JP2007181989A - 多層シート、多層シートの製造方法、容器および易開封性包装体 - Google Patents

多層シート、多層シートの製造方法、容器および易開封性包装体 Download PDF

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Abstract

【課題】酸素吸収性能に優れるとともに、使用時における外観上の違和感や衛生上の問題もなく、高い密封性と易開封性を兼ね備えた易開封性包装体、容器およびこれらを成形可能な多層シートを提供すること。
【解決手段】多層シート100は、酸素吸収層13と、この酸素吸収層13の一方の面側に積層された剥離可能な表面層11と、酸素吸収層13の他方の面側に積層された最外層18とを含んで構成され、表面層11と酸素吸収層13との間には、表面層11が剥離された後も酸素吸収層13の表面を覆う保護層12を備える。この多層シート100から形成される容器および易開封性包装体は、酸素吸収性能に優れるとともに、使用時における外観上の違和感や衛生上の問題もなく、高い密封性と易開封性を兼ね備える。
【選択図】図3

Description

本発明は、多層シート、多層シートの製造方法、容器および易開封性包装体に関する。
食品や医薬品などの包装においては、内容物の酸化、変質や微生物の繁殖による腐敗を防いで品質を保持するために、種々の包装形態が採用されている。このような例として、酸素バリア性を有する材料を用いて、内容物の酸素劣化、変色、カビ、好気性菌などによる変質などを防止する包装形態が採用されている。
また、包装体における内部の酸素を除去するために、粉末状ないし粒状の酸素吸収剤(脱酸素剤)を、通気性包装材料で包装した小袋(酸素吸収剤包装体ともよばれる)を、内容物とともに密封する方法も採用されている。
一方、酸素吸収剤包装体にあっては、例えば、酸素吸収剤入り小袋が食品中に混入してしまったり、また、誤って食されたり、調理されたりする等、安全性の面からの問題があった。更には、酸素吸収剤入り小袋が破けたりすると、内容物である酸素吸収剤が外部にもれ出してしまって、食品等が汚染されてしまうという心配もあった。そして、収納物が水分を含んだ非乾燥物である場合や、また、液状物である場合には、前記の酸素吸収剤入り小袋を実質的に使用できないなどの問題もあった。このため、近年では、包装材料自体、すなわち、フィルムやシート、容器等の包装体の構成材料そのものに酸素吸収機能を付与する手段がいろいろ提案されてきている。
かかる酸素吸収機能を有した包装形態としては、例えば、脱酸素剤として鉄粉と食塩を用い、この鉄粉を熱可塑性樹脂に混練した酸素吸収性樹脂層を他の熱可塑性樹脂と共押出した酸素吸収性シートが提案されている(例えば、特許文献1)。また、容器内側の表面層に隣接して酸素吸収層を設ける技術も提案されている(例えば、特許文献2)
これらの容器は、蓋材で開口部を密封するが、ユーザが使用時に蓋材を開封する際に大きな力が必要となる点で問題がある。そこで、蓋材を容易に開封するためのいわゆる易開封技術も種々提案されている。例えば、蓋材側に凝集破壊層を設けたり、界面剥離を容易にするための層が設けたりすることが行われている。ただし、蓋材側に易開封のための層を設けると、なめらかな開封感が得られず、開封後の外観も悪くなる。そこで、容器側に易剥離層を設ける技術が提案されている(例えば、特許文献3)。
特開平08−133345号公報 特開平08−132573号公報 特開昭63−307073号公報
しかしながら、特許文献1、2の技術に特許文献3の易開封技術を組み合わせただけでは、ユーザが蓋材を開封した後に、容器本体の酸素吸収層が露出し、見栄えだけでなく衛生上も好ましくない。また、このような多層構成は、一般に共押出成形で行うことが多いが、層数が多くなると共押出成形により一度に成形しようとしても設備的に煩雑となり、さらに、各層の厚みのバラツキも大きくなる。また、酸素バリア層、酸素吸収層、さらには易開封層を同時に共押出成形すると、それらのスリットロスや運転調整時におけるロスには異種の樹脂が混在するため、回収再利用(リサイクル)がほとんど不可能となるという問題も生じる。
そこで、本発明の目的は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、酸素吸収性能に優れるとともに、使用時における外観上の違和感や衛生上の問題もなく、高い密封性と易開封性を兼ね備えた易開封性包装体、容器およびこれらを成形可能な多層シートを提供することにある。さらに、本発明では、使用樹脂の再利用(リサイクル)が可能であり、各層の厚みも一定で品質の良い多層シートの製造方法を提供することも目的とする。
本発明の多層シートは、酸素吸収層と、この酸素吸収層の一方の面側に積層された剥離可能な表面層と、前記酸素吸収層の他方の面側に積層された最外層とを含んで構成される多層シートであって、前記表面層と前記酸素吸収層との間には、前記表面層が剥離された後も前記酸素吸収層の表面を覆う保護層を備えることを特徴とする。
ここで、剥離可能な表面層とは、保護層から剥離可能であってもよいし、あるいは、表面層自体または保護層自体が凝集破壊を起こすものであってもよい。いずれの場合であっても、他の強度あるフィルムを表面層に強固に接着した後、剥離試験を行った場合に、剥離強度が20N/15mm以下になるようにすれば(JIS K 6854)、易開封性包装体用容器を成形するための多層シートとして好ましい。すなわち、本発明は、いわゆる蓋材が表面層と強固(タイト)に接着することを前提とした易開封方式に関するものであり。表面層と保護層間の弱い接着力を利用するか、あるいは、表面層自体または保護層自体の凝集破壊を利用する易開封性包装体の分野で好適に実施される。
表面層を構成する樹脂としては、保護層と弱い接着力を有するようなものを選択できればよく、特に制限されないが、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、あるいはアクリル系樹脂等が挙げられる。また、剥離機構として、表面層構成樹脂の凝集破壊を利用する場合には、弾性率が200MPa以下、特に150MPa以下の軟質樹脂やエラストマを用いることが好ましい。
また、保護層を構成する樹脂としては、前記した表面層と弱い接着力を有するようなものを選択できればよく、特に制限されないが、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、変性PP、スチレン系樹脂、およびこれらの混合物等が挙げられる。あるいは、凝集破壊を積極的に行わせるためであれば、表面層と同様に軟質樹脂やエラストマを用いてもよい。
剥離機構として表面層と保護層との剥離を利用する場合には、各々の構成樹脂の種類を適宜選択することにより、表面層と保護層との接着強度を制御することができる。
酸素吸収層としては、前記した保護層に用いる樹脂に無機系あるいは有機系の酸素吸収剤を混練して使用することが可能である。同系統の樹脂を用いれば保護層と酸素吸収層との接着強度にも優れるため好ましい。
最外層とは、本発明の多層シートを成形して容器とした場合に、外界(大気側)に面することとなる層である。最外層を構成する樹脂として特に制限はないが、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、あるいはこれらの混合物が好適に用いられる。
本発明の多層シートによれば、酸素吸収層の上に保護層を備えているため、表面層を剥離しても、酸素吸収層が剥き出しになることがない。従って、本発明の多層シートからなる容器に所定の内容物を充填後、蓋材を接着(ヒートシール等)して密封容器の形でユーザの使用に供した場合に、ユーザが蓋材を表面層ごと剥離しても、容器本体の酸素吸収層が直接見えることがなく外観上の問題がない。さらに、酸素吸収層が外界に剥き出しとならないので衛生的である。
本発明の多層シートは、前記酸素吸収層と前記最外層との間に酸素バリア層を備えることが好ましい。
ここで、酸素バリア層は、酸素の難透過性を有する樹脂からなる層であることが好ましく、例えば、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)、MXDナイロン等を使用できる。なかでも、EVOHは、酸素バリア性が高いため好適である。なお、酸素バリア層としてはアルミ箔のような金属箔も使用可能である。
この発明によれば、酸素バリア層が最外層からの酸素ガスの侵入を好適に防ぎ、また、酸素バリア層が遮断し損ねたわずかな酸素ガスも酸素吸収層により吸収されるため、密封容器を構成した場合に、内容物を酸素からより一層遮断できる。なお、密封容器を構成する際には、蓋材についても多層シートと同程度の酸素バリア性を備えていることが好ましい。
本発明の多層シートにおいては、酸素バリア層は、酸素吸収層と最外層の少なくともいずれかの層と接着層を介して積層されていることが好ましい。
ここで、接着層を構成する樹脂としては特に制限はないが、例えば、PE、PPなどの非極性樹脂に特殊な官能基を付加することでPE、PPと異種材料(PA、EVOH、PET、他樹脂、金属箔など)の双方に高い接着性を持たせた特殊ポリオレフィン系接着性樹脂や、成形性がよく接着性にも優れるEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)などが好適に使用できる。
この発明によれば、酸素バリア層が、酸素吸収層と最外層の少なくともいずれかの層と接着層を介して積層されているので、十分な接着強度を保つことができ、容器を成形する際や、容器成形後に層間剥離のような不良現象を生じることがない。
本発明の多層シートの製造方法は、前記表面層と、前記保護層と、前記酸素吸収層とを含んで構成される酸素吸収部材と、前記最外層を含んで構成される外層部材とを積層することを特徴とする。
本発明の多層シートの製造方法によれば、多層シートを一度に構成(例えば、共押出成形)するのではなく、表面層と、保護層と、酸素吸収層とを含んで構成される酸素吸収部材と最外層を含んで構成される外層部材を各々別個に製造した後にこれらを積層する。それ故、製造装置が大型化・複雑化することもなく、コスト的に有利であり、さらに、個々の部材製造時に生じるロスを個別に再生(リサイクル)することが可能となる。
また、一度に多くの層を構成すると、各層の厚み精度(偏肉精度)が悪化するが、本発明のように、酸素吸収部材と外層部材とに分けて成形すると、各々の部材を構成する各層の厚み精度を良好に保つことができる。
本発明の多層シートの製造方法では、共押出成形法により、前記表面層と前記保護層と前記酸素吸収層とを積層して前記酸素吸収部材を製造することが好ましい。
この発明によれば、共押出成形法により、前記表面層と前記保護層と前記酸素吸収層とを積層するので、効率的に酸素吸収部材を製造することができる。
なお、共押出成形法としては、例えば、フィードブロック法とマルチマニホールド法がある。
フィードブロック法とは、Tダイ入り口以前で各層を合流構成させるためのフィードブロックと、それを広幅化するための単層Tダイにより構成される方式である。層数を容易に多くでき、さらに幅の大型化も実現しやすく、層の組合せ構成が容易に多くでき、層数に対してTダイのサイズを小さくできるという特徴がある。
一方、マルチマニホールド法とは、複数の樹脂を、それぞれ広幅化するための複数マニホールドと、これらを合流させるためのスリットを合わせもった、マルチマニホールドTダイを使用する方式である。 各層の厚さ精度は、各々のマニホールドによる広幅化の後に厚み調整用のチョークバーを持つことができるため、各層の偏肉精度に優れたものになる。
装置コストの点では簡易な構造であるフィードブロック法が優れ、各層の厚み精度(偏肉精度)の点では、マルチマニホールド法が優れる。本発明では、必要に応じていずれの方式を採用してもよいが、より偏肉精度が要求される表面層厚みや、酸素吸収層厚みを要求される酸素吸収部材を製造する場合には、マルチマニホールド法を用いることが好ましい。
本発明の多層シートの製造方法では、前記外層部材の幅が前記酸素吸収部材の幅よりも広いことが好ましい。
この発明によれば、外層部材の幅が酸素吸収部材の幅よりも広いので、多層シート成形時のいわゆる耳ロスとして外層部材のみを採取(スリット)できる。すなわち、酸素吸収剤を含んでいない樹脂だけを採取できるため樹脂の外層部材自身へのリサイクルが容易となる。特に、外層部材が酸素バリア層(酸素バリア樹脂層)を有している場合に好適である。
本発明の多層シートの製造方法では、共押出成形により、少なくとも前記最外層と前記酸素バリア層とを共押出して前記外層部材を製造しながら、溶融状態の前記外層部材を前記酸素吸収部材に積層することが好ましい。
この発明によれば、共押出成形法により、最外層と酸素バリア層とを積層して外層部材を製造しながら、並行して外層部材と酸素吸収部材とを積層するので、層数が多くなっても各層の偏肉精度に優れる多層シートを効率よく製造することができる。
なお、このような外層部材は、酸素バリア層の両側に接着層を設け、さらにその両側の少なくともいずれかの層をリサイクル層とすることが好ましい。
共押出成形法として、フィードブロック法とマルチマニホールド法が適用可能であることは前記したとおりである。
本発明の容器は、蓋材と接着するためのフランジ部を有する容器であって、前記した多層シートを成形してなることを特徴とし、また、本発明の易開封性包装体は、前記した容器と、この容器の開口部を塞ぐ蓋材とを備えた易開封性包装体であって、前記容器のフランジ部に前記蓋材を接着したことを特徴とする。
ここで、易開封性包装体の蓋材は酸素バリア性を備えたものであることが好ましい。
上述した多層シートを成形したこのような容器およびこの容器からなる易開封性包装体は、酸素吸収層の上に保護層を備えているため、表面層を剥離しても、酸素吸収層が剥き出しになることがない。従って、酸素吸収層が直接見えることがなく外観上の問題がない。さらに、酸素吸収層が外界に剥き出しとならないので衛生的である。さらに、高い密封性と、易開封性を兼ね備え、用途に応じた性能を満たすことができる。
なお、容器のフランジ部と蓋材との接着方法としては、ヒートシールが一般的であるが、超音波シールでもよく、あるいは接着剤を用いてもよい。また、多層シートから容器を成形するには、通常の真空成形や真空圧空成形が適用可能である。
本発明の易開封性包装体は、前記フランジ部の外表面には、該容器本体の開口部近傍に、前記酸素吸収層までは届かない深さの環状の切り込みが設けられ、前記フランジ部の外表面であって前記環状の切り込みより外周に位置する部分に前記蓋材を接着した後、前記蓋材を開封する際に、前記表面層と前記保護層との層間で剥離が生ずるか、あるいは前記表面層内および/または前記保護層内で凝集破壊を生ずるように構成されていることが好ましい。
この発明によれば、蓋材が容器のフランジ部外表面に接着されており、表面層と保護層との層間で剥離が生ずるか、あるいは表面層内か保護層内で凝集破壊を生ずるように構成されているので、蓋材を容易に容器本体から剥がすことができる。さらに、フランジ部外表面には、容器本体の開口部近傍に酸素吸収層までは届かない深さの環状の切り込みが設けられているので、蓋材を切り込みのところで容易に容器本体から離脱させることができ、開封感に優れる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本実施形態の多層シート100が示されている。多層シート100は、表面層11、保護層12および酸素吸収層13から構成される酸素吸収部材110と、中間層14、リサイクル層15、15’、接着層16、16’、酸素バリア層17および最外層18から構成される外層部材120とを備えて構成される。酸素吸収部材110は、主に酸素吸収機能および蓋材に対する接着機能と易開封機能とを発揮し、外層部材120は、主に容器成形性、容器の機械的強度および酸素バリア性を発揮する部材である。
また、本実施形態の外層部材120は、酸素バリア層17を中間の層とした4種7層の対称的な層構成であり、リサイクル層15と同層15’、接着層16と同層16’および中間層14と最外層18は互いに同一の樹脂を原料としている。
まず、酸素吸収部材110を構成する各層について説明する。
表面層11は、後述する保護層12に対し剥離可能に積層されている。あるいは、表面層11自体が凝集破壊を起こすものであってもよい。いずれの場合であっても、他の強度あるフィルムを表面層に強固に接着した後、剥離試験を行った場合に、剥離強度が25N/15mm以下(JIS K 6854)であることが好ましい。このように低い剥離強度であると、後述する易開封性包装体用容器を成形するための多層シート100として好適に使用できる。
このような表面層11を構成する樹脂としては、例えば、HDPE、L−LDPE、LDPE、HPP(ホモポリプロピレン)、BPP(ブロックポリプロピレン)、RPP(ランダムポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、エチレンマレイックアンハイドライドメチルアクリレートコポリマー、およびこのコポリマーとポリオレフィンとの混合物等が挙げられる。また、剥離機構として、表面層構成樹脂の凝集破壊を利用する場合には、弾性率が200MPa以下、特に150MPa以下の軟質樹脂やエラストマを用いることが好ましい。軟質樹脂としては、例えば、エチレン−極性ビニル化合物系共重合体があげられる。また、エラストマとしては、オレフィン系エラストマ、スチレン系エラストマ、これらの水添物などが例示できる。本実施形態では、HDPEを用いている。
表面層11の厚みとしては、後述する環状の切り込みをフランジ部の外表面に設ける場合は、30〜120μmが好適であり、切り込みを設けない場合は、5〜40μmが好適である。
切り込みを設ける場合、表面層11の厚みを30μm未満にすると、切り込みの深さをを表面層11内に留める加工が難しくなる。表面層11の厚みが120μmを越えると、容器を形成した後の肉厚、特にフランジ部の肉厚が厚くなり過ぎて、薄肉容器として適用しにくくなる。また、切り込みを設けない場合は、表面層11の厚みが5μm未満であると、容器を蓋材で密封した後に耐内圧性が悪化するおそれがある。表面層11の厚みが30μmを越えると、切り込みを設けない場合のメリットの一つ(容器の薄肉化を達成しつつ易開封性を持たせる)が損なわれるおそれがある。
保護層12は、表面層11が剥離された後も、後述する酸素吸収層13の表面を覆う層である。この保護層12を構成する樹脂としては、例えば、HDPE、L−LDPE、LDPE、HPP(ホモポリプロピレン)、BPP(ブロックポリプロピレン)、RPP(ランダムポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、無水マレイン酸変性PP、スチレン−イソプレン共重合体、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、エチレン−プロピレン共重合体等、およびこれらの混合物が挙げられる。
剥離機構として表面層11と保護層12との剥離を利用する場合には、各々の構成樹脂の種類を適宜選択することにより、表面層11と保護層12との接着強度(剥離強度)を制御することができる。例えば、後述する蓋材のシーラントがポリプロピレンの場合は、表面層11の原料をランダムポリプロピレンとし、保護層12の原料をポリプロピレンとポリエチレンの混合物(ポリエチレンの割合を多くする)とすることが好ましい。また、蓋材のシーラントが、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のようなポリエチレンの場合は、表面層11の原料をポリエチレンにして、保護層12の原料を、ポリプロピレンとポリエチレンの混合物(ポリプロピレンの割合を多くする)とすることが好ましい。表面層11や保護層12の内部で凝集破壊させたい場合は、凝集破壊させたい層の原料として前述のエラストマを適宜混ぜた組成物を用いることが好ましい。
保護層12の厚みとしては、50〜300μmが好適である。50μm未満であると、保護効果が減少し、300μmを越えると厚すぎて積層時の生産効率が悪化するおそFれがある。
酸素吸収層13は、前記した保護層12に用いる樹脂に無機系あるいは有機系の酸素吸収剤を混練して使用することが可能である。ここで、無機系の酸素吸収剤としては、鉄系、シリコン系、あるいはチタン系等の酸素吸収剤を微粉化したものが利用可能である。有機系の酸素吸収剤としては、MXD6(MXDナイロン)、エチレン性不飽和炭化水素、あるいはシクロヘキセン基を有するポリマーなどに遷移金属触媒を反応促進剤として添加したものなどが好適に使用可能である。例えば、特開平05−194949号公報、特開平05―305973号公報、および特表平08−505183号公報等を参照することができる。
酸素吸収層13の厚みとしては、50〜250μmが好適である。厚い方が、酸素吸収剤の添加量(絶対量)を増やせるため好ましいが、生産性と経済性の観点からは、250μm以下が好ましい。
なお、酸素吸収層13と保護層12の原料を同系統の樹脂とすれば、保護層12と酸素吸収層13との接着強度に優れるため好ましい。
このような3層構造の酸素吸収部材110は、Tダイを用いた共押出成形法により成形される。すなわち、各層11〜13に対応した押出機を3台使用し、各押出機から押し出された樹脂をマルチマニホールドTダイに導入し、各樹脂層を扁平なシート状とした後に積層を行うことで製造される。なお、通常のTダイの前に設けた特殊ブロックで合流させるフィードブロック方式により共押出成形してもよい。
次に、外層部材120を構成する各層について説明する。
酸素バリア層17は、酸素の難透過性を有する樹脂からなる層であり、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)、MXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)等を使用できる。本実施形態では、酸素バリア性の高いEVOHを用いている。ただし、EVOHは吸湿により酸素バリア性能が低下するおそれがあり、使用には注意を要する。例えば、吸湿剤との併用も好適である。なお、最終的に多層シート100を熱成形して容器を成形することができればよく、酸素バリア層17の厚みには特に制限はない。
酸素バリア層17は、接着層16,16’を介してリサイクル層15、15’と積層されており、リサイクル層15、15’の外側には、酸素吸収部材110と積層される中間層14と、容器形成後に外壁となる最外層18が積層されている。
このように、最外層が4種7層の対象構造であると、リサイクル層15、15’を両面から被覆できるため多層シート100の外観に優れる。
このような4種7層構造の外層部材120は、Tダイを用いた共押出成形法により成形される。すなわち、各層14〜18に対応した押出機を4台使用し、各押出機から押し出された樹脂をフィードブロック方式やマルチマニホールド方式Tダイに導入して共押出成形してもよい。
次に、多層シート100の製造方法について説明する。
まず、上述の共押出成形法により製造されたフィルム状酸素吸収部材110を所定の幅に(後述する外層部材120の幅よりも狭く)スリットしてロール状に巻き取っておく。
そして、ロールから繰り出されたフィルム状酸素吸収部材110に、フィルム状外層部材120を押出機から押し出して溶融状態で積層することにより多層シート100を製造する(押出しラミネーション)。
図2に示す易開封性包装体200は、前記した多層シート100を用いて熱成形した容器150と、容器150の開口を覆う蓋材160とを備えて構成される。容器150は、被包装物収納用の凹部151及びこの凹部151の開口周縁に形成されたフランジ部152とを備える。凹部151は、有底の円筒状であり、フランジ部152は、凹部151の開口から水平方向に外側に延出したフラットフランジである。フランジ部152には、容器150本体の開口部近傍に、環状の切り込み153が設けられている。この切り込み153は、表面層11を貫いて保護層12に達しているが、酸素吸収層13までは達していない。
図3には、易開封性包装体200の断面図を示す。多層シート100の表面層11が容器150の凹部151の内表面側に配置されている。容器150の熱成形方法としては、多層シート100を容器外形状に形成されたキャビティ内にプラグで予備伸張し、その後、圧空成形や真空成形等を行うプラグアシスト成形が考えられる。
なお、図3に示すように、環状の切り込み153は、酸素吸収層13までは届かない深さとなっている。
蓋材160は、容器150のフランジ部152の外径よりも大きな外径を有している。この蓋材160は、表基材として、酸素バリア性を有する透明蒸着PETフィルム161および二軸延伸ナイロンフィルム(ONyフィルム)162とシーラントとして、L−LDPEフィルム163からなる多層構造からなり、フランジ部152の外表面(表面層11の表面)であって環状の切り込み153より外周に位置する部分に強固にヒートシールされている。
このようにして容器150に取り付けられた蓋材160の端部を手で引き上げると、フランジ部152の表面層11と蓋材160は強固に接着しているため、表面層11と保護層12との界面で剥離が始まり、蓋材160は、切り込み153の部分で容器150から分離される。なお、表面層11内で凝集破壊が生ずるように構成されていてもよい。
ここで、易開封性包装体200を構成する際には、蓋材160についても多層シート100と同程度の酸素バリア性を備えていることが好ましい。例えば、透明蒸着PETフィルムのような酸素バリア性シリカ皮膜を持った表基材を用いる他、EVOH層やアルミ箔を中間層とする構成でもよい。
従って、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)易開封性包装体200は、多層シート100(容器150)が、酸素吸収層13の上に保護層12を備えているため、蓋材160とともに表面層11が剥離されても、酸素吸収層13が剥き出しになることがない。それ故、蓋材160を剥離した後も容器外観上の問題がない。
(2)また、蓋材160が剥離されても、酸素吸収層13が外界に剥き出しとならなことから衛生的である。
(3)易開封性包装体200は、フランジ部152の表面層11と蓋材160が強固に接着しており、蓋材160の端部を手で引き上げると、表面層11と保護層12との界面で剥離が始まり、切り込み153の部分で容器150から容易に剥がれる。それ故、易開封性に優れる。
(4)表面層11と酸素吸収層13の間に保護層12が介在しているため、フランジ部152の外表面に切り込み153を設けたときに、切り込み153の先端が酸素吸収層13にないで表面層11を切ることができる。
(5)酸素バリア層17が最外層18からの酸素ガスの侵入を好適に防ぎ、酸素バリア層17が遮断し損ねたわずかな酸素ガスも酸素吸収層により吸収されるため、易開封性包装体200を構成した場合に、内容物を酸素からほぼ完全に遮断できる。
(6)EVOHの吸湿、あるいはその他の原因で酸素バリア性能が低下した場合でも、酸素吸収層13が存在するので容器内部への酸素の侵入を防ぐことができる。
(7)多層シート100は、酸素吸収部材110の幅が外層部材120の幅よりも狭いので、酸素バリア層17を含み、鉄粉等の酸素吸収剤を含まない外層部材120のみをスリットしてリサイクルすることができる。一般に、酸素バリア樹脂を含む層と酸素吸収剤を含む層の同時リサイクルは困難であるが、このように各々の層を分離することでリサイクルが容易となり、製造時の樹脂ロスが少なくなる。
(8)多層シート100を一度に製造するのではなく、酸素吸収部材110と外層部材120とに分けて製造するので、製造装置を簡素化でき、コスト的に有利である。
(9)また、酸素吸収部材110と外層部材120とに分けて製造するので、各々の部材を構成する各層の厚み分布(偏肉精度)に優れ、安定した品質の多層シート100および容器150を製造できる。
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、容器150のフランジ部152には、必ずしも切り込み153を形成する必要はない。その場合は、容器150の製造において、切り込み153を形成する工程が省略でき、さらには易開封性包装体200の製造におけるシール位置調整等に手間を要しない。
さらに、前記実施形態では、多層シート100から容器150を成形したが、蓋材160を多層シート100で製造してもよい。この場合、表面層11を容器のフランジ部にシールされる面として使用する。また、多層シート100から袋等を成形してもよい。
中間層14及び表面層11のポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂としたが、これに限らず、他のポリオレフィン樹脂、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)等を含有するものとしてもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
[実施例1]
酸素吸収部材110を3種3層のフィルムとして製造し、これをロールに巻き取った。
このロールから繰り出されたフィルム状酸素吸収部材110に、後述する外層部材120(4種7層からなる溶融状態の樹脂シート)を積層することで前記実施形態(図1)に示すような10層構造の多層シート100を製造した。その後、図2、3に示すような易開封性包装体200を製造した。具体的には以下の通りである。
(酸素吸収部材110の製造)
スクリュー径30mmφの押出機(以下、「Ex.11」ともいう)、スクリュー径50mmφの押出機(以下、「Ex.12」ともいう)、およびスクリュー径65mmφの押出機(以下、「Ex.13」ともいう)の3台の押出機が接続されたマルチマニホールドTダイフィルムキャスティング装置を用いて、3種3層からなる酸素吸収部材110(フィルム)を製造した。使用した原料樹脂、対応する押出機、および層厚みは以下の通りである。
(1)表面層11(Ex.11) 10μm
原料樹脂:HDPE(日本ポリエチレン製ノバテックHD HE481)
(2)保護層12(Ex.12) 90μm
原料樹脂:PP(プライムポリマー製 プライムポリプロE―105GM)60質量%とLDPE(日本ポリエチレン製ノバテックLD FZ038)40質量%の混合物
(3)酸素吸収層13(Ex.13) 100μm
原料樹脂:保護層12で用いた樹脂に、嵩比重2.0以上で比表面積0.5以上の鉄粉30質量%と食塩1質量%を配合して分散混合したもの
なお、Tダイ出口スリットの幅は、1000mmであったが、キャスト後のフィルム全幅は800mmであり、このフィルムの両端を20mmずつスリットして760mm幅の酸素吸収部材110(フィルム)とした。なお、スリットしたフィルムの両端部は、酸素吸収層13に戻して再利用した。リサイクルによる不良現象は何ら認められなかった。
(外層部材120および多層シート100の製造)
スクリュー径45mmφの押出機(以下、「Ex.21」ともいう)、スクリュー径65mmφの押出機(以下、「Ex.22」ともいう)、スクリュー径65mmφの押出機(以下、「Ex.23」ともいう)、およびスクリュー径45mmφの押出機(以下、「Ex.24」ともいう)の4台の押出機が接続されたフィードブロック多層化方式Tダイフィルムキャスティング装置を用いて、4種7層からなる外層部材120の共押出成形を行った。そして、押し出された直後の溶融状態にある外層部材120を、ロールから繰り出されたフィルム状酸素吸収部材110の酸素吸収層13上に積層して圧着し、冷却することにより多層シート100を得た。この多層シート100は、図1に示すように、酸素吸収部材110の酸素吸収層13と外層部材120の中間層14とが接している。
次に、多層シート100の両端部を各々50mmスリット(耳落とし)して、最終的に厚み800μm、幅760mmの多層シート100を製造した。スリットした耳部は粉砕してリサイクル層15、15’に戻し、再利用した。耳部には、酸素吸収部材110は含まれていなかった。
多層シート100には、リサイクル原料を用いたことによるゲルや焼け等の外観不良は認められなかった。
ここで、外層部材120の製造に使用した原料樹脂、対応する押出機、および層厚みは以下の通りである。
(4)酸素バリア層17(Ex.21) 64μm
原料樹脂:EVOH(クラレ製エバール J−102)
(5)リサイクル層15、15’(Ex.22) 各118μm
原料樹脂:PP(プライムポリマー製 プライムポリプロE―105GM)80質量%とLDPE(日本ポリエチレン製ノバテックLD FZ038)20質量%とからなる混合物70質量%に、外層部材120の回収粉砕品を27質量%、およびクラレ製回収助剤GF30を3質量%混合したもの
(6)中間層14、最外層18(Ex.23) 各118μm
原料樹脂:PP(プライムポリマー製 プライムポリプロE―105GM)80質量%とLDPE(日本ポリエチレン製ノバテックLD FZ038)20質量%の混合物
(7)接着層16、16’(Ex.24) 各32μm
原料樹脂:接着性特殊ポリオレフィン樹脂(三菱化学製 モディックAP P604V)
なお、外層部材120を押し出すTダイ出口スリットの幅は、1100mmであったが、キャスト後のフィルム全幅は860mmであり、タッチロール方式でキャストを行った。
(易開封性包装体200の製造)
上記多層シート100を用い、プラグアシスト真空成形により、容器150を得た。容器150は、外径85mmφ、フランジ部152の幅10mm、開口径65mmφ、深さ20mm、および内容量70ccであった。
この容器150に、約50ccの水を入れ、蓋材160をフランジ部152にヒートシールして密封し、易開封性包装体200とした。
ここで、蓋材160は、透明蒸着PETフィルム161(12μm)、ONyフィルム162(15μm)、およびL−LDPEフィルム163(60μm)からなる多層フィルムである。ヒートシール用の治具としてシール幅7mmの円型を用い、シール温度190℃、シール圧150Kgf、シール時間2秒の条件で、蓋材160を容器150のフランジ部152に溶着した(図2、図3)。
[比較例1]
比較例1では、すべての層を共押出成形法で一度に積層して多層シートを製造した。多層シートおよび易開封性容器の具体的な製造方法は以下の通りである。
(多層シートの製造)
スクリュー径45mmφの押出機(以下、「Ex.31」ともいう)、スクリュー径65mmφの押出機(以下、「Ex.32」ともいう)、スクリュー径65mmφの押出機(以下、「Ex.33」ともいう)、スクリュー径45mmφの押出機(以下、「Ex.34」ともいう)、およびスクリュー径45mmφの押出機(以下、「Ex.35」ともいう)の
5台の押出機が接続されたフィードブロック多層化方式Tダイフィルムキャスティング装置を用いて、5種6層からなる多層シートを製造した。使用した原料樹脂、対応する押出機、および層厚みは以下の通りである。
(1)酸素バリア層(Ex.31) 64μm
原料樹脂:EVOH(クラレ製エバール J−102)
(2)リサイクル層兼酸素吸収層(Ex.32) 331μm
原料樹脂:PP(プライムポリマー製 プライムポリプロE―105GM)80質量%とLDPE(日本ポリエチレン製ノバテックLD FZ038)20質量%とからなる混合物20質量%に、嵩比重2.0以上で比表面積0.5以上の鉄粉30質量%、食塩1質量%、本多層シートの回収粉砕品20質量%、およびクラレ製回収助剤GF30を3質量%混合したもの
(3)最外層(Ex.33) 331μm
原料樹脂:PP(プライムポリマー製 プライムポリプロE―105GM)80質量%とLDPE(日本ポリエチレン製ノバテックLD FZ038)20質量%の混合物
(4)接着層(Ex.34) 各32μm
原料樹脂:接着性特殊ポリオレフィン樹脂(三菱化学製 モディックAP P604V)
(5)表面層(Ex.35) 10μm
原料樹脂:HDPE(日本ポリエチレン製ノバテックHD HE481)
多層シートは、以下のような6層構成となっており、全厚みは800μmであった。
表面層/リサイクル層兼酸素吸収層/接着層/酸素バリア層/接着層/最外層
(10μm/331μm/32μm/64μm/32μm/331μm)
すなわち、実施例1とは、保護層12がないことが異なっている。また、この比較例1では、リサイクル層が1層のみであり、酸素吸収層を兼ねている点、中間層14に相当する層がない点も実施例1とは異なっている。
得られた多層シートの内部では、鉄粉と樹脂が凝集したような塊が発生し、この塊が突起となって多層シートの表面に多数突き出ていた。
易開封性包装体は実施例1と同様に製造した。
[比較例2]
Ex.32により押し出される樹脂を、PP(プライムポリマー製 プライムポリプロE―105GM)80質量%とLDPE(日本ポリエチレン製ノバテックLD FZ038)20質量%とからなる混合物69質量%に、嵩比重2.0以上で比表面積0.5以上の鉄粉30質量%、および食塩1質量%を配合したものとした以外は、比較例1と同様に多層シートを製造した。すなわち、リサイクル層を設けなかった。
得られた多層シートの外観は良好であったが、表面層(設定厚み10μm)の厚みは3〜30μmの範囲でばらついていた。
易開封性包装体は実施例1と同様に製造した。
[比較例3]
表面層に凝集剥離機能を持たせるため、Ex.35に用いる原料樹脂を、エチレン系共重合樹脂(日本ポリエチレン製 レクスパールET−182)40質量%とPP(プライムポリマー製 プライムポリプロF−704NP)60質量%との混合物とした以外は、比較例2と同様にして多層シートを製造した。
得られた多層シートの外観は良好であったが、表面層(設定厚み40μm)の厚みは20〜60μmの範囲でばらついていた。
易開封性包装体は実施例1と同様に製造した。
[評価方法及び結果]
実施例1および比較例1、2で得られた易開封性包装体について、蓋材の剥離性(易開封性)と剥離後のフランジ部外観の観察を行った。
実施例1の易開封性包装体200について、手で蓋材160を開封したが、滑らかに開封でき、開封後の剥離面は表面層11のみが蓋材160に移行しており、酸素吸収層13は保護層12に覆われているため露出せず美しい外観であった。
また、密封後の易開封性包装体200を、30℃、湿度75%RHの環境下で保存し、1週間後に内部のヘッドスペースの酸素濃度を測定したところ、0.1体積%にまで低下していた。なお、酸素濃度の測定は、Check Mate9900(PBI−dansensor社製)を用いた。
比較例1、2の易開封性包装体では、いずれも実施例1における保護層12に相当する層がないため、蓋材を剥離すると表面層が剥がれて、酸素吸収層が剥き出しになるため外観が非常に悪かった。また衛生上も問題がある。
特に比較例2では、前記したように表面層の厚みがばらついていたため、表面層が薄い多層シートから得られた易開封性包装体では接着強度が弱すぎて蓋材が剥がれやすく、一方、表面層が厚い多層シートから得られた易開封性包装体は接着強度が強すぎるため、蓋材の開封が困難であった。
また、比較例3の易開封性包装体も、蓋材を開封すると、所々、酸素吸収層が露出しており外観が非常に悪かった。
本発明の多層シート、多層シートの製造方法、容器および易開封性包装体は、例えば、各種食品や薬品等の包装容器の分野で広く利用することができる。
本発明の実施形態に係る多層シートを示す断面図である。 前記実施形態の多層シートを成形して得られた容器を有する易開封性包装体を示す斜視図である。 前記易開封性包装体の断面図である。
符号の説明
11 表面層
12 保護層
13 酸素吸収層
14 中間層
15 リサイクル層
15’ リサイクル層
16 接着層
16’ 接着層
17 酸素バリア層
18 最外層
100 多層シート
110 酸素吸収部材
120 外層部材
150 容器
151 凹部
152 フランジ部
153 切り込み
160 蓋材
200 易開封性包装体

Claims (10)

  1. 酸素吸収層と、この酸素吸収層の一方の面側に積層された剥離可能な表面層と、前記酸素吸収層の他方の面側に積層された最外層とを含んで構成される多層シートであって、
    前記表面層と前記酸素吸収層との間には、前記表面層が剥離された後も前記酸素吸収層の表面を覆う保護層を備えることを特徴とする多層シート。
  2. 請求項1に記載の多層シートにおいて、
    前記酸素吸収層と前記最外層との間に酸素バリア層を備えることを特徴とする多層シート。
  3. 請求項2に記載の多層シートにおいて、
    前記酸素バリア層は、前記酸素吸収層と前記最外層の少なくともいずれかの層と接着層を介して積層されていることを特徴とする多層シート。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の多層シートの製造方法であって、
    前記表面層と、前記保護層と、前記酸素吸収層とを含んで構成される酸素吸収部材と、
    前記最外層を含んで構成される外層部材とを積層することを特徴とする多層シートの製造方法。
  5. 請求項4に記載の多層シートの製造方法において、
    共押出成形により、前記表面層と前記保護層と前記酸素吸収層とを積層して前記酸素吸収部材を製造することを特徴とする多層シートの製造方法。
  6. 請求項4または請求項5に記載の多層シートの製造方法において、
    前記外層部材の幅が前記酸素吸収部材の幅よりも広いことを特徴とする多層シートの製造方法。
  7. 請求項6に記載の多層シートの製造方法において、
    共押出成形により、前記最外層と前記酸素バリア層とを積層して前記外層部材を製造しながら、溶融状態の前記外層部材を前記酸素吸収部材に積層することを特徴とする多層シートの製造方法。
  8. 蓋材と接着するためのフランジ部を有する容器であって、
    請求項1〜請求項3のいずれかに記載の多層シートを成形してなる容器。
  9. 請求項8に記載の容器と、前記容器の開口部を塞ぐ蓋材とを備えた易開封性包装体であって、
    前記容器のフランジ部に前記蓋材を接着したことを特徴とする易開封性包装体。
  10. 請求項9に記載の易開封性包装体において、
    前記フランジ部の外表面には、該容器本体の開口部近傍に、前記酸素吸収層までは届かない深さの環状の切り込みが設けられ、
    前記フランジ部の外表面であって前記環状の切り込みより外周に位置する部分に前記蓋材を接着した後、前記蓋材を開封する際に、前記表面層と前記保護層との層間で剥離が生ずるか、あるいは前記表面層内および/または前記保護層内で凝集破壊を生ずるように構成されていることを特徴とする易開封性包装体。
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