬度を高め、これにより耐摩耗性や疲労特性を向上させて使用する。
無段変速機ベルトの金属帯リングは、無段変速機における動力伝達の動きの中でエレメント202に対して相対的に摩擦摺動を起し、このためかかる金属帯リング202は高い耐摩耗性が求められる。
一方でこの金属帯リング200は、プーリ206と208との間ではストレート形状となり、またプーリ206,208に巻き付いた部分では回曲形状となるなど繰返し変形を起す。そのために高い耐疲労強度と靭性も求められる。
そこで18Niマルエージング鋼を無段変速機ベルトの金属帯リングとして用いる場合には、表層に窒化処理を施すことで、中心部が過剰に高硬度となるのを防ぎつつ表層を高硬度化し、靭性と耐摩耗性との両特性を確保するようにしている。
この場合18Niマルエージング鋼はCrを含有していないため表層の窒化処理の際の窒化特性は良好である。
この18Niマルエージング鋼は高張力鋼の一つで、無段変速機ベルトの金属帯リングのように高い引張り応力がかかる部品の好適な材料として従来から適用されて来た。
しかしながらこの18Niマルエージング鋼の場合、時効硬化でNiTi,NiAl等の金属間化合物を微細析出させて高張力を得るものであることからTi,Alの添加を必須としており、そのため疲労特性に対して有害であるTi系介在物やAl系介在物が生成し易く、それらが疲労特性の低下をもたらすといった固有の問題を内包している。
そのため、無段変速機ベルトの金属帯リング等疲労特性が特に重視される用途に適用される場合には、原料の選定,高真空溶解や2次精錬を行うなどして鋼中の不純物を極力低減する必要がある。そのため製造コストが著しく高いものとなっていた。
更に材料的にも高価な元素であるCoが多量に添加されているため、鉄鋼材料の中では材料コストにおいても高いものとなっていた。
その上、18Niマルエージング鋼はステンレス鋼に比べて耐食元素であるCrを含有していないことから耐食性が劣り、使用中に腐食が生じて、その腐食箇所を起点として早期に疲労破壊が起る可能性があるといった問題も内包している。
一方18Niマルエージング鋼以外の鋼種として準安定オーステナイト系ステンレス鋼を、無段変速機ベルトの金属帯リングに適用することも提案されている(下記特許文献1)。
この鋼種は、固溶化熱処理後に加工誘起マルテンサイトを生成せしめてその後に時効処理を施して成る、加工誘起マルテンサイトとオーステナイトの複合組織を呈するもので、18Niマルエージング鋼と同様、表層に窒化層を形成して無段変速機ベルトの金属帯リングとして用いるものである。
しかしながらこの特許文献1に開示のものは、マルテンサイトの生成を促進させる目的でSiを多量(1.0重量%以上)に添加しており、このため鋼中にSiOが生成し易い問題がある。生成したSiOは疲労破壊の起点となるもので、このようなSiO介在物が多ければ疲労寿命が短くなり、早期に疲労破壊を起す可能性が生ずる。
更にこの材料の場合、窒化処理をする際に窒化が十分に起らず、窒化特性が劣る問題がある。
特開2000−63998号公報
本発明はこのような事情を背景とし、18Niマルエージング鋼よりも一層高い疲労特性を有するとともに優れた機械的特性を有し、しかも耐食性が良好でコストも安価であり、窒化特性も良好な無段変速機ベルトの金属帯リング用の高強度薄鋼帯板及びその製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1は金属帯リング用の薄鋼帯板に関するもので、重量%でC:0.05〜0.15%,Si:<1.0%,Mn:0.2〜1.5%,Ni:4.0〜5.0%,Cr:15.0〜17.0%,Mo+1/2W:2.5〜3.5%,Cu:≦0.5%,N:0.05〜0.15%,O:≦0.0100%,Al:≦0.01%,Ti:≦0.05%,P:≦0.025%S:≦0.010%,残部実質的にFeから成る組成を有することを特徴とする。
請求項2のものは、請求項1において、重量%でZr:0.01〜0.50%を更に含有することを特徴とする。
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、重量%でB:0.0010〜0.010%,Ca:0.0010〜0.010%,Mg:0.0010〜0.010%の1種若しくは2種以上を更に含有することを特徴とする。
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて平均結晶粒径が粒度番号で8以上であり、非金属介在物量が清浄度dで0.05%以下であることを特徴とする。
請求項5のものは,請求項1〜4の何れかにおいて引張り強度が1500MPa以上であることを特徴とする。
請求項6のものは、請求項1〜5の何れかにおいて表層に窒化処理が施されており、窒化層深さが2μm以上、表面硬さが800Hv以上であることを特徴とする。
請求項7は製造方法に関するもので、請求項1〜3の何れかの組成を有する素材を熱間加工した後、1000℃以上の温度で固溶化熱処理し、その後加工率30%以上で冷間加工を施した上で350〜600℃未満の温度で時効窒化処理を行うことを特徴とする。
発明の作用・効果
本発明は特許文献1に開示のものと同様、準安定オーステナイト系ステンレス鋼を無段変速機ベルトの金属帯リング用として用いるものであるが、本発明ではSiの含有量を1.0%未満と少なくしている点を特徴としている。
かかる本発明の鋼種にあっては、疲労破壊の起点となるSiOの生成が抑えられ、疲労寿命を効果的に延長せしめることができる。
本発明はまた、不純物成分であるO,Ti,Alを低く規制する点を他の特徴としている。
Ti,AlはOと反応して酸化物の介在物を生成せしめ、それらを破壊起点として疲労寿命を低下させる要因となる。
そこで本発明ではこれらTi,AlをOとともに低く規制してTi,Alの酸化物が介在物として生成するのを抑制しており、これによって疲労寿命をより一層向上せしめることができる。
本発明の鋼種から成る薄鋼板は、表層を窒化処理する際の窒化特性が良好である特長を有している。
Siを多く含有した鋼では、例えば時効窒化処理の際にSiが雰囲気中の酸素と反応して表層に酸化皮膜を生成する。そして生成した酸化皮膜が窒化の進行を妨げてしまう。即ち表層において十分な硬さが得られなくなる(窒化性の劣化)。
しかるに本発明の薄鋼板ではSiが1.0%未満と低く抑えられているため、Siの酸化皮膜による窒化性の劣化を極少に抑え得、良好な窒化特性を確保することができる。
本発明の鋼種はCrを多量に含有する準安定オーステナイト系ステンレス鋼であり、そのCrは酸素との親和力が強く、そのCrが先に酸化物を形成してしまうことによって窒化処理の際の窒化性が阻害される。
このためかかる準安定オーステナイト系ステンレス鋼の場合、上記のように良好な窒化が難しいといった問題を本来的に有しているものであるが、本発明ではSiを低く抑えることによって、また不純物成分としてのO,Ti,Alを低く規制していることによって、高疲労寿命を得ながら、窒化特性の低さの問題を解決している。
一方で本発明の鋼種の薄鋼板は、Crを多量に含有していることから18Niマルエージング鋼に比べて耐食性に優れている。
即ち本発明の鋼は優れた耐食性と良好な窒化性の両特性を実現するものであり、この点に本発明の1つの特徴が存している。
そして耐食性が良好であることから、使用中に腐食が生じてその腐食を起点として疲労破壊が起るといった問題を解決でき、SiO介在物の生成を抑えていることと相俟って、無段変速機ベルトの金属帯リングとして欠くことのできない疲労特性を効果的に高めることができる。
本発明の鋼はまた、上記のように不純物成分としてのTi,Alを低値に規制することによってそれらの非金属介在物の生成を抑制しているのに加えて、更にP,Sを所定の低値に規制している点を他の特徴としている。そしてこれらP,Sの規制によって良好な靭性を確保している。
尚、本発明では薄鋼板の厚みを0.5mm以下となしておくことができる。
本発明ではまた、上記成分の他に必要に応じてZr を上記所定量で添加することができ、更にB,Ca,Mg,の1種若しくは2種以上を上記所定量で添加することができる(請求項2,請求項3)。
本発明では、非金属介在物量を清浄度dで0.05%以下とすることが望ましく、また平均結晶粒径を粒度番号で8以上となすことが望ましい(請求項4)。
而して結晶粒をこのような微細な結晶粒となすことで、冷間加工を施す際の限界圧縮率が増大し、強い冷間加工を加えることが可能となる。
本発明は、薄鋼板の強度として1500MPa以上の強度を達成し得るものであり、強い引張り応力のかかる無段変速機ベルトの金属帯リングとして好適なものである(請求項5)。
また窒化処理後における表面硬さ800Hv以上且つ窒化層深さを2μm以上を実現することができる。
無段変速機ベルトにおけるエレメントと常に接触状態となる金属帯リングは耐摩耗性の要求される部材であり、従って表面硬さ800Hv以上となした本発明の薄鋼板は、かかる金属帯リングとして好適に適用可能なものである(請求項6)。
本発明の薄鋼板は、上記組成を有する素材を熱間加工した後、1000℃以上の温度で固溶化熱処理し、その後加工率30%以上で冷間加工を施した上で、350〜600℃未満の温度で時効処理を行うことで製造することができる(請求項7)。
ここで冷間加工は加工誘起マルテンサイト相を生成せしめる意味があり、またその後の時効窒化処理は金属間化合物を微細析出させての高強度化と、表層の高硬度化の意味を有している。
その際固溶化熱処理は1000℃以上の温度でなすことが望ましく、また冷間加工の際の加工率は30%以上、更に時効窒化処理は350〜600℃未満の温度で行うのが望ましい。
次に本発明における各化学成分の限定理由を詳述する。
C:0.05〜0.15%
N:0.05〜0.15%
C,Nは強力な固溶強化元素であるとともに、冷間加工後の時効窒化処理により微細な炭化物,窒化物,炭窒化物を析出させ高強度を得るために必須の元素であり、その効果は0.05%以上添加しないと十分得られない。
しかしこれらはオーステナイト安定化元素でもあるため、多量に添加すると後述のMd30の値(冷間加工による加工誘起マルテンサイト相の生成のし易さの指標)が下がり、オーステナイト相が安定化し過ぎて、冷間加工してもマルテンサイト変態せずに逆に強度が低下することや、結晶粒界部に粗大な炭化物,窒化物等を生成することにより鋼の疲労強度及び耐食性を低下させるため、C,Nの含有率の上限はそれぞれ0.15%とする。
Si:<1.0%
Siは鋼の溶製時における脱酸剤として添加される。余剰のSiは常温における鋼の強度を高めるが冷間加工性を低下させるとともに鋼中に生成したSi酸化物が破壊の起点となって疲労特性を低下させるので含有率を極力低減する必要がある。
またSiの多量添加は時効窒化処理時に酸化皮膜生成し、窒化性を劣化させるため、その上限を1.0%未満(望ましくは0.5%以下)とした。
そしてより一層の疲労強度を必要とする場合には更にSi量を低減することが望ましく、この場合には0.25%以下とすることが好ましい。
Mn:0.2〜1.5%
Mnはオーステナイト生成元素であり、冷間加工後の加工誘起マルテンサイト量を調整するのに必要な元素である。そのためその下限を0.2%とする。
しかし多量に含有するとMd30の値が下がり、オーステナイト相が安定化し過ぎて、冷間加工してもマルテンサイト変態せずに逆に強度が低下することや、MnSの生成により疲労特性,耐食性及び延性,靭性が劣化するので、その上限を1.5%とする。
P:≦0.025%
Pは粒界に偏析し粒界腐食感受性を高める外、靭性の低下を招くため極力低い方が望ましいが、その改善効果は0.025%以下でほぼ飽和し、逆に必要以上の低減はコストの上昇を招くため、その上限を0.025%とする。
S:≦0.010%
Sは鋼の熱間加工性を劣化させる外、MnSを形成し疲労特性や耐食性を著しく低下させるため極力下げた方が望ましいが、0.010%以下にすれば十分な疲労特性,耐食性が得られるので、その上限を0.010%とした。
Cu:≦0.5%
Cuはオーステナイト生成元素であり、多量に含有するとMd30の値が下がり、オーステナイト相が安定化し過ぎて、冷間加工してもマルテンサイト変態せずに強度が低下させることや、熱間加工性を劣化させるので極力低減する必要がある。従ってCu含有率の上限を0.5%とする。
Ni:4.0〜5.0%
Niはオーステナイト生成元素であり、固溶化熱処理状態で鋼をオーステナイト相とするための主要な元素である。Niの含有率が4.0%以下では固溶化熱処理時にマルテンサイトが生成し、冷間加工性を劣化させる。
またNi含有率が5.0%以上であるとオーステナイト相が安定化し過ぎて、冷間加工によりマルテンサイト変態しなくなるため、Ni含有率の範囲を4.0〜5.0%とする。
Cr:15.0〜17.0%
Crはフェライト生成元素であるとともに鋼の耐食性を向上する元素である。十分な耐食性を得るために15.0%以上の含有率が必要である。
Cr含有率が多いほど耐食性向上効果は大きいが、過大に含有すると鋼中にδ−フェライトを生成し、鋼の熱間加工性が劣化するとともに強度が低下するので、その上限を17.0%とする。
Mo+1/2W:2.5〜3.5%
Moは鋼の耐食性の向上に寄与するとともに、鋼の冷間加工後の時効処理によりFeMoを析出し鋼の強度上昇に寄与するので、Moの添加により一層鋼の硬度上昇が期待できる。
またWはピーク時効時の靭延性を改善するのに有効であり、Moと同時に添加すると硬度に加え靭延性を得ることができる。
しかしながらMo,Wともにフェライト生成元素であり、Mo+1/2W含有率が3.5%を超えると、鋼中にδ−フェライトを多量に生成し鋼の熱間加工性を劣化するため、含有率の上限を3.5%と制限する。
しかしMo+1/2W含有率が2.5%未満では十分な強度が得られないため、含有率の範囲を2.5〜3.5%とする。
Ti:≦0.05%
Tiは冷間加工後の時効処理によりNiTi等を形成し強度の向上が期待できる元素であるが、C,N,O等と結合し易く、C,Nを比較的多く添加した本合金の場合、Ti系非金属介在物を形成し、却って疲労強度などの疲労特性を低下させるため、高疲労強度の要求される用途に用いる場合極力低減することが望ましい。従ってその上限を0.05%とした。好ましくは0.01%以下とする。
Al:≦0.01%
Alは冷間加工後の時効処理によりNiAl等を形成し強度の向上が期待できる元素であるが、N,O等と結合し易く、Tiと同様に本合金の場合、Al系非金属介在物を形成し、却って疲労強度などの疲労特性を低下させるため、高疲労強度の要求される用途に用いる場合Tiと同様に極力低減することが望ましい。従ってその上限を0.01%とした。好ましくは0.005%以下とする。
O:≦0.0100%
OはSiO,AlO等の酸化物を生成し疲労強度などの疲労特性を低下させるため、極力低い方が望ましい。
しかし極端な低下は製造コストを上を招くため、その上限を0.0100%以下に規制する。好ましくは0.0060%とすれば、より十分な疲労強度を得ることができる。
Zr:0.01〜0.50%
Zrは鋼の熱処理(1000℃以上)後の結晶粒を微細化する効果を持つ。鋼の結晶粒を微細化すれば鋼の限界圧縮率が増大するので、鋼に強い冷間加工を加えることができるようになる。その効果は含有率0.01%から現れ始めるが、含有率0.50%を超えてもその効果は飽和するため、含有率の範囲を0.01〜0.50%とする。
B :0.0010〜0.010%
Ca:0.0010〜0.010%
Mg:0.0010〜0.010%
B,Ca,Mgは鋼の熱間加工性を向上させるのに有効な元素であることから添加しても良い。その効果は含有率0.0010%で現れ始めるが、過剰な添加は低融点のほう化物を粒界に形成したり、酸化物を形成したりして鋼の清浄度を低め、熱間加工性や冷間加工性の低下及び疲労強度の低下を招くため、これら元素の含有率の範囲を0.0010〜0.010%とする。
次に本発明の実施形態を以下に詳しく説明する。
表1に示す化学組成の鋼を150kg溶解して鋳造及び鍛造し、更に厚み3mm(3T),幅150mm(150W)に熱間圧延した。
続いて厚み0.64mm(0.64T),幅150mm(150W)に冷間圧延を行った。
その後表2に示す各種条件で以下の処理を行った。
即ち表2に示す温度で固溶化熱処理を行った後、冷間加工を行い(<0.5t)、その後時効窒化処理を行った。
Figure 2005320612
Figure 2005320612
上記の処理を行ったものについて、以下に示す条件で各種試験のための試験片の作成と各種試験とを実施した。
(1)結晶粒度番号
JIS G 0551の、鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法に準じて結晶粒度測定を行った。
試験片は10mmB×10mmL形状とし、これを埋め込んで表面研磨し、エッチングしたものについて結晶粒度測定を行った。
(2)清浄度
JIS G 0555の、鋼中の非金属介在物の顕微鏡試験方法に準じて清浄度測定を行った。
試験片は10mmB×10mmL形状とし、これを埋め込んで鏡面研磨し、エッチングしたものを用いた。
(3)引張り試験
JIS Z 2241の、金属引張り試験方法に準じて引張り試験を行った。
試験片はJIS Z 22015号試験片とした。
(4)1/4T硬さ
JIS Z 2244の、ビッカース硬さ試験方法に準じて試験を行った。
試験片は10mmB×10mmL形状とし、これを埋め込んで鏡面研磨したものについて硬さ測定を行った。
また硬さ測定は、JIS G 0563の鉄鋼の窒化層表面硬さ測定方法に従って表面硬さの測定を行い、更に横断面において表面から試料厚さの1/4の位置(T/4)の位置での硬さ測定を行った。
(5)窒化性
JIS G 0562の、鉄鋼の窒化層深さ測定方法に従って窒化層深さを測定した。
(6)表面硬さ
JIS G 0563の、鉄鋼の窒化層表面硬さ測定方法に従って表面硬さを測定した。
(7)疲労特性
JIS Z 2273の、金属材料の疲れ試験方法通則に従って疲労特性を調べた。
具体的には、図1に示しているように試験片10に対して、最大応力1450N/mm,最小応力50N/mm,加振速度500rpmの条件の下で振動を加えて試験片10を繰り返し曲げ変形させ、破断に到るまでの加振(変形)繰返し回数を測定した。
疲労特性の評価は、繰返し回数が10回以上を○とし、10回よりも少ない場合を×として行った。
尚、試験片の形状は0.1〜10mmT×10mmW×100mmLである。
(8)耐食性
湿潤試験(50℃,95%RH以上)にて168hr保持後に発生の有無を調べた。
評価は発生有りの場合を×,発生が無い場合を○とした。
これらの結果が表3,表4,表5に示してある。
Figure 2005320612
Figure 2005320612
Figure 2005320612
表3は、表1に示す化学組成の鋼を表2の工程に従って処理したものについての各種特性を示したもので、この表3の結果に示しているように、比較例IはSiの含有量が2.33%と本発明の上限値である1.0%よりも過剰であることから、Si酸化物の生成により清浄度dが0.47と極めて高く、窒化処理後において十分な表面硬さを得ることができず、更に疲労特性も悪いものとなっている。
また比較例Jは、Tiが0.18%と本発明の上限値よりも過大であることから清浄度dの値が高くなっており有害な化合物の生成が伺える。その結果として疲労特性の悪いものとなっている。
比較例Kは、Mo+1/2Wの含有量が2.48%で本発明の下限値である2.5%よりも低いため、母相硬さT/4が463Hvと低く、表層での十分な硬さが得られておらず、またAlの含有量が0.015%で本発明の上限値である0.01%よりも過剰であり、その結果として清浄度dが目標値である0.05%よりも大きくなっている。このため疲労特性,耐食性ともに不十分な結果となっている。
比較例Lは、Crが本発明の上限値である17.0%よりも多く、更にMo+1/2Wも本発明の上限値を超えている。
その結果として、耐食性は良好であるものの時効窒化処理後の表面硬さが低く、また疲労特性も悪いものとなっている。
比較例Mは、Nの含有量が0.18%と本発明の上限値である0.15%よりも過剰であり、清浄度dの値が高く、また窒化処理後の表面硬さが低いとともに疲労特性,耐食性も悪いものとなっている。
比較例Nは、不純物成分としてのP,Sが多く、またMo+1/2Wも本発明の下限値を下回っている。
その結果として、結晶粒度番号が目標値よりも低いとともに清浄度dの値が高く、引張り試験における伸びの値も著しく低いものとなっている。
更に十分な表面硬さが得られず、疲労特性,耐食性も悪い結果となっている。
比較例Oは、Cの含有量が0.19%と本発明の上限値の0.15%よりも過大であり、結晶粒度番号が目標値である8よりも低い7.8であり、また清浄度dも高い値となっている。
また表面硬さが低く、疲労特性,耐食性も悪いものとなっている。
比較例Pは、Crの含有量が本発明の下限値よりも低く、耐食性が劣っている。また疲労特性も不十分である。
一方比較例Qは、従来用いられている18Niマルエージング鋼で、引張り試験における強度,伸びともに良好で、疲労特性もまた比較的良好であるものの耐食性が不十分である。
これに対して本発明例のA〜Hのものは、何れの特性も良好なものとなっている。
表4,表5は表1の鋼種B,Eについて表2の工程1〜7に従って処理したものの各種特性を示したもので、これらの表の結果から処理条件として工程1〜5に示すものが良好であることが理解できる。
図2は、表1における鋼種B,I,Qを表2の工程1に従って処理したものについて疲労特性を比較して示したものである。
尚、図中B1,I1,Q1とあるのは、それぞれB,I,Qについて工程1に従って処理したことを表している。
この図2に示しているように、本発明例のものは比較例のIに対してはもとより、Qのマルエージング鋼に対しても疲労特性の優れたものとなっている。
次に図3はSi添加量と窒化層深さ,表面硬さとの関係を図化して表したもので、これらの図に示しているようにSi添加量を0.50%未満とすることで、より望ましくは0.25%以下とすることで効果的に窒化層深さを深くし得、また表面硬さを高いものとなすことができる。
尚図3(イ)において、窒化層深さ2μmの位置の横線(破線)は目標値を表している。
同様に図3(ロ)における800Hvの位置の横線(破線)は表面硬さとしての目標値を表している。
以上本発明の実施形態を詳述したがこれらはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
疲労試験の内容を説明する説明図である。 本発明例の耐久特性を比較例とともに示す図である。 Si添加量と窒化層深さ,表面硬さとの関係を表す図である。 無段変速機ベルトを金属帯リング,エレメント等とともに示す図である。 ベルト式無段変速機の説明図である。

Claims (7)

  1. 重量%で
    C :0.05〜0.15%
    Si:<1.0%
    Mn:0.2〜1.5%
    Ni:4.0〜5.0%
    Cr:15.0〜17.0%
    Mo+1/2W:2.5〜3.5%
    Cu:≦0.5%
    N :0.05〜0.15%
    O :≦0.0100%
    Al:≦0.01%
    Ti:≦0.05%
    P :≦0.025%
    S :≦0.010%
    残部実質的にFeから成る組成を有することを特徴とする無段変速機ベルトの金属帯リング用薄鋼帯板。
  2. 重量%で
    Zr:0.01〜0.50%
    を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機ベルトの金属帯リング用薄鋼帯板。
  3. 重量%で
    B :0.0010〜0.010%
    Ca:0.0010〜0.010%
    Mg:0.0010〜0.010%
    の1種若しくは2種以上を更に含有することを特徴とする請求項1,2の何れかに記載の無段変速機ベルトの金属帯リング用薄鋼帯板。
  4. 平均結晶粒径が粒度番号で8以上であり、非金属介在物量が清浄度dで0.05%以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の無段変速機ベルトの金属帯リング用薄鋼帯板。
  5. 引張り強度が1500MPa以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の無段変速機ベルトの金属帯リング用薄鋼帯板。
  6. 表層に窒化処理が施されており、窒化層深さが2μm以上、表面硬さが800Hv以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の無段変速機ベルトの金属帯リング用薄鋼帯板。
  7. 請求項1〜3の何れかの組成を有する素材を熱間加工した後、1000℃以上の温度で固溶化熱処理し、その後加工率30%以上で冷間加工を施した上で350〜600℃未満の温度で時効窒化処理を行うことを特徴とする無段変速機ベルトの金属帯リング用薄鋼帯板の製造方法。
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