JP2007167316A - 輸液ポンプおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】軸受14および15で支持される回転軸16に固定された複数の円板カム12および13と、この円板カムの外周面に接触し該円板カムの偏心回転に伴い進退移動する複数のフィンガープレートと、該フィンガープレートを摺動自在に挟持するガイド部とを備えてなる蠕動運動方式の輸液ポンプであって、上記円板カム12および13は樹脂成形体であり、それぞれが偏心位置に貫通孔を有する樹脂成形体であり、該貫通孔を通して円板カムの上死点面が回転軸16の回転方向に順次移動して一周するように回転軸16に組み付けられ連結されてなる。
【選択図】図7
Description
この方式の輸液ポンプは、輸液チューブをプレッシャープレートとの間で挟持する輸液作動部を備え、偏心位置をずらして同軸に複数並設された円板カムを所定の角速度で回転させることにより、該円板カムの外周面に接触しガイド部間に並設されたフィンガープレートが上記輸液チューブと上記プレッシャープレートとの間で順次押圧閉塞するように動作し、チューブ内に充填された輸液を一定方向へ送液している。点滴などに使用されるこの種の輸液ポンプは、所持者が携帯しながら移動する場合もあり、そのサイズの小型化および軽量化、また電池駆動などを可能とするため省電力などが図られている。
従来、小型・軽量化に対応できるとともに、フィンガープレート、円板カム、ガイド部などの摺動面における摺動性に優れる輸液ポンプとして、円板カム、フィンガープレートおよびガイド部が樹脂成形体からなり、その相互接触がそれぞれ凝着を起こさない樹脂組成物の成形体である輸液ポンプが知られている(特許文献1参照)。
また、この対策として円板カムをユニットの一体成形ではなく個々に作製して組み立てようとすると、輸液流量を平準化する必要から、角度を均等にずらして同軸に組付けなくてはならないために作業効率が悪いという問題がある。
ここで、本発明における上死点面とは、偏心した円板カムの貫通孔軸心から最も距離が遠い位置にある外径面を意味する。なお、円板カムの外径面において、貫通孔軸心から最も距離が遠い位置は厳密には面ではなく線であるが、本発明では、該線の部分を含む微小範囲の外形面を上記の上死点面とする。
円板カムの上死点面が回転軸の回転方向に順次移動して一周するように上記回転軸に組み付けられ連結されることにより、これらの円板カムからなる円板カムユニットの軸方向断面が(360度/円板カムの数)の位相差の正弦波形となる。
特に、上記2種類の円板カムを用いることにより、角柱形状の回転軸にその角数の倍の個数の円板カムを、360度を該円板カムの個数で均等割りした角度ずつ偏角して取り付けられるので、回転軸の角数と同数しか円板カムを偏角させて取り付けられない円板カム1種類のみを用いる場合と比較して、フィンガープレートを滑らかに蠕動運動させることができ、輸液流量を平準化できる。
これらの結果、駆動モータの低トルク化および省電力が図れ、輸液ポンプ本体の小型軽量化が可能となる。
図1に示すように、蠕動運動方式の輸液ポンプは、壁部分にチューブ装着部7aが設けられた輸液作動部1と、プレッシャープレート8がチューブ装着部7aに対向配置された扉8aと、チューブ装着部7aに装着される輸液チューブ7とから構成される。チューブ装着部7aに輸液チューブ7を装着して扉8aを閉めることにより、プレッシャープレート8により輸液チューブ7が押さえつけられる。
本発明における円板カムは、円板カムAと、該円板カムAの貫通孔に対して360度を円板カムの個数で均等割りした角度を偏角させた貫通孔を有する円板カムBの2種類で構成される。
円板カムAと円板カムBとは、交互に回転軸にそれぞれの貫通孔を通して組み付けられるとともに連結される。組み付け時においては、各円板カムAおよび円板カムBは360度を円板カムの個数 2 n で均等割りした角度ずつ同一方向に偏角させて相互に連結される。よって、隣り合う円板カムAと円板カムBとは、360度を円板カムの個数 2 nで除した角度だけ偏角し、一つおきに組み付けられた円板カムA同士および円板カムB同士は、それぞれ 360 度を n で除した角度だけ偏角する。
円板カムA12は、回転軸の6角柱形状の断面である6角形の貫通孔12cと、図4(c)に示す一方の軸方向側面に形成された凸部12bと、図4(a)に示す他方の軸方向側面に形成された凹部12aとを有する。図4(a)に示すように、円板カムA12の円板軸心と、貫通孔12cの6角形軸心とは距離Lだけ離間している。また、貫通孔12cの6角形軸心から最も遠い位置にある外径面12dが、円板カムA12の上死点面である。
円板カムB13は、回転軸の6角柱形状の断面である6角形の貫通孔13cと、図5(c)に示す一方の軸方向側面に形成された凸部13bと、図5(a)に示す他方の軸方向側面に形成された凹部13aとを有する。また、貫通孔13cの6角形軸心から最も遠い位置にある外径面13dが、円板カムB13の上死点面である。なお、円板カムA12と円板カムB13との外径寸法は同一である。
図5(a)および図5(c)に示すように、円板カムB13における貫通孔13cの6角形軸心は、円板カムB13の円板軸心から距離Lだけ離間するとともに、円板カムA12の貫通孔12cの軸心位置に対して 30 度偏角している。
このように、円板カムA12および円板カムB13における軸方向側面の凸部と凹部を、偏角方向を考慮した位置に設けることにより、組み付け時の方向間違えを防止でき、正確かつ容易に複数個の円板カムを組み付け、円板カムユニットを製造することができる。
図7(a)に示すように、円板カムユニットは、円板カムA12および円板カムB13の各 1 個を 1 組として交互に6組(円板カムは計12個)を6角柱形状の回転軸16に貫通して取り付けられる。回転軸16は、両端をスペーサー10を介して軸受14および軸受15により回転自在に支持され、各軸受はE形止め輪11により軸方向移動を制限されている。
なお、組み付け時においては、一つおきに組み付けられた円板カムA同士および円板カムB同士が、同一方向に60度偏角した状態となるように、偏角方向を考慮した向きで組み付ける。具体的には、図6(b)に示すように、円板カムAを、図6(a)における円板カムAの位置から60度だけ回転させた向きで円板カムBに組み付ける。このとき、最初の円板カムAの上死点面12dと、円板カムBを1個挟んだ、次の円板カムAの上死点面12dとは回転軸の回転方向に60度移動した位置となる。
円板カムAと円板カムBの組み付け方を間違えた場合、輸液チューブを押圧するフィンガープレートの先端部が正弦波形とならず、円板カムの偏心回転に伴うフィンガープレートの進退移動による輸液が困難となる。
上記の図6(a)および図6(b)に示す手順に従い、円板カムA12と円板カムB13とを交互に合計で12個組み付けることにより、円板カムの上死点面が回転軸の回転方向に順次移動して一周するように組み付けられ、軸方向断面形状が30度で均等割りされた位相差で正弦波形をなす円板カムユニットとなる(図7(a)〜(c)参照)。
本発明の輸液ポンプの製造方法は、上記の円板カムユニット組立工程と、輸液ポンプ組立工程とを備えてなる製造方法である。
また、上記樹脂に潤滑成分を配合した潤滑性樹脂組成物を好適に用いることができる。潤滑成分としては、液状、ゲル状、固体状、粉末状の潤滑性付与成分であれば使用でき、具体的には、PTFE樹脂、二硫化モリブデン、黒鉛などの固体潤滑材、潤滑油、グリース等が挙げられる。
ガイド部4を形成する樹脂は、輸液作動部本体と一体成形してもそりが小さく寸法精度に優れるPEI樹脂およびPPE樹脂が好ましく、それらにフッ素樹脂を充填させたものがより好ましい。PEI樹脂としては、ウルテム(日本GE社製)、PPE樹脂としては、ノリル(日本GE社製)、ベアリーPD5003(NTN精密樹脂社製)などが挙げられる。
凝着摩耗の抑制、摺動性に優れることから、フィンガープレート3にPPE樹脂を用いた場合では、ガイド部4および円板カム2の一方には、POM樹脂を用いることが好ましい。また、フィンガープレート3にPOM樹脂を用いた場合では、ガイド部4には、PPE樹脂を用いることが好ましい。
また、定期的なメンテナンスも必要なくなるため、維持コストが大幅に削減できる。
また、互いに摺動する部材を異なる樹脂を主成分とする樹脂組成物の成形体とすることにより、トルクロスの主原因である凝着摩耗を抑制できる。これらの結果、モータの大幅な低トルク化および省電力を実現でき、これに伴い輸液ポンプの小型軽量化が図れる。
また、本発明の輸液ポンプは、医療分野において輸液チューブによる薬液の注入や自動点滴などの用途に用いられる小型軽量のポンプであることから、円板カムの外径は、φ10〜20mm 程度であり、円板カムの円板中心と、貫通孔中心との軸方向断面での距離Lは、1〜5mm 程度である。
本発明の輸液ポンプにおける円板カムと、従来の円板カムとの比較を下記の表1に示す。
この結果、駆動モータの低トルク化、省電力化が図れ、通常のポンプ輸送ではせん断力が大きく、機械的摩擦を受けて変質しやすい薬液の輸送や、破壊されやすいエマルジョン粒子が配合されている流体の輸送などに用いられる医療用、食品加工用、化粧品加工用などの輸液ポンプとして好適に利用できる。
2 円板カム
3 フィンガープレート
4 ガイド部
5 軸受
6 回転軸
7 輸液チューブ
8 プレッシャープレート
9 駆動モータ
10 スペーサー
11 E形止め輪
12 円板カムA
13 円板カムB
14 軸受
15 軸受
16 回転軸
Claims (5)
- 軸受で支持された回転軸に固定される複数の円板カムと、この円板カムの外周面に接触し該円板カムの偏心回転に伴い進退移動する複数のフィンガープレートと、該フィンガープレートを摺動自在に挟持するガイド部とを備えてなる蠕動運動方式の輸液ポンプであって、
前記複数の円板カムは、それぞれが偏心位置に貫通孔を有する樹脂成形体であり、該貫通孔を通して円板カムの上死点面が回転軸の回転方向に順次移動して一周するように前記回転軸に組み付けられ連結されてなることを特徴とする輸液ポンプ。 - 前記回転軸の少なくとも前記円板カムを固定する部位が角柱形状であり、前記円板カムは、円板カムAと、該円板カムAの貫通孔に対して360度を円板カムの個数で均等割りした角度を偏角させた貫通孔を有する円板カムBの2種類であり、
前記円板カムAと前記円板カムBとは、交互に前記回転軸に組み付けられるとともに、各円板カムは360度を円板カムの個数で均等割りした角度ずつ同一方向に偏角して相互に連結されることを特徴とする請求項1記載の輸液ポンプ。 - 前記円板カムは、一方の軸方向側面に凸部を、他方の軸方向側面に凹部をそれぞれ有し、円板カムAの凸部が隣り合う円板カムBの凹部に、円板カムBの凸部が隣り合う円板カムAの凹部にそれぞれ嵌合されて、円板カムAと円板カムBとが交互に連結されていることを特徴とする請求項2記載の輸液ポンプ。
- 前記円板カム、前記フィンガープレートおよび前記ガイド部は、その相互接触がそれぞれ凝着を起こさない樹脂組成物の成形体であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の輸液ポンプ。
- 軸受で支持された回転軸に固定される複数の円板カムと、この円板カムの外周面に接触し該円板カムの偏心回転に伴い進退移動する複数のフィンガープレートと、該フィンガープレートを摺動自在に挟持するガイド部とを備えてなる蠕動運動方式の輸液ポンプの製造方法であって、
偏心位置に貫通孔を有する樹脂製の円板カムAと、該円板カムAの貫通孔に対して360度を円板カムの個数で均等割りした角度を偏角させた貫通孔を有する樹脂製の円板カムBの、2種類の円板カムを組み付ける円板カムユニット組立工程と、
該円板カムユニット組立工程で得られた円板カムユニットと、前記フィンガープレートと、該フィンガープレートを摺動自在に挟持する前記ガイド部とから輸液ポンプを組み立てる輸液ポンプ組立工程とを備えてなり、
前記円板カムユニット組立工程は、前記円板カムAと前記円板カムBとを交互に前記回転軸に組み付けるとともに、各円板カムを 360度を円板カムの個数で均等割りした角度ずつ同一方向に偏角して相互に連結する工程であることを特徴とする輸液ポンプの製造方法。
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