JP2007168124A - 平版印刷用湿し水組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】印刷作業にあたって、専門的熟練を必要とすることなく、あらゆる機構の印刷機において、イソプロピルアルコールを完全に代替することのできる平版印刷用の湿し水組成物を提供する。印刷機停止時に版面上に残った湿し水が水滴となり、水分が蒸発しても、画像部を溶解せず画像を損なうことがない平版印刷用の湿し水組成物を提供する。印刷機や湿し水循環装置に使用されている金属部分、例えば銅及びその合金、鉄及びその合金、鋼、鋳鉄、並びにそれらのメッキ加工品の腐食や錆発生を確実に抑制できる平版印刷用の湿し水組成物を提供する。印刷版の汚れ、ブラインディング及び水負けといった印刷時の問題点の発生を抑制し、安全衛生上及び消防安全上の問題がなく、高品質の印刷物を得ることができる平版印刷用の湿し水組成物を提供する。
【解決手段】特定の式で表される化合物と防錆剤とを含有することを特徴とする平版印刷用湿し水組成物。

Description

本発明は平版印刷用湿し水組成物に関するものである。
平版印刷は水と油が本質的に混じり合わない性質を巧みに利用した印刷方式であり、印刷版面は水を受容し油性インキを反撥する領域と、水を反撥し油性インキを受容する領域からなり、前者が非画像領域であり、後者が画像領域である。湿し水によって、非画像領域を湿潤させて画像領域と非画像領域との界面化学的な差を拡大して、非画像領域のインキ反撥性と画像領域のインキ受容性とを増大させることがなされる。従来から一般的に知られている湿し水としては、重クロム酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、リン酸又はその塩、例えばアンモニウム塩、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のコロイド物質等を添加した水溶液がある。しかしながら、これらの化合物だけを含む湿し水は、版の非画像部に均一に濡れ難い欠点があり、このため印刷物が時々汚れたり、また湿し水の供給量を調節するのに相当の熟練を要するなど問題となっていた。また、近年廃水中のクロムイオンの排出規制が厳しくなり、安全衛生面から規制される傾向にある。
この欠点を改良するため、イソプロピルアルコールを約20〜25%加えた水溶液を湿し水として用いるダールグレン方式が提案され、広く普及している。この方式によると、非画像部への濡れが良くなり、湿し水の量が少なくて済み、印刷インキと水との供給バランスの調整が容易であり、印刷インキ中への湿し水の乳化量が少なくなり、さらにブランケットへの印刷インキの転移性が良くなる等、作業性の面および得られた印刷物の精度の面において数々の利点がある。
しかしながら、このイソプロピルアルコールは水と蒸発のし易さが異なるために、湿し水のイソプロピルアルコール濃度を一定に保つための特殊な高価な装置が必要である。また、イソプロピルアルコールは特有の不快臭があることと共に、毒性の面でも問題があり、有機溶剤中毒予防規則(有機則)第2種有機溶剤であって規制を受ける。さらに、危険物第4類アルコール類に該当し、引火し易い化合物であるため、取り扱いや保管管理に注意が必要で作業環境上好ましくない。また、このイソプロピルアルコールを添加した湿し水を、通常の水棒を用いるオフセット印刷に適用しても、ローラー上および版面上でイソプロピルアルコールが蒸発するため、その効果を発揮することができないなどの問題があった。
このため、イソプロピルアルコールを代替する技術が近年提案されてきている。しかしながらこれらの代替技術では揮発性を有する有機溶剤を使用するため、VOC(揮発性有機化合物)を排出する原因となり、改良が求められる。
また、上記の問題のほか、湿し水に起因する印刷機や湿し水循環装置の金属部分の腐食や錆発生の問題がある。印刷機としてインキ練りローラーの一部を親油性の高い銅又は銅合金ロールとしているものが多く使用されている。このような印刷機を用いて印刷を行う場合、平版印刷版の非画像領域を親水性状態にして維持して画像領域のみにインキを受理し、ゴムのブランケットを介してインキが紙に転写されるが、この際圧胴(ニッケルメッキ、クロムメッキ等がされているか、みがき仕上げ等がなされている鋳鉄製)とブランケットが接触する。このため、銅又は銅合金メッキロール、圧胴を有している印刷機において印刷を行う場合には、湿し水中に添加する湿し水添加剤の種類と量によって、銅又は銅合金のメッキ部及び圧胴の腐食もしくは錆を発生することが多い。
従って、これらの金属の腐食や錆発生を防止できる湿し水が求められる。
イソプロピルアルコールを不使用とする観点から、イソプロピルアルコール代替化合物として不揮発性もしくは高沸点化合物を使用する技術が開発されている。例えば、アルキレンジアミンのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物を湿し水組成物に含めることが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。しかしながら、このような湿し水組成物を用いたとき、印刷機停止時に版面上に残った湿し水が水滴となり水分が蒸発すると、これらの不揮発性もしくは高沸点の化合物が濃縮されて残存し、平版印刷版の画像領域を溶解し画像を損なうという欠点がある。
また、印刷機などの金属部分における腐食を抑制するために、ベンゾトリアゾール類を含有させた湿し水組成物が提案され(例えば特許文献3参照)、ベンゾイミダゾール又はその誘導体を含有させた湿し水組成物が提案され(例えば特許文献4参照)、その他、コハク酸又はその誘導体を有するモノチオエーテル化合物を含有させた平版印刷版用版面処理液が提案されている(例えば特許文献5参照)。
上記のように種々の提案がなされているが、イソプロピルアルコールを代替し且つ湿し水特性に優れ、印刷機や湿し水循環装置の金属部分の腐食や錆発生を抑制することができる湿し水組成物がいっそう求められる。特に鉄、その合金、鋼、鋳鉄、そのメッキなどの金属部分の腐食や錆発生を抑制することができる湿し水組成物が求められている。
特開2002−254852号公報 特開2004−82593号公報 特開平2−76793号公報 特開平4−161387号公報 特開平11−115341号公報
本発明の目的は、上記従来の湿し水が持つ毒性や欠点がなく、印刷作業にあたって、専門的熟練を必要とすることなく、あらゆる機構の印刷機において、イソプロピルアルコールを完全に代替することのできる平版印刷用の湿し水組成物を提供することにある。本発明の目的は具体的に、印刷機停止時に版面上に残った湿し水が水滴となり、水分が蒸発しても、画像部を溶解せず画像を損なうことがない平版印刷用の湿し水組成物を提供することにある。本発明の目的はまた、印刷機や湿し水循環装置に使用されている金属部分、例えば銅及びその合金、鉄及びその合金、鋼、鋳鉄、並びにそれらのメッキ加工品の腐食や錆発生を確実に抑制できる平版印刷用の湿し水組成物を提供することにある。本発明の目的はさらに、特にアルミニウム板を電気化学的に粗面化し陽極酸化した支持体を用いた印刷版の汚れ、ブラインディング及び水負けといった印刷時の問題点の発生を抑制し、安定した連続印刷を可能とし、安全衛生上及び消防安全上の問題がなく、高品質の印刷物を得ることができる平版印刷用の湿し水組成物を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の化合物を湿し水組成物に含ませることにより、優れた平版印刷用湿し水組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って本発明は、下記一般式(1)で表される化合物と防錆剤とを含有することを特徴とする平版印刷用湿し水組成物である。
Figure 2007168124
(式中、a、b、c、d、e、f、g及びhはそれぞれ、0〜50の整数を表し、但しa、c、e及びgのうち少なくとも一つは1以上であり、及びb、d、f及びhのうち少なくとも一つは1以上である。)
本発明の湿し水組成物に含ませる防錆剤の例として、ベンゾトリアゾール及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種及び/又は下記一般式(2)で表されるコハク酸系化合物の少なくとも1種が挙げられる。
Figure 2007168124
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して−OMを表し、該Mは水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基を表し、又はR1及びR2は一緒になって−O−を表す。R3はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)
本発明の好ましい実施態様として、本発明の湿し水組成物にはさらに、ポリビニルピロリドンと、糖類から選ばれる少なくとも1種とを含有させる。本発明の湿し水組成物はまた、その好ましい実施態様として、実質的に揮発性有機溶剤を含まない湿し水組成物とする。
本発明の平版印刷用湿し水組成物は、印刷作業にあたって、専門的熟練を必要とすることなく、各種の連続給水式印刷機において湿し水組成物中のイソプロピルアルコールを代替し、印刷時に印刷版の汚れ、ブラインディング及び水負けといった問題を起こさず安定した連続印刷ができ、印刷適性が良好である。本発明の平版印刷用湿し水組成物によれば、印刷機停止時、例えば昼休みなどの停止時に版面上に残った湿し水が水滴となり水分が蒸発しても、画像部を溶解せず画像を損なうことがない。本発明の平版印刷用湿し水組成物によれば,印刷機や湿し水循環装置に使用されている金属部分、例えば銅及びその合金、鉄及びその合金、鋼、鋳鉄、並びにそれらのメッキ加工品の腐食や錆発生を抑制できる。本発明の湿し水組成物は特に、鉄、その合金、鋼、鋳鉄などに特に優れた防錆効果を発揮することができる。
本発明の湿し水組成物によれば、実質的に揮発性有機溶剤を含まずにイソプロピルアルコールを完全に代替することができ、労働衛生上及び消防安全上の問題が全くない上、高品質の印刷物を得ることができ、印刷の能率化、生産性の向上を図ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。湿し水は通常商業ベースとするときは濃縮化し商品化するのが一般的であり、使用するときに、そのような濃縮液を適宜希釈して湿し水として使用することになる。なお、本明細書中では、濃縮化されたものを湿し水組成物と呼ぶ。以下に言及する各種成分の含有量や添加量は、特に記載しない限り使用時の湿し水の全質量に基づいたものである。
本発明で使用する下記一般式(1)で表される化合物は、アミノエタノールアミン(H2N-CH2CH2-NH-CH2CH2-OH)に、KOHを触媒として加え、プロピレンオキサイドを反応させ、次いでエチレンオキサイドを反応させることによって、合成することができる。
Figure 2007168124
(式中、a、b、c、d、e、f、g及びhはそれぞれ、0〜50の整数を表し、但しa、c、e及びgのうち少なくとも一つは1以上であり、及びb、d、f及びhのうち少なくとも一つは1以上である。)
本発明で使用する一般式(1)で表される化合物は、その重量平均分子量が500〜20000の範囲が適当であり、好ましくは重量平均分子量が500〜5000のものであり、さらに好ましくは800〜1500であり、最適なのは重量平均分子量1000付近のものである。
このような化合物は、印刷機停止時に版上に残った水滴が放置により水が蒸発し、濃縮されて残ったときでも、画像領域にダメージを与えることがない。上記化合物はまた、揮発性を有する有機溶剤と併用することなしに、イソプロピルアルコールを代替することが可能である。
該化合物においてエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの付加モル数比率は、充分な印刷性が得られる観点から5:95〜50:50の範囲が適当であり、より好ましくは20:80〜35:65の範囲である。
なお、上記化合物の分子量やエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率は、例えば水酸基価及びアミン価の測定、NMR測定などにより決定することができる。
上記化合物を0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%含有する湿し水を使用することにより、イソプロピルアルコールを代替しても、良好な印刷適性を発揮する。また、該湿し水を適用した後、印刷停止時に版上に残った水滴が放置により水が蒸発し、濃縮された状態になっても、版の画像領域を侵すことがない。
本発明で使用する防錆剤の具体例として、ベンゾトリアゾール及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
本発明で使用するベンゾトリアゾール及びその誘導体として具体的に、下記一般式(3)で示されるものがある。
Figure 2007168124
(式中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、R1及びR2は独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、水酸基又はハロゲン原子を表す。)
Rで示されるアルキル基の例として炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基があり、これらのアルキル基は置換されていてもよく、該置換基として例えば、アミノ基、N-アルキルアミノ基、N,N-ジアルキルアミノ基などがある。
1又はR2で示されるアルキル基及びアルコキシ基の例として、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基及びアルコキシ基が挙げられる。R1又はR2で示されるハロゲン原子の例として塩素原子及び臭素原子などが挙げられる。
本発明で使用するベンゾトリアゾール及びその誘導体の具体例には、ベンゾトリアゾール(1,2,3-ベンゾトリアゾール)、メチルベンゾトリアゾール(4-メチルベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾールなど)、ジメチルベンゾトリアゾール(4,6-ジメチルベンゾトリアゾール、5,7-ジメチルベンゾトリアゾールなど)、カルボキシベンゾトリアゾール、及び1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾールなどがある。
中でも、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール及びジメチルベンゾトリアゾールが好ましく使用される。
本発明で使用するベンゾトリアゾール及びその誘導体は、市販品を使用することができる。
本発明の湿し水組成物には、ベンゾトリアゾール及びその誘導体から選ばれる1種単独を又は2種以上を組合せて使用することができる。このようなベンゾトリアゾール類化合物を使用時の湿し水において0.0001〜0.1質量%の範囲で含有させることにより、金属に対して適当な防腐食及び防錆効果を発揮することできる。さらに好ましくはベンゾトリアゾール類化合物を使用時の湿し水において0.001〜0.02質量%の範囲で含有させる。
本発明で使用する防錆剤の別の具体例として、下記一般式(2)で表されるコハク酸系化合物の少なくとも1種が挙げられる。
Figure 2007168124
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して−OMを表し、該Mは水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基を表し、又はR1及びR2は一緒になって−O−を表す。R3はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)
式中、Mで示されるアルカリ金属原子としてはナトリウム、カリウム及びリチウムが挙げられる。
式中、R3で示されるアルキル基としては炭素原子数1〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基があり、アルケニル基としては炭素原子数1〜18の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基があり、例えばビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ノネニル基、ドデセニル基などが挙げられ、アリール基としてはフェニル基及びナフチル基などが挙げられ、アラルキル基としてはフェニルメチル基、フェニルエチル基などが挙げられる。これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基は置換基を有していてもよく、例えば水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、及び−(OCm2mn−OH(式中、mは2〜3を表し、nは1〜20を表す)などの置換基が挙げられる。
上記コハク酸系化合物の中でも、好ましく使用できるものとして、一般式(I)においてR1及びR2がそれぞれ−OM(該Mは水素原子又はアルカリ金属)であり、R3が炭素原子数3〜12のアルキル基、炭素原子数3〜12のアルケニル基、フェニル基などを表すものである。
上記コハク酸系化合物は常法に従って製造することができる。上記コハク酸系化合物は一般に入手することができ、本発明では市販品を使用することができる。例えばノネニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、及びフェニルコハク酸などの市販品がある。
本発明の湿し水組成物には、上記コハク酸系化合物を1種単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。このようなコハク酸系化合物を使用時の湿し水において0.0001〜0.1質量%の範囲で含有させることにより、金属に対して適当な防腐食及び防錆効果を発揮することできる。さらに好ましくはコハク酸系化合物を使用時の湿し水において0.001〜0.02質量%の範囲で含有させる。
本発明の湿し水組成物には、ベンゾトリアゾール及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種と上記コハク酸系化合物の少なくとも1種とを併用してもよい。
本発明の湿し水組成物にはさらに、水溶性高分子化合物を添加してもよい。
このような水溶性高分子化合物の具体的な例としてはアラビアゴム、澱粉誘導体(例えばデキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化酵素分解デキストリン、カルボキシメチル化澱粉、燐酸澱粉、オクテニルコハク化澱粉など)、アルギン酸塩、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、それらのグリオキサール変性体など)の天然物とその変性体及びポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ポリアクリル酸及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体などの合成物が挙げられる。これらの高分子化合物は単独でまたは混合して使用でき、その添加量は湿し水中、0.0001〜5質量%、より好ましくは、0.003〜1質量%が適当である。
本発明では、上記水溶性高分子化合物の中でも、ポリビニルピロリドンが特に好ましく使用できる。湿し水組成物に含有させるポリビニルピロリドンは、ビニルピロリドンのホモポリマーを意味する。ポリビニルピロリドンは分子量200〜3,000,000のものが適当であり、好ましくは300〜500,000、より好ましくは300〜100,000のものである。特に好ましくは300〜30,000のものである。
これらポリビニルピロリドンは1種単独でも、又は分子量の異なるものを2種以上組み合わせて使用することもできる。また、低分子量のポリビニルピロリドン、例えば重合度3〜5のビニルピロリドンオリゴマーと組み合わせることができる。
このようなポリビニルピロリドンとしては、市販品を使用することができる。例えば、ISP社製のK−15、K−30、K−60、K−90、K−120などの各種グレートのものを使用することができる。
湿し水におけるポリビニルピロリドンの含有量は、0.001〜0.3質量%が適当であり、好ましくは0.005〜0.2質量%である。
本発明の湿し水組成物にはまた、糖類から選ばれる少なくとも1種を含ませることが好ましい。使用する糖類としては、単糖類、二糖類及びオリゴ糖類などから選択することができ、水素添加によって得られる糖アルコールもこれに含まれる。具体例としてD−エリトロース、D−スレオース、D−アラビノース、D−リボース、D−キシロース、D−エリスロ−ペンテュロース、D−アルロース、D−ガラクトース、D−グルコース、D−マンノース、D−タロース、β−D−フラクトース、α−L−ソルボース、6−デオキシ−D−グルコース、D−グリセロ−D−ガラクトース、α−D−アルロ−ヘプチュロース、β−D−アルトロ−3−ヘプチュロース、サッカロース、ラクトース、D−マルトース、イソマルトース、イヌロビオース、ヒアルビオウロン、マルトトリオース、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズルシット、アロズルシット、マルチトール、還元水あめなどが挙げられる。これらの糖類は1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
湿し水において、糖類から選ばれる少なくとも1種の含有量は0.01〜1質量%が適当であり、好ましくは0.1〜0.8質量%である。
湿し水は一般的に酸性領域、すなわち、pH3〜6付近の範囲で使用することが望ましい。pH3未満では支持体に対するエッチング効果が強くなり、耐刷性が低下する。pH値を3〜6に調整するためには、一般的には有機酸及び/又は無機酸又はそれらの塩を添加すればよい。好ましい有機酸としては、例えばクエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、酢酸、グリコール酸、グルコン酸、ヒドロキシ酢酸、蓚酸、マロン酸、レブリン酸やスルファニル酸、p−トルエンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸等が挙げられる。無機酸としては例えばリン酸、硝酸、硫酸、ポリリン酸が挙げられる。更にこれら有機酸及び/又は無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩あるいはアンモニウム塩、有機アミン塩も好適に用いられ、これらの有機酸、無機酸及び/又はこれらの塩は単独で使用しても、あるいは2種以上の混合物として使用してもよい。その添加量は湿し水中0.001〜5質量%が一般的である。
本発明の湿し水組成物はまた、アルカリ金属水酸化物、燐酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、珪酸塩等を含有させ、pH7〜11付近のアルカリ領域で用いることもできる。
以上の成分の他に、本発明の湿し水組成物にはキレート化合物も添加することができる。通常、濃縮液である湿し水組成物に水道水、井戸水等を加えて希釈し、湿し水として使用する。この際希釈する水道水や井戸水に含まれているカルシウムイオン等が印刷に影響を与え、印刷物を汚れ易くする原因となることもある。このような場合、キレート化合物を添加しておくことにより、上記欠点を解消することができる。好ましいキレート化合物としては例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類や2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタントリカルボン酸−2,3,4,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2,2,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。
上記のキレート剤のナトリウム塩あるいはカリウム塩の代わりに有機アミンの塩も有効である。
これらのキレート剤は湿し水中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。添加する量としては湿し水中0.001〜3質量%、好ましくは0.01〜1質量%が適当である。
本発明の湿し水組成物には、さらに着色剤、上記以外の防錆剤、消泡剤などを含ませてもよい。着色剤として食品用色素等が好ましく使用できる。例えば、黄色色素としてはCINo. 19140、15985、赤色色素としてはCINo. 16185、45430、16255、45380、45100、紫色色素としてはCINo. 42640、青色色素としてはCINo. 42090、73015、緑色色素としてはCINo. 42095、等が挙げられる。
消泡剤としてはシリコン消泡剤が好ましく、その中で乳化分散型及び可溶化型などのいずれも使用することができる。
本発明の湿し水組成物には更に、硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸アンモニウムなどの腐食抑制剤、クロム化合物、アルミニウム化合物のような硬膜剤、環状エーテル:例えば4−ブチロラクトンなどの有機溶剤、特開昭61−193893号公報記載の水溶性界面活性有機金属化合物などを、湿し水の0.0001〜1質量%の範囲で添加することもできる。
本発明の湿し水組成物には更に少量の界面活性剤を添加してもよい。例えば、アニオン型界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホこはく酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホこはく酸モノアミド2ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硬化ひまし油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホこはく酸塩類、アルキル硫酸エステル類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
また非イオン型界面活性剤としては、ポリオキシアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸部分エステル類、蔗糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどが挙げられる。その中でもポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー類等が好ましく用いられる。
カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。また両性界面活性剤の例としては、アルキルイミダゾリン類が挙げられる。さらに、フッ素系界面活性剤が挙げられる、例えば、フッ素系アニオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、フッ素系ノニオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルプロピレンオキサイド付加物、フッ素系カチオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
これらの界面活性剤の含有量は発泡の点を考慮すると、湿し水中10質量%以下、好ましくは0.01〜3.0質量%が適当である。
さらに本発明の湿し水組成物には、湿潤剤として、グリコール類及び/又はアルコール類などを含めることができる。このような湿潤剤として、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングルコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、テトラエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、トリエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、
プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、分子量200〜1000のポリプロピレングリコール及びそれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノイソプロピルエーテル及びモノブチルエーテル、
プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール及びペンタプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、3−メトキシブタノールなどが挙げられる。
これらの湿潤剤を単独又は2種以上の併用で、湿し水中0.01〜1質量%程度含ませることができる。
本発明の湿し水組成物の成分として残余は、水である。
従って、上述の各種成分の湿し水における含有量や湿し水組成物の希釈率などを考慮して、水、好ましくは脱塩水、即ち、純水を使用して各種成分を適宜な濃度で溶解し、濃縮液である湿し水組成物を得ることができる。このような濃縮液を、使用時に通常水道水、井戸水等で10〜200倍程度に希釈し、使用時の湿し水とする。
本発明の湿し水組成物は、揮発性を有する有機溶剤と併用することなしに、イソプロピルアルコールを完全に代替することが可能である。従って本発明の湿し水組成物は、実質的に揮発性有機溶剤を含まない湿し水組成物とすることができる。ここで「実質的に揮発性有機溶剤を含まない」とは、ASTM D 2369-95の測定法に従って、濃縮液である湿し水組成物において揮発性有機溶剤量が10%以下であることを意味する。
ASTM D 2369-95の測定法は、試料3mlを熱風オーブン110℃で1時間の条件で、次式により揮発性有機溶剤量を求めるものである。
式:{(試料の質量−加熱残分の質量−試料中の水分質量)/(試料の質量)}×100=揮発性有機溶剤量(質量%)
また、使用時の湿し水中15質量%程度までのイソプロピルアルコールを併用しても印刷品質上問題はない。
本発明の湿し水組成物は、種々の平版印刷版に対して使用することができるが、特にアルミニウム板を支持体とし、その上に感光層を有する感光性平版印刷版(予め感光性を付与した印刷板で、PS版と呼ばれる。)を画像露光及び現像して得られた平版印刷版に対して好適に使用できる。かかるPS版の好ましいものは、例えば、英国特許第 1,350,521号明細書に記されているようなジアゾ樹脂(p−ジアゾジフェニルアミンとパラホルムアルデヒドとの縮合物の塩)とシエラックとの混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたもの、英国特許第 1,460,978号及び同第 1,505,739号の各明細書に記されているようなジアゾ樹脂とヒドロキシエチルメタクリレート単位またはヒドロキシエチルアクリレート単位を主なる繰り返し単位として有するポリマーとの混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたもの、また特開平2−236552号、特開平4−274429号に記載のジメチルマレイミド基を含有する感光性ポリマー系をアルミニウム板上に設けたもののようなネガ型PS版、および特開昭50−125806号公報に記載されているようなO−キノンジアド感光物とノボラック型フェノール樹脂との混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたポジ型PS版が含まれる。またバーニング処理されたポジ型PS版にも用いることができる。
上記感光層を形成する組成物には、上記のアルカリ可溶性ノボラック樹脂以外の、アルカリ可溶性樹脂を必要に応じて配合することができる。例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、メチルメタアクリレート−メタクリル酸共重合体、アルカリ可溶性ポリウレタン樹脂、特公昭52−28401号公報記載のアルカリ可溶性ビニル系樹脂、アルカリ可溶性ポリブチラール樹脂等を挙げることができる。更に米国特許第 4,072,528号及び同第 4,072,527号の各明細書に記されているような光重合型フォトポリマー組成物の感光層をアルミニウム板上に設けたPS版、英国特許第 1,235,281号及び同第 1,495,861号の各明細書に記されているようなアジドと水溶性ポリマーとの混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたPS版も好ましい。
さらに、可視や赤外線のレーザーで直接露光するCTPプレートにも好適に使用することができる。具体例としてはフォトポリマータイプデジタルプレート(例えば富士写真フイルム(株)製LP−NX)や、サーマルポジタイプデジタルプレート(例えば富士写真フイルム(株)製LH−PI)、及びサーマルネガタイプデジタルプレート(例えば富士写真フイルム(株)製LH−NI)などが挙げられる。
次に本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、%は特に指定しない限り質量%を示す。
下記表1の組成に従って、実施例1〜5及び比較例1〜5の各種湿し水組成物を調製した。表中、単位はグラムであり、水を加えて最終的に1000mLとした。いずれも濃縮タイプで、使用時に希釈する。











Figure 2007168124
*EO:PO比=エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの付加モル数比率
** エチレンジアミンにPOが付加して次にEOが付加している構造
上記のように調液した実施例1〜5及び比較例1〜5の組成物を各々、硬度400ppmの疑似硬水を用いて40倍に希釈し、pHが4.8〜5.3付近となるようにNaOH/リン酸(85%)にて調整して、実際に使用する湿し水とした。さらに硬度400ppmの疑似硬水にイソプロピルアルコール8%と富士写真フイルム(株)製湿し水EU−3 1%を加え、使用液として比較例6を作成した。
[テスト方法]
印刷機はハイデルMOV(アルカラー給水装置)を使用して、東洋インキ(株)の名称ハイユニティのプロセス4色(墨、藍、紅、黄)インキと、富士写真フイルム(株)製のポジ型PS版VSを、ベタ部と30%網点部のフィルム、及び富士写真フイルム製FQIチャートのフィルムを用い、ウシオ製PSライトで露光後、富士写真フイルム製現像液DP−4で現像処理を行い、富士写真フイルム製ガム液FP−2でガム引き処理を行って製版したものを用いて、印刷テストを実施した。
(a) 連続印刷安定性:
汚れを生じず、水負けを起こさない湿し水の量(最小水上げ量)を求め、その条件で連続印刷を実施する。印刷物の汚れの発生、又は水負けにより良好な印刷物が得られなくなるまでの印刷枚数により判定する。
10000枚以上 A
10000〜3000枚以上 B
2999〜1枚 C
なし D
(b) 乳化性:
10000枚印刷したときの、インキ練りローラー上のインキの乳化状態を調べる。
良い A
やや悪い B
悪い C
(c) 画像部劣化:
印刷機を停止し、PS版のベタ部と30%網点部の画像部にシリンジを用いてそれぞれの湿し水を5μl、10μl、20μl及び50μlを滴下し、60分間放置する。その後印刷を再開し、画像領域の劣化について評価する。
問題なし A
若干劣化有り(リング状跡有り) B
劣化 C
(d) 錆の発生防止性:
試験装置として、FOGRA Forschungsgesellschaft Druck e.V.による湿し水の腐食テスト法(Testing Scheme for the Corrosion Test of Fountain Concentrates, Version 12/2004)の7頁、図5に示される浸せき腐食テスト用試験装置(Fig.5: Scheme of the permanent total-immersion test)と同様の装置を使用し、鉄と銅に対し錆の発生を試験した。
評価用の鉄の試験片は高炭素クロム軸受け鋼を使用し、サイズ:直径19mm、長さ65mm、表面粗さRa1.5μmに加工した。銅の試験片は、サイズ:28mm×60mm、厚さ2mmの銅板を使用した。
湿し水量は650mLとした。Air Flowは、150mL/minとした。温度は、22℃の条件で7日間の浸せきを実施した。
錆の発生防止性の評価法は、鉄の場合は溶解量を原子吸光法により測定し、銅の場合は外観の変化を目視により判定した。
[鉄錆発生防止性の評価]
実施例1〜5と比較例1〜6の湿し水を各々650mlをとり、鉄の試験片(高炭素クロム軸受け鋼)2個を浸せきテスト用試験装置に浸漬し、Air Flowは150mL/min、温度は22℃の条件で7日間の浸せきを実施した。このときの錆の発生程度と、湿し水組成物中に溶け出した鉄の溶解量(原子吸光測定器により測定)により判定した。
錆の発生がない(鉄溶出量5ppm未満) A
錆が発生している(鉄溶出量5ppm以上20ppm未満) B
錆が著しく発生している(鉄溶出量20ppm以上) C
[銅錆発生防止性の評価]
実施例1〜5と比較例1〜6の湿し水を各々650mlをとり、銅の試験片2個を浸せきテスト用試験装置に浸漬し、Air Flowは150mL/min、温度は22℃の条件で7日間の浸せきを実施した。銅の場合は外観の変化を目視により判定した。
錆の発生がない(外観上の変化が認められない A
錆が発生しているが軽微(僅かに色相・光沢に変化有り) B
錆が発生している(色相・光沢の変化が大きい) C
テスト結果を下記の表2に示す。
Figure 2007168124
表2に示される結果から、とくに実施例1〜5と比較例1〜4の結果の比較から、本発明による一般式(1)の化合物と防錆剤との併用により、防錆効果に相乗効果が発揮されていることが判る。一般的に防錆剤単独では、銅、真鍮に対しての効果は高いが、鉄に対しては十分な効果が得られないことが多い。一般式(1)の化合物と防錆剤の併用によれば、銅、真鍮に対しての効果が高くなり、鉄にも十分な効果が得られるようになった。
本発明の実施例による湿し水は、連続印刷安定性、乳化性及び画像部劣化のいずれについても良好である。本発明の実施例による湿し水ではまた、比較例6のイソプロピルアルコールを使用した湿し水と同様の良好な印刷物が得られた。上記実施例の湿し水組成物は、イソプロピルアルコールとは異なり、労働安全上及び消防安全上の問題が全くないうえ、既存のイソプロピルアルコール代替湿し水に含まれるような有機溶剤を使用しておらず、揮発性有機溶剤量を極めて低くすることができ環境上たいへん好ましい。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物と防錆剤とを含有することを特徴とする平版印刷用湿し水組成物。
    Figure 2007168124
    (式中、a、b、c、d、e、f、g及びhはそれぞれ、0〜50の整数を表し、但しa、c、e及びgのうち少なくとも一つは1以上であり、及びb、d、f及びhのうち少なくとも一つは1以上である。)
  2. 該防錆剤がベンゾトリアゾール及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種及び/又は下記一般式(2)で表されるコハク酸系化合物の少なくとも1種である、請求項1記載の平版印刷用湿し水組成物。
    Figure 2007168124
    (式中、R1及びR2はそれぞれ独立して−OMを表し、該Mは水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基を表し、又はR1及びR2は一緒になって−O−を表す。R3はアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)
  3. さらに、ポリビニルピロリドンと、糖類から選ばれる少なくとも1種とを含有する、請求項1又は2記載の平版印刷用湿し水組成物。
  4. 実質的に揮発性有機溶剤を含まない請求項1〜3のいずれか1項記載の平版印刷用湿し水組成物。
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