図1は、本発明の好適な実施の形態による熱処理装置を示す模式図である。
この熱処理装置は半導体基材(SOI基板)Wを収容する為の熱処理室(容器)を構成する排気可能な反応炉1と、基材W及び炉1内のガスを加熱する為のヒーター2とを有し、水素ガス源5に少なくとも1つのバルブ6を介して接続されるとともに、排気ポンプ8に少なくとも1つのバルブ7を介して接続されている。
基材Wの被処理面側には、表面に非酸化シリコンを主成分とする材料の平面4を有する対向面構成部材3が基材Wと所定の間隔ASをおいて配されている。9は、基材Wと対向面構成部材3とを支持する支持体である。
本実施の形態による熱処理方法は以下のとおりである。
まず、反応炉1内に基材Wと対向面構成部材3とを収容し、炉内を排気ポンプ8によって排気し減圧する。そして、ヒーター2により加熱を行う。
次に、ガス源5から水素ガスを炉内に導入する。ヒーター2による発熱量を制御して、炉内及び基材Wの温度を所定の温度に維持する。
すると、基材W表面(被処理面)にあるシリコンがアニールされる。
本発明により熱処理される基材(SOI基板)Wとしては、CZ法等により作製されるバルクSiウエハ、エピタキシャル成長させた層を有するエピタキシャルSiウエハ、バルクSiウエハを水素アニール処理したSiウエハを利用して作製された前述した各種SOIウエハ、シリコン膜を有する石英ガラス基板等が挙げられるが、とりわけ研磨後何らかの表面処理が施されて表面に凹凸が形成されているSOIウエハや、研磨されていない表面を有するSOIウエハ、貼り合わせ法やSIMOX法による作製工程途中のSOIウエハ等が好適な基材である。
本発明においては、基材Wを水素を含む還元性雰囲気中において熱処理を行う為、炉内に供給するガスとしては、100%水素ガス、希ガス等の不活性ガスにより水素が1〜99%程になるよう希釈された水素ガス等が用いられる。特に水素を含む還元性雰囲気の露点が−92℃以下になるように充分脱水された炉内に、水素精製器を通して比較的高純度のガスを導入するとよい。
雰囲気内の残留酸素、水分は昇温時にはシリコン表面を酸化して被膜として表面の平滑化を阻害するので、低く抑制することが必要である。また、高温においては、酸化及びエッチング作用により予期しないシリコン膜厚の減少を引き起こすので、やはり、低く抑制することが必要である。そこで、上述したように露点が−92℃以下になるように雰囲気を制御することが望ましい。
水素を含む還元性雰囲気の圧力としては、加圧、大気圧、減圧いずれの雰囲気圧力でもよいが、好ましくは大気圧以下が好ましい。
表面平滑化効果、不純物の外方拡散効果を向上させるためには、圧力は低い方が好ましい。
溶融石英で構成したエッチング炉を用いる場合には、炉の変形を防止する為、圧力の下限は3.9×10-4Paより好ましくは6.6×10-4Paにするとより好ましい。
以上の点を考慮すると、大気圧乃至1.3Paの範囲から使用環境に応じて選択することが合理的であろう。
本発明に用いられる水素を含むガスの流量は特に制限はない。しかし以下に述べる流速が得られるようにするとより好ましい。
流速は炉心管の断面積より、半導体基材の断面積を除いた領域を通過するガスの速度をいう。
流速が速すぎると、基材表面からの反応生成物の除去速度が早まり、エッチング抑制効果が下がる。一方、流速が遅すぎると、反応生成物の除去が著しく低下するため、半導体単結晶層のボロン等の不純物を外方拡散による除去能力が低下する。
本発明において、流速は10cc/min・cm2 〜300cc/min・cm2 より好ましくは30cc/min・cm2〜150cc/min・cm2 。流速は、基材表面での反応生成物が基材側方に拡散し、除去される速度を制御するパラメータである。
水素を含む雰囲気中では、窒素雰囲気や、希ガス雰囲気では、表面が平滑化しないような1200℃以下の温度でも、十分にエッチングとともに表面の平滑化がなされる。本発明による平滑化作用のあるエッチング時の温度は、ガスの組成、圧力等に依存する。具体的にはその温度の下限は概ね300℃以上より好ましくは、500℃以上、さらに好ましくは800℃以上、である。その温度の下限はSiの融点以下であるが、特に、1200℃以下が有効である。また、平滑化の進行が遅い場合には、熱処理時間を延ばすことで同様に平滑な面を得ることができる。
本発明に用いられる対向面構成部材3としては、少なくとも対向面側に非酸化シリコンを主成分とする材料が形成されているものであれば何でもよいが、好ましくは、自然酸化膜を除去したSiウエハ表面に窒化シリコンや炭化シリコン等の非酸化シリコン膜を形成したSiウエハ、表面にSiやSiNやSiC等の非酸化シリコン膜を形成した石英ガラスウエハ等であり、対向面側に非酸化シリコン膜があれば、熱処理すべき基材と同じ構造のウエハを用いることも好ましいものである。
そして対向面を平面として、被処理面と平行になるようにすべきである。又、対向面の大きさや形状は、基材Wの被処理面と同じかそれ以上の大きさをもち、基材とほぼ同じ形状のものが好ましく用いられる。
更には、対向面構成部材を、基材の保持体、例えばトレイ等と兼用させることも好ましいものである。
対向面と基材との間の距離即ち間隔ASの距離は半導体基材のシリコンからなる表面(アニール面)の大きさに依存するが、直径100mm以上の半導体基材においては、概ね20mm以下、より好ましくは10mm以下であれば、対向面材料との相互作用によるエッチングの抑制効果が得られる。距離の下限は、特に限定されないが、1mm以上より好ましくは3mm以上あった方がよい。本現象は表面が清浄な状態で熱処理することでその進行が開始するので、基材の表面に厚く自然酸化膜が形成されているような場合には、熱処理に先立って、これを希弗酸などによるエッチングで除去しておくことにより、表面の平滑化の開始時点が早まる。
こうして得られた平滑なシリコン表面は、半導体デバイス作製という点から見ても好適に使用することができる。
本発明においては、450nm厚以下の薄いSOI層、特に20nm〜250nm厚の均一な厚さの非常に薄いSOI層を得ることが、容易に出来るようになる。
そして、得られる表面は平滑化され、例えば1μm角エリアにおけるRrmsが少なくとも0.4nm以下好ましくは、0.2nm以下、更には0.15nm以下が容易に達成できる。
ガス導入の方式は、図1の方式に限定されることはなく、後述する各種の形態にすることも好ましいものである。
反応炉1の構成材料としては、少なくとも基材W付近の内面が非酸化シリコンからなる材料、例えばSiC反応管を用いることが好ましい。ヒーター2としては、抵抗加熱器、高周波加熱器やランプが用いられる。
ここで、本発明をなす動機付けとなった知見について説明しておく。
(対向材料によるエッチング量の差に関する知見)本発明者らは、シリコン単結晶表面の微小な荒れを除去できる水素を含む還元性雰囲気での熱処理の条件を検討していたところ、単結晶シリコンのエッチング速度は、該単結晶シリコン表面と向かい合う面(対向面)の材質によって大きく変化することを発見した。
図2は、対向面材料によるエッチング速度の温度依存性を示す図であり、下側の横軸は温度Tの逆数を示している。上側の横軸は1/Tに対応する温度を表示している。縦軸は、エッチングレート(nm/分)を対数プロットしてある。SOI基板を用いる場合市販の光反射式の膜厚計を用いて、比較的容易にSOI層、すなわち、埋込絶縁膜上の単結晶シリコン層の膜厚を測定することができる。熱処理時間を変えて、熱処理前後の膜厚の変化量を測定し、そのエッチング時間に対する傾きを求めれば、エッチング速度が得られる。
図中データAは、SiO2 基材をSi対向面に対向させて各温度でのエッチングレートを示しており、この際、これらプロットの最小二乗法による近似直線の傾きより活性化エネルギーEaを求めたところ、約4.3eVであった。
またデータBは、Si基材をSiO2 対向面に対向させて熱処理した場合を示す。
またデータCは、Si基材をSi対向面に対向させて熱処理した場合であり、この際、活性化エネルギーEa は、約4.1eVであった。
またデータDは、SiO2 基材をSiO2 対向面に対向させて熱処理した場合であり、この際、活性化エネルギーEaは、約5.9eVであった。
図2に示す如く、水素雰囲気の熱処理では、シリコンのエッチング速度は対向面の材質をシリコンから酸化シリコンに変えることによって、図中のBとCのエッチング速度の差に示されるように、温度によらず、およそ9倍に増速されることが明らかになった。
単結晶シリコン同士が向かい合っている場合、エッチング速度は1200℃で概ね0.045nm/min以下と極めて小さい(図中C)。60分の熱処理でのエッチング量は、3nm以下である。一方、シリコンの対向面を酸化シリコンとした場合、エッチング速度は1200℃でおよそ0.36nm/minであり(図中B)、1時間のエッチング量は21.6nmに達してしまう。このエッチング量はタッチポリッシュによる除去量に近い。
図3は、SiとSiO2 が対向する場合のエッチング量を示す図であり、横軸はエッチング時間(分)であり、縦軸はエッチング厚(nm)であり、温度Tは1200℃として、白丸は、SiO2基材をSi対向面に対向させて熱処理した場合であり、黒丸は、Si基材をSiO2 対向面に対向させて熱処理した場合を示す。
図3に示すように、同一時間では、白丸に示すSiO2 基材をSi対向面に対向させて熱処理した場合の方が、黒丸に示すSi基材をSiO2対向面に対向させてエッチングした場合に比べて、エッチング量は大きくなっている。つまり、SiO2 とSiとを対向させて熱処理した場合、SiO2の方が厚くエッチング除去されるのである。
図4は、対向面をSiとしたSiO2 のエッチングと、対向面をSiO2 としたSiのエッチングにおいて、Si面とSiO2面のそれぞれの面がエッチングされることにより除去されるSi原子数を、図3より計算して図示したものであり、横軸はエッチング時間、縦軸は除去されたSiの原子数(atoms/cm2)であり、図中、白色の丸、三角、四角は、SiO2 面を示し、黒色の丸、三角、四角は、Si面を示す。
図4に示すように、図3に示した酸化シリコン面と単結晶シリコン面のエッチング量をシリコン原子数に換算したところ、図4に示すように概ね一致して結果が得られた。SiとSiO2 を対向させて熱処理した場合、両表面からは、ほぼ同量のSi原子が失われることが判明した。
すなわち、シリコンのエッチング速度は対向する酸化シリコン面との相互作用により増速され、反応式は包括的には下記の如くで、シリコンと酸化シリコンが1:1に反応する。
Si+SiO2 →2SiOまた、かかるSiのエッチング速度は対向する面との距離の影響も受ける。シリコンを対向面に配置した場合には、面間距離を狭めるほどエッチング速度は抑制される。これに対して酸化シリコンを対向面として配置した場合には、逆に、面間距離を近づけるほどエッチング速度が増速されることがわかった。
また、雰囲気ガスに水素に代表される還元性ガスが含まれない場合のエッチング速度は水素を含む場合に比べると著しく小さかった。すなわち、係る増速エッチングには水素に代表される還元性ガスの存在が寄与している。シリコンと酸化シリコンが対向する場合、エッチングはいずれかの表面材料が水素に代表される還元性ガスとの反応を介して他方の表面にたどり着いて反応することによって、両表面がエッチングされる。例えば、Si+H2 →SiH2 、SiH2 +SiO2→2SiO+H2 という反応がある。Si表面から解離したSi原子が気相中を輸送され、酸化シリコン表面でSiO2 と反応して飽和蒸気圧の高いSiOに転化される。SiH2は随時消費されるのでSi表面でのエッチングも促進される。Si同士が対向する場合には、Si表面から解離したSi原子が気相中で飽和濃度に到達すると、以後の反応は気相中の拡散によって律速される。この時、解離したSiの飽和濃度は高くないためにエッチング速度はほとんど高まらない。
一方、SiにSiO2 を対向させた場合、Si表面より解離したSi原子は酸化膜表面において、消費されるため、反応は抑制されずさらに進行する。SiO2表面側で生成されるSiOは蒸気圧が高いため、Si同士が対向する場合に比べると、反応は律速されにくい。
また、単結晶シリコン膜に対向する面の材料を炭化シリコンとした場合の単結晶シリコン膜のエッチング量は対向面をシリコンとした場合とほぼ同等であった。また、対向する面の材料を窒化シリコンとした場合も同様に単結晶シリコン膜のエッチング量は対向面をシリコンとした場合と同様に抑制された。
すなわち、Si膜を水素を含む還元性雰囲気中で熱処理する場合、対向する面を酸化シリコンではなく、シリコン、シリコンと炭素、シリコンと窒素のいずれか1つを主成分に含む材料即ち酸素を主成分としない材料にする。要するにシリコンと雰囲気を介して反応しない材料にて対向面を構成することによって、シリコン膜のエッチングレートは酸化シリコンを対向面とする場合に比して、少なくとも1/10以下に低下する。即ち実質的にエッチング量を0にできる。
(熱処理装置)本発明に用いられる熱処理装置の代表例は図1に示したとおりであるが、以下に述べるように各種変更がなされたものでもよい。
図5は別の実施の形態による熱処理装置を示す。
図5の装置では、ガス源5からの水素を含むガスの一部は基材Wと対向面構成部材3との間の間隔、即ち作用空間ASを通過して、排気ポンプ8へと流れるように構成されている。
そして、基材Wと対向面構成部材3との配置方法は、図1に示したように炉1を構成する炉管の長手方向(図中横方向)に平行にすることに限定されることはなく、図5のようにしてもよい。或いは後述するように、横型炉に基材Wと部材3とを傾斜させて配置したり、垂直に立てて配置してもよい。
又、1つの炉内に複数の基材Wをそれぞれ平行になるよう間隔をおいて重ねて配置することもできる。
図6はこのような複数の基材を一括して熱処理できる熱処理装置を示している。
表面が非酸化シリコンからなる基材W1,Wを全てが共に上向きになるように配置する。この時、最上位にある基材W1の表面には対向する面がない為、この基材W1の表面では所望の熱処理がなされない。よって、この場合、基材W1はダミー基材として機能する。最上位の基材W1を除く、他の基材Wは、それぞれ対向面が上にある基材Wの非酸化シリコンからなる裏面に対向している為、基材Wのシリコンからなる表面は、ほとんどエッチングされずにアニールされる。
全ての基材W1,Wを下向きに配置する場合は、最下位の基材がダミー基材となる。
又、図6はいわゆる縦型炉の構成の要部を示しているが、これを横に向ければ、複数の基材を一括してアニールできる横型炉になる。
図6の装置は非酸化シリコンからなる裏面を有する基材を処理する場合でなければ、複数の基材を一括してアニールできない。
そこで、裏面に酸化シリコン膜が形成されているSOIウエハや、石英ガラスからなる基板のように裏面に酸化シリコンがある基材の場合にも適用できるようにした例を図7に示す。
即ち、2つの基材の間に少なくとも裏面が非酸化シリコンからなる対向面構成部材31を介在させることにより、基材W2のSi表面が部材31の非酸化シリコンからなる裏面(対向面4)に対向させている。この構成により基材W2のSi表面がエッチングされずにアニールされる。
又、図7では部材31の形状を基材を保持するトレイ状に加工しているが、このような形状に限定されることはなく、単なる板状であってもよい。この部材はSiCやSi等により作製できる。又、石英ガラスからなる母材表面をSi,SiC,SiN等でコートしたものでもよい。
いずれの場合も対向面との距離が、直径100mm以上の半導体基材においては、概ね20mm以下、より好ましくは10mm以下であれば、対向面材料との相互作用によるエッチングの抑制効果が得られる。
また、水素を含む還元性雰囲気中での熱処理工程における基材の主面(表面)のシリコンのエッチング速度は雰囲気ガス中に含まれる水分、酸素分等の酸化性不純物の存在により増速される。これら水分や酸素の供給を抑制すべく主面近傍の雰囲気ガスの流速を小さくすれば、これら不純物ガスによるエッチング分は低下する。こうして非酸化シリコン対向面との相互効果によるエッチングが抑制される。特に図8に示すように、炉心管1に設置した基材Wの表面をガス流11,14に対して直交するように配置した上で、非酸化シリコンで構成される対向面4を間隔を20mm以下として配置すれば、前記表面上の雰囲気ガスの流速12を実質的に0とすることができ、対向する酸化シリコンによるエッチング効果を十分に引き出すことができる。
図8では、基材Wとして、シリコン基板21上に埋込み絶縁膜22とシリコンからなるSOI層23を有するSOI基板と、自然酸化膜が除去されたシリコン基板からなる対向面構成部材3を用いる例を示している。
図9は、図5に示した縦型炉を有する熱処理装置を変更したものである。
4つの基材Wとダミー基材W1とが同軸上に配されて、支持体としてのボート13の突起部に保持されている。
ここでは、ダミー基材W1として表面及び裏面に酸化シリコン膜が形成されていないSi基板を用い、基材Wとして裏面に酸化シリコン膜が形成されていないSOI基板を用いた例を示している。
この例においても炉心管の断面積より半導体基材の断面積を除いた領域(即ち外周部)を通過するガスの流速が、10cc/min・cm2 〜300cc/min・cm2 となるようにして、基材Wの表面近傍で該表面と平行な方向のガス流速12は、基材Wの外周部の該表面と垂直な方向のガス流速11より小さくなるようにしている。
更に、炉心管の断面積より半導体基材の断面積を除いた領域(外周部)の流速11を30cc/min・cm2 〜150cc/min・cm2 程度にして、基材Wの表面の中心近傍のガスの流速12を実質的に0にするとよい。
図10は本発明による更に別の熱処理装置を示す。
この熱処理装置は、SiC等の非酸化シリコンからなる内面を有する内管31と、溶融石英のような石英ガラスからなる炉心管132と、SiC等の非酸化シリコンからなる表面を有する外套管145と、を有している。124,125,147はOリング、122,148はフランジである。126は密閉ふたである。
そして、水素含有還元性ガスは下方にある導入口105より流路141を通ってウエハWが配置された空間に導入される。このガスは開口135から逆止弁のような逆流抑制手段(136,137)を通って、炉心管132と内管131との間の流路142に流れる。そして、排気口106より流路142内のガスが排気される。
炉心管132と密閉式の外套管145との間の空間143には下方にあるパージガス導入口146より、He,Ar,Ne,N2 ,Ku,Xe等の不活性ガスが導入され、上方のパージガス排気口144より排気される。
水素ガスはウエハWが配置された空間の高温領域に導入されるまでは、1000℃以上に加熱された酸化シリコンに接することがない。即ち、酸化シリコンである発泡石英のヒートバリア109は、加熱器2による高温加熱領域150の外にある為、流路141を通って、水素ガスが供給されても水分発生はほとんどなく、ガス中への取り込みは無視し得る程少ない。
高温加熱領域150内にあり且つ内管131内である空間即ちウエハが配置された空間の高温領域に接する内面は、全てSiC等の非酸化シリコン材料で構成されている為、ここでも水分の発生は抑制されている。
内管131内のガスは管の中心にある開口135より排出される為、均一なガス流が得られる。
炉心管は、溶融石英のような酸化シリコンからなる密閉式の管なので、断熱効果に優れ、高温加熱領域150の内部の温度を均一化している。又、内管131からの水素のリークが生じても、炉心管132の外に漏れることはない。
ウエハWを保持するボート13もSiCのような非酸化シリコンからなる表面を有しているので、水分を発生させない。
密閉式外套管145とパージガスにより、加熱器2からの金属不純物の内管側への侵入を防止している。
ボート13の上部は、最上位のウエハWと対向する、SiCのような非酸化シリコンからなる平面を備えており、最上位ウエハWのエッチングを抑止している。
又、ウエハWの裏面は、酸化膜を除去してSiを露出させたり、非酸化シリコンの膜で被覆しておくことにより、非酸化シリコンからなる裏面に示している。以上、説明した各熱処理装置においても、図1の装置と同様、炉1,131、トレイ31、支持体9,13等は石英ガラス等により作製されたものを用いるのではなく、非酸化シリコンからなる表面を有するもの、例えばSiCやSiやSiN等からなるものを用いるとよい。
又、ヒーター2としては、抵抗加熱器、ランプ加熱器、高周波加熱器等が用いられる。
更に、不活性ガスが導入可能な、ウエハを収容するロードロック室を炉に付設して炉内を酸化雰囲気に晒すことなくロードロック室内の不活性ガス雰囲気から炉内の不活性ガス雰囲気中にウエハを搬入することが好ましい。
(SOI基板の作製方法)次に、本発明の熱処理方法を利用したSOI基板の作製方法について述べる。
図11は、水素注入剥離法、PACE法、エピタキシャル層移設法に代表される貼り合わせSOI基板の作製方法のフローチャートを示す。
まず、工程S1では第1の基材を用意する。例えば、少なくとも一表面を酸化した絶縁膜付Siウエハに水素イオンや希ガスイオンを注入し、所定の深さの位置に分離層(潜在層)を形成しておく。或いはSiウエハの表面を多孔質化した後、非多孔質Si層をエピタキシャル成長させる。
又、PACE法の場合は酸化膜のないSiウエハ又は表面を酸化させたSiウエハを用意する。
一方、工程S2では、第2の基材を用意する。例えば通常のSiウエハ表面を酸化させたSiウエハや、自然酸化膜を除去したSiウエハや、石英ガラスウエハや金属基板等を用意する。
続いて、工程S3では、上記工程S1,S2で用意した第1及び第2の基材を直接又は間に接着層を介して間接的に貼り合わせる。
この時、第1の基材の貼り合わせ面又は第2の基材の貼り合わせ面のうち少なくともいずれか一方が絶縁体で形成されていればよりよい。勿論SOI構造以外の基材を作製する場合は、この限りではない。
更に、貼り合わせ前に絶縁体からなる貼り合わせ面に水素、酸素、窒素、希ガスのイオンを照射して貼り合わせ面を活性化してもよい。
次に、工程S4では、貼り合わされた第1及び第2の基材(アセンブリ)から第1の基材の一部(不要部分)を除去する。除去方法は大きく分けると2種類あり、一つは第1の基材の裏面から、研削及び/又はエッチング等により第1の基材の一部を除去する方法である。もう一つは第1の基材に形成された分離層において、第1の基材の裏面側部分と表面側部分とを分離する方法である。後者の方法によれば、不要部分はウエハ形状を維持しているので、再び、第1の基材又は第2の基材として利用することができる。分離方法としては、熱処理する方法、アセンブリの側面に液体や気体からなる流体を吹きつける方法、機械的に剥す方法等がある。
そして、不要部分が除去されたアセンブリ(SOI基板)のシリコン層(SOI層)の表面は、注入されたイオンにより生じた空隙、多孔質体の孔、研削、エッチング等に起因した凹凸を有する粗面になっている。そこで、工程S5では上述した熱処理(水素アニール)を施すことにより粗面となっているシリコン層の上層部を平滑化する。これにより、表面粗さが0.2nm以下(1μm角エリア)の平滑な面になる、条件を最適化すれば0.15nm以下、更には0.1nm以下にすることもできる。
図12はSIMOX法に代表されるSOI基板の作製方法のフローチャートを示す。
まず、工程S11では、出発物質としてSiウエハを用意する。
次に工程S12では、例えば加速電圧100keV〜300keV、2×1017cm-2〜4×1018cm-2程のドーズ量で酸素イオンを打ち込む。
工程S13では酸素イオンが注入されたウエハを1000℃〜1400℃の温度で熱処理して埋込酸化膜を形成する。
次いで、工程S14ではSOI層の表面に酸化膜が形成されている場合には、その表面酸化膜を除去する。
こうして得られたSOI基板のSOI層の表面は出発物質として研磨されたウエハを用いたとしても、酸素イオン打ち込み(工程S12)と、埋込酸化膜の生成(工程S13)に起因した凹凸を有する表面となっている。そこで、工程S15では、上述した熱処理(水素アニール)を施すことによりSOI層の凹凸を有する上層部を除去する。この時、平滑化効果によりエッチングされた後のSOI層表面は1μm角エリアにおけるRrmsが0.4nm以下50μm角エリアにおけるRrmsが1.5nm以下の平滑な面になる。
以上説明した本発明による半導体基材の作製方法のうち、水素注入剥離法を利用したSOI基板の作製工程について、図13を参照してより詳しく述べる。
工程S21では、第1の基材としてのSiウエハ31の少なくとも表面を熱酸化して埋込み絶縁膜22となる酸化シリコン層を形成し、水素イオン又は希ガスイオンをドーズ量1×1016cm-2〜1×1019cm-2、加速電圧10keV〜500keVにてイオン打ち込みを行う。イオン打ち込みの方法は、イオン打ち込み装置を用いる以外に、水素や希ガスのプラズマとウエハとの電位差を利用してそのプラズマからイオンをウエハに打ち込む方法を用いることもできる。こうして、分離層32を形成する。
工程S22では、第2の基材としての別のSi基板21を用意し、必要に応じて貼り合わせ面にある自然酸化膜を除去し、Si表面と、絶縁膜22の表面と、を貼り合わせる。こうして2つのSi基板が貼り合わされたアセンブリが出来る。
工程S23では、酸化性雰囲気中で熱処理を行うとともに分離層32において、アセンブリを分離する。分離の為には、アセンブリの側面に高圧の流体(例えば、液体や気体)を付与すれば、分離層は比較的機械的に強度の弱い脆弱層となっている為、シリコン膜22をウエハ21上に残したままウエハ31がアセンブリから剥離(分離)される。
或いは、貼り合わせ工程と同時又はその工程後に行われる酸化性雰囲気下での熱処理を500℃以上の高温で行うと、分離層において水素イオン、窒素イオン又は希ガスイオンに起因して生じた微少気泡が成長し、シリコン膜22をウエハ21上に残したままウエハ31がアセンブリから分離される。
このようにアセンブリから分離・除去されたウエハ31は、シリコン膜23の厚さ分、厚みが減少しているものの、ウエハ形状を維持しているので、再び第1又は第2の基材として利用できる。再利用の場合は、分離により露出した面を研磨した後、エピタキシャル成長により単結晶シリコン膜を成長させるとよい。
分離後のシリコン膜25の表面は、微小気泡(微小空隙)に起因した凹凸を有する粗面となっている。そこで、工程S24では上述したように、非酸化シリコンからなる平面を対向させて水素含有還元性雰囲気中で熱処理を行い粗面を有するシリコン膜25の上層部を平滑化する。
図13の例では、酸化性雰囲気での熱処理により裏面に酸化シリコン膜24を有するウエハ21になっている為、工程S23終了後のSOI基板の裏面にも酸化シリコン膜24が残っている。よって、シリコン膜25の表面をマスクして、酸化シリコン膜をフッ酸等のエッチャントで除去する。その後、このSOI基板は図6、図9、図10に示した装置を用いて複数枚同時に本発明によるエッチングが行える。
或いは、貼り合わせの熱処理を非酸化性雰囲気中で行い貼り合わせ工程時に同時に裏面酸化膜24が形成されないようにし、水素アニール前に自然酸化膜を除去すれば裏面は非酸化シリコンとなる。
次に、エピタキシャル層移設法を利用した半導体基材の作製法についてより詳しく述べる。
図14に示すようにまず工程S31では、第1の基材としてSi単結晶からなる基板31を用意して、少なくとも主表面側に多孔質構造の層33を形成する。多孔質Siは、Si基板をHF溶液中で陽極化成(Anodization)することにより形成できる。多孔質層は10-1nm〜10nm程度の直径の孔が10-1nm〜10nm程度の間隔で並んだスポンジのような構造をしている。その密度は、単結晶Siの密度2.33g/cm3 に比べて、HF溶液濃度を50〜20%に変化させたり、アルコール添加比率を可変したり、電流密度を変化させることで2.1〜0.6g/cm3の範囲に変化させることができる。また、多孔質化される部分の比抵抗と電気伝導型を予め変調しておけば、これに基づいて多孔度を可変することが可能である。p型においては、同じ陽極化成条件においては、縮退基板(P+)に比べ、比縮退基板(P- )は孔径は細くなるものの孔密度が1桁程度増加し、多孔度が高い。すなわち、多孔度はこれらの諸条件を可変することによって制御することが可能であり、いずれかの方法に限定されるものではない。多孔質層33は単層、多孔度の異なる層が複数積層された構造のいずれでも構わない。陽極化成により形成された多孔質層中に投影飛程が含まれるようにイオン注入を行えば、投影飛程近傍では多孔質の孔壁中に気泡が形成され、多孔度を高めることもできる。イオン注入は陽極化成による多孔質層形成の前であっても、後であっても構わない。さらには多孔質層33上に単結晶半導体層構造を形成した後であっても構わない。
次に、工程S32では多孔質層33上に少なくとも1層の非多孔質単結晶半導体の層23を形成する。非多孔質単結晶半導体の層23は、エピタキシャル成長により形成した単結晶Si層、多孔質層33の表面層を非多孔質化した層などの中から任意に選ばれる。さらに、単結晶Siの層33上に酸化シリコン層22を熱酸化法により形成すると、単結晶シリコン層と埋め込み酸化膜の界面を界面準位の少ない熱酸化により形成された界面とすることができ、好適である。工程S33では前記非多孔質単結晶Siの層23を形成した半導体基板の主面(貼り合わせ面)を第2の基板21の表面(貼り合わせ面)と室温で密着させる。密着させる前には表面の付着物、異物を除去するために洗浄することが望ましい。第2の基板は、Si、Si基板上に酸化Si膜を形成したもの、石英等の光透過性基板、サファイアなどから選択することができるが、これに限定されるものではなく、貼り合わせに供される面が十分に平坦、平滑であれば構わない。図13では、第2の基板と第1の基板とを絶縁層22を介して貼り合わせた様子を示してあるが、絶縁層22はなくてもよい。
貼り合わせに際しては絶縁性の薄板を第1及び第2の基板の間にはさみ3枚重ねで貼り合わせることも可能である。
続いて、第1の基板31の裏面側の不要部分と多孔質層33を除去して非多孔質単結晶Si層23を表出させる。これには、前述したとおり2つの方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
第1の方法では、第1の基板21を裏面側より除去して多孔質層33を表出させる(工程S34)。
続いて、多孔質層33を除去して非多孔質単結晶シリコン層23を表出させる(工程S35)。
多孔質層の除去は選択エッチングによることが望ましい。少なくとも弗酸と過酸化水素水を含む混合液を用いると多孔質シリコンは非多孔質単結晶シリコンに対して、105 倍選択的にエッチングできる。上記したエッチング液には、気泡の付着を防止するための界面活性剤を添加してもよい。特にエチルアルコールのようなアルコールが好適に用いられる。多孔質層が薄ければ、この選択エッチングを省略してもよい。
第2の方法では、分離層となる多孔質層33中で基板を分離して、図13の工程S34のような状態を得る。分離する方法としては、加圧、引っ張り、せん断、楔、等の外力をかける方法;超音波を印加する方法;熱をかける方法;酸化により多孔質Siを周辺から膨張させ多孔質Si内に内圧をかける方法;パルス状に加熱し、熱応力をかけるか、あるいは軟化させる方法;ウォータージェット、ガスジェット等の流体を噴出する方法等があるがこの方法に限定されるものではない。
分離層は互いに異なる多孔度の層を少なくとも2つ有することが望ましい。
続いて、工程S35では第2の基板21の表面側に残留する多孔質層33をエッチングにより除去する。多孔質のエッチング方法は前記多孔質層33をエッチングにより表出させる方法と同様である。第2の基板21側に残留した多孔質シリコン層33が極めて薄く、均一な厚みであるならば、フッ酸と過酸化水素水とによる多孔質層のウエットエッチングは実施しなくてもよい。
続いて、工程S36では水素を含む還元性雰囲気での熱処理を施し、単結晶Si層23の凹凸を有する上層部25をアニールする。この時、単結晶シリコン層中のボロン濃度の低減及び、表面平滑化も同時に達成できる。
本発明で得られる半導体基板では、第2の基板21上に単結晶Si膜23が絶縁層22を介して平坦に、しかも均一に薄層化されて、基板全域に大面積に形成されている。こうして得られた半導体基板は、絶縁分離された電子素子作製という点から見ても好適に使用することができる。
分離された第1のSi単結晶基板31はその分離面に残留する多孔質層を除去して、更に表面平滑性が許容できないほど荒れている場合には表面平滑化を行う。こうすれば再度第1のSi単結晶基板31、あるいは次の第2の基板21として使用できる。
図13に示した例では、基板21の裏面には酸化シリコンが形成されていない。基板21そのものが溶融石英のように酸化シリコンからなる場合は、そこで、工程S35の後にシリコン膜23をマスクして裏面にSi,SiC,SiN等の膜を形成したり、酸化シリコンのトレイを用いて水素アニールすればよい。
図15は、本発明による熱処理前後のシリコン表面の様子を模式的に示している。
W3は、本発明による熱処理前の基材の断面を示し、W4は、その熱処理後の基材の断面を示している。
シリコンが酸化シリコンと対向しない場合、シリコン表面から生成されたSiH2 に代表されるシリコンを含むガス成分は消費されないため、飽和蒸気圧に達するとシリコンのガス化反応、すなわち、エッチングは抑制される。シリコン膜近傍におけるガス流速を小さくすることで、シリコン表面から生成されるSiH2等のシリコンを含むガス成分の蒸気圧を高く保持すれば、シリコンのエッチングは抑制できる。
熱処理前、1μm角のエリアを原子間力顕微鏡で観察した時、表面の平均二乗粗さ(Rrms)が0.2nm〜20nm程であった粗面も、本発明によるエッチングによって平滑化され、Rrmsは0.07nm〜0.15nm程になる。これは、研磨されたSiウエハと同等か、それよりも一層平滑な面に相当する値である。
図15中、hは高低差(ピーク ツー バレー)、pは周期を示している。
基材の表面を研磨等により平滑化すると膜23の厚みtが減少するのに対して、本発明によればエッチングレートは1150℃で0.01nm程にできるので、膜厚減少はほぼ無しとみなせる。
本発明によれば、表面粗さは、少なくとも3分の1程度、より好ましくは100分の1程度平滑化されるので、例えば高低差hが数nmから数十nmと大きく、周期pが数nmから数百nmの大きな凹凸が観察されるシリコン表面であっても、熱処理により、少なくとも高低差がその値より低い値例えば2nm以下より好ましくは0.4nm以下の平坦な表面にすることもできる。
この現象は、表面の再構成であると考えられる。即ち、荒れた表面では、表面エネルギーの高い稜状の部分が無数に存在し、結晶層の面方位に比して高次の面方位の面が多く表面に露出しているが、これらの領域の表面エネルギーは、単結晶表面の面方位に依存する表面エネルギーにくらべて高い。水素を含む還元性雰囲気の熱処理では、例えば水素の還元作用により表面Si原子の移動のエネルギー障壁は下がり、熱エネルギーにより励起されたSi原子が移動し、表面エネルギーの低い、平坦な又は平滑な表面を構成していくと考えられる。単結晶表面の面方位は低指数であるほど、本発明による平坦化・平滑化は促進される。
(実施例1:エピタキシャル層移設法/横型炉/対向面Si)比抵抗が0.015ΩcmのボロンドープSiからなる(100)配向の6インチウエハ表面を49%HFとエチルアルコールを2:1で混合した溶液中で陽極化成してウエハの表面に多孔質シリコンを10μmの厚みで形成した。このシリコンウエハを酸素雰囲気中400℃で1時間熱処理した。こうすると多孔質層の表面及び孔内壁面に極薄酸化膜が形成される。その後、1.25%のHF水溶液に30秒浸け、多孔質層の表面および表面近傍の孔内壁面に形成された極薄酸化膜を除去した後、よく水洗して乾燥させた。続いてこのシリコンウエハをエピタキシャル成長装置に設置し、1100℃水素雰囲気で熱処理して多孔質シリコンの表面の孔をほとんど封止した。引き続いて、水素ガスにシリコンソースガスとしてジクロルシランを添加することにより該多孔質シリコン上に単結晶シリコン膜を平均300nm±5nmの厚みで形成した。このシリコンウエハをエピタキシャル成長装置より取り出して、酸化炉に設置し、酸素と水素の燃焼ガスにより該単結晶シリコン膜表面を酸化して酸化シリコン膜を200nm形成した。酸化された結果単結晶シリコン膜の厚さは210nmになった。このシリコンウエハと別に用意した第2のシリコンウエハとにそれぞれ一般的にシリコンデバイスプロセス等で用いられるウェット洗浄を施した。そして、清浄な表面(貼り合わせ面)を形成したのち、それらウエハ同士を貼り合わせた。貼り合わせたシリコンウエハアセンブリを熱処理炉に設置し、1100℃1時間の熱処理を施し、貼り合わせ面の接着強度を高めた。熱処理の雰囲気は窒素、酸素の混合雰囲気とした。このシリコンウエハアセンブリの第1のシリコンウエハ側の裏面を研削して、多孔質シリコンを露出させた。HFと過酸化水素水の混合溶液中に浸して、多孔質シリコンをエッチングにより除去し、ウェット洗浄にてよく洗浄した。単結晶シリコン膜は酸化シリコン膜と共に第2のシリコンウエハ上に移設され、SOIウエハが作製された。
移設された単結晶シリコンの膜厚を面内10mmの格子点でそれぞれ測定したところ、膜厚の平均は210nmばらつきは±5nmであった。また、表面粗さを原子間力顕微鏡で1μm角、50μm角の範囲について256×256の測定ポイントで測定したところ、表面粗さは平均二乗粗さ(Rrms)でそれぞれ10.1nm、9.8nmであった。また、ボロン濃度を二次イオン質量分析法(SIMS)により測定したところ、単結晶シリコン膜中のボロン濃度は1.2×1018/cm3であった。
このSOIウエハを裏面に形成されている酸化シリコンを予め弗酸などでエッチングして除去した後、溶融石英製の円筒状の炉心管からなる横形熱処理炉内に設置した。ガスは炉心管の一方より他方へと流れる。SOIウエハは、以下のような設置の仕方を試験した。
図16は、設置の仕方を示す概略図であり、図16において、21は支持基板としての第2のシリコンウエハ、22は埋込絶縁膜としての酸化シリコン膜、23はシリコン膜としての単結晶シリコン膜である。
試料A :図16(a):SOIウエハ1枚を炉内に水平に設置;
試料B :図16(b):SOIウエハ1枚を炉内に水平に設置、SOIウエハの上方に表面に酸化膜のないシリコンウエハを向かい合わせに設置。ウエハ間の距離は約10mm;
試料C,C′:図16(c):SOIウエハ2枚を平行して炉内に傾斜して設置;
試料D,D′:図16(d):SOIウエハ2枚を単結晶シリコン膜23表面同士を対向させて、かつ、ウエハの中心が炉の中心線上にくるようにして、かつ中心線に垂直になるようにして配置;
試料E,E′:図16(e):SOIウエハ2枚を炉内の流れの上流方向に単結晶シリコン膜23を向けるようにして平行に等間隔でウエハの中心が炉の中心線上にくるようにして、かつ、中心線に垂直になるようにして設置;
ウエハはいずれの場合もSiCで構成される治具(不図示)を用いて炉1内に設置した。
炉内の雰囲気を水素に置換したのち、温度を1100℃まで昇温し、4時間保持したのち、再び降温し、ガス雰囲気を窒素に置換したのち、ウエハを取出し、単結晶シリコン膜の膜厚を再び測定した。膜厚減少量は以下の通りであった。流量は5slmであった。膜厚は面内で10mm間隔の格子点上で測定して平均した。
エッチング量 膜厚 ばらつき 試料A : 15.2nm 193.8nm ±9nm 試料B : 3nm 206nm ±5.2nm 試料C : 10.4nm 199.1nm ±8nm(上流側ウエハ)
試料C′: 1.7nm 208nm ±5nm(下流側ウエハ)
試料D : 1.4nm 208.3nm ±5nm(上流側ウエハ)
試料D′: 1.2nm 208.5nm ±5.1nm(下流側ウエハ)
試料E : 12.4nm 197.3nm ±8.5nm(上流側ウエハ)
試料E′: 1.1nm 208.7nm ±5nm(下流側ウエハ)
SOIウエハの膜厚減少量は、シリコンを対向面とした場合、全てのウエハにおいて、2nm以下であった。一方、比較例即ち、対向面の材料としてシリコンを用意せず、円筒状の溶融石英炉心管内面が実質的に対向面となる場合、即ち試料A,C(上流側)、E(上流側)には、エッチング量が10nmを超えていた。すなわち、向かい合う平面の材質をシリコンにすることによって、エッチング量は非酸化シリコンの対向面がない場合に比べて少なくとも1/5以下に抑制された。膜厚ばらつきは、熱処理前と比べ、劣化していなかった。
また、熱処理後の単結晶シリコン膜の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、平均二乗粗さ(Rrms)は 1μm角 50μm角 試料A : 0.11nm 0.35nm 試料B : 0.13nm 0.36nm 試料C′: 0.11nm 0.33nm 試料D : 0.13nm 0.35nm(上流側)
試料D′: 0.13nm 0.35nm(下流側)
試料E′: 0.12nm 0.32nm 市販のSiウエハ 0.13nm 0.31nm(参考)
と市販のバルクSiシリコンウエハ(研磨されたもの)並みに平滑化されていた。
単結晶シリコン膜中のボロン濃度についても、熱処理後に二次イオン質量分析(SIMS)で測定したところ、いずれも5×1015/cm3 以下に低減されデバイス作製が十分に可能なレベルに低減されていた。
(実施例2:エピタキシャル層移設法/縦形炉/各種ボート/裏面酸化膜剥離)比抵抗が0.017ΩcmのボロンドープSiからなる(100)配向の8インチSiウエハ表面を49%HFとエチルアルコールを2:1で混合した溶液中で陽極化成してウエハの表面に多孔質シリコンを10μmの厚みで形成した。このシリコンウエハを酸素雰囲気中400℃で1時間熱処理した後、1.25%のHF水溶液に30秒浸け、多孔質の表面および表面近傍に形成された極薄酸化膜を除去した後、よく水洗して乾燥させた。続いてこのシリコンウエハをエピタキシャル成長装置に設置し、1100℃水素雰囲気で極微量のシランガスを添加しながら熱処理して多孔質シリコンの表面の孔をほとんど封止した。引き続いて、水素ガスにシリコンソースガスとしてジクロルシランを添加することにより該多孔質シリコン上に単結晶シリコン膜を平均310nm±5nmの厚みで形成した。このシリコンウエハをエピタキシャル成長装置より取り出して、酸化炉に設置し、酸素と水素の燃焼ガスにより該単結晶シリコン膜表面を酸化して酸化シリコン膜を200nm形成した。酸化された結果単結晶シリコン膜の厚さは210nmになった。このシリコンウエハと、熱酸化によって200nmの酸化シリコン膜を全面に形成した第2のシリコンウエハと、にそれぞれ一般的にシリコンデバイスプロセス等で用いられるウェット洗浄を施した。そして、清浄な表面を形成したのち、それらウエハ同士を貼り合わせた。貼り合わせたシリコンウエハ組を熱処理炉に設置し、1100℃1時間の熱処理を施し、貼り合わせ面の接着強度を高めた。熱処理の雰囲気は窒素、酸素の混合気中で昇温し、酸素と水素の燃焼ガスに置換して1100℃1時間保持し、窒素雰囲気中で降温した。このシリコンウエハアセンブリの第1のシリコンウエハ側の裏面を研削して、多孔質シリコンを露出させた。HFと過酸化水素水の混合溶液中に浸して、多孔質シリコンをエッチングにより除去し、ウェット洗浄にてよく洗浄した。単結晶シリコン膜は酸化シリコン膜と共に第2のシリコンウエハ上に移設され、SOIウエハが作製された。
移設された単結晶シリコンの膜厚を面内10mmの格子点でそれぞれ測定したところ、膜厚の平均は210nmばらつきは±7nmであった。また、表面粗さを原子間力顕微鏡で1μm角、50μm角の範囲について256×256の測定ポイントで測定したところ、表面粗さは平均二乗粗さ(Rrms)でそれぞれ10.1nm、9.8nmであった。また、ボロン濃度を二次イオン質量分析法(SIMS)により測定したところ、単結晶シリコン膜中のボロン濃度は1.2×1018/cm3であった。
これらSOIウエハの裏面の酸化シリコン膜をあらかじめ弗酸でエッチングして除去したのち、図9に示したような溶融石英製の炉心管からなる縦形熱処理炉に設置した。ガスは炉上部より下方へと流れる。
対向面構成部材3として市販のバルクSi8インチウエハを用いた。ウエハWは図9の如く、水平に、かつ、1枚のSOIウエハの裏面のシリコンが別のSOIウエハのSOI層表面とおよそ6mm間隔で向かい合うように、かつ、ウエハの中心と炉心管1の中心線が一致するようにして、SiC製のボート4上に設置し、一番上のSOIウエハの上にはバルクSi8インチウエハ3を同じ間隔で配置した。炉内の雰囲気を水素に置換したのち、炉内温度を1100℃まで昇温し、4時間保持したのち、再び降温し、ウエハを取出し、SOI層の膜厚を再び測定した。SOIウエハの膜厚減少量は全てのウエハにおいて、1nm以下であった。
一方、ウエハを支持するボートを石英ガラス製のものに代えて同様な実験を試みたところ、ウエハ中央部のエッチング量はSiC製ボートの場合と同様に1nm以下であったが、ある1つのウエハWにおいてボートで支持されている位置付近でのエッチング量が最大で8nmと大きくなったものがあった。すなわち、ボート材質は非酸化シリコンの表面をもつもの、例えばSiCにすることが好ましい。
一方、熱処理前にウエハ裏面の酸化シリコン膜を剥離せず、SOI層と向かい合う面が酸化シリコンとなるようにして、上と同じ水素雰囲気中の熱処理を施した場合には、SOIウエハと向かい合ったSOI層の膜厚減少量はおよそ9nmと大きく、一番上のシリコンウエハと向かい合ったSOIウエハのみ、エッチング量は1nm以下であった。すなわち、向かい合う面の材質をシリコンにすることによって、エッチング量はおよそ1/10に抑制された。
この結果を図17に示した。図17は、本実施例の熱処理によるSOI層の膜厚減少量の炉心管内の位置依存を示す図である。横軸は炉心管内のウエハの配置位置(上からの順番)を示し、縦軸は、熱処理による膜厚の減少量(nm)を示す。また、符号Fは、本例に基づいて、予めSOIウエハの裏面酸化膜を剥離した後、SOI層を他のSOIウエハのシリコンからなる裏面と対向させて配置した場合のデータを示し、符号Gは比較例として、SOIウエハの裏面酸化膜を剥離せず、SOI層を他のSOIウエハの裏面酸化膜と対向させて配置した場合を示す。なお、1枚目のSOIウエハの上には、炉の均熱性を確保するために配置したシリコンウエハ(ダミーウエハ)が配置されているので、そのシリコンウエハの裏面のシリコンにSOIウエハ表面が対向している。
図17より明らかな通り、裏面の酸化シリコンを除去しない場合は、SOIウエハのうち、一番上に位置し、Siウエハの裏面と対向したSOIウエハのみ膜厚減少量が1nm以下だったが、他のSOIウエハのSOI層の膜厚減少量は10nm程であった。
また、熱処理後の単結晶シリコン膜の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、平均二乗粗さRrmsは1μm角で0.11nm、50μm角で0.35nmと市販シリコンウエハ並みに平滑化されていた。単結晶シリコン膜中のボロン濃度についても、熱処理後に二次イオン質量分析(SIMS)で測定したところ、いずれも5×1015/cm3以下に低減されデバイス作製が十分に可能なレベルに低減されていた。
(実施例3:エピタキシャル層移設法/縦形炉/SiCトレイ)比抵抗が0.017ΩcmのボロンドープSiからなる(100)配向の8インチSiウエハ表面を49%HFとエチルアルコールを2:1で混合した溶液中で陽極化成してウエハの表面に多孔質シリコンを10μmの厚みで形成した。このシリコンウエハを酸素雰囲気中400℃で1時間熱処理した後、1.25%のHF水溶液に30秒浸け、多孔質の表面および表面近傍に形成された極薄酸化膜を除去した後、よく水洗して乾燥させた。続いてこのシリコンウエハをエピタキシャル成長装置に設置し、1100℃水素雰囲気で極微量のシランガスを添加しながら熱処理して多孔質シリコンの表面の孔をほとんど封止した。引き続いて、水素ガスにシリコンソースガスとしてジクロルシランを添加することにより該多孔質シリコン上に単結晶シリコン膜を平均310nm±5nmの厚みで形成した。このシリコンウエハをエピタキシャル成長装置より取り出して、酸化炉に設置し、酸素と水素の燃焼ガスにより該単結晶シリコン膜表面を酸化して酸化シリコン膜を200nm形成した。酸化された結果単結晶シリコン膜の厚さは210nmになった。このシリコンウエハと、熱酸化によって200nmの酸化シリコン膜を全面に形成した第2のシリコンウエハと、にそれぞれ一般的にシリコンデバイスプロセス等で用いられるウェット洗浄を施した。そして、清浄な表面を形成したのち、それらウエハ同士を貼り合わせた。貼り合わせたシリコンウエハアセンブリを熱処理炉に設置し、1100℃1時間の熱処理を施し、貼り合わせ面の接着強度を高めた。熱処理の雰囲気は窒素、酸素の混合気中で昇温し、酸素と水素の燃焼ガスに置換して1100℃1時間保持し、窒素雰囲気中で降温した。このシリコンウエハアセンブリの第1のシリコンウエハ側の裏面を研削して、多孔質シリコンを露出させた。HFと過酸化水素水の混合溶液中に浸して、多孔質シリコンをエッチングにより除去し、ウェット洗浄にてよく洗浄した。単結晶シリコン膜は酸化シリコン膜と共に第2のシリコンウエハ上に移設され、SOIウエハが作製された。
移設された単結晶シリコンの膜厚を面内10mmの格子点でそれぞれ測定したところ、膜厚の平均は210nmばらつきは+/−7nmであった。また、表面粗さを原子間力顕微鏡で1μm角、50μm角の範囲について256×256の測定ポイントで測定したところ、表面粗さは平均二乗粗さ(Rrms)でそれぞれ10.1nm、9.8nmであった。また、ボロン濃度を二次イオン質量分析法(SIMS)により測定したところ、単結晶シリコン膜中のボロン濃度は1.2×1018/cm3であった。
図9のような溶融石英製の炉心管からなる縦形熱処理炉にこれらSOIウエハをすべて図7に示したようなSiC製のトレイに載せて設置した。ガスは炉上部より下方へと流れる。ウエハは、水平に、かつ、1枚のSOIウエハを載せたSiCトレイの裏面が別のSOIウエハのSOI層表面とおよそ6mm間隔で向かい合うように、かつ、ウエハの中心と炉心管の中心線が一致するようにして、SiC製のボート上に設置し、一番上のSOIウエハの上にもSiC製のトレイに載せた市販のシリコンウエハを同じ間隔で配置した。炉内の雰囲気を水素に置換したのち、温度を1180℃まで昇温し、1時間保持したのち、再び降温し、ウエハを取出し、SOI層の膜厚を再び測定した。SOIウエハの膜厚減少量は全てのウエハにおいて、1nm以下であった。
一方、SiCトレイに代えてSiO2 トレイを用い、SOI層と向かい合う面が酸化シリコンとなるようにして、上と同じ水素雰囲気中の熱処理を施した場合には、SOIウエハと向かい合ったSOI層の膜厚減少量はおよそ40nmと大きかった。
SOIウエハ裏面の酸化シリコンを除去しない場合でも、SOIウエハをSiCトレイに載せて、SOIウエハの対向面をSiCにすることで、膜厚減少量は抑制できた。
また、熱処理後の単結晶シリコン膜の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、平均二乗粗さ(Rrms)は1μm角で0.11nm、50μm角で0.30nmと市販シリコンウエハ並みに平滑化されていた。単結晶シリコン膜中のボロン濃度についても、熱処理後に二次イオン質量分析(SIMS)で測定したところ、いずれも5×1015/cm3以下に低減されデバイス作製が十分に可能なレベルに低減されていた。
(実施例4:WJ分離エピタキシャル層移設法)比抵抗が0.017ΩcmのボロンドープSiからなる(100)配向の8インチSiウエハ表面を49%HFとエチルアルコールを2:1で混合した溶液中で陽極化成してウエハの表面に多孔質シリコンを6μmの厚みで形成した。その際、電流を変化させることにより、厚さ1μm、多孔度60%程度の高多孔度層、とその上に厚さ5μm多孔度20%の低多孔度層を形成した。このシリコンウエハを酸素雰囲気中400℃で1時間熱処理した後、1.25%のHF水溶液に30秒浸け、低多孔度の多孔質層の表面および表面近傍の孔内壁面に形成された極薄酸化膜を除去した後、よく水洗して乾燥させた。続いてこのシリコンウエハをエピタキシャル成長装置に設置し、1100℃水素雰囲気で極微量のシランガスを添加しながら熱処理して多孔質シリコンの表面の孔をほとんど封止した。引き続いて、水素ガスにシリコンソースガスとしてジクロルシランないしはシランを添加することにより該多孔質シリコン上に単結晶シリコン膜を平均310nm±5nmの厚みで形成した。このシリコンウエハをエピタキシャル成長装置より取り出して、酸化炉に設置し、酸素と水素の燃焼ガスにより該単結晶シリコン膜表面を酸化して酸化シリコン膜を200nm形成した。酸化された結果単結晶シリコン膜の厚さは210nmになった。このシリコンウエハと、熱酸化によって200nmの酸化シリコン膜を全面に形成した第2のシリコンウエハと、にそれぞれ一般的にシリコンデバイスプロセス等で用いられるウェット洗浄を施した。そして、清浄な表面を形成したのち、それらウエハ同士を貼り合わせた。貼り合わせたシリコンウエハアセンブリを熱処理炉に設置し、1100℃1時間の熱処理を施し、貼り合わせ面の接着強度を高めた。熱処理の雰囲気は窒素、酸素の混合気中で昇温し、酸素と水素の燃焼ガスに置換して1100℃1時間保持し、窒素雰囲気中で降温した。このシリコンウエハアセンブリの側面にウォータージェットによる高圧の水流をあて、流体くさびによって高多孔度多孔質層中でこのシリコンウエハアセンブリを分離して、多孔質層を露出させた。HFと過酸化水素水の混合溶液中に浸して、残留多孔質シリコンをエッチングにより選択的に除去し、ウェット洗浄にてよく洗浄した。単結晶シリコン膜は酸化シリコン膜と共に第2のシリコンウエハ上に移設され、SOIウエハが作製された。
移設された単結晶シリコンの膜厚を面内10mmの格子点でそれぞれ測定したところ、膜厚の平均は210nmばらつきは±7nmであった。また、表面粗さを原子間力顕微鏡で1μm角、50μm角の範囲について256×256の測定ポイントで測定したところ、表面粗さは平均二乗粗さRrmsでそれぞれ10.1nm、9.8nmであった。また、ボロン濃度を二次イオン質量分析法(SIMS)により測定したところ、単結晶シリコン膜中のボロン濃度は1.2×1018/cm3であった。
溶融石英製の炉心管からなる縦形熱処理炉にこれらSOIウエハの裏面の酸化シリコン膜をあらかじめ弗酸でエッチングして除去したのち、設置した。ガスは炉上部より下方へと流れる。ウエハは図9の如く、水平に、かつ、1枚のSOIウエハの裏面のシリコンが別のSOIウエハのSOI層表面とおよそ6mm間隔で向かい合うように、かつ、ウエハの中心と炉心管の中心線が一致するようにして、SiC製のボート上に設置し、一番上のSOIウエハの上には自然酸化膜を除去した市販のバルクシリコンウエハを同じ間隔で配置した。炉内の雰囲気を水素に置換したのち、温度を1100℃まで昇温し、4時間保持したのち、再び降温し、ウエハを取出し、SOI層の膜厚を再び測定した。SOIウエハの膜厚減少量は全てのウエハにおいて、1nm以下であった。
一方、熱処理前に裏面の酸化シリコン膜を剥離せず、SOI層と向かい合う面がその酸化シリコン膜となるようにして、上と同じ水素雰囲気中の熱処理を施した場合には、SOIウエハと向かい合ったSOI層の膜厚減少量はおよそ9nmと大きく、一番上のシリコンウエハと向かい合ったSOIウエハのみ、エッチング量は1nm以下であった。すなわち、向かい合う面の材質をシリコンにすることによって、エッチング量はおよそ1/10に抑制された。
また、熱処理後の単結晶シリコン膜の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、平均二乗粗さ(Rrms)は1μm角で0.12nm、50μm角で0.34nmと市販シリコンウエハ並みに平滑化されていた。単結晶シリコン膜中のボロン濃度についても、熱処理後に二次イオン質量分析(SIMS)で測定したところ、いずれも5×1015/cm3以下に低減されデバイス作製が十分に可能なレベルに低減されていた。
(実施例5:BESOI/縦形炉/SiCボート)比抵抗が0.007ΩcmのボロンドープSiからなる(100)配向の8インチウエハをエピタキシャル成長装置に設置し、1100℃水素雰囲気で熱処理し、温度を900℃に下げた後、水素ガスにシリコンソースガスとしてジクロルシランを添加することにより単結晶シリコン膜を平均310nm±5nmの厚みで形成した。このシリコンウエハをエピタキシャル成長装置より取り出して、酸化炉に設置し、酸素と水素の燃焼ガスにより該単結晶シリコン膜表面を酸化して酸化シリコン膜を200nm形成した。酸化された結果単結晶シリコン膜の厚さは210nmになった。このシリコンウエハと熱酸化によって200nmの酸化シリコン膜を全面に形成した第2のシリコンウエハと、にそれぞれ一般的にシリコンデバイスプロセス等で用いられるウェット洗浄を施した。そして、清浄な表面を形成したのち、酸素プラズマで両表面(貼り合わせ面)を活性化したのち、水洗し、それらウエハを貼り合わせた。貼り合わせたシリコンウエハアセンブリを熱処理炉に設置し、400℃10時間の熱処理を施し、貼り合わせ面の接着強度を高めた。熱処理の雰囲気は窒素とした。このシリコンウエハ組の第1のシリコンウエハ側の裏面を第1のシリコンウエハの厚みが5μm程度になるまで研削した。この後、弗酸と硝酸と酢酸の1:3:8混合液に浸け、P+層を選択エッチングした。単結晶シリコン膜は酸化シリコン膜と共に第2のシリコンウエハ上に移設され、SOIウエハが作製された。
移設された単結晶シリコンの膜厚を面内10mmの格子点でそれぞれ測定したところ、膜厚の平均は210nmばらつきは±20nmであった。また、表面粗さを原子間力顕微鏡で1μm角、50μm角の範囲について256×256の測定ポイントで測定したところ、表面粗さは平均二乗粗さ(Rrms)でそれぞれ2nm、2.2nmであった。
溶融石英製の炉心管からなる縦形熱処理炉にこれらSOIウエハを裏面の酸化シリコン膜をあらかじめ弗酸でエッチングして除去したのち、設置した。ガスは炉上部より下方へと流れる。ウエハは図9の如く、水平に、かつ、1枚のSOIウエハの裏面のシリコンが別のSOIウエハのSOI層表面とおよそ6mm間隔で向かい合うように、かつ、ウエハの中心と炉心管の中心線が一致するようにして、SiC製のボート上に設置し、一番上のSOIウエハの上には自然酸化膜を除去した市販のシリコンウエハを同じ間隔で配置した。炉内の雰囲気を水素に置換したのち、温度を1100℃まで昇温し、4時間保持したのち、再び降温し、ウエハを取出し、SOI層の膜厚を再び測定した。SOIウエハの膜厚減少量は全てのウエハにおいて、1nm以下であった。
また、熱処理後の単結晶シリコン膜の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、平均二乗粗さ(Rrms)は1μm角で0.11nm、50μm角で0.35nmと市販シリコンウエハ並みに平滑化されていた。単結晶シリコン膜中のボロン濃度についても、熱処理後に二次イオン質量分析(SIMS)で測定したところ、いずれも5×1015/cm3以下に低減されデバイス作製が十分に可能なレベルであった。
(実施例6:水素注入剥離法/縦形炉/SiCボート)比抵抗が10ΩcmのボロンドープSiからなる(100)配向の8インチウエハの表面を400nm酸化したのち、水素をイオン注入した。注入条件は、50KeV、4×1016/cm2。このシリコンウエハと別に用意した第2のシリコンウエハとにそれぞれ一般的にシリコンデバイスプロセス等で用いられるウェット洗浄を施した。そして、清浄な表面(貼り合わせ面)を形成した後、それらウエハ同士を貼り合わせた。貼り合わせたシリコンウエハアセンブリを熱処理炉に設置し、800℃10時間の熱処理を施し、貼り合わせ面の接着強度を高めた。熱処理の雰囲気は窒素とした。この熱処理中にシリコンウエハアセンブリはイオン注入の投影飛程に相当する深さで分離した。単結晶シリコン膜は酸化シリコン膜と共に第2のシリコンウエハ上に移設され、SOIウエハが作製された。
移設された単結晶シリコンの膜厚を面内10mmの格子点でそれぞれ測定したところ、膜厚の平均は210nmばらつきは±10nmであった。また、表面粗さを原子間力顕微鏡で1μm角、50μm角の範囲について256×256の測定ポイントで測定したところ、表面粗さは平均二乗粗さ(Rrms)でそれぞれ9.4nm、8.5nmであった。
溶融石英製の炉心管からなる縦形熱処理炉にこれらSOIウエハを裏面の酸化シリコン膜をあらかじめ弗酸でエッチングして除去したのち、設置した。ガスは炉上部より下方へと流れる。ウエハは図9の如く、水平に、かつ、1枚のSOIウエハの裏面のシリコンが別のSOIウエハのSOI層表面とおよそ6mm間隔で向かい合うように、かつ、ウエハの中心と炉心管の中心線が一致するようにして、SiC製のボート上に設置し、一番上のSOIウエハの上には自然酸化膜を除去した市販のシリコンウエハを同じ間隔で配置した。炉内の雰囲気を水素に置換したのち、温度を1150℃まで昇温し、1.5時間保持したのち、再び降温し、ウエハを取出し、SOI層の膜厚を再び測定した。SOIウエハの膜厚減少量は全てのウエハにおいて、1nm以下であった。
また、熱処理後の単結晶シリコン膜の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、平均二乗粗さ(Rrms)は1μm角で0.11nm、50μm角で0.35nmと市販シリコンウエハ並みに平滑化されていた。単結晶シリコン膜中のボロン濃度についても、熱処理後に二次イオン質量分析(SIMS)で測定したところ、いずれも5×1015/cm3以下に低減されデバイス作製が十分に可能なレベルであった。
(実施例7:Simox/縦形炉/SiCボート)比抵抗が10ΩcmのボロンドープSiからなる(100)配向の8インチウエハの表面に酸素をイオン注入した。注入条件は、550℃、180KeV、4×1017/cm2。このシリコンウエハを熱処理炉に設置し、Ar+O2 の混合気中1350℃20時間の熱処理を施して、埋め込み酸化膜を形成した。
移設された単結晶シリコンの膜厚を面内10mmの格子点でそれぞれ測定したところ、膜厚の平均は200nmばらつきは±10nmであった。また、表面粗さを原子間力顕微鏡で1μm角、50μm角の範囲について256×256の測定ポイントで測定したところ、表面粗さは平均二乗粗さ(Rrms)でそれぞれ0.5nm、2nmであった。また、単結晶シリコン膜中のボロン濃度を二次イオン質量分析(SIMS)で測定したところ、いずれも5×1017/cm3であった。
溶融石英製の炉心管からなる縦形熱処理炉にこれらSOIウエハを裏面の酸化シリコン膜をあらかじめ弗酸でエッチングして除去したのち、設置した。ガスは炉上部より下方へと流れる。ウエハは図9の如く、水平に、かつ、1枚のSOIウエハの裏面のシリコンが別のSOIウエハのSOI層表面とおよそ6mm間隔で向かい合うように、かつ、ウエハの中心と炉心管の中心線が一致するようにして、SiC製のボート上に設置し、一番上のSOIウエハの上には自然酸化膜を除去した市販のシリコンウエハを同じ間隔で配置した。炉内の雰囲気を水素に置換したのち、温度を1150℃まで昇温し、1.5時間保持したのち、再び降温し、ウエハを取出し、SOI層の膜厚を再び測定した。SOIウエハの膜厚減少量は全てのウエハにおいて、1nm以下であった。
また、熱処理後の単結晶シリコン膜の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、平均二乗粗さ(Rrms)は1μm角で0.3nm、50μm角で1.5nmと市販シリコンウエハ並みに平滑化されていた。単結晶シリコン膜中のボロン濃度についても、熱処理後に二次イオン質量分析(SIMS)で測定したところ、いずれも5×1015/cm3以下に低減されデバイス作製が十分に可能なレベルであった。
(実施例8:非多孔質層移設法/縦形炉/SiCボート)比抵抗が0.017ΩcmのボロンドープSiからなる(100)配向の8インチウエハ表面を49%HFとエチルアルコールを2:1で混合した溶液中で陽極化成してウエハの表面に多孔質シリコンを10μmの厚みで形成した。このシリコンウエハを酸素雰囲気中400℃で1時間熱処理した後、1.25%のHF水溶液に30秒浸け、多孔質層の表面および表面近傍に形成された極薄酸化膜を除去した後、よく水洗して乾燥させた。続いてこのシリコンウエハを縦形熱処理炉に設置し、1100℃水素雰囲気で熱処理して多孔質シリコンの表面の孔を封止して、多孔質層の表面を非多孔質化して極薄非多孔質単結晶シリコン薄膜を形成した。このシリコンウエハと、熱酸化によって200nmの酸化シリコン膜を全面に形成した第2のシリコンウエハと、にそれぞれ一般的にシリコンデバイスプロセス等で用いられるウェット洗浄を施した。そして、清浄な表面を形成したのち、それらウエハ同士を貼り合わせた。貼り合わせたシリコンウエハアセンブリを熱処理炉に設置し、1100℃1時間の熱処理を施し、貼り合わせ面の接着強度を高めた。熱処理の雰囲気は窒素、酸素の混合気中で昇温し、酸素と水素の燃焼ガスに置換して1100℃1時間保持し、窒素雰囲気中で降温した。このシリコンウエハアセンブリの第1のシリコンウエハ側の裏面を研削して、多孔質シリコン層を露出させた。HFと過酸化水素水の混合溶液中に浸して、多孔質シリコン層をエッチングにより除去し、ウェット洗浄にてよく洗浄した。こうして、非多孔質の単結晶シリコン膜は第2のシリコンウエハ上に移設され、SOIウエハが作製された。
移設された単結晶シリコンの膜厚を面内10mmの格子点でそれぞれ測定したところ、膜厚の平均は10nmであった。また、表面粗さを原子間力顕微鏡で1μm角、50μm角の範囲について256×256の測定ポイントで測定したところ、表面粗さは平均二乗粗さ(Rrms)でそれぞれ10.1nm、9.8nmであった。
こうして得られたSOIウエハの裏面の酸化シリコン膜をあらかじめ弗酸でエッチングして除去したのち、溶融石英製の炉心管からなる縦形熱処理炉にSOIウエハを設置した。ガスは炉上部より下方へと流れる。ウエハは、図9の如く、水平に、かつ、1枚のSOIウエハのシリコンからなる裏面が別のSOIウエハのSOI層表面とおよそ6mm間隔で向かい合うように、かつ、ウエハの中心と炉心管の中心線が一致するようにして、SiC製のボート上に設置し、一番上のSOIウエハの上には自然酸化膜を除去した市販のシリコンウエハを同じ間隔で配置した。炉内の雰囲気を水素に置換したのち、温度を1100℃まで昇温し、4時間保持したのち、再び降温し、ウエハを取出し、SOI層の膜厚を再び測定した。SOIウエハの膜厚減少量は全てのウエハにおいて、1nm以下であった。
一方、熱処理前に裏面の酸化シリコン膜を剥離せず、SOI層と向かい合う面がウエハ裏面上の酸化シリコンとなるようにして、上と同じ水素雰囲気中の熱処理を施した場合には、SOIウエハと向かい合ったSOI層の膜厚減少量はおよそ5nmと大きく、ところどころにピット状に酸化シリコンがエッチングされた場所が観察された。一番上のシリコンウエハと向かい合ったSOIウエハのみ、エッチング量は1nm以下で、ピットのないSOI層が形成された。すなわち、向かい合う面の材質を非酸化シリコンの一種のシリコンにすることによって、エッチング量を抑制し、ピットの発生を抑制できた。
また、熱処理後の単結晶シリコン膜の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、平均二乗粗さ(Rrms)は1μm角で0.11nm、50μm角で0.35nmと市販シリコンウエハ並みに平滑化されていた。
(実施例9:石英ガラス上へのエピタキシャル移設法/縦形炉/SiCトレイ)比抵抗が0.017ΩcmのボロンドープSiからなる(100)配向の8インチウエハ表面を49%HFとエチルアルコールを2:1で混合した溶液中で陽極化成してウエハの表面に多孔質シリコンを10μmの厚みで形成した。このシリコンウエハを酸素雰囲気中400℃で1時間熱処理した後、1.25%のHF水溶液に30秒浸け、多孔質層の表面および表面近傍の孔内壁に形成された極薄酸化膜を除去した後、よく水洗して乾燥させた。続いてこのシリコンウエハをエピタキシャル成長装置に設置し、1100℃水素雰囲気で極微量のシランガスを添加しながら熱処理して多孔質シリコン層の表面の孔をほとんど封止した。引き続いて、水素ガスにシリコンソースガスとしてジクロルシランを添加することにより該多孔質シリコン層上に単結晶シリコン膜を平均310nm±5nmの厚みで形成した。このシリコンウエハをエピタキシャル成長装置より取り出して、酸化炉に設置し、酸素と水素の燃焼ガスにより該単結晶シリコン膜表面を酸化して酸化シリコン膜を200nm形成した。酸化された結果単結晶シリコン膜の厚さは210nmになった。このシリコンウエハと熱酸化によって200nmの酸化シリコン膜を全面に形成した第2のシリコンウエハとにそれぞれ一般的にシリコンデバイスプロセス等で用いられるウェット洗浄を施した。そして、窒素プラズマで表面(貼り合わせ面)を活性化したのち、水洗して、乾燥させたのち、それらのウエハ同士を貼り合わせた。貼り合わせたシリコンウエハアセンブリを熱処理炉に設置し、400℃10時間の熱処理を施し、貼り合わせ面の接着強度を高めた。このシリコンウエハアセンブリの第1のシリコンウエハ側の裏面を研削して、多孔質シリコン層を露出させた。HFと過酸化水素水の混合溶液中に浸して、多孔質シリコン層をエッチングにより除去し、ウェット洗浄にてよく洗浄した。単結晶シリコン膜は酸化シリコン膜と共に第2のシリコンウエハ上に移設され、SOIウエハが作製された。
移設された単結晶シリコンの膜厚を面内10mmの格子点でそれぞれ測定したところ、膜厚の平均は210nmばらつきは±7nmであった。また、表面粗さを原子間力顕微鏡で1μm角、50μm角の範囲について256×256の測定ポイントで測定したところ、表面粗さは平均二乗粗さ(Rrms)でそれぞれ10.1nm、9.8nmであった。また、ボロン濃度を二次イオン質量分析法(SIMS)により測定したところ、単結晶シリコン膜中のボロン濃度は1.2×1018/cm3であった。
ロードロック室(不図示)の不活性ガス雰囲気中から溶融石英製の炉心管からなる縦形熱処理炉にこれらSOIウエハをすべてSiC製のトレイに載せて搬入した。不活性ガスは炉上部より下方へと流れる。ウエハは図7、図9の如く、水平に、かつ、1枚のSOIウエハを載せたトレイ31の裏面が別のSOIウエハのSOI層表面とおよそ6mm間隔で向かい合うように、かつ、ウエハの中心と炉心管の中心線が一致するようにして、SiC製のボート上に設置し、一番上のSOIウエハの上にもSiC製のトレイに載せた市販のシリコンウエハを同じ間隔で配置した。炉内の雰囲気を不活性ガスから水素に置換したのち、温度を1000℃まで昇温し、15時間保持したのち、再び降温し、再び不活性ガスに置換して炉から不活性ガスで満たされたロードロック室に搬出し、ロードロック室からウエハを取出し、SOI層の膜厚を再び測定した。SOIウエハの膜厚減少量は全てのウエハにおいて、1nm以下であった。
また、熱処理後の単結晶シリコン膜の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、平均二乗粗さ(Rrms)は1μm角で0.11nm、50μm角で0.50nmと市販シリコンウエハ並みに平滑化されていた。単結晶シリコン膜中のボロン濃度についても、熱処理後に二次イオン質量分析(SIMS)で測定したところ、いずれも1×1016/cm3以下に低減されデバイス作製が十分に可能なレベルに低減されていた。
(実施例10:WJ分離エピタキシャル層移設法/縦型炉)比抵抗が0.017ΩcmのボロンドープSiからなる(100)配向の8インチSiウエハ表面を49%HFとエチルアルコールを2:1で混合した溶液中で陽極化成してウエハの表面に多孔質シリコンを3μmの厚みで形成した。その際、電流を変化させることにより、厚さ2μm、ポロジティ45%程度の高多孔度層、とその上に厚さ1μmポロジティ20%の低多孔度層を形成した。このシリコンウエハを酸素雰囲気中400℃で1時間熱処理した。こうすると多孔質層の表面と孔内壁面に薄い酸化膜が形成される。その後、1.25%のHF水溶液に30秒浸け、低多孔度の多孔質層の表面および表面近傍の孔内壁面に形成された極薄酸化膜を除去した後、よく水洗して乾燥させた。続いてこのシリコンウエハをエピタキシャル成長装置に設置し、1100℃水素雰囲気で極微量のシランガスを添加しながら熱処理して低多孔度の多孔質シリコンの表面の孔をほとんど封止した。引き続いて、水素ガスにシリコンソースガスとしてジクロルシランを添加することにより孔が封止された低多孔度の該多孔質シリコン上に単結晶シリコン膜を平均310nm±5nmの厚みで形成した。このシリコンウエハをエピタキシャル成長装置より取り出して、酸化炉に設置し、酸素と水素の燃焼ガスにより該単結晶シリコン膜表面を酸化して酸化シリコン膜を200nm形成した。酸化された結果単結晶シリコン膜の厚さは210nmになった。このシリコンウエハと、熱酸化によって200nmの酸化シリコン膜を全面に形成した第2のシリコンウエハと、にそれぞれ一般的にシリコンデバイスプロセス等で用いられるウェット洗浄を施した。そして、清浄な表面を形成したのち、それらウエハ同士を貼り合わせた。貼り合わせたシリコンウエハアセンブリを熱処理炉に設置し、1100℃1時間の熱処理を施し、貼り合わせ面の接着強度を高めた。熱処理の雰囲気は窒素、酸素の混合気中で昇温し、酸素と水素の燃焼ガスに置換して1100℃1時間保持し、窒素雰囲気中で降温した。このシリコンウエハアセンブリの側面にウォータージェットによる高圧の水流をあて、流体くさびによって高多孔度多孔質層中でこのシリコンウエハアセンブリを分離して、第2のシリコンウエハ上の単結晶シリコン膜の上に多孔質層を露出させた。単結晶シリコン膜は酸化シリコン膜と共に第2のシリコンウエハ上に移設され、残留多孔質シリコン層を表面に有するSOIウエハが作製された。
これら残留多孔質層を有するSOIウエハの裏面の酸化シリコン膜をあらかじめ弗酸でエッチングして除去したのち、図10に示した縦形熱処理炉に設置した。ガスは炉上部より下方へと流れる。ウエハは図9の如く、水平に、かつ、1枚のSOIウエハの裏面のシリコンが別のSOIウエハのSOI層表面とおよそ6mm間隔で向かい合うように、かつ、ウエハの中心と炉心管の中心線が一致するようにして、SiC製のボート上に設置し、一番上のSOIウエハの上には自然酸化膜を除去したを市販のバルクシリコンウエハを同じ間隔で配置した。炉内の雰囲気を水素に置換したのち、温度を1100℃まで昇温し、4時間保持したのち、再び降温し、ウエハを取出した。
また、熱処理後の単結晶シリコン膜の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、平均二乗粗さ(Rrms)は1μm角で0.12nm、50μm角で0.34nmと市販シリコンウエハ並みに平滑化されていた。単結晶シリコン膜中のボロン濃度についても、熱処理後に二次イオン質量分析(SIMS)で測定したところ、いずれも5×1015/cm3以下に低減されデバイス作製が十分に可能なレベルに低減されていた。