請求項1に記載の発明の冷蔵庫は、少なくとも貯蔵空間を有する箱体と、前記箱体に備えられた液体を貯留する貯水槽と、前記貯水槽内の液体を霧化しミストを発生させる霧化手段と、前記霧化手段により発生したミストの量を低減する霧化量調整手段とを備え、前記霧化量調整手段によって低減されたミストを前記貯水槽へと戻すことにより、霧化装置自体の霧化量がある貯蔵空間には過剰であっても霧化量調整手段によって過剰分の霧化量を低減することで調整した上で貯蔵空間内にミストを供給することにより、野菜表面に多量の水分が付着して発生する野菜の水腐れや庫内に結露が発生するのを防ぐことができ、貯蔵空間に収納された野菜の水腐れや庫内の結露を防止することができるので、食品保存性をより高め、使い勝手をより向上させた冷蔵庫を提供することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記霧化量調整手段は、前記霧化手段により発生したミストのうち、比較的粒子径の大きなミストを結露させて貯水槽へと戻すものであり、これによって微細ミストのみが選別されて庫内へと噴霧されることで、庫内に噴霧されるミストが微細な軽いミストであるため、ミストの拡散性が向上し、特定の部分へミストが集中することで野菜の水腐れや庫内の結露を防止することができ、さらに粒子径の小さい微細なミストが噴霧されることで野菜等の食品表面の細胞間隙や気孔等から、食品内部にミストが浸透することができ、食品中の水分含有量を向上することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明の冷蔵庫において、霧化量調整手段には、メッシュ部を有しており、前記メッシュ部に霧化手段から発生するミストを直接衝突させることにより所定霧化量を調整するもので、このとき所定粒子径以下の微細ミストのみがメッシュを介して噴霧されるので、すなわちメッシュが霧化量調整手段としての役割を果たし、所定粒子径以外の霧化粒子は庫内に噴霧されずに貯水槽内に戻ることとなる。したがって、粒子径の大きいミストを結露させて貯水槽へ戻すことで、庫内へ粒子径の大きいミストが噴霧されることを防いだ上で余剰ミストを結露させて再利用することができる。また、微細ミストのみが庫内へ噴霧されることで、貯蔵空間(野菜室)内で気孔が開孔した状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔を介して組織内に浸透するので、貯蔵空間(野菜室)内には過剰な水分が供給されることはなく、過剰水分による野菜の水腐れが抑制されるとともに、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、野菜や果物はシャキッとした状態に復帰する。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明のメッシュ部を有する霧化量調整手段において、前記メッシュ径または前記メッシュ数を可変できるもので、これにより霧化粒子が霧化量調整手段への衝突量を調整することができるため、霧化量、霧化粒子径の調整が容易にできる。また、貯蔵室内の湿度や野菜の状態(表面結露状態、収納量など)などの貯蔵室内の状況に応じて可変させることも可能である。これにより、さらに野菜への水分の過供給による水腐れや庫内での過給水の貯留を抑制でき、また、水分が不足した場合の野菜の萎れを防止することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明の冷蔵庫において、霧化量調整手段は、板状部を有しており、前記板状部に霧化手段から発生するミストを直接衝突させることにより所定霧化量を調整するもので、このとき霧化手段からの発生ミストが直接板状部に衝突することにより所定粒子径以下の微細ミストのみが噴霧されるので、所定粒子径以外の霧化粒子は噴霧されるミストより重いため庫内に噴霧されずに貯水槽内に返されることとなる。したがって、貯蔵空間(野菜室)内で気孔が開孔した状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔を介して組織内に浸透するので、貯蔵空間(野菜室)内には過剰な水分が供給されることはなく、過剰水分による野菜の水腐れが抑制されるとともに、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、野菜や果物はシャキッとした状態に復帰する。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明の板状部を有する霧化量調整手段において、霧化手段からミストを貯蔵空間内に噴霧させるミスト発生口に向けて前記板状部は上方向に傾斜しているもので、霧化量調整手段で取り除かれた水分が重力により霧化手段へ戻される。
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の発明の板状部を有する霧化量調整手段において、前記板状部の傾斜角度を可変できるもので、霧化粒子が霧化量調整手段への衝突量を調整することができるため、霧化量、霧化粒子径の調整が容易にできる。また、貯蔵室内の湿度や野菜の状態(表面結露状態、収納量など)などの貯蔵室内の状況に応じて可変させることも可能である。これにより、さらに野菜への水分の過供給による水腐れや庫内での過給水の貯留を抑制でき、また、水分が不足した場合の野菜の萎れを防止することができる。
請求項8に記載の発明は、請求項5から7のいずれか一項に記載の発明の板状部を有する霧化量調整手段において、霧化手段からミストを貯蔵空間内に噴霧させるミスト発生口までの距離を可変できるもので、距離の長短により取り除かれる水分量をさらに変化させることができるため、霧化量、霧化粒子径の調整が容易にできる。また、庫内の状況に応じて可変させることも可能である。これにより、さらに野菜への水分の過供給による水腐れや庫内での過給水の貯留を抑制でき、また、水分が不足した場合の野菜の萎れを防止することができる。
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の発明の冷蔵庫において、霧化手段近傍に給水手段を設け、前記給水手段を介して前記霧化手段に水分を安定的に供給するもので、霧化手段に水分を安定的に供給することによって、安定した霧化量を確保することができる。したがって、安定した水分を補給することで食品の水分含有量を向上させることができ、食品の水分含有量を向上させることができる。
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載の発明の冷蔵庫において、霧化手段の近傍または前記霧化手段と略一体的に液体を保持する貯留水保持部が設けられているもので、霧化手段に水分を安定的に供給するもので、水補給装置への安定供給と水量の確保が可能となり生成された水を貯留することにより、一定量の貯留水を予め貯めておくことができる。したがって、ミスト噴霧装置に任意のタイミングで水を補給することが可能となり、これによって、貯蔵室内の内部に収納された野菜や果物に安定してミストを噴霧することができ、必要に応じて随時食品の内部に強制的に水分を補給することで食品の水分含有量を向上させることにより、食品の水分含有量を向上させることができる。
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明の冷蔵庫において、貯留水保持部に貯水槽を備え、前記貯水槽には外部から供給された水を貯留できるもので、これによって庫内に収納された食品が多数の場合でも十分な量の水分補給を行うことができ、収納庫の貯蔵室に収納されている食品の水分含有量を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の側断面図である。図2は本発明の実施の形態1における水補給装置の側断面図である。図3は本発明の実施の形態1における水補給装置の平面断面図である。図4(a)は本発明の実施の形態1のミスト噴霧中、光を照射したものにおけるやや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミストの粒子径に対する特性図、図4(b)は本発明の実施の形態1のミスト噴霧中、光を照射なしで実験したものにおけるやや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミストの粒子径に対する特性図である。図5は本発明の実施の形態1におけるやや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミスト噴霧量に対する特性及び、ミスト噴霧量に対する野菜の外観官能評価値を示した図である。
実施の形態1において、冷蔵庫100は仕切り板116によって、上から冷蔵室112、切替室113、野菜室114、冷凍室115に仕切られており、野菜室114は湿度約90%R.H以上(食品収納時)4〜6℃に冷却されている。冷蔵室112の背面には、製氷用貯水タンク119が備えられ、製氷用貯水タンク119からは給水経路120が、製氷室(図示せず)と野菜室114とに導かれて、水を供給している。野菜室114の上部天面には水補給装置121が備えられている。水補給装置121は、水を貯留する貯留水保持部である貯水槽122と、噴霧部123と、噴霧部123によって発生したミストを野菜室114内に送風する送風部129を有する。また、水補給装置121の外部一画には照射部130が備えられている。また、噴霧部123は、貯水槽122の内部に位置して水を超音波方式で霧化する霧化手段として超音波素子125と、所定粒径以下のミストのみを透過させる金属メッシュ126を具備している。また、貯水槽122内の貯留水124は、給水経路120を介して供給され、貯水槽122内に貯留されている。また、野菜室114の一角には、庫内の温度を検知する温度センサー133が備えられている。
以上のように構成された冷蔵庫のミスト生成装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、製氷用貯水タンク119内に貯留された水が給水経路120を経由して、貯水槽122内に供給され,貯留水124として貯留される。次に温度センサー133が庫内温度を5℃以上であると検知した場合、照射部130が点灯し、野菜室114内に保存されている野菜や果物に光が照射される。照射部130は、たとえば青色LEDなどで、中心波長が470nmの青色光を含む光を照射する。この時照射される青色光の光量子は約1μmol/m2/sの微弱な光で十分である。微弱な青色光が野菜や果物に照射されると、表皮表面に存在する気孔が、青色光の光刺激によって、開孔する。
一方、野菜室内に保存されている野菜や果物の中には、通常、購入帰路時での蒸散あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態のものが含まれている。また、緑の葉菜や果物等の青果物は蒸散あるいは保存中の蒸散によってより萎れやすいものである。
次に水補給装置121の運転が開始される。まず、貯留水124は噴霧部123に構成されている霧化手段の超音波素子125によって水を霧化する。霧化されたミストのうち、野菜の気孔開孔部の直径よりも小さく設定された所定粒子径以下の微細ミストのみが金属メッシュ126を通過すると、貯水槽122内は、野菜の気孔開孔部の直径よりも小さい粒子径のミストが充満した状態となる。貯水槽122内の微細ミストは送風部129によって野菜室114内にミストとなって噴霧される。このとき、霧化手段の超音波素子125によって霧化されたミストは直接金属メッシュ126に衝突することにより、金属メッシュ126に形成されたメッシュ径やメッシュ数に応じて所定粒子径以下の微細ミストのみが金属メッシュ126を介して噴霧され、金属メッシュ126が霧化量調整手段として発生したミストを低減する役割を果たすので、所定粒子径以外の霧化粒子は野菜室に噴霧されずに貯水槽122内に返される。
このように、比較的粒子径の大きなミストを結露させて貯水槽122へと戻すものであり、これによって微細ミストのみが選別されて庫内へと噴霧されることで、庫内に噴霧されるミストが微細な軽いミストであるため、ミストの拡散性が向上し、特定の部分へミストが集中することで野菜の水腐れや庫内の結露を防止することができる。
また、噴霧された微細ミストは、野菜室114内で気孔が開孔した状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔を介して組織内に浸透する。その結果、野菜室内には過剰な水分が供給されることはなく、過剰水分による野菜の水腐れが抑制されるとともに、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、野菜や果物はシャキッとした状態に復帰する。
また、金属メッシュ126に形成されたメッシュ径やメッシュ数を可変することも可能(図示しないが、野菜室の湿度や収納野菜の量等により自動的に可変させたり、野菜量に応じて手動で選択するなど)であるため、これにより、霧化量、霧化粒子径の調整が容易にできる。また、野菜室114内の湿度や野菜の状態(表面結露状態、収納量など)などの野菜室114内の状況に応じて可変させることも可能である。これにより、さらに野菜への水分の過供給による水腐れや庫内での過給水の貯留を抑制でき、また、水分が不足した場合の野菜の萎れを防止することができる。
図4(a)及び図4(b)は、やや萎れかけた野菜における、水分含有量の復元効果のミストの粒子径に対する特性を示した図である。萎れかけ野菜の再現方法としては以下の方法を用いた。
店頭での購入状態に対して、重量が約10%減少するまで所定時間放置したものを、萎れかけ野菜とした。野菜は収穫時から約15%重量減少すれば、見かけが悪くなり、また、細胞組織も元に戻らない。収穫時の野菜に対して、流通の段階での重量減少は5%程度である。5%程度の水分減少であれば、使用者は官能的に見て見かけ上の問題ないものと判断する。しかし、10%程度の重量減少が生じると、使用者は官能的に見て、外観上、萎れかけた野菜と感じるようになる。以上のことから、店頭での購入状態に対して、重量が約10%減少した状態を初期値と定めた。
以下、実験方法を説明する。
上記の処理をした野菜を70リットルの野菜室(約6℃)に保存し、種々の粒子径のミストを約24時間噴霧した。その後、取り出して重量測定を行い、重量が初期に対し、どれくらい復元したかを評価した。
図4(a)は、ミスト噴霧中に光(青色LED)を1μmol/m2/sの強度で照射した実験の結果である。一方、図4(b)は、光照射なしでミスト噴霧した実験の結果である。
この実験では、官能的な評価により水分含有量復元率が50%以上のものが「食べられる」と判定し、70%以上は「十分においしく食べられる」と判定した。
図4(a)より、光照射をした場合、野菜の水分含有量の復元効果は噴霧するミスト粒子径に依存し、一定の最適粒子径範囲が観察された。最適粒子径は野菜の水分含有量の復元効果が50%以上となる0.005〜20μmの範囲であった。
噴霧する粒子径が20μm以上と大きい場合、水粒子が大きすぎて、ミストが均一に噴霧できなかった。これは、ミスト径が比較的大きいとその自重ですぐに容器の底面に落下してしまうためミストの拡散性が十分に得られないからだと考えられる。また、気孔径は最大20μm程度と考えられ、それ以上のミストでは、水粒子が大きすぎて、野菜の内部まで入り込みにくいものと考えられる。
一方、0.005μm以下の超微粒子では粒子が非常に小さいため、開孔状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が浸透できない。以上の要因により、0.005μm以下の場合に復元効果が十分得られなかったものと考えられる。
また、野菜の水分含有量復元効果が70%以上となる範囲は0.008〜10μmの範囲であった。このように、実験の結果によると1μm以上では、粒子径が細かいほうが噴霧の均一性が向上し、また噴霧距離、空気中の滞在時間が延びる。従って、1μm以上では、粒子径が細かいほど野菜表面に付着する確率が高くなり、水分含有量復元率が向上することがわかった。また、10μm以下では、より活発にミスト粒子の気孔から浸透がより活発に行われ、野菜の水分含有量復元効果が70%以上という大きな効果が得られた。また、ミスト径が小さく0.008μm程度でも野菜の水分含有量復元効果が70%以上となることから、この程度のミスト径を確保すれば、ミストと開孔状態の気孔との接触頻度が比較的保たれると考えられる。
さらに、野菜の水分含有量復元効果が80%以上とより高くなる最適粒子径は0.01〜1μmの範囲であった。ここで、粒子径が1μm以下であると粒子が気孔の内部に浸透するに十分の大きさとなる為、0.01〜1μmの範囲内では気孔径によって野菜の水分含有量復元効果が変わらなくなると考えられる。
一方、図4(b)は光照射をしない場合の実験結果であり、水分含有量復元率の50%以上となる粒子径は、光照射時の粒子径よりも小さく、約0.005〜0.5μmであった。
粒子径の上限が0.5μmと小さくなった理由は、光照射による気孔の開孔がないことにより、野菜の表面組織の間隙や比較的閉じた状態の気孔などを介する以外に、水が野菜内部に浸透できないものと考えられる。すなわち、復元するに際し、微細な隙間からしか水粒子が浸透できないためであると考えられる。
なお、水分含有量復元率の50%以上となる範囲の下限の粒子径は0.005μmであり、光照射をした場合と同じであった。0.005μm以下の超微子では、粒子が非常に小さいため、開孔状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が浸透できないためと考えられる。
また、野菜の水分含有量復元効果が80%と高くなるのは0.01μm付近のみであり、野菜の水分含有量復元効果が70%以上となる最適粒子径は0.008〜0.05μmの範囲であった。このように、実験の結果によると0.05μmより小さくなると気孔径が小さくなるにつれて、よりミスト粒子の気孔から浸透がより活発に行われる一方、0.01μmをピークとして、それより気孔径が小さくなるにつれて野菜の水分含有量復元効果はより小さくなることがわかった。
よって水分含有量復元効果は光を照射した場合の方が幅広い粒子径で高い水分復元率を得られることが判明した。
ただし、本実施の形態のように霧化部を超音波霧化方式とした場合には、ミストの粒子径を小さくするに従って、高周波数の振動エネルギーを用いて水滴を細粒化する必要があるので、高周波数になればなるほど、振動回数が多くなり超音波霧化方式の耐久年数が短くなる傾向がある。よって、図4(a)の実験結果および図4(b)の実験結果ともに、粒子径の下限値は0.005μm程度としたが、冷蔵庫に適用する場合には0.5μm以上の粒子径の範囲内で超音波霧化方式を用いることで、平均使用年数が10年程度といった家電製品の中でも特に長期間の耐久性を要求される冷蔵庫においても、十分な耐久性が得られるので、超音波霧化方式による水分含有量の向上の信頼性をより高めることが可能となる。
次に図5は本発明の実施の形態1で説明した萎れかけた野菜に対する水分含有量の復元効果とミスト噴霧量の関係及び、野菜の外観官能評価値とミスト噴霧量の関係を示した図である。萎れかけ野菜の再現方法及び実験方法は図4(a)、図4(b)の実験とほぼ同一である。但し、本実験では、1μmの粒子径の場合に、光照射あり、光照射なしの2パターンの実験を行い、光照射なしについては、さらに0.01μmの粒子径のミストを用いた実験を行った。また、本実験は70リットルの野菜室において行った為、以下の噴霧量はすべて70リットル当たりの噴霧量を示す。
図5より、光照射ありの場合で野菜の水分含有復元効果が50%以上となる範囲は0.05〜10g/h(1リットル当たり=0.0007〜0.14g/h・l)の範囲であった。
ミストの噴霧量が少なすぎると、野菜が気孔から外部へ放出する水分量を下回ってしまい、野菜内部への水分供給を行うことができなくなる。また、ミストと開孔状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が浸透できにくくなると考えられる。
実験では、このような噴霧量の下限値が0.05g/hであることがわかった。
一方、ミストの噴霧量が多すぎると、野菜内部の水分含有許容量を超えてしまい、野菜内部に取り込まれない水分は野菜の外部に付着してしまい、この水分によって野菜表面の一部から水腐れが生じてしまい、野菜が痛んでしまう現象が発生する。
このような野菜表面に余分な水分が付着し、野菜が水腐れ等の品質劣化を起こす範囲は10g/h以上であり、実験としては不適であった。よって、10g/h(1リットル当たり=0.15g/h・l)以上の実験結果については、野菜の品質劣化によって採用できない為、省略する。
光照射ありの場合で野菜の水分含有復元効果が70%以上となる範囲は、0.1〜10g/h(1リットル当たり=0.0015〜0.14g/h・l)であった。このようにミストの噴霧量の下限値が0.1g/h程度以上に多くなると、開孔状態の気孔との接触頻度が十分に多くなり、野菜内部へのミストの浸透が活発に行われると考えられる。
光照射なしの場合については、粒子径1μmの噴霧では、野菜の水分含有復元効果が50%以上となる範囲はなく、すべての噴霧量で10%未満の水分含有量復元率である。粒子径が0.01μmの噴霧では、0.05〜7g/h(1リットル当たり=0.0007〜0.1g/h・l)の範囲であり、さらに野菜の水分含有復元効果が70%以上となる範囲は0.1〜1g/h(1リットル当たり=0.0015〜0.014g/h・l)の範囲であった。これは、上記のような光照射ありの場合と比較して、ミスト噴霧量の下限値についてはほぼ同等であるが、上限値が異なる結果となった。図のように、光照射なしの場合については、気孔が十分に開いていない為、粒子径が十分に小さくないと野菜の内部に水分が浸透しないと考えられる。
以上のように、本実施の形態1では、霧化量調整手段のメッシュ部を金属メッシュとして説明したが、実施の形態1の場合、撥水性を有する材料でも同じ効果が得られる。
また、本実施の形態1では、野菜室内に保存中の野菜に対し、照射部を用いて光を照射し、且つ、ミスト噴霧装置にて気孔を通過できるミストを適量噴霧している。その結果、光照射により開孔した野菜表面の気孔から、適量かつ適当な粒子径のミストが野菜内部に浸透し、野菜の水分含有量を向上、野菜のみずみずしさを保持・向上させることができる。
また、本実施の形態1では、0.1〜100μmol/m2/sの青色光を照射した。微弱な光照射によって、光合成活動を低く抑えた上で、気孔開孔率を高くすることが可能となる。また、ある程度の生態活動を促し、野菜の光合成による水分消費を極力抑え、開孔した、気孔から水分を野菜内部に効率よく供給することができる。加えて、光量を抑えることにより消費電力を低減し、省エネ効果を得ることが出来る。
また、本実施の形態1では、水道水などの通常の水を噴霧したが、オゾン水や酸性水あるいはアルカリ水などの機能水を噴霧してよい。野菜や果物表面の微細な孔に機能水ミストが入り込むことにより、微細な孔の内部の汚れや農薬等の有害物質を浮き上がらせ除去効果を高めることができる。また、野菜表面の農薬等の有害物質の酸・アルカリ分解効果を高めることができる。また、庫内に付着する汚れや庫内臭気の除去及び、酸・アルカリ分解効果も高めることができる。
なお、本実施の形態1では、霧化手段として超音波素子125、霧化量調整手段として金属メッシュ126を用いて超音波素子125によって液柱を発生させ、金属メッシュ126を介してミストの粒子径と霧化量を調整しているが、より細孔なメッシュを形成した金属メッシュ126を直接的に超音波素子125により振動させ、図示しないが金属メッシュ126に給水材などの部材を用いて水分を供給することでミストの粒子径と霧化量を調整することも可能である。
なお、本実施の形態1では、霧化手段として超音波素子125、霧化量調整手段として金属メッシュ126を用いていることでミストの粒子径と霧化量を調整しているが、金属メッシュ126に対向して金属板127を設け、金属メッシュ126と金属板127に高電圧を印加する高電圧電源128と、金属メッシュ126と金属板127との間に高電圧を印加することによって、ミストの粒子径をより細粒化することで、ミストの粒子径を調整することも可能である。この場合には、ミストの細粒化と共にミスト粒子には静電付加することも可能である。さらに、高電圧による水分子の分裂によりミスト粒子径がさらに細分化されることから、過剰水として現れにくくなるので、霧化量調整が容易になる。なおこの場合においては、電極としての役割を兼用するため金属製が妥当である。
また、本実施の形態1では、貯水槽への水供給部としては、製氷用貯水タンクから水経路を利用して貯水槽へ水を送水するため、専用のタンクを備えなくても噴霧部に水を供給することができ、内容積に影響しないので、庫内の食品収納量を減少させることなくミストの噴霧装置を備えることができる。
なお、本実施の形態1においては、貯留水保持部を貯水槽とし、外部から供給された貯留水が保持されるものとしたが、貯留水保持部は、保水装置としての吸湿剤(例えば、シリカゲル、ゼオライト、活性炭等の多孔質材料等)を用いて、貯蔵室内の空気内に含まれている水分を抽出して保持するものでもよい。また、冷蔵庫の除霜水や庫内の結露水等を用いて、使用者が外部から貯留水を供給することなく貯留水を確保できるものであれば、外部からの水分の補給の手間がかからず使い勝手をより向上させた冷蔵庫を提供することができる。
なお、本実施の形態1では、貯蔵室内の収納物として野菜などの青果物について説明した。さらに、水分を供給することにより品質が向上する収納物として、例えば、果物や0℃近辺で保存している鮮魚や肉類でも本実施の形態1の冷蔵庫を用いることで乾燥を防ぐことができる。
なお、本実施の形態1のように振動エネルギーによってミストを生成するタイプの霧化装置は、水粒子に電気分解等の分解を行わないので、水の成分を変えずにミスト化できる場合がある。このように、振動エネルギーの与え方によって水の成分をそのままミスト化するような装置にした場合には、例えばアルカリイオン水やマイナスイオン水等の純粋な水と比較してなんらかの成分を付加した機能水を用いても、その成分をそのままミスト化することが可能となり、使用者のニーズに応じた任意の水をミストとして供給することができる。
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の側断面図である。図7は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の縦断面図である。図8は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の正面図である。図9は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の超音波霧化装置の縦断面図である。図10は、本発明の実施の形態2における機能ブロック図である。図11は、本発明の実施の形態2における制御フロー図である。図12は、本発明の別の実施の形態における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の縦断面図である。
図6において、冷蔵庫221は断熱性を有する仕切り板222によって、上から冷蔵室223、切替室224、野菜室225、冷凍室226に区画されている。野菜室225は野菜容器228が設置され、その空間の中に食品を収納し、湿度約90%RH以上(食品収納時)、4〜6℃に冷却されている。野菜室225の背面には風路229と野菜室225を区画するための庫内仕切り230が備えられている。庫内仕切り230には、超音波霧化装置401を含む水補給装置322が備えられている。さらに、野菜室天面の仕切り板222には、特定の波長を選択した光を照射する照射部323と庫内全体に光を拡散させるための拡散板324が備えられている。
図7において、庫内仕切り230と冷蔵庫外壁402との間には風路229を備える。風路229は、例えば冷却器(蒸発器)242で生成された冷気を各貯蔵室に搬送し、もしくは各貯蔵室から熱交換された空気を冷却器242へ搬送するために設けられている。ここで、庫内仕切り230には超音波霧化装置401が組み込まれている。庫内仕切り230は主に発泡スチロールなどの断熱材で構成されており、その壁厚は30mm程度であるが、貯留水保持部404の背面については、壁厚は5mmから10mmで構成されている。貯留水保持部404の中には、水収集板321が庫内側に設置されている。水収集板321の一面には例えば、ニクロム線で構成された加熱ヒータなどの加熱部328が当接し、庫内側にはBOXファンなどの送風部317と循環風路407を構成するためのカバー部材406が設置されている。
図8において、カバー部材406には循環風路407に関する第1の循環風路開口部408と第2の循環風路開口部409が設けられている。さらに、水収集板321には、水収集板321表面の温度を検知するための温度検知部327が設置されている。
図9において、超音波霧化装置401はホーン410と圧電素子411で構成される。ホーン410は切削加工等により略円錐状に加工され、ホーン410の圧電素子411側にホーン410と一体的にフランジ部410aが形成されている。またホーン410と圧電素子411とは接着固定されて、圧電素子411で発生する振動をホーン先端で最大振幅となるよう増幅されるように構成されている。また、超音波霧化装置401はフランジ部410aを取り付け位置とし、冷蔵庫やその取り付け部材の接続部405に取り付けられている。
ホーン410は熱伝導性の高い材質としており、例えばアルミニウム、チタン、ステンレス等の金属が挙げられる。特に、軽量で、熱伝導性が高く、超音波伝達時の振幅の増幅性能の点からするとアルミニウムを主成分とするもの選択することが好ましい。また、長寿命化のためにはステンレスを主成分とするものを選択することが望ましい。
また、超音波の振動の振幅はフランジ部410aで振幅の節部に、ホーン410の先端で振幅の腹部となるように、またフランジ部410aとホーン410の先端の間を1/4波長で振動するように設定されている。またホーン410の長さは、発生ミストの霧化粒子径と圧電素子411の発振周波数及びホーン410の材質で決まるものである。例えば、霧化粒子径が約10μmの場合、ホーン410の材質がアルミニウムで、圧電素子411の発振周波数は約270kHzの時にホーン410の長さBは約6mmとなる。また、霧化粒子径が約15μmの場合、ホーン410の材質がアルミニウムで、圧電素子411の発振周波数は約146kHzの時にホーン410の長さBは約11mmとなる。これらの一連の理論計算値まとめを表1に記載する。
また、冷蔵庫221の冷凍サイクルは、圧縮機241、凝縮器、膨張弁やキャピラリチューブなどの減圧装置(図示せず)、蒸発器242、それら構成部品を連結する配管、及び冷媒などで構成される。
冷蔵庫221は、機械室を有しており、機械室には圧縮機241と凝縮器などが備えられている。なお、三方弁や切替弁を用いる冷凍サイクルの場合は、それらの機能部品が機械室内に配設されていてもよい。
冷凍サイクルを構成するキャピラリは、パルスモーターで駆動する冷媒の流量を自由に制御できる電子膨張弁として働く場合もある。
また、断熱箱体内には、蒸発器242が冷凍室226の背面に備えられ、減圧膨張で低温化した冷媒と庫内空気とを熱交換により冷却する役割を担っている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作・作用を説明する。
冷蔵庫221の場合、冷却器242で熱交換された冷気を攪拌ファン(図示せず)などにより冷蔵室223、切替室224、野菜室225、冷凍室226、製氷室(図示せず)などに冷気を配分し、所定の温度を維持するようにON・OFF運転するものが一般的である。野菜室225は、冷気の配分や加熱部などのON・OFF運転により4℃から6℃になるように調整され、一般的には庫内温度検知部をもたないものが多い。また、野菜室225は、食品からの水分の蒸散と扉の開閉による水蒸気の侵入等により高湿である。庫内仕切り230の厚さは、ある程度の冷却能力が必要なので他の部分より薄く構成されている。ここで、水収集板321の表面温度を露点温度以下にすれば、水収集板321近傍の水蒸気は水収集板321に結露し、水滴が確実に生成される。
具体的には、(1)水収集板321に設置されている温度検知部327により表面の温度状態を把握し、(2)制御部314により送風部317、加熱部328をON・OFF制御もしくは電圧可変を行い、(3)水収集板321の表面温度を露点温度以下に調整し、(4)送風部317により庫内より送られた高湿空気に含まれる水分を水収集板321に結露させる。特にここでは図示しないが庫内に庫内温度検知部や庫内湿度検知部などがあれば、あらかじめ決められた演算により厳密に露点温度が庫内環境下の変化に応じて割り出すことができる。仮に水収集板321表面で氷や霜となった場合でも、加熱部328を用いて融解温度まで水収集板321表面温度を上昇させることが可能なので、適度に水を生成することができる。
ここで、送風部317が運転されると野菜室225の空気の影響により水収集板321表面温度は上昇し、一方、送風部317が停止すると表面温度は低下する。壁厚が10mm以上では、送風部317が運転時、加熱部328がOFFでも水収集板321表面温度は露点温度以上になり、結露量が調整できなくなる。逆に壁厚が5mm以下の場合は、常時、加熱部328がONの状態になりエネルギー効率が悪くなる。よって、水収集板321背面の庫内仕切り30の厚みは5mmから10mmにすることにより水収集板321の表面温度を制御しながら加熱部328のエネルギーを最小化することができる。
また、結露を促進させるためには野菜室225内の空気を循環させる必要がある。そこで、送風部317により空気を取り込む。例えば、送風部317により第2の循環風路開口部409より高湿の空気をとりこみ、水収集板321で結露させた後、第1の循環風路開口部408より庫内に空気を吐出し、野菜室225内の空気を循環させることにより結露を促進させる。
水収集板321表面で結露した水滴は徐々に成長し、自重によりポンプなどの動力を使わずに下方に流れ、超音波霧化装置401近傍に集まる。集まった結露水は、給水部403によりホーン410先端に供給される。
ホーン410先端に供給された水は、超音波振動子411の振動により粒子径の小さいミストとして野菜容器228内に噴霧される。このとき、霧化手段の超音波素子401によって霧化されたミストは霧化量調整手段412に衝突しながら粒子径の大きい粒子から給水部403に戻っていく。したがって霧化量調整手段412によって霧化量を調整し、取り除かれなかった比較的粒子径の小さい霧化粒子がミスト発生口413から噴霧されることになる。噴霧された微細ミストは、野菜室114内で気孔が開孔した状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔を介して組織内に浸透する。その結果、野菜室内には過剰な水分が供給されることはなく、過剰水分による野菜の水腐れが抑制されるとともに、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、野菜や果物はシャキッとした状態に復帰する。
また、霧化量、粒子径の調整は、霧化量調整手段412の傾斜角度や霧化装置からミスト発生口までの距離によって変更が可能であり、用途や条件によって、霧化量、霧化粒子径を最適に調整できる。また、野菜室内の湿度や野菜の状態(表面結露状態、収納量など)などの野菜室内の状況に応じて可変させることも可能である。これにより、さらに野菜への水分の過供給による水腐れや庫内での過給水の貯留を抑制でき、また、水分が不足した場合の野菜の萎れを防止することができる。
野菜室225内には青果物である野菜の中でも緑の菜っ葉ものや果物等も保存されており、これらの青果物は蒸散よってより萎れやすい。野菜室225内に保存されている野菜や果物の中には、通常、購入帰路時での蒸散あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態のものが含まれており、霧化されたミストによって野菜の表面が潤わされる。このとき、庫内(野菜室)温度検知部325が5℃以上、庫内(野菜室)湿度検知部326が95%以上であると検知した場合、照射部323が点灯する。照射部323は、例えば青色LEDや青色光のみを透過する材料で覆われたランプなどであり、微弱な青色光を照射し、野菜や果物は表皮表面に存在する気孔が、青色光の光刺激によって、通常の状態に比べ気孔の開度が大きくなり、野菜や果物が水分を吸収しやすくなる。
つまり、この時照射される青色光は野菜の気孔開度を制御するものであり、その波長は400nm〜500nmが望ましい。特に中心波長が440nmもしくは470nmの照射部を使用したときその相対効果が高く、特に青色LEDを用いれば安価でかつ低入力で照射でき、貯蔵室内への熱影響を低減できる。
また、光の強さを表す光量子密度は、0.1μmol・m−2・s−1〜100μmol・m−2・s−1が望まれる。特に野菜の気孔は光刺激により気孔を開閉するが、その刺激の感知する光量子密度は0.1μmol・m−2・s−1程度あれば光刺激に反応する。また、それ以上なら気孔は開孔するが100μmol・m−2・s−1を超えると光合成が活発になり、そのため野菜表面からの蒸散が激しくなり保鮮性が損なわれる。実際には、容器内の照度分布と野菜の積み重ね等を考慮すれば、照射部323の光量子密度は1μmol・m−2・s−1程度に設定されることが望ましい。
これにより、噴霧されたミストは野菜室225内を再び高湿にすると同時に野菜室225内に気孔開孔状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔より組織内に浸透し、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキッとした状態に復帰する。そのとき、霧化粒子径は0.5〜20μmが好ましい。さらに、一般的な野菜の平均的な気孔の大きさが20μm程度であるため、萎れた野菜をより復活させるためには20μm以下の粒子径でより細かいミストがより好ましい。
ホーン410は、ホーン410先端付近で振動による発熱を生じるが、ホーン410が高熱伝導性材料であるため、ホーン全体410への熱伝導の働きもなしている。これはホーン410付近での熱源により熱を周囲に逃がすことが可能となり、長寿命化につながり信頼性が向上する。
圧電素子411が駆動した場合、図9に示す実線Aのように各部位が振動する。ホーン410のフランジ部410a側が超音波霧化装置401内を伝播する音波の節部であり、フランジ部410aで、例えば庫内仕切り230と直接的または取り付け部材を介して間接的に接続して設置されているため、伝播する音波の節部で接続することとなり損失が少なくなるため、消費電力は小さくてすむ。
また、ホーン410の先端とフランジ部410aとの長さ(ホーン長:B)が1/4波長である構造をもてば、超音波霧化装置401の全長を短くすることができる。逆にホーン410の先端とフランジ部410aの間に腹部が複数あると、振動エネルギー損失が大きくなり、振動に要する電力が大きくなる。
さらに、圧縮機241の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器にて冷蔵庫221の空気と熱交換して放熱するとともに凝縮液化し、キャピラリに至る。その後、キャピラリでサクションラインと熱交換しながら減圧されて蒸発器242に至る。
冷却用ファン(図示せず)の作用により、蒸発器242内の冷媒の蒸発作用により比較的低温となった冷気は冷蔵室223と冷凍室226などに流入し、それぞれの部屋の冷却が行われる。蒸発器242内で、庫内の空気と熱交換した冷媒はその後サクションラインを通り圧縮機241へと吸い込まれる。
上述した冷凍サイクルの冷媒としては、地球環境保全の観点から地球温暖化係数が小さい可燃性冷媒であるイソブタンが使用されている。
仮に、圧縮機の停止時に蒸発器242から可燃性冷媒が漏洩した場合でも、超音波霧化装置なら静電霧化装置にあるような放電部がなく、着火源がない。そのため、冷凍サイクルを構成している部品の構成に関係なく超音波霧化装置を設置することができ、また、冷媒の種類を問わず、安全である。
次に図10の機能ブロック図を説明する。制御部314は、超音波霧化装置401の動作と、超音波霧化装置401に給水する水量を調整するため動作させる加熱部328や送風部317などと、照射部323の動作を制御する。それらの制御のため、水収集板温度検知部327と野菜室温度検知部325と野菜室湿度検知部326と扉開閉検知部330とからの情報信号が制御部314に入力される。例えば、庫内温度が5℃、庫内湿度が90%、水収集板表面温度が4℃であることが検知された場合、制御部314は、超音波霧化装置401のON・OFF、加熱部328の動作を決定する。この場合、制御部314は、水収集板表面温度を、露点温度以下に冷却する必要があるので、例えば、加熱部をOFFするか、もしくは加熱部への入力を低下させるか、冷気の温度を低下させるために圧縮機の回転数を増加させるか、もしくは送風部の回転数を低下させるように制御を行う。また、制御部314は、扉開閉検知部330により扉が閉状態であると検知されたときにのみ、超音波霧化装置401を動作させることにより、扉開閉時の外部へのミストもれを防ぐことが出来る。さらに、貯蔵されている野菜が0℃近辺の低温で気孔を開孔した場合、野菜の低温障害を促進してしまい、野菜を傷めることになる。また、15℃以上だと呼吸による野菜表面からの蒸散が盛んになり、水分量が減少しやすくなる。そこで、野菜室温度検知部325が、例えば5℃〜15℃の範囲を検知した時にのみ、照射部324をONすれば効率のよい鮮度の維持、水分量の向上ができる。
次に図11の制御フロー図を説明する。
ステップ21で、水収集板表面温度検知部327により測定された表面温度t℃があらかじめ決められたtA℃とtB℃の範囲に検知温度がある場合、制御部314は、野菜の気孔制御とミスト噴霧による水分量向上が可能と判断し、ステップ22で超音波霧化装置401を運転させ、貯蔵室にミストが噴霧される。
ステップ23で、制御部314が超音波霧化装置401の積算運転時間TAがT1を超えると判定すると、ステップ24に進んで照射部323を動作させる。
ステップ25で、制御部314が超音波霧化装置401の運転積算時間TAがT2を超えると判定すると、ステップ26に進んで、ミスト噴霧を終了し、同時に照射部もOFFさせる。
次にステップ27で、制御部314が超音波霧化装置401の停止時間がT3を超えると判断すると、ステップ28に進んでよりタイマーTA、TBを初期値に戻し、再び水収集板表面温度を検知する。
以上説明したように、本実施の形態2の冷蔵庫は、断熱区画された貯蔵室を有する断熱箱体と、液体を噴霧する噴霧部として超音波霧化装置とを備える。この構成により、比較的低温である各貯蔵室へ低温冷気を搬送するため風路を利用して、風路側からの熱伝導により超音波霧化装置に水を供給するための水収集板を冷却する。水収集板を露点以下に温度調整することにより、空気中の水分を確実に生成し、給水部などにより超音波霧化装置の振動子先端に水を供給することができる。
また、本実施の形態2においては、霧化量、粒子径の調整を霧化量調整手段の傾斜角度を固定した形態で説明したが、図12に示すように霧化量調整用の傾斜角度可動部414を設けることより庫内の状況に応じて可変させることも可能である。これにより、さらに野菜への水分の過供給による水腐れや庫内での過給水の貯留を抑制でき、また、水分が不足した場合の野菜の萎れを防止することができる。
また、本実施の形態2においては、噴霧部を超音波霧化装置としたことにより水の供給が十分であれば、噴霧量は十分確保することができる。そのためON・OFF運転による噴霧量の調整が可能となり、さらに、実使用での運転時間が短縮でき、構成部品等の寿命信頼性が向上する。
また、本実施の形態2においては、ミスト噴霧と併用して400nm〜500nmの波長を選択した青色光を含む照射部により野菜室内を照射することにより、気孔の開閉を光刺激により制御できることにより、さらに野菜への水分供給が向上する。
また、本実施の形態2においては、噴霧部を超音波霧化装置としたためミスト発生時にオゾンが発生することがないので、特にオゾンに対する対策を用いなくてよく、部品構成ならび制御内容が簡素化できる。
また、本実施の形態2においては、超音波霧化装置に貯水槽を備えたことにより様々な機能水、たとえば酸性水、アルカリ水、またはビタミンなどを含んだ栄養水などを注入し、それを野菜室内に噴霧することができ、様々な新しい機能を野菜室に追加できる。
また、本実施の形態2においては、超音波霧化装置を用いたことにより冷凍サイクルの冷媒にイソブタンやプロパンなどの可燃性冷媒を用いた場合においても、冷凍サイクルの構成部品の配置を考慮せず超音波霧化装置を設置することができ、また、防爆対応などの特別な対応も備えなくてもよい。
また、本実施の形態2においては、水収集板を貯蔵室内に備えたことにより加熱部や送風部により結露量を調整できると同時に、水収集板の温度を可変にすることにより庫内湿度も調整できる。
また、本実施の形態2の冷蔵庫は、略円錐状に形成されたホーンと、圧電素子とを備え、ホーンの一端面に圧電素子を接着して一体化している超音波霧化装置を貯蔵室内に配置している。この構成により、小型化され、かつ低入力の超音波霧化装置を冷蔵庫に適用できるため、設置の制約が少なく、設計に自由度を持たせることができる。また、低入力であるため消費電力を低減することができるとともに、制御部314を搭載する制御基板を小型・低コスト化することができる。
また、超音波霧化装置自体の発熱量が抑制できるので、貯蔵室内の温度上昇を抑制できる。また特に欠水が生じた場合の異常発熱を抑制することができるので、超音波霧化装置の寿命が長期化し、信頼性が向上する。さらに冷蔵庫という低温雰囲気下で使用するため、発熱が抑制され、超音波霧化装置自体も長寿命化できる。
また、給水部を設けたことにより、効率的にかつ安定してホーン先端に水分を供給するので、超音波霧化装置から常時安定して噴霧され、貯蔵室空間を高湿に維持することができる。また、安定してホーン先端に水分を供給することで、ホーン先端での欠水を防止できるので、超音波霧化装置の寿命が長期化し、信頼性が向上する。
また、給水部は、貯留水保持部近傍に設けられていることにより、貯留水保持部から給水部によりホーン先端に水分が補給されるため、効率よく貯蔵室空間に噴霧でき、貯蔵室空間を高湿に維持することができる。また、貯留水保持部と給水部が近傍に位置しているので、貯留水保持部からホーン先端までの水分経路の構成をコンパクト化、簡素化でき、設計自由度が向上する。
また、貯留水保持部は、水収集部として貯蔵室内の空気中水分を結露させる部を有する。結露水を給水部によりホーン先端に供給することにより、結露部により生じた結露水を貯留水保持部に集水する。供給部を介してホーン先端に集水された結露水を常時安定して供給できるため、効率よく貯蔵空間にミストを噴霧でき、貯蔵室空間を高湿に維持することができる。
また、ホーンは、高熱伝導性の材質であることより、ホーン先端部で発熱をホーン全体に拡散し、かつ貯蔵空間が低温環境であるため、超音波霧化装置自体の温度上昇が抑制できるので、長寿命化し信頼性が向上する。
また、霧化粒子径を0.5μmから20μmにすることにより、食品の内部に強制的に水分を供給できるため、食品の水分含有量を向上することができる。
また、ホーン先端部を振動の腹部近傍に、ホーンの圧電素子接着面側に形成したフランジ部を振動の節部近傍にするとともに、フランジ部と直接的または間接的に冷蔵庫本体とを接続することにより、振動の振幅が大きい腹部、すなわちホーン先端部でホーン先端に補給された水分を効率よく霧化させることができる加えて、振動の節部、すなわちホーンに形成したフランジ部では振幅が小さいため、直接的または間接的に接続した接続部から冷蔵庫への振動伝達を低減することができる。
また、超音波霧化装置は、ホーン先端とフランジ部との長さを1/4波長モードで振動する構造を有することにより、霧化面となるホーンの先端と接続部となるホーンに形成したフランジ部との間に腹部と節部が1つで複数存在しない。その結果、ホーンの小型化が可能であり、エネルギーの分散や減衰が低減されるため、効率の向上が可能となる。また、小型化できるので、設置制約が少なく、設計に自由度を持たせることができ、貯蔵空間を大きくすることができる。
また、ホーンの長さを1mmから20mmとすることにより、ホーンが小さくなるため、冷蔵庫設計に自由度を持たせることができ、貯蔵空間を大きくすることができる。
また、超音波霧化装置周辺にカバー部材を設けることにより、使用者等が直接触れることができなくなるため、安全性の向上が可能とすることができる。
本実施の形態2において、超音波霧化装置を略円錐状に形成されたホーンを使用したもので説明したが、略円錐状の形状でなく、先端での振動の振幅を増幅させる形状であれば同様の効果が得られる。例えば、圧電素子側から先端に向け先細り形状として、先端部において略長方形形状にすることも可能である。このことによりミストを噴霧させる面積が円形状に比べて大きくなるので、噴霧範囲が拡大され拡散性が向上する。
(実施の形態3)
図13は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の縦断面図である。図14は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の正面図である。実施の形態2と同一部、同一部材は同一番号で示すことがある。
実施の形態3において、冷蔵庫221は断熱性を有する仕切り板222によって、区画されている。野菜室225には野菜容器228が設置され、その空間の中に食品を収納し、湿度約90%RH以上(食品収納時)、4〜6℃に冷却されている。野菜室225の背面には風路229と野菜室225を区画するための庫内仕切り230が備えられている。冷蔵庫221の左側面部の外壁402には超音波霧化装置401が備えられている。
庫内仕切り230と冷蔵庫外壁402との間には風路229があり、例えば冷却器242で生成された冷気を各貯蔵室に搬送する、もしくは各貯蔵室から熱交換された空気を冷却器へ搬送するために設けられている。ここで、冷蔵庫221の左側面部の外壁及び野菜室225の天面、すなわち断熱性を有する仕切り板222には超音波霧化装置401が設置されている。断熱性を有する仕切り板222は主に発泡スチロールなどの断熱材で構成されている。
野菜室225の上方には切替室224があり、切替室224には切替室容器がある。切替室224は冷却方法としては、例えば奥面の一部に冷気の吐出口と吸込み口があり、この冷気量の調整と加熱部(図示しない)の動作により温度調節されている。超音波霧化装置401の奥上方には水収集板321があり超音波霧化装置401に水が流れるように傾斜をつけたカバー部材406が備えられている。水収集板321の裏面は周囲の断熱材より薄い壁厚になっている。また、水収集板321にはカバー部材406により風路が構成され、その一部に送風部317が備えられている。
さらに、野菜室225天面にあるカバー部材406には、特定の波長を選択した光を照射する照射部323と庫内全体に光を拡散させるための拡散板324が備えられている。
切替室224は冷凍温度帯から冷蔵温度帯で使われている。例えば、冷凍室温度の設定のとき、吐出口から冷気が流れ庫内温度は約−20℃になる。薄壁化された仕切り板222の上面(切替室側)は−20℃付近の温度であるため、野菜室225上面は切替室からの熱伝導により冷却される。本実施の形態3では、水収集板321の背面に加熱部328と表面温度の検知部を有し、これらにより表面温度を露点温度以下に制御し、水収集板321に野菜からの蒸散や扉開閉により浸透した庫内水蒸気を結露させ水を生成する。
水収集板321から滴下した水はカバー部材406に受け止められ、傾斜したカバー部材406に沿って貯留水保持部404に設けた貯水槽315に集水される。したがって、給水部403は、十分に水を含んでおり、この状態で超音波霧化装置401よりミストを発生し、野菜室225に噴霧される。このとき噴霧された霧化粒子は霧化量調整手段412に衝突しながら粒子径の大きい粒子から給水部403に戻っていく。したがって霧化量調整手段412によって霧化量を調整し、取り除かれなかった比較的粒子径の小さい霧化粒子がミスト発生口413から噴霧されることになる。また、霧化量、粒子径の調整は、霧化量調整手段412の傾斜角度によって変更が可能であり、用途や条件によって形状変更が可能である。これにより噴霧されたミストは野菜室225内を再び高湿にする。同時に、波長が400nm〜500nmの範囲に選択された照射部により野菜容器228内を照射することにより、野菜室225内に保存された野菜の気孔が開孔状態になる。気孔が開孔した状態で、ミストが野菜や果物の表面に付着し、気孔から組織内にミストが浸透する。その結果、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキッとした状態に復帰する。
また、送風部317を用いて、水収集板321に結露する量を制御することができる。
以上のように、本実施の形態3においては、野菜室の天面の仕切りに取り付けられている水収集板と、切替室で生成された低温冷気を冷却源とし、野菜室天面の仕切りの切替室側からの熱伝導により水収集板を冷却する。加熱部や送風部を用いて、水収集板の表面温度を露点以下に温度調整することで、空気中の水分を水収集板に確実に結露させることが出来る。結露させて収集した水を、貯留水保持部に設けた貯水槽に集水し、給水部により超音波霧化装置に水分を供給する。ホーン410先端に供給された水は、超音波振動子411の振動により粒子径の小さいミストとして野菜容器228内に噴霧される。野菜室の左側面上方からミストを野菜容器に確実に噴霧することができ、野菜表面にミストを付着させることにより野菜の保湿性を高め、保鮮性を向上させることができる。
また、貯水槽315は貯留水保持部404に対して着脱自在に設置されている。従って、野菜室内に収納されている野菜量が少ない場合や冷蔵庫の運転開始直後の比較的湿度の低い状態の時に、あらかじめ貯水槽で水を補給できるのでより安定して保湿性を向上することができる。
また、超音波霧化装置、貯水槽は扉側にあることにより取り外しやすく、メンテナンスがしやすい。
また、本実施の形態3においては、本実施の形態2と同様、霧化量、粒子径の調整を霧化量調整手段の傾斜角度を固定した形態で説明したが、図示しないが霧化量調整用の傾斜角度可動部を設けることより庫内の状況に応じて可変させることも可能である。これにより、さらに野菜への水分の過供給による水腐れや庫内での過給水の貯留を抑制でき、また、水分が不足した場合の野菜の萎れを防止することができる。
また、本実施の形態3において、貯水槽と結露方式の組み合わせで説明したが、ミストを噴霧するのに十分な貯留水を確保できる場合、貯水槽がなくすことも可能である。これにより、貯蔵室の有効容積を増やすことができる。
なお、本実施の形態では野菜室の冷却源として切替室としたが、冷凍室や製氷室などを冷却源にしてもかまわない。これにより温度が一定になるため制御部が簡略される。
(実施の形態4)
図15は、本発明の実施の形態4における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の縦断面図である。実施の形態2と同一部、同一部材は同一番号で示すことがある。
実施の形態4における冷蔵庫は、野菜室天面の仕切り板222に設置されている超音波霧化装置401と、水を貯留する貯留水保持部404である貯水槽315と、発生したミストを野菜室225内に送風する送風部317を有している。
超音波霧化装置401は、貯水槽315に隣接し、水を霧化するため圧電素子411と所定粒径以下のミストのみを透過する金属メッシュ415を具備している。また、貯水槽315内の貯留水は仕切り板222に設置されている水収集板321により生成された結露水を、給水部を兼ねたカバー部材406により貯水槽315に給水する。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作・作用を説明する。
まず、仕切り板222に設置された水収集板321が冷気の熱伝導により冷却され、野菜室内の水蒸気が水収集板321に結露する。次に、結露した水は、水集板321または、カバー部材406より超音波霧化装置401内にある貯水槽315に給水される。貯水槽に保持された水は、圧電素子411の振動により、貯水槽内の液面が振動・分裂し霧状のミストが発生する。発生したミストは金属メッシュ415によりさらに細粒径化され、送風部317により庫内に噴霧する。
以上のように、本実施の形態においては噴霧部を超音波振動子とすることにより比較的多量の霧化が可能となり、噴霧部のON・OFFにより霧化量を調整することが可能となる。
また、本実施の形態においては、超音波霧化装置を用いているため発振周波数を可変させれば、粒子径を可変でき、また電圧を変えることで霧化量を調整できる。