JP2007186556A - 物性改善したタンパク質組成物及び成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決方法】 ある種のタンパク質溶液に添加し、ある種の塩を適宜物性改善剤とともに添加し、これを乾燥することにより、機械的性質の著しく変化したタンパク質組成物を得る。
【採用図面】 なし
Description
さらに詳しくは、本発明は、ある種の塩を可塑剤として特定の条件下でタンパク質溶液に添加し、それを乾燥させて得られるタンパク質組成物であり、従来のタンパク質の物性を著しく改善した組成物とすることにより、その用途を大幅に拡大しようとするものである。
すなわち、本発明によれば、水に溶けた状態又はスラリー状態にあるタンパク質に、ある種の塩を添加したものを乾燥、固化させることにより、機械的物性が著しく改善されたタンパク質組成物が提供される。
さらに詳しくは、本発明のタンパク質組成物を得るには、タンパク質が水に溶けた状態又は水系エマルジョンの状態にあるとき、水が存在すると結晶水を持った水和物になる性質を有する水溶性無水無機塩又は水溶性無水有機金属塩を添加するか又は結晶水を持った水溶性無機塩水和物又は結晶水を持った水溶性有機金属塩水和物を添加することにより達成される。
(1)水溶性であるタンパク質及び結晶水を持った水溶性無機塩又は結晶水を持った水溶性有機金属塩からなるタンパク質組成物。
(2)タンパク質が水に溶けた状態又は水系エマルジョンの状態にあるとき、(A)水が存在すると結晶水を持った水和物になる性質を有する無水無機塩、(B)同上の性質を有する無水有機金属塩、(C)結晶水を持った無機塩水和物又は(D)結晶水を持った有機金属塩水和物のいずれか一つ又は二つ以上を添加した後、乾燥することによって得られることを特徴とする(1)に記載のタンパク質組成物。
(3)前記タンパク質が、ゼラチン、コラーゲン、ケラチン又はセリシンから選ばれた少なくとも一成分であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のタンパク質組成物。
(4)前記塩が、潮解性を有する無機塩であって、MgCl2、CaCl2、AlCl3、Mg(NO3)2、Ca(NO3)2、Al(NO3)3、Na2CO3、Na2SiO3、Na2HPO4、NaH2PO4から選ばれた少なくとも1成分であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のタンパク質組成物。
(5)前記塩が、潮解性を有する有機金属塩であって、シュウ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩及びそれらの水和物から選ばれた少なくとも1成分であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のタンパク質組成物。
(6)前記塩の添加量が、0.1〜300wt%(タンパク質量基準)である(1)〜(5)のいずれかに記載のタンパク質組成物。
(7)さらに炭酸カルシウム、ガラス繊維、セルロース粒子、セルロース繊維などの無機又は有機の粒子状及び繊維状物質から選択された物性改善剤を添加することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のタンパク質組成物。
(8)前記物性改善助剤が、グルタルアルデヒド、グルオキサール、ヘキサメチレンジイソシアナートなどの多官能基を有する物質から選択されるか又はホルムアルデヒド、無水リン酸、オキシ塩化リン、トリメタリン酸塩、アクロレイン、エピクロルヒドリンなどの架橋剤である(1)〜(7)のいずれかに記載のタンパク質組成物。
(9)前記物性改善助剤の添加量が、0.1〜100wt%(タンパク質量基準)である(1)〜(8)のいずれかに記載のタンパク質組成物。
(10)前記タンパク質組成物を含有する液をゲル化、キャスト、流延、湿式紡糸、乾式紡糸、ゲル紡糸、押し出し成形、射出成形、型成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形又はシート成形のいずれかの方法により、フィルム、シート、糸、繊維、棒状、その他任意の成形品とすることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載のタンパク質組成物。
(11)前記タンパク質組成物を含有する液を材料表面に塗布し、乾燥させることにより、材料表面をタンパク質組成物でコーティングすることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のタンパク質組成物。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
タンパク質として、ゼラチン(広栄化学工業(株)、JS-110)、コラーゲン、ケラチン、セリシンを選び、添加する塩として塩化マグネシウム6水和物を用いて塩の添加効果について検討した。
5gのタンパク質に濃度が10%になるように水を加え、攪拌して溶解した。このタンパク質溶液に塩化マグネシウム6水和物1.0gを添加し、溶解するまで攪拌した後、全量を型に流し込み、50℃に保たれた乾燥機にて約48時間乾燥した。
得られたキャストフィルムを23℃、60%RHの条件で約24時間調製した後、引張最大応力及び破断伸びを測定した。
結果を表1に示す。
潮解性のある無機塩としてMgCl2・6H2O、CaCl2・2H2O、AlCl3・6H2O、Mg(NO3)2・6H2O、Ca(NO3)2・4H2O、Al(NO3)3・9H2Oを選び、タンパク質としてのゼラチンに無機塩を添加することによる機械的物性への効果を検討した。
5gのゼラチンに濃度が10%になるように水を加え、攪拌して溶解した。このゼラチン溶液に無機塩1.0gを添加し、溶解するまで攪拌した後、全量を型に流し込み、50℃に保たれた乾燥機にて約48時間乾燥した。
得られたキャストフィルムを23℃、60%RHの条件で約24時間調製した後、引張最大応力及び破断伸びを測定した。
結果を表2に示す。
有機金属塩としてシュウ酸マグネシウム2水和物、酢酸マグネシウム4水和物、クエン酸マグネシウム9水和物、酒石酸カルシウム4水和物、乳酸カルシウム5水和物、グルコン酸カルシウム1水和物を選び、タンパク質としてのゼラチンに無機塩を添加することによる機械的物性への効果を検討した。
5gのゼラチンに濃度が10%になるように水を加え、攪拌して溶解した。このゼラチン溶液に有機金属塩1.25gを添加し、溶解するまで攪拌した後、全量を型に流し込み、50℃に保たれた乾燥機にて約48時間乾燥した。
得られたキャストフィルムを23℃、60%RHの条件で約24時間調製した後、引張最大応力及び破断伸びを測定した。
結果を表3に示す。
可塑剤としてグリセロールを添加した場合のタンパク質組成物の機械的物性を比較した。
5gのゼラチンに濃度が10%になるように水を加え、攪拌して溶解した。このゼラチン溶液にグリセロール0.45g(0.0049mol)を添加し、溶解するまで攪拌した後、全量を型に流し込み、50℃に保たれた乾燥機にて約48時間乾燥した。
得られたキャストフィルムを23℃、60%RHの条件で約24時間調製した後、引張最大応力及び破断伸びを測定した。
結果を表4に示す。
塩の添加量の効果について検討した。塩としては、塩化マグネシウム6水和物(MgCl2・6H2O)及び酢酸マグネシウム4水和物を用いた。
5gのゼラチンに濃度が10%になるように水を加え、攪拌して溶解した。このゼラチン溶液に所定量の塩を添加し、溶解するまで攪拌した後、全量を型に流し込み、50℃に保たれた乾燥機にて約48時間乾燥した。
得られたキャストフィルムを23℃、60%RHの条件で約24時間調製した後、引張最大応力及び破断伸びを測定した。
結果を表5に示す。
物性改善助剤の添加の効果について検討した。ゼラチンに塩として塩化マグネシウム6水和物を添加したものに、さらに物性改善助剤として、炭酸カルシウム、セルロース微粒子、グルタルアルデヒド、グリオキサールを加えた。
5gのゼラチンに濃度が10%になるように水を加え、攪拌して溶解した。このゼラチン溶液に塩化マグネシウム6水和物1.25gを添加し、溶解するまで攪拌した。さらに、所定量の物性改善助剤を添加し、攪拌した後、全量を型に流し込み、50℃に保たれた乾燥機にて約48時間乾燥した。
得られたキャストフィルムを23℃、60%RHの条件で約24時間調製した後、引張最大応力及び破断伸びを測定した。
結果を表6に示す。
1)潮解性を有する結晶水を持った無機塩又は有機金属塩の添加により、タンパク質組成物の柔軟性(伸び)等の機械的物性が著しく向上する。
2)塩添加の効果(機械的物性の改善)は、タンパク質の種類によって異なる。
3)実施したいずれの塩においても物性改善効果は見られるが、塩の種類による効果の差は認められる。最大応力と破断伸びのバランスを考慮すると使用目的に応じて塩を選ぶのが好ましい。
4)タンパク質に対する塩の添加量を増加すると、最大応力は低下し、破断伸びは増大する。その傾向は無機塩及び有機金属塩ともに見られる。
5)塩の添加による機械的物性の改善は従来より可塑剤として良く知られているグリセロールよりはるかに優れている。
6)物性改善助剤の添加により、最大応力は増加し、破断伸びは低下する。グルタルアルデヒドのようなアルデヒド系の架橋剤は大きな伸びの低下なしに応力を改善することができる。
7)本発明のタンパク質組成物では最大応力、破断伸びにおいて大幅にすぐれる実施例が多く見られ、従来のタンパク質単独組成物に比べ、より広い用途に使用される可能性が高い。
Claims (11)
- 水溶性であるタンパク質及び結晶水を持った水溶性無機塩又は結晶水を持った水溶性有機金属塩からなるタンパク質組成物。
- タンパク質が水に溶けた状態又は水系エマルジョンの状態にあるとき、(A)水が存在すると結晶水を持った水和物になる性質を有する無水無機塩、(B)同上の性質を有する無水有機金属塩、(C)結晶水を持った無機塩水和物又は(D)結晶水を持った有機金属塩水和物のいずれか一つ又は二つ以上を添加した後、乾燥することによって得られることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質組成物。
- 前記タンパク質が、ゼラチン、コラーゲン、ケラチン又はセリシンから選ばれた少なくとも一成分であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタンパク質組成物。
- 前記塩が、潮解性を有する無機塩であって、MgCl2、CaCl2、AlCl3、Mg(NO3)2、Ca(NO3)2、Al(NO3)3、Na2CO3、Na2SiO3、Na2HPO4、NaH2PO4及びそれらの水和物から選ばれた少なくとも1成分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質組成物。
- 前記塩が、潮解性を有する有機金属塩であって、シュウ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩及びそれらの水和物から選ばれた少なくとも1成分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質組成物。
- 前記塩の添加量が、0.1〜300wt%(タンパク質量基準)である請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質組成物。
- さらに炭酸カルシウム、ガラス繊維、セルロース粒子、セルロース繊維などの無機又は有機の粒子状及び繊維状物質から選択された物性改善剤を添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のタンパク質組成物。
- 前記物性改善助剤が、グルタルアルデヒド、グルオキサール、ヘキサメチレンジイソシアナートなどの多官能基を有する物質から選択されるか又はホルムアルデヒド、無水リン酸、オキシ塩化リン、トリメタリン酸塩、アクロレイン、エピクロルヒドリンなどの架橋剤である請求項1〜7のいずれかに記載のタンパク質組成物。
- 前記物性改善助剤の添加量が、0.1〜100wt%(タンパク質量基準)である請求項1〜8のいずれかに記載のタンパク質組成物。
- 前記タンパク質組成物を含有する液をゲル化、キャスト、流延、湿式紡糸、乾式紡糸、ゲル紡糸、押し出し成形、射出成形、型成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形又はシート成形のいずれかの方法により、フィルム、シート、糸、繊維、棒状、その他任意の成形品とすることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のタンパク質組成物。
- 前記タンパク質組成物を含有する液を材料表面に塗布し、乾燥させることにより、材料表面をタンパク質組成物でコーティングすることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のタンパク質組成物。
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